JP4285374B2 - ヒートポンプ式給湯器 - Google Patents

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本発明は、低温側の熱を高温側に移動させる蒸気圧縮式冷凍サイクルのうち、冷媒を減圧膨張させながら膨張エネルギーを圧力エネルギーに変換して圧縮機の吸入圧を上昇させるエジェクタを有するエジェクタ式ヒートポンプサイクルを用いて大気から吸熱を行う給湯器に関するものであり、特に高圧側が冷媒の臨界圧力以上で運転される冷凍サイクルに適用される。
従来技術として、本出願人が先に出願した特許文献1に示す技術がある。これはエジェクタサイクルにおいて、気液分離器によって二酸化炭素(以下、COと略す)冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離する構成となっている。
特開2003−222419号公報
しかしながら、上記のような構成のエジェクタ式ヒートポンプサイクルを用いた給湯器において、高外気温度で沸き上げ温度が高い時のヒートポンプサイクルの運転は、外気温度(吸熱温度)によって蒸発圧力が上がり、吐出温度が下がるため、沸き上げ温度を確保するために高圧を上げる必要がある。給湯器での高圧側は機器の設計耐圧で制限があるため、高圧が限界となるとウォータポンプの流量を下げて沸き上げ温度を確保するため、加熱能力が減少してしまう。
一方、冷媒側は冷媒水熱交換器出口の温度が上がり、膨張損失エネルギーが大きくなるため、エジェクタによる昇圧が大きくなり、低圧系が超臨界圧力以上となる。このような状態では、図1中の太破線で示すようなサイクル状態となり、サイクルが設計意図に反して破綻する。つまり、吸熱が激減するため圧縮機の入力に対する出力(加熱能力)が極端に低下するという問題点がある。
例えば、外気温度がCO冷媒の臨界温度である31℃以上となり、冷媒空気熱交換器の入口冷媒温度もその31℃以上となると、気液分離器位置での圧力は臨界圧力以上となって運転することとなり、充分な加熱能力が得られない。
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みて成されたものであり、その目的は、気液分離器部分が冷媒の臨界圧力以上とならないように運転制御することで、冷凍サイクルを安定的に運転して給湯用水の加熱能力を確保することのできるヒートポンプ式給湯器を提供することにある。
本発明は上記目的を達成するために、請求項1ないし請求項2に記載の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、低温側の熱を高温側に移動させる蒸気圧縮式のヒートポンプサイクルを用いた給湯器であって、圧縮機(10)にて冷媒の臨界圧力以上まで圧縮された高温高圧の冷媒と給湯用水とを熱交換させて給湯用水を加熱する冷媒水熱交換器(20)と、低温低圧の冷媒を蒸発させる冷媒空気熱交換器(30)と、高圧冷媒を減圧膨張させるノズル(41)を有し、ノズル(41)から噴射する高い速度の冷媒流により冷媒空気熱交換器(30)にて蒸発した気相冷媒を吸引すると共に、膨張エネルギーを圧力エネルギーに変換して圧縮機(10)の吸入圧を上昇させるエジェクタ(40)と、エジェクタ(40)から流出した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して気相冷媒を圧縮機(10)の吸入側に供給し、液相冷媒を冷媒空気熱交換器(30)側に供給する気液分離器(50)と、ヒートポンプサイクルの状態を制御する制御手段(70)とを備えたヒートポンプ式給湯器において、
制御手段(70)は、気液分離器(50)位置での圧力が冷媒の臨界圧力以上であるか否かを判定し、臨界圧力以上であると判定される場合は最大目標沸き上げ温度(TpMAX)を低く可変することを特徴としている。
この請求項1に記載の発明によれば、最大目標沸き上げ温度(TpMAX)を低く可変(制限)することによりサイクル破綻することが防がれて必要な給湯用水の加熱能力を確保することができる。
また、請求項2に記載の発明では、冷媒の臨界圧力以上であるか否かの判定は、圧縮機(10)の吸入圧力、圧縮機(10)の吸入温度、冷媒空気熱交換器(30)の入口・出口圧力、冷媒空気熱交換器(30)の入口冷媒温度、外気温度、エジェクタ(40)の出口圧力、エジェクタ(40)の出口冷媒温度のいずれか、もしくは2つ以上の組み合わせによって行うことを特徴としている。
