JP4282923B2 - プラズマ処理方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、グロー放電プラズマによる化学反応を利用して基材表面に成膜や改質等の処理を施するためのプラズマ処理方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、基材の表面処理を行う手段として、放電発生用電極と対向電極とを対向配置するとともに、前記対向電極に基材を載置してこの基材と放電発生用電極との間に所定の間隙を確保し、前記対向電極を接地する一方で前記放電発生用電極に高周波電圧もしくは直流電圧を印加することにより、前記間隙中にグロー放電プラズマを発生させ、このプラズマによって反応ガスを分解することにより基材表面に適当な処理(例えば成膜や改質)を施すプラズマ処理が知られている。
【0003】
このプラズマ処理は、当該プラズマを安定して形成することができる低圧下(例えば0.1〜10Torr)で行われるのが一般的であったが、近年、設備の小型化やタクトタイムの短縮化を目的として、大気圧またはそれに近い圧力下においても安定したグロー放電プラズマを形成できるようにする技術の開発が進められている。
【0004】
具体的には、放電発生用電極にパルス電圧を印加することによりグロー放電からアーク放電への移行を回避するものや(特開平10−154598号公報)、放電発生用電極に印加する電圧を高周波化して電極間にイオンや電子などの荷電粒子をトラップしてプラズマを高密度化する技術が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記のように印加電圧をパルス化する場合、使用ガス(不活性ガスや原料ガス)の種類や放電条件に応じてパルス幅や立ち上げ時間、デューティ比などを最適化する必要があり、設計が面倒であるとともに、コストが増大する不都合がある。また、150MHzといった非常に高い周波数をもつ電圧を印加する場合もコスト増大は免れ得ず、またマッチングが困難であるという不都合もある。
【0006】
なお、印加電圧の周波数として工業的に一般に用いられている周波数(例えば13.56MHz)を大気圧下でのプラズマ処理に適用した場合、安定したプラズマを得ることは困難であり、電極間の電界が増大してグロー放電が局所的にアーク放電に移行する等の不都合が生ずるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、コストの著しい増大を招くことなく安定したプラズマ形成を実現できる方法及び装置の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記従来技術は、いずれも、対向電極を接地した状態で放電発生用電極に所定電圧を印加するものであり、放電発生用電極から放たれた荷電粒子がその途中で反応ガス分子と衝突することなく即座に対向電極側の基材表面へ至る確率が高い。従って、高いプラズマ密度が得られにくく、これがプラズマ安定化の妨げとなっている。
【0009】
本発明は、かかる点に着目してなされたものであり、放電発生用電極に対向する対向電極上に基材を設置してこの基材と前記放電発生用電極との間に所定の間隙を確保した状態で両電極間にグロー放電プラズマを発生させ、このプラズマにより反応ガスを分解して前記基材の表面を処理するプラズマ処理方法において、前記放電発生用電極に高周波電圧を印加すると同時に、前記対向電極にも高周波電圧を印加し、この対向電極への高周波電圧の印加によって前記間隙中のイオン粒子が基材表面上に叩きつけられてイオン衝撃効果が得られるように、高周波電圧の周波数が以下の条件(1)、(2)を満たすように設定されて前記プラズマを発生させるものである。
基材の表面近傍に形成される電界領域の厚み<|eE0/m(2πf)2|・・・(1)
400kHz≦f≦10MHz・・・(2)
ここで、eを素電荷量、E0を電界強さ、mをイオン粒子の質量、fを対向電極に印加する高周波電圧の周波数とする。
【0010】
また本発明は、放電発生用電極と、この放電発生用電極に対向するように配置される対向電極とを備え、この対向電極上に基材が設置された状態で両電極間にグロー放電プラズマを発生させ、このプラズマにより反応ガスを分解して前記基材の表面を処理するプラズマ処理装置において、前記放電発生用電極に高周波電圧を印加する第1の高周波電源と、前記対向電極に高周波電圧を印加する第2の高周波電源とを備え、この第2の高周波電源による前記対向電極への高周波電圧の印加によって前記間隙中のイオン粒子が基材表面上に叩きつけられてイオン衝撃効果が得られるように、当該高周波電圧の周波数が以下の条件(1)、(2)を満たすように設定されたものである。
