JP4276565B2 - 高炉炉下部冷却制御方法及びシステム - Google Patents

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Description

本発明は、高炉の炉下部冷却制御方法に関し、特に高炉の操業管理や炉床壁耐火物の寿命等に大きな影響を及ぼす炉底付近における炉内状況を検出し、炉底盤の冷却強度を制御する方法に関する。
従来から、高炉の適正な操業を維持するために、炉内状況をモニターして、炉内状況を管理することが行なわれている。特に高炉炉底では、炉内状況を推定して、炉底底盤の冷却制御を行っているが、高炉炉底においては、炉内の溶銑流や温度分布を直接計測できないため、炉底底盤および炉側壁耐火物内に熱電対を埋設し、この温度変化をモニターしている。例えば、埋設深度を変えた2点の温度から定常熱伝導を仮定して1150℃ライン(炭素飽和溶銑の凝固点)を推定して煉瓦の稼働面(過去最高温度になった時点の1150℃ライン)から現在の1150℃ラインを粘稠層(凝固層)と推定している。粘稠層が小さくなれば耐火物溶損の危険があり、逆に粘稠層が大きくなれば炉内が不活性になって安定操業ができなくなる。したがって、炉底底盤の冷却制御を適正に実行するには、炉内状況を正確にモニターすることが必要になる。
従来の高炉炉内管理方法としては、例えば、以下のような提案がなされている。
1)特許文献1では、高炉炉底側壁部に熱電対を埋設し、この熱電対の連続的な温度変化を直接測定し、温度の絶対値および温度上昇/下降を判断基準にして予め設定した装入TiO2 の増量・減風・休風等の操業条件を管理する方法を開示している。
2)特許文献2では、高炉炉床壁に埋設された熱電対2点の温度、または1点の温度と外面の伝熱条件から、1次元定常伝熱を伝熱逆問題手法により仮定して炉内から外部へ向かう熱流束を算出し、熱流束の大小、増減を判断基準にして炉床壁耐火物の損傷状況を推定し、その損傷状況に応じた損傷防止アクションを行う方法を開示している。
3)特許文献3、特許文献4では、高炉炉床壁に埋設された熱電対2点の温度、または1点の温度と外面の伝熱条件から、伝熱逆問題解析手法を用いて稼働面の熱流束または温度を計算し、稼働面の熱流束または温度の絶対値および/または変動を判断基準にして、将来の耐火物の残存厚みと耐火物内面に付着する炉内溶融物凝固層厚みの変化を予測する方法を開示している。
4)特許文献5、特許文献6では、高炉炉内に設けた検出端を介して計測され、炉内状態が反映された時系列情報に基づいて、リカレンスプロットを作成するプロット作成し、このリカレンスプロット構造に基づいて高炉の炉内状況を判断する方法を開示している。特に、特許文献6では、高炉炉底の底盤中央に埋め込まれた熱電対により計測された時系列の温度情報から得られた時系列の熱流束情報と、高炉炉底の出銑口付近に埋め込まれた熱電対により計測された時系列の温度情報から得られた時系列の熱流束情報とに基づいて、2変数の相互リカレンスプロットを作成し、その相互リカレンスプロットに基づいて、高炉炉底における湯流れ状態を判断することを開示している。
しかしながら、高炉炉側壁の煉瓦厚みは初期状態で約2mの厚みがあり、これに対して、この側壁煉瓦内に埋設される熱電対の位置は、通常煉瓦背面から50〜150mm程度とかなり鉄皮(炉外)側に設置されるために、炉内の熱状態が変化した場合、煉瓦内の非定常熱伝導によって温度が変化するために時間遅れが大きく、また非定常変化時に定常熱伝導を仮定して炉内状況を推定するような上記特許文献1、特許文献2に開示された方法では、誤差が大きいという問題がある。また、高炉炉底盤は炉内稼働面から熱電対まで更に遠く、大半の高炉では3〜4m、ないしはそれ以上離れている。上記特許文献3、特許文献4の方法ではこれらの点は改善されているといえども、炉内の湯流れ(溶銑流)の状態が変化しても温度の変化は緩慢なため、炉内の状態が変化してから稼働面の熱流束または温度が明確に変動し始めるまでにかなりの時間を要するという問題がある。また、特許文献5及び6は、炉内状況を判断するためのカオス応用技術(リカレンスプロットを行う方法)を開示し、特に特許文献6は、炉内の湯流れ状態の診断を開示するが、炉底が活性か不活性かを判断するに止まっている。
