JP4285682B2 - シリカを充填したエラストマーコンパウンド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリカを充填したハロゲン化ブチルエラストマー、特にブロモブチルエラストマー(BIIR)に関する。
【0002】
【背景技術】
カーボンブラックおよびシリカなどの補強充填剤は、エラストマーコンパウンドの強度および疲労特性を大きく改善することが知られている。また、化学的相互作用が、エラストマーと充填剤との間で起こることも知られている。例えば、カーボンブラックと、ポリブタジエン(BR)およびスチレンブタジエンコポリマー(SBR)などの高度不飽和エラストマーとの良好な相互作用は、これらのコポリマーに存在する炭素-炭素二重結合の数が多いために起こる。ブチルエラストマーは、BRまたはSBRで見出される炭素-炭素二重結合のほんの10分の1またはそれ以下の炭素-炭素二重結合しか有し得ず、そしてブチルエラストマーから作成されるコンパウンドはカーボンブラックとの相互作用が劣ることが知られている。例えば、カーボンブラックと、BRおよびブチルエラストマーの組み合わせとを混合して調製したコンパウンドは、BRの領域をもたらし、その領域はカーボンブラックの大部分を含み、そしてブチルの領域は非常に少量のカーボンブラックしか含まない。また、ブチルコンパウンドは摩耗抵抗性が劣ることも知られている。
【0003】
カナダ特許出願第2293149号明細書(特許文献1)は、シリカを含むハロブチルエラストマーと特定のシランとを併用することによって、大きく改善された特性を有する、充填されたブチルエラストマー組成物を作ることが可能であることを示している。これらのシランは、分散剤としておよびハロゲン化ブチルエラストマー(ハロブチルエラストマー)と充填剤との結合剤として作用する。しかしながら、シランを使用することの不利益の1つとして、製造中における、およびこの方法によって作られる製品の使用中における潜在的な、アルコールの放出がある。その上、シランは、得られる製品のコストを顕著に上げる。
【0004】
同時係属のカナダ特許出願第2339080号明細書(特許文献2)は、少なくとも1つの塩基性窒素含有基および少なくとも1つのヒドロキシル基を有する特定の有機化合物を含む、充填されたハロブチルエラストマーコンパウンドが、ハロブチルエラストマーとカーボンブラックおよびミネラル充填剤との相互作用を高め、引張り強さおよび磨耗(DIN)などが改善されたコンパウンド特性がもたらされると開示している。
【0005】
【特許文献1】
カナダ特許出願第2293149号明細書
【特許文献2】
カナダ特許出願第2339080号明細書
【0006】
【発明の概要】
本発明は、ハロブチルエラストマーと、少なくとも1種のミネラル充填剤と、少なくとも1種のシラザン化合物とを含む組成物の調製方法を提供する。また本発明は、ハロブチルエラストマーと、少なくとも1種のミネラル充填剤と、少なくとも1種のシラザン化合物とを含む、充填されたハロブチルエラストマー組成物も提供する。特に、アルコールの放出を伴わず、そして当業者に既知の方法と比べてコストが顕著に低減されている、充填された組成物を作る方法を提供する。
【0007】
驚くべきことに、シラザン化合物が、ハロブチルエラストマーとミネラル充填剤との相互作用を高めて、引張り強さおよび磨耗(DIN)などのコンパウンド特性の改善がもたらされることが見出された。シラザン化合物は、分散させ、そしてシリカとハロゲン化エラストマーとを結合すると考えられる。
【0008】
従って、本発明の別の態様では、少なくとも1種のシラザン化合物の存在下でハロブチルエラストマーと少なくとも1種のミネラル充填剤とを混合する工程、および得られる充填されたハロブチルエラストマーを硬化させる工程を包含する方法を提供する。得られる組成物は、改善された特性を有し、本発明の他の態様を形成する。
【0009】
その上、シラザン化合物と、少なくとも1つのヒドロキシル基および塩基性アミンを含む官能基を有する添加剤との混合が、ハロブチルエラストマーとミネラル充填剤との相互作用を高め、引張り強さおよび摩耗抵抗(DIN)などのコンパウンド特性の改善がもたらされることを見出した。
【0010】
従って、本発明の他の態様では、少なくとも1種のシラザン化合物と、少なくとも1つのヒドロキシル基および塩基性アミンを含む官能基を有する少なくとも1種の添加剤の存在下で、ハロブチルエラストマーと少なくとも1種のミネラル充填剤とを混合する工程、および、得られる充填されたハロブチルエラストマーを硬化させる工程、とを包含する方法が提供される。得られる組成物は、改善された特性を有し、本発明の他の態様を形成する。
【0011】
ミネラル充填剤と、シラザン化合物またはシラザン化合物とヒドロキシルおよびアミンを有する添加剤との混合物、とが混ぜられるハロブチルエラストマーは、別のエラストマーまたはエラストマーコンパウンドとの混合物であってもよい。ハロブチルエラストマーは、このような混合物の5%以上を構成し得る。好ましくは、ハロブチルエラストマーは、このような混合物の少なくとも10%を構成し得る。場合によっては、混合物を使用せずに単独のエラストマーとしてハロブチルエラストマーを使用するのが好ましい。しかしながら、混合物が使用される場合は、他のエラストマーは、例えば天然ゴム、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンまたはポリクロロプレンあるいはこれらのエラストマーの1種またはそれ以上を含むエラストマーコンパウンドであり得る。
【0012】
