JP4281885B2 - 鋲受渡し装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、航空機のフレームを製造するシステムの一部、更に詳しくは、輸送路を輸送されてきた鋲を受け取って、それを打鋲処理部側へ渡すのに用いられる鋲受渡し装置に関するものである。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
一般に、航空機のフレーム製造(組立)に使用される打鋲装置(打鋲処理部)への鋲輸送には、空気圧を用いた輸送システムが用いられている。
【0003】
すなわち、鋲を一つずつ供給する給鋲装置と上記打鋲装置とは、給鋲装置側から空気圧を導入できるよう構成されたチューブによって結ばれる。そして、給鋲装置側から、このチューブ内に装填された鋲は、空気圧の作用で同チューブ内の輸送路を圧送され、最終的に打鋲装置側に到達するようになっている。
【0004】
さて、こうして輸送路を圧送されてきた鋲を打鋲装置に渡す際、重要な役割を果たすのが鋲受渡し装置である。この鋲受渡し装置は、主要構成要素として、鋲の軸部に対応した形状の凹部が形成されてなるベース部を具備し、軸部がこのベース部の凹部内に収納されるようにして鋲を受け取る。そして受け取った鋲を、この姿勢のまま、すなわち頭部が上方に位置する姿勢のまま、打鋲装置へ渡すようになっている(実際には鋲は装填機構によって運搬される)。
【0005】
ところで最近では、軸部長さの非常に短い鋲が、特に、軸部が頭部の径と同じ程度の長さしかないような短い鋲が使用されることが多い。しかし、こうした短い鋲は、長い鋲とは違い、輸送用チューブ内での向きが一定しない。つまり、短い鋲は輸送用チューブ内で頻繁に回転し、その向きが絶えず変化する。このため、輸送用チューブの端部開口から排出された時点での鋲の向きも、決して一様にはならない。
【0006】
だが、現在使用されている鋲受渡し装置は、鋲が、その軸部端を先頭にして輸送され、その状態のまま輸送用チューブの端部開口から排出されることを前提に構成されたものである。よって、例えば、鋲がその頭部を先頭にして輸送用チューブの端部開口から出てきた場合には全く対応できない。言い換えれば、鋲を、その頭部が上方に位置する姿勢(自動装填に不可欠な正規の姿勢)で打鋲装置すなわち打鋲処理部側へ渡すことができず、この結果、打鋲処理部側への鋲の供給がたびたび中断する。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、軸部の長さが短い鋲についても、確実に、頭部が上方に位置する姿勢で打鋲処理部側へ渡すことが可能な鋲受渡し装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この課題は、輸送路を輸送されてきた鋲を受け取り、この鋲を頭部が上側に位置する姿勢で打鋲処理部側へ渡すための装置であって、
深さ寸法が鋲の軸部長さよりも大きく、幅寸法が鋲の軸部径よりも大きくて鋲の頭部径より小さな第1のスリット部と、
前記第1のスリット部の上部に続いて設けられた幅寸法が鋲の頭部径より大きな第2のスリット部と、
前記第2のスリット部の上部に設けられた鋲仮受け部と、
前記鋲仮受け部に対して設けられた鋲押出しアームと、
前記鋲仮受け部を往復動させる駆動手段
とを具備し、
前記鋲仮受け部には上部側の開口径が大きなテーパー状貫通孔が構成され、
前記鋲押出しアームの上側縁部が前記第2のスリット部に在る鋲頭部に対して当接可能に構成されてなり、
前記駆動手段によって往復動する鋲仮受け部の往復動に伴って往復動する鋲押出しアームが前記第2のスリット部に上下が逆転して在る鋲の頭部に当接作用し、該鋲の頭部が上側で該鋲の軸部が下側となって該軸部が前記第1のスリット部に在るようにしたことを特徴とする鋲受渡し装置によって解決される。
