JP4283758B2 - 嚥下食基材およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、嚥下食基材に関し、詳しくは、冷凍、解凍を繰り返しても均質な状態を保つ嚥下食基材に関するものである。
年齢とともに咀嚼力が低下してくると、食物を飲み込む際の嚥下反射も鈍くなる。また、嚥下反射がスムーズに行われなくなると、所謂誤嚥を起こしてしまい、生命の危険につながる事態も生じ得る。高齢化社会といわれる今日では、嚥下反射の鈍化した嚥下障害者のために、スムーズな嚥下反射を促すことが可能で取扱いの容易な食品の開発が不可欠になっている。そして、そのような嚥下障害者用の食品として、タンパク質、糖質、脂質、ゲル化剤、ビタミン類、ミネラル類等を適当な割合で混合した組成物等が開発されている(特許文献1)。
特開2000−135070号公報
しかしながら、上記従来の嚥下障害者用の食品は、冷蔵したり、冷凍、解凍を繰り返したりすると不均質になってしまい、消化・吸収に悪影響を及ぼすばかりでなく、誤嚥を引き起こす虞れがあった。それゆえ、病院や介護施設で当該食品を使用する場合には、食事介助の度に、栄養のバランスやカロリー計算を行って新たに加工しなければならず、非常に面倒であった。その上、食べきれずに残した場合や使い切れなかった場合には廃棄せざるを得ず、きわめて不経済であった。
本発明の目的は、調理後に長期間に亘って保存可能で食事介助の負担を軽減できる食品を製造するための嚥下食基材を提供することにある。
かかる本発明の内、請求項1に記載の発明は、分子量が1×10以上の高分子成分を含まないデキストリンと、増粘多糖類とからなり、動的粘弾性tanδが0.5以上1.0未満の範囲内に調整されていることを特徴とする嚥下食基材である。なお、本発明の嚥下食基材は、そのまま食品として利用することも可能であるし、別の食品に添加する補助材としても利用することができる。
請求項2に記載の発明の構成は、マルトトリオヒドロラーゼを作用させた澱粉の糖化液をクロマトグラフィーで分画して得た非老化性デキストリンと、増粘多糖類とを混合してなる機能性の嚥下食基材にある。
請求項3に記載の発明の構成は、請求項1、または請求項2に記載された発明において、イソマルトオリゴ糖、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、DHA、EPAの内の少なくとも一種が添加されていることにある。
請求項4に記載の発明の構成は、請求項1〜3のいずれかに記載された発明において、排泄臭軽減物質を添加したことにある。
請求項5に記載の発明は、 請求項1に記載された嚥下食基材を製造するための製造方法であって、分子量が1×10以上の高分子成分を含まないデキストリンと、増粘多糖類とを混合し、動的粘弾性tanδを0.5以上1.0未満の範囲内に調整することを特徴とするものである。
請求項6に記載の発明は、請求項2に記載された嚥下食基材を製造するための製造方法であって、マルトトリオヒドロラーゼを作用させた澱粉の糖化液をクロマトグラフィーで分子量が1×10 以上の高分子成分を含まないように分画して得たデキストリンと、増粘多糖類とを混合することを特徴とするものである。
請求項1,2に係る嚥下食基材は、均質性が高いので、高齢者や嚥下障害者の食事に利用した場合に、誤嚥を起こす心配がない。また、冷凍、解凍を繰り返しても、高い均質性が保たれるため、病院・介護施設で食事を作った後に長期間に亘って保存でき、食事介助の負担を軽減することができる。また、使用し切れなかった場合や食べ残した場合に、保存した後に使用することが可能であるため、経済性および実用性に優れている。
請求項3に係る嚥下食基材は、デキストリンに添加された各種の物質により、整腸機能、皮膚や粘膜を正常に保つ機能、ストレスや病気に対する抵抗力を高める機能、抗酸化作用により生活習慣病や老化と関連した疾患を予防する機能、記憶力や学習機能を高める機能、高脂血症を低減する機能等の各種の機能を発現させることができる。
