JP4283962B2 - スイッチギヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遮断器や断路器などの各種の開閉機器を収納して電源系統を構成するスイッチギヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
代表的なスイッチギヤの構成例を図8に示す。図8において、外周を軟鋼鉄で囲まれた容器1を隔壁2で前後に仕切り、前方の遮断器室1aには図示しない真空バルブが装着された遮断器3を収納し、また後方の母線室1bには遮断器3側の上下の主回路に合わせてそれぞれ同形の断路器4A、4Bを上下に設けている。断路器4A側には、支持硝子6に固定された母線5に接続され、隣接された盤への接続が行われる。また、断路器4B側には、電力ケーブル7aから受電されたケーブルヘッド7に接続されている。そして、これらの機器は、接続導体8で相互が接続されている。また、電源側と負荷側とを仕切っている隔壁2の貫通穴に主回路導体を絶縁層でモールドした絶縁スペーサ9を設け、相互の室1a、1bの仕切りと、主回路の接続が行われている。これらの室1a、1bには、絶縁媒体として例えばSFガスのような絶縁ガスが封入されている。
SFガスは、無色、無害、不活性などの特徴があり、大気圧のガス圧力で空気に比べて2〜3倍の絶縁耐力を有している。このように管理された絶縁ガスを封入したスイッチギヤにより、電力の安定した供給が行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような構成において、SF6ガスは高い絶縁耐力を有しているので、例えば特開昭60−210107号に開示されているように、スイッチギヤの縮小化が達成されている。しかしながら、SF6ガスは、地球温暖化防止京都会議(1997年12月)で温暖化に寄与するガスとされ、温暖化の効果が炭酸ガスの23000倍であり、大気に漏らしたり放出させることが規制された。
このためには、角型の容器1を接合させている鉄板相互の気密溶接部や、ケーブルヘッド7のガス/気中部分に用いられているOリングのガス漏れ検証などが重要となってくる。また、容器1の内部点検などのガス開放時には、開放する前に封入されているガスをガス回収機で回収する必要がある。これらは、従来方法の機器においても当然行われていたことであるが、さらに重要性が高まり万全の対応が必要となってくる。
これらのことから、 SF6ガスを使用しなければ前途の対応は不必要となるが、 SF6ガスに優る絶縁媒体がないのが現状である。例えば、空気を絶縁媒体にすれば絶縁耐力が劣るので、劣った割合で絶縁距離などを広げなければならず全体形状が大型化してしまう。また、一般の気中絶縁では、塵埃や湿潤の影響を受けるので、これらの汚損特性を考慮して沿面距離などを大きくしなければならなかった。これは、最近の趨勢である縮小化に逆行するものである。
【0004】
従来の空気を絶縁媒体とするスイッチギヤでは、SF6ガスに比べ絶縁耐力が劣るため縮小化することができない。本発明は、SF6ガスを使用しないで、SF6ガスと同程度の絶縁耐力を確保して全体形状を縮小化することができるスイッチギヤを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、遮断器や断路器などの各種の開閉装置を収納して電源系統を構成するスイッチギヤにおいて、空気を絶縁媒体とする不平等電界の気中ギャップを形成する導体と、前記導体が最短ギャップとなるこの導体部のそれぞれに設けられる絶縁層と、前記最短ギャップ間に直交して配置される絶縁バリアとを備え、前記絶縁層の厚さと前記絶縁バリアの厚さとの総和を前記最短ギャップ長の30〜50%とし、1気圧のSF ガス絶縁と同等以上の絶縁特性を得ることを特徴とする。
【0006】
