JP4281239B2 - 紡機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はリング(リングフランジ)上を滑走するトラベラを介してボビンに糸を巻き取るリング精紡機、リング撚糸機等の紡機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リング精紡機においては、一般に、フロントローラから送り出された糸が、ラペットに固定されたスネルワイヤと、バルーンコントロールリングと、リングレールに固定されたリングフランジ上を滑走するトラベラとを経て、スピンドルと一体に回転するボビンに巻き取られる。そして、紡出糸張力は、バルーニングの安定性、糸品質と密接な関係があり、紡出糸張力を所定の範囲内に収めることが重要となる。
【0003】
バルーンコントロールリングは紡出中にスネルワイヤとトラベラとの間で糸が外方にふくらんだ状態(バルーン)が過剰になるのを抑制することにより、ノードが発生してバルーンがボビンへ巻付いて糸切れを起こすのを防止する。しかし、バルーンコントロールリングは一般に線材で形成されているため、紡出速度のより高速化を行おうとすると、高速時にバルーンが過大になって糸が隣接する錘又はセパレータと干渉し、糸切れや糸の品質低下が発生する。また、紡出速度の高速化が進むとバルーンコントロールリングに対する糸の接触圧力が大きくなり、摩擦による糸の毛羽立ち等の糸品質の低下や糸切れが発生し易くなる。
【0004】
これらの不具合を解消する精紡機として、実公平2−43882号公報には図5に示すような精紡機が提案されている。この精紡機はスピンドル(図示せず)に装着されて一体回転されるボビン61の外周を囲繞して昇降するカバー62を備え、カバー62の下端内周部に設けられたリング63にトラベラ64が滑走可能に取り付けられている。カバー62は上側が管糸の外径より小さな径の円筒状に、中間部から下方が円錐状に拡径するように形成されている。カバー62を支持する昇降フレーム65に支持フレーム66が立設され、支持フレーム66に糸Yをカバー62内に案内するヤーンガイド67が支持されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
トラベラ及びトラベラが滑走するリングフランジは、滑走時の摩擦により摩耗が進行し、放置すると糸切れの増加、糸品質の低下を引き起こす。そして、トラベラはリングフランジに比較して摩耗し易く、1〜2,3週間で交換され、リングフランジは2〜3年程度で交換される。実公平2−43882号公報に開示された精紡機では、リング63はトラベラ64全体が円筒状のカバー62の内側で滑走するように形成されているため、トラベラ64の交換が難しいだけでなく、糸継ぎの際に糸をトラベラ64の所定位置にかける作業が非常に難しいという問題がある。また、リング63がカバー62と一体のため、摩耗したリング63の交換時にカバー62ごと全体を交換する必要があり、コストが高くなるという問題もある。
【0006】
また、リング精紡機では、トラベラに付着した繊維が成長して大きな塊まりになるのを防止するため、一般にトラベラクリアラが装備される。しかし、前記実公平2−43882号公報に開示された装置のようにリング63がカバー62の内側に配置された構成では、トラベラクリアラを取り付けた場合トラベラクリアラが管糸と干渉し易くなるという問題がある。
【0007】
本発明は前記の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的はスピンドル回転速度を従来のリング精紡機に比較して飛躍的に増大させるため筒状体の内側を糸が走行する構成の紡機において、糸継ぎ作業やトラベラ交換作業を比較的容易にできる紡機を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、スピンドルに挿入されたボビンの外周を囲繞して昇降される筒状体の下部に、トラベラの滑走を案内するリングフランジを前記トラベラの一部が前記リングフランジの下端外周より外側に配置されるように設け、前記筒状体の上方に、糸を該筒状体内に案内するヤーンガイドを筒状体と一定の間隔で昇降するように配設した。
【0009】
この発明では、紡出糸はヤーンガイドを経て筒状体の内側へ導かれ、筒状体の下部に設けられたリングフランジ上を滑走するトラベラを経てボビンに巻き取られる。スピンドルの回転が高速の場合も、糸は筒状体によりバルーンが規制された状態でボビンに巻き取られるため、糸のバルーンが過大にならず、正常に巻取りが行われる。トラベラは一部がリングフランジの下端外周より外側に配置される状態でリングフランジに係止されているため、糸継ぎ作業時に糸をトラベラに係止する作業が、トラベラ全体が円筒状のカバーの内側で滑走するように形成された従来装置に比較して容易になる。また、トラベラ交換作業も容易になる。
