JP4288781B2 - 冷却装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷凍サイクルの冷媒を冷却するコンデンサ等の放熱器、及び水冷エンジンの冷却水を冷却するラジエータからなる冷却装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
コンデンサ内を流通する冷媒の温度は、ラジエータ内を流通する冷却水の温度より低いので、ラジエータより空気(冷却風)流れ上流側にコンデンサを配設する必要がある。
【0003】
また、車両停止時(アイドリング運転時)などの走行風量(冷却風量)が小さいときには、ラジエータの空気流れ下流側に配設されたクーリングファン(以下、ファンと略す。)を稼働させて冷却風量の低下を補っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、車両停止時(アイドリング運転時)には、冷却風量の低下以上にコンデンサの冷却能力が低下してしまう。これは、車両停止時等、コンデンサに向けて流通する空気(冷却風)の速度(風量)が小さいときには、ラジエータ通過後の冷却風(熱風)が、コンデンサの前面側(空気流れ上流側)に逆流(再循環)してしまうからである。
【0005】
そして、この熱風の再循環(コンデンサの冷却能力の低下)は、冷凍サイクル(空調装置)にて必要とする圧縮機動力の増加を招く。因みに、コンデンサの冷却能力が10%〜20%低下したときに、冷却能力のが低下前と等しい冷凍能力(冷房冷凍能力)を発揮させるには、圧縮機の動力を30%〜50%増大させる必要がある。
【0006】
そこで、発明者等は、この熱風の再循環が発生する原因を調査研究したところ、以下の点が判明した。
【0007】
すなわち、車両停止時には冷却風量の低下を防止すべく、ファンを稼働させるため、ファンの上流側の気圧がファンの下流側の気圧より低くなり、ファンの上流側であるコンデンサの前面側の気圧が、ファンの下流側であるラジエータの後面側(空気流れ下流側)の気圧より低くなる。
【0008】
このため、車両停止時などの走行風圧が小さいときには、コンデンサ前面側とラジエータの後面側との気圧差により、図10に示すように、ラジエータ8を通過して加熱された熱風がコンデンサ7の前面側に再循環してしまう。
【0009】
このような原因に対しては、コンデンサ7周辺の隙間を埋めて熱風が再循環する空気通路を排除するといった手段が考えられるが、この手段では、車両ボディの形状に対応したパッキンを車両毎に準備する必要があることに加えて、車両の組立工数が増大するので、車両の製造原価上昇を招き、現実的な手段でない。
【0010】
本発明は、上記点に鑑み、簡便な手段にて熱風の再循環に伴うコンデンサ等の放熱器の冷却能力低下を防止することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、請求項に記載の発明では、車両走行用の水冷エンジン(2)が搭載されたエンジンルーム(1)のうち水冷エンジン(2)より前方側に配設され、冷凍サイクル内を循環する冷媒を冷却する放熱器(7)と、
放熱器(7)より空気流れ下流側に配設され、水冷エンジン(1)内を循環する冷却水を冷却するラジエータ(8)と、
ラジエータ(8)より空気流れ下流側に配設され、放熱器(7)及びラジエータ(8)に冷却風を流通させる送風機(9、9a、9b)と、
熱器(7)を迂回させて空気を流通させるバイパス通路(12)と、
バイパス通路(12)を開閉する開閉手段(16)とを有し、
バイパス通路(12)は、送風機(9、9a、9b)の空気流れ下流側とラジエータ(8)の空気流れ上流側との間を連通するように形成され、送風機(9、9a、9b)下流側の空気をラジエータ(8)の上流側へ再循環させることで、送風機(9、9a、9b)下流側の空気を放熱器(7)を迂回させて流通させるようになっており、
開閉手段(16)は、放熱器(7)に向けて流通する空気の速度が所定速度以下のときにバイパス通路(12)を開き、放熱器(7)に向けて流通する空気の速度が所定速度より大きいときにバイパス通路(12)を閉じることを特徴とする。
【0014】
