JP4276720B2 - 5−アミノメチル−2−クロロチアゾールまたはその塩の製造方法 - Google Patents

5−アミノメチル−2−クロロチアゾールまたはその塩の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、殺虫剤中間体として有用な5−アミノメチル−2−クロロチアゾールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
5−アミノメチル−2−クロロチアゾール(以下ACTと略記することがある)またはその塩が殺虫剤の中間体として有用であることは特開平2−171号、特開平3−157308号、特開平5−9173号、特開平9−67342号及び特開平10−120666号公報等に開示されている。また、ACTの製法としては特開平2−171号、特開平3−157308号および特開平4−234864号公報等に記載されている。これらの製法の原料はいずれも2−クロロ−5−クロロメチルチアゾール(以下CCTと略記する場合がある)である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記した従来の技術によれば反応・精製操作が煩雑なことから大量スケールで製造する場合、不利な問題点が多く残されていた。また、CCTとアンモニアとを反応させる場合は常にCCTとアンモニアとが2:1の割合で反応したビス(2−クロロ−5−チアゾリルメチル)アミン(以下、BTAと略記する場合がある。)が副生物として生成し、ACTとの工業的分離法が厄介な問題であった。このような現状において、より収率がよく、反応・精製操作が簡便で、工業的に有利で安価なACTまたはその塩の製造方法の開発が求められている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため、5−アミノメチル−2−クロロチアゾール(ACT)またはその塩の製造方法を鋭意検討した。その結果、▲1▼2−クロロ−5−クロロメチルチアゾール(CCT)またはその塩とアンモニアとをメタノール溶媒中、加圧下で反応させるか、▲2▼アンモニアにCCTまたはその塩を滴下しながら水溶媒中、加圧下で反応させるか、▲3▼CCTまたはその塩とアンモニアとを加圧下、細管内で連続的に反応させることにより意外にも高収率でACTまたはその塩が製造されることを発見した。また、CCTまたはその塩とアンモニアとの反応の際、ホルマリン、ハイドロキノン等の重合防止剤を添加することにより後処理操作が簡便になる場合があることを見出した。
このようにして製造されたACTは不純物としてビス(2−クロロ−5−チアゾリルメチル)アミン(BTA)またはその塩を含有することもあるが、この粗製のACTまたはその塩を有機溶媒に溶解させた溶液に水を加え、塩酸などの酸で弱酸性(pH3.5〜5.5)に調整した後、抽出することにより、極めて意外なことに同様のアミン類であるBTAまたはその塩をほとんど含まないACT酸付加塩水溶液が製造できることを発見した。さらにこれらに基づいて鋭意研究を重ねた結果本発明を完成した。
【0005】
すなわち本発明は、
(1)2−クロロ−5−クロロメチルチアゾールまたはその塩とアンモニアとをメタノール溶媒中、加圧下で反応させることを特徴とする5−アミノメチル−2−クロロチアゾールまたはその塩の製造方法、
(2)アンモニアに2−クロロ−5−クロロメチルチアゾールまたはその塩を滴下しながら水溶媒中、加圧下で反応させることを特徴とする5−アミノメチル−2−クロロチアゾールまたはその塩の製造方法、
(3)2−クロロ−5−クロロメチルチアゾールまたはその塩とアンモニアとを加圧下、細管内で連続的に反応させることを特徴とする5−アミノメチル−2−クロロチアゾールまたはその塩の製造方法、
(4)5−アミノメチル−2−クロロチアゾールの有機溶媒溶液を弱酸性下の水で抽出することを特徴とする精製された5−アミノメチル−2−クロロチアゾール酸付加塩の水溶液の製造方法、
(5)(1)2−クロロ−5−クロロメチルチアゾールまたはその塩とアンモニアとをメタノール溶媒中、加圧下で反応させるか、(2)アンモニアに2−クロロ−5−クロロメチルチアゾールまたはその塩を滴下しながら水溶媒中、加圧下で反応させるか、または(3)2−クロロ−5−クロロメチルチアゾールまたはその塩とアンモニアとを加圧下、細管内で連続的に反応させた後、反応混合物を有機溶媒で抽出し、抽出液を弱酸性下の水で抽出することを特徴とする精製された5−アミノメチル−2−クロロチアゾール酸付加塩水溶液の製造方法、
(6)重合防止剤の存在下で反応させることを特徴とする上記(1)、(2)、(3)または(5)項記載の製造方法、
(7)重合防止剤がホルマリンまたはハイドロキノンである上記(6)項記載の製造方法、
(8)1atmより高く50atmより低い加圧下で反応させることを特徴とする上記(1)、(2)、(3)、(5)、(6)または(7)項記載の製造方法、