【0010】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記リングフランジは前記筒状体に着脱可能に設けられている。この発明では、トラベラとの摩擦でリングフランジが交換を必要とするほど摩耗した場合、リングフランジのみを筒状体から取り外して交換することができ、カバー(筒状体)ごと全体を交換する従来装置に比較して、コストが安くなる。
【0011】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記リングフランジにはトラベラクリアラが取り付けられている。従って、この発明では、トラベラに付着した繊維が成長して大きな塊りになるのが、トラベラクリアラの作用により防止され、糸切れが起こり難くなるとともに、糸品質が向上する。
【0012】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記筒状体は一定径の円筒状に形成されている。従って、この発明では、糸が筒状体内を円滑に案内され易くなり、巻取りがより安定して行われる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をリング精紡機に具体化した一実施の形態を図1及び図2に従って説明する。図1(a),(b)に示すように、スピンドルレール1にはスピンドル2が回転可能に支持され、図示しない駆動機構により回転されるようになっている。スピンドル2の上方にはドラフトパート3が配設されている。
【0014】
スピンドル2に貫通された状態で昇降可能に配設された筒状体4の下部にはリングフランジ5が設けられている。筒状体4はピラー6に支持された支持プレート7に固定されている。ピラー6と共に支持プレート7を昇降させるリフティング装置は、ラインシャフト8を介してピラー6を昇降させるようになっている。ラインシャフト8はスピンドルレール1の下方において精紡機機台の長手方向(図1の紙面と垂直方向)に沿って配設され、所定間隔でねじ歯車8aが一体回転可能に嵌着されている。機台フレーム(図示せず)にはラインシャフト8のねじ歯車8aと対応する位置に、ナット体(ボールナット)9が図示しない支持部材を介して回転可能に支持されている。ナット体9の外周にはねじ歯車8aと噛合するねじ歯車9aが一体に形成されている。ピラー6は、上下方向に移動可能に機台フレームに支承されるとともに、その下部側にナット体9に螺合するスクリュー部6aが形成されている。ラインシャフト8はサーボモータ(図示せず)により正逆回転駆動され、ラインシャフト8の正転時に各筒状体4が支持プレート7を介してピラー6と共に上昇移動され、ラインシャフト8の逆転時にピラー6と共に下降移動される。ラインシャフト8は回転速度及び回転方向が自由に変更可能となっている。
【0015】
筒状体4は満管糸の外径より若干大きな一定径の円筒状に形成されている。リングフランジ5は筒状体4に着脱可能に設けられている。図2(a),(b)に示すように、リングフランジ5は上部の内径が筒状体4の外径より若干小さく形成され、筒状体4の下部に嵌合固定されている。筒状体4の外周下端には膨出部4aが形成され、リングフランジ5の内面に形成された環状溝5aに膨出部4aが嵌合することで、簡単には外れないようになっている。
【0016】
リングフランジ5の下部にはトラベラ10の滑走を案内するフランジ部5bが、フランジ部5bに装着されたトラベラ10が斜めでかつ下側が外側に位置する姿勢で滑走するように、即ちトラベラ10の一部がリングフランジ5の下端であるフランジ部5bの外周面より外側に配置されるように設けられている。
【0017】
支持プレート7には、糸Yを筒状体4内に案内するヤーンガイドとしてのスネルワイヤ11を備えたラペット12が、筒状体4と一定の間隔で昇降するように配設されている。ラペット12は支持プレート7の各筒状体4と対応する位置に立設された支持ロッド13の上部に取り付けられている。
【0018】
リングフランジ5にはトラベラクリアラ14が取り付けられている。図2(a),(b)に示すように、トラベラクリアラ14は板状のクリアラ本体14aと、クリアラ本体14aと直交するように形成された取付部14bとを備えている。そして、クリアラ本体14aの先端付近がトラベラ10の円弧部と所定のクリアランスを有するように、取付部14bの先端側がリングフランジ5の上部内側に形成された凹部5cに挿入された状態でリングフランジ5の所定位置に固定されている。
【0019】