これにより、放熱器(7)に向けて流通する空気の速度が所定速度以下のときに、送風機下流側から再循環する熱風の多くは、放熱器(7)を通過することなく、放熱器(7)より通風抵抗の小さいバイパス通路(12)に流れ込んでラジエータ(8)の上流側に還流するため、放熱器(7)の前面側に熱風が再循環して放熱器(7)の温度が上昇することを防止できる。
【0015】
一方、バイパス通路(12)を設けているので、放熱器(7)を通過する冷却風量は、バイパス通路(12)を設けないものに比べて低下するものの、放熱器(7)の表面温度が低下するので、放熱器(7)の冷却能力が増大する。
【0016】
したがって、本発明によれば、放熱器(7)周辺の隙間を埋めて熱風が再循環する空気通路を排除するといった手段を講じることなく、バイパス通路(12)を設けると言った簡便な手段にて熱風の再循環に伴う放熱器(7)の冷却能力が低下することを防止できる。
【0017】
なお、特開平4−314914号公報には、コンデンサを迂回するバイパス通路が示されていいるが、上記公報に記載発明では、速度が所定速度以下のときには、バイパス通路を閉じるので、本発明のごとく、熱風の再循環に伴う放熱器(7)の冷却能力低下を防止できない。
【0018】
請求項に記載の発明では、請求項1に記載の冷却装置において、前記開閉手段(16)の作動を制御する電子制御装置を有し、
前記電子制御装置は、車両速度が所定速度以下のときに前記バイパス通路(12)を開くように前記開閉手段(16)を作動させ、車両速度が所定速度より大きいときに前記バイパス通路(12)を閉じるように前記開閉手段(16)を作動させることを特徴とする。
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の冷却装置において、前記バイパス通路(12)は、前記ラジエータ(8)の左右方向の側方に配置されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の冷却装置において、前記開閉手段は、回転式の板状の開閉ドア(16)にて構成され、
前記開閉ドア(16)が前記バイパス通路(12)を開いたときには、前記バイパス通路(12)を前記開閉ドア(16)の板面に沿って空気が流通するようになっていることを特徴とする。
【0026】
因みに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0027】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
本実施形態は、本発明に係る冷却装置を車両前方側に走行用のエンジン(内燃機関)が搭載された車両に適用したものであって、図1(a)は本実施形態に係る車両用冷却装置の模式図であり、図1(b)はA部の拡大図である。
【0028】
1は走行用の水冷エンジン(以下、エンジンと略す。)2が搭載されたエンジンルームであり、このエンジンルーム1の車両前方側には、冷却用の空気(冷却風)をエンジンルーム1内に取り入れる開口部3が設けられている。
【0029】
なお、開口部3には、車両前方側の緩衝部材をなすフロントバンパー4及び鎧窓状のフロントグリル5が配設されている。また、6はエンジンルーム1を上方側を開閉するボンネットである。
【0030】
そして、エンジンルーム2に流入する冷却風流れ最上流側には、冷凍サイクル(空調装置)内を循環する冷媒を冷却するコンデンサ(放熱器)7が配設され、このコンデンサ7の空気流れ下流側には、エンジン2内を循環する冷却水を冷却するラジエータ8が配設されている。
【0031】
また、9はラジエータ8より空気流れ下流側に配設されてコンデンサ7及びラジエータ8に冷却風を流通させる軸流型の送風機(クーリングファン)であり、この送風機9(以下、ファン9と呼ぶ。)は、ラジエータ8からファン9に至る空気通路10を構成するファンシュラウド(ファンケーシング)11を介して車両(ラジエータ8)に固定されている。
【0032】
また、コンデンサ7の下方側には、コンデンサ7を迂回させて冷却風(空気)をラジエータ8側に向けて流通させるコンデンサバイパス通路12が形成されており、本実施形態では、このコンデンサバイパス通路12は常に開いている。
【0033】
なお、13はラジエータ8を車両に固定するためのブラケット(ラジエータサポート)であり、14はエンジンルーム1の下方側を覆うアンダーカバーである。
【0034】
次に、本実施形態の特徴を述べる。