発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明のスイッチギヤの構成は、図8に示す従来のスイッチギヤの構成とほぼ同じである。外周を軟鋼鉄で囲まれた容器1を隔壁2で前後に仕切り、前方の遮断器室1aには図示しない真空バルブが装着された遮断器3を収納し、また後方の母線室1bには遮断器3側の上下の主回路に合わせてそれぞれ同形の断路器4A、4Bを上下に設けている。断路器4A側には、支持硝子6に固定された母線5に接続され、隣接された盤への接続が行われる。また、断路器4B側には、電力ケーブル7aから受電されたケーブルヘッド7に接続されている。そして、これらの機器は、接続導体8で相互が接続されている。また、電源側と負荷側とを仕切っている隔壁2の貫通穴に主回路導体を絶縁層でモールドした絶縁スペーサ9を設け、相互の室1a、1bの仕切りと、主回路の接続が行われている。これらの室1a、1bには、絶縁媒体として空気が封入されている。図示していないが、少なくとも最短ギャップの導体部のそれぞれに絶縁層を設け、適用電圧が上昇すれば絶縁バリアを追加して配置して絶縁特性の大幅な上昇を図る絶縁構造である。
【0007】
図1及び図3は、上記の絶縁構造を適用した導体の配置例であり、気中複合絶縁の代表的な絶縁構造例である。三相分の主回路導体間、またはこの主回路導体と容器との間における、少なくとも最短のギャップLを構成する導体10a、10b間で、このそれぞれの導体の先端部に絶縁層11a、11bを設けている。図1ではさらに、定格電圧クラスによっては導体間10a、10bのほぼ中央位置に直交する絶縁バリア12を配置する。
ここで、導体10a、10bの先端部に設ける絶縁層11a、11bの絶縁厚さは、スイッチギヤの定格電圧によって定まっている雷インパルスフラッシュオーバー電圧に容易に絶縁破壊しない絶縁の厚さとし、さらに気中との分担電圧の均一化を図り、絶縁層11a、11b先端の電界強度が最低になるようなギャップ長と絶縁厚さにしている。
例えば、定格電圧22kVクラスでは、雷インパルスフラッシュオーバー電圧が125kVであることから、絶縁厚さt=2mm以上としている。これは、エポキシ樹脂の絶縁層の耐電圧が約30kV/mmであることから、それぞれの導体間の絶縁厚さの和が4mmで、ほぼ雷インパルス耐電圧の値と同様になる。また、さらに耐電圧を上昇させる絶縁バリア12を配置した場合も同様であるが、自立させるためトータルの絶縁厚さは絶縁層の耐電圧から求めた値よりも大きくなることがある。
【0008】
以下に、本発明の実施例について図面を用いて具体的に説明する。
1気圧のSF6ガス絶縁の絶縁特性と比較検討するために、スイッチギヤにおける気中複合絶縁の絶縁特性の実験を図1に示す導体構成を用いて行った。その実験結果の一例を図2に示す。
図1において、導体10a、10bは直径φ=10mmの半球棒であり、先端に絶縁厚さt=10mmのエポキシ樹脂の絶縁層11a、11bをモールドした。この導体10a、10b間のほぼ中央には絶縁バリア12を直交させて配置させた。この絶縁バリア12は、高さh=60mmと一定である。
ここで、絶縁層11a、11bの絶縁厚さtは、エポキシ樹脂の絶縁耐力が約30kV/mmであることから、例えばIEC規格の定格電圧52kVの雷インパルスフラッシュオーバー電圧250kVに耐えるものとして、裕度を考慮してt=10mmとした。また、絶縁バリア12の絶縁厚さについても、同様の考え方であると共に機械的に自立する厚さとして10mm程度とした。なお、これらの絶縁厚さは、後述する電界強度の特性からも求められている。
また、ギャップ長Lは、金属間の距離をあらわし、複合絶縁を構成する絶縁層間の距離ではない。これは、SF6ガス絶縁では、金属間ギャップで絶縁特性を求めることから、比較調査が直接できるようにするためである。以下の導体構成においても同様である。
【0009】
図2において、(a)は絶縁層11a、11bと絶縁バリア12を用いた複合絶縁の特性曲線、(b)は固体絶縁なしで導体10a、10bを単独で用いたSF6ガス絶縁の特性曲線、(c)は固体絶縁なしで気中絶縁の特性曲線である。
同図から、特性曲線(a)は、ギャップ長L=80mm以下の領域で、特性曲線(b)より高い絶縁特性が得られる。これは、気中複合絶縁がSF6ガス絶縁と同等以上の絶縁特性を有する条件である。このように、気中絶縁において、導体10a、10bに絶縁層11a、12bを設けて導体からの電子放出を抑制し、絶縁バリア12で電子をトラップさせれば高い絶縁特性が得られ、SF6ガス絶縁と同様の絶縁設計ができることになる。したがって、雷インパルスフラッシュオーバー電圧250kV以下の範囲で、絶縁層11a、11bと絶縁バリア12とギャップのそれぞれの電位分担が均一化され、SF6ガス絶縁と同等以上の絶縁特性が得られると言える。