充填されたハロブチルエラストマーを硬化させて、例えば摩耗抵抗性、転がり抵抗性および牽引力などの特性が改善された生産物を得ることができる。硬化は、硫黄を用いるのが効果的である。硫黄の好ましい量は、ゴム100重量部当り0.3〜2.0重量部である。活性化剤、例えば酸化亜鉛などを、0.5〜2重量部の範囲の量で使用してもよい。他の成分、例えばステアリン酸、酸化防止剤、または促進剤を、硬化させる前にエラストマーに加えてもよい。硫黄硬化が、既知方法の中で効果的である。例えば、Chapman & Hall出版(1995年)「Rubber Technology」第3版の、第2章「The compounding and Vulcanization of rubber」参照、この開示をこの手順の管轄に関して参照して本明細書に導入した。
【0013】
ハロブチルエラストマーを硬化させることで知られる他の硬化剤を使用してもよい。たくさんの化合物、例えばビスジエン親和物(dieneophiles)(例えばm-フェニル-ビス-マレイミド(maleinimide)、HVA2)、フェノール樹脂、アミン、アミノ酸、過酸化物、酸化亜鉛および類似物などが、ハロブチルエラストマーを硬化させることで知られている。前述の硬化剤の組み合わせを使用することもできる。
【0014】
本発明のミネラル充填ハロブチルエラストマーを、硫黄を用いて硬化させる前に、他のエラストマーまたはエラストマーコンパウンドと混ぜることもできる。以下に記載する。
【0015】
【発明の詳細な記載】
本明細書で使用する「ハロブチルエラストマー(類)」の語句は、塩素化または臭素化ブチルエラストマーをいう。臭素化ブチルエラストマーが好ましく、一例として、ブロモブチルエラストマーなどに関して、本発明を説明する。しかしながら、本発明は塩素化ブチルエラストマーの使用にも適用されると考えるべきである。
【0016】
従って、本発明の実施に適したハロブチルエラストマーとして、限定するものではないが、臭素化ブチルエラストマーが含まれる。このようなエラストマーは、ブチルゴムの臭素化によって得ることができる{イソオレフィン(通常イソブチレン)と通常C4〜C6共役ジオレフィンのコモノマー(好ましくはイソプレン)とのコポリマー−(臭素化イソブテン-イソプレン-コポリマー・BIIR)である}。しかしながら、共役ジオレフィン以外のコモノマーを使用することもでき、C1-C4-アルキル置換スチレンなどアルキル置換ビニル芳香族コモノマーでできたものも言及される。市販されているこのようなエラストマーの例として、コモノマーがp-メチルスチレンである臭素化イソブチレンメチルスチレンコポリマー(BIMS)がある。
【0017】
臭素化ブチルエラストマーは、典型的には、ジオレフィン(好ましくはイソプレン)に由来する繰り返し単位0.1〜10重量%の範囲、イソオレフィン(好ましくはイソブチレン)に由来する繰り返し単位90〜99.9重量%の範囲(ポリマーの炭化水素含有量に基づく)、および臭素0.1〜9重量%の範囲(ブロモブチルポリマーに基づく)を含む。典型的なブロモブチルポリマーは、DIN53523(125℃でML1+8)によるムーニー粘度で示される分子量を25〜60の範囲で有する。
【0018】
本発明の使用において、臭素化ブチルエラストマーは、好ましくは、イソプレンに由来する繰り返し単位0.5〜5重量%の範囲(ポリマーの炭化水素含有量に基づく)、およびイソブチレンに由来する繰り返し単位95〜99.5重量%の範囲(ポリマーの炭化水素含有量に基づく)、および臭素0.2〜3重量%、好ましくは0.75〜2.3重量%の範囲(臭素化ブチルポリマーに基づく)を含む。
【0019】
安定剤を臭素化ブチルエラストマーに加えてもよい。適した安定剤として、ステアリン酸カルシウムおよびエポキシ化大豆油が含まれ、好ましくは臭素化ブチルゴム100重量部当り0.5〜5重量部(phr)の範囲の量で使用される。
【0020】
適した臭素化ブチルエラストマーとして、Bayer社で販売されているBayer Bromobutyl( 登録商標 )2030、Bayer Bromobutyl( 登録商標 )2040(BB2040)、およびBayer Bromobutyl( 登録商標 )X2が含まれる。Bayer BB2040は、ムーニー粘度(@125℃でML1+8)39±4、2.0±0.3重量%の臭素含有量、および1モル当りおよそ500,000gの分子量を有する。
【0021】
本発明の方法で使用される臭素化ブチルエラストマーは、臭素化ブチルゴムと共役ジオレフィンモノマーに基づくポリマーとのグラフトコポリマーであってもよい。同発明者らの同時係属カナダ特許出願第2279085号明細書は、固体の臭素化ブチルゴムと、共役ジオレフィンモノマー(幾つかのC-S-(S)n-C結合(式中nは1〜7の整数である)を含む)に基づく固体のポリマーとの混合によるグラフトコポリマーの調製方法を対象とし、この混合は、50℃以上の温度で、グラフト化が引き起こされるのに十分な時間で行なわれる。この出願の開示は参照して本明細書に導入されている。グラフトコポリマーのブロモブチルエラストマーは上記の何れであってもよい。グラフトコポリマー中に導入できる共役ジオレフィンは、一般に、構造式:
【化1】