【0035】
車両停止時やアイドリング運転時のごとく、コンデンサ7(開口部3)に向けて流通する空気の速度が所定速度以下のときに冷却風量の低下を防止すべくファン9を稼働させると、ファン9の上流側であるコンデンサ7の前面側(開口部3側)の気圧が、ファン9の下流側であるラジエータの後面側(エンジン2側)の気圧より低くなり、ラジエータ8を通過した熱風の一部がコンデンサ7の前面側に向けて再循環(逆流)する。
【0036】
しかし、コンデンサバイパス通路12が常に開いているので、再循環した熱風の多くは、コンデンサ7を通過することなく、コンデンサ7より通風抵抗の小さいコンデンサバイパス通路12に流れ込んでラジエータ8側に還流するため、コンデンサ7の前面側に再循環した熱風によりコンデンサ7の温度が上昇することを防止できる。
【0037】
一方、コンデンサバイパス通路12を設けているので、コンデンサ7を通過する冷却風量は、コンデンサバイパス通路12を設けないものに比べて(約10%〜20%程度)低下するものの、前述のごとく、コンデンサ7の表面温度が(約5℃〜15℃程度)低下するので、コンデンサ7の冷却能力は(約10%〜20%程度)増大する。
【0038】
したがって、本実施形態によれば、コンデンサ7周辺の隙間を埋めて熱風が再循環する空気通路を排除するといった手段を講じることなく、コンデンサバイパス通路12を設けると言った簡便な手段にて熱風の再循環に伴うコンデンサ7の冷却能力が低下することを防止できる。
【0039】
(第2実施形態)
第1実施形態では、ラジエータ8を通過した後の熱風は、一旦、コンデンサ7の前面側まで再循環した後、コンデンサバイパス通路12を流通してコンデンサ7を迂回したが、本実施形態は、図2に示すように、ブラケット13の下方側から再循環する熱風をコンデンサ7とラジエータ8との間の空間に導くことにより、コンデンサ7の前面側まで熱風を再循環させることなく、コンデンサ7を迂回させて熱風をラジエータ8側に流通させるようにコンデンサバイパス通路12を設定したものである。
【0040】
これにより、第1実施形態の同様に、ラジエータ8を通過した熱風がコンデンサ7を通過することを防止できるので、コンデンサ7の表面温度が上昇してしまうことを防止できる。したがって、簡便な手段にて熱風の再循環に伴うコンデンサ7の冷却能力が低下することを防止できる。
【0041】
(第3実施形態)
第2実施形態では、ラジエータ8を通過した熱風をコンデンサ7とラジエータ8との間の空間に導いてコンデンサ7を迂回させて空気を流通させるコンデンサバイパス通路12が常に開いていたが、本実施形態は、図3、4に示すように、コンデンサ7とラジエータ8との間の空間15の周縁部を開閉して、空間15内外を流通する空気流れを制御する開閉ドア(開閉手段)16を設けたものである。なお、開閉ドア16の作動は、電子制御装置(図示せず)により制御されている。
【0042】
そして、車両停止時やアイドリング運転時のごとく、車両速度が所定速度以下のとき(開口部3に向けて流通する空気の速度が所定速度以下のとき)には、図3に示すように、開閉ドア16を開いてラジエータ8を通過した熱風を空間15に導いてコンデンサ7を迂回させて熱風を流通させる。
【0043】
一方、車両速度が所定速度より大きいとき又は登坂時のごとく、エンジン2の負荷が大きくエンジン2の発熱量が大きいときには、図4に示すように開閉ドア16を閉じて開口部3及びコンデンサ7を通過した冷却風がラジエータ8を迂回して流通することを防止する。
【0044】
これにより、車両停止時やアイドリング運転時には、熱風の再循環によるコンデンサ7の冷却能力低下を防止し、これに対し、上記のごとくエンジン2の負荷が大きくエンジン2の発熱量が大きいときには、ラジエータ8を迂回する冷却風の発生を防止してラジエータ8の冷却能力を増大させることができる。
【0045】
なお、図4に示すように開閉ドア16が閉じているときは、走行風圧(開口部3に向けて流通する空気の速度)が大きいので、ラジエータ8を通過した熱風がコンデンサ7側に向けて再循環することはなく、熱風の再循環によるコンデンサ7の冷却能力の低下は殆どない。
【0046】
(第4実施形態)