雷インパルスフラッシュオーバー電圧250kVは、IEC規格で定格電圧52kVの耐電圧であるため、この電圧クラス以下において、絶縁層11a、11bと絶縁バリア12を用いた複合絶縁が適用できる。
【0010】
なお、気中絶縁の特性曲線(c)は、 SF6ガス絶縁の1/3程度の低いレベルであることがわかる。
これらの空気と固体絶縁の組み合わせによる複合絶縁構成によって、ほぼ1気圧のSF6ガスと同等以上の絶縁耐力を確保することができるため、空気を絶縁媒体にしたスイッチギヤよりも全体形状が小さいスイッチギヤを得ることができる。
次に、図3に示す導体構成を用いてスイッチギヤにおける気中複合絶縁の絶縁特性の実験を行い、その実験結果の一例を図4に示す。
図3において、導体13a、13bは直径12.5mmの半球棒であり、先端に絶縁厚さt=2mmのエポキシ樹脂の絶縁層14a、14bをフローコートした。
ここで、絶縁層14a、14bの絶縁厚さtは、エポキシ樹脂の絶縁耐力が約30kV/mmであることから、例えばJEC規格の定格電圧22kVの雷インパルス耐電圧125kVを耐えるものとしてt=4mmとした。
図4において、(a)は絶縁層14a、14bを用いた複合絶縁の特性曲線、(b)は固体絶縁なしで導体13a、13bを単独で用いたSF6ガス絶縁の特性曲線、(c)は固体絶縁なしで気中絶縁の特性曲線である。
【0011】
同図から、特性曲線(a)は、ギャップ長L=20mm以下の領域で、特性曲線(b)と同等の絶縁特性が得られる。これは、ギャップ長Lの狭い領域で気中複合絶縁がSF6ガス絶縁と同程度の絶縁特性を有する条件である。これは、前述の絶縁特性向上の効果で導体13a、13bに設けた絶縁層14a、14bの電子放出の抑制効果によるものと考えられる。これにより、気中複合絶縁の絶縁構成の最適化を図ればSF6ガスと同様の絶縁設計ができ、スイッチギヤの縮小化を図ることができることになる。なお、ギャップ長Lが広くなるにつれて、導体13a、13bや絶縁層14a、14bの電界強度が大きくなり、SF6ガス絶縁の絶縁特性との差が広がっている。つまり、ギャップ長Lが広くなると、絶縁層を設けない導体に比べて絶縁特性は上昇するものの、単なる絶縁層を設けた効果が生じるのみとなることがわかる。したがって、ギャップ長Lと絶縁厚さtの分担電圧の均一化によって、雷インパルスフラッシュオーバー電圧170kV以下の範囲ではSF6ガスの絶縁特性と同程度になると言える。雷インパルスフラッシュオーバー電圧170kVは、JEC規格から見れば定格電圧33kVの耐電圧となるため、この電圧クラス以下において、絶縁層14a、14bを用いた複合絶縁が適用できる。つまり、気中複合絶縁でSF6ガス絶縁と同程度の絶縁設計をすることができる。
【0012】
なお、気中絶縁の特性曲線(c)は、図2と同様にSF6ガス絶縁の1/3程度の低いレベルであることがわかる。
これらの空気と固体絶縁の組み合わせによる複合絶縁構成によって、ほぼ1気圧のSF6ガスと同等以上の絶縁耐力を確保することができるため、空気を絶縁媒体にしたスイッチギヤよりも全体形状が小さいスイッチギヤを得ることができる。
これら絶縁層11a、11b、14a、14bの絶縁厚さtと気中ギャップの電位分担から求まる電界強度の影響を求めたものを図5に示す。導体配置などは図3と同様であり、ギャップ長L=20mmとした。図5から、電界強度Eは、絶縁厚さtが約4mmのとき最も低くなるV字型の特性を示すことがわかる。これは、絶縁層11a、11b、14a、14bの絶縁厚さtが増加すれば電界強度は低下していくが、ある一定の絶縁厚さから気中ギャップLが狭くなりすぎて、逆に電界強度が上昇することがわかる。
これらのことから、最も電界強度が低くなるのは、t0/L=30%〜50%の範囲である。 ここでt0は絶縁厚さの総和であり、図1では対向する導体10a、10bのそれぞれの絶縁層11a、11bの厚さと絶縁バリア12の厚さを加算した大きさとなる。図3では、対向する導体13a、13bそれぞれの絶縁層14a、14bの厚さを加算した大きさとなる。またLはギャップ長である。
【0013】