請求項4に係る嚥下食基材は、嚥下障害者の排泄物の悪臭を低減させることができるため、嚥下障害者の介護負担の軽減に寄与することができる。
一方、請求項5,6に係る嚥下食基材の製造方法によれば、均質性が高く高齢者や嚥下障害が利用しても誤嚥を起こさない嚥下食基材を非常に容易に、かつ、効率良く安価に製造することができる。加えて、嚥下食基材の主原料である非老化性デキストリンの製造の際に、副生成物としてマルトトリオースを安価に得ることができる。
本発明で使用する分子量が1×10以上の高分子成分を含まないデキストリン(以下、非老化性デキストリンという)は、澱粉の液化液に特定の酵素を作用させて分解した後、その分解液をイオン交換クロマトグラフィーで分画することによって得ることができる。なお、デキストリンの原料となる澱粉の種類は、特に限定されず、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉等の地上澱粉や、馬鈴薯澱粉・タピオカ澱粉等の地下澱粉等のいずれも使用することができる。
また、非老化性デキストリンを得る際に使用する澱粉の分解酵素としては、マルトトリオヒドロラーゼを好適に用いることができる。さらに、非老化性デキストリンを得る際には、澱粉の液化液にマルトトリオヒドロラーゼを作用させることにより、マルトトリオース含有量が25%ds(dry substance:固形分換算における百分率)以上48%ds未満の糖化液とする必要があり、マルトトリオース含有量を27%ds以上43%ds未満に調整するのが好ましい。
加えて、非老化性デキストリンを得る際には、澱粉の糖化液の分散性および酵素活性の見地から、液化液の澱粉濃度を25%以上35%未満に調整するとともに、pHを5以上8以下に調整するのが好ましい。なお、pHの調整は、液化液に消石灰を加えること等により行うことが好ましい。
さらに、非老化性デキストリンを得る際には、収率を高くするために、澱粉の液化液のDE(dextrose equivalent:ここでは、還元糖をデキストローストとして測定した場合における還元糖の固形分に対する比の値)を、3〜20の範囲に調整することが好ましく、5〜15の範囲に調整することがより好ましい。さらに、マルトトリオヒドロラーゼによる分解反応は、酵素活性を高めるために、45〜65℃に維持して行うのが好ましく、50〜60℃に維持して行うのがより好ましい。
分解酵素として使用するマルトトリオヒドロラーゼは、起源を問わずいずれのマルトトリオヒドロラーゼでも使用可能である。このようなマルトトリオヒドロラーゼとしては、天野エンザイム株式会社製の「AMT」酵素(600U/ml、Microbacterium起源)等を好適に使用することができる。なお、澱粉の液化液を酵素により分解する際に、マルトトリオヒドロラーゼとともにα−アミラーゼやプルラナーゼを併用することも可能である。かかるα−アミラーゼとしては、起源を問わずいずれのα−アミラーゼをも使用することができ、大和化成株式会社製の「クライスターゼT10S」(17,000JLU)等を好適に用いることができる。一方、プルラナーゼとしては、起源を問わずいずれのプルラナーゼをも使用することがで、天野エンザイム株式会社製の「アマノ」(900U/ml)等を好適に使用することができる。
また、マルトトリオヒドロラーゼの添加量は、反応温度、糖化時間によって適宜調整することができる。たとえば、反応温度55℃にて48時間に亘って糖化させる場合には、マルトトリオヒドロラーゼの添加量を1.0〜2.0U/gとするのが好ましく、反応温度55℃にて72時間に亘って糖化させるときには、0.5〜1.5U/gとするのが好ましい。
加えて、α−アミラーゼを併用する場合には、α−アミラーゼの添加量を0.3〜2.0U/gとするのが好ましく、プルラナーゼを併用する場合には、プルラナーゼの添加量を0.5〜1.0 U/gとするのが好ましい。