本実施形態は、図5に示すように、ファンシュラウド(ファンケーシング)11に連通路11aを形成することにより、連通路11aをコンデンサバイパス通路12として機能させて、熱風をコンデンサ7の前面側まで再循環させることなく、コンデンサ7及びラジエータ8を迂回させてファン9側に還流させるようにしたものである。
【0047】
これにより、車両停止時やアイドリング運転時等においては、ラジエータ8を通過してファン9から吹き出された熱風は、コンデンサ7及びラジエータ8側まで再循環(逆流)することなく、ファン9近傍にて循環(シュートサーキット)するので、簡便な手段にて熱風の再循環によるコンデンサ7の冷却能力の低下を防止できる。
【0048】
また、連通路11aからエンジンルーム1内(ファン9の下流側)の空気(熱)がファン9に吸入されるので、ファン9の下流側の気圧が上昇することを抑制できるので、コンデンサ7の前面側とファン9の下流側との気圧差を小さくすることができ、ラジエータ8通過後の熱風及びエンジン2により加熱された雰囲気がコンデンサ7の前面側に再循環してしまうことを確実に防止できる。
【0049】
(第5実施形態)
本実施形態は、図6に示すように、第4実施形態(図5参照)において、ファン9から吹き出される熱風を下方側からエンジンルーム1外に排出するダクト17を設けたものである。
【0050】
これにより、ラジエータ8を通過して加熱された熱風を確実にエンジンルーム1外に放出することができるので、ラジエータ8を通過して加熱された熱風によりコンデンサ7の冷却能力が低下することを防止できる。
【0051】
また、第4実施形態と同様に、コンデンサ7の前面側とファン9の下流側との気圧差を小さくすることができるので、エンジン2により加熱された雰囲気がコンデンサ7の前面側に再循環してしまうことを確実に防止できる。
【0052】
(第6実施形態)
本実施形態は、図7に示すように、ファン9を車両幅方向に延びる上下2個のクロスフローファン(横流ファン)9a、9bに変更するとともに、下側のクロスフローファン9bから吹き出される熱風を下方側からエンジンルーム1外に排出するダクト17a、上側のクロスフローファン9aから吹き出される熱風をエンジンルーム1上方側(ボンネット6)側に排出する排出ダクト17bを設け、かつ、連通路11aを各クロスフローファン9a、9bの近傍に形成したものである。
【0053】
次に、本実施形態の特徴を述べる。
【0054】
再循環する熱風は、前述のごとく、コンデンサ7の前面側とファン9の下流側との気圧差によって発生するものであるが、コンデンサ7の前面全域に渡って発生するものではなく、一般的に、フロントバンパー4の内面に沿って熱風が流通するため、このフロントバンパー4周辺部に対応するコンデンサ7の表面部位に熱風が回り込み易い。
【0055】
このため、フロントバンパー4周辺部に対応するコンデンサ7の表面部位にて比較的大きな気圧差が生じると、この大きな気圧差(負圧)を有する部位に熱風が流れ込むため、この部位にて大きく冷却能力が低下する。
【0056】
これに対して、本実施形態では、クロスフローファンを9a、9bを使用しているので、クロスフローファン9a、9bの長手方向(軸方向)に渡って吸入負圧を略均一化することができるので、軸流型ファンにて冷却風を流通させる場合に比べて、コンデンサ7の前面側における車両幅方向の気圧(負圧)分布を均一化することができる。
【0057】
このため、特定の部位(例えばフロントバンパー4に対応する部位)における負圧が他の部位に比べて過度に大きくなることを防止できるので、多くの熱風が流れ込むことを防止できる。逆に、その他の部位における負圧が過度に小さくなることを防止できるので、エンジンルーム1外の新気(冷えた空気)を吸入することができる。したがって、コンデンサ7の冷却能力を向上させることができる。(第7実施形態)
本実施形態は、第1実施形態に係る冷却装置において、図8に示すように、コンデンサ7から流出する液相冷媒を冷却し、冷媒の過冷却度を高めるサブクーラ7aをコンデンサ7の下方側に設けたものである。
【0058】
なお、当然ながら、第2〜6実施形態に係る冷却装置においてサブクーラ7aを設けてもよい。
【0059】
(第8実施形態)