[式中、Rは水素原子または炭素数1〜8を含むアルキル基であり、R1およびR11は同一であっても異なってもよく、水素原子または炭素数1〜4を含むアルキル基からなる群から選択される。]を有する。適した共役ジオレフィンの、幾つかの代表的な限定するものではない例として、1,3-ブタジエン、イソプレン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、4-ブチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン、2,3-ジブチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ペンタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエンなどが含まれる。炭素数4〜8を含む共役ジオレフィンモノマーが好ましく、1,3-ブタジエンおよびイソプレンが特に好ましい。
【0022】
共役ジエンモノマーに基づくポリマーは、ホモポリマー、または2種もしくはそれ以上の共役ジエンモノマーのコポリマー、またはビニル芳香族モノマーを有するコポリマーであってよい。
【0023】
必要に応じて使用することができるビニル芳香族モノマーは、共役ジオレフィンモノマーを用いてコポリマー化が可能なように選択される。一般に、有機アルカリ金属開始剤を用いてポリマー化することが知られている任意のビニル芳香族モノマーを使用することができる。このようなビニル芳香族モノマーは、通常、炭素数8〜20、好ましくは炭素数8〜14を含む。こうしてコポリマー化することができるビニル芳香族モノマーの幾つかの例として、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレンなど種々のアルキルスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン、4-ビニルトルエンなどが含まれる。スチレンが、1,3-ブタジエン単独とのコポリマー化または1,3-ブタジエンおよびイソプレンの両方とのターポリマー化に好ましい。
【0024】
ハロゲン化ブチルエラストマーを単独で使用してもよく、下記の他のエラストマーと組み合わせて使用してもよい:
BR −ポリブタジエン
ABR−ブタジエン/C1-C4アルキルアクリレートコポリマー
CR −ポリクロロプレン
IR −ポリイソプレン
SBR −スチレン含有量1〜60、好ましくは20〜50重量%のスチレン/ブタジエンコポリマー
IIR −イソブチレン/イソプレンコポリマー
NBR −アクリロニトリル含有量5〜60、好ましくは10〜40重量%のブタジエン/アクリロニトリルコポリマー
HNBR−部分的に水素化されたまたは完全に水素化されたNBR
EPDM−エチレン/プロピレン/ジエンコポリマー
【0025】
充填剤はミネラル粒子で構成され、例としてシリカ、シリケート、クレー(ベントナイトなど)、石膏、アルミナ、二酸化チタン、タルクなどが含まれ、同じくこれらの混合物も含まれる。
【0026】
更なる例は:
− 例えばシリケート溶液の沈降またはハロゲン化ケイ素の火炎加水分解によって調製され、比表面積5〜1000、好ましくは20〜400m2/g(BET比表面積)を有し、一次粒径10〜400nmを有する、高度に分散されたシリカ;シリカは、必要に応じてAl、Mg、Ca、Ba、Zn、ZrおよびTiなどの他の金属酸化物を含む混合酸化物として存在してもよい;
− アルミニウムシリケートおよびアルカリ土類金属シリケートなどの合成シリケート
− BET比表面積20〜400m2/gおよび一次粒径10〜400nmを有する、マグネシウムシリケートまたはカルシウムシリケート;
− カオリンおよび他の天然型シリカなどの天然シリケート;
− ガラス繊維およびガラス繊維生産物(マット材料、押出物)またはガラスミクロスフェア;
− 酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび酸化アルミニウムなどの金属酸化物;
− 炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムおよび炭酸亜鉛などの金属炭酸塩;
− 例えば水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物;
またはそれらの組み合わせ。
【0027】
これらのミネラル粒子は表面にヒドロキシル基を有し、親水性および疎油性(oleophobic)となっている。このため充填剤粒子とブチルエラストマーとの間の良好な相互作用の達成が困難となる。幾つかの目的において、好ましいミネラルはシリカであり、特にナトリウムシリケートの二酸化炭素沈降によって調製されたシリカである。
【0028】
本発明の使用に適した乾式非晶質シリカ粒子は、1〜100ミクロン、好ましくは10〜50ミクロン、最も好ましくは10〜25ミクロンの範囲の平均凝集粒径を有する。5ミクロン以下または50ミクロン以上の大きさのものが凝集粒子の体積の10%未満であるのが好ましい。さらに適した非晶質乾式シリカは、DIN(ドイツ工業規格)66131に基づいて測定されるBET表面積で50〜450平方メートル/gであり、DIN53601に基づいて測定されるDBP吸油量でシリカ100g当り150〜400であり、DIN ISO787/11に基づいて測定される乾燥減量で0〜10重量%である。適したシリカ充填剤は、PPG Industries Inc.のHiSil( 登録商標 )210、HiSil( 登録商標 )233およびHiSil( 登録商標 )243の商品名で市販されている。また、Bayer AGのVulkasil( 登録商標 )SおよびVulkasil( 登録商標 )Nも適している。
【0029】
これらのミネラル充填剤を、下記のような既知の非ミネラル充填剤と組み合わせて使用することができる:
− カーボンブラック;ここで使用されるカーボンブラックは、ランプブラック、ファーネスブラックまたはガスブラック法によって調製され、20〜200m2/gのBET比表面積を有する、例えばSAF、ISAF、HAF、FEFまたはGPFカーボンブラック;または
− ゴムゲル、特にポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーおよびポリクロロプレンに基づくもの。
【0030】
非ミネラル充填剤は、普通は、本発明のハロブチルエラストマー組成物において充填剤として使用されないが、幾つかの実施態様では、40phrまでの量で存在してもよい。ミネラル充填剤が充填剤総量当り少なくとも55重量%を構成するのが好ましい。本発明のハロブチルエラストマー組成物を別のエラストマー組成物とブレンドする場合、他の組成物はミネラルおよび/または非ミネラル充填剤を含んでもよい。
【0031】
シラザン化合物は、1またはそれ以上のシラザン基、例えばジシラザン類を有し得る。有機シラザン化合物が好ましい。例として、限定するものではないが、ヘキサメチルジシラザン、ヘプタメチルジシラザン、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、1,3-ビス(クロロメチル)テトラメチルジシラザン、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、および1,3-ジフェニルテトラメチルジシラザンが含まれる。
【0032】
ハロブチルエラストマー、充填剤および有機シラザンの混合物の物理的性質を高める添加剤の例として、タンパク質、アスパラギン酸、6-アミノ-カプロン酸、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンが含まれる。好ましくは、ヒドロキシルおよびアミンを有する添加剤は、第一級アルコール基と、メチレン架橋によって隔てられたアミン基とを有し得、枝分かれしていてもよい。このような化合物は、一般式
【化2】
HO−A−NH2
[式中、AはC1〜C20アルキレン基を表し、直鎖状であっても枝分かれしていてもよい。]
を有する。
【0033】
より好ましくは、2種の官能基の間のメチレン基の数は1〜4の範囲であり得る。好ましい添加剤の例として、モノエタノールアミンおよびN,N-ジメチルアミノアルコールが含まれる。
【0034】
ハロブチルエラストマー中に導入される充填剤の量は、広範な範囲で変えることができる。充填剤の典型的な量は、エラストマー100重量部当り20〜250重量部、好ましくは30〜100重量部、より好ましくは40〜80重量部の範囲である。シラザン化合物の量は、典型的には、エラストマー100重量部当り0.5〜10重量部であり、好ましくはエラストマー100重量部当り1〜6重量部、より好ましくはエラストマー100重量部当り2〜5重量部である。シラザン化合物と併せて使用されるヒドロキシルおよびアミンを有する添加剤の量は、典型的には、エラストマー100重量部当り0.5〜10重量部、好ましくはエラストマー100重量部当り1〜3重量部である。
【0035】
さらには、加工油が、エラストマー100重量部当り40重量部まで、好ましくは5〜20重量部で存在してもよい。さらに、潤滑剤、例えばステアリン酸などの脂肪酸が、3重量部まで、より好ましくは2重量部までの量で存在してもよい。
【0036】
ハロブチルエラストマー(類)、充填剤(類)、およびシラザン(類)もしくはシラザンとヒドロキシルおよびアミンを有する添加剤との混合物を、好適には25〜200℃の範囲の温度で併せて混合する。混合段階の1つの温度が60℃以上であるのが好ましく、90〜150℃の範囲の温度であるのが特に好ましい。普通は、混合時間は1時間を超えない;2〜30分の範囲の時間で通常は十分である。混合は二本ロールミルミキサーで適切に行なわれ、エラストマー中への充填剤の良好な分散が提供される。混合は、また、バンベリーミキサーでも行なうことができ、またハーク(Haake)またはブラベンダー(Brabender)小型密閉式ミキサーで行なうこともできる。押出機もまた良好な混合を提供し、短い混合時間が可能となるというさらなる利点も有する。2またはそれ以上の段階で混合を行なうことも可能である。さらに、混合を異なる装置で行なうこともでき、例えばある段階を密閉式ミキサーで、そして他の段階を押出機で行なうこともできる。
【0037】
充填剤とハロブチルエラストマーとの間の高められた相互作用は、充填されたエラストマーの特性の改善をもたらす。これらの改善された特性には、より高い引張り強さ、より高い摩耗抵抗性、より低い浸透性およびより良好な動的特性が含まれる。これらは、充填されたエラストマーを、限定するものではないが、タイヤのトレッドおよびタイヤの側壁、タイヤのインナーライナー、タンクのライニング、ホース、ローラー、コンベヤベルト、硬化性ブラダー、ガスマスク、医薬品封入物およびガスケットなどを含む多くの用途に、特に適するようにする。
【0038】
本発明の好ましい実施態様では、ブロモブチルエラストマー、シリカ粒子、シラザン化合物またはシラザンとヒドロキシルおよびアミンを有する添加剤との混合物、および必要に応じて加工油増量剤を、二本ロールミルで、25℃の通常のミル温度で混合する。次いで、混合したコンパウンドを二本ロールミル中に置き、60℃以上の温度で混合する。混合温度はあまり高くないのが好ましく、より好ましくは150℃を超えないのが好ましい。高温では望ましくないような遠方での硬化が進行し、次の処理が妨げられ得るからである。これらの4成分の、150℃を超えない温度での混合の生産物は、良好な応力/歪特性を有するコンパウンドであり、硬化剤の添加を伴って、暖かなミルでさらに迅速に処理することができる。