基材の表面近傍に形成される電界領域の厚み<|eE0/m(2πf)2|・・・(1)
400kHz≦f≦10MHz・・・(2)
ここで、eを素電荷量、E0を電界強さ、mをイオン粒子の質量、fを第2の高周波電圧の周波数とする。
【0011】
これらの方法及び装置によれば、放電発生用電極だけでなく、これに対向する対向電極にも高周波電源を印加することによって、基材表面側に向かおうとする荷電粒子(例えば陽イオンや電子)をプラズマ中に押し戻すことができ、これによってプラズマを高密度化することが可能になる。
【0012】
従って、前記プラズマを大気圧またはその近傍圧力下で安定した状態で形成することが可能であり、これによって設備の小型化及びコストの低減を図ることができる。
【0013】
なお、「大気圧またはその近傍圧力」とは100〜800Torrの圧力をいう。より好ましくは、基材のAir to air搬送が可能な700〜800Torrでプラズマ形成を行うのがよい。
【0014】
さらに、前記方法及び装置では、前記対向電極に印加される高周波電圧を利用してイオン衝撃効果を得ることが可能になる。具体的には、前記高周波電圧の印加によって対向電極の電位が負電位となる時に陽イオンを当該対向電極側に引き付け、基材表面に叩きつけることが可能である。このようなイオン衝撃により、例えば基材表面に成膜を行う場合には当該膜の硬質化を図ることができる。ただし、対向電極に印加される高周波電圧の周波数が過度に高いと、その電圧変化に間隙中のイオン粒子が追従できなくなるため、当該イオン粒子の質量等を考慮して、前記イオン粒子が基材表面上に叩きつけられるように当該高周波電圧の周波数を前記(1)式及び前記(2)式の上限を満足するように設定する必要がある。
ただし、前記周波数を過度に低くすると荷電粒子の閉じ込めによるプラズマ高密度化の効果が得られにくくなるので、当該周波数は前記(2)式の下限を満足するように設定することが、より好ましい。
【0015】
一方、放電発生用電極に印加される高周波電圧の周波数は、対向電極に印加される高周波電圧の周波数よりも高くするのが望ましい。このように放電発生用電極に印加される高周波電圧の周波数を高くすることにより、この放電発生用電極が前記イオン衝撃を受けるのを抑止することができ、当該電極の表面を長期にわたって良好に維持することが可能になる。
【0016】
前記放電発生用電極の形状や構造は適宜設定が可能である。例えば、前記放電発生用電極が一方向に延び、かつ、前記対向電極に向かって曲面状に膨出する膨出端部をもつ断面形状を有し、その膨出端部と前記対向電極上に載置される基材との間に前記間隙が形成された状態で当該基材が前記放電発生用電極の長手方向と直交する方向に搬送される構成とすれば、対向電極への放電発生用電極の投影面積を小さく抑えながら、広面積にわたって基材表面の処理を行うことができる。また、放電発生用電極の端部が鋭く尖っているものに比べ、グロー放電からアーク放電への移行をより確実に回避することができる。
【0017】
なお、このようないわゆるライン状プラズマを形成する装置では、大面積の平行平板型電極を用いる場合に比べ、イオン衝撃に有効な自己バイアス(直流的な電圧)が発生しにくい傾向があるが、前記のように適当な周波数の高周波電圧を対向電極に印加することによって、イオン衝撃を励起することが可能となる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施の形態では、基材表面にDLC(ダイヤモンドライク・カーボン)薄膜を形成する例を示すが、本発明はその他の薄膜、例えば耐食及び耐摩耗を目的としたSiN4薄膜や、Si薄膜などの半導体薄膜、SiC薄膜、TiC薄膜、TiN薄膜などの耐食、耐摩耗、あるいは潤滑などを目的とした種々の薄膜の形成や、その他のプラズマ処理、例えば特開平9−31620号公報に示されるようなプラズマ反応を利用した基材表面の除去加工などにも適用できる。また、基材24の材質も、プラスチック、金属、紙、ガラスなど、その種類を問わない。
【0019】
図1に示すプラズマ処理装置は、チャンバ10を備え、その内部に放電発生用電極12が設けられるとともに、この放電発生用電極12の下方に同電極12と対向する平板状の対向電極14が配置されている。
【0020】
放電発生用電極12は、一方向(図1では奥行き方向、図2では左右方向)に延び、かつ、その下端に前記対向電極14に向かって曲面状に膨出する膨出端部をもつ断面形状を有し、絶縁フレーム18を介してチャンバ10の天壁に固定されている。そして、前記対向電極14上に薄板状の基材16が設置された状態で当該基材16の上面と前記膨出端部との間に所定の間隙が確保されるとともに、この間隙を保ったまま前記対向電極14とともに基材16が前記放電発生用電極12の長手方向と直交する方向に搬送されるようになっている。