(9)弱酸性下の水のpHが3.5〜5.5の範囲である上記(4)、(5)、(6)または(7)項記載の製造方法、
(10)有機溶媒がジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、酢酸エチルおよび酢酸ブチルから選ばれる一種類または二種類以上の混合物である上記(4)、(5)、(6)または(7)項記載の製造方法、
(11)2−クロロ−5−クロロメチルチアゾールまたはその塩とアンモニアとを重合防止剤の存在下で反応させることを特徴とする5−アミノメチル−2−クロロチアゾールまたはその塩の製造方法、および
(12)重合防止剤がホルマリンまたはハイドロキノンである上記(11)項記載の製造方法に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】
CCTまたはその塩とアンモニアとを反応させることによりACTまたはその塩を製造することができる。
CCTの塩としては例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、過塩素酸、硝酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の酸付加塩が挙げられる。
ACTまたはBTAの塩としては例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、過塩素酸、硝酸等の無機酸または、例えばギ酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、安息香酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸等の酸付加塩が挙げられる。
アンモニアはCCTまたはその塩に対して5〜100当量程度使用するのが好ましい。反応温度は通常15℃〜150℃である。反応時間は30分〜20時間程度が好ましい。反応は常圧もしくは加圧下(1〜50atm)で行えばよい。反応は無溶媒で行ってもよいが、反応に悪影響を及ぼさない溶媒を加えてもよい。このような溶媒としては水、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、例えばジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素類、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、例えばジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の酸アミド類、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などが用いられる。これらの溶媒は単独で用いることもできるし、また必要に応じて二種またはそれ以上の多種類(好ましくは三種以内)を適当な割合で混合して用いてもよい。反応混合物が均一相でない場合には、例えばトリエチルベンジルアンモニウムクロリド、トリn−オクチルメチルアンモニウムクロリド、トリメチルデシルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド等の四級アンモニウム塩やクラウンエーテル類などの相間移動触媒の存在下に反応を行なってもよい。
本反応ではCCTまたはその塩とアンモニアとを一度に反応容器内で混合し、反応に付してもよく、溶媒に溶解させたアンモニアにCCTまたはその塩またはその有機溶媒溶液を滴下してもよい。
また、反応時に重合防止剤の存在下で反応を行うことにより、後処理操作が簡便になる場合が多い。このような重合防止剤としては例えばホルマリン、例えば一般に重合禁止剤、重合停止剤、重合抑制剤として公知であるハイドロキノン、ピロガロール、p-ベンゾキノン、p-t-ブチルカテコール、p-メトキシフェノール等が用いられる。好ましい重合防止剤は例えばホルマリンまたはハイドロキノンである。重合防止剤は例えばCCTまたはその塩に対し、0.1〜1当量用いられる。重合防止剤は反応前に混合しておいてもよいし、反応途中に添加してもよいが、反応操作簡便化のため反応前に混合しておくのが好ましい。
反応の後処理操作としては例えば水と混和する溶媒(メタノール、アセトニトリル等)を使用した場合はまずそれを常圧または減圧下で留去後、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液を加え、クロロホルム、クロロベンゼン等の有機溶媒で抽出することが好ましい。この抽出操作時に重合物と推定されるタール状物質が生成して分液操作が困難になる場合があるが、上記したように反応時に重合防止剤を添加することにより、このタール状物質の生成が抑えられる場合が多い。
本発明の製造方法は、より具体的には例えば下記(A)〜(E)記載の方法に従って実施することができる。