【0039】
本発明の充填されたハロブチルゴム組成物、特に充填されたブロモブチルゴム組成物は、多くの使用が見出されるが、タイヤのトレッドの組成物での使用について特に言及する。タイヤトレッドの組成物の重要な特徴は、低い転がり抵抗、良好な牽引力(特に湿潤時で)、および摩擦に抵抗するための良好な摩耗抵抗を有するものである。本発明の組成物は、これらの望ましい特性を示す。従って、牽引力の指標は0℃でのtanδであり、0℃でのtanδが高いことは良好な牽引力を有することに対応する。転がり抵抗の指標は60℃でのtanδであり、60℃でのtanδが低いことは転がり抵抗が低いことに対応する。転がり抵抗はタイヤの前進運動の抵抗の尺度であり、転がり抵抗が低いと、燃料の消費が低減されることが期待される。60℃での損失弾性率の値が低いことも、転がり抵抗性が低いことの指標である。下記の実施例で示すように、本発明の組成物は、0℃で高いtanδを、60℃で低いtanδを、そして60℃で低い損失弾性率を示す。
【0040】
本発明を、以下の実施例でさらに説明する。
【0041】
【実施例】
試験の記載:
摩耗抵抗性:
DIN53-516(60グリットのエメリー研磨紙)
【0042】
動的性質試験:
動的試験(0℃および60℃でのtanδ、60℃での損失弾性率)を、GABOを使用して行なった。GABOは、加硫したエラストマー材料の特性を特徴付けるための動的機器分析機である。動的機械的特性は、通常、0℃でのtanδの値が最も高く得られる最も良好な牽引力を伴う牽引力の測定によって与えられる。60℃でのtanδの値が低いこと、特に60℃で損失弾性率が低いことは、転がり抵抗性が低いことの指標である。RPA測定は、100℃、周波数6cpmでの操作による、Alpha Technologies RPA 2000を使用して得られた。歪運動曲線(strain sweeps)を、0.1、0.2、0.5、1、2、5、10、20、50および90°の歪で測定した。
【0043】
硬化レオメトリー:
1°アーク、1.7HzでのASTM D52-89 MDR2000Eレオメーター。
【0044】
成分の記載および一般的な混合手順:
Hi-Sil( 登録商標 )233−シリカ、PPGの製品。
Sunpar( 登録商標 )2280−Sun Oil製造のパラフィン系油。
Maglite( 登録商標 )D−CP Hall製造の酸化マグネシウム。
【0045】
臭素化ブチルエラストマー(全事例について、市販のBayer( 登録商標 )ブロモブチル2030)、シリカ、油、およびシラザンまたはシラザンとヒドロキシルおよびアミンを有する添加剤との混合物を、下記何れかで混合した:
i) 40℃にセットしたMokonを使用して熱的に安定化させた、77rpm操作の接線バンベリー密閉式ミキサー。コンパウンドを総時間6分で混合した。最終ゴム温度は140℃〜180℃であった。
ii) 24および32rpmで作動するロールを有する6''×12''二本ロールミル。ミルロールを25℃にセットし、総導入時間は10分であった。混合したコンパウンドを、ロール温度110℃でさらに10分間「加熱処理」した。最終ゴム温度は125℃であった。次いで、25℃のミルを用いて冷却したサンプルに、硬化剤を加えた。
【0046】
実施例1
ハロゲン化ブチルエラストマー/シリカコンパウンド中へのシラザンの導入の影響を、ヘキサメチルジシラザン(HMDZ)をシラザン化合物として導入した幾つかのコンパウンドの配合により調べた。比較として、シラザンを含まないハロゲン化ブチルエラストマー/シリカコンパウンドも対照コンパウンドとして調製した。
【0047】
臭素化イソプレンイソブチレンゴム(BIIR)を、上記の混合条件下で、シラザン、およびゴム100重量部当り60重量部(phr)のシリカ充填剤(HiSil( 登録商標 )233)と、接線バンベリーミキサー中で混合した。各コンパウンドに、同一の硬化剤成分(ステアリン酸1phr、硫黄0.5phr、およびZnO1.5phr)を冷却ミルで加えた。コンパウンドを、170℃でtc(90)+10分(DIN磨耗試験用)または170℃でtc (90)+5分の何れかで硬化させて、試験した。表1および2に、製造組成、HMDZを含むコンパウンドと充填剤結合剤を含まないコンパウンドについての物理的性質データを示す。
【0048】
表1のデータは、HMDZの添加が臭素化ブチルエラストマー中の珪質充填剤の結合および分散を助力する効果をはっきり示している。M300/M100比率を、エラストマーコンパウンドでの充填剤の補強の度合いの相対測定として広く使用した(比率の値が高い場合、補強の度合いが高い。)。HMDZを含まないコンパウンド1dのM300/M100(この中で実施例1dを下記実施例において対照コンパウンドとして使用する。)は1.97であるが、HMDZを含むコンパウンドのM300/M100値は3.76〜4.13の範囲であった(図1参照)。RPA測定より得られた低い歪での複素弾性率(G*、MPa)を、エラストマーコンパウンドの充填剤補強の度合いの相対測定として広く使用した(G*の値が低い場合、充填剤の分散の度合いが高い)。表1のデータから、充填剤分散における有意な改善が、臭素化ブチルゴム/シリカコンパウンドへのHMDZの添加で得られることが明らかである。特に、対照コンパウンドにおいてG*値は2934MPaであったが、HMDZを含むコンパウンドではこの値は365〜631MPaの範囲であった(図2参照)。
【0049】