また、酵素で分解させた後の糖化液は、クロマトグラフィーによって非老化性デキストリン液画分を分画する必要がある。かかるクロマトグラフィーによる分画方法としては、イオン交換クロマトグラフィーを利用することができる。また、糖化液をクロマトグラフィーによって分画(以下、クロマト分画という)する際には、分画効率の見地から、活性炭濾過や、二床一混床方式等のイオン交換精製装置等によって糖化液を予め精製および濃縮して使用するのが好ましい。なお、糖化液を予め濃縮する場合には、濃縮液の固形分(マルトオリゴ糖)濃度を、40〜70%とするのが好ましい。
さらに、イオン交換クロマトグラフィーに使用するイオン交換樹脂としては、強酸性陽イオン交換樹脂を用いるのが好ましい。かかる強酸性陽イオン交換樹脂は、デキストリン成分(マルトオリゴ糖)と三糖類以下の糖類とを分画する作用を奏する。そのような強酸性陽イオン交換樹脂としては、アルカリ金属型強酸性陽イオン交換樹脂あるいはアルカリ土類金属型強酸性陽イオン交換樹脂のいずれをも使用することができるが、アルカリ金属型強酸性陽イオン交換樹脂を用いると好ましく、ナトリウム型強酸性陽イオン交換樹脂を用いると特に好ましい。なお、ナトリウム型強酸性陽イオン交換樹脂としては、三菱化成株式会社製の「ダイヤイオンFRK」シリーズや「ダイヤイオンユニビーズ」シリーズのナトリウム型強酸性陽イオン交換樹脂を好適に用いることができる。
一方、イオン交換クロマトグラフィーによってデキストリン液画分を分画する際には、カラムを通過させる糖化液の温度を40〜90℃とするのが好ましく、55〜75℃とすると特に好ましい。また、通過させる際の糖化液の速度は、SV(Space Velocity:1時間当たりに流す溶液の容量の樹脂容積に対する比)が0.01〜0.10の範囲となるように調整するのが好ましい。
上記の如き強酸性陽イオン交換樹脂を利用した工業的なクロマト分画の具体例としては、図1の如き強酸性陽イオン交換樹脂を充填した分離四塔からなるクロマトグラフィー装置によるクロマト分画を挙げることができる。かかるクロマトグラフィー装置によるクロマト分画においては、下記の四つの段階を順次反復することによって、原料である糖化液が非老化性デキストリン液画分と高純度マルトトリオース液画分とに分画される。
[第一段階]
充填装置内に澱粉液化液をマルトトリオヒドロラーゼで糖化した精製分離原料液を第一塔(1)から第二塔(2)、第三塔(3)を経て第四塔(4)の方へ循環させる。
[第二段階]
精製分離原料液を第三塔(3)に供給して当該区画を流下させるとともに、その間に、当該区画から流出する非老化性デキストリン溶液を系外に抜き出す。
[第三段階]
溶離水を第一塔(1)に供給して当該区画を流下させるとともに、その間に、当該区画から流出するマルトトリオース成分に富む溶液を系外に抜き出す。
[第四段階]
第一塔(1)に溶離水を供給して当該区画を流下させ、第一塔(1)の流出液を第二塔(2)へ流入させ、第二塔(2)の流出液を第三塔(3)へ流入させ、第三塔(3)から流出する非老化性デキストリン溶液を系外に抜き出す。
なお、上記の如く分画する際には、食品とする際の利便性の観点から、適度な粘度を発現させるために、非老化性デキストリン液のDE値が5〜10の範囲内になるように調整するのが好ましい。また、分画された非老化性デキストリン液は、長期貯蔵や食品への添加の際の利便性の観点から粉末化することが好ましい。また、非老化性デキストリン液は、スプレー乾燥等の方法によって、高湿度下でも流動性が良好な粉末にすることができる。
一方、上記したデキストリンに加える増粘多糖類としては、海草から抽出されたアルギン酸やカラギナン、種子から抽出したローカストビーンガム、発酵産物であるキサンタンガム、リンゴやレモン等の果物から抽出したペクチン等を挙げることができる。
