本発明の製造方法において、前記光反応性化合物は、光照射により異性化反応および二量化反応の少なくとも1つを起す化合物である。
本発明の製造方法において、前記フィルム状成形物は、基材の表面に、前記混合物の溶液または溶融液をフィルム状に塗工し、これを固化させることにより形成されてもよい。この場合、前記光照射のタイミングは、特に制限されず、前記混合物の溶液または溶融液の固化の前、途中および後の少なくとも1つの時点で行うことができる。前記基材は、透明であるのが好ましい。前記基材は、光学的等方性であってもよいし、光学的異方性であってもよい。
本発明の製造方法において、前記分子構造の変化は、例えば、二量化または異性化である。
本発明の製造方法において、前記液晶ポリマーの配向状態は、例えば、ホモジニアス配向状態、ホメオトロピック配向状態、ハイブリッド配向状態、ホモジニアスチルト配向状態、カイラルネマチック配向状態、ツイスト配向状態、ティルト配向状態およびプラナー配向状態からなる群から選択される少なくとも1つの状態である。また、本発明の製造方法において、前記光は、偏光であるのが好ましい。
本発明の光学フィルムは、前記本発明の製造方法により製造されたものである。
本発明の光学フィルムは、光学的異方性であるのが好ましい。
本発明の位相差フィルムは、本発明の光学フィルムを含む位相差フィルムである。
本発明の位相差フィルムは、前記フィルム状成形物を形成する際に基材を用いた場合、本発明の光学フィルムのみを含んでもよいし、さらに前記基材を含んでもよい。
本発明の積層偏光板は、本発明の位相差フィルムを含む積層偏光板である。
本発明の液晶パネルは、液晶セルおよび光学部材を含み、前記液晶セルの少なくとも一方の表面に前記光学部材が配置された液晶パネルであって、前記光学部材は、本発明の位相差フィルムまたは本発明の積層偏光板である。
本発明の液晶表示装置は、本発明の液晶パネルを含む。
本発明の画像表示装置は、本発明の位相差フィルムまたは本発明の積層偏光板を含む。
本発明の製造方法は、例えば、以下のようにして行うことができる。
まず、非配向状態の液晶ポリマーと光反応性化合物との混合物のフィルム状成形物を、例えば以下のようにして準備する。
前記フィルム状成形物は、例えば、前述のように、基材の表面に、液晶ポリマーと光反応性化合物の混合物の溶液または溶融液をフィルム状に塗工し、これを固化させることにより、基材上にフィルム状成形物を形成してもよい。
前記液晶ポリマーとしては、限定されないが、例えば、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類等の液晶ポリマーが挙げられる。
前記液晶ポリマーの非配向状態とは、液晶ポリマーの分子が、一定の規則性をもって配列していない状態をさす。
前記光反応性化合物としては、前述のように、例えば、光により異性化反応および二量化反応の少なくとも1つを起す化合物が挙げられる。具体的には、光で二量化する化合物としては、例えば、シンナメート誘導体(例えば、ポリビニルシンナメート)、クマリン誘導体、カルコン誘導体などがあげられる。光で異性化する化合物としては、例えば、アゾベンゼン、スチルベン、スピロピラン、アントラセンやそれらの誘導体などが挙げられる。光反応性化合物は、1種類でもよいし、2種類以上の混合物であってもよい。
前記液晶ポリマーと前記光反応性化合物との混合比は特に限定されず、それら物質の種類によっても異なるが、前記液晶ポリマーの性能等を考慮して適宜選択すれば良い。例えば、前記混合比(前記液晶ポリマー/前記光反応性化合物)は、9/1〜1/9、好ましくは4/1〜1/4である。
前記基材としては、特に限定されず、無機化合物の基材(SUSベルト、銅薄板、ガラス、Siウエハ等)、ポリマーフィルムまたは金属板等を用いることができる。
前記ポリマーフィルムの形成材料として、具体的には、例えば、ポリオレフイン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、アモルファスポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリプロピレン、セルロース系ポリマー(トリアセチルセルロース(TAC)等)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノルボルネン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリノルボルネン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアクリル樹脂や、これらの混合物等が挙げられる。
また、これらの他に、前記ポリマーフィルムの形成材料として、液晶ポリマー等も使用できる。さらに、例えば、特開平2001−343529号公報(WO 01/37007号)に記載されているような、側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂との混合物等も使用できる。具体例としては、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドの交互共重合体と、アクリロニトリルとスチレンの共重合体との混合物等である。