特開平7−207310号公報 特開2002−363619号公報 特開2001−234217号公報 特開2002−266011号公報 特開2002−212612号公報 特開2003−301210号公報
本発明は、リカレンスプロットを行なう方法を改良して、炉底付近における炉内状況を正確に判定し、炉底底盤の冷却を適正に行う高炉炉下部冷却制御方法及びシステムを提供するものである。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その要旨は次の通りである。
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その要旨は次の通りである。
(1)高炉炉底の底盤中央に埋め込まれた第1の温度検知手段により計測された時系列の温度情報から得られた第2の時系列情報と、高炉炉底側壁の出銑口近傍下部に埋め込まれた複数の第2の温度検出手段により計測された複数の時系列の温度情報から得られた第2の時系列情報とに基づいて、炉底底盤と炉底側壁の各出銑口近傍下部とを組とする2変数のリカレンスプロットを出銑口本数分作成し、これらの2変数のリカレンスプロットから、0〜出銑口本数の範囲に分布するプロット点の個数である相関の数に応じて識別した合成リカレンスプロットを作成し、高炉炉底の活性度を該プロット点の個数である相関の数に基づいて多段階で判定し、該活性度に応じて炉底底盤の冷却強度を制御することを特徴とする高炉炉下部冷却制御方法。
前記2変数のリカレンスプロットを作成するステップは、前記第1の時系列温度情報と前記第2の時系列温度情報とから、逆問題解析により、前記各温度検出手段に対応する高炉炉底の稼働面での時系列の熱流束情報または温度情報を算出し、該熱流束情報または温度情情報に基づいて、炉底底盤と炉底側壁の各出銑口近傍下部とを組とする2変数のリカレンスプロットを作成するステップとしてもよい。
さらに、炉底底盤に炉底からの距離を異ならせて埋め込んだ複数の第3の温度検出手段から得られる温度情報の差と前記活性度との組合わせ情報により冷却強度を制御するようにしてもよい。
(2)高炉炉底の底盤中央に埋め込まれた第1の温度検出手段と、高炉炉底側壁の出銑口近傍下部に埋め込まれた複数の第2の温度検出手段と、前記高炉炉下部活性度検出装置は、炉底底盤と高炉炉底側壁の各出銑口近傍下部とを組とする2変数のリカレンスプロットを出銑口本数分作成するリカレンスプロット作成部と、前記作成された複数のリカレンスプロットから、0〜出銑口本数の範囲に分布するプロット点の個数である相関の数に応じて識別した合成リカレンスプロットを作成するリカレンスプロット合成部と、前記合成リカレンスプロットのプロット点の個数である相関の数に従って高炉炉底の活性度を多段階に判定する活性度判定部とを有する高炉炉下部活性度判定装置と、前記活性度に応じて炉底底盤の冷却強度を制御することを特徴とする炉底底盤冷却制御装置とを備えることを特徴とする高炉下部冷却制御システムを提供する。
前記高炉炉下部活性度判定装置は、前記第1の時系列温度情報と上記第2の時系列温度情報とから逆問題解析により、前記各温度検出手段に対応する高炉炉底の稼働面での時系列の熱流束情報または温度情報を算出する逆問題解析部を備え、前記リカレンスプロット作成部が、該高炉炉底の稼働面での時系列の熱流束情報または温度情報に基づいて、炉底底盤と炉底側壁の各出銑口近傍下部とを組とする2変数のリカレンスプロットを作成するようにしてもよい。
また、前記第2の温度検出手段は、出銑口近傍下部に設けてもよい。
本発明によれば、高炉炉下部の活性度を多段階で判定して冷却制御情報とするので、高炉炉下部の状況を正確に反映する制御が可能である。