第1〜7実施形態では、コンデンサバイパス通路12又は連通路11aによりコンデンサ7を迂回させて熱風を流通させることによりコンデンサ7の表面温度上昇を防止したが、本実施形態は、図9に示すように、コンデンサ7を迂回させて空気を流通させるコンデンサバイパス通路12又は連通路11aを廃止するとともに、ラジエータ8の下方側に、ラジエータ8を迂回させて空気を流通させるラジエータバイパス通路18を設けたものである。
【0060】
次に、本実施形態の特徴を述べる。
【0061】
図11は、従来の技術に係る冷却装置において、車両停止時やアイドリング運転時のごとく、コンデンサ7(開口部3)に向けて流通する空気の速度が所定速度以下のときのコンデンサ前面における温度分布を示す試験結果である。
【0062】
ファン9の下流側に存在する熱風は、図10の矢印に示すように、ボンネット6に沿って流れた後、エンジンルーム1の後方側からエンジンルーム1外に流出するもの、エンジン2の下方側からエンジンルーム1外に流出するもの、及びブラケット13とアンダーカバー14との隙間からラジエータ7の前面側に再循環するもの等がある。
【0063】
そこで、発明者等はファン9の下流側に存在する熱風流れを詳細に試験検討としたところ、車両停止時やアイドリング運転時のごとく、コンデンサ7(開口部3)に向けて流通する空気の速度が所定速度以下のときには、ブラケット13とアンダーカバー14との隙間からラジエータ7の前面側に再循環する熱風が多く、かつ、図11に示すように、コンデンサ7の下方側ほどその表面温度が高いことを発見した。
【0064】
したがって、本実施形態のごとく、ラジエータ8の下方側にラジエータバイパス通路18を設ければ、コンデンサ7に再循環する空気の多くは、図9に示すように、ラジエータバイパス通路18を通過した温度の低い(ラジエータ8により加熱されていない)空気となる。このため、コンデンサ7にファン9の下流側に存在する空気が再循環するものの、その再循環する空気の温度を低くすることができるので、コンデンサ7の下方側表面が上昇することを防止できる。
【0065】
つまり、本実施形態では、ラジエータ8の下方側にラジエータバイパス通路18を設けると言った簡便な手段にて熱風の再循環に伴うコンデンサ7の冷却能力が低下することを防止できる。
【0066】
また、ラジエータバイパス通路18の存在によりコンデンサ7より下流側の通風抵抗が小さくなるので、コンデンサ7を通過する風量を増大させることができる。
【0067】
因みに、発明者等は試験検討により、本実施形態に係る冷却装置の効果として、コンデンサ7を通過する風量は5%〜10%増大し、コンデンサ7の下方側温度は5℃〜10℃低下し、コンデンサ7の冷却能力は10%〜15%上昇したことを確認している。
【0068】
(第9実施形態)
本実施形態は、図12に示すように、ラジエータバイパス通路18を開閉してラジエータバイパス通路18の連通状態を制御する開閉ドア(開閉手段)19を設けるとともに、車両の走行状態(エンジン2の負荷)に応じて開閉ドア19を開閉作動させるものである。なお、開閉ドア19の作動は、電子制御装置(図示せず)により制御されている。
【0069】
具体的には、車両停止時やアイドリング運転時(コンデンサ7(開口部3)に向けて流通する空気の速度が所定速度以下のとき)のごとく、エンジン2の負荷が小さいときには、ラジエータバイパス通路18を開いてコンデンサ7の前面側への熱風の再循環を防止し、登坂時や高速走行時のごとく、エンジン2の負荷が大きいときには、ラジエータバイパス通路18を閉じてラジエータ8を通過する風量を増大させる。
【0070】
(第10実施形態)
本実施形態は、図13〜15に示すように、第9実施形態に係る車両冷却装置対して、ファン9の下側から吹き出される熱風を下方側からエンジンルーム1外に排出するダクト17c、ファン9の上側から吹き出される熱風をエンジンルーム1上方側(ボンネット6)側に排出する排出ダクト17dを設け、かつ、排出ダクト17d連通状態を制御する開閉ドア(開閉手段)を設けたものである。なお、開閉ドア19、20の作動は、電子制御装置(図示せず)により制御されている。
【0071】
次に、本実施形態の作動(電子制御装置が行う開閉ドア19、20の制御)を図16に示すフローチャートに基づいて述べる。
【0072】
エンジン2が始動すると、エンジンルーム1外の空気(外気)の温度を検出する外気温度センサ(図示せず)の検出値を読み込み、外気温度(外気温度センサの検出値)が所定温度(本実施形態では5℃)以上であるか否か判定し(S100)、外気温度が5℃以上であるときには、車両速度が所定速度(本実施形態では20km/h)以上であるか否かを判定する(S110)。