これらの前記ポリマーフィルムの形成材料の中でも、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、セルロース系ポリマー、ポリエーテルスルホン、ノルボルネン系樹脂、イソブテンとN-メチルマレイミドの交互共重合体と、アクリロニトリルとスチレンの共重合体の混合物、側鎖に置換イミド基または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換フェニル基または非置換フェニル基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂との混合物が好ましい。この混合物を用いたポリマーフィルムとしては、例えば、鐘淵化学社製の商品名「HTフィルム」等が挙げられる。
前記ポリマーフィルムとしては、前記樹脂を、押出成形、カレンダー法、溶媒キャスティング法等で製造することができる。
前記ポリマーフィルムとしては、親水化処理や疎水化処理、基材の溶解性を低減する処理等の表面処理を施したものを用いることもできる。
前記基材は、例えば、平滑なものが好ましい。また、前記基材は、透明なものが好ましい。前記基材は、光学的等方性であってもよい。前記基材が光学的等方性であると、基材自身の位相差を考慮する必要がなく、ディスプレーの視野角やコントラストを補償する上で、好ましい。
また、前記基材は、用途に応じて、光学的異方性を有するものを用いることができる。前記基材が光学的異方性であると、基材自身の位相差と、この上に形成されるフィルム状成形物の位相差とを同時に設計することで、ディスプレーの補償機能を向上させることが可能である。光学的異方性を有する基材は、それ自体が光学的異方性を有するものを入手したり、前記基材を延伸処理すること等により、得ることができる。
光学的異方性を有する基材は、例えば、以下のような条件で、前記基材を延伸処理して製造することができる。
延伸処理の延伸倍率は、その延伸方向において、延伸前の前記基材の長さに対して、例えば、1倍以上である。前記延伸倍率は、好ましくは1〜1.5倍の範囲であり、より好ましくは1.1〜1.4倍であり、さらに好ましくは1.2〜1.3倍である。なお、前記基材の延伸方向は特に限定されず、MD方向、TD方向のいずれであってもよい。
前記基材の延伸条件は特に限定されず、一軸延伸でも二軸延伸でも良い。また、具体的な延伸方法も特に限定されず、公知の方法を適宜使用することができるが、例えば、ロール縦延伸、テンター横延伸、フィルムの長さ方向に一軸に延伸する自由端縦延伸、フィルムの長さ方向は固定しながら幅方向に一軸に延伸する固定端横延伸、幅方向に延伸しながら同時に流れ方向に収縮される同時二軸延伸、流れ方向に延伸した後に幅方向にも延伸する二軸延伸などが挙げられる。
延伸により得られた前記基材の光学的異方性は、光学的一軸性、光学的二軸性などのいずれでもよい。前記光学的一軸性とは、主屈折率nxとnyがほぼ同一であり、かつnzより大きい(nx≒ny>nz)負の一軸性と、主屈折率nxとnyがほぼ同一であり、かつnzより小さい(nx≒ny<nz)正の一軸性がある。また、前記光学的二軸性とは、三方向の主屈折率nx、nyおよびnzが異なり、例えば、負の二軸性(nx>ny>nz)、正の二軸性(nz>nx>ny)がある。なお、前記nx、ny、nzとは、光学的異方性基材における3つの光軸方向における屈折率をそれぞれ示す。屈折率nx、ny、nzは、前述のように、それぞれX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。
前記基材の厚みは、特に制限されないが、強度、薄膜化等の点から、例えば、20〜1000μmの範囲であり、好ましくは、40〜800μmの範囲であり、特に好ましくは、40〜120μmの範囲である。
前記混合物溶液の溶媒としては、特に制限されず、例えば、前記混合物等を溶解できればよく、前記混合物等の種類に応じて適宜決定できる。具体例としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、パラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド類;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル類;あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等があげられる。これらの溶媒は、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。また、前記基材を侵食しないものが好ましい。
前記混合物溶液における前記混合物(前記液晶ポリマーと前記光反応性化合物)の濃度は、特に制限されないが、例えば、塗工が容易な粘度となることから、溶媒100重量部に対して、前記混合物が、例えば、5〜50重量部、好ましくは、10〜30重量部、より好ましくは20〜30重量部である。溶媒100重量部に対して前記混合物が5重量部以上であると、塗工に適した粘度が得られるので好ましい。また、50重量部以下であると、滑らかな塗工面を形成できる粘度が得られるので好ましい。
前記混合物溶液は、例えば、必要に応じて、さらに安定剤、可塑剤、金属類、光開始剤等の種々の添加剤を配合してもよい。
また、前記混合物溶液は、例えば、他の樹脂を含有してもよい。前記他の樹脂としては、例えば、各種汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等があげられる。