また、上記した非老化性デキストリンには、必要に応じて、イソマルトオリゴ糖、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)の内の一種または二種以上を添加することができる。非老化性デキストリンにイソマルトオリゴ糖を添加した場合には、嚥下食基材は、整腸効果を奏するものとなる。また、非老化性デキストリンにビタミンAを添加した場合には、嚥下食基材は、皮膚や粘膜を正常に保つ効果を奏するものとなり、ビタミンCを添加した場合には、ストレスや病気に対する抵抗力を高める効果を奏するものとなり、ビタミンEを添加した場合には、抗酸化作用により生活習慣病や老化と関連した疾患を予防する効果を奏するものとなる。さらに、非老化性デキストリンにDHAを添加した場合には、嚥下食基材は、記憶力や学習機能を高める効果を奏するものとなり、EPAを添加した場合には、高脂血症を改善する効果を奏するものとなる。
また、上記した非老化性デキストリンには、必要に応じて、排泄臭軽減物質を添加することができる。そのように非老化性デキストリンに排泄臭軽減物質を添加した場合には、嚥下食基材は、排泄後の悪臭(アンモニア臭等)を低減させることができる。なお、かかる排泄臭軽減物質としては、マッシュルームからの抽出物であるシャンピニオンエキス等を挙げることができる。
加えて、本発明の嚥下食基材は、下式1で示される動的粘弾性tanδの値を0.5以上1.0未満の範囲に調整することが好ましく、0.7〜0.8の範囲内にあると特に好ましい。すなわち、呑み込まれた食品が咽頭をスムーズに通過するためには、適度に変形し易く食品と咽頭粘膜との摩擦が小さいことが必要であるが、嚥下食基材の動的粘弾性tanδの値を上記の如き範囲に調整することによって、食品を適度に変形し易くし食品と咽頭粘膜との摩擦を小さくすることが可能となるからである。なお、そのように動的粘弾性tanδの値が0.5以上1.0未満の範囲にある嚥下食基材を用いて食品を調整することにより、所謂“喉越し”が良好となり、美味しいとの食感を提供することが可能となる。
tanδ=G”/G’ (但し、G’=動的弾性率(堅さ)、G”=動的損失(柔らかさ))・・式1
加えて、本発明の嚥下食基材は、冷凍、解凍した後のtanδの値も0.5以上1.0未満であると好ましい。一般的な嚥下食基材は、冷凍、解凍した後には、tanδの値が大きく低下して食品の“喉越し”が悪くなってしまうが、そのようにtanδの値の低下率を抑制することによって、冷凍、解凍を繰り返した場合でも、良好な嚥下反射を促すとともに“喉越し”の良好な食品を提供することが可能となる。
以下、本発明の嚥下食基材の具体例を、実施例により詳細に説明する。
a.デキストリンの調整
所定濃度の澱粉乳(コーンスターチ糖化液)に消石灰を加えてpH調整を行った後、その澱粉乳に所定量のαーアミラーゼを添加した。しかる後、その澱粉乳をジェットクッカーで約105℃に加熱し、その温度で約10分間に亘って保持した。さらに、加熱後の液化液を、ジェットクッカーで約120℃に加熱することによって、αーアミラーゼを失活させた。さらに、その液化液を大気圧に開放してpHおよび温度を調整したDE8〜10の液化液に、マルトトリオヒドロラーゼ(天野エンザイム株式会社製の「AMT」酵素)を0.6U/9(0.1重量%)添加し、約58℃の温度下にて、マルトトリオースの含有量が25〜48%になるまで糖化させた。しかる後、その糖化液を精製・濃縮した後、ナトリウム型強酸性陽イオン交換樹脂中に通して、非老化性デキストリン区分とマルトトリオース含有量60%の区分とに分離した。そして、分離された非老化性デキストリン区分を精製・濃縮した後に、噴霧乾燥機で粉末化することによって、実施例1のデキストリンを得た。