重要なことは、表1のデータは、充填剤の分散と結合の改善が、得られるコンパウンドの加工性全体に影響を及ぼさないことも示していることである。表1および図3に示すムーニースコーチのデータの試験から、上記臭素化ブチルゴム/シリカコンパウンドへのHMDZの導入がスコーチ安全性を有意に改善する(すなわち、t03時間が増加する)ことがわかる。
【0050】
タイヤのトレッドにおけるこれらのコンパウンドの性能に関して、0℃および60℃でのtanδの値、同じく60℃での損失弾性率(G''、MPa)の値を引用した。特に、0℃でのtanδの値が高いことは良好な牽引力を示すことであり、また60℃でのtanδの値が低いこと、60℃でのG''の値が低いことは、転がり抵抗が低いことを示すことである。表2に示すデータから、0℃でのtanδの値および60℃でのG''値におけるHMDZのプラスの効果がみられる。対照コンパウンドはtanδ(0℃)0.23、G''(60℃)3.33MPaであるのに対し、HMDZを含むコンパウンドは、tanδ(0℃)の値は0.49〜0.88の範囲であり、G''(60℃)の値は0.93〜1.98MPaの範囲である。
【0051】
実施例2
同時係属カナダ特許出願第2339080号明細書は、少なくとも1つのヒドロキシル基および塩基性アミン基を含む少なくとも1つの置換基を有する添加剤の、ハロゲン化ブチルエラストマーコンパウンド中でのシリカの分散および補強における利用性について説明している。ハロゲン化ブチルエラストマー/シリカコンパウンドへのHMDZの導入でみられるプラスの効果が与えられる、HMDZと、上記の型のヒドロキシルおよびアミンを有する添加剤との混合を試験した。この実施例で、HMDZとモノエタノールアミン(MEA)との混合物を、バンベリー密閉式ミキサーで調製されたハロゲン化ブチルエラストマー/シリカコンパウンドへ導入する効果を調べた。
【0052】
臭素化イソプレンイソブチレンゴム(BIIR)を、上記の混合条件で、添加剤、およびゴム100重量部当り60重量部(phr)のシリカ充填剤(HiSil( 登録商標 )233)と、接線バンベリーミキサー中で混合した。各コンパウンドに、同一の硬化剤成分(ステアリン酸1phr、硫黄0.5phr、およびZnO1.5phr)を冷却ミルで加えた。コンパウンドを、170℃でtc(90)+10分(DIN磨耗試験用)または170℃でtc(90)+5分の何れかで硬化させて、試験した。表3および4に、製造組成、HMDZ/MEAを含むコンパウンドとMEAのみを含むコンパウンドについての物理的性質データを示す。
【0053】
表3のデータは、HMDZおよびMEAの添加が、臭素化ブチルエラストマー中の充填剤の結合および分散を助力する効果をはっきり示している。対照コンパウンドのM300/M100の値は1.97であるが、HMDZとMEAを含むコンパウンドのM300/M100値は2.79〜4.30である(図4参照)。その上、充填剤の分散における有意な改善が、臭素化ブチルゴム/シリカコンパウンドへのHMDZおよびMEAの添加で得られた。特に、対照コンパウンドにおいて、G*値が2934MPaであったが、HMDZおよびMEAを含むコンパウンドでは、この値は304〜1609MPaの範囲であった(図5参照)。HMDZ2.9phrおよびMEA2.2phr、またはHMDZ2.9phrおよびMEA1.1phrを導入することは、MEAのみを含むコンパウンドでみられる改善を超えて、充填剤分散の度合いを改善することがわかる。
【0054】
表3のデータは、ハロゲン化ブチルエラストマー/シリカ/MEAコンパウンドへのHMDZの添加でM300/M100値が低くなり、DIN磨耗体積損失が増加することを示唆しているが、t03時間の増加から明らかであるスコーチ安全性の有意な改善に注目することは重要である。
【0055】
表4に示されるデータから、0℃でのtanδ値および60℃でのG''値におけるHMDZおよびMEAのプラスの効果がみられる。対照コンパウンドではtanδ(0℃)の値は0.23でありG''(60℃)の値は3.33MPaであるが、HMDZおよびMEAを含むコンパウンドはtanδ(0℃)の値は0.43〜0.85の範囲であり、G''(60℃)の値は1.10〜2.39MPaの範囲である。さらに、HMDZ2.9phrおよびMEA2.2phrを含むコンパウンドそしてHMDZ2.9phrおよびMEA1.1phrを含むコンパウンドは、tanδ(0℃)およびG''(60℃)の値が、MEAのみを含むハロゲン化ブチルエラストマー/シリカコンパウンドの値より優れている。
【0056】
実施例3
この実施例で、HMDZおよびモノエタノールアミン(MEA)の混合物を、6''×12''ミルで調製されたハロゲン化ブチルエラストマー/シリカコンパウンドへ導入する効果を調べた。
【0057】
臭素化イソプレンイソブチレンゴム(BIIR)を、上記の混合条件で、添加剤、およびゴム100重量部当り60重量部(phr)のシリカ充填剤(HiSil( 登録商標 )233)と、6''×12''ミル中で混合した。各コンパウンドに、同一の硬化剤成分(ステアリン酸1phr、硫黄0.5phr、およびZnO1.5phr)を冷却ミルで加えた。コンパウンドを、170℃でtc(90)+10分(DIN磨耗試験用)または170℃でtc(90)+5分の何れかで硬化させて、試験した。表5および6に、製造組成、HMDZ/MEAを含むコンパウンドとMEAのみを含むコンパウンドについての物理的性質データを示す。
【0058】
表5のデータは、HMDZおよびMEAの添加が、臭素化ブチルエラストマー中の充填剤の結合および分散を助力する効果をはっきり示している。対照コンパウンドのM300/M100の値は1.97であるが、HMDZとMEAを含むコンパウンドのM300/M100値は4.02〜6.00の範囲である(図6参照)。その上、充填剤の分散における有意な改善が、臭素化ブチルゴム/シリカコンパウンドへのHMDZおよびMEAの添加で得られた。特に、対照コンパウンドにおいて、G*値が2934MPaであったが、HMDZおよびMEAを含むコンパウンドでは、この値は256〜538MPaの範囲であった(図7参照)。MEAと併せたHMDZの導入が、MEAのみを含むコンパウンドでみられる改善を超えて、補強(M300/M100)および充填剤の分散(低い歪でのG*)の度合いを改善することが分かる。
【0059】
表5に示すデータは、対照コンパウンドおよびMEAのみを含むコンパウンドの両方と比べて、ハロゲン化ブチルエラストマー/シリカ/MEAコンパウンドへのHMDZの添加でDIN磨耗体積損失が低くなることも示唆している。
【0060】
表6に示すデータから、0℃でのtanδ値および60℃でのG''値におけるHMDZおよびMEAのプラスの効果がみられる。対照コンパウンドではtanδ(0℃)の値は0.23でありG''(60℃)の値は3.33MPaであるが、HMDZおよびMEAを含むコンパウンドはtanδ(0℃)の値は0.50〜0.86の範囲であり、G''(60℃)の値は0.69〜1.78 MPaの範囲である。さらに、HMDZおよびMEAの両方を含むコンパウンドは、tanδ(0℃)およびG''(60℃)の値が、MEAのみを含むハロゲン化ブチルエラストマー/シリカコンパウンドの値より優れている。
【0061】
実施例4
この実施例で、HMDZおよびN,N-ジメチルアミノエタノール(DMAE)の混合物を、バンベリーで調製されたハロゲン化ブチルエラストマー/シリカコンパウンドへ導入する効果を調べた。
【0062】
臭素化イソプレンイソブチレンゴム(BIIR)を、上記の混合条件で、添加剤、およびゴム100重量部当り60重量部(phr)のシリカ充填剤(HiSil( 登録商標 )233)と、接線バンベリーミキサー中で混合した。各コンパウンドに、同一の硬化剤成分(ステアリン酸1phr、硫黄0.5phr、およびZnO1.5phr)を冷却ミルで加えた。コンパウンドを、170℃でtc(90)+10分(DIN磨耗試験用)または170℃でtc(90)+5分の何れかで硬化させて、試験した。表7および8に、製造組成、HMDZ/DMAEを含むコンパウンドとDMAEのみを含むコンパウンドについての物理的性質データを示す。
【0063】
表7のデータは、HMDZおよびDMAEの添加が、臭素化ブチルエラストマー中の充填剤の結合および分散を助力する効果をはっきり示している。対照コンパウンドのM300/M100の値は1.97であるが、HMDZとDMAEを含むコンパウンドのM300/M100の値は2.93〜4.27の範囲である(図8参照)。その上、充填剤の分散における有意な改善が、臭素化ブチルゴム/シリカコンパウンドへのHMDZおよびDMAEの添加で得られた。特に、対照コンパウンドにおいて、G*値が2934MPaであったが、HMDZおよびDMAEを含むコンパウンドでは、この値は227〜1056MPaの範囲であった(図9参照)。HMDZ2.9phrおよびDMAE3.2phrまたはHMDZ2.9phrおよびDMAE1.6phrを導入することは、DMAEのみを含むコンパウンドでみられる改善を超えて、充填剤分散の度合いを改善することがわかる。
【0064】
表7のデータは、ハロゲン化ブチルエラストマー/シリカ/DMAEコンパウンドへのHMDZの添加でM300/M100値が低くなり、DIN磨耗体積損失が増加することを示唆しているが、これらのコンパウンドによるt03時間の増加から明らかであるスコーチ安全性の有意な改善に注目することは重要である。
【0065】
表8に示されるデータから、0℃でのtanδ値および60℃でのG''値におけるHMDZおよびDMAEのプラスの効果がみられる。対照コンパウンドではtanδ(0℃)の値は0.23でありG''(60℃)の値は3.33MPaであるが、HMDZおよびDMAEを含むコンパウンドはtanδ(0℃)の値は0.45〜0.82の範囲であり、G''(60℃)の値は0.48〜2.31MPaの範囲である。さらに、HMDZ2.9phrおよびDMAE3.2phrを含むコンパウンドまたはHMDZ2.9phrおよびDMAE1.6phrを含むコンパウンドは、tanδ(0℃)およびG''(60℃)の値が、DMAEのみを含むハロゲン化ブチルエラストマー/シリカコンパウンドの値より優れている。
【0066】
実施例5
この実施例で、HMDZおよびN,N-ジメチルアミノエタノール(DMAE)の混合物を、6''×12''ミルで調製されたハロゲン化ブチルエラストマー/シリカコンパウンドへ導入する効果を調べた。
【0067】
臭素化イソプレンイソブチレンゴム(BIIR)を、上記の混合条件で、添加剤、およびゴム100重量部当り60重量部(phr)のシリカ充填剤(HiSil( 登録商標 )233)と、6''×12''ミル中で混合した。各コンパウンドに、同一の硬化剤成分(ステアリン酸1phr、硫黄0.5phr、およびZnO1.5phr)を冷却ミルで加えた。コンパウンドを、170℃でtc(90)+10分(DIN磨耗試験用)または170℃でtc(90)+5分の何れかで硬化させて、試験した。表9および10に、製造組成、HMDZ/DMAEを含むコンパウンドとDMAEのみを含むコンパウンドについての物理的性質データを示す。
【0068】
表9のデータは、HMDZおよびDMAEの添加が、臭素化ブチルエラストマー中の充填剤の結合および分散を助力する効果をはっきり示している。対照コンパウンドのM300/M100の値は1.97であるが、HMDZとDMAEを含むコンパウンドのM300/M100値は4.41〜6.55の範囲である(図10参照)。その上、充填剤の分散における有意な改善が、臭素化ブチルゴム/シリカコンパウンドへのHMDZおよびDMAEの添加で得られた。特に、対照コンパウンドにおいて、G*値が2934MPaであったが、HMDZおよびDMAEを含むコンパウンドでは、この値は245〜742MPaの範囲であった(図11参照)。HMDZ2.9phrおよびDMAE3.2phrまたはHMDZ2.9phrおよびDMAE1.6phrを導入することは、DMAEのみを含むコンパウンドでみられる改善を超えて、補強(M300/M100)および充填剤の分散(低い歪でのG*)の度合いを改善することが分かる。
【0069】
表9に示すムーニースコーチのデータは、t03時間のプラスの影響(t03時間が増加することは加工性が改善されることを示す)が、ハロゲン化ブチルエラストマー/シリカ/DMAEコンパウンドへのHMDZの添加で得られることも説明している。
【0070】
表10に示すデータから、0℃でのtanδ値および60℃でのG''値におけるHMDZおよびDMAEのプラスの効果がみられる。対照コンパウンドではtanδ(0℃)の値は0.23でありG''(60℃)の値は3.33MPaであるが、HMDZおよびDMAEを含むコンパウンドはtanδ(0℃)の値は0.56〜0.86の範囲であり、G''(60℃)の値は0.42〜1.61MPaの範囲である。さらに、HMDZ2.9phrおよびDMAE3.2phrまたはHMDZ2.9phrおよびDMAE1.6phrを含むコンパウンドは、tanδ(0℃)およびG''(60℃)の値が、DMAEのみを含むハロゲン化ブチルエラストマー/シリカコンパウンドの値より優れている。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
【表6】
【0077】
【表7】
【0078】
【表8】
【0079】
【表9】
【0080】
【表10】
【図面の簡単な説明】
【図1】 HMDZを含むコンパウンドおよびHMDZを含まないコンパウンドの応力−歪のグラフである。
【図2】 HMDZを含むコンパウンドおよびHMDZを含まないコンパウンドの複素弾性率−歪のグラフである。
【図3】 ムーニースコーチのデータの試験結果を表すグラフである。
【図4】 MEAを含むコンパウンド、およびHMDZとMEAを含むコンパウンドの応力−歪のグラフである。
【図5】 MEAを含むコンパウンド、およびHMDZとMEAを含むコンパウンドの複素弾性率−歪のグラフである。
【図6】 MEAを含むコンパウンド、およびHMDZとMEAを含むコンパウンドの応力−歪のグラフである。
【図7】 MEAを含むコンパウンド、およびHMDZとMEAを含むコンパウンドの複素弾性率−歪のグラフである。
【図8】 DMAEを含むコンパウンド、およびHMDZとDMAEを含むコンパウンドの応力−歪のグラフである。
【図9】 DMAEを含むコンパウンド、およびHMDZとDMAEを含むコンパウンドの複素弾性率−歪のグラフである。
【図10】 DMAEを含むコンパウンド、およびHMDZとDMAEを含むコンパウンドの応力−歪のグラフである。
【図11】 DMAEを含むコンパウンド、およびHMDZとDMAEを含むコンパウンドの複素弾性率−歪のグラフである。
Claims (4)
- 少なくとも1種のハロブチルエラストマー、
少なくとも1種のミネラル充填剤、および
少なくとも1種のシラザン化合物と添加剤との混合物であって、該添加剤が少なくとも1つのヒドロキシル基と塩基性アミン基を含む少なくとも1つの官能基とを有するもの、
を混ぜる工程、および
得られる充填されたハロブチルエラストマーを硬化させる工程、
を包含し、
該シラザン化合物と併せて使用される該添加剤の量が、エラストマー100重量部当り0.5〜10重量部である、充填されたハロブチルエラストマーの製造方法。 - 少なくとも1種のハロブチルエラストマー、
少なくとも1種のミネラル充填剤、および
少なくとも1種のシラザン化合物と添加剤との混合物であって、該添加剤が少なくとも1つのヒドロキシル基と塩基性アミン基を含む少なくとも1つの官能基とを有するもの、
を含み、
該シラザン化合物と併せて使用される該添加剤の量が、エラストマー100重量部当り0.5〜10重量部である、充填されたハロブチルエラストマー組成物。 - 少なくとも1種のハロブチルエラストマー、
少なくとも1種のミネラル充填剤、および
少なくとも1種のシラザン化合物と添加剤との混合物であって、該添加剤が少なくとも1つのヒドロキシル基と塩基性アミン基を含む少なくとも1つの官能基とを有するもの、
を含み、
該シラザン化合物と併せて使用される該添加剤の量が、エラストマー100重量部当り0.5〜10重量部である、充填された硬化ハロブチルエラストマー組成物。 - 少なくとも1種のハロブチルエラストマー、
少なくとも1種のミネラル充填剤、および
少なくとも1種のシラザン化合物と添加剤との混合物であって、該添加剤が少なくとも1つのヒドロキシル基と塩基性アミン基を含む少なくとも1つの官能基とを有するもの、
を混ぜる工程、および
得られる充填されたハロブチルエラストマーを硬化させる工程、
を包含し、
該シラザン化合物と併せて使用される該添加剤の量が、エラストマー100重量部当り0.5〜10重量部である、充填された硬化ハロブチルエラストマー組成物の摩耗抵抗性を改善する方法。
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