【0011】
すなわち本発明では、鋲受渡し装置を構成するベース部の上面における、輸送されてきた鋲を受ける鋲受け領域に、上記形状を有するスリットおよび凹部を形成した。あるいは鋲受渡し装置を、スリットおよび凹部が形成されたベース部と共に、テーパー状の内周面を有する貫通孔が形成され、かつ、ベース部の上方を変位可能な姿勢変換補助部とから構成した。あるいは、また鋲受渡し装置を、スリットおよび凹部が形成されたベース部と共に、テーパー状の内周面を有する貫通孔が形成され、かつ、必要に応じてベース部の上方に突出可能な鋲仮受け部とから構成した。
【0012】
このため、輸送されてきた鋲は、どのような姿勢でベース部の上に排出されても、たとえ頭部が先頭になった状態で排出されても、鋲受け領域の凹部内周面〔あるいは姿勢変換補助部(または鋲仮受け部)の貫通孔内周面〕に誘導され、正規の姿勢(頭部が上方に位置する姿勢)となるよう矯正すなわち姿勢変換される。この結果、鋲は、頭部を上にして、軸部がベース部のスリットに納まった格好となる。
【0013】
ところで、軸部の長さが非常に短い鋲、特に、軸部が頭部の径と同じ程度の長さしかないような短い鋲は、長い鋲とは違い、輸送管内での向きが一定しない。すなわち、短い鋲は輸送管内で頻繁に回転し、絶えず向きが変化する。このため輸送管の端部開口から出てきたときの鋲の向きも決して一様にはならず、上述したごとく、頭部が先頭になった状態で排出されるといった事態が頻繁に起こりうる。
【0014】
しかし、上記のごとく構成された本発明の鋲受渡し装置では、鋲の姿勢が正規のものとなるよう速やかに矯正・変換されるから、鋲がどのような向きで輸送管の端部開口から排出されても、なんら問題なく、これに対応可能である。ゆえに軸部の長さが短い鋲についても、確実に、頭部が上方に位置する自動装填に不可欠な正規の姿勢で打鋲処理部側へ渡すことが可能となる。
【0015】
なお、上記鋲受渡し装置において、輸送されてきた鋲を受けるベース部の鋲受け領域に、開口側ほど径の大きな凹部が形成されてなるものでは、必要に応じてベース部の上方(特に鋲受け領域)に突出し、輸送路を輸送されてきた鋲を受けるよう構成された鋲仮受け部を更に具備してなる構造とすることができる。そして、この鋲仮受け部を具備する場合、同鋲仮受け部は、輸送されてきた鋲を受けた後、この鋲を前記ベース部の凹部側へ落下させるよう構成される。こうした構造を採用することにより、鋲がベース部に直接衝突するのを回避でき、その結果、ベース部の損耗が最小限に抑えられる。
【0016】
更に言えば、上記鋲仮受け部を設ける場合、この鋲仮受け部における、少なくとも輸送されてきた鋲を受ける面は、ゴムなどの弾性材料から構成されてなることが好ましく、これによって鋲の損傷を抑止できる。
【0017】
加えて本発明の鋲受渡し装置は、ベース部を振動させるための加振手段を更に具備してなることが好ましい。すなわち、この加振手段を付加することにより、鋲を、ベース部の凹部内において、一層迅速、かつ、確実に正規の姿勢(頭部が上方に位置する姿勢)とすることができる。
【0018】
なお、開口側ほど径の大きな凹部が形成されてなるベース部を備えた鋲受渡し装置において、このベース部に形成される凹部の内周面は、テーパー状(すり鉢状)のものであっても、あるいは球面状のものであってもよい。要するに、この凹部内周面は、開口側ほど径が大きくなっていればよく、さまざまな形状を適宜選択して採用することができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図1〜図5を用い、本発明の第1実施形態を具体的に説明する。なお、図1は本実施形態に係る鋲受渡し装置の概略側面図、図2は同鋲受渡し装置を構成するベース部の斜視図、図3は同ベース部の横断面図、図4は本実施形態に係る鋲受渡し装置を構成する鋲仮受け部の斜視図、図5(a)〜(c)は同鋲受渡し装置の機能を説明するための概略図である。