前記汎用樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ABS樹脂、およびAS樹脂等があげられる。前記エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセテート(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA:ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)等があげられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリイミド(PI)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、ポリアリレート(PAR)、および液晶ポリマー(LCP)等があげられる。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂等があげられる。
このように、前記他の樹脂等を前記混合物溶液に配合する場合、その配合量は、前記混合物に対して、例えば、0.1〜50重量%であり、好ましくは、1〜30重量%である。
前記混合物溶液の塗工方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、ダイコート法、ブレードコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法、押出法等があげられる。
前記混合物の溶融液の塗工方法としては、前記基材の面上に塗工可能な方法であれば限定されないが、例えば、キャスティング法、溶融押し出し法等が挙げられる。前記混合物の溶融液は、必要に応じて、上述の安定剤、可塑剤、金属類等の種々の添加剤および異なる他の樹脂をさらに含有してもよい。
そして、前記基材上に塗工された前記混合物の溶液または溶融液を固化させて、前記基材の上にフィルム状成形物を形成することができる。
前記固化の方法としては、例えば、自然乾燥や加熱乾燥等の乾燥があげられる。その条件も、例えば、前記基材の材料の種類、前記混合物の種類や、溶液の場合には前記溶媒の種類等に応じて適宜決定できるが、例えば、温度は、通常、60〜150℃であり、好ましくは、80〜140℃であり、さらに好ましくは100〜120℃である。なお、固化は、一定温度で行っても良いし、段階的に温度を上昇または下降させながら行っても良い。固化時間も特に制限されないが、混合物溶液を用いた場合、固化により溶媒を除去する条件を用いる必要がある。通常、固化時間は、1〜5分、好ましくは2〜3分である。
前記フィルム状成形物の厚みは、特に制限されないが、例えば、0.5〜5μmの範囲であり、好ましくは0.8〜3.0μmの範囲であり、より好ましくは0.8〜2.0μmの範囲である。
つぎに、前記フィルム状成形物に光照射して、光反応性化合物を反応させる。
前記光は、例えば、直線偏光が挙げられ、なかでも、直線偏光紫外線が好ましい。
前記光の照射エネルギーは、例えば、300〜2000mJ/cm2、好ましくは300〜1000mJ/cm2、より好ましくは700〜1000mJ/cm2である。
前記光の照射時間は、前記光反応性物質の種類によって異なるが、例えば、1〜5分間、好ましくは、1〜3分間、より好ましくは2〜3分間時間である。
前記光の入射角度は、前記光反応性物質の種類によって異なるが、例えば、0〜80°、好ましくは40〜80°、より好ましくは50〜70°である。
なお、前記フィルム状成形物が、前記基材の表面に、前記混合物の溶液または溶融液をフィルム状に塗工し、これを固化させることにより形成される場合、前述のように、前記混合物の溶液または溶融液が固化する前、途中および後のいずれかの時点で、光照射を行ってもよい。
光照射により、前述のように、光反応性化合物は反応し、非配向状態の液晶ポリマーが所定状態に配向するように、分子構造を変化させる。その反応とは、前記光反応性化合物が光照射で異性化する化合物である場合には、異性化反応、前記光反応性化合物が光照射で二量化する化合物である場合には、二量化反応である。例えば、シンナメート基は、光により二量化する。
液晶の配向形態は、偏光等の照射光の条件によって制御可能である。例えば、偏光を前記フィルム状成形物に対し垂直方向から照射すると、得られる液晶配向形態は、水平配向(ホモジニアス配向)若しくは低いチルト角を持ったスプレー配向(ハイブリッドチルト配向)になると考えられる。一般に、低いチルト角とは、平均チルト角が、約0°から約10°の間にあることをいう。また、例えば、偏光をフィルム状成形物に対し垂直方向からずれた方向(垂直方向を0°とした場合、0を超え、かつ90°以内の間)から照射すれば、液晶配向形態は、高いチルト角を持ったスプレー配向(ハイブリッドチルト配向)になる。高いチルト角とは、一般に、平均チルト角が、約10°〜70°の間にあることをいう。また、液晶の配向状態は、偏光等の光の照射量によって変化する。照射量が少なすぎたり、多すぎたりすると、液晶の配向状態は悪化し、ドメインを形成したり、配向不良部が増加し、フィルムの透明性が損なわれる恐れがある。なお、好ましい偏光照射量は、液晶材料や光反応性材料によって適宜決定され、例えば、前述の照射エネルギーおよび照射時間が挙げられる。また、例えば、カイラルネマチック配向若しくはコレステリック配向にするためには、例えば、液晶材料中に、カイラル剤を含有させ、偏光を照射することにより、液晶をねじれ配向させる。
液晶ポリマーが配向するとは、液晶ポリマーの分子が、一定の規則性をもって配列している状態を意味する。
液晶ポリマーが所定状態に配向するとは、ホモジニアス配向、ホメオトロピック配向、ハイブリッド配向、ホモジニアスチルト配向、カイラルネマチック配向、ツイスト配向、ティルト配向またはプラナー配向に配向することを意味する。液晶ポリマーの所定状態の配向は、前記配向の1種類であってもよいし、2種類以上の混合配向であってもよい。例えば、マスクを介して偏光照射することにより、液晶を部分的に配向させたり、2種類以上の配向を形成してもよ。