まず、本発明の実施形態の概略を図1を参照して説明する。本発明の高炉炉下部冷却制御システムは、高炉炉底の底盤中央に埋め込まれた第1の温度検出手段301と、高炉炉底側壁の複数箇所に埋め込まれた第2の温度検出手段302と、高炉炉底の活性度を判定する活性度判定装置110と、前記活性度に応じて炉底底盤の冷却強度を制御する冷却制御装置120とを備える。活性度判定装置110は、第1の温度検出手段301により計測された時系列の温度情報を得て、第1の時系列情報を取得し、複数の第2の温度検出手段302により計測された時系列の温度情報を得て、複数の第2の時系列情報を取得する。第1及び第2の時系列情報は逆問題解析手段によって得るようにしてもよい。そしてこれらに基づいて、高炉炉底と高炉炉底側壁の各箇所を組とする2変数のリカレンスプロットを複数作成する。次いで、リカレンスプロット合成部103で、複数のリカレンスプロットを合成して、これに基づいて、活性度判定部105が、高炉炉底の活性度を判定する。そして、判定された活性度に応じて冷却制御装置120が炉底底盤の冷却強度を制御する。このようにして炉底の活性度に応じた適正な冷却制御が実行される。
ここで、高炉炉下部の活性度を判定する判定装置110についてさらに説明する。活性度判定装置110は、図1に示したように、リカレンスプロット作成部101、リカレンスプロット合成部103および活性度判定部105から構成されている。リカレンスプロット作成部101では、高炉炉底の底盤中央に埋め込まれた熱電対301により計測された時系列の温度情報と、図2及び図3に示すように、高炉炉底の出銑口付近に埋め込まれた熱電対302(1)〜302(4)により計測された時系列の温度情報とから逆問題解析により各熱電対301、302(1)〜302(4)に対応する高炉炉底の稼働面での時系列の熱流束情報を求める。本例では、熱電対302は、出銑口付近に埋め込んであるが、本発明を実施するためには出銑口付近に埋め込まなければならないというものではない。高炉炉底の熱流束を正確に把握できれば、どのような個所に設けてもよい。次に、逆問題解析により算出された各熱電対301、302(1)〜302(4)についての時系列の熱流束情報に基づいてアトラクタ軌道を再構成する。この再構成されたアトラクタに基づいて2変数のリカレンスプロットを作成する。次いで、リカレンスプロット合成部103で、この2変数のリカレンスプロットを合成する。そして、合成されたリカレンスプロット上でプロットされた点の個数に基づいて高炉炉底における活性度を多段階で判定する。
ここで、高炉の構成について図2を参照して説明する。図2に示すように、高炉内は概ね5つの領域、すなわち、原料が装入前と同じように塊として存在する塊状帯201、原料が熱と荷重とにより半溶融状になっている融着帯202、溶けた銑鉄やスラグがコークスの間を降下する滴下帯203、コークスが羽口251からの送風によって燃焼、運動するレースウェイ204、溶融生成物(銑鉄、スラグ)が貯溜される湯溜まり205、に大別することができる。滴下帯203は、コークスが長時間殆ど静止している領域(炉芯203a)と、連続的にコークスがレースウェイ204に移動する領域(活性コークス帯203b)とに分けられる。
一般的に離れた位置にある二ヵ所間の情報は、流体の連続性の性質により上流から下流へと伝達される。また、流れを誘起するような動力源が下流に存在する場合、その動力源に関する下流の情報が上流にも伝達される。本発明の一実施形態では、出銑という動力源により誘起されて炉底中央から出銑口252に向かう湯流れによる温度の時系列情報を用いて、高炉炉底の活性度を判定する。
本発明の一実施形態では、図2及び図3に示すように、高炉炉底303の底盤303a中央に熱電対301を埋め込み、炉壁303の炉壁303bには周方向に配置されたNo.1〜No.4の複数の出銑口252(1)〜252(4)の付近、例えば各出銑口252(1)〜252(4)の真下位置に、熱電対302(1)〜302(4)が埋め込まれている。そして、上流側の検出端に相当する底盤303(a)中央の熱電対301について得られる時系列の熱流束信号と、下流側の検出端に相当する出銑口252(1)〜252(4)付近の各熱電対302(1)〜302(4)について得られる時系列の熱流束信号とを用いて、高炉炉底における活性度を判定する。
次に、図4に示すフローチャートを参照して、活性度判定装置110による高炉炉下部の活性度の判定処理について説明する。最初に、熱電対301、302(1)〜302(4)により計測された炉底煉瓦を介しての時系列の温度情報から、逆問題解析手段により、各熱電対301、302(1)〜302(4)に対応する炉底303の稼働面の時系列の熱流束情報を求める(ステップS401)。
底盤303a中央の熱電対301を例に説明すると、逆問題解析では、熱電対301、熱電対301から埋め込まれた炉底303の煉瓦を含む系を対象にした所定の方程式(偏微分方程式等)と、熱電対301に対応する底盤303の稼働面での熱流束の仮定値とを用いて、熱電対301位置での温度を算出する。次いで、その算出した熱電対301位置での温度と、熱電対301により実際に計測された温度との誤差が所定の値より小さくなるように、上記熱流束の仮定値を修正し、熱電対301位置での温度の算出を繰り返す。その結果、算出した熱電対301位置での温度と、熱電対301により実際に計測された温度との誤差が所定の値より小さくなったときの熱流束の仮定値を、熱電対301に対応する炉底303の稼働面での熱流束値とする。
また、例えば、下記の式(1)、式(2)に基づいて、熱電対に対応する炉底303の稼働面での熱流束を算出する。
Figure 0004276565
上記式(1)は、非定常の熱伝導方程式である。式(1)に対して所定の演算等を施すと、式(2)に示すような積分境界方程式になる。式(2)において、Gが共役方程式の解、uはスカラー量(本例の場合、温度)、∂u/∂nはスカラー勾配(本例の場合、熱流束)である。上記式(2)において、左辺は熱電対301に対応する炉底303の稼働面に関する積分であり、右辺は所定の既知境界面、例えば熱電対301位置を含む面に関する積分である。従って、熱電対301での計測温度に基づいて、式(2)の右辺の各値が求められ、その求められた値から式(2)の左辺のスカラー勾配∂u/∂n(熱電対301に対応する炉底303の稼働面での熱流束)が求められる。
次に、上記逆問題解析により求められた各熱電対301、302(1)〜302(4)から得られた熱流束情報に基づいて、リカレンスプロット作成手段により、アトラクタと呼ばれる軌道を再構成する(ステップS402)。先ず、逆問題解析手段により算出された各熱電対301、302(1)〜302(4)についての熱流束情報から、対象とする現象の2倍以上の次元mをもつ遅延ベクトル:v(t)={u(t),u(t+τ),u(t+2τ),・・・・・・・・,u(t+(m−1)τ)}を作成する。なお、u(t)は時刻tにおける熱流束、τは時間遅れ間隔である。続いて、作成された遅延ベクトル:v(t)を所定の次元を有する位相空間に写像する。この写像した遅延ベクトル:v(t)の時間推移による軌道を作成することによりアトラクタを再構成する。
続いて、リカレンスプロット作成手段において、上述の再構成されたアトラクタに基づいてリカレンスプロットを作成する(ステップS402)。リカレンスプロットとは再構成されたアトラクタの非定常挙動を2次元表示したものであり、ここで作成するリカレンスプロットは、リカレンスプロットを2変数(上流側の検出端に関する変数、及び下流側の検出端に関する変数)に拡張したものであり、以下の説明では「相互リカレンスプロット」ということもある。
具体的には、一方の変数の再構成アトラクタ上にある現在時刻点から所定の範囲内にある近傍点を、他方の変数の再構成アトラクタ上から検索する。その結果、検索された近傍点の時刻を、横軸を現在時刻、縦軸を近傍点時刻として2次元表示することにより相互リカレンスプロットを作成する。相互リカレンスプロットは、炉底中央の熱電対301と各出銑口付近の熱電対302(1)〜(4)について作成される。すなわち、4枚のリカレンスプロットが得られる。
次に、作成された4枚のリカレンスプロットは、リカレンスプロット合成部103で重ね合わせて合成される(ステップS404)。各リカレンスプロットは、ある時刻の炉底と、同じまたは別のある時刻の側壁のある地点とで熱流束の動きの相関が強い点がプロットされたもので、「炉底の時刻」と「側壁の時刻」をそれぞれ縦軸及び横軸とするものである。各出銑口に対応する4枚の図を重ね合わせると、合成リカレンスプロット上の任意の点で、相関の個数(プロット点の個数)が0〜4の範囲に分布し、5段階で相関の度合いが分る。この相関点の個数が多いほど、「炉底」と「側壁」の熱流束の相関が高いことになる。