この請求項2に記載の発明によれば、これら低圧系の温度や圧力を単独、もしくは組み合わせてみることにより、気液分離器(50)位置での圧力が冷媒の臨界圧力以上であるか否かを判定することができる。ちなみに、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るヒートポンプ式給湯器の全体構成模式図である。本実施形態のヒートポンプ式給湯器は、超臨界ヒートポンプサイクルを用いて給湯用水を高温(本実施形態での最大目標沸き上げ温度は90℃)に加熱して貯湯しながら給湯を行うものである。
尚、超臨界ヒートポンプサイクルとは、高圧側の冷媒圧力が冷媒の臨界圧力以上となるヒートポンプサイクルを言い、例えば二酸化炭素・エチレン・エタン・酸化窒素などを冷媒とするヒートポンプサイクルである。ヒートポンプ式給湯器は大きく分けて、主に後述する冷凍サイクル機器が収納されたヒートポンプユニットと、主に貯湯タンク1が収納されたタンクユニットとよりなる。
また、ヒートポンプユニット内は、大きく分けてヒートポンプサイクルの冷媒回路と、給湯関係の給湯水加熱回路とで構成されている。まず冷媒回路は、冷媒を圧縮する圧縮機10と、給湯用水の加熱手段である冷媒水熱交換器20と、冷媒減圧手段であるエジェクタ40と、大気から吸熱するための冷媒空気熱交換器30とを図1に示すような冷媒配管経路で接続して構成され、冷媒として臨界温度の低いCOが封入されている。
尚、冷媒回路に接続されている60は、冷媒水熱交換器20から流出した高圧冷媒(エジェクタ40にて減圧される前の冷媒)と気液分離器50から流出して圧縮機10に吸入される低圧冷媒とを熱交換する内部熱交換器である。
圧縮機10は、内蔵する駆動モータと、吸引したガス冷媒を臨界圧力以上の高圧にまで昇圧して吐出する高圧圧縮部とで構成しており、これらが密閉容器内に収納されている。そして、装置全体の制御手段である制御装置70により通電制御される。尚、圧縮機10は冷媒水熱交換器20の加熱能力を大きくするときには圧縮機10の回転数を増大させて、圧縮機10から吐出する冷媒の流量を増大させ、一方、加熱能力を小さくするときには圧縮機10の回転数を低下させ、圧縮機10から吐出する冷媒の流量を減少させる。
冷媒水熱交換器20は、高圧圧縮部で昇圧された高温高圧のガス冷媒と給湯用水とを熱交換して給湯用水を加熱するもので、高圧冷媒通路に隣接して給湯水通路が設けられ、その高圧冷媒通路を流れる冷媒の流れ方向と給湯水通路を流れる給湯用水の流れ方向とが対向するように構成されている。
ちなみに、本実施形態では、冷媒としてCOを用いているので、冷媒水熱交換器20内の冷媒圧力は冷媒の臨界圧力以上となり、且つ、冷媒水熱交換器20内で冷媒が凝縮することなく、冷媒入口側から冷媒出口側に向かうほど冷媒温度が低下するような温度分布を有する。
冷媒空気熱交換器30は、屋外空気と液相冷媒とを熱交換させ、液相冷媒を蒸発させることにより屋外空気から吸熱する熱交換器である。また、外気ファン30aは、冷媒空気熱交換器30へ外気を供給する送風手段であり、制御装置70により通電制御される。エジェクタ40は冷媒を減圧膨張させて冷媒空気熱交換器30にて蒸発した気相冷媒を吸引すると共に、膨張エネルギーを圧力エネルギーに変換して圧縮機10の吸入圧を上昇させるものである。尚、エジェクタ40の詳細は、後述する。
気液分離器50は、エジェクタ40から流出した冷媒が流入すると共に、その流入した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して液冷媒を蓄える気液分離器であり、気液分離器50の気相冷媒流出口は圧縮機10の吸引側に接続され、液相冷媒流出口は冷媒空気熱交換器30の流入側に接続される。
ここで、エジェクタ40の構造について図2を用いて説明する。エジェクタ40は、流入する高圧冷媒の圧力エネルギーを速度エネルギーに変換して冷媒を減圧膨張させるノズル41、ノズル41から噴射する高い速度の冷媒流により冷媒空気熱交換器30にて蒸発した気相冷媒を吸引しながらノズル41から噴射する冷媒流と混合する混合部42、およびノズル41から噴射する冷媒と冷媒空気熱交換器30から吸引した冷媒とを混合させながら速度エネルギーを圧力エネルギーに変換して冷媒の圧力を昇圧させるディフューザ43などからなるものである。