つぎに、前記フィルム状成形物を加熱することにより、前記液晶ポリマーを配向させる。前記加熱温度は、例えば、前記液晶ポリマーの種類に応じて適宜決定できるが、具体的には前記液晶ポリマーが液晶状態を示す温度以上、例えば、100〜300℃の範囲、好ましくは120〜250℃の範囲、より好ましくは120〜200℃の範囲である。前記温度が前記液晶ポリマーが液晶状態を示す温度以上であれば、充分に前記液晶ポリマーを配向させることができるからである。
前記加熱時間は、液晶ポリマーの種類によって異なるが、例えば、1〜5分間、好ましくは1〜4分間、より好ましくは1〜3分間である。
このように、光照射によって光反応性化合物が、所定の構造に変化し、この構造にしたがって液晶ポリマーが配向する。
つぎに、前記フィルム状成形物に冷却処理を施すことによって、前記配向状態を固定させて、配向状態の液晶ポリマーを含む光学フィルムを得る。前記冷却温度は、例えば、前記液晶ポリマーの種類に応じて適宜決定できるが、具体的には前記液晶ポリマーが液晶状態を示す温度未満、例えば、10〜120℃の範囲、好ましくは20〜80℃の範囲、より好ましくは20〜40℃の範囲である。
前記冷却時間は、液晶ポリマーの種類によって異なるが、例えば、0.5〜10分間、好ましくは1〜5分間、より好ましくは2〜3分間である。
前記冷却処理により、液晶ポリマーは液晶状態を示さなくなるので、前記液晶ポリマーの配向状態を固定することができる。前記配向状態は、前述のとおりである。
このようにして得られた光学フィルムは、光学的異方性であるのが好ましい。光学的異方性とは、前述のように、光学的一軸性や光学的二軸性を意味する。
つぎに、本発明の位相差フィルムは、本発明の光学フィルムを含み、例えば、光学補償フィルムとして有用である。
本発明の位相差フィルムは、前述のように、本発明の製造方法によって製造された光学フィルムを含んでいれば、それ以外の構成は特に制限されない。例えば、本発明の位相差フィルムは、前述のように、例えば、前記光学フィルム単独でもよいし、前記基材上に前記光学フィルムが直接形成された積層体であってもよい。
つぎに、本発明の積層偏光板は、前述のように、例えば、位相差フィルムを含む積層偏光板であって、前記位相差フィルムは本発明の位相差フィルムである。このような積層偏光板は、本発明の位相差フィルムと、偏光板とを有していれば、その構成は特に制限されない。偏光板は、偏光子のみでもよいし、偏光子と保護層との積層体であってもよい。中でも偏光子の片面または両面に保護層が設けられた偏光板が好ましい。本発明の位相差フィルムは、偏光子と積層され、その積層物の両面に保護層が設けられてもよい。
前記偏光子(偏光フィルム)としては、特に制限されず、例えば、従来公知のものや、前述のものを用いることができる。また、前記偏光フィルムの厚みは、例えば、1〜80μmの範囲である。
前記保護層としては、特に制限されず、従来公知の透明フィルムや、前述のものを用いることができる。
また、前記保護層としては、例えば、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムが挙げられる。このポリマー材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有す熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。なお、前記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であってもよい。
また、前記保護層は、色付きが無いことが好ましい。具体的には、下記式で表されるフィルム厚み方向の位相差値(Rth)が、−90nm〜+75nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは−80nm〜+60nmであり、特に好ましくは−70nm〜+45nmの範囲である。前記位相差値が−90nm〜+75nmの範囲であれば、十分に保護フィルムに起因する偏光板の着色(光学的な着色)を解消できる。なお、下記式において、nx,ny,nzは、前述と同様であり、dは、その膜厚を示す。
Rth=[{(nx+ny)/2}-nz]・d
また、前記保護層は、さらに光学補償機能を有するものでもよい。このように光学補償機能を有する保護層としては、例えば、液晶セルにおける位相差に基づく視認角の変化が原因である、着色等の防止や、良視認の視野角の拡大等を目的とした公知のものが使用できる。具体的には、例えば、前述した透明樹脂を一軸延伸または二軸延伸した各種延伸フィルムや、液晶ポリマー等の配向フィルム、透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を配置した積層体等が挙げられる。これらの中でも、良視認の広い視野角を達成できることから、前記液晶ポリマーの配向フィルムが好ましく、特に、ディスコティック系やネマチック系の液晶ポリマーの傾斜配向層から構成される光学補償層を、前述のトリアセチルセルロースフィルム等で支持した光学補償位相差板が好ましい。このような光学補償位相差板としては、例えば、富士写真フィルム株式会社製の商品名「WVフィルム」等の市販品が挙げられる。なお、前記光学補償位相差板は、位相差フィルムやトリアセチルセルロースフィルム等のフィルム支持体を2層以上積層させることによって、位相差等の光学特性を制御したもの等でもよい。
前記保護層の厚みは、特に制限されず、例えば500μm以下であり、好ましくは5〜300μm、より好ましくは5〜150μmの範囲である
