JP4280839B2 - 厚膜胞子及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、病原微生物の活動を抑制する菌糸体微生物を飢餓培養して、その厚膜胞子を生成し、該厚膜胞子を使用することを目的とした厚膜胞子及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来菌糸体微生物には、微量の厚膜胞子が含まれていることが知られていた。前記厚膜胞子は、環境対応性が高く、低温はもとより、高温においても死滅しないことが知られていた。またニンビヤ スシルピコラK−004(FERM BP−4448)の厚膜胞子及びその誘導培地に関する発明の提案がある(特開平7−303481号)。
【0003】
【発明により解決しようとする課題】
前記に示した天然に存在する厚膜胞子は、極めて微量である為に、これを集めて使用することは困難である。
【0004】
また前記発明に示された培地では、一般的菌糸体微生物の厚膜胞子を効率よく多量生産することはむずかしい問題点があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、菌糸体微生物を飢餓培養することにより、目的とする菌糸体微生物の厚膜胞子を効率よく多量生産することに成功したのである。
【0006】
即ちこの発明は、トリコデルマ ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ ハマタム(Trichoderma hamatum)の微生物を栄養培地で培養した後、前記栄養培地から菌糸体と分生胞子を分離し、次いで前記菌糸体と分生胞子から栄養成分を除去した後、該菌糸体と分生胞子とを、シリカゲル70重量%〜99重量%に少量の有機物繊維粉末0.6重量%〜2.5重量%と、微量のMg、Mn、Fe、Cu、Ni、Sn及びZnと少量の水を加えてなる飢餓培地を用いて培養した後、厚膜胞子を分離することを特徴とした厚膜胞子の製造方法であり、トリコデルマ ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ ハマタム(Trichoderma hamatum)の微生物を栄養培地で培養した後、前記栄養培地から菌糸体と分生胞子を分離し、次いで前記菌糸体と分生胞子から栄養成分を除去した後、該菌糸体と分生胞子とを、シリカゲル70重量%〜99重量%に少量の有機物繊維粉末0.6重量%〜2.5重量%と、微量のMg、Mn、Fe、Cu、Ni、Sn及びZnと少量の水を加えてなる飢餓培地を用いて培養した後、ミクロフィルターにより厚膜胞子を篩い分けし、これを水分6%〜12%に乾燥することを特徴とした厚膜胞子の製造方法であり、請求項1又は2記載の製造方法により製造したことを特徴とする厚膜胞子である。
【0007】
なお、栄養培地で菌糸体微生物を培養すると、菌糸体と共に分生胞子もできるので、前記のようにこの菌糸体と分生胞子から栄養成分を除去し、当該栄養成分を除去した菌糸体と分生胞子を飢餓培養して厚膜胞子を製造しているが、栄養培地で菌糸体微生物を培養した際に菌糸体と共にできる分生胞子は菌糸体に比較すると少ないので、前記のように水などによって栄養成分の除去を行う際に当該分生胞子をも除去し、培養され栄養成分が除去された菌糸体のみを飢餓培養して本発明の厚膜胞子を製造することも可能である。
【0008】
また、本発明が提案する前記厚膜胞子の製造に用いる飢餓培地は、シリカゲルを主材料とし、これに少量の有機物繊維粉末及び微量のMg、Mn、Fe、Cu、Ni、Sn及びZnを混入し、これに適量の水を加えて構成したものである。前記における各成分は、シリカゲルを70〜99%、有機物繊維粉末はふすま0.1〜0.5%とオガコ微粉(大鋸屑微粉)0.5〜2.0%、又はふすま0.1〜0.5%と蚕糞0.5〜2.0%とし、これに微量のMg、Mn、Fe、Cu、Ni、Sn及びZnと、飢餓培養に必要な少量の水分を加えて構成することができる。