【0021】
前記膨出端部の正面視形状(図1に示す形状)は、滑らかな曲線状が好ましく、図示のような曲率半径R1をもつ半円状の他、例えば楕円状や放物線状に設定してもよい。また、放電発生用電極12の長手方向端部にも図2に示すような曲率半径R2が与えられていることが好ましい。
【0022】
放電発生用電極12の膨出端部と基材16の表面との距離(間隙寸法)は、0.5〜10mmが好適である。特に当該間隙寸法が1mm程度の場合、本発明によるプラズマ高密度化の効果は顕著となる。
【0023】
なお、本発明において放電発生用電極の具体的な形状は特に問わず、例えば従来の平行平板型電極や、特開平9−104985号公報に示されるような回転電極を適用してもよい。
【0024】
また、各電極12,14の表面には、アーク放電を防止するための誘電体層(例えば金属酸化物)が形成されていることが好ましい。
【0025】
図1に示すように、前記放電発生用電極12には、整合器(マッチング装置)20を介して第1の高周波電源22が接続され、この第1の高周波電源22によって前記放電発生用電極12に高周波電圧が印加されるようになっている。
【0026】
さらに、この装置の特徴として、前記対向電極14には整合器24を介して第2の高周波電源26が接続され、この第2の高周波電源26によって前記対向電極14にも高周波電圧が印加されるようになっている。
【0027】
なお、各電極12,14に印加される電圧の周波数については後に詳述する。
【0028】
両電極12,14を挟んでチャンバ10の一方の側部には入口圧力調節室28が設けられ、他方の側部には出口圧力調節室30が設けられている。両室28,30内に対しては、不活性ガスの給排が適宜行われ、これにより室内圧力の調節が行われる。入口圧力調節室28には、同室28内を装置外部に対して開閉するゲートバルブ32と、当該室28内をチャンバ10内に対して開閉するゲートバルブ34とが設けられ、同様に出口圧力調節室30には、同室30内を装置外部に対して開閉するゲートバルブ38と、当該室30内をチャンバ10内に対して開閉するゲートバルブ36とが設けられている。
【0029】
なお、放電発生用電極12の近傍には排気ダクト40が設けられ、この排気ダクト40はバルブ42を介して排気装置44に接続されている。
【0030】
次に、この装置の作用を説明する。
【0031】
処理対象となる基材16は、入口圧力調節室28を通じてチャンバ10内に搬入され、対向電極14上に載置される。そして、この対向電極14とともに出口圧力調節室30側に向かって(図1では左側に向かって)搬送される。
【0032】
一方、排気ダクト40から適当な排気が行われることにより、チャンバ10内が大気圧またはその近傍圧力に保持される。
【0033】
さらに、チャンバ10内にはガス導入口13から反応ガス(DLCを成膜する場合には例えばCH4)及び不活性ガス(例えばHe)が導入されるとともに、高周波電源22,26から放電発生用電極12,14にそれぞれ高周波電圧が印加される。
【0034】
かかる電圧の印加によって、放電発生用電極12の膨出端部と基材16の表面との間に当該放電発生用電極12に沿って延びるプラズマP(図2)が形成され、このプラズマPによって反応ガスが分解される。そして、このプラズマPの長手方向と直交する方向に前記基材16が搬送されることにより、当該基材16上に成膜が施される。この基材16は、出口圧力調節室30を通じて装置外へ搬出される。
【0035】
かかるプラズマ処理において、従来は対向電極14が接地されていたのに対し、図示の装置では対向電極14にも高周波電圧が印加されているため、その印加によって、プラズマ高密度化及びイオン衝撃の励起という従来装置では得られない優れた作用効果を得ることが可能となっている。その詳細は次のとおりである。
【0036】
1)プラズマ高密度化について
図3(a)(b)は、放電発生用電極12と基材16との間の領域における性状を模式的に示したものである。図示のように、放電発生用電極12の表面近傍及び基材16の表面近傍にはそれぞれ電界領域(シース)E1,E2が形成され、両シースの間にプラズマ形成領域が存在する。
【0037】
ここで、対向電極14への高周波電極により基材16の表面が正に帯電するときには、図3(a)に示すように基材16近傍の陽イオン(例えば不活性ガスとしてHeを用いる場合にはヘリウムイオン)がプラズマ内に押し戻され、逆に基材16の表面が負に帯電するときには同図(b)に示すように電子がプラズマ内に押し戻される。このようにして荷電粒子である陽イオンや電子がプラズマ内に閉じ込められることにより、プラズマ密度が高まり、ひいては良好なプラズマを安定した状態で形成することができる。
【0038】