尚、混合部42においては、ノズル41から噴射する冷媒流の運動量と、冷媒空気熱交換器30からエジェクタ40に吸引される冷媒流の運動量との和が保存されるように混合するので、混合部42においても冷媒の静圧が上昇する。一方、ディフューザ43においては、通路断面積を徐々に拡大することにより、冷媒の動圧を静圧に変換するので、エジェクタ40においては、混合部42およびディフューザ43の両者にて冷媒圧力を昇圧する。そこで、混合部42とディフューザ43とを総称して昇圧部と呼ぶ。
つまり、理想的なエジェクタ40においては、混合部42で2種類の冷媒流の、運動量の和が保存されるように冷媒圧力が増大し、ディフューザ43でエネルギーが保存されるように冷媒圧力が増大することが望ましい。ちなみに、ノズル41の周りには、ボディ44により形成された吸引室45が形成されており、冷媒空気熱交換器30から吸引された気相冷媒は、吸引室45を経由して混合部42に流れる。また、本実施形態のエジェクタ40には、絞り径(ノズル出口部径)を変更する可変絞り機構40aが一体的に設けられており、制御装置70により通電制御される。
給湯関係の給湯水加熱回路は、給湯用水の加熱手段である上記冷媒水熱交換器20の給湯水通路と、給湯用水を循環させるウォーターポンプ2と、給湯用水を貯留する貯湯タンク1とを環状に接続して構成される。ウォーターポンプ2は、図1に示すように、貯湯タンク1内の下部に設けられた低温水流出部から冷水を冷媒水熱交換器20の給湯水通路を通して貯湯タンク1の上部に設けられた高温水流入部から還流する様に水流を発生させる。また、このウォーターポンプ2は内蔵するモータの回転数に応じて流水量を調節することができ、制御装置70により通電制御される。
貯湯タンク1は、耐蝕性に優れた金属製(例えばステンレス製)で断熱構造を有し、高温の給湯用水を長時間にわたって保温することができる。貯湯タンク1に貯留された給湯用水は、出湯時に低温水混合手段である図示しない給湯混合弁で、貯湯タンク1上部の高温水流出部からの高温水と水道からの冷水とを混合して温度調節した後、主に台所や風呂などに給湯される。尚、給湯混合弁も制御装置70により通電制御される。
そして、制御装置70は、上述したヒートポンプサイクルの各冷凍機器を制御する制御手段であり、CPU・ROM・RAM・I/Oポートなどの機能を含んで構成され、それ自体は周知の構造を持つマイクロコンピュータを内蔵している。
尚、本ヒートポンプサイクルのセンサ群として、圧縮機10の吸入圧力・吸入温度を検出する吸入圧力センサ11・吸入温度センサ12、冷媒空気熱交換器30の入口圧力・出口圧力・入口冷媒温度を検出する冷媒空気熱交換器入口圧力センサ31・冷媒空気熱交換器出口圧力センサ32・冷媒空気熱交換器入口温度センサ33、外気温度を検出する外気温度センサ34、エジェクタ40の出口圧力・出口温度を検出するエジェクタ出口圧力センサ46・エジェクタ出口温度センサ47などがある。
これらセンサ群からのセンサ信号は、図示しない入力回路(A/D変換回路)によってA/D変換された後に、制御装置70に入力されるように構成されていると共に、制御装置70からはウォーターポンプ2・圧縮機10・外気ファン30a・可変絞り機構40aなどに制御出力を出すように構成されている。
次に、本発明の要部である制御装置70での制御概要を説明する。図3は本発明の一実施形態におけるヒートポンプ式給湯器制御のフローチャートであり、図4は本発明の一実施形態における最大沸き上げ温度変更のマップである。
本制御がスタートするとまず、ステップS1にて、気液分離器50位置での圧力(つまり低圧側)が冷媒の臨界圧力以上であるか否かを判定する。尚、本実施形態では外気温度にて判定する例で説明する。よって、より具体的には外気温度センサ34で検出される外気温度が所定値α(例えば、CO冷媒の臨界温度31℃に対して30℃)よりも大きいか否かを判定する。
そして、ステップS1での判定結果がNOで、気液分離器50位置での圧力が臨界圧力に満たないと判定されるときにはステップS2へと進み、通常制御として最大目標沸き上げ温度TpMAXを90℃に設定して給湯器の運転を行うものである。