【0009】
前記のふすま、オガコ微粉(大鋸屑微粉)、蚕糞、微量のMg、Mn、Fe、Cu、Ni、Sn及びZnは、栄養源、ミネラルとしての役割を果たすものであり、これらが吸収されやすくなるように、0.1〜1.0μm程度のサイズに微粉砕して用いることが望ましい。
【0010】
更に、本発明が提案する厚膜胞子の使用方法は、菌糸体微生物を飢餓培養して得た厚膜胞子を施用処理物へ0.01〜100重量%混入させ、若しくは前記厚膜胞子を施用処理物にて1〜1万倍に希釈して使用することを特徴とした厚膜胞子の使用方法である。ここで、厚膜胞子を施用処理物へ混入あるいは、厚膜胞子を施用処理物にて希釈する前記範囲の下限は、厚膜胞子を発芽させて病原微生物の活動を抑えるという効果を期待する上で、最低でもこの程度の割合とすることが好ましく、一方、前記上限を越えても効果に大きな差が生じなくなることから定められるものである。なお、この範囲において、費用対効果の観点から検討して、最も好ましい範囲は、厚膜胞子を施用処理物へ1〜20重量%混入させ、若しくは厚膜胞子を施用処理物にて5〜100倍に希釈して使用する場合になる。
【0011】
前記における施用処理物は、微粉砕された厚膜胞子の栄養源となる物質を含むようにして構成することが好ましい。栄養源を、例えば、0.1〜1.0μm程度のサイズに微粉砕し、これを含めて前記施用処理物を構成しておけば、栄養素が吸収されやすくなり、厚膜胞子の発芽、成長にとって有利である。
【0012】
この発明における厚膜胞子とは、菌糸体の先端または中間の細胞に貯蔵物質が集積して、形が大きく、しかも細胞壁が厚くなり、多くは壁が二重化した無性胞子である。また不適切な環境に耐えて生きるための胞子であって、本来は分散、生殖細胞的意味の胞子ではないが、固体に多数生じる場合には増殖にも役立つ。また採取した厚膜胞子は高い発芽率を示す。例えばトリコデルマ ハマタム(Trichoderma hamatum)、トリコデルマ ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、グリオクラジアム ビイレナ(Gliocladium virena)、タラロミセス フラバス(Talaromyces flavus)、アスペルギラス メレウス(Aspergillus Melleus)などの分生胞子の土壌中における発芽率は1〜22%である。これに対し、前記各菌糸体微生物の厚膜胞子の土壌中における発芽率は39〜99%であった。
【0013】
前記トリコデルマ ビリデ、トリコデルマ ハルジアナム、トリコデルマ ハマタムなどの菌株を、カラスムギの組織で培養した場合に、カラスムギの組織片1g当りの厚膜胞子数は109 〜1010個であったが、これは、添加した菌糸の0.1〜10(重量)%位と推測され、効率のよい培養はむずかしかった。
【0014】
この発明における厚膜胞子は、熱耐性が大きく、例えば−5℃〜+70℃位までは、保存中に破壊されるおそれはない。尤も瞬間的には100℃でも耐えられることが判明した。従って、この発明の厚膜胞子は、地球上における通常の生物生活温度に耐え得るということであり、特に微生物使用地帯又は使用時期の温度は15℃〜40℃程度であるから、厚膜胞子を多量生産し、地球上の如何なる場所へ発送しても輸送中の熱条件によって失効を招くおそれはなく、発芽率低下のおそれもない。
【0015】
ただし、この発明の厚膜胞子は、保存中あるいは輸送中などにおける発芽を防止するために、保存中、輸送中などにおいては、その水分が6%〜12%の範囲におさまるように取り扱う必要がある。
【0016】