前記保護層は、例えば、偏光フィルムに前記各種透明樹脂を塗布する方法、前記偏光フィルムに前記透明樹脂製フィルムや前記光学補償フィルム等を積層する方法等の従来公知の方法によって適宜形成でき、また市販品を使用することもできる。
また、前記保護層は、さらに、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキングの防止や拡散、アンチグレア等を目的とした処理等が施されたものでもよい。前記ハードコート処理とは、偏光板表面の傷付き防止等を目的とし、例えば、前記保護層の表面に、硬化型樹脂から構成される、硬度や滑り性に優れた硬化被膜を形成する処理である。前記硬化型樹脂としては、例えば、シリコーン系、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系等の紫外線硬化型樹脂等が使用でき、前記処理は、従来公知の方法によって行うことができる。スティッキングの防止は、隣接する層との密着防止を目的とする。前記反射防止処理とは、偏光板表面での外光の反射防止を目的とし、従来公知の反射防止層等の形成により行うことができる。
前記アンチグレア処理とは、偏光板表面において外光が反射することによる、偏光板透過光の視認妨害を防止すること等を目的とし、例えば、従来公知の方法によって、前記保護層の表面に、微細な凹凸構造を形成することによって行うことができる。このような凹凸構造の形成方法としては、例えば、サンドブラスト法やエンボス加工等による粗面化方式や、前述のような透明樹脂に透明微粒子を配合して前記保護層を形成する方式等が挙げられる。
前記透明微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等が挙げられ、この他にも導電性を有する無機系微粒子や、架橋または未架橋のポリマー粒状物等から構成される有機系微粒子等を使用することもできる。前記透明微粒子の平均粒径は、特に制限されないが、例えば、0.5〜20μmの範囲である。また、前記透明微粒子の配合割合は、特に制限されないが、前述のような透明樹脂100重量部に対して2〜70重量部の範囲が好ましく、より好ましくは5〜50重量部の範囲である。
前記透明微粒子を配合したアンチグレア層は、例えば、保護層そのものとして使用することもでき、また、保護層表面に塗工層等として形成されてもよい。さらに、前記アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角を拡大するための拡散層(視覚補償機能等)を兼ねるものであってもよい。
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層、アンチグレア層等は、前記保護層とは別個に、例えば、これらの層を設けたシート等から構成される光学フィルムとして、偏光板に積層してもよい。
各構成物同士(位相差フィルム、偏光子、保護層等)の積層方法は、特に制限されず、従来公知の方法によって行うことができる。例えば、前述と同様の粘着剤や接着剤等が使用でき、その種類は、前記各構成物の材質等によって適宜決定できる。前記接着剤としては、例えば、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系等のポリマー製接着剤や、ゴム系接着剤等が挙げられる。また、前記接着剤として、ホウ酸、ホウ砂、グルタルアルデヒド、メラミン、シュウ酸等のビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤等から構成される接着剤等も使用できる。前述のような粘着剤、接着剤は、例えば、湿度や熱の影響によっても剥がれ難く、光透過率や偏光度にも優れる。具体的には、前記偏光子がPVA系フィルムの場合、例えば、接着処理の安定性等の点から、PVA系接着剤が好ましい。これらの接着剤や粘着剤は、例えば、そのまま偏光子や保護層の表面に塗布してもよいし、前記接着剤や粘着剤から構成されたテープやシートのような層を前記表面に配置してもよい。また、例えば、接着剤液や粘着剤液として調製した場合、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。なお、前記接着剤を塗布する場合は、例えば、前記接着剤液に、さらに、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。このような接着層の厚みは、特に制限されないが、例えば、1nm〜500nmであり、好ましくは10nm〜300nmであり、より好ましくは20nm〜100nmである。これらの接着剤は、例えば、その水溶液を前記各構成物表面に塗工し、乾燥すること等によって使用できる。前記水溶液には、例えば、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒も配合できる。これらの中でも、前記接着剤としては、PVAフィルムとの接着性に優れる点から、PVA系接着剤が好ましい。
本発明の積層偏光板は、実用に際して、前記本発明の位相差フィルムの他に、さらに他の光学フィルムを含んでもよい。前記他の光学フィルムとしては、例えば、以下に示すような偏光板、反射板、半透過反射板、輝度向上フィルム等、液晶表示装置等に使用される、従来公知の各種光学フィルムが挙げられる。これらの他の光学フィルムは、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよく、また、一層でもよいし、二層以上を積層してもよい。このような他の光学フィルムをさらに含む積層偏光板は、例えば、光学補償機能を有する一体型偏光板として使用することが好ましく、例えば、液晶セル表面に配置する等、各種画像表示装置への使用に適している。