上記の如く得られた実施例1のデキストリンの分子量分布を、RI検出器によって測定した。なお、分子量分布の測定は、(株)東洋ソーダ製のカラム(Bio−Gel TSK30−XL)を用い、0.02mol%のNaCl溶液を溶離液とし、室温下にて流速を0.8ml/minとして行った。分子量分布の測定結果を図2に示す。また、測定した分子量分布から分子量1×10未満の成分の比率、分子量1×104 未満の成分の比率、分子量1×105 以上の成分の比率を算出した。各成分の比率を表1に示す。表1から、実施例1のデキストリンには、分子量1×10以上の成分が含まれていないことが分かる。さらに、測定した分子量分布から数平均分子量、重量平均分子量、分散度を算出した。算出した数平均分子量、重量平均分子量、分散度を表2に示す。一方、実施例1のデキストリンのDE値をフェーリング・レーマン・ショール法で測定した。測定結果を表2に示す。
b.嚥下食基材の製造
上記の如く得られた実施例1のデキストリン(非老化性デキストリン)70重量部をキサンタンガム30重量部と混合することによって、実施例1の嚥下食基材を製造した。
c.均質性の評価
上記の如く得られた実施例1の嚥下食基材の2%トロミ液を調整し、市販の冷蔵庫を利用して、そのトロミ液の冷凍保存(24時間)および解凍を繰り返し、濁度の変化を測定することによって、トロミ液の均質性の変化の様子を調べた。なお、濁度は、島津製作所製UV−160A型 分光光度計を用い、2倍に希釈したトロミ液を入れた10mm厚みのセルの720nmにおける吸光度によって評価した。冷凍、解凍の回数に対する濁度の変化を表3に示す。
a.デキストリンの調整
糖化液をマルトトリオヒドロラーゼ(天野エンザイム株式会社製の「AMT」酵素)によって分解させる際のマルトトリオヒドロラーゼの添加量を0.54U/g(0.09重量%)に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2のデキストリンを得た。しかる後、実施例1と同様な方法で、得られた実施例2のデキストリンの分子量分布を測定し、分子量1×10未満の成分の比率、分子量1×104 未満の成分の比率、分子量1×105 以上の成分の比率、および数平均分子量、重量平均分子量、分散度を算出した。各分子量を有する成分の比率を表1に示す。さらに、算出した数平均分子量、重量平均分子量、分散度を表2に示す。表1から、実施例2のデキストリンにも、分子量1×10以上の成分が含まれていないことが分かる。また、実施例1と同様な方法で、実施例2のデキストリンのDE値を測定した。測定結果を表2に示す。
b.嚥下食基材の製造
上記の如く得られた実施例2のデキストリン70重量部をキサンタンガム30重量部と混合することによって、実施例1の嚥下食基材を製造した。
c.均質性の評価
得られた実施例2の嚥下食基材の2%トロミ液を調整し、実施例1と同様な方法により、そのトロミ液の均質性の変化の様子を調べた。冷凍、解凍の回数に対する濁度の変化を表3に示す。
[比較例]
a.嚥下食基材の製造
所定の濃度の澱粉乳に消石灰を加えてpH調整を行った後、その澱粉乳に所定量のαーアミラーゼを添加した。しかる後、その澱粉乳をジェットクッカーで約90℃に加熱し、その温度で約10分間に亘って保持した。さらに、加熱後の澱粉乳を、ジェットクッカーで約120℃に加熱することによって、αーアミラーゼを失活させた。しかる後、その澱粉乳を大気圧に開放した後に、再度αーアミラーゼを添加し、DEの値が8〜10になるまで90℃の温度で液化を進めた。そして、液化を終了した澱粉乳を精製した後に、噴霧乾燥機で粉末化することによって、比較例のデキストリンを得た。
上記の如く得られた比較例のデキストリンの分子量分布を、実施例1と同様な方法で測定した。分子量分布の測定結果を図3に示す。また、分子量分布から分子量1×10未満の成分の比率、分子量1×104 未満の成分の比率、分子量1×105 以上の成分の比率、および数平均分子量、重量平均分子量、分散度を算出した。各分子量を有する成分の比率を表1に示す。さらに、算出した数平均分子量、重量平均分子量、分散度を表2に示す。表1から、比較例のデキストリンには、分子量1×10以上の成分が約7.3%含まれていることが分かる。さらに、実施例1と同様な方法で、比較例のデキストリンのDE値を測定した。測定結果を表2に示す。