(A)CCTまたはその塩とアンモニアとをメタノール溶媒中、加圧下で反応させることにより、高収率でACTまたはその塩が製造できる。
BTAの生成を抑えるため、アンモニアはCCTまたはその塩に対して5〜50当量程度使用するのが好ましい。さらに好ましくは10〜20当量である。アンモニアはあらかじめメタノールに溶解させアンモニア/メタノール溶液として反応に用いることができる。アンモニア/メタノール溶液におけるアンモニアの濃度は20%〜30%が好ましい。
反応温度は通常50〜100℃、好ましくは60〜80℃である。反応時間は30分〜5時間が好ましい。加圧の程度は1 atm(101 kPa)より高く50 atm(5,050 kPa)より低い圧力が好ましい。より好ましくは1 atm(101 kPa)より高く10 atm(1,010 kPa)より低い圧力である。上記加圧力は、大気圧と増した圧力の合計、すなわち反応系中の圧力を示す。
本反応はメタノールを溶媒として実施できるが、場合によっては反応に悪影響を及ぼさない補助溶媒を加えてもよい。このような補助溶媒としては例えば水、例えばエタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、m-ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類、例えばジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類、例えばヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素類、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、例えばジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の酸アミド類、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類などが用いられる。これらの溶媒は単独で用いることもできるし、また必要に応じて二種またはそれ以上の多種類(好ましくは三種以内)を適当割合例えばメタノール:補助溶媒=10:1〜1:10の割合で混合して用いてもよい。反応混合物が均一相でない場合には、例えば上記したような相間移動触媒の存在下に反応を行なってもよい。通常は補助溶媒がなくても好結果が得られる。
本反応ではCCTまたはその塩とアンモニアのメタノール溶液とを一度に反応容器内で混合し、加圧、加温して反応させてもよく、アンモニアのメタノール溶液にCCTまたはその塩またはその有機溶媒溶液を滴下してもよい。滴下する場合の滴下時間は30分〜5時間が好ましい。
また上記したような重合防止剤の存在下で反応させることにより後処理操作が簡便になる場合もある。このような重合防止剤の具体例及び使用量は上記したとおりである。
【0007】
(B)アンモニアにCCTまたはその塩を滴下しながら水溶媒中、加圧下で反応させることにより、高収率でACTまたはその塩が製造できる。
BTAの生成を抑えるため、アンモニアはCCTまたはその塩に対して5〜50当量程度使用するのが好ましい。さらに好ましくは10〜20当量である。本反応はCCTまたはその塩とアンモニアを水溶媒中で反応させるものであるが、具体的にはアンモニア水にCCTまたはその塩またはその有機溶媒溶液を滴下しながら反応させるのが好ましい。使用するアンモニア水の好ましい濃度は20%〜30%である。
反応温度は通常50〜100℃、好ましくは60〜80℃である。CCTまたはその塩の滴下時間は30分〜10時間が好ましい。加圧の程度は1 atm(101 kPa)より高く50 atm(5,050 kPa)より低い圧力が好ましい。より好ましくは1 atm(101 kPa)より高く10 atm(1,010 kPa)より低い圧力である。上記加圧力は、大気圧と増した圧力の合計、すなわち反応系中の圧力を示す。なお滴下終了後、通常50〜100℃、好ましくは60〜80℃で5時間以内程度さらに反応を継続させて完結させることによりより高収率でACTまたはその塩が得られる場合もある。
本反応は水以外に反応に悪影響を及ぼさない溶媒を加えてもよい。このような溶媒としてはメタノールや(A)で補助溶媒として述べたもの等が用いられる。これらの溶媒は単独で用いることもできるし、また必要に応じて二種またはそれ以上(好ましくは三種以内)の多種類を適当な割合例えば水:水以外の溶媒=10:1〜1:10の割合で混合して用いてもよい。反応混合物が均一相でない場合には、上述したような相間移動触媒の存在下に反応を行なってもよい。
また、反応時に上述したような重合防止剤の存在下でCCTまたはその塩を滴下することにより、後処理操作が簡便になる場合もある。このような重合防止剤の具体例及び使用量は上記したとおりである。
【0008】
(C)CCTまたはその塩とアンモニアとを加圧下、細管内で連続的に反応させることにより、高収率でACTまたはその塩が製造できる。
BTAの生成を抑えるため、アンモニアはCCTまたはその塩に対して5〜50当量程度使用するのが好ましい。さらに好ましくは20〜50当量である。反応温度は通常50〜150℃、好ましくは100〜120℃である。反応時間は30分〜10時間が好ましい。加圧の程度は1 atm(101 kPa)より高く50 atm(5,050 kPa)より低い圧力が好ましい。より好ましくは1.5 atm(151.5 kPa)〜50 atm(5,050 kPa)である。上記加圧力は、大気圧と加えた圧力の合計、すなわち反応系中の圧力を示す。
本反応は無溶媒で行ってもよいが、通常反応に悪影響を及ぼさない溶媒中で行われる。このような溶媒としてはメタノールおよび(A)で補助溶媒として述べたもの等が用いられる。特に水を溶媒として用いる場合、アンモニアを濃度20%〜30%のアンモニア水として用いればよい。これらの溶媒は単独で用いることもできるし、また必要に応じて二種またはそれ以上(好ましくは三種以内)の多種類を適当な割合で混合して用いてもよい。反応混合物が均一相でない場合には、上述したような相間移動触媒の存在下に反応を行なってもよい。好ましい溶媒はアセトニトリル等のニトリル類、メタノール等のアルコール類及び水またはこれらの混合溶媒である。
本反応はいわゆる連続反応であり、CCTまたはその塩、アンモニア及び溶媒の混合物を連続的に加熱した細管内にポンプ類で加圧下送り込むことにより実施される。例えばこのような細管としてはラボスケールで長さ約5m〜約20m、口径約0.1mm〜約1.0mmのサイズのものが好ましく、具体的には高圧液体クロマトグラフ(HPLC)で使用する配管用SUS 316チューブが用いられる。また工業的スケールでは加熱のためのジャケットを有した長さ約50m〜約200m、口径約50mm〜約200mmのサイズのいわゆるチューブリアクターが好ましく、材質としては例えばSUS 304、SUS 316、SUS 316L、SUS 317、ハステロイCが挙げられる。
また、反応時に上述したような重合防止剤の存在下で反応を行うことにより、後処理操作が簡便になる場合もある。このような重合防止剤の例及び使用量は上記したとおりである。
【0009】
(D)CCTまたはその塩と50当量以上のアンモニアとを水溶媒中、常圧下40℃〜70℃の範囲内で反応させることにより、高収率でACTまたはその塩が製造できる。
BTAの生成を抑えるため、アンモニアはCCTに対して50〜100当量使用するのが好ましい。反応時間は30分〜5時間が好ましい。
本反応は無溶媒で行ってもよいが、反応に悪影響を及ぼさない溶媒を加えてもよい。このような溶媒としてはメタノールおよび(A)で補助溶媒として述べたもの等が用いられる。特に水を溶媒として用いる場合、アンモニアを濃度20%〜30%のアンモニア水として用いればよい。これらの溶媒は単独で用いることもできるし、また必要に応じて二種またはそれ以上の多種類を適当な割合で混合して用いてもよい。反応混合物が均一相でない場合には、上述したような相間移動触媒の存在下に反応を行なってもよい。好ましい溶媒はアセトニトリル等の二トリル類、メタノール等のアルコール類及び水またはこれらの混合溶媒である。
本反応ではCCTまたはその塩とアンモニアとを一度に反応容器内で混合し、加温してもよく、アンモニア水にCCTまたはその塩またはその有機溶媒溶液を滴下してもよい。
また、反応時に上述したような重合防止剤の存在下で反応を行うことにより、後処理操作が簡便になる場合もある。このような重合防止剤の具体例及び使用量は上記したとおりである。
【0010】
このようにして得られたACTまたはその塩は公知の手段、例えば濃縮、減圧濃縮、蒸留、分留、溶媒抽出、液性変換、転溶、クロマトグラフィー、結晶化、再結晶等により、単離精製することができる。また、ACTが遊離体で得られた場合は前述したような塩としたのち同様に単離精製することもできる。
しかしながら、上記の方法で製造されたACTまたはその塩は通常5〜30%程度のBTAまたはその塩を含有しており、とりわけ大量スケールでの精製が厄介である。実験室レベルから工業的に大規模なスケールでの製造まで実施可能な、精製されたACTまたはその塩の製造法について以下に述べる。
【0011】
(E)不純物としてBTAまたはその塩を含有するACTの有機溶媒溶液を弱酸性下の水で抽出することにより、精製されたACT酸付加塩の水溶液が製造される。
不純物としてBTAまたはその塩を含有するACTまたはその塩は上記の方法で製造されたものを用いてもよいが、上記以外の方法(例えば特開平3−157308及び特開平5−9173に記載の方法)でCCTとアンモニア(アンモニア水)とから製造してもよい。これらの反応の通常の後処理法としては、水と混和する溶媒(メタノール、アセトニトリル等)を使用した場合はまずそれを常圧または減圧下で留去し、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性水溶液を加えてアルカリ性(pH10〜14)とした後、有機溶媒で抽出する。有機溶媒としては(A)で補助溶媒として述べたもののうち水と二相系を形成するものが用いられるが、好ましくはジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチルから選ばれる一種類または二種類以上(好ましくは1〜3種)の混合物である。特に好ましいのはクロロホルム、1,2−ジクロロエタンまたはクロロベンゼンが単独で用いられる。
上記方法で得られたBTAまたはその塩を含有するACTまたはその塩の有機溶媒溶液に水を加え、酸性物質で弱酸性、好ましくはpH3.5〜5.5に調整する。このような酸性物質とは例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、過塩素酸、硝酸等の無機酸または、例えばギ酸、酢酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、安息香酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸が用いられる。好ましい酸性物質は塩酸及び硫酸である。この時点で抽出操作を行い、水層のpHが3.5〜5.5であることを確認後、分液することによりBTAまたはその塩をほとんど含まないACT酸付加塩の水溶液が製造される。水溶液の着色を軽減したい場合は、ここで活性炭処理を実施してもよい。具体的には計算されるACTに対して0.2〜5倍重量の活性炭を該水溶液に加え、数分〜数十分攪拌後不溶物をろ別すればよい。
【0012】
このようにして得られたACT酸付加塩水溶液(好ましくは塩酸塩または硫酸塩)は特開平10−120666号公報等に記載のグアニジン誘導体への原料としてそのまま用いることができる。また塩のままもしくは遊離形とした後、上記した公知の手段でさらに単離精製することもできる。
【0013】
【実施例】
次に実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定解釈されるべきものではない。
pHは他に記載がない限り、pH試験紙で測定した。
なお、下記実施例で用いる略号は、次のような意義を有する。
CCT:2−クロロ−5−クロロメチルチアゾール、ACT:5−(アミノメチル)−2−クロロチアゾール、BTA:ビス(2−クロロチアゾール−5−イルメチル)アミン、HPLC:高速液体クロマトグラフィー、%:重量%。また室温とあるのは約15〜25℃を意味する。
【0014】
実施例1
92.0%純度のCCT 14.4 g (0.0788 mol)と26%アンモニア/メタノール溶液107.8 g(1.65 mol)を混合し封管後、75℃に加熱し4時間攪拌した。この時の内圧は5±1 atm(505±101 kPa)であった。反応混合物を濃縮し、残渣に水15 mlを加え、28%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを13.5に調整した後、クロロベンゼン50 mlで3回抽出した。この際タール状物質が生成し、分液操作に手間取った。ここに反応副生物であるBTA 2.1 g (0.0075 mol;HPLCによる分析結果)も抽出された。あわせた有機層に水10 mlを加え、35%塩酸を加えてpHを4.6に調整後、水層を分液してACT塩酸塩水溶液31.3 gを得た。この時BTAはクロロベンゼン層側に選択的に残存し目的物から除去された。ACT塩酸塩含量35.0%(10.96 g,0.0592 mol)。収率75.1%。
【0015】
実施例2
93.0%純度のCCT 36.0 g(0.199 mol)と25.0%アンモニア/メタノール溶液263.0 g(3.86 mol)を混合し封管後、80℃に加熱し4時間攪拌した。この時の内圧は5±1 atm(505±101 kPa)であった。反応混合物を濃縮し、残渣に水50 mlを加え、28%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを13.5に調整した後、酢酸エチル130 mlで3回抽出した。この際タール状物質が生成し、分液操作に手間取った。ここに反応副生物であるBTA 4.3 g(0.0153 mol;HPLCによる分析結果)も抽出された。あわせた有機層に水33 mlを加え、35%塩酸を加えてpHを5.2に調整後、水層を分液してACT塩酸塩水溶液82.2 gを得た。この時BTAは酢酸エチル層側に選択的に残存し目的物から除去された。ACT塩酸塩含量32.4%(26.63 g,0.1439 mol)。収率72.2%。
【0016】
実施例3
90.1%純度のCCT 48.0 g(0.2574 mol)と28%アンモニア/メタノール溶液339.0 g (5.57 mol)と37%ホルマリン2.5 g(0.0308 mol)を混合し封管後、78℃に加熱し3.5時間攪拌した。この時の内圧は5±1 atm(505±101 kPa)であった。反応混合物を濃縮し、残渣に水50 mlを加え、28%水酸化ナトリウム水溶液45 g(0.315 mol)を加えてpHを13.5に調整した後、クロロベンゼン160 ml、100 ml、100 mlで3回抽出した。この際分液操作に支障が出るようなタール状物質は見られなかった。あわせた有機層に14%水酸化ナトリウム水溶液20 mlを加えて洗浄した後に分液した。有機層に水50 mlを加え、35%塩酸24.3 g(0.233 mol)を加えてpHを3.6に調整後、水層を分液した。水層を活性炭2.5 gで脱色処理後、ろ過した。この結果ACT塩酸塩水溶液95.37 gを得た。ACT塩酸塩含量35.6%(33.95 g、0.183 mol)。収率71.3%。
【0017】
実施例4
90.1%純度のCCT 49.0 g(0.263 mol)と26%アンモニア/メタノール溶液331.6 g(5.06 mol)とハイドロキノン0.6 g(0.0054 mol)を混合し封管後、65℃に加熱し3.5時間攪拌した。この時の内圧は5±1 atm(505±101 kPa)であった。反応混合物を濃縮し、残渣に水50 mlを加え、28%水酸化ナトリウム水溶液45 g(0.315 mol)を加えてpHを13.5に調整した後、クロロベンゼン160 ml、130 ml、100 mlで3回抽出した。この際分液操作に支障が出るようなタール状物質は見られなかった。あわせた有機層に14%水酸化ナトリウム水溶液20 mlを加えて洗浄した後に分液した。有機層に水50 mlを加え、35%塩酸25.5 g (0.245 mol)を加えてpHを4.1に調整後、水層を分液した。水層を活性炭2.5 gで脱色処理後、ろ過した。この結果ACT塩酸塩水溶液87.95 gを得た。ACT塩酸塩含量43.0%(37.82 g、0.204 mol)。収率77.8%。
【0018】
実施例5
耐圧反応機に25%アンモニア水45 ml (0.601 mol)を入れ、ここにCCT (純度95.8%) 5.00 g (0.0285 mol)とクロロホルム1.0 mlの混合溶液を8時間かけて、内温60℃で滴下した。60℃でさらに2時間攪拌した後に室温下で放冷した。この時の内圧は4±1 atm(404±101 kPa)であった。反応液をHPLCにて分析した結果、ACT 3.10 g (0.0209 mol)(収率73.3%)及びBTA 0.83 g (0.0029 mol)(収率20.4%)を含有していた。
【0019】
実施例6
CCT(純度100%)3.50 g (0.0208 mol)をアセトニトリル15 mlに溶解して、25%アンモニア水46.7 ml (0.624 mol)と同時に液送ポンプで120℃の油浴中のチューブコイル(内径0.5mm、外径1.6mm、全長10m)内に流速1.0 ml/分で送液した。この時の内圧は10±1 atm(1010±101 kPa)であった。チューブコイルより流出された全反応液をHPLCにて分析した結果、ACT 2.48 g (0.0167 mol)(収率80.3%)及びBTA 0.48 g (0.0017 mol)(収率16.5%)を含有していた。
【0020】
実施例7
25%アンモニア水5.0 ml (66.79 mmol)とCCT(純度100%)200 mg (1.19 mmol)とを混合した。50℃で2時間攪拌した後に室温下で放冷した。反応液をHPLCにて分析した結果、ACT 138.31 mg (0.931 mmol)(収率78.2%)、BTA 30.01 mg (0.107 mmol)(収率18.0%)を含有していた。
【0021】
【発明の効果】
本発明の製造法によれば、殺虫剤中間体として有用な5−アミノメチル−2−クロロチアゾールを従来の方法より簡便な操作で、高収率で製造できる。また、副生成物を含まない5−アミノメチル−2−クロロチアゾール塩の水溶液を工業的に有利に製造できる。

Claims (6)

  1. 2−クロロ−5−クロロメチルチアゾールまたはその塩とアンモニアとを重合防止剤の存在下で反応させることを特徴とする5−アミノメチル−2−クロロチアゾールまたはその塩の製造方法。
  2. 重合防止剤がホルマリンまたはハイドロキノンである請求項1記載の製造方法。
  3. メタノール溶媒中、加圧下の反応条件である請求項1または請求項2記載の製造方法。
  4. 水溶媒中、加圧下でアンモニアに、2−クロロメチルチアゾールまたはその塩を滴下する工程を有してなる請求項1または2記載の製造方法。
  5. 加圧下、細管内で連続的に反応させる請求項1または請求項2記載の製造方法。
  6. 加圧力が、1atmより高く50atmより低い圧力である請求項3〜5のいずれか一項記載の製造方法。
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