つぎに、このような一体型偏光板について説明する。
まず、反射型偏光板または半透過反射型偏光板の一例について説明する。前記反射型偏光板は、本発明の積層偏光板にさらに反射板が、前記半透過反射型偏光板は、本発明の積層偏光板にさらに半透過反射板が、それぞれ積層されている。
前記反射型偏光板は、例えば、液晶セルの裏側に配置され、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置(反射型液晶表示装置)等に使用できる。このような反射型偏光板は、例えば、バックライト等の光源の内蔵を省略できるため、液晶表示装置の薄型化を可能にする等の利点を有する。
前記反射型偏光板は、例えば、前記弾性率を示す偏光板の片面に、金属等から構成される反射板を形成する方法等、従来公知の方法によって作成できる。具体的には、例えば、前記偏光板における保護層の片面(露出面)を、必要に応じてマット処理し、前記面に、アルミニウム等の反射性金属からなる金属箔や蒸着膜を反射板として形成した反射型偏光板等が挙げられる。
また、前述のように各種透明樹脂に微粒子を含有させて表面を微細凹凸構造とした保護層の上に、その微細凹凸構造を反映させた反射板を形成した、反射型偏光板等も挙げられる。その表面が微細凹凸構造である反射板は、例えば、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制できるという利点を有する。このような反射板は、例えば、前記保護層の凹凸表面に、真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式等、従来公知の方法により、直接、前記金属箔や金属蒸着膜として形成することができる。
また、前述のように偏光板の保護層に前記反射板を直接形成する方式に代えて、反射板として、透明保護フィルムのような適当なフィルムに反射層を設けた反射シート等を使用してもよい。前記反射板における前記反射層は、通常、金属から構成されるため、例えば、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続や、保護層の別途形成を回避する点等から、その使用形態は、前記反射層の反射面が前記フィルムや偏光板等で被覆された状態であることが好ましい。
一方、前記半透過型偏光板は、前記反射型偏光板において、反射板に代えて、半透過型の反射板を有するものである。前記半透過型反射板としては、例えば、反射層で光を反射し、かつ、光を透過するハーフミラー等が挙げられる。
前記半透過型偏光板は、例えば、液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置等を比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射して画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置等に使用できる。すなわち、前記半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、一方、比較的暗い雰囲気下においても、前記内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置等の形成に有用である。
つぎに、本発明の積層偏光板に、さらに輝度向上フィルムが積層された偏光板の一例を説明する。
前記輝度向上フィルムとしては、特に限定されず、例えば、誘電体の多層薄膜や、屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体のような、所定偏光軸の直線偏光を透過して、他の光は反射する特性を示すもの等が使用できる。このような輝度向上フィルムとしては、例えば、3M社製の商品名「D-BEF」等が挙げられる。また、コレステリック液晶層、特にコレステリック液晶ポリマーの配向フィルムや、その配向液晶層をフィルム基材上に支持したもの等が使用できる。これらは、左右一方の円偏光を反射して、他の光は透過する特性を示すものであり、例えば、日東電工社製の商品名「PCF350」、Merck社製の商品名「Transmax」等が挙げられる。
本発明の各種偏光板は、例えば、前述のような本発明の位相差フィルムを含む積層偏光板と、さらに他の光学フィルムとを積層して、2以上の光学フィルムを含む光学部材であってもよい。
このように2以上の光学フィルムを積層した光学部材は、例えば、液晶表示装置等の製造過程において、順次別個に積層する方式によっても形成できるが、予め積層した光学部材として使用すれば、例えば、品質の安定性や組立作業性等に優れ、液晶表示装置等の製造効率を向上できるという利点がある。なお、積層には、前述と同様に、粘着層等の各種接着手段を用いることができる。
前述のような各種偏光板は、例えば、液晶セル等の他の部材への積層が容易になることから、さらに粘着剤層や接着剤層を有していることが好ましく、これらは、前記偏光板の片面または両面に配置することができる。前記粘着層の材料としては、特に制限されず、アクリル系ポリマー等の従来公知の材料が使用できる。前記粘着層は、吸湿による発泡や剥離の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性等の点より、例えば、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましい。また、前記粘着層としては、微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層等でもよい。前記偏光板表面への前記粘着剤層の形成は、例えば、各種粘着材料の溶液または溶融液を、流延や塗工等の展開方式により、前記偏光板の所定の面に直接添加して層を形成する方式や、同様にして後述するセパレータ上に粘着剤層を形成させて、それを前記偏光板の所定面に移着する方式等によって行うことができる。なお、このような層は、偏光板のいずれの表面に形成してもよく、例えば、偏光板における前記光学フィルムの露出面に形成してもよい。