b.嚥下食基材の製造
上記の如く得られた比較例のデキストリン70重量部とキサンタンガム30重量部とを混合することによって、比較例の嚥下食基材を製造した。
c.均質性の評価
得られた比較例の嚥下食基材の2%トロミ液を調整し、実施例1と同様な方法により、そのトロミ液の均質性の変化の様子を調べた。冷凍、解凍の回数に対する濁度の変化を表3に示す。
Figure 0004283758
Figure 0004283758
Figure 0004283758
表3から、実施例1および実施例2の嚥下食基材のトロミ液は、冷凍−解凍を繰り返しても濁度が増加せず、均質性が保たれることが分かる。これに対して、比較例の嚥下食基材のトロミ液は、冷凍、解凍の回数の増加に伴って濁度が増加し、次第に不均質になっていくことが分かる。
加えて、各実施例および比較例の嚥下食基材について、動的粘弾性測定を実施したところ、実施例1および実施例2の嚥下食基材は、冷凍前のtanδの値が、それぞれ、約0.7、約0.8であり、冷凍・解凍を繰り返しても、それらの値に変化がみられなかった(tanδの保持率は、何れも95%以上であった)。そして、実施例1および実施例2の嚥下食基材のトロミ液を冷凍した後に解凍して試食したところ、良好な嚥下反射を促すことが可能であり、“喉越し”も良好であった。
一方、比較例の嚥下食基材は、冷凍前のtanδの値が約0.5であり、冷凍・解凍した後には、その値が約0.4に低下した(tanδの保持率=80%)。また、比較例の嚥下食基材のトロミ液を冷凍した後に解凍して試食したところ、“喉越し”がやや不良であった。
本発明の嚥下食基材は、高齢者等の嚥下障害者向けの食品を作る際の基材(補助食品)として、広汎に利用することができる。
クロマト分離装置の概略を示す説明図である。 実施例1のデキストリンの分子量分布を示す説明図である。 比較例のデキストリンの分子量分布を示す説明図である。
符号の説明
M・・クロマト分離装置、1・・第一塔、2・・第二塔、3・・第三塔、4・・第四塔。

Claims (6)

  1. 分子量が1×10以上の高分子成分を含まないデキストリンと、増粘多糖類とからなり、動的粘弾性tanδが0.5以上1.0未満の範囲内に調整されていることを特徴とする嚥下食基材。
  2. マルトトリオヒドロラーゼを作用させた澱粉の糖化液をクロマトグラフィーで分画して得た非老化性デキストリンと、増粘多糖類とを混合してなる嚥下食基材。
  3. イソマルトオリゴ糖、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、DHA、EPAの内の少なくとも一種が添加されていることを特徴とする請求項1、または請求項2に記載の嚥下食基材。
  4. 排泄臭軽減物質を添加したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の嚥下食基材。
  5. 請求項1に記載された嚥下食基材を製造するための製造方法であって、
    分子量が1×10以上の高分子成分を含まないデキストリンと、増粘多糖類とを混合し、動的粘弾性tanδを0.5以上1.0未満の範囲内に調整することを特徴とする嚥下食基材の製造方法。
  6. 請求項2に記載された嚥下食基材を製造するための製造方法であって、
    マルトトリオヒドロラーゼを作用させた澱粉の糖化液をクロマトグラフィーで分子量が1×10 以上の高分子成分を含まないように分画して得たデキストリンと、増粘多糖類とを混合することを特徴とする嚥下食基材の製造方法。
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