次に前記のように構成された装置の作用を説明する。図1(a)は巻取りがある程度進んだ状態の概略側面図を示し、図1(b)は、巻始め位置に筒状体4が配置された状態の概略側面図を示す。
【0020】
紡機機台が運転されると、スピンドル回転速度、リフト長、チェイス長等の紡出条件に従って、ラインシャフト8が所定の周期で正逆回転駆動される。ラインシャフト8の正逆回転によりピラー6が昇降され、筒状体4及びラペット12が支持プレート7とともに所定のチェース長で昇降される。そして、ドラフトパート3のフロントローラから送出された糸Yが、スネルワイヤ11、筒状体4及びトラベラ10を経てスピンドル2に装着されたボビンBに巻き取られる。
【0021】
スネルワイヤ11からトラベラ10までの糸Yの走行経路の大部分は筒状体4の内側となり、スピンドル2の高速回転に伴って糸Yに作用する遠心力によりバルーンが拡がろうとしても、筒状体4に接触することによりバルーンの拡がりが規制され、糸Yが大きな遠心力で振り回されることがない。そして、過大な張力が糸Yに作用するのが抑制される。また、筒状体4の上端とスネルワイヤ11との間の距離は、トラベラ10からスネルワイヤ11との間の距離に比較して短いため、その間でバルーンが異常に膨張することはない。
【0022】
巻取り運転中、トラベラ10に付着した繊維等は、大きな塊りになる前にトラベラクリアラ14によって除去される。
この実施の形態では以下の効果を有する。
【0023】
(1) スピンドル2に挿入されたボビンBの外周を囲繞して昇降される筒状体4の下部に設けられたリングフランジ5上を滑走するトラベラ10を介して糸YがボビンBに巻き取られ、糸Yを筒状体4内に案内するヤーンガイド(スネルワイヤ11)は筒状体4と一定の間隔で昇降する。従って、スピンドル2の回転が高速の場合も、糸Yは筒状体4によりバルーンの異常膨張が規制された状態で正常に巻取りが行われる。また、筒状体4の上端とスネルワイヤ11との距離が、巻始めから終了時まで一定のため、巻取りが安定した状態で行われる。
【0024】
(2) トラベラ10の滑走を案内するリングフランジ5が、トラベラ10の一部がリングフランジ5の下端外周より外側に配置されるように設けられている。従って、トラベラ10全体が円筒状のカバーの内側で滑走するように形成された従来装置に比較して、糸継ぎ作業の際に糸Yをトラベラ10の所定位置にかける作業が容易になるとともに、トラベラ交換作業の際のトラベラの取り外し及び装着も容易となる。
【0025】
(3) リングフランジ5が筒状体4に着脱可能に設けられている。従って、トラベラ10との摩擦でリングフランジ5が交換を必要とするほど摩耗した場合、リングフランジ5のみを筒状体4から取り外して交換することができ、カバー(筒状体)ごと全体を交換する従来装置に比較して、コストが安くなる。また、筒状体4とリングフランジ5とが一体となったものは製造に手間がかかるが、筒状体4とリングフランジ5とを別々に製造した後、両者を組み付けることで製造コストも安くなる。
【0026】
(4) リングフランジ5は嵌合により筒状体4に取り付けられているため、ねじによる取付に比較して製造及び交換作業が簡単になる。
(5) リングフランジ5にはトラベラクリアラ14が取り付けられている。従って、トラベラ10に付着した繊維が成長して大きな塊りになるのが、トラベラクリアラ14の作用により防止され、糸切れが起こり難くなるとともに、糸品質が向上する。
【0027】
(6) 筒状体4は一定径の円筒状に形成されている。従って、筒状体4の形状が単純で製造が簡単になるとともに、糸Yが筒状体4内を円滑に案内され易くなり、巻取りがより安定して行われる。また、玉揚げの際、カバー(筒状体)の上部が管糸の外径より小さな円筒状に形成された従来装置と異なり、満ボビンが筒状体4内を通過するようにしてスピンドル2から引き抜くことができる。
【0028】
(7) ラペット12が筒状体4と一体に昇降可能に構成されている。従って、ラペット12の昇降運動を行わせる構成が簡単になる。
なお、実施の形態は前記に限定されるものでなく、例えば、次のように具体化してもよい。
【0029】
○ トラベラ10の滑走を案内するリングフランジ5の形状は、トラベラ10の一部がリングフランジ5の下端外周より外側に配置される形状であれば特に限定されるものではなく、例えば図3に示すように、フランジ部5bの端面が真下を向くような形状としてもよい。この場合、糸継ぎ時にトラベラ10に糸Yを掛ける作業や、トラベラ交換作業がより容易になる。また、筒状体4の下端を大径に形成し、リングフランジ5の上部外周が筒状体4の内側に嵌合する構成としてもよい。
【0030】