すなわち、従来のように荷電粒子がほとんど抵抗を受けずにそのまま基材16に到達してしまう場合には、放電発生用電極12の膨出端部と基材16とを結ぶ直線上で高いプラズマ密度を確保することができず、その結果、図4(a)に示すようにプラズマPの形成領域が薄く広がってしまい、グロー放電を安定して維持することが困難になる。これに対して本発明のように、対向電極14への高周波電圧の印加によって荷電粒子をプラズマ形成領域中に閉じ込めることにより、図4(b)に示すように、放電発生用電極12と基材16との間の特定領域に集中して高密度プラズマPを形成することが可能になり、その結果、良好なグロー放電を安定して維持することが可能になる。
【0039】
従って、従来のように放電発生用電極12に対してパルス電圧や極めて周波数の高い特別な電圧を印加しなくても、ごく一般的な高周波電圧(例えば13.56MHz)を印加するだけで、大気圧またはそれに近い圧力下においても安定したプラズマ形成を実現することができる。
【0040】
2)イオン衝撃の励起について
前記対向電極14への高周波電圧の印加により、基材16が負に帯電しているときには、図3(b)に示すように、プラズマ中の陽イオンがクーロン力によって基材16側に引き付けられ、当該基材16の表面に叩きつけられる。このようなイオン衝撃の励起により、例えば成膜時においては既成の膜を再構成して硬化することが可能となり、好適な硬度をもつ膜(例えばDLC膜)を得ることが可能になる。また、その他のプラズマ処理においても、当該処理を促進する効果を得ることかできる。
【0041】
なお、このようなイオン衝撃効果を得るためには、対向電極14へ印加する高周波電圧の周波数を適正な周波数に設定することが肝要である。すなわち、イオン粒子にはその質量に比例した慣性が存在しており、対向電極14へ印加する高周波電圧の周波数が過度に高いとその電圧振動にイオン粒子が追従できず、イオン衝撃効果を得ることが困難となるため、当該周波数は所定値以下にしておく必要がある。
【0042】
具体的に、素電荷量をe、電界強さをEo、イオン粒子の質量をm、周波数をf、角周波数をω(=2πf)とすると、前記イオン粒子の振動振幅Aは、A=|eEo/mω2|で表されるので、例えば、不活性ガスにヘリウムを用いた場合、基材16側の電界領域(シース)E2の厚みを0.1mm、Eo=106V/mとすると、前記周波数fを10MHz以下にすることにより、前記シースの厚みを超えた振幅をもつ振動をプラズマ中のヘリウムイオンに付与することができ、これによってイオン衝撃を励起することが可能となる。
【0043】
ただし、前記周波数を過度に低くすると前述の荷電粒子の閉じ込めによるプラズマ高密度化の効果が得られにくくなるので、当該周波数は100kHz以上に設定することが、より好ましい。
【0044】
その一方、放電発生用電極12に印加する電圧の周波数は、対向電極14に印加する電圧の周波数よりも高く設定しておくことが、より好ましい。このように放電発生用電極12側の周波数を高くすることにより、イオン粒子が放電発生用電極12の表面に叩きつけられるのを抑止することができ、当該電極12の表面を長期にわたって良好に維持することが可能になる。
【0045】
【実施例】
前記図1に示す装置において、次のような条件下でDLCの成膜を行う。
【0046】
・放電発生用電極12の膨出端部において、正面から見た曲率半径R1を50mm、側面から見た曲率半径R2を10mmとする。
【0047】
・放電発生用電極12及び対向電極14の表面にはプラズマ溶射によってアルミナをコーティングする。その厚みは、放電発生用電極12側で150μm、対向電極14側で100μmとする。
【0048】
・基材16として、厚さ1.1mm、搬送方向長さ300mm、幅250mmのガラス板を用い、この基材16と放電発生用電極12との距離(間隙寸法)を1mmとする。
【0049】
・チャンバ10内にはHe,CH4,H2を5:1:1のモル比で導入し、チャンバ内圧力は700Torrに保持する。
【0050】
・放電発生用電極12に13.56MHzの周波数をもつ600Wの高周波電力を印加する一方、対向電極には400kHzの周波数をもつ60Wの高周波電力を印加してプラズマを形成し、2.0mm/secの速度で基材16を搬送する。
【0051】
このようにしてプラズマ処理を試みた結果、基材16上に厚さ200mmのDLC膜を形成することができた。また、その膜硬度をナノインダンターで測定したところ7Gpaという優れた値が得られた。一方、比較例として、従来と同様に対向電極14を接地して放電発生用電極12にのみ13.56MHzの周波数をもつ600Wの高周波電力を印加して成膜を行ったところ、得られたDLC膜の厚さは30mm、硬度は1GPaであった。従って、本発明の適用により、膜厚及び硬度がともに従来に比して7倍近く改善されたこととなる。
【0052】
【発明の効果】
以上のように本発明は、放電発生用電極と対向電極との間にプラズマを形成して基材表面をプラズマ処理するにあたり、前記放電発生用電極に高周波電圧を印加するのに加え、対向電極にも高周波電圧を印加し、この対向電極への高周波電圧の印加によって前記間隙中のイオン粒子が基材表面上に叩きつけられてイオン衝撃効果が得られるように、高周波電圧の周波数が以下の条件(1)、(2)を満たすように設定されたものである。
基材の表面近傍に形成される電界領域の厚み<|eE0/m(2πf)2|・・・(1)
400kHz≦f≦10MHz・・・(2)
ここで、eを素電荷量、E0を電界強さ、mをイオン粒子の質量、fを対向電極に印加する高周波電圧の周波数とする。
そのため、プラズマ中の荷電粒子を基材表面からプラズマ中に押し返すことによってプラズマ密度を高め、これにより、コストの著しい増大を招くことなく安定したプラズマ形成を実現することができる効果がある。
また、対向電極の電位が負電位となるときには、プラズマ中の陽イオンを当該対向電極側に引き付けることで基材表面に叩きつけ、このようなイオン衝撃の励起により、例えば基材表面に成膜を行う場合には当該膜の硬質化を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかるプラズマ処理装置の全体構成図である。
【図2】前記プラズマ処理装置の要部を示す側面図である。
【図3】(a)(b)はプラズマ処理中における荷電粒子を挙動を模式的に示した図である。
【図4】(a)は本発明により安定したプラズマが集中形成されている状態を示す図、(b)はプラズマ領域が拡散された状態を示す図である。
【符号の説明】
10 チャンバ
12 放電発生用電極
14 対向電極
16 基材
22 第1の高周波電源
26 第2の高周波電源
Claims (5)
- 放電発生用電極に対向する対向電極上に基材を設置してこの基材と前記放電発生用電極との間に所定の間隙を確保した状態で両電極間にグロー放電プラズマを発生させ、このプラズマにより反応ガスを分解して前記基材の表面を処理するプラズマ処理方法において、前記放電発生用電極に高周波電圧を印加すると同時に、前記対向電極にも高周波電圧を印加し、この対向電極への高周波電圧の印加によって前記間隙中のイオン粒子が基材表面上に叩きつけられてイオン衝撃効果が得られるように、当該高周波電圧の周波数が以下の条件(1)、(2)を満たすように設定されて前記プラズマを発生させることを特徴とするプラズマ処理方法。
基材の表面近傍に形成される電界領域の厚み<|eE0/m(2πf)2|・・・(1)
400kHz≦f≦10MHz・・・(2)
ここで、eを素電荷量、E0を電界強さ、mをイオン粒子の質量、fを対向電極に印加する高周波電圧の周波数とする。 - 請求項1記載のプラズマ処理方法において、前記プラズマを大気圧またはその近傍圧力下で形成することを特徴とするプラズマ処理方法。
- 放電発生用電極と、この放電発生用電極に対向するように配置される対向電極とを備え、この対向電極上に基材が設置された状態で両電極間にグロー放電プラズマを発生させ、このプラズマにより反応ガスを分解して前記基材の表面を処理するプラズマ処理装置において、前記放電発生用電極に高周波電圧を印加する第1の高周波電源と、前記対向電極に高周波電圧を印加する第2の高周波電源とを備え、
この第2の高周波電源による前記対向電極への高周波電圧の印加によって前記間隙中のイオン粒子が基材表面上に叩きつけられてイオン衝撃効果が得られるように、当該高周波電圧の周波数が以下の条件(1)、(2)を満たすように設定されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
基材の表面近傍に形成される電界領域の厚み<|eE0/m(2πf)2|・・・(1)
400kHz≦f≦10MHz・・・(2)
ここで、eを素電荷量、E0を電界強さ、mをイオン粒子の質量、fを第2の高周波電圧の周波数とする。 - 請求項3記載のプラズマ処理装置において、前記第1の高周波電源により放電発生用電極に印加される高周波電圧の周波数が前記第2の高周波電源により前記対向電極に印加される高周波電圧の周波数よりも高いことを特徴とするプラズマ処理装置。
- 請求項3又は4に記載のプラズマ処理装置において、前記放電発生用電極は一方向に延び、かつ、前記対向電極に向かって曲面状に膨出する膨出端部をもつ断面形状を有し、その膨出端部と前記対向電極上に載置される基材との間に前記間隙が形成された状態で当該基材が前記放電発生用電極の長手方向と直交する方向に搬送されることを特徴とするプラズマ処理装置。
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