【0020】
本実施形態に係る鋲受渡し装置(以下、単に本鋲受渡し装置と言う)は、給鋲装置(図示せず)から延びる鋲輸送用のチューブTの端部開口に隣接して設けられるものである。すなわち本鋲受渡し装置は、チューブT内の輸送路を輸送されてきた鋲を受け取り、更にこの鋲を、頭部が上方に位置する正規の姿勢で打鋲処理部(図示せず)側へ渡すために用いられるものである。
【0021】
さて、図1から判るように、本鋲受渡し装置は、ベース部1(図1には断面を示す)と、必要に応じてこのベース部1の上方(特にベース部1における鋲を受け取る凹部の上方)に突出可能に設けられた鋲仮受け部2と、ベース部1に対して機械的に連結された加振手段3(この加振手段3は省略してもよい)を主要構成要素として備える。
【0022】
このうちベース部1には、図2や図3(一点鎖線にて示す中心線は図1および図3に共通)から判るように、スリット4、および同スリット4と交差する凹部5が形成されている。特にスリット4は、深さ寸法Dが、受渡しの対象となる全ての鋲の軸部長さよりも十分に大きく、また、スリット4の幅寸法Bは、鋲の軸部径よりは大きく、かつ、頭部径よりは小さく構成されている。
【0023】
一方、凹部5は、ベース部1の上面における輸送されてきた鋲を受ける鋲受け領域(正確には鋲仮受け部2を通過した鋲が落下する領域)に形成されている。この凹部5は、開口側ほど径の大きな内周面がテーパー状(すり鉢状)のものである。そして、上述したとおり、この凹部5の中心と上記スリット4とは交差している。
【0024】
次に鋲仮受け部2は、それに接続された駆動手段(例えば直動式の油圧あるいは空気圧シリンダなど)6によって、その鋲仮受け領域部分が、必要に応じてベース部1の鋲受け領域上方に突出できるようになっている。そして、この突出状態にて鋲輸送用のチューブT内の輸送路を輸送されてきた鋲を受けるよう構成されている。
【0025】
鋲仮受け部2は、図4に示すごとく、受渡しの対象となる全ての鋲が通過可能な円形の切欠き2aを有する。鋲仮受け部2は、輸送されてきた鋲を受けた後、上記駆動手段6が作動して、更に突出させられる。すると、切欠き2aが鋲(鋲の位置は基本的にそのまま)の下方まで移動し、その結果、鋲はこの切欠き2aから下方に、すなわち上記ベース部1の凹部5内に落下する。鋲仮受け部2は、この後、元の位置まで後退させられることになる。
【0026】
なお本実施形態では、鋲仮受け部2における、輸送されてきた鋲を受ける面すなわち鋲仮受け領域面2b(図4中、網目模様で示す)を、ゴムなどの弾性材料から構成している。これは、鋲仮受け部2に衝突した際、鋲が損傷しないようにするためである。なお、チタン合金製あるいはステンレス鋼製の鋲など、損傷しにくいものを使用する場合には、上記鋲仮受け部2を省略することもできる。
【0027】
更に上記ベース部1や鋲仮受け部2などと共に、本鋲受渡し装置を構成する加振手段3は、ベース部1に対して、それが発生する加振力が効率良く伝達されるよう機械的に連結されている(直結しても、あるいはリンクなどを介して間接的に連結しても可)。そして、この加振手段3は、必要に応じてベース部1を振動させる役割を果たす。
【0028】
この加振手段3を機能させることにより、ベース部1の凹部5内に落下した鋲は、それが機能していない時に比べて、一層迅速、かつ、確実に正規の姿勢(頭部が上方に位置する姿勢)に変換される。
【0029】
上記のごとく構成された本鋲受渡し装置は、次のように動作して、鋲(図中、Fで示す)の姿勢を整える(図5参照)。
【0030】
まず、給鋲装置(図示せず)からの鋲Fの供給に先立って、鋲仮受け部2の鋲仮受け領域部分(鋲仮受け領域面2b)を、ベース部1の上方に突出させる。そして、鋲輸送用のチューブTを用いて鋲の輸送を開始すると、同チューブT内の輸送路を輸送されてきた鋲Fは、鋲仮受け部2の鋲仮受け領域面2bに衝突し、その上に載った状態で停止する〔図5(a)参照〕。
【0031】
この状態を得たならば、鋲仮受け部2を更に突出させる。すると、鋲仮受け部2の切欠き2aが鋲Fの下方に位置するようになる。よって、鋲Fは鋲仮受け部2から、その下方に落下する〔図5(b)参照〕。こうして鋲Fは、ベース部1側にセットされるのであるが、本実施形態では、同ベース部1に、上述したスリット4および凹部5を形成している(更には加振手段3による振動も加えられている)。
【0032】
したがって、ベース部1の凹部5内に落下してきた鋲Fは、その時どのような姿勢であっても、たとえ頭部が先頭になっていても、凹部5の内周面に誘導されて、正規の姿勢(頭部が上方に位置する姿勢)となるよう矯正される。つまり、スリット4および凹部5の作用で速やかに姿勢が変換され、最終的に鋲Fは、その頭部を上にし、軸部がスリット4に納まった格好となる〔図5(c)参照。但しチューブTや鋲仮受け部2は省略〕。
【0033】
ところで、図5に示すような軸部の長さが非常に短い鋲、特に軸部が頭部の径と同じ程度の長さしかないような短い鋲Fは、長い鋲とは違い、鋲輸送用のチューブT内での向きが一定しない。すなわち、こうした短い鋲FはチューブT内で頻繁に回転し、その向きが絶えず変化する。このため、チューブTの端部開口から出てきたときの向きも決して一様ではなく、頭部が先頭になってベース部1の凹部5内に落下してくることもある。
【0034】
しかし本鋲受渡し装置では、上述したとおり、鋲Fの姿勢が正規のものとなるよう速やかに矯正・変換されるから、鋲Fがどのような向きでチューブTの端部開口からベース部1の凹部5内に落下しても、なんら問題なく、これに対処できる。ゆえに本鋲受渡し装置を用いることで、軸部の長さが短い鋲についても、その頭部が上方に位置する、自動装填に不可欠な正規の姿勢で、確実に打鋲処理部側へ渡すことが可能となる。
【0035】
参考までに言うと、本鋲受渡し装置によって姿勢が整えられた鋲Fは、装填機構によって上方から頭部を挟持される。そして、自動的に打鋲処理部側へ搬送され、そこで打鋲処理に使用されることになる。
【0036】
続いて、図6〜図10を用い、本発明の第2実施形態を具体的に説明する。なお、図6は本実施形態に係る鋲受渡し装置の概略側面図、図7は同鋲受渡し装置を構成するベース部の斜視図、図8は同ベース部の横断面図、図9は本実施形態に係る鋲受渡し装置を構成する姿勢変換補助部の斜視図、図10(a)〜(c)は同鋲受渡し装置の機能を説明するための概略図である。
【0037】
なお、この第2実施形態についても、基本的な技術思想は上記第1実施形態と同じである。よって以下では、第1実施形態との相違点を中心に解説する。また、第1実施形態にて説明した構成要素と同じ構造・機能を有するものについては、先に使用した符合を再度付与し、その説明を省略する。
【0038】
本実施形態に係る鋲受渡し装置(以下、再び本鋲受渡し装置と言う)も、給鋲装置(図示せず)から延びる鋲輸送用のチューブTの端部開口に隣接して設けられるものである。すなわち本鋲受渡し装置は、チューブT内の輸送路を輸送されてきた鋲を受け取り、更にこの鋲を、頭部が上方に位置する正規の姿勢で打鋲処理部(図示せず)側へ渡すために用いられる。
【0039】
さて、図6から判るように、本鋲受渡し装置は、ベース部1’(図6には断面を示す)と、必要に応じてこのベース部1’の上方(正確には後述する姿勢変換補助部の上方)に突出可能に設けられた鋲仮受け部2と、加振手段3(この加振手段3は省略してもよい)と、更に姿勢変換補助部10とを、主要構成要素として具備する。
【0040】
このうちベース部1’には、図7や図8(一点鎖線にて示す中心線は図6および図8に共通)からも判るように、スリット4’と、このスリット4’から続く凹部5’とが形成されている。特にスリット4’は、深さ寸法D’が、受渡しの対象となる全ての鋲の軸部長さよりも十分に大きく、また、幅寸法B’が、鋲の軸部径よりも大きく、かつ、鋲の頭部径よりは小さなものであるよう構成されている。
【0041】
一方、凹部5’は、上記スリット4’の上端側に、同スリット4’から連続して形成されている。また、この凹部5’の幅寸法(特に凹部5’の開口5a’の幅寸法)Cは均一となっている。但し、この幅寸法Cは、言うまでもなく、鋲の頭部径より大きなものである(鋲の頭部が無理なく納まるようにするため)。
【0042】
なお、上記ベース部1’の凹部5’において、最終的に鋲の頭部が着座することになる面(凹部底面)5b’は粗面となっている。この粗面化された面5b’は、特に鋲がその頭部を先頭にして鋲輸送用のチューブTから出てきた際に、上記姿勢変換補助部10の貫通孔における粗面化されたテーパー状の内周面(後に詳述)と共同で、鋲の姿勢変換補助機能を発揮する。
【0043】
次に、姿勢変換補助部10(図6には断面を示す)は、鋲仮受け部2とベース部1’との間に設けられている。そして、ベース部1’の上方にて、必要に応じてその天面と平行に往復変位、つまり振動できるようになっている。また、この姿勢変換補助部10は、図9にも示すごとく、輸送されてきた鋲と交錯する領域に、鋲が通過可能な矩形状の貫通孔11が形成されている。
【0044】
特に、この貫通孔11は、上方側に向かって開拡するテーパー状の内周面11a,11bを有する。本実施形態では、この内周面11a,11bを粗面としている。但し、ここではテーパー状の内周面を対向する2面だけとしたが、全面をテーパー状としてもよい。あるいは円錐台の周面のごとく構成してもよい。更には、目視ではそれと判らない程度に若干傾斜しているだけでもよい。ちなみに姿勢変換補助部10は、以下で説明するように、輸送されてきた鋲を、その頭部が上方に位置する正規の姿勢となるよう姿勢変換するのを補助する役割を果たす。
【0045】
上記のごとく構成された本鋲受渡し装置は、次のように動作して、鋲Fの姿勢を整える(図10参照)。
【0046】
まず、給鋲装置(図示せず)からの鋲の供給に先立って、鋲仮受け部2の鋲仮受け領域部分(鋲仮受け領域面2b)を、姿勢変換補助部10の上方に突出させる。次に、鋲輸送用のチューブTを用いて鋲の輸送を開始すると、同チューブT内を輸送されてきた鋲Fは、鋲仮受け部2の鋲仮受け領域面2bに衝突し、その上に載った状態で停止する〔図10(a)参照〕。
【0047】
そこで、鋲仮受け部2を更に突出させる。すると、鋲仮受け部2の切欠き2aが鋲Fの下方に位置するようになる。この結果、鋲Fは直ちに鋲仮受け部2からその下方に落下する〔図10(b)参照〕。こうして鋲Fは姿勢変換補助部10側に送り込まれるのであるが、本実施形態では、この姿勢変換補助部10の内周面をテーパー状とし、かつ、鋲仮受け部2の突出方向と同方向に振動させている。
【0048】
したがって、この姿勢変換補助部10の貫通孔11内に落下した鋲Fは、その時点でどのような姿勢であっても、たとえ頭部が先頭になっていても、テーパー状の内周面11a,11bの作用で、正規の姿勢(頭部が上方に位置する姿勢)となるよう矯正される。更に鋲Fは、ベース部1’の凹部5’およびスリット4’の作用により完全に姿勢変換され、最終的には、頭部を上にし、軸部がスリット4’に納まった格好となる〔図10(c)参照。但しチューブTや鋲仮受け部2は省略〕。
【0049】
ゆえに、本実施形態に係る鋲受渡し装置を用いた場合でも、軸部の長さが短い鋲Fを、その頭部が上方に位置する、自動装填に不可欠な正規の姿勢で、確実に打鋲処理部側へ渡すことが可能である。
【0050】
続いて、図11および図12を用い、本発明の第3実施形態を具体的に説明する。なお、図11は本実施形態に係る鋲受渡し装置の概略側面図、図12は同鋲受渡し装置を構成するベース部の横断面図である。
【0051】
但し、この第3実施形態についても、上記第2実施形態と同様、基本的な技術思想は上記第1実施形態と同じである。よって以下では、第1実施形態および第2実施形態との相違点を中心に解説する。また、第1実施形態や第2実施形態にて説明した構成要素と同じ形状・構造・機能を有するものについては、先に使用した符合を再度付与し、その説明を省略する。
【0052】
本実施形態に係る鋲受渡し装置(以下、本鋲受渡し装置と言う)も、給鋲装置(図示せず)から延びる鋲輸送用のチューブTの端部開口に隣接して設けられるものである。すなわち本鋲受渡し装置は、チューブT内の輸送路を輸送されてきた鋲を受け取り、更にこの鋲を、頭部が上方に位置する正規の姿勢で打鋲処理部(図示せず)側へ渡すのに用いられる。
【0053】
さて、図11から判るように、本鋲受渡し装置は、ベース部1’(図11には断面を示す)と、必要に応じて、このベース部1’の上方に突出可能に設けられた鋲仮受け部12と、加振手段3とを主要構成要素として具備する。
【0054】
このうちベース部1’は、言うまでもなく、上記第2実施形態にて説明したものと同じ構造である。すなわちベース部1’には、図12(一点鎖線にて示す中心線は図11および図12に共通)から判るように、スリット4’と、このスリット4’から続く凹部5’とが形成されている。特にスリット4’は、深さ寸法D’が、受渡しの対象となる全ての鋲の軸部長さよりも十分に大きく、また、幅寸法B’が、鋲の軸部径よりも大きく、かつ、鋲の頭部径よりは小さなものであるよう構成されている。
【0055】
また凹部5’は、上記スリット4’の上端側に、同スリット4’から連続して形成されている。そして、凹部5’の幅寸法(特に凹部5’の開口5a’の幅寸法)Cは均一となっている。但し、この幅寸法Cは、言うまでもなく、鋲の頭部径よりも大きなものである。
【0056】
一方、鋲仮受け部12は、ベース部1’の上に突出し、輸送されてきた鋲を一時的に受けるよう構成されている。また、この鋲仮受け部12には、受けた鋲をベース部1’の凹部5’側へ落下させるための貫通孔12aが形成されている。つまり、図11に示す状態から更に鋲仮受け部12を右に変位させることで、この鋲仮受け部12の上に存在している鋲は、貫通孔12aから下方に落下する。ちなみに本実施形態では、この貫通孔12aを、上方側に向かって開拡するテーパー状の内周面を有するもの(すり鉢状のもの)としている。
【0057】
更に言えば、本鋲受渡し装置には鋲押出し機構が設けられる。図11中、Xで示すのが、本実施形態において採用された、この鋲押出し機構の主要部(以下、鋲押出しアームと言う)である。このL字形の鋲押出しアームXは、上記鋲仮受け部12の底面に固定されており、かつ、ベース部1’のスリット4’内に存在している。したがって鋲押出しアームXは、鋲仮受け部12と共に、図11中、左右方向に変位(往復動)可能である。
【0058】
鋲押出しアームXは、正規の姿勢でベース部1’にセットされた鋲を、装填機構が待機する位置まで、ベース部1’の凹部5’に沿って移送する役割を果たす。但し、鋲押出しアームXは、これに先だって、鋲の姿勢を整える作業に、すなわち頭部を下にしてベース部1’上に落下した鋲を転倒させる作業にも使用される。
【0059】
更に詳しく言うと、鋲がベース部1’の凹部5’内において、その頭部を下にして直立してしまった場合には、鋲仮受け部12と共に鋲押出しアームXが、上述したように、図11中、左右方向に往復動する。ここで、鋲押出しアームXの上側縁部は、こうした状態で直立する鋲の頭部と接触可能な高さに位置しており、かつ、上記動作(鋲押出しアームXの往復動)が、図示していないセンサによって鋲の倒れたことが検知されるまで繰り返される。そして、これにより鋲が正規の姿勢となった後に、鋲押出しアームXが鋲を所定の位置まで移送することになる。
【0060】
なお説明が前後するが、上記第2実施形態の装置についても、細部の様態は異なるものの、この鋲押出し機構(鋲押出しアームX)と同等のものが配備されている。
【0061】
上記のごとく構成された本鋲受渡し装置においても、鋲の姿勢を整える手順は、基本的に上記第2実施形態のそれと同じである。すなわち鋲仮受け部12が、第2実施形態における姿勢変換補助部10と同じように機能し、この結果、最終的に鋲は、頭部を上にし、軸部がスリット4’に納まった格好となる。ゆえに、軸部の長さが短い鋲を、頭部が上方に位置する、自動装填に不可欠な正規の姿勢で、確実に打鋲処理部側へ渡すことが可能となる。
【0062】
【発明の効果】
本発明に係る鋲受渡し装置によれば、軸部の長さが短い鋲についても、確実に、その頭部が上方に位置する姿勢で、打鋲処理部側へ渡すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る鋲受渡し装置の概略側面図
【図2】本発明の第1実施形態に係る鋲受渡し装置を構成するベース部の斜視図
【図3】本発明の第1実施形態に係る鋲受渡し装置を構成するベース部の横断面図
【図4】本発明の第1実施形態に係る鋲受渡し装置を構成する鋲仮受け部の斜視図
【図5】(a)〜(c)は本発明の第1実施形態に係る鋲受渡し装置の機能を説明するための概略図
【図6】本発明の第2実施形態に係る鋲受渡し装置の概略側面図
【図7】本発明の第2実施形態に係る鋲受渡し装置を構成するベース部の斜視図
【図8】本発明の第2実施形態に係る鋲受渡し装置を構成するベース部の横断面図
【図9】本発明の第2実施形態に係る鋲受渡し装置を構成する姿勢変換補助部の斜視図
【図10】(a)〜(c)は本発明の第2実施形態に係る鋲受渡し装置の機能を説明するための概略図
【図11】本発明の第3実施形態に係る鋲受渡し装置の概略側面図
【図12】本発明の第3実施形態に係る鋲受渡し装置を構成するベース部の横断面図
【符号の説明】
1 ベース部
2 鋲仮受け部
2a 鋲仮受け部の切欠き
2b 鋲仮受け部の鋲仮受け領域面
3 加振手段
4 ベース部のスリット
5 ベース部の凹部
6 駆動手段
F 鋲
T 鋲輸送用チューブ
Claims (3)
- 輸送路を輸送されてきた鋲を受け取り、この鋲を頭部が上側に位置する姿勢で打鋲処理部側へ渡すための装置であって、
深さ寸法が鋲の軸部長さよりも大きく、幅寸法が鋲の軸部径よりも大きくて鋲の頭部径より小さな第1のスリット部と、
前記第1のスリット部の上部に続いて設けられた幅寸法が鋲の頭部径より大きな第2のスリット部と、
前記第2のスリット部の上部に設けられた鋲仮受け部と、
前記鋲仮受け部に対して設けられた鋲押出しアームと、
前記鋲仮受け部を往復動させる駆動手段
とを具備し、
前記鋲仮受け部には上部側の開口径が大きなテーパー状貫通孔が構成され、
前記鋲押出しアームの上側縁部が前記第2のスリット部に在る鋲頭部に対して当接可能に構成されてなり、
前記駆動手段によって往復動する鋲仮受け部の往復動に伴って往復動する鋲押出しアームが前記第2のスリット部に上下が逆転して在る鋲の頭部に当接作用し、該鋲の頭部が上側で該鋲の軸部が下側となって該軸部が前記第1のスリット部に在るようにしたことを特徴とする鋲受渡し装置。 - 第1のスリット部および第2のスリット部がベース部に設けられてなり、
前記ベース部を振動させる加振手段を更に具備してなる
ことを特徴とする請求項1の鋲受渡し装置。 - 輸送されて来た鋲を受ける鋲仮受け部の面が弾性材料で構成されてなる
ことを特徴とする請求項1又は請求項2の鋲受渡し装置。
Priority Applications (1)
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