従来、病原微生物の活動を抑える有用な微生物は各種提案されていたが、何れも菌糸体及び分生胞子を使用していたので、発芽率が悪いのみならず、輸送又は保存中の熱管理不十分の為に、一層発芽が悪くなり十分の効力を発揮できない場合があり、効力の安定性について不十分であった。
【0017】
しかしながら、病原微生物の活動を抑える有用な微生物の厚膜胞子を用いることにより、輸送又は保存の後であっても、少くとも厚膜胞子は予定通り発芽してその性能を十分発揮することができるので、病原微生物の活動を抑えるという効果の安定性が保たれることが判明した。
【0018】
一般に病原微生物の活動を抑える有用な微生物は、化学農薬と比較して下記のように幾多の利点がある。
【0019】
1. 病原微生物に対する選択性が高く、生態系を乱す恐れがない。
2. 作物に被害を生じるおそれがない。
3. 人畜・魚介類に対し危害がない。
4. 病害虫の病原菌に対する抵抗性を与えない。
5. 水や土壌や作物への汚染や蓄積がない(長期使用による耐性の生成がない)。
【0020】
前記において、特に病原微生物に対する抵抗性を与えない点は、長期間使用しても効力の減少又は消滅がないことを意味し、微生物の使用に重要な特性である。
【0021】
例えば土壌菌から抽出し、又はその生成物を利用する抗生物質は、人類を病気から護る点で抜群の効果があるが、これを連続して使用することによって病原菌に耐性を付与し、抗生物質に耐性のある病原菌が出て来ているので、これに対し新規抗生物質の開発を余儀なくさせていることは、しばしば経験する所である。この一点だけでも厚膜胞子が如何に優れているかが判る。
【0022】
前記厚膜胞子の製品化については、単独又は分生胞子と混合してマイクロカプセルに封入したり、あるいは顆粒化、錠剤化、微粉化するなど、従来公知の商品形態は何れも使用することができる。本発明の厚膜胞子は、水分が6%〜12%の範囲におさまるような乾燥状態で保存することが唯一の条件であり、長期保存(1年以上)であっても、乾燥状態においておけば、発芽率の低下は認められなかった。
【0023】
この発明の対象となる実験済微生物は、トリコデルマ ハマタム、トリコデルマ ハルジアナム、トリコデルマ ビリデ、グリオクラジアム ビレイナ、タラロミセス フラバス又はアスペルギラス メレウスなどである。
【0024】
その他においても、菌糸体と分生胞子を有する微生物は、全部厚膜胞子を生成するものと推定されるので、本発明の厚膜胞子の製造方法とその使用方法、厚膜胞子の製造に用いる飢餓培地の発明は、現に判明している菌糸体と分生胞子を有するすべての微生物に適用することができる。
【0025】
【実施例1】
微生物としてトリコデルマ ハルジアナムを採用し、これを従来公知の方法で培養する。すなわち、添付した図1に概念的に示されているトリコデルマ ハルジアナムの菌糸体1と分生子2を、生育用培地としてのポテトデキストロース寒天培地に接種し、48時間、15℃〜30℃で表面培養する。次に培地から菌糸体と分生胞子(例えば5μ以下の大きさ)を分離し、十分の量の滅菌した水(菌糸体の500倍から1000倍程度)に入れて洗浄し、菌糸体と分生胞子の表面に付着している栄養分を除去する。
【0026】
前記のようにして栄養分を除去した菌糸体と分生胞子を飢餓培地に接種し、48時間飢餓培養した。
【0027】
この飢餓培養の結果、飢餓培地に接種した菌糸体と分生胞子の合計3gから厚膜胞子が1g製造できた。本発明によれば、菌糸体微生物の厚膜胞子を効率よく生産できることが分かる。
【0028】
このようにして製造した厚膜胞子は、施用処理物に0.01重量%〜100重量%の割合で混入させ、若しくは、施用処理物によって1〜1万倍に希釈して、病原微生物の活動を抑制すべき土壌に散布、埋設等して使用する。
【0029】