このように偏光板に設けた粘着剤層等の表面が露出する場合は、前記粘着層を実用に供するまでの間、汚染防止等を目的として、セパレータによって前記表面をカバーすることが好ましい。このセパレータは、前記粘着剤層の表面と接する面上に、剥離コートを設けるのが好ましい。その剥離コートは、前記セパレータに、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤を塗布して、形成できる。
前記粘着剤層等は、例えば、単層体でもよいし、積層体でもよい。前記積層体としては、例えば、異なる組成や異なる種類の単層を組合せた積層体を使用することもできる。また、前記偏光板の両面に配置する場合は、例えば、それぞれ同じ粘着剤層でもよいし、異なる組成や異なる種類の粘着剤層であってもよい。
前記粘着剤層の厚みは、例えば、偏光板の構成等に応じて適宜に決定でき、例えば、1〜500μmである。
前記粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが挙げられる。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等が挙げられる。
前記粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、前記粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
以上のような本発明の位相差フィルムや偏光板、各種光学部材(光学フィルムをさらに積層した各種偏光板)を形成する偏光フィルム、保護層、他の光学フィルム、粘着剤層等の各層は、例えば、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で適宜処理することによって、紫外線吸収能を持たせたものでもよい。
本発明の位相差フィルムや積層偏光板は、前述のように、液晶表示装置等の各種装置の形成に使用することが好ましく、例えば、積層偏光板を液晶セルの片側または両側に配置して液晶パネルとし、反射型や半透過型、あるいは透過・反射両用型等の液晶表示装置に用いることができる。
液晶表示装置を形成する前記液晶セルの種類は、任意で選択でき、例えば、薄膜トランジスタ型に代表されるアクティブマトリクス駆動型のもの、ツイストネマチック(TN)型やスーパーツイストネマチック(STN)型に代表される単純マトリクス駆動型のもの、OCB(Optically Controlled Birefringence)セル、HAN(Hybrid Aligned Nematic)セル、VA(垂直配向;Vertical Aligned)セル等、種々のタイプの液晶セルが使用できる。
また、前記液晶セルは、通常、対向する液晶セル基板の間隙に液晶が注入された構造であって、前記液晶セル基板としては、特に制限されず、例えば、ガラス基板やプラスチック基板が使用できる。なお、前記プラスチック基板の材質としては、特に制限されず、従来公知の材料が挙げられる。
また、液晶セルの両面に偏光板や光学部材を設ける場合、それらは同じ種類のものでもよいし、異なっていてもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば、プリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板やバックライト等の適当な部品を、適当な位置に1層または2層以上配置することができる。
さらに、本発明の液晶表示装置は、液晶パネルを含み、前記液晶パネルとして、本発明の液晶パネルを使用する以外は、特に制限されない。また、さらに光源を有する場合には、特に制限されないが、例えば、光のエネルギーが有効に使用できることから、例えば、偏光を出射する平面光源であることが好ましい。
本発明の液晶パネルの一例としては、以下のような構成が挙げられる。例えば、液晶セル、本発明の位相差フィルム、偏光子および保護層を有しており、前記液晶セルの一方の面に前記光学フィルムが積層されており、前記光学フィルムの他方の面に、前記偏光子および前記保護層が、この順序で積層されている構造である。前記液晶セルは、二枚の液晶セル基板の間に、液晶が保持された構成となっている。また、前記位相差フィルムが、前述のように複屈折層と基材との積層体である場合、その配置は特に制限されないが、例えば、前記複屈折層側が前記液晶セルに面しており、前記基材側が前記偏光子に面している形態が挙げられる。
本発明の液晶表示装置は、視認側の位相差フィルムの上に、例えば、さらに拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護層や保護板を配置したり、または液晶パネルにおける液晶セルと偏光板との間に補償用位相差板等を適宜配置することもできる。
なお、本発明の位相差フィルムや積層偏光板は、前述のような液晶表示装置には限定されず、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、FED(電界放出ディスプレイ:Field Emission Display)等の自発光型表示装置にも使用できる。自発光型フラットディスプレイに使用する場合は、例えば、本発明の位相差フィルムの面内位相差値Δndをλ/4にすることで、円偏光を得ることができるため、反射防止フィルターとして利用できる。