【0073】
そして、車両速度が所定速度以上のときには、図15に示すように、開閉ドア19を閉じて(ラジエータバイパス通路18を閉じて)ラジエータ8を通過する風量を増大させ、かつ、開閉ドア20を開いて(排出ダクト17dを開いて)冷却風の排出性を増大させて(冷却装置の通風抵抗を小さくして)冷却風量の増大を図る(S120)。
【0074】
一方、車両速度が所定速度未満のときには、エンジン2の冷却水の温度を検出する水温センサ(図示せず)の検出値を読み込み、冷却水温度(水温センサの検出値)が所定温度(本実施形態では90℃)以上であるか否かを判定し(S130)、冷却水温度が所定温度以上であるときには、エンジン2の負荷が大きくエンジン2の発熱量が増大しているものと見なして、図15に示すように、開閉ドア19を閉じて(ラジエータバイパス通路18を閉じて)ラジエータ8を通過する風量を増大させ、かつ、開閉ドア20を開いて(排出ダクト17dを開いて)冷却風の排出性を増大させて(冷却装置の通風抵抗を小さくして)冷却風量の増大を図る(S120)。
【0075】
また、冷却水温度が所定温度未満であるときには、図14に示すように、開閉ドア19を開いて(ラジエータバイパス通路18を開いて)コンデンサ7の前面側への熱風の再循環を防止しつつ、開閉ドア20を開いて(排出ダクト17dを開いて)冷却風の排出性を増大させて(冷却装置の通風抵抗を小さくして)冷却風量の増大を図る(S130)。
【0076】
また、S100にて外気温度が所定温度未満であると判定されたときには、冷却水温度が所定温度(本実施形態では90℃)以上であるか否かを判定し(S140)、冷却水温度が所定温度以上であるときには、図14に示すように、開閉ドア19を開いて(ラジエータバイパス通路18を開いて)コンデンサ7の前面側への熱風の再循環を防止しつつ、開閉ドア20を開いて(排出ダクト17dを開いて)冷却風の排出性を増大させて(冷却装置の通風抵抗を小さくして)冷却風量の増大を図る(S130)。
【0077】
一方、冷却水温度が所定温度未満であるときには、図13に示すように、開閉ドア19を開いて(ラジエータバイパス通路18を開いて)コンデンサ7の前面側への熱風の再循環を防止しつつ、開閉ドア20を閉じて(排出ダクト17dを閉じて)ラジエータ8の冷却能力が増大することを抑制してエンジン2が過度に冷えることを防止する(S140)。
【0078】
(第11実施形態)
本実施形態は、第10実施形態に係る車両用冷却装置(図13〜15参照)において、図17に示すように、ファン9を車両幅方向に延びる上下2個のクロスフローファン(横流ファン)9a、9bに変更したものである。
【0079】
なお、軸流型のファンでは空気がファンの軸方向に流通するので、軸流型のファン9aから吹き出される空気が、その下流直下にある排出ダクト17c、17dに衝突して通風抵抗の増大(送風量の低下)を招くのに対して、クロスフローファンでは、空入空気の流通方向を転向させて下流側に吹き出すので、クロスフローファン9a、9bから吹き出す空気が排出ダクト17c、17dに対して略垂直に衝突することを防止でき、通風抵抗の増大(送風量の低下)を防止できる。
【0080】
(第12実施形態)
本実施形態は、第10実施形態に係る冷却装置において、図18に示すように、コンデンサ7から流出する液相冷媒を冷却し、冷媒の過冷却度を高めるサブクーラ7aをコンデンサ7の下方側に設けたものである。
【0081】
なお、当然ながら、第8、9、11実施形態に係る冷却装置においてサブクーラ7aを設けてもよい。
【0082】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、冷凍サイクル中を循環する冷媒を冷却する熱交換器としてコンデンサ(凝縮器)を採用したが、二酸化炭素を冷媒とする超臨界冷凍サイクルにおいては、冷媒が凝縮しないので、この場合にはコンデンサに代えて放熱器(ガスクーラ)となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態に係る冷却装置の模式図であり、(b)はA部拡大図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る冷却装置の模式図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る冷却装置において開閉ドアを開いた状態を示す模式図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る冷却装置において開閉ドアを閉じた状態を示す模式図である。
【図5】本発明の第4実施形態に係る冷却装置の模式図である。
【図6】本発明の第5実施形態に係る冷却装置の模式図である。
【図7】本発明の第6実施形態に係る冷却装置の模式図である。
【図8】本発明の第7実施形態に係る冷却装置の模式図である。
【図9】(a)は本発明の第8実施形態に係る冷却装置の模式図であり、(b)はA部拡大図である。
【図10】従来の技術に係る冷却装置における空気流れを示す模式図である。
【図11】従来の技術に係る冷却装置におけるコンデンサの表面温度分布を示すグラフである。
【図12】本発明の第9実施形態に係る冷却装置の模式図である。
【図13】本発明の第10実施形態に係る冷却装置の作動状態を示す模式図である。
【図14】本発明の第10実施形態に係る冷却装置の作動状態を示す模式図である。
【図15】本発明の第10実施形態に係る冷却装置の作動状態を示す模式図である。
【図16】本発明の第10実施形態に係る冷却装置の作動を示すフローチャートである。
【図17】本発明の第11実施形態に係る冷却装置の模式図である。
【図18】本発明の第11実施形態に係る冷却装置の模式図である。
【符号の説明】
1…エンジンルーム、2…エンジン、7…コンデンサ、8…ラジエータ、
9…ファン、11…ファンシュラウド(ファンケーシング)、
12…バイパス通路。

Claims (4)

  1. 車両走行用の水冷エンジン(2)が搭載されたエンジンルーム(1)のうち前記水冷エンジン(2)より前方側に配設され、冷凍サイクル内を循環する冷媒を冷却する放熱器(7)と、
    前記放熱器(7)より空気流れ下流側に配設され、前記水冷エンジン(1)内を循環する冷却水を冷却するラジエータ(8)と、
    前記ラジエータ(8)より空気流れ下流側に配設され、前記放熱器(7)及び前記ラジエータ(8)に冷却風を流通させる送風機(9、9a、9b)と、
    記放熱器(7)を迂回させて空気を流通させるバイパス通路(12)と、
    前記バイパス通路(12)を開閉する開閉手段(16)とを有し、
    前記バイパス通路(12)は、前記送風機(9、9a、9b)の空気流れ下流側と前記ラジエータ(8)の空気流れ上流側との間を連通するように形成され、前記送風機(9、9a、9b)下流側の空気を前記ラジエータ(8)の上流側へ再循環させることで、前記送風機(9、9a、9b)下流側の空気を前記放熱器(7)を迂回させて流通させるようになっており、
    前記開閉手段(16)は、前記放熱器(7)に向けて流通する空気の速度が所定速度以下のときに前記バイパス通路(12)を開き、前記放熱器(7)に向けて流通する空気の速度が所定速度より大きいときに前記バイパス通路(12)を閉じることを特徴とする冷却装置。
  2. 前記開閉手段(16)の作動を制御する電子制御装置を有し、
    前記電子制御装置は、車両速度が所定速度以下のときに前記バイパス通路(12)を開くように前記開閉手段(16)を作動させ、車両速度が所定速度より大きいときに前記バイパス通路(12)を閉じるように前記開閉手段(16)を作動させることを特徴とする請求項1に記載の冷却装置。
  3. 前記バイパス通路(12)は、前記ラジエータ(8)の左右方向の側方に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の冷却装置。
  4. 前記開閉手段は、回転式の板状の開閉ドア(16)にて構成され、
    前記開閉ドア(16)が前記バイパス通路(12)を開いたときには、前記バイパス通路(12)を前記開閉ドア(16)の板面に沿って空気が流通するようになっていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の冷却装置。
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