なお、このように本発明の厚膜胞子を使用する場合、厚膜胞子の拡散性、付着性を高めるべく、以下のような処理を施すことが好ましい。
【0030】
前記のようにして製造した厚膜胞子をミクロフィルターにより篩い分ける(例えば、5μ〜10μの大きさの厚膜胞子を篩い分ける)。次いで、篩い分けられた厚膜胞子を水分10%に乾燥し、これに拡散剤0.5重量%、展着剤0.5重量%を添加して十分混合し、水分が6%〜12%程度になるように乾風乾燥する。例えば、30℃で2〜24時間、乾風乾燥するなどして水分を6%〜12%程度にさせる。このようにして、水分を6%〜12%とし、拡散材、展着剤と混合させた後に、施用処理物に混入させ、あるいは施用処理物にて希釈して土壌に散布、埋設等すれば、厚膜胞子の拡散性、付着性を高めることができる。
【0031】
前記において、ミクロフィルターにより所定の大きさ、例えば、直径5μ〜10μの厚膜胞子を篩い分けたが、これはこの実施例の場合、厚膜胞子の大きさがほぼ5μ〜10μの範囲におさまるので、この範囲の大きさの厚膜胞子を篩い分けるのに適したサイズのミクロフィルターを用いたものである。すなわち、製造した厚膜胞子の大きさに応じて、最も効率よく厚膜胞子を篩い分けることのできるサイズのミクロフィルターを用いることになる。
【0032】
なお、菌糸体と分生胞子を飢餓培地に接種して飢餓培養し厚膜胞子を得た際に、菌糸体も残っている場合、前記のようなミクロフィルターによる篩い分けを行うと、当該残存していた菌糸体も篩い分けられてしまう。しかし、製造した厚膜胞子の製品の中に菌糸体が混入していても、特に問題はなく、逆に、製品として保存、運搬等している間に、混入していた菌糸体が死なずに、散布等された土壌中において当該混入していた菌糸体が発芽することになれば、病原微生物の活動を抑制するという効果にとって好都合である。そこで、ミクロフィルターによって厚膜胞子を篩い分けることなしに、拡散材、展着剤と混合させ、水分6%〜12%の間で乾燥、保存し、製品として使用することもできる。
【0033】
前記において、拡散剤、展着剤との混合の前に、ミクロフィルターによって篩い分けた厚膜胞子を水分10%に乾燥させたが、これは、保存中あるいは輸送中に厚膜胞子の発芽に必要な水分量になることを避けるために行っているものであるので、水分6%〜水分12%の範囲に乾燥させれば十分である。
【0034】
また、厚膜胞子を拡散剤、展着剤と混合した後に、この全体を水分が6%〜12%程度になるように乾風乾燥しているが、これも、保存中あるいは輸送中における厚膜胞子の発芽を防止するために行っているものである。そこで、当初から水分6%〜12%程度の厚膜胞子と水分6%〜12%程度の拡散剤と展着剤とを混合すれば、得られた混合物の水分範囲も6%〜12%程度におさまっているので、混合後に特に乾風乾燥を行う必要はなく、この得られた混合物を水分量が6%〜12%程度の範囲におさまるようにして保存しておけばよいことになる。
【0035】
前記における拡散剤、展着剤の添加、混合は、厚膜胞子の拡散性、付着性を高めることを目的として行うものであり、施用処理物に厚膜胞子を混入させて得た状態の最終製品、あるいは施用処理物にて厚膜胞子を希釈して得た状態の最終製品に対して、それぞれ、0.01重量%〜0.1重量%の範囲で添加、混合すれば、十分である。また、拡散剤、展着剤は、厚膜胞子の拡散性、付着性を高めるという目的を達成できるものであれば十分であるので、通常に市販されているもの、例えば、拡散剤としては「エーロゾルOT」(商標)(和光純薬工業(株)の製造に係る試薬)、展着剤としては、「新リノー」(商標)(日本農薬(株))などを使用できる。
【0036】
前記において、土壌に散布、埋設等する前の最終製品とするために厚膜胞子を混入させる、あるいは厚膜胞子を希釈する施用処理物は、炭酸カルシウム、脱脂した米ぬか、及びふすまを、重量比で1:1:1にて混合して、微粉砕し、これに同重量のパーライトを混合して生成したものである。
【0037】
前記施用処理物を構成する炭酸カルシウム、米ぬか、ふすまは、厚膜胞子の発芽、成長に資するための栄養源としての役割を果たすものである。この中で、炭酸カルシウムは、栄養源の中でも特にミネラルを補給する役割をも果たすものであり、その他にもpHの緩衝剤としての役割も果たしている。しかし、基本的には、前記3者のいずれとも、厚膜胞子の発芽、成長に際しての栄養源としての役割を果たすものであるので、この役割を果たす物質であれば、この技術分野で知られている、他のいかなる物質を用いて施用処理物を構成することもできる。
【0038】
すなわち、本実施例においては、施用処理物に含ませる栄養源として炭酸カルシウム、脱脂した米ぬか、及びふすまを用いたが、これはコストの観点から採用したものであり、これらの組み合わせに限られず、厚膜胞子の発芽、成長に資する栄養源としての役割を果たすものであれば、種々の物質を適宜の割合で組み合わせて使用することができる。前記における炭酸カルシウム、脱脂した米ぬか、及びふすまの重量比での1:1:1の割合での混合も、この混合割合に限定されるものではなく、厚膜胞子の発芽、成長に際しての栄養源としての役割を果たすものとなっていれば種々の混合割合とすることができる。
【0039】
また、前記において、炭酸カルシウム、脱脂した米ぬか、及びふすまを、重量比で1:1:1にて混合した後、微粉砕したのは、栄養源を微粉砕することによって吸収され易くなるようにし、これによって厚膜胞子の発芽、成長を促そうとするためである。この観点より、施用処理物に含ませる栄養源は、そのサイズが0.1〜1.0μm程度になるように微粉砕しておくことが望ましい。
【0040】
施用処理物は、前記のように微粉砕した栄養源に同重量のパーライトを混合して構成したが、このパーライトは、弾粒構造をつくるため、また、ふ形剤として厚膜胞子を希釈する役割を果たすことを目的として加えるものである。したがって、これらの目的を達成することのできるものであれば、パーライト以外の物質を用いることも可能であり、また、微粉砕した栄養源との混合割合も1:1の重量割合に限定されるものではない。
【0041】
なお、前述したように厚膜胞子の拡散性、付着性を高めるために、製造した厚膜胞子に拡散剤、展着剤を添加、混合することが好ましいが、拡散剤、展着剤と共に、前記で説明したように準備した施用処理物をも、当該製造した厚膜胞子が当該施用処理物に0.01重量%〜100重量%の割合で混入され、あるいは当該施用処理物によって1〜1万倍に希釈されるように混合し、これによって得た混合物全体を水分6%〜12%程度の範囲におさまるように保存しておいて、病原微生物などの活動を抑制すべき土壌に埋設、散布して使用することもできる。
【0042】
前記のように準備した厚膜胞子を製品として市場に提供する際には、厚膜胞子を施用処理物に混入させて得た最終製品、あるいは施用処理物によって厚膜胞子を希釈して得た最終製品を、1mg宛マイクロカプセルに封入して製品としたり、顆粒又は、錠剤に成形して製品とすることができる。
【0043】
前記において、栄養分を除去した菌糸体と分生胞子を接種した飢餓培地は、シリカゲルと、ふすまと、オガコ粉末とを、シリカゲル70〜99%、ふすま0.1〜0.5%及びオガコ粉末0.5〜2.0%の割合で混合し、次いで、微量成分としてのMg、Mn、Fe、Cu、Ni、Sn及びZnを、これら微量成分の全体が、前記シリカゲル、ふすま及びオガコ粉末混合物の全体に対して、1〜100ppmとなるように加入、混合し、更に少量の水を加えて生成したものである。この水分は、前記の飢餓培地において菌糸体が飢餓培養され得るのに必要な量であれば十分である。このために、前記のようにシリカゲル、ふすま、オガコ粉末及び微量金属成分の混合物全体が、例えば、水分3〜20%程度を有するように調整して飢餓培地とする必要がある。なお、飢餓培養の効率のよさ等から考えると、前記混合物全体が、水分8〜13%程度を有するようにして飢餓培地とすることが好ましい。前記飢餓培地におけるふすま、オガコ粉末、微量成分としてのMg、Mn、Fe、Cu、Ni、Sn及びZnの混合割合(範囲)は、本発明の厚膜胞子の製造にとって好ましい混合割合(範囲)を下限及び上限としたものである。
【0044】
前記実施例における飢餓培地での培養は、温度5〜10℃の範囲で、pHを7から4に下げていくという過酷な極限条件の下で、48時間行ったものである。この培養時間は、厚膜胞子の形成を目的として行うものであるので、24時間〜240時間の範囲で行うことが好ましい。24時間より少ないと厚膜胞子が十分にできておらず、一方、240時間を越えた場合には、既に十分な量の厚膜胞子ができているので、時間の無駄となって経済的でないからである。
【0045】
前記における過酷な極限条件は、温度範囲として前記の5〜10℃以外に、35〜45℃の範囲を採用することもでき、またpHの調整も、7から4に下げていくのに代えて、7から9に上げていくようにすることも可能である。
【0046】
すなわち、本発明において、厚膜胞子を製造するべく、栄養成分を除去した菌糸体と分生胞子を飢餓培養するとは、前述した成分、配合割合で構成した飢餓培地を用い、温度5〜10℃あるいは35〜45℃の範囲で、pHを7から4に下げつつ、あるいはpHを7から9に上げつつ、24時間〜240時間、培養するものである。
【0047】
なお、この実施例では、生育用培地としてポテトデキストロース寒天培地を用いて、トリコデルマ ハルジアナムを培養したが、菌糸体微生物の培養は、従来公知の方法で行うことができるので、生育用培地としてMY寒天培地、ニンジン培地などを用いることも可能である。
【0048】
【試験例1】
微生物としてトリコデルマ ビリデを用い、前記実施例1で説明した方法にしたがって製造した厚膜胞子について1年間の保存試験を行ったところ、表1の結果を得た。下記の表1においては、実施例1で説明した方法に従って厚膜胞子を製造し、ミクロフィルターによる篩い分けを終えた時点の、厚膜胞子と分生胞子の1gあたりにおける発芽数(個)を、それぞれ「保存開始時において発芽する厚膜胞子数」「保存開始時において発芽する分生胞子数」としてあらわし、1年間保存した後の厚膜胞子1gあたりにおける発芽数(個)を、「保存(1年)後に発芽する厚膜胞子数」として表した。なお、厚膜胞子数、分生胞子数、総数は、それぞれ計測しているので、下記の表1における「総数」は、厚膜胞子数と分生胞子数とを加算したものではない。
【0049】
【表1】
Figure 0004280839
【0050】
この試験の結果、厚膜胞子の高い保存性が確認できた。
【0051】
【実施例2】
微生物としてアスペルギラス メレウスを採用し、これを従来公知の方法で培養する。すなわち、アスペルギラス メレウスの適量をMY寒天培地に接種し、pH7前後、28℃で48時間培養した。前記培地1g当り1×1013個の菌糸体微生物が培養されたことが確認できた。
【0052】
前記培地から菌糸体と分生胞子とを分離し、十分の水で洗浄して栄養分を除去した。
【0053】
シリカゲルと、ふすま(でんぷんの入ったもの)と、蚕糞とを、シリカゲル70〜99%、ふすま(でんぷんの入ったもの)0.1〜0.5%、蚕糞0.5〜2.0%の割合で混合し、この全体に対して、微量元素としてMg、Mn、Fe、Cu、Ni、Sn及びZnを、その微量元素全体を前記混合物に対して1〜100ppm添加、混合し、これらの混合物全体を水分を8〜13%に調整して飢餓培地を準備した。前記飢餓培地におけるふすま(でんぷんの入ったもの)、蚕糞、微量成分としてのMg、Mn、Fe、Cu、Ni、Sn及びZnの混合割合(範囲)は、本発明の厚膜胞子の製造にとって好ましい混合割合(範囲)を下限及び上限としたものである。
【0054】
前記栄養分を除去した菌糸体と分生胞子を、このように準備した飢餓培地に接種し、温度35〜45℃の下で、pHを7から4に下げつつ、48時間培養した。すなわち、飢餓培養を行った。
【0055】
飢餓培養が完了した後、ミクロフィルターを用いて所定の大きさ(直径5μ〜10μ)の厚膜胞子を篩分けた。
【0056】
計測したところ、重量比で、培養した菌糸体微生物(アスペルギラス メレウス)の10〜20%の厚膜胞子を製造することができた。本発明によれば、菌糸体微生物の厚膜胞子を効率よく生産できることが分かる。
【0057】
このように製造した厚膜胞子を、30℃にて乾風乾燥し、水分10%の製品(乾燥厚膜胞子)とした。
【0058】
なお、この実施例では、飢餓培養において、温度を、35〜45℃として、pHを7から4に下げたが、温度を5〜10℃として、pHを7から9に上げていく条件を採用することもできる。
【0059】
【発明の効果】
この発明は、病原微生物の活動を抑える有用な菌糸体微生物を処理して厚膜胞子としたので、厚膜胞子の生成率が著しく高く(例えば30%以上)、これを使用した場合に、事実上温度的制約をなくした高発芽率を得る効果がある。
【0060】
この発明は、微生物の性能の安定性がきわめて高く、同一量で同一効果を奏する信頼度を高く保つことができる効果がある。
【0061】
この発明の厚膜胞子は、同一種の菌糸体又は分生胞子に混合して使用することができる。
【0062】
この発明の飢餓培地により、菌糸体と分生胞子とを有する各種菌糸体微生物の厚膜胞子を効率よく生成できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a) この発明の大小の厚膜胞子の概念図。
(b) 同じく4個の分生子の概念図。
(c) 同じく菌糸体の概念図。
【符号の説明】
1 分生子
2 菌糸体
3 厚膜胞子

Claims (3)

  1. トリコデルマ ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ ハマタム(Trichoderma hamatum)の微生物を栄養培地で培養した後、前記栄養培地から菌糸体と分生胞子を分離し、次いで前記菌糸体と分生胞子から栄養成分を除去した後、該菌糸体と分生胞子とを、シリカゲル70重量%〜99重量%に少量の有機物繊維粉末0.6重量%〜2.5重量%と、微量のMg、Mn、Fe、Cu、Ni、Sn及びZnと少量の水を加えてなる飢餓培地を用いて培養した後、厚膜胞子を分離することを特徴とした厚膜胞子の製造方法。
  2. トリコデルマ ハルジアナム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ ビリデ(Trichoderma viride)、トリコデルマ ハマタム(Trichoderma hamatum)の微生物を栄養培地で培養した後、前記栄養培地から菌糸体と分生胞子を分離し、次いで前記菌糸体と分生胞子から栄養成分を除去した後、該菌糸体と分生胞子とを、シリカゲル70重量%〜99重量%に少量の有機物繊維粉末0.6重量%〜2.5重量%と、微量のMg、Mn、Fe、Cu、Ni、Sn及びZnと少量の水を加えてなる飢餓培地を用いて培養した後、ミクロフィルターにより厚膜胞子を篩い分けし、これを水分6%〜12%に乾燥することを特徴とした厚膜胞子の製造方法。
  3. 請求項1又は2記載の製造方法により製造したことを特徴とする厚膜胞子。
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