しかし、ステップS1での判定結果がYESとなって、気液分離器50位置での圧力が臨界圧力以上であると判定されるときにはステップS3へと進み、図3のマップに従って最大目標沸き上げ温度TpMAXを低く可変して設定するものである。ちなみに図3の例では、外気温度が所定値β(例えば、外気温度の上限として50℃)まで上がったときの最大目標沸き上げ温度TpβMAXは70℃にまで下げて設定して給湯器の運転を行うようにしている。
次に、本実施形態での特徴と、その効果について述べる。制御装置70は、気液分離器50位置での圧力が冷媒の臨界圧力以上であるか否かを判定し、臨界圧力以上であると判定される場合は最大目標沸き上げ温度TpMAXを低く可変するようにしている。これによれば、最大目標沸き上げ温度(TpMAX)を低く可変(制限)することによりサイクル破綻することが防がれて、必要な給湯用水の加熱能力を確保することができる。
(第2実施形態)
冷媒の臨界圧力以上であるか否かの判定は外気温度に限らず、吸入圧力センサ11で検出される圧縮機10の吸入圧力、吸入温度センサ12で検出される圧縮機10の吸入温度、冷媒空気熱交換器入口圧力センサ31・冷媒空気熱交換器出口圧力センサ32で検出される冷媒空気熱交換器30の入口・出口圧力、冷媒空気熱交換器入口温度センサ33で検出される冷媒空気熱交換器30の入口冷媒温度、エジェクタ出口圧力センサ46で検出されるエジェクタ40の出口圧力、エジェクタ出口温度センサ47で検出されるエジェクタ40の出口冷媒温度のいずれかが所定値よりも大きいか否か、もしくは2つ以上の判定の組み合わせによって行っている。
これによれば、これら低圧系の温度や圧力を単独、もしくは組み合わせてみることにより、気液分離器50位置での圧力が冷媒の臨界圧力以上であるか否かを判定することができる。
本発明の実施形態に係るヒートポンプ式給湯器の全体構成模式図である。 本発明の実施形態に係るエジェクタ40の断面模式図である。 本発明の一実施形態におけるヒートポンプ式給湯器制御のフローチャートである。 本発明の一実施形態における最大沸き上げ温度変更のマップである。
符号の説明
10…圧縮機
20…冷媒水熱交換器
30…冷媒空気熱交換器
40…エジェクタ
41…ノズル
50…気液分離器
70…制御装置(制御手段)
TpMAX…最大目標沸き上げ温度

Claims (2)

  1. 低温側の熱を高温側に移動させる蒸気圧縮式のヒートポンプサイクルを用いた給湯器であって、
    圧縮機(10)にて冷媒の臨界圧力以上まで圧縮された高温高圧の冷媒と給湯用水とを熱交換させて給湯用水を加熱する冷媒水熱交換器(20)と、
    低温低圧の冷媒を蒸発させる冷媒空気熱交換器(30)と、
    高圧冷媒を減圧膨張させるノズル(41)を有し、前記ノズル(41)から噴射する高い速度の冷媒流により前記冷媒空気熱交換器(30)にて蒸発した気相冷媒を吸引すると共に、膨張エネルギーを圧力エネルギーに変換して前記圧縮機(10)の吸入圧を上昇させるエジェクタ(40)と、
    前記エジェクタ(40)から流出した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離して気相冷媒を前記圧縮機(10)の吸入側に供給し、液相冷媒を前記冷媒空気熱交換器(30)側に供給する気液分離器(50)と、
    ヒートポンプサイクルの状態を制御する制御手段(70)とを備えたヒートポンプ式給湯器において、
    前記制御手段(70)は、前記気液分離器(50)位置での圧力が冷媒の臨界圧力以上であるか否かを判定し、臨界圧力以上であると判定される場合は最大目標沸き上げ温度(TpMAX)を低く可変することを特徴とするヒートポンプ式給湯器。
  2. 冷媒の臨界圧力以上であるか否かの判定は、前記圧縮機(10)の吸入圧力、前記圧縮機(10)の吸入温度、前記冷媒空気熱交換器(30)の入口・出口圧力、前記冷媒空気熱交換器(30)の入口冷媒温度、外気温度、前記エジェクタ(40)の出口圧力、前記エジェクタ(40)の出口冷媒温度のいずれか、もしくは2つ以上の組み合わせによって行うことを特徴とする請求項1に記載のヒートポンプ式給湯器。
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