つぎに、本発明の積層偏光板を備えるエレクトロルミネッセンス(EL)表示装置について説明する。このEL表示装置は、本発明の位相差フィルムまたは偏光板を有する表示装置であり、このEL表示装置は、有機ELおよび無機ELのいずれでもよい。
近年、EL表示装置においても、黒状態における電極からの反射防止として、例えば、偏光子や偏光板等の光学フィルムをλ/4板とともに使用することが提案されている。本発明の積層偏光板や位相差フィルムは、特に、EL層から、直線偏光、円偏光もしくは楕円偏光のいずれかの偏光が発光されている場合、あるいは、正面方向に自然光を発光していても、斜め方向の出射光が部分偏光している場合等に、非常に有用である。
ここで、一般的な有機EL表示装置について説明する。前記有機EL表示装置は、一般に、透明基板上に、透明電極、有機発光層および金属電極がこの順序で積層された発光体(有機EL発光体)を有している。前記有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えば、トリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層とアントラセン等の蛍光性有機固体からなる発光層との積層体や、このような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層との積層体や、また、前記正孔注入層と発光層と電子注入層との積層体等、種々の組み合わせが挙げられる。
そして、このような有機EL表示装置は、前記陽極と陰極とに電圧を印加することによって、前記有機発光層に正孔と電子とが注入され、前記正孔と電子とが再結合することによって生じるエネルギーが、蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。前記正孔と電子との再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、電流と発光強度とは、印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
前記有機EL表示装置においては、前記有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明であることが必要なため、通常、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明導電体で形成された透明電極が陽極として使用される。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に、仕事関数の小さな物質を用いることが重要であり、通常、Mg−Ag、Al−Li等の金属電極が使用される。
このような構成の有機EL表示装置において、前記有機発光層は、例えば、厚み10nm程度の極めて薄い膜で形成されることが好ましい。これは、前記有機発光層においても、透明電極と同様に、光をほぼ完全に透過させるためである。その結果、非発光時に、前記透明基板の表面から入射して、前記透明電極と有機発光層とを透過して前記金属電極で反射した光が、再び前記透明基板の表面側へ出る。このため、外部から視認した際に、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見えるのである。
この有機EL表示装置は、例えば、前記有機発光層の表面側に透明電極を備え、前記有機発光層の裏面側に金属電極を備えた前記有機EL発光体を含む有機EL表示装置において、前記透明電極の表面に、本発明の位相差フィルムや積層偏光板等が配置されることが好ましく、さらにλ/4板を偏光板とEL素子との間に配置することが好ましい。このように、本発明の位相差フィルムや積層偏光板を配置することによって、外界の反射を抑え、視認性向上が可能であるという効果を示す有機EL表示装置となる。また、前記透明電極と位相差フィルムとの間に、さらに位相差板が配置されることが好ましい。
前記位相差フィルムや積層偏光板等は、例えば、外部から入射して前記金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって前記金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板として1/4波長板を使用し、かつ、前記偏光板と前記位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、前記金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、前記偏光板によって直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は、前記位相差板によって、一般に楕円偏光となるが、特に前記位相差板が1/4波長板であり、しかも前記角がπ/4の場合には、円偏光となる。
この円偏光は、例えば、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び、有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、前記位相差板で再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、前記偏光板の偏光方向と直交しているため、前記偏光板を透過できず、その結果、前述のように、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができるのである。