JP4279477B2 - 粒状肥料組成物およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水面浮上性および固結性の改善された粒状肥料組成物およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
粒状肥料は、一般に燐鉱石を硫酸、燐酸および硝酸の少なくとも1種を用いて酸分解した後、これをアンモニアで中和して得られる泥状スラリーおよび/または燐酸、硫酸、硝酸などをアンモニアで中和して得られるスラリー状生成物と、硫安、硝安、塩化カリウム等の原料用固体肥料物質を転動造粒等の公知の方法により混合造粒することによって取得されている。また、原料用固体肥料物質を造粒系に供給して水、熱水またはスチームを利用する造粒方法も知られている。そして、造粒生成物は乾燥、冷却された後、所定の粒径に篩別分離され製品粒子となる。
【0003】
残りの生成物はいわゆる循環品として造粒工程に返還供給されている。このようにして得られる粒状肥料は、従来より2つの大きな品質上の問題点を有している。
【0004】
問題点の1つ目は、粒状肥料を水田に施用した場合に肥料粒子がしばしば水面付近に浮上するため、肥料成分の流出や浮上現象に起因する作物への濃度障害を起こすことである。粒状肥料が浮上する原因としては次のように考えられている。すなわち、粒状肥料の製造に際して、造粒を湿式燐酸液のアンモニアによる中和反応を利用して行なう場合に、非水溶性の燐酸鉄アルミニウムが生成する。この燐酸鉄アルミニウムは次の乾燥工程で乾燥される際に、粒の外側に硬い網目構造の殻を形成する。このようにして得た粒状肥料を水田に施用した場合、1〜2時間後に元の形状のままで浮き上がることがある。この際、肥料中の水溶性成分のほとんどは溶けて粒外に出てしまっているが、網目構造の燐酸鉄アルミニウムが粒の外形を保持するため、これに粒中の空気が気泡となって付着し、水面に浮き上がってくるのである。
【0005】
このような肥料の浮上防止対策としては、▲1▼粒中の空気の浮力に相当する非水溶性物質、一般には珪藻土、タルク、オリビンサンド等の非水溶性鉱産物を添加する方法。▲2▼水中で粒を崩れ易くするために、水中で膨潤するベントナイトを添加する方法。▲3▼水中で粒子に付着した気泡を外れ易くするために界面活性剤を添加する方法等が一般的に行なわれている。
【0006】
しかしながら、非水溶性鉱産物を添加する方法、およびベントナイトを添加する方法においては、これらの成分を比較的多量に添加するため肥料成分量を高く出来ないという欠点がある。また、界面活性剤を添加する方法においては、造粒性を悪くするという欠点がある。
【0007】
問題点の2つ目は、粒状肥料が固結を起こし易いため、取り扱い上においてしばしば困難を来たすことである。粒状肥料の固結の原因は、一般に水分吸収に起因して隣接する粒子間に生ずる飽和溶液から大気の状態変化に際して析出する結晶が各粒子間の架橋になるためであると考えられている。従来より粒状肥料の固結を防止する方法としては、タルク、活性白土、珪藻土等の鉱産物粉末を粒状肥料に対し 0.1〜3重量%添加して被覆処理することにより肥料粒子相互間の接触を妨げる方法が一般的に行なわれている。
【0008】
しかしながら、これらの固結防止剤を使用する方法においては、固結防止剤を添加し被覆処理した直後は固結防止効果が充分達成されるものの、期間の経過と共に固結防止剤が肥料粒面より徐々に剥離し、このため長期間の貯蔵中に固結現象が増大するという欠点がある。
【0009】
これら2つの欠点を改善する方法として、特公平5−4954号公報には、粒状肥料に浮上防止剤としてトリエチレングリコールを、固結防止剤としてタルク、カオリンまたは珪藻土をそれぞれ添加処理することが記載されているが、この方法において浮上防止効果は肥料粒子中の空隙をトリエチレングリコールで埋めることで達成されることから、充分な浮上防止効果を得るためには比較的多くのトリエチレングリコールを必要とするため処理費用が高価となる。
【0010】
また、固結性を改善する方法として、特開昭59−213696号公報には、粒状肥料を軽焼マグネシアで被覆処理する方法が記載されているが、この方法も前記したタルク、活性白土、珪藻土等の粉末を被覆処理する方法と同様に、処理した直後は固結防止効果が充分達成されるものの、期間の経過と共に軽焼マグネシアが徐々に剥離し、このため長期間の貯蔵中に固結現象が増大するという傾向がある。
【0011】
固結性を改善する他の方法として、特公昭59−53239号公報には、燐酸一アンモニウムの粒状物に鉱酸水溶液を添加処理することが記載されているが、この固結防止方法は燐酸一アンモニウム粒状物に対しては効果はあるものの、その他の粒状肥料、例えば窒素源として尿素、硝安等を使用した粒状肥料等に対しては効果が充分でない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れた水面浮上防止能並びに長期固結防止能を有する廉価な粒状肥料組成物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、粒状肥料を特定物質で被覆処理する場合には、上記の問題点を一挙に解決でき、水面浮上性が改善され、かつ長期固結防止能を有する粒状肥料組成物を廉価に提供できるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明の粒状肥料組成物は、粒状肥料表面を、カオリン、タルクおよび珪藻土から選ばれる少なくとも1種の鉱産物粉末と、燐酸液、硫酸液および硝酸液から選ばれる少なくとも1種とで被覆処理したものであって、粒状肥料に対して、前記鉱産物粉末の被覆量が0.1〜3重量%であり、前記燐酸液、硫酸液および硝酸液から選ばれる少なくとも1種の被覆量が、燐酸液をH3PO4として、硫酸液をH2SO4として、硝酸液をHNO3として0.05〜1重量%の被覆量であると共に、前記粒状肥料表面を、前記鉱産物粉末で被覆処理し、ついで前記燐酸液、硫酸液および硝酸液から選ばれる少なくとも1種で被覆処理してなることを特徴とする。
【0015】
前記燐酸液のH3PO4濃度、硫酸液のH2SO4濃度および硝酸液のHNO3濃度はいずれも20重量%以上であるのが好ましい。
【0016】
また、本発明の粒状肥料組成物を製造するにあたっては、粒状肥料表面を、カオリン、タルクおよび珪藻土から選ばれる少なくとも1種の鉱産物粉末で被覆処理し、ついで燐酸液、硫酸液および硝酸液から選ばれる少なくとも1種で被覆処理する。
【0017】
本発明の粒状肥料組成物が有する水面浮上防止効果については、本発明組成物の粒が水中で崩れ易くなることから、鉱産物粉末に吸着された燐酸液、硫酸液または硝酸液が粒表面の殻を形成している硬い網目構造の燐酸鉄アルミニウムを徐々に溶解して分解し、これにより粒の外形を保持し難くなって崩壊し易くなるために水面浮上防止効果を呈するものと推測される。
【0018】
一方、本発明の粒状肥料組成物が有する長期固結防止効果については、被覆処理した鉱産物粉末が、同様に被覆処理した燐酸液、硫酸液または硝酸液を充分吸着しかつ保持するため、固結の原因である肥料粒子相互間の接触が長期安定的に妨げられ、その結果固結防止効果を持続させるものと推測される。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明において、処理対象となる粒状肥料としては、例えば尿素、硝安、硫安、塩安、ウレアホルム等の窒素質、燐安、過燐酸石灰、重過燐酸石灰等の燐酸質、塩化カリウム、硫酸カリウム等のカリウム質の肥料原料物質の組み合わせによって得られる窒素−燐酸、窒素−カリウムおよび燐酸−カリウムの2成分系、窒素−燐酸−カリウムの3成分系、あるいはこれらにマグネシウム、硼素、マンガン等の植物の生育に必要な要素を含有させた粒状肥料である。
【0020】
本発明で使用する鉱産物粉末としては、カオリン、タルクおよび珪藻土から選ばれる少なくとも1種である。カオリン、タルク、珪藻土は純粋である必要はなく、通常、工業用として市販されているもので充分である。
【0021】