○ リングフランジ5を筒状体4に着脱可能に設ける構成として、図4(a)に示すように、筒状体4の下部外周面に雄ねじ部15を形成し、リングフランジ5の上部内周面に雌ねじ部16を形成する。そして、両者を螺合する構成としてもよい。
【0031】
○ リングフランジ5を筒状体4に着脱可能に嵌合する構成として、図4(b)に示すように、筒状体4の下端部を外側に折り曲げ、その折曲げ部17をリングフランジ5の上部内側に嵌合させる構成としてもよい。この場合、筒状体4の径とリングフランジ5の内径とを正確に形成しなくても、折曲げ部17の弾性変形により嵌合が確実に行われる。
【0032】
○ トラベラクリアラ14をトラベラ10の円弧部と対向せずに、図4(b)に示すように、トラベラ10のフランジ部5bから外に露出した部分の端部と対向するように配置してもよい。
【0033】
○ トラベラクリアラ14の取り付け箇所はリングフランジ5と筒状体4との間に限らず、リングフランジ5又は筒状体4に直接取り付けてもよい。
○ 筒状体4の形状は一定径の円筒状に限定されるものではなく、径が長手方向の途中で変化する形状や、下部側の径が大きくなる形状としてもよい。
【0034】
○ ラペット12を支持する支持ロッド13を支持プレート7に立設して筒状体4と一体的に昇降させる構成に代えて、支持ロッド13を独立して昇降させる駆動系を設けてもよい。この場合、巻取り初期にラペット12を停止した状態で筒状体4を昇降させ、途中からラペット12を筒状体4と同期して昇降させることにより、機台の高さを低くできる。
【0035】
○ 支持プレート7のリフティング装置はラインシャフト8及びナット体9等を使用する構成に限らず、ハートカムを用いた公知のリフティング装置を使用してもよい。
【0036】
○ スピンドル2の駆動は、ベルトで駆動する構成に限らず、各錘毎にスピンドル駆動用モータを設けた、所謂単錘駆動タイプの構成としてもよい。単錘駆動タイプの場合はベルト駆動のタイプに比較してより高速化が可能になる。
【0037】
○ リングフランジ5を筒状体4に対して取り外し不能に固着あるいは一体形成してもよい。
○ リング精紡機に限らずリング撚糸機に適用してもよい。
【0038】
前記実施の形態から把握できる請求項記載以外の発明(技術思想)について、以下に記載する。
(1) 請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記リングフランジはフランジ部の形状が、トラベラが傾斜した状態で滑走するように形成されている。
【0039】
(2) 請求項2に記載の発明において、リングフランジは筒状体に螺着されている。
(3) 請求項2に記載の発明において、リングフランジは筒状体に嵌合固定されている。
【0040】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1〜請求項4に記載の発明によれば、スピンドル回転速度を従来のリング精紡機に比較して飛躍的に増大させるため筒状体の内側を糸が走行する構成の紡機において、糸継ぎ作業やトラベラ交換作業を比較的容易にできる。また、請求項2に記載の発明によれば、リングフランジが摩耗した際に、リングフランジのみの交換が可能になり、コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 一実施の形態の精紡機の概略側面図。
【図2】 (a)はリングフランジの取付状態を示す部分断面図、(b)はトラベラクリアラの取付け状態を示す平面図。
【図3】 別の実施の形態のリングフランジの取付状態を示す部分断面図。
【図4】 別の実施の形態のリングフランジの取付状態を示す部分断面図。
【図5】 従来装置の一部破断要部側面図。
【符号の説明】
2…スピンドル、4…筒状部、5…リングフランジ、10…トラベラ、11…ヤーンガイドとしてのスネルワイヤ、14…トラベラクリアラ、B…ボビン、Y…糸。
Claims (4)
- スピンドルに挿入されたボビンの外周を囲繞して昇降される筒状体の下部に、トラベラの滑走を案内するリングフランジを前記トラベラの一部が前記リングフランジの下端外周より外側に配置されるように設け、前記筒状体の上方に、糸を該筒状体内に案内するヤーンガイドを筒状体と一定の間隔で昇降するように配設した紡機。
- 前記リングフランジは前記筒状体に着脱可能に設けられている請求項1に記載の紡機。
- 前記リングフランジにはトラベラクリアラが取り付けられている請求項1又は請求項2に記載の紡機。
- 前記筒状体は一定径の円筒状に形成されている請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の紡機。
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