この関係を図2及び図4の特性曲線から求めると、図2では絶縁層11a、11bと絶縁バリア12の絶縁厚さtがそれぞれ10mmであるので、 t=30mmとなり、電界強度が最も低下するギャップ長Lは60〜100mmとなる。図4では、絶縁層14a、14bの絶縁厚さtがそれぞれ2mmであるので、 t=4mmとなり、電界強度が最も低下するギャップ長Lは8〜14mmとなる。これらのギャップ長においては、雷インパルスフラッシュオーバー電圧が大きく上昇し、SF6ガスの絶縁特性と同等以上となる。
これより、スイッチギヤなどに用いられる代表的な直径φ=10mm程度の導体間では絶縁体の挿入によりギャップ部の電界強度がV字の特性となることが見出され、SF6ガスと同程度の絶縁設計を適用できることがわかった。なお、並行平板導体のような平等電界では、ギャップ間に絶縁体を設けると、ギャップ部の電界強度が絶縁厚さに比例して単一的に上昇するだけであって、上述のような特性は得られない。
次に、導体を設ける絶縁層の具体的な適用例を図6に示す。丸縁の導体15a、15b間の接続部では、ボルト16とナット17で締め付け固定されている。丸縁の導体15a、15bは比較的平等電界なので、突出したボルト先端16aが絶縁的に弱点部となる。このため、ボルト先端16aに合わせた絶縁キャップ18をネジに沿って取り付ければ、絶縁特性をSF6ガス絶縁と同程度以上に大きく上昇させることができる。絶縁キャップ18のトップの絶縁厚さは、図示していない対向する電極とのギャップ長の30%〜50%を占める適切な厚さに選ぶものとする。
【0014】
また、図7のような角縁の導体19a、19bの場合には、まず導体19a、19bに絶縁層20a、20bをエポキシ樹脂のフローコート絶縁により設け、ボルト16とナット17を一体で、例えば熱収縮チューブ21で覆えば同様の効果がある。熱収縮チューブ21の絶縁厚さは、図示していない対向する導体とのギャップ長の30%〜50%を占める適切な厚さに選ぶものとする。
これらのことから、気中ギャップにおいて、少なくとも最短ギャップを形成する導体表面に絶縁層を設け、またギャップが広い場合には絶縁バリアを追加した配置とした複合絶縁構成として、SF6ガス絶縁と同程度まで絶縁特性を上昇させることにより、 SF6ガス絶縁に準じた絶縁設計を適用して大幅な縮小化を図ることができる。
他の実施例として、スイッチギヤの容器を密閉して、窒素ガスを封入しても空気と同様の複合絶縁構成の効果が得られる。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、SF6ガスを用いなくても気中複合絶縁で同程度の絶縁設計ができるので、温暖化ガスを用いない環境に適合した縮小形のスイッチギヤを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における絶縁構造の導体の部分配置図。
【図2】[図1]の導体配置における絶縁特性図。
【図3】本発明の実施の形態における絶縁構造の導体の部分配置図。
【図4】[図3]の導体配置における絶縁特性図。
【図5】本発明の実施の形態における電界強度特性図。
【図6】本発明の実施の形態における導体接続部の部分断面図。
【図7】本発明の実施の形態における導体接続部の部分断面図。
【図8】スイッチギヤの構成を示す側面図。
【符号の説明】
1・・・容器
2・・・隔壁
3・・・遮断器
4A、4B・・・断路器
5・・・母線
6・・・支持硝子
7・・・ケーブルヘッド
7a・・・電力ケーブル
8・・・接続導体
9・・・絶縁スペーサ
10a、10b、13a、13b、15a、15b、19a、19b ・・・導体
11a、11b、14a、14b・・・絶縁層
12・・・絶縁バリア
18・・・絶縁キャップ
21・・・熱収縮チューブ

Claims (1)

  1. 遮断器や断路器などの各種の開閉装置を収納して電源系統を構成するスイッチギヤにおいて、
    空気を絶縁媒体とする不平等電界の気中ギャップを形成する導体と、
    前記導体が最短ギャップとなるこの導体部のそれぞれに設けられる絶縁層と、
    前記最短ギャップ間に直交して配置される絶縁バリアとを備え、
    前記絶縁層の厚さと前記絶縁バリアの厚さとの総和を前記最短ギャップ長の30〜50%とし、
    1気圧のSF ガス絶縁と同等以上の絶縁特性を得ることを特徴とするスイッチギヤ。
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