鉱産物粉末の粒状肥料に対する添加量(被覆量)は、通常、粒状肥料に対し0.1〜3重量%、好ましくは0.5〜1.5重量%である。鉱産物粉末の添加量がこの範囲より少ない場合には粒状肥料の水面浮上防止効果および固結防止効果が低く、他方、鉱産物粉末の添加量が前記範囲を超えた場合には、それに見合う粒状肥料の水面浮上防止効果および固結防止効果の向上は見られず、経済的に不利となる。
【0022】
粒状肥料に対する鉱産物粉末の被覆処理方法としては、特に制限されるものではなく、当該分野で公知の方法が適用可能である。一般的には回転円筒や回転皿等の装置に粒状肥料を供給し転動させながら、これに鉱産物粉末を添加混合して被覆処理する方法が挙げられる。
【0023】
本発明では、鉱産物粉末と共に、燐酸液、硫酸液および硝酸液から選ばれる少なくとも1種を用いて粒状肥料表面の被覆処理を行う。本発明で使用する燐酸液のH3PO4濃度、硫酸液のH2SO4濃度および硝酸液のHNO3濃度はいずれも20重量%以上であればよいが、通常、水分の増加は固結現象を増大させることから、燐酸液のH3PO4濃度、硫酸液のH2SO4濃度、および硝酸液のHNO3濃度は60重量%以上、好ましくは60〜85重量%程度の濃燐酸液、濃硫酸液および濃硝酸液を使用するのが好ましい。燐酸液、硫酸液および硝酸液は純粋である必要はなく、通常、工業用として市販されているもので充分である。
【0024】
燐酸液、硫酸液および硝酸液の添加量(被覆量)は、通常、粒状肥料に対し、燐酸液はH3PO4として、硫酸液はH2SO4として、硝酸液はHNO3として0.05〜1重量%、好ましくは0.2〜0.6重量%である。燐酸液、硫酸液および硝酸液の添加量が前記範囲より少ない場合には粒状肥料の水面浮上防止効果および固結防止効果が低く、他方添加量が該範囲を超えた場合にはそれに見合う粒状肥料の水面浮上防止効果および固結防止効果の向上は見られず、経済的に不利となる。
【0025】
粒状肥料に対する燐酸液、硫酸液および硝酸液の被覆処理方法としては特に制限されるものではなく、当該分野で公知の方法が適用可能である。一般的には、鉱産物粉末を粒状肥料に被覆処理する場合と同様に、回転円筒や回転皿等の装置に粒状肥料を供給し転動させながら、これに燐酸液、硫酸液および硝酸液から選ばれる少なくとも1種を添加混合して被覆処理する方法が挙げられる。
【0026】
本発明においては、粒状肥料表面への鉱産物粉末および上記酸成分の被覆順序は、浮上防止効果および固結防止効果発現の点から、鉱産物粉末で被覆し、次いで上記酸成分で被覆処理する。
【0027】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例中の部および%は特記しない限りすべて重量部および重量百分率を示す。
【0028】
実施例において水面浮上率および固結強度は以下の方法で測定した。
(水面浮上率)
500mlのビーカーに温度30℃の水400mlを入れたものに100粒の粒状肥料を投入し、1時間後に水面に浮上した粒の投入粒数に対する割合(%)を測定し、これを水面浮上率とした。
【0029】
(固結強度)
内径6cm、高さ5cmのポリ塩化ビニル製の円筒容器中の中心に、図1に示すように長さ6cm、直径5mmで、先端部の一部が直径7mmの円錐形部2となったステンレス製フック1を立てたものに 80gの試料を充填し、5kgの荷重をかけた後ポリエチレン袋で密封し、温度40℃、湿度80%の恒温恒湿槽内で24時間放置した後、容器中に立てたフック1の引き抜き強度(kg)を測定し、これを固結強度とした。なお、指標として、引き抜き強度0.5kg以下は固結していないと見做すことができる。
【0030】
実施例1〜6および比較例1〜10
粒径1〜4mmの硫燐安系粒状肥料13−13−13(N−P25−K2Oの比を示す銘柄である、以下同じ;配合割合:燐酸二アンモニウム29.3%、硫安39.6%、塩化カリウム22%、石膏9.1%)5kgを皿型造粒機で転動させながら、以下に示す添加物を表1に示す割合で被覆処理した。表1において被覆物(1)は最初に添加し粒状肥料に被覆する被覆物を、被覆物(2)は次いで添加し被覆物(1)上に被覆する被覆物を示す。
このようにして得た被覆処理後の硫燐安系粒状肥料組成物をポリエチレン袋で密封し、次いで温度30℃、湿度80%の恒温恒湿槽内で3ケ月間放置した後、各試料について水面浮上率および固結強度を測定した。結果を表1に示す。
【0031】
(被覆物A)
鉱産物粉末カオリン。
(被覆物B)
3PO4濃度60%の燐酸液。
(被覆物C)
2SO4濃度60%の硫酸液。
(被覆物D)
HNO3濃度60%の硝酸液
(被覆物E)
純度95%のトリエチレングリコール。
【0032】
【表1】
Figure 0004279477
【0033】
実施例7〜12、比較例11〜20
粒径1〜4mmの尿素系粒状肥料18−18−18(配合割合;燐酸二アンモニウム40%、尿素16%、ウレアホルム10%、塩化カリウム30%、石膏4%)5kgを皿型造粒機で転動させながら、比較例9、10で用いたと同じ被覆物Eおよび以下に示す被覆物を用いて、表2に示す割合で被覆した。
このようにして得た被覆処理後の尿素系粒状肥料組成物をポリエチレン袋で密封し、次いで温度30℃、湿度80%の恒温恒湿槽内で3ケ月間放置した後、各試料について水面浮上率および固結強度を測定した。結果を表2に示す。
【0034】
(被覆物2A)
鉱産物粉末タルク
(被覆物2B)
3PO4濃度85%の燐酸液。
(被覆物2C)
2SO4濃度85%の硫酸液。
(被覆物2D)
HNO3濃度85%の硝酸液。
【0035】
【表2】
Figure 0004279477
【0036】
実施例13〜17、比較例21〜30
粒径1〜4mmの硝燐安系粒状肥料18−8−16(配合割合;燐酸二アンモニウム18.5%、硝安44.4%、硫酸カリウム31.3%、石膏5.8%)5kgを皿型造粒機で転動させながら、実施例7〜12および比較例13〜20で用いたと同じ被覆物2B,2C,2D,Eおよび以下に示す被覆物を表3に示す割合で被覆した。
このようにして得た被覆処理後の硝燐安系粒状肥料組成物をポリエチレン袋で密封し、次いで温度30℃、湿度80%の恒温恒湿槽内で3ケ月間放置した後、各試料について水面浮上率および固結強度を測定した。結果を表3に示す。
【0037】
(被覆物3A)
鉱産物粉末珪藻土
【0038】
【表3】
Figure 0004279477
【0039】
【発明の効果】
以上のように、本発明の粒状肥料組成物は、肥料粒子が水面付近に浮上するのを防止する効果を有するため、肥料成分の流出や浮上現象に起因する作物への濃度障害を低減することができる。また、本発明の粒状肥料組成物は、長期間の貯蔵においても肥料粒子相互間での固結を防止する効果を有するため、取り扱いが容易であり、しかも安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】固結強度の測定に用いるフックを示す正面図である。
【符号の説明】
1 フック
2 円錐形部

Claims (3)

  1. 粒状肥料表面を、カオリン、タルクおよび珪藻土から選ばれる少なくとも1種の鉱産物粉末と、燐酸液、硫酸液および硝酸液から選ばれる少なくとも1種とで被覆処理した粒状肥料組成物であって、
    粒状肥料に対して、前記鉱産物粉末の被覆量が0.1〜3重量%であり、
    前記燐酸液、硫酸液および硝酸液から選ばれる少なくとも1種の被覆量が、燐酸液をH3PO4として、硫酸液をH2SO4として、硝酸液をHNO3として0.05〜1重量%であると共に、
    前記粒状肥料表面を、前記鉱産物粉末で被覆処理し、ついで前記燐酸液、硫酸液および硝酸液から選ばれる少なくとも1種で被覆処理してなることを特徴とする粒状肥料組成物。
  2. 燐酸液のH3PO4濃度、硫酸液のH2SO4濃度、および硝酸液のHNO3濃度がいずれも20重量%以上である請求項1記載の粒状肥料組成物。
  3. 粒状肥料表面を、カオリン、タルクおよび珪藻土から選ばれる少なくとも1種の鉱産物粉末で被覆処理し、ついで燐酸液、硫酸液および硝酸液から選ばれる少なくとも1種で被覆処理することを特徴とする請求項1または2記載の粒状肥料組成物の製造方法。
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