図5は、本発明による合成リカレンスププロットの一例を示すもので、相関の数(0〜4)に応じて識別したものである。なお、識別結果はカラー表示するとその相違が明確に表示できる。熱流束の相関性は、炉底の活性度が高いことを示し、裏返せば、相関の数が少ないほど炉底が不活性であることを示しているといえる。特に、図5の対角線l近傍は同時刻での相関の度合いを表しており、時刻t1では相関4で最も高く、炉底が最も活性化していることを示している。これに対して時刻t2では相関0で最も低く、炉底が全く不活性の状態にあることを示し、また、時刻t3では、相関2で中間の状態にあることが分る。このようにして、ステップ405で炉底の活性度を多段階で判定する(ステップS405)。
このように、本発明に用いる判定装置によれば、活性度あるいは不活性の度合いを段階的に判断でき、正確な炉底の状況が把握できる。本発明による冷却制御は、この炉底活性度情報を制御情報に組み込むものである。
図6は、ある実機の炉底底盤温度のほぼ月単位の変動を示す図である。グラフの左の縦軸が測定温度を表し、右の縦軸は温度差を表す。横軸は時間軸である。図7に示すように、熱電対0E、2E、3Eは、炉底中央の下から上に順次炉内に近接するように埋め込まれている。図6の温度0E、2E、3Eは、底盤に埋め込まれた炉底からの距離が異なる3つの熱電対0E、2E、3Eで測定された温度を示す。なお、実際には熱電対は炉底中央のみならずその他の部分に設けられており、温度0E、2E、3Eは、同じ高さに設けられた複数の熱電対の温度の最大を示すが、説明を簡単にするために炉底中央に設けられた熱電対の温度とする。図6から明らかなように、炉内から最も遠い箇所の温度0Eが最も低く、温度2E、温度3Eと順次高くなっている。例えば、温度0Eは、250℃程度であり、温度3Eは定常状態で450℃程度である。図6に示す温度差ΔEは、温度3Eと温度2Eとの差であり、その値は、グラフの右の縦軸で読む。通常、温度差ΔEが大きいときは定常状態で活性度が高く、温度差ΔEが小さくなると活性度が低くなる。図6の(d)では、温度分布の変動はほとんど見られず、ほぼ定常状態であり、炉底状況も良好で活性度が高い。しかしながら、図6の(a)(b)(c)では、温度が大きく変動しているが、図6の例では不活性状態に至らない前に定常状態に復帰して、問題とはならなかった。
しかしながら、炉内の状態により、炉内では温度が上がり始めていて冷却の必要性が生じているにも拘らず、測定された温度情報をみるかぎり依然として温度が下がっているという場合がある。またこれとは逆に、炉内では温度が下がり始めていて冷却の必要がないにも拘らず、温度情報をみるかぎり温度が上がっているという場合がある。このようなときには、温度差のみの情報で冷却を弱めたり強めたりすると、必要な制御の逆を行なう結果となる。本発明では、高炉炉下部の状況を正確に把握できるので、このようなことを回避できる。
参考に、従来の一般的な温度制御の一例を図8に示す。図8の例では、温度差ΔTの値によって、底盤を水冷及び空気流量を変えた空冷を選択するようにしている。具体的には、温度が120℃以上の場合は水冷を行い、60℃から120℃の範囲では、空気流量を変えながら空冷を行う。40℃以下になると放置して、高炉上部の熱が高炉下部の温度を上げるように制御している。
本発明は、この底盤冷却方法の条件として炉底の活性度を採用するもので、前記のように活性度を5段階で評価できると、これに対応して5段階の冷却制御を実行することができる。また、高炉下部側壁に埋め込む熱電対を増やせば、よりきめ細かな制御が行なえる。
さらに、本実施形態では、リカレンスプロットを高炉炉底と出銑口付近の温度情報から生成しているので、例えば、出銑口4本のうち2本を使用して出銑する場合を考えると、使用中の出銑口の本数以上の点が合成リカレンスプロットに現れていると、炉底状態は良好であると判断できる。逆に、合成リカレンスプロット上のプロットの個数が使用中の出銑口の本数未満になり、この状態が長く(例えば4、5日)続くと不活性の状態であると判断できる。
図9に、このようにして作成された合成リカレンスプロットを示す。すなわち、4本の出銑口のうち2本の出銑口を使用した状態の4枚の相互リカレンスプロットを、相関が2以上あった点を黒とし、相関が1以下の点を白として、合成したものである。そして、対角線上で相関が1以下の白い部分が所定時間(例えば4,5日)以上連続すると、活性度が低下したと判断できる。このような情報を冷却制御のための制御情報として組み込むことによりさらに的確な制御が行なえる。
さらに、本発明による制御と従来の温度差による制御とを組合わせてもよい。先にも述べたように、従来のようにΔTのみを制御条件とする場合は、底盤の状況を正確に反映した制御を行なうのが困難であったのが、本発明を組合わせると、底盤の状況を正確に反映する制御が行なえるので、高炉下部の適正な冷却制御が可能である。
本発明による高炉下部冷却制御システムの概略を示す図である。 高炉内の状況を模式的に示した断面図である。 熱電対301、302(1)〜302(4)の配置関係を示す図である。 本発明による高炉炉底状態の判定処理を示すフローチャートである。 本発明の一実施形態によって求められた合成リカレンスプロットを示す図である。 炉底底盤温度の変動の一例を示す図である。 炉底中央に埋め込まれた熱電対の位置を示す図である。 従来の温度差による冷却制御を示す図である。 本発明の一実施形態に使用する合成リカレンスプロットを示す図である。
符号の説明
251…羽口
252…出銑口
301、302(1)〜302(4)…熱電対
303…炉底

Claims (5)

  1. 高炉炉底の底盤中央に埋め込まれた第1の温度検知手段により計測された時系列の温度情報から得られた第1の時系列情報と、高炉炉底側壁の出銑口近傍下部に埋め込まれた複数の第2の温度検出手段により計測された複数の時系列の温度情報から得られた第2の時系列情報とに基づいて、炉底底盤と炉底側壁の各出銑口近傍下部とを組とする2変数のリカレンスプロットを出銑口本数分作成し、これらの2変数のリカレンスプロットから、0〜出銑口本数の範囲に分布するプロット点の個数である相関の数に応じて識別した合成リカレンスプロットを作成し、高炉炉底の活性度を該プロット点の個数である相関の数に基づいて多段階で判定し、該活性度に応じて炉底底盤の冷却強度を制御することを特徴とする高炉炉下部冷却制御方法。
  2. 前記2変数のリカレンスプロットを作成するステップは、前記第1の時系列温度情報と前記第2の時系列温度情報とから、逆問題解析により、前記各温度検出手段に対応する高炉炉底の稼働面での時系列の熱流束情報または温度情報を算出し、該熱流束情報または温度情情報に基づいて、炉底底盤と炉底側壁の各出銑口近傍下部とを組とする2変数のリカレンスプロットを作成するステップであることを特徴とする請求項1記載の高炉炉下部冷却制御方法。
  3. さらに炉底底盤に炉底からの距離を異ならせて埋め込んだ複数の第3の温度検出手段から得られる温度情報の差と前記活性度との組合わせ情報により冷却強度を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の高炉炉下部冷却制御方法。
  4. 高炉炉底の底盤中央に埋め込まれた第1の温度検出手段と、高炉炉底側壁の出銑口近傍下部に埋め込まれた複数の第2の温度検出手段と、前記高炉炉下部活性度検出装置は、炉底底盤と高炉炉底側壁の各出銑口近傍下部とを組とする2変数のリカレンスプロットを出銑口本数分作成するリカレンスプロット作成部と、前記作成された複数のリカレンスプロットから、0〜出銑口本数の範囲に分布するプロット点の個数である相関の数に応じて識別した合成リカレンスプロットを作成するリカレンスプロット合成部と、前記合成リカレンスプロットのプロット点の個数である相関の数に従って高炉炉底の活性度を多段階に判定する活性度判定部とを有する高炉炉下部活性度判定装置と、前記活性度に応じて炉底底盤の冷却強度を制御する炉底底盤冷却制御装置とを備えることを特徴とする高炉下部冷却制御システム。
  5. 前記高炉炉下部活性度判定装置は、前記第1の時系列温度情報と上記第2の時系列温度情報とから逆問題解析により、前記各温度検出手段に対応する高炉炉底の稼働面での時系列の熱流束情報または温度情報を算出する逆問題解析部を備え、前記リカレンスプロット作成部が、該高炉炉底の稼働面での時系列の熱流束情報または温度情報に基づいて、炉底底盤と炉底側壁の各出銑口近傍下部とを組とする2変数のリカレンスプロットを作成することを特徴とする請求項に記載の高炉下部冷却制御システム。
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