JP3960549B2 - Va型液晶セル用光学補償機能付き偏光板およびva型液晶セル用光学補償機能層 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、VA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板、及びそれを用いたVAモードの液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶セルの複屈折性を補償し、全方位において優れた品質の表示を示す液晶表示装置を得るためには、面内の2方向と厚み方向の主屈折率(nx、ny、nz)を制御した光学補償層が必要である。特に、VA(Vertically Aligned)型やOCB(Optically Compensated Bend)型液晶表示装置では、3方向の主屈折率がnx>ny>nzとなる光学補償層が必要である。
【0003】
従来、光学補償層としては、延伸された高分子フィルムを2枚以上積層した光学補償層が用いられている。例えば、一軸延伸された高分子フィルムを2枚用意し、互いの面内における遅相軸の方向が直交するように積層した光学補償層がある。
【0004】
しかし、延伸された高分子フィルムの厚さが、約1mmであるため、延伸高分子フィルムを2枚以上積層した光学補償層は厚みが厚くなり、その結果液晶表示装置全体の厚みが増すという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、延伸高分子フィルムを2枚以上積層した光学補償層よりも厚みの薄い光学補償層が積層されたVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、偏光層と光学補償層とを含むVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板であって、前記光学補償層が、延伸高分子フィルムを含む光学補償A層、及びコレステリック液晶層を含む光学補償B層を含む光学補償機能付き偏光板が提供される。
【0007】
前記延伸高分子フィルムを含む光学補償A層は、以下の式(I)および(II)を満たす。
20(nm)≦Re≦300(nm) (I)
1.2≦Rth/Re≦2.16 (II)
前記式において、
Re(法線方向の位相差値)=(nx−ny)・d
Rth(厚み方向の位相差値)=(nx−nz)・dである。
【0008】
さらに前記式において、nx、nyおよびnzは、それぞれ前記光学補償A層におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示す。前記X軸とは、前記光学補償A層の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。dは前記光学補償A層の厚みを示す。
【0009】
前記コレステリック液晶層を含む光学補償B層において、前記コレステリック液晶層の構成分子は、液晶モノマーとカイラル剤から製造され、
前記液晶モノマーが、下記式(10)で表される化合物であり、
前記カイラル剤が、下記式(38)で表される化合物である。
【化3】
【0010】
さらに本発明によれば、液晶セルおよび本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板を含み、前記液晶セルの少なくとも一方の表面に前記偏光板が配置されたVAモードの液晶表示装置が提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、高分子フィルムを含む光学補償A層及びコレステリック液晶層を含む光学補償B層を含み、
前記光学補償A層が、以下の式(I)および(II)に示す条件を満たし、
前記コレステリック液晶層の構成分子が、液晶モノマーとカイラル剤から製造され、
前記液晶モノマーが、下記式(10)で表される化合物であり、
前記カイラル剤が、下記式(38)で表される化合物であるVA型液晶セル用光学補償層が提供される。
20(nm)≦Re≦300(nm) (I)
1.2≦Rth/Re≦2.16 (II)
[前記式において、
Re(法線方向の位相差値)=(nx−ny)・d
Rth(厚み方向の位相差値)=(nx−nz)・d
(ここで、nx、nyおよびnzは、それぞれ前記光学補償A層におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記光学補償A層の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。dは前記光学補償A層の厚みを示す。)]
【化4】
【0012】
【発明の実施の形態】
コレステリック液晶層の厚さは、通常50μm以下、例えば10μmである。従って、延伸高分子フィルム2層(通常、約1mm/層)を積層するのに比べ、延伸高分子フィルムを含む光学補償A層とコレステリック液晶層を含む光学補償B層を積層すると、積層物の厚みを薄くすることができる。また、さらに光学補償機能を高めるために光学補償B層を2枚以上積層しても1枚の厚さが薄いので、延伸高分子フィルム2層の積層物より厚みを薄くすることができる。
【0013】
本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板には、光学補償A層および光学補償B層を含むが、その積層の順序はどのような順序であってもよい。例えば、偏光層、光学補償A層および光学補償B層の順に積層されていてもよいし、偏光層、光学補償B層および光学補償A層の順に積層されていてもよい。さらに光学補償A層または光学補償B層のいずれかが2層以上含まれてもよい。その際、積層の順序はどのような順序であってもよい。例えば、偏光層、光学補償B層、光学補償A層および光学補償B層の順に積層されていてもよい。なお、VA型液晶セル用光学補償層の場合にも、前記と同様、光学補償A層および光学補償B層の積層の順序はどのような順序であってもよい。
【0014】
前記偏光層の吸収軸と前記光学補償A層の遅相軸の成す角度が、85°以上95°以下になるように配置されるのが好ましい。この角度をなすように配置した光学補償機能付き偏光板をVAモードの液晶セルに用いると、それらのセルの複屈折が効率的に補償され、その光学補償機能付き偏光板を用いた液晶表示装置の視野角を拡大することができる。さらに、前記偏光層の吸収軸方向と前記光学補償A層の遅相軸方向の成す角度は、より好ましくは86°以上94°以下、さらに好ましくは87°以上93°以下である。
【0015】
本発明において、光学補償A層に含まれる高分子フィルムは、未延伸高分子フィルムを適宜な方法で延伸した延伸高分子フィルムまたは液晶フィルムにより形成される。また、液晶フィルムはネマチック液晶から形成されることが最も好ましい。
【0016】
未延伸高分子フィルムとしては、特に限定されず、フィルム延伸により光学異方性を付与することができる材料で、複屈折の制御性、透明性、耐熱性に優れる材料が好ましい。前記未延伸高分子フィルムは、単独で使用しても良いし二種類以上混合して使用しても良い。例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリノルボルネン系ポリマー、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、セルロースエステルおよびそれらの共重合体等が使用可能である。
【0017】
また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムもあげられる。このポリマー材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基およびシアノ基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチレンマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物があげられる。
【0018】
前記未延伸高分子フィルムの製造方法は特に制限されず、通常の方法を用いることができる。押し出し法又は流延製膜法が、延伸後の高分子フィルムの複屈折のムラを少なくできるので、好ましい。前記未延伸高分子フィルムは、例えば、3mm以下、好ましくは1μm〜1mm、特に好ましくは5〜500μmの厚さのものが用いられる。
【0019】
前記未延伸高分子フィルムの延伸方法としては特に制限されないが、通常の方法を用いることができる。例えば、テンター横延伸や二軸延伸が挙げられる。二軸延伸は、長軸方向の延伸倍率が短軸方向の延伸倍率よりも小さいのが好ましい。また、二軸延伸は全テンター方式による同時二軸延伸、ロールーテンター法による逐次二軸延伸のいずれの方法でも用いることができる。
【0020】
前記未延伸高分子フィルムの延伸倍率は、延伸方法によって異なるが、通常前記未延伸高分子フィルムの長さに対して、101〜250%延伸する。前記未延伸高分子フィルムの延伸倍率は、前記未延伸高分子フィルムの長さに対して、101〜200%が好ましい。
【0021】
前記未延伸高分子フィルムを延伸する温度は、使用する前記未延伸高分子フィルムのガラス転移点(Tg)や前記未延伸高分子フィルム中の添加物の種類などに応じて適宜選択される。前記未延伸高分子フィルムを延伸する温度は、例えば80〜250℃、好ましくは120〜220℃、特に好ましくは140〜200℃である。特に、前記未延伸高分子フィルムを延伸する温度は、延伸される前記未延伸高分子フィルムのTg付近またはTg以上であるのが好ましい。
【0022】
延伸高分子フィルムの厚さは、対象となる画像表示装置の画面の大きさに応じて適宜に決定することができる。前記延伸高分子フィルムの厚さは、例えば1mm以下、好ましくは1〜500μm、特に好ましくは5〜300μmである。
【0023】
前記のように、前記延伸高分子フィルムを含む光学補償A層は、以下の式(I)および(II)を満たす。
20(nm)≦Re≦300(nm) (I)
1.2≦Rth/Re≦2.16 (II)
式(I)に示すReは、好ましくは25≦Re≦250であり、より好ましくは30≦Re≦200である。また、Rth/Reは、好ましくは1.5≦Rth/Re≦2.16であり、より好ましくは2≦Rth/Re≦2.16である。
【0024】
光学補償B層は、コレステリック液晶を配向層上に塗工し、配向させ、その配向状態を固定化してコレステリック液晶層を形成することにより製造することができる。
【0025】
コレステリック液晶層は、特に限定されず、従来の液晶配向処理に準じた方法で製造されたものを用いることができる。例えば、まず基材の配向層上にコレステリック液晶ポリマーおよびカイラル剤を塗工する。その塗工層をガラス転移温度以上かつ等方相転移温度未満で加熱し、その塗工層中の液晶ポリマー分子を配向させる。その後、その塗工層をガラス転移温度未満に冷却すると、前記液晶ポリマー分子の配向が固定化されたコレステリック液晶層を基材上に形成することができる。また、前記配向層上に光架橋性液晶モノマーおよびカイラル剤を塗工して、前述のように、その塗工層をガラス転移温度以上かつ等方相転移温度未満で加熱し、その塗工層中の前記液晶モノマーを配向させる。これを光処理して前記液晶モノマーを架橋させ、コレステリック液晶層を基材上に形成する方法等が挙げられる。
【0026】
選択反射波長帯域を前記範囲に制御するために、前記コレステリック液晶層は、カイラル剤を含むことが好ましい。本発明における前記カイラル剤とは、例えば、後述するような液晶モノマーや液晶ポリマーをコレステリック構造となるように配向する機能を有する化合物である。
【0027】
前記カイラル剤としては、前述のようにコレステリック層の構成分子をコレステリック構造に配向できるもの、例えば、後述するカイラル剤を用いる。
【0028】
これらのカイラル剤の中でも、そのねじり力が、1×10-6nm-1・(wt%)-1以上であることが好ましく、より好ましくは1×10-5nm-1・(wt%)-1以上であり、さらに好ましくは1×10-5〜1×10-2nm-1・(wt%)-1の範囲であり、特に好ましくは1×10-4〜1×10-3nm-1・(wt%)-1の範囲である。このようなねじり力のカイラル剤を使用すれば、例えば、形成されたコレステリック液晶層のらせんピッチを、後述する範囲に制御でき、これによって前記選択反射波長帯域を、前記範囲に制御することが十分に可能となる。
【0029】
なお、前記ねじり力とは、一般に、後述するような液晶モノマーや液晶ポリマー等の液晶材料にねじれを与え、らせん状に配向させる能力のことを示し、下記式で表すことができる。
ねじり力=1/[コレステリックピッチ(nm)×カイラル剤重量比(wt%)]
【0030】
前記式においてカイラル剤重量比とは、例えば、液晶モノマーまたは液晶ポリマーとカイラル剤とを含む混合物における前記カイラル剤の割合(重量比)をいい、下記式で表される。
【0031】
カイラル剤重量比(wt%)= [X/(X+Y)]×100
X:カイラル剤重量
Y:液晶モノマー重量または液晶ポリマー重量
まず、コレステリック液晶ポリマーを用いて製造する方法について、以下に例示する。
【0032】
前記コレステリック液晶ポリマーとしては、公知のものを適宜用いることができる。コレステリック液晶ポリマーとしては、安息香酸フェニルエステル系が挙げられる。また、コレステリック液晶ポリマーとカイラル剤の比率を調整し、特に選択反射波長領域を350nm以下に調整することが好ましい。また、本発明のコレステリック液晶ポリマーとしては、特許2660601号(日本石油株式会社)に記載のポリマーも好ましく用いることができる。
【0033】
まず、前記コレステリック液晶ポリマーを配向層上に塗工する。その塗工する方法としては、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、コレステリック液晶ポリマーの溶液を塗布する方法、コレステリック液晶ポリマーの溶融液を塗布する方法などが挙げられる。中でも、コレステリック液晶ポリマーの溶液を塗布する方法が好ましい。
【0034】
前記コレステリック液晶ポリマー溶液におけるポリマー濃度は、特に制限されないが、溶媒に対して、例えば、前記コレステリック液晶ポリマー5〜50重量%、好ましくは7〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%である。
【0035】
前記カイラル剤としては、前述のようにコレステリック層の液晶ポリマーをコレステリック構造に配向できるものであり、化学式(38)で表わされる化合物である。
【0036】
前記カイラル剤の添加割合は、例えば、所望の選択反射波長帯域に応じて適宜決定されるが、前記液晶ポリマーに対する添加割合は、5〜23重量%の範囲であり、好ましくは10〜20重量%の範囲である。前述のように、液晶ポリマーとカイラル剤との添加割合をこのように制御することによって、形成される光学補償B層の選択波長帯域を前述の範囲に設定できるのである。液晶ポリマーに対するカイラル剤の割合が5重量%よりも小さい場合、形成される光学補償B層の選択反射波長帯域を低波長側に制御することが困難となる。また、前記割合が23重量%よりも大きい場合は、液晶ポリマーがコレステリック配向する温度範囲、すなわち前記液晶ポリマーが液晶相となる温度範囲が狭くなるため、後述する配向工程における温度制御を厳密に行うことが必要となり、製造が困難となる。
【0037】
前記コレステリック液晶ポリマー溶液の溶媒としては、特に制限されず、例えば、前記コレステリック液晶ポリマーを溶解できればよく、前記コレステリック液晶ポリマーの種類に応じて適宜決定できる。具体例としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類;フェノール、バラクロロフェノール等のフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;t−ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;あるいは二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ等があげられる。これらの溶媒は、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0038】
前記コレステリック液晶ポリマー溶液は、例えば、必要に応じて、さらに安定剤、可塑剤、金属類等の種々の添加剤を配合してもよい。
【0039】
また、前記コレステリック液晶ポリマー溶液は、例えば、前記コレステリック液晶ポリマーの配向性等が著しく低下しない範囲で、異なる他の樹脂を含有してもよい。前記他の樹脂としては、例えば、各種汎用樹脂、エンジニアリングプラスチック、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等があげられる。
【0040】
前記汎用樹脂としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ABS樹脂、およびAS樹脂等があげられる。前記エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアセテート(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA:ナイロン)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリブチレンテレフタレート(PBT)等があげられる。前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリイミド(PI)、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PCT)、ポリアリレート(PAR)、および液晶ポリマー(LCP)等があげられる。前記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂等があげられる。
【0041】
このように、前記他の樹脂等を前記ポリマー溶液に配合する場合、その配合量は、例えば、前記コレステリック液晶ポリマーに対して、例えば、0〜50重量%であり、好ましくは、0〜30重量%である。
【0042】
次に、前記コレステリック液晶ポリマー溶液を、配向層上に塗布して展開層を形成する。
【0043】
前記コレステリック液晶ポリマー溶液の塗工方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等があげられる。また、塗工に際しては、必要に応じて、ポリマー層の重畳方式も採用できる。
【0044】
前記配向層としては、前記コレステリック液晶ポリマーを配向できるものであれば特に限定されず、例えば、各種プラスチックフィルムやプラスチックシートの表面を、レーヨン等でラビング処理したものが使用できる。また、アルミ、銅、鉄等の金属製基板、セラミック製基板、ガラス製基板等の基材の表面に、前記のようなプラスチックフィルムやシートを配置したり、前記表面に無機化合物、例えばSiO2斜方蒸着膜を形成したもの等も使用できる。さらに、前記表面にマイクログルーブを有する層を形成したもの、またはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)により有機化合物(例えば、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライト、ステアリル酸メチル)を累積させて配向層を形成したものも使用できる。さらに、配向層として、特開平3−9325号公報(特許第2631015号)に記載の延伸高分子フィルムおよび、プラスチックフィルムやプラスチックシートに電場を付与したもの、磁場を付与したもの、または光照射により配向機能が生じる配向層を配置したものも用いることができる。
【0045】
前記配向層は、前記コレステリック液晶ポリマーを配向させる機能があれば特に限定されるものではなく、偏光層の保護層の表面をラビング処理して、保護層と配向層を兼ねることもできる。
【0046】
次いで、前記コレステリック液晶ポリマーの展開層に加熱処理を施すことによって、前記コレステリック液晶ポリマーを配向させる。加熱処理の温度条件は、例えば、前記コレステリック液晶ポリマーの種類、具体的には前記コレステリック液晶ポリマーが液晶性を示す温度に応じて適宜決定できるが、コレステリック液晶ポリマーのガラス転移点以上で等方点以下に設定することが必要である。前記コレステリック液晶ポリマーを用いる方法は、液晶分子の配向後の架橋処理が不要であるため、作業的にはより好ましい。
【0047】
また、前述のように、コレステリック液晶層は、光架橋性液晶モノマーを重合または架橋したポリマーであることが好ましい。このような構成であれば、後述するように、前記モノマーが液晶性を示すため、コレステリック構造をとって配向させることができ、かつ、さらにモノマー間を重合等させることによって前記配向を固定できる。そして、液晶モノマーを使用するが、前記固定によって、重合したポリマーは非液晶性となる。このため、形成されたコレステリック液晶層は、コレステリック液晶相のようなコレステリック構造をとるが、液晶分子から構成されていないため、例えば、液晶分子に特有の、温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への変化が起きることもない。したがって、そのコレステリック構造が温度変化に影響されない、極めて安定性に優れたコレステリック液晶層となり、例えば、特に光学補償用位相差フィルムとして有用であるといえる。
【0048】
なお、特に示さない限り、前記コレステリック液晶ポリマーを使用した場合と同様にして、コレステリック液晶層を形成することができる。
【0049】
前記液晶モノマーは、後述する化学式(10)で表されるモノマーである。このような液晶モノマーは、一般に、ネマチック性液晶モノマーであるが、本発明においては、例えば、前記カイラル剤によってねじりが付与され、最終的には、コレステリック構造をとるようになる。また、前記コレステリック液晶層においては、配向固定のために、前記モノマー間が重合または架橋される必要があるため、前記モノマーは、重合性モノマーおよび架橋性モノマーの少なくとも一方を含む。
【0050】
前記コレステリック液晶層は、さらに、重合剤および架橋剤の少なくとも一方を含むことが好ましく、例えば、紫外線硬化剤、光硬化剤、熱硬化剤等の物質が使用できる。
【0051】
前記コレステリック液晶層における液晶モノマーの割合は、75〜95重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは80〜90重量%の範囲である。また、前記液晶モノマーに対するカイラル剤の割合は、5〜23重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜20重量%の範囲である。また、前記液晶モノマーに対する架橋剤または重合剤の割合は、0.1〜10重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.5〜8重量%の範囲であり、特に好ましくは1〜5重量%の範囲である。
【0052】
本発明の光学補償B層は、例えば、前述のようなコレステリック液晶層のみから形成されてもよいが、さらに基板を含み、前記基板上に前記コレステリック液晶層が積層された積層体であってもよい。
【0053】
つぎに、本発明の光学補償B層の製造方法は、
液晶モノマーと、前記カイラル剤と、重合剤および架橋剤の少なくとも一方とを含み、かつ、前記液晶モノマーに対するカイラル剤の割合が5〜23重量%の範囲である塗工液を配向層上に展開して、展開層を形成する工程、
前記液晶モノマーがコレステリック構造をとった配向となるように、前記展開層に加熱処理を施す工程、および、
前記液晶モノマーの配向を固定して非液晶ポリマーのコレステリック液晶層を形成するために、前記展開層に重合処理および架橋処理の少なくとも一方の処理を施す工程を含む製造方法である。このような製造方法によれば、前述のような選択反射波長帯域である本発明の光学補償B層を製造できる。このように液晶モノマーとカイラル剤との配合割合をコントロールすることによって、前記選択反射波長帯域を100nm〜320nmの範囲に制御できる。
【0054】
本発明の光学補償B層の製造方法の一例について、以下に具体的に説明する。まず、前記液晶モノマーと、前記カイラル剤と、前記架橋剤および重合剤の少なくとも一方とを含む塗工液を準備する。
【0055】
前記液晶モノマーとしては、例えば、ネマチック性液晶モノマーが好ましく、具体的には、下記式(10)で表されるモノマーである。
【化5】
【0056】
前記液晶モノマーが液晶性を示す温度範囲は、その種類に応じて異なるが、例えば、40〜120℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは50〜100℃の範囲であり、特に好ましくは60〜90℃の範囲である。
【0057】
前記カイラル化剤としては、前述のように、例えば、前記液晶モノマーにねじりを付与してコレステリック構造となるように配向させるものであり、重合性カイラル化剤であり、前述のようなものが使用できる。
【0058】
具体的に、前記重合性カイラル化剤としては、下記一般式(38)で表されるカイラル化合物である。なお、このカイラル化合物は、ねじり力が 1×10-6nm-1・(wt%)-1以上である。
【化6】
【0059】
前記重合剤および架橋剤としては、特に制限されないが、例えば、以下のようなものが使用できる。前記重合剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド(BPO)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等が使用でき、前記架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、金属キレート架橋剤等が使用できる。これらはずれか一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0060】
前記カイラル剤の添加割合は、例えば、所望の選択反射波長帯域に応じて適宜決定されるが、前記液晶モノマーに対する添加割合は、5〜23重量%の範囲であり、好ましくは10〜20重量%の範囲である。前述のように、液晶モノマーとカイラル剤との添加割合をこのように制御することによって、形成される光学補償B層の選択波長帯域を前述の範囲に設定できるのである。液晶モノマーに対するカイラル剤の割合が5重量%よりも小さい場合、形成される光学補償B層の選択反射波長帯域を低波長側に制御することが困難となる。また、前記割合が23重量%よりも大きい場合は、液晶モノマーがコレステリック配向する温度範囲、すなわち前記液晶モノマーが液晶相となる温度範囲が狭くなるため、後述する配向工程における温度制御を厳密に行うことが必要となり、製造が困難となる。
【0061】
例えば、同じねじり力のカイラル剤を使用した場合、液晶モノマーに対するカイラル剤の添加割合が多い方が、形成される選択反射波長帯域は低波長側となる。また、例えば、液晶モノマーに対するカイラル剤の添加割合が同じ場合には、例えば、カイラル剤のねじり力が大きい方が、形成される光学補償B層の選択反射波長帯域は、低波長側となる。具体例として、形成される光学補償B層の前記選択反射波長帯域を200〜220nmの範囲に設定する場合には、例えば、ねじり力が5×10-4nm-1・(wt%)-1のカイラル剤を、液晶モノマーに対して11〜13重量%となるように配合すればよく、前記選択反射波長帯域を290〜310nmの範囲に設定する場合には、例えば、ねじれ力が5×10-4nm-1・(wt%)-1のカイラル剤を、液晶モノマーに対して7〜9重量%となるように配合すればよい。
【0062】
また、前記液晶モノマーに対する架橋剤または重合剤の添加割合は、例えば、0.1〜10重量%の範囲であり、好ましくは0.5〜8重量%の範囲、より好ましくは1〜5重量%の範囲である。前記液晶モノマーに対する架橋剤または重合剤の割合が、0.1重量%以上であれば、例えば、コレステリック液晶層の硬化が十分容易となり、また、10重量%以下であれば、例えば、前記液晶モノマーがコレステリック配向する温度範囲、すなわち前記液晶モノマーが液晶相となる温度が十分な範囲となるため、後述する配向工程における温度制御がより一層容易となる。
【0063】
また、前記塗工液には、例えば、必要に応じて各種添加物を適宜配合してもよい。前記添加物としては、例えば、老化防止剤、変性剤、界面活性剤、染料、顔料、変色防止剤、紫外線吸収剤等があげられる。これらの添加剤は、例えば、いずれか一種を添加してもよいし、二種類以上を併用してもよい。具体的に、前記老化防止剤としては、例えば、フェノール系化合物、アミン系化合物、有機硫黄系化合物、ホスフィン系化合物等、前記変性剤としては、例えば、グリコール類、シリコーン類やアルコール類等、従来公知のものがそれぞれ使用できる。また、前記界面活性剤は、例えば、光学フィルムの表面を平滑にするために添加され、例えば、シリコーン系、アクリル系、フッ素系等の界面活性剤が使用でき、特にシリコーン系が好ましい。
【0064】
このように液晶モノマーを使用した場合、調製した塗工液は、例えば、塗工・展開等の作業性に優れた粘性を示す。前記塗工液の粘度は、通常、前記液晶モノマーの濃度や温度等に応じて異なるが、前記塗工液におけるモノマー濃度が前記範囲5〜70重量%の場合、その粘度は、例えば、0.2〜20mPa・sの範囲であり、好ましくは0.5〜15mPa・sであり、特に好ましくは1〜10mPa・sである。具体的には、前記塗工液におけるモノマー濃度が、30重量%の場合、例えば、2〜5mPa・sの範囲であり、好ましくは3〜4mPa・sである。前記塗工液の粘度が0.2mPa・s以上であれば、例えば、塗工液を走行することによる液流れの発生がより一層防止でき、また、20mPa・s以下であれば、例えば、表面平滑性がより一層優れ、厚みムラを一層防止でき、塗工性にも優れる。なお、前記粘度としては、温度20〜30℃における範囲を示したが、この温度には限定されない。
【0065】
つぎに、前記塗工液を、配向層上に塗布して展開層を形成する。
【0066】
前記塗工液は、例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤバーコート法、ディップコート法、エクストルージョン法、カーテンコート法、スプレコート法等の従来公知の方法によって流動展開させればよく、この中でも、塗布効率の点からスピンコート、エクストルージョンコートが好ましい。
【0067】
続いて、前記展開層に加熱処理を施すことによって、液晶状態で前記液晶モノマーを配向させる。前記展開層には、前記液晶モノマーと共にカイラル剤が含まれているため、液晶相(液晶状態)となった液晶モノマーが、前記カイラル剤によってねじりを付与された状態で配向する。つまり、液晶モノマーがコレステリック構造(らせん構造)を示すのである。
【0068】
前記加熱処理の温度条件は、例えば、前記液晶モノマーの種類、具体的には前記液晶モノマーが液晶性を示す温度に応じて適宜決定できるが、通常、40〜120℃の範囲であり、好ましくは50〜100℃の範囲であり、より好ましくは60〜90℃の範囲である。前記温度が40℃以上であれば、通常、十分に液晶モノマーを配向することができ、前記温度が120℃以下であれば、例えば、耐熱性の面において前述のような各種配向層の選択性も広い。
【0069】
次に、前記液晶モノマーが配向した前記展開層に架橋処理または重合処理を施すことによって、前記液晶モノマーとカイラル剤とを重合または架橋させる。これによって、液晶モノマーは、コレステリック構造をとって配向した状態のまま、相互に重合・架橋、またはカイラル剤と重合・架橋し、前記配向状態が固定される。そして、形成されたポリマーは、前記配向状態の固定によって、非液晶ポリマーとなる。
【0070】
前記重合処理や架橋処理は、例えば、使用する重合剤や架橋剤の種類によって適宜決定できる。例えば、光重合剤や光架橋剤を使用した場合には、光照射を施し、紫外線重合剤や紫外線架橋剤を使用した場合には、紫外線照射を施せばよい。
【0071】
このような製造方法によって、前記配向層上に、コレステリック構造をとって配向した非液晶性ポリマーから形成された、選択反射波長帯域350nm以下の光学補償B層が得られる。この光学補償B層は、前述のようにその配向が固定されているため非液晶性である。したがって、温度変化によって、例えば、液晶相、ガラス相、結晶相に変化することがなく、温度による配向変化が生じない。このため、温度に影響を受けることがない、高性能の光学補償層として使用できる。
【0072】
なお、本発明の光学補償B層は、このような方法により製造されたものに制限されず、前述のようなコレステリック液晶ポリマーを使用してもよい。なお、液晶モノマーを使用すれば、前記選択反射波長帯域をより一層制御し易いだけでなく、前述のように塗工液の粘度等の設定も容易なため、薄層の形成が一層容易になり、取り扱い性にも非常に優れる。また、形成されたコレステリック液晶層も、その表面が平坦性に優れたものとなる。このため、より一層優れた品質であり、かつ、薄型化の光学補償B層が形成できるといえる。
【0073】
また、前記コレステリック液晶層は、例えば、前記配向層から剥離して、そのまま本発明の光学補償B層として使用してもよいし、前記配向層に積層された状態で、光学補償B層として使用することもできる。
【0074】
前記コレステリック液晶層と前記配向層との積層体として使用する際には、前記配向層は、透光性のプラスチックフィルムであることが好ましい。前記プラスチックフィルムとしては、例えば、TAC等のセルロース系、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4−メチルペンテン−1)等のポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリケトンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース系プラスチック、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリノルボルネン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、液晶ポリマー等から形成されるフィルムがあげられる。これらのフィルムは、光学的に等方性であっても、異方性であっても差し支えない。これらのプラスチックフィルムの中でも、耐溶剤性や耐熱性の観点から、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートから形成された各フィルムが好ましい。
【0075】
前述のような透光性配向基板は、例えば、単層でもよいが、例えば、強度、耐熱性、ポリマーや液晶モノマーの密着性を向上する点から、異種ポリマーを積層した積層体であってもよい。
【0076】
また、複屈折による位相差を生じないものでもよいし、例えば、偏光分離層で反射された光の偏光状態の解消を目的として、複屈折による位相差を生じるものであってもよい。このような偏光状態の解消は、光利用効率の向上や、光源光との同一化によって、視覚による色相変化の抑制に友好である。前記複屈折による位相差を生じる透明基板としては、例えば、各種ポリマー製の延伸フィルム等が使用でき、厚み方向の屈折率を制御したものであってもよい。前記制御は、例えば、ポリマーフィルムを熱収縮フィルムと接着して、加熱延伸すること等によって行うことができる。
【0077】
前記プラスチックフィルムの厚みは、通常、5μm〜500μm、好ましくは10〜200μmであり、好ましくは15〜150μmである。前記厚みが5μm以上であれば、基板として十分な強度を有するため、例えば、製造時に破断する等の問題の発生を防止できる。
【0078】
また、前記コレステリック液晶層を前記配向層(以下、「第1の基板」という)から他の基板(以下、「第2の基板」という)に転写し、前記第2の基板に前記コレステリック液晶層を積層した状態で、例えば、光学補償B層として使用することもできる。具体的には、前記第2の基板の少なくとも一方の表面に接着剤層または粘着剤層(以下、「接着剤層等」という)を積層し、この接着剤層等を、前記第1の基板上の光学フィルムと接着してから、前記第1の基板を前記コレステリック液晶層から剥離すればよい。
【0079】
この場合、前記塗工液を展開する配向層としては、例えば、その透光性や厚み等には制限されず、耐熱性や強度の点から選択することが好ましい。
【0080】
一方、前記第2の基板は、例えば、耐熱性等については制限されない。例えば、透光性基板や、透光性保護フィルム等が好ましく、具体的には、透明なガラスやプラスチックフィルム等があげられる。前記プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリオレフィン、トリアセチルセルロース、ノルボルネン系樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等のフィルムがあげられる。この他にも、例えば、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムがあげられる。このポリマー材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有す熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチレンマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物があげられる。前記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であってもよい。この他にも、コーティング偏光子を第2の基板として使用することもできる。
【0081】
また、前記第2の基板は、例えば、光学的に等方性であることが好ましいが、用途に応じて、光学的異方性であってもよい。このような光学的異方性を有する第2の基板としては、例えば、前記プラスチックフィルムに延伸処理等を施した位相差フィルムや、光散乱性を有する光散乱フィルム、回折能を有する回折フィルム、偏光フィルム等でもよい。
【0082】
なお、前記コレステリック液晶層と前記各種透光性基板等との積層体とする場合、前記コレステリック液晶層は、前記透光性基板の両面に積層してもよいし、その積層数も、一層でもよいし、二層以上であってもよい。
【0083】
このような製造方法によって、前記配向層上にコレステリック液晶層が形成され、光学補償B層が得られる。光学補償B層の厚さは、例えば1層あたり1〜50μm、好ましくは2〜30μmである。
【0084】
偏光層としては、特に制限されず、例えば、従来公知の方法により、各種フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて染色し、架橋、延伸、乾燥することによって調製したもの等が使用できる。この中でも、自然光を入射させると直線偏光を透過するフィルムが好ましく、光透過率や偏光度に優れるものが好ましい。前記二色性物質を吸着させる各種フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム、セルロース系フィルム等の親水性高分子フィルム等があげられ、これらの他にも、例えば、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン配向フィルム等も使用できる。これらの中でも、PVA系フィルムが好ましい。
【0085】
偏光層の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば1〜80μmであり、2〜40μmが好ましい。なお、偏光層(偏光フィルム)の吸収軸は、偏光層(偏光フィルム)の延伸方向であり、偏光層(偏光フィルム)の短軸に垂直であるのが好ましい。
【0086】
前記偏光層(偏光フィルム)は、その片面又は両面に、適当な接着層を介して保護層となる透明保護フィルムを接着してもよい。
【0087】
前記保護層としては、特に制限されず、従来公知の透明フィルムを使用できるが、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましい。このような透明保護層の材質の具体例としては、トリアセチルセルロール等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等があげられる。また、前記アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等もあげられる。この中でも、偏光特性や耐久性の点から、表面をアルカリ等でケン化処理したTACフィルムが好ましい。
【0088】
また、保護フィルムとしては、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムがあげられる。このポリマー材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有す熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチレンマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物があげられる。なお、前記ポリマーフィルムは、例えば、前記樹脂組成物の押出成形物であってもよい。
【0089】
また、前記保護層は、例えば、色付きが無いことが好ましい。具体的には、下記式で表されるフィルム厚み方向の位相差値(Rth)が、−90nm〜+75nmの範囲であることが好ましく、より好ましくは−80nm〜+60nmであり、特に好ましくは−70nm〜+45nmの範囲である。前記位相差値が−90nm〜+75nmの範囲であれば、十分に保護層に起因する偏光板の着色(光学的な着色)を解消できる。なお、下記式において、nx,ny,nzは、それぞれX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは前記保護層の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記前記保護層の面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。dは、前記保護層の膜厚を示す。
Rth={[(nx+ny)/2]-nz}・d
また、前記透明保護層は、さらに光学補償機能を有するものでもよい。このように光学補償機能を有する透明保護層としては、例えば、液晶セルにおける位相差に基づく視認角の変化が原因である、着色等の防止や、良視認の視野角の拡大等を目的とした公知のものが使用できる。具体的には、例えば、前述した透明樹脂を一軸延伸または二軸延伸した各種延伸フィルムや、液晶ポリマー等の配向フィルム、透明基材上に液晶ポリマー等の配向層を配置した積層体等があげられる。これらの中でも、良視認の広い視野角を達成できることから、前記液晶ポリマーの配向フィルムが好ましく、特に、ディスコティック系やネマチック系の液晶ポリマーの傾斜配向層から構成される光学補償層を、前述のトリアセチルセルロースフィルム等で支持した光学補償位相差板が好ましい。このような光学補償位相差板としては、例えば、富士写真フィルム株式会社製「WVフィルム」等の市販品があげられる。なお、前記光学補償位相差板は、前記位相差フィルムやトリアセチルセルロースフィルム等のフィルム支持体を2層以上積層させることによって、位相差等の光学特性を制御したもの等でもよい。
【0090】
前記透明保護層の厚みは、特に制限されず、例えば、位相差や保護強度等に応じて適宜決定できるが、通常、500μm以下であり、好ましくは5〜300μm、より好ましくは5〜150μmの範囲である
前記透明保護層は、例えば、偏光フィルムに前記各種透明樹脂を塗布する方法、前記偏光フィルムに前記透明樹脂製フィルムや前記光学補償位相差板等を積層する方法等の従来公知の方法によって適宜形成でき、また市販品を使用することもできる。
【0091】
また、前記透明保護層は、さらに、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキングの防止や拡散、アンチグレア等を目的とした処理等が施されたものでもよい。前記ハードコート処理とは、偏光板表面の傷付き防止等を目的とし、例えば、前記透明保護層の表面に、硬化型樹脂から構成される、硬度や滑り性に優れた硬化被膜を形成する処理である。前記硬化型樹脂としては、例えば、シリコーン系、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系等の紫外線硬化型樹脂等が使用でき、前記処理は、従来公知の方法によって行うことができる。スティッキングの防止は、隣接する層との密着防止を目的とする。前記反射防止処理とは、偏光板表面での外光の反射防止を目的とし、従来公知の反射防止層等の形成により行うことができる。
【0092】
前記アンチグレア処理とは、偏光板表面において外光が反射することによる、偏光板透過光の視認妨害を防止すること等を目的とし、例えば、従来公知の方法によって、前記透明保護層の表面に、微細な凹凸構造を形成することによって行うことができる。このような凹凸構造の形成方法としては、例えば、サンドブラスト法やエンボス加工等による粗面化方式や、前述のような透明樹脂に透明微粒子を配合して前記透明保護層を形成する方式等があげられる。
【0093】
前記透明微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化アンチモン等があげられ、この他にも導電性を有する無機系微粒子や、架橋または未架橋のポリマー粒状物等から構成される有機系微粒子等を使用することもできる。前記透明微粒子の平均粒径は、特に制限されないが、例えば、0.5〜20μmの範囲である。また、前記透明微粒子の配合割合は、特に制限されないが、一般に、前述のような透明樹脂100質量部あたり2〜70質量部の範囲が好ましく、より好ましくは5〜50質量部の範囲である。
【0094】
前記透明微粒子を配合したアンチグレア層は、例えば、透明保護層そのものとして使用することもでき、また、透明保護層表面に塗工層等として形成されてもよい。さらに、前記アンチグレア層は、偏光板透過光を拡散して視角を拡大するための拡散層(視覚補償機能等)を兼ねるものであってもよい。
【0095】
なお、前記反射防止層、スティッキング防止層、拡散層、アンチグレア層等は、前記透明保護層とは別個に、例えば、これらの層を設けたシート等から構成される光学層として、偏光板に積層してもよい。
【0096】
なお、偏光層の両面に透明保護フィルムを設ける場合、片面ごとに異なるポリマー等を含む透明保護フィルムを用いることもできる。また、光学補償A層または光学補償B層を偏光板の片面の保護フィルムとして用いることもできる。このような構成にすると、層の厚みを減らすことができるので好ましい。
【0097】
偏光層と保護層である透明保護フィルムとの積層方法は、特に制限されず、従来公知の方法によって行うことができる。一般には、その種類は、前記各構成要素の材質等によって適宜決定できる。前記接着剤としては、例えば、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリエーテル系等のポリマー製接着剤や、ゴム系接着剤等があげられる。前述のような粘着剤、接着剤は、例えば、湿度や熱の影響によっても剥がれ難く、光透過率や偏光度にも優れる。
【0098】
具体的には、前記偏光子がPVA系フィルムの場合、例えば、接着処理の安定性等の点から、PVA系接着剤が好ましい。これらの接着剤や粘着剤は、例えば、そのまま偏光子や透明保護層の表面に塗布してもよいし、前記接着剤や粘着剤から構成されたテープやシートのような層を前記表面に配置してもよい。また、例えば、水溶液として調製した場合、必要に応じて、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。なお、前記接着剤を塗布する場合は、例えば、前記接着剤水溶液に、さらに、他の添加剤や、酸等の触媒を配合してもよい。
【0099】
このような接着層の厚みは、特に制限されないが、例えば、1nm〜500nmであり、好ましくは10nm〜300nmであり、より好ましくは20nm〜100nmである。
【0100】
以上のような偏光層と、光学補償A層と、光学補償B層とを積層することによって、本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板が製造できる。偏光層と光学補償A層を積層させるとき、前記偏光層の吸収軸方向と前記光学補償A層の遅相軸方向とが成す角度が、85°以上95°以下になるように配置するのが好ましい。偏光層の吸収軸は、偏光層の短軸に垂直であり、光学補償A層の遅相軸は、テンター横軸延伸で製造される場合、延伸高分子フィルムの短軸と平行であるので、偏光層と光学補償A層の両方を長尺で積層することが可能になり、上記関係を容易に得ることができるからである。このように長尺で積層させることが可能になれば、いわゆる「Roll To Roll」の製造が可能になり、製造効率を向上させることができる。
【0101】
偏光層と、光学補償A層と、光学補償B層との積層方法は、特に限定されず、従来公知の方法によって行うことができる。例えば、偏光層、光学補償A層および光学補償B層を別個に調製し、それぞれを積層する方法が挙げられる。その積層方法には特に制限がなく、前述と同様の粘着剤や接着剤を使用することができる。また、光学補償B層が別途基材上に形成されている場合、前記基材も含んで積層されてもよいし、積層後に前記基材を除去して光学補償B層を転写してもよい。さらに、偏光層と、光学補償A層と、光学補償B層との積層方法は、(1)光学補償A層と偏光層との積層物(フィルム)を予め製造し、その上にさらに光学補償B層を積層する方法、(2)光学補償B層と偏光層(フィルム)との積層物を予め製造し、その上にさらに光学補償A層を積層する方法、(3)光学補償A層と光学補償B層とを予め積層させ光学補償層を形成し、その光学補償層に、さらに偏光層(フィルム)を積層させる方法などが挙げられる。
【0102】
前記(1)に示す偏光層(フィルム)と光学補償A層との積層物の製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法によって行うことができる。一般には、前述と同様の粘着剤や接着剤が使用でき、その種類は、前記各構成要素の材質等によって適宜決定できる。例えば、偏光層と、光学補償A層をそれぞれ用意し、偏光層と光学補償A層を粘着剤または接着剤を用いて積層させることができる。
【0103】
偏光層と光学補償A層とを有する積層物の上に、さらに光学補償B層を積層させるには、(a)光学補償A層を例えばラビング処理し、配向層としての機能を持たせ、その光学補償A層上に光学補償B層を形成する方法、(b)光学補償A層の上に配向層を形成し、その配向層上に光学補償B層を形成する方法、(c)別途用意した配向基材上に光学補償B層を形成し、その光学補償B層を接着剤や粘着剤を介して光学補償A層上へ転写させる方法などを用いることができる。(c)の方法を用いる場合、光学補償B層を転写した後、前記配向基材は除去しても、除去しなくともよい。
【0104】
次に、本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板の具体的な形態を図2〜7に例示する。
【0105】
図2に示す本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板は、以下のような構成である。偏光層3の両面に、保護層1が接着層2を介して積層されている。その保護層1の片面上に、光学補償A層4が接着層2を介して積層されている。さらにその光学補償A層4の上に、支持基材7の上に形成された光学補償B層5が接着層2を介して積層されている。そこからさらに前記支持基材7を除去した本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板の例を図3に示す。
【0106】
図4に示す本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板は、以下のような構成である。偏光層3の片面に保護層1が接着層2を介して積層されており、別の片面に光学補償A層4が接着層2を介して積層されている。さらにその光学補償A層4の上に支持基材7の上に形成された光学補償B層5が接着層2を介して積層されている。そこからさらに前記支持基材7を除去した本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板の例を図5に示す。
【0107】
図6に示す本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板は、以下のような構成である。偏光層3の両面に、保護層1が接着層2を介して積層されている。その保護層1の片面上に、光学補償A層4が接着層2を介して積層されている。さらにその光学補償A層4の上に配向層6を形成し、その配向層6上に光学補償B層5が形成されている。
【0108】
図7に示す本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板は、以下のような構成である。偏光層3の片面に保護層1が接着層2を介して積層されており、別の片面に光学補償A層4が接着層2を介して積層されている。さらにその光学補償A層4の上に配向層6を形成し、その配向層6の上に光学補償B層5が形成されている。
【0109】
次に、前記(2)に示す、光学補償B層と偏光層(フィルム)との積層物に、さらに光学補償A層を積層する方法について説明する。光学補償B層と偏光層との積層物の製造方法は、特に限定されず、前述のような従来公知の方法によって行うことができる。例えば、(a)偏光層を例えばラビング処理し、配向層としての機能を持たせ、その偏光層上に光学補償B層を形成する方法、(b)偏光層の上に配向層を形成し、その配向層上に光学補償B層を形成する方法、(c)別途用意した配向基材上に光学補償B層を形成し、その光学補償B層を接着剤や粘着剤を介して偏光層上へ転写させる方法などを用いることができる。(c)の方法を用いる場合、光学補償B層を転写した後、配向基材は除去しても、除去しなくともよい。
【0110】
偏光層と光学補償B層とを有する積層物の上に、さらに光学補償A層を積層させる方法は、特に限定されず、前述のような従来公知の方法によって行うことができる。
【0111】
以下に、本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板の具体的な形態を図8〜9に例示する。
【0112】
図8に示す本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板は、以下のような構成である。偏光層3の両面に、保護層1が接着層2を介して積層されている。その保護層1の片面上に、支持基材(図示せず)上に形成された光学補償B層5が接着層2を介して積層され、その基材は除去される。さらにその光学補償B層5上に光学補償A層4が接着層2を介して積層されている。
【0113】
図9に示す本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板は、以下のような構成である。偏光層3の両面に、保護層1が接着層2を介して積層されている。その保護層1の片面上に配向層6を形成し、その上に光学補償B層5を形成する。さらにその光学補償B層5の上に光学補償A層4が接着層2を介して積層されている。
【0114】
次いで、光学補償A層と光学補償B層を予め積層させ光学補償層を形成し、その光学補償層に、さらに偏光層(フィルム)を積層させる方法について説明する。
【0115】
光学補償A層と光学補償B層を予め積層させる方法としては、(a)光学補償A層を例えばラビング処理し、配向層としての機能を持たせ、その光学補償A層上に光学補償B層を形成する方法、(b)光学補償A層の上に配向層を形成し、その配向層上に光学補償B層を形成する方法、(c)別途用意した配向基材上に光学補償B層を形成し、その光学補償B層を接着剤や粘着剤を介して光学補償A層上へ転写させる方法などを用いることができる。(c)の方法を用いる場合、光学補償B層を転写した後、配向基材は除去しても、除去しなくともよい。
【0116】
偏光層(フィルム)の上に、光学補償A層と光学補償B層とを有する積層物を積層させる方法は、特に限定されず、前述のような従来公知の方法によって行うことができる。偏光層の上に、光学補償A層と光学補償B層とを有する積層物を積層させる際、光学補償A層と光学補償B層のいずれが、偏光層と向かいあっていてもよい。
【0117】
以下に、本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板の具体的な形態を図10〜12に例示する。
【0118】
図10に示す本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板は、以下のような構成である。光学補償A層4に、支持基材(図示せず)上に形成された光学補償B層5が接着層2を介して積層され、その基材は除去される。偏光層3の片面に、その積層物の光学補償B層が偏光層3と向かいあわせになるようにして積層物が、接着層2を介して、積層されている。偏光層3の別の面に保護層1が接着層2を介して、積層されている。
【0119】
図11に示す本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板は、以下のような構成である。光学補償A層4上に配向層6を形成し、その上に光学補償B層5を形成し、積層物を製造する。別途、偏光層3の両面に保護層1が接着層2を介して積層されている。その保護層1の片面上に、光学補償B層5が保護層1と向かいあわせになるようにして、前記積層物が、接着層2を介して、積層されている。偏光層3の片面に、前記積層物が、別の面に保護層1がそれぞれ接着層2を介して積層されている例を図12に示す。前記積層物は、光学補償B層5が、偏光層3と向かいあわせになるようにして、積層されている。
【0120】
本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板は、実用に際して、前記本発明の偏光板の他に、さらに他の光学層を含んでもよい。前記光学層としては、例えば、以下に示すような偏光板、反射板、半透過反射板、輝度向上フィルム等、液晶表示装置等の形成に使用される、従来公知の各種光学層があげられる。これらの光学層は、一種類でもよいし、二種類以上を併用してもよく、また、一層でもよいし、二層以上を積層してもよい。このような光学層をさらに含む光学補償機能付き偏光板は、例えば、光学補償機能を有する一体型偏光板として使用することが好ましく、例えば、液晶セル表面に配置する等、各種画像表示装置への使用に適している。
【0121】
以下に、このような一体型偏光板について説明する。
【0122】
まず、反射型偏光板または半透過反射型偏光板の一例について説明する。前記反射型偏光板は、本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板にさらに反射板が、前記半透過反射型偏光板は、本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板にさらに半透過反射板が、それぞれ積層されている。
【0123】
前記反射型偏光板は、通常、液晶セルの裏側に配置され、視認側(表示側)からの入射光を反射させて表示するタイプの液晶表示装置(反射型液晶表示装置)等に使用できる。このような反射型偏光板は、例えば、バックライト等の光源の内蔵を省略できるため、液晶表示装置の薄型化を可能にする等の利点を有する。
【0124】
前記反射型偏光板は、例えば、前記弾性率を示す偏光板の片面に、金属等から構成される反射板を形成する方法等、従来公知の方法によって作製できる。具体的には、例えば、前記偏光板における透明保護層の片面(露出面)を、必要に応じてマット処理し、前記面に、アルミニウム等の反射性金属からなる金属箔や蒸着膜を反射板として形成した反射型偏光板等があげられる。
【0125】
また、前述のように各種透明樹脂に微粒子を含有させて表面を微細凹凸構造とした透明保護層の上に、その微細凹凸構造を反映させた反射板を形成した、反射型偏光板等もあげられる。その表面が微細凹凸構造である反射板は、例えば、入射光を乱反射により拡散させ、指向性やギラギラした見栄えを防止し、明暗のムラを抑制できるという利点を有する。このような反射板は、例えば、前記透明保護層の凹凸表面に、真空蒸着方式、イオンプレーティング方式、スパッタリング方式等の蒸着方式やメッキ方式等、従来公知の方法により、直接、前記金属箔や金属蒸着膜として形成することができる。
【0126】
また、前述のように偏光板の透明保護層に前記反射板を直接形成する方式に代えて、反射板として、前記透明保護フィルムのような適当なフィルムに反射層を設けた反射シート等を使用してもよい。前記反射板における前記反射層は、通常、金属から構成されるため、例えば、酸化による反射率の低下防止、ひいては初期反射率の長期持続や、透明保護層の別途形成を回避する点等から、その使用形態は、前記反射層の反射面が前記フィルムや偏光板等で被覆された状態であることが好ましい。
【0127】
一方、前記半透過型偏光板は、前記反射型偏光板において、反射板に代えて、半透過型の反射板を有するものである。前記半透過型反射板としては、例えば、反射層で光を反射し、かつ、光を透過するハーフミラー等があげられる。
【0128】
前記半透過型偏光板は、通常、液晶セルの裏側に設けられ、液晶表示装置等を比較的明るい雰囲気で使用する場合には、視認側(表示側)からの入射光を反射して画像を表示し、比較的暗い雰囲気においては、半透過型偏光板のバックサイドに内蔵されているバックライト等の内蔵光源を使用して画像を表示するタイプの液晶表示装置等に使用できる。すなわち、前記半透過型偏光板は、明るい雰囲気下では、バックライト等の光源使用のエネルギーを節約でき、一方、比較的暗い雰囲気下においても、前記内蔵光源を用いて使用できるタイプの液晶表示装置等の形成に有用である。
【0129】
つぎに、本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板に、さらに輝度向上フィルムが積層された偏光板の一例を説明する。
【0130】
前記輝度向上フィルムとしては、特に限定されず、例えば、誘電体の多層薄膜や、屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体のような、所定偏光軸の直線偏光を透過して、他の光は反射する特性を示すもの等が使用できる。このような輝度向上フィルムとしては、例えば、3M社製の商品名「D-BEF」等があげられる。また、コレステリック液晶層、特にコレステリック液晶ポリマーの配向フィルムや、その配向液晶層をフィルム基材上に支持したもの等が使用できる。これらは、左右一方の円偏光を反射して、他の光は透過する特性を示すものであり、例えば、日東電工社製の商品名「PCF350」、Merck社製の商品名「Transmax」等があげられる。
【0131】
本発明の各種偏光板は、例えば、前述のような複屈折層を含む積層偏光板と、さらに光学層とを積層して、2層以上の光学層を含む光学部材であってもよい。
【0132】
このように2層以上の光学層を積層した光学部材は、例えば、液晶表示装置等の製造過程において、順次別個に積層する方式によっても形成できるが、予め積層した光学部材として使用すれば、例えば、品質の安定性や組立作業性等に優れ、液晶表示装置等の製造効率を向上できるという利点がある。なお、積層には、前述と同様に、粘着層等の各種接着手段を用いることができる。
【0133】
本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板および前述のような各種偏光板は、例えば、液晶セル等の他の部材への積層が容易になることから、さらに粘着剤層や接着剤層を有していることが好ましく、これらは、前記偏光板の片面または両面に配置することができる。前記粘着層の材料としては、特に制限されず、アクリル系ポリマー等の従来公知の材料が使用でき、特に、吸湿による発泡や剥離の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる液晶表示装置の形成性等の点より、例えば、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層となることが好ましい。また、微粒子を含有して光拡散性を示す粘着層等でもよい。前記偏光板表面への前記粘着剤層の形成は、例えば、各種粘着材料の溶液または溶融液を、流延や塗工等の展開方式により、前記偏光板の所定の面に直接添加して層を形成する方式や、同様にして後述するセパレータ上に粘着剤層を形成させて、それを前記偏光板の所定面に移着する方式等によって行うことができる。なお、このような層は、偏光板のいずれの表面に形成してもよく、例えば、偏光板における前記光学補償層の露出面に形成してもよい。
【0134】
このように偏光板に設けた粘着剤層等の表面が露出する場合は、前記粘着層を実用に供するまでの間、汚染防止等を目的として、セパレータによって前記表面をカバーすることが好ましい。このセパレータは、前記透明保護フィルム等のような適当なフィルムに、必要に応じて、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系、硫化モリブデン等の剥離剤による剥離コートを設ける方法等によって形成できる。
【0135】
前記粘着剤層等は、例えば、単層体でもよいし、積層体でもよい。前記積層体としては、例えば、異なる組成や異なる種類の単層を組合せた積層体を使用することもできる。また、前記偏光板の両面に配置する場合は、例えば、それぞれ同じ粘着剤層でもよいし、異なる組成や異なる種類の粘着剤層であってもよい。
【0136】
前記粘着剤層の厚みは、例えば、偏光板の構成等に応じて適宜に決定でき、一般には、1〜500μmである。
【0137】
前記粘着剤層を形成する粘着剤としては、例えば、光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性や接着性の粘着特性を示すものが好ましい。具体的な例としては、アクリル系ポリマーやシリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、合成ゴム等のポリマーを適宜ベースポリマーとして調製された粘着剤等があげられる。
【0138】
前記粘着剤層の粘着特性の制御は、例えば、前記粘着剤層を形成するベースポリマーの組成や分子量、架橋方式、架橋性官能基の含有割合、架橋剤の配合割合等によって、その架橋度や分子量を調節するというような、従来公知の方法によって適宜行うことができる。
【0139】
以上のような本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板、各種光学部材(光学層をさらに積層した各種偏光板)を形成する偏光フィルム、透明保護層、光学層、粘着剤層等の各層は、例えば、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で適宜処理することによって、紫外線吸収能を持たせたものでもよい。
【0140】
本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板は、前述のように、VAモードの液晶表示装置等の各種装置の形成に使用することが好ましく、例えば、偏光板を液晶セルの片側または両側に配置して液晶パネルとし、反射型や半透過型、あるいは透過・反射両用型等の液晶表示装置に用いることができる。
【0141】
液晶表示装置を形成する前記液晶セルの種類は、VA(垂直配向;Vertical Aligned)セルであるので、本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付記偏光板は、VAモードの液晶表示装置用の視角補償フィルムとして非常に有用である。
【0142】
また、前記液晶セルは、通常、対向する液晶セル基板の間隙に液晶が注入された構造であって、前記液晶セル基板としては、特に制限されず、例えば、ガラス基板やプラスチック基板が使用できる。なお、前記プラスチック基板の材質としては、特に制限されず、従来公知の材料があげられる。
【0143】
また、液晶セルの両面に偏光板や光学部材を設ける場合、それらは同じ種類のものでもよいし、異なっていてもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば、プリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板やバックライト等の適当な部品を、適当な位置に1層または2層以上配置することができる。
【0144】
さらに、本発明のVAモードの液晶表示装置は、偏光板を含み、前記偏光板として、本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板を使用する以外は、特に制限されない。また、さらに光源を有する場合には、特に制限されないが、例えば、光のエネルギーが有効に使用できることから、例えば、偏光を出射する平面光源であることが好ましい。
【0145】
本発明のVAモードの液晶表示装置は、視認側の光学フィルム(偏光板)の上に、例えば、さらに拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護層や保護板を配置したり、または液晶パネルにおける液晶セルと偏光板との間に補償用位相差板等を適宜配置することもできる。
【0146】
なお、本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板は、前述のような液晶表示装置には限定されず、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PD)、FED(電界放出ディスプレイ:Field Emission Display)等の自発光型画像表示装置にも使用できる。
【0147】
以下に、本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板を備えるエレクトロルミネッセンス(EL)表示装置について説明する。本発明のEL表示装置は、本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板を有する表示装置であり、このEL装置は、有機ELおよび無機ELのいずれでもよい。
【0148】
近年、EL表示装置においても、黒状態における電極からの反射防止として、例えば、偏光子や偏光板等の光学フィルムをλ/4板とともに使用することが提案されている。本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板は、特に、EL層から、直線偏光、円偏光もしくは楕円偏光のいずれかの偏光が発光されている場合、あるいは、正面方向に自然光を発光していても、斜め方向の出射光が部分偏光している場合等に、非常に有用である。
【0149】
まずここで、一般的な有機EL表示装置について説明する。前記有機EL表示装置は、一般に、透明基板上に、透明電極、有機発光層および金属電極がこの順序で積層された発光体(有機EL発光体)を有している。前記有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えば、トリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層とアントラセン等の蛍光性有機固体からなる発光層との積層体や、このような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層との積層体や、また、前記正孔注入層と発光層と電子注入層との積層体等、種々の組み合わせがあげられる。
【0150】
そして、このような有機EL表示装置は、前記陽極と陰極とに電圧を印加することによって、前記有機発光層に正孔と電子とが注入され、前記正孔と電子とが再結合することによって生じるエネルギーが、蛍光物質を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。前記正孔と電子との再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、電流と発光強度とは、印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
【0151】
前記有機EL表示装置においては、前記有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明であることが必要なため、通常、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明導電体で形成された透明電極が陽極として使用される。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に、仕事関数の小さな物質を用いることが重要であり、通常、Mg−Ag、Al−Li等の金属電極が使用される。
【0152】
このような構成の有機EL表示装置において、前記有機発光層は、例えば、厚み10nm程度の極めて薄い膜で形成されることが好ましい。これは、前記有機発光層においても、透明電極と同様に、光をほぼ完全に透過させるためである。その結果、非発光時に、前記透明基板の表面から入射して、前記透明電極と有機発光層とを透過して前記金属電極で反射した光が、再び前記透明基板の表面側へ出る。このため、外部から視認した際に、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見えるのである。
【0153】
本発明の有機EL表示装置は、例えば、前記有機発光層の表面側に透明電極を備え、前記有機発光層の裏面側に金属電極を備えた前記有機EL発光体を含む有機EL表示装置において、前記透明電極の表面に、本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板が配置されることが好ましく、さらにλ/4板を偏光板とEL素子との間に配置することが好ましい。このように、本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板を配置することによって、外界の反射を抑え、視認性向上が可能であるという効果を示す有機EL表示装置となる。また、前記透明電極と光学フィルムとの間に、さらに位相差板が配置されることが好ましい。
【0154】
前記位相差板および光学補償機能付き偏光板は、例えば、外部から入射して前記金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって前記金属電極の鏡面を外部から視認させないという効果がある。特に、位相差板として1/4波長板を使用し、かつ、前記偏光板と前記位相差板との偏光方向のなす角をπ/4に調整すれば、前記金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。すなわち、この有機EL表示装置に入射する外部光は、前記偏光板によって直線偏光成分のみが透過する。この直線偏光は、前記位相差板によって、一般に楕円偏光となるが、特に前記位相差板が1/4波長板であり、しかも前記角がπ/4の場合には、円偏光となる。
【0155】
この円偏光は、例えば、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び、有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、前記位相差板で再び直線偏光となる。そして、この直線偏光は、前記偏光板の偏光方向と直交しているため、前記偏光板を透過できず、その結果、前述のように、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができるのである。
【0156】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0157】
偏光板としては、全体の厚さ190μmのNPF−1224DU(日東電工製)を用いた。
【0158】
(実施例1)
厚さ100μmのノルボルネンフィルムを177℃でテンター横延伸し、厚さ80μmの光学補償A層を得た。
【0159】
前記偏光板(商品名 NPF−1224DU(日東電工製))上に、1wt%のポリビニルアルコールの水溶液を塗布し、90℃で5分間乾燥して、膜厚0.01μmの皮膜を形成した。次いで、皮膜にラビング処理を施し、配向層を形成した。前記化学式(10)に示すネマチック液晶モノマー92重量部、前記化学式(38)に示すねじり力5.5×10-4nm-1・(wt%)-1の重合性カイラル剤8重量部、UV重合開始剤5重量部およびメチルエチルケトン300重量部を混合し、選択反射波長が290〜310nmになるよう設計した混合物を調製した。この混合物を前記配向層上に塗布し、展開層を形成した。
【0160】
【化7】
【0161】
前記展開層を有する偏光板を90℃で1分間熱処理し、さらにUV架橋を行った。その結果、厚さ2.5μmの光学補償B層を偏光板の面上に形成し、全体の厚さ193μmの積層物を長尺で貼り合せた。
【0162】
このようにして得られた積層物と、前記光学補償A層とを、厚さ25μmのアクリル系粘着剤を介して長尺で貼り合わせ、全体の厚さ298μmの光学補償機能付き偏光板(No.1)を長尺で得た(図13参照)。このようにして製造された光学補償機能付き偏光板の、偏光層の吸収軸と光学補償A層の遅相軸の成す角度は、90°であった。
【0163】
(実施例2)
厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルムをにテンター横延伸し、厚さ50μmの光学補償A層を得た。
【0164】
前記化学式(10)に示すネマチック液晶モノマー92重量部、前記化学式(38)に示すねじり力5.5×10-4nm-1・(wt%)-1の重合性カイラル剤8重量部、UV重合開始剤5重量部およびメチルエチルケトン300重量部を混合し、選択反射波長が290〜310nmになるよう設計した実施例1と同じ混合物を調製した。この混合物を二軸延伸PETフィルム上に塗布し、展開層を形成した。
【0165】
得られた展開層を有する二軸延伸PETフィルムを90℃で1分間熱処理し、さらにUV架橋を行った。その結果、厚さ2.0μmの光学補償B層を二軸延伸PETフィルムの面上に形成した。
【0166】
次いで、前記光学補償A層と前記二軸延伸PETフィルムとを、光学補償B層が、光学補償A層と向かい合うように、厚さ25μmのアクリル系粘着剤層を介して貼り合わせた。その後二軸延伸PETフィルムを剥離し、光学補償A層と光学補償B層を有する光学補償層を得た。
【0167】
厚さ80μmのポリビニルアルコールフィルムを、ヨウ素濃度0.05重量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4重量%のホウ酸水溶液中に60秒浸漬しながら元の長さの5倍に延伸した後、50℃で4分間乾燥させて厚さ20μmの偏光層を得た。
【0168】
最後に前記偏光層と、その片面に厚さ80μmのトリアセチルセルロース、もう片面に光学補償層を、光学補償A層が偏光層側になるように、厚さ5μmのポリビニルアルコール系接着剤を介して貼り合わせ、全体の厚さ187μmの光学補償機能付き偏光板(No.2)を長尺で得た(図14参照)。
【0169】
(実施例3)
偏光層と実施例2と同様の複合光学補償層とを、光学補償B層が偏光層側になるように厚さ25μmのアクリル系粘着剤を介して貼り合わせた以外は、実施例2と同様にして、全体の厚さ207μmの光学補償機能付き偏光板(No.3)を長尺で得た(図15参照)。
【0170】
実施例1〜3で得られた光学補償機能付き偏光板の光学補償A層および光学補償A層ならびに光学補償B層および光学補償B層に関して、平行ニコル回転法を原理とする王子計測機器製、商品名KOBRA−21ADHを用い、法線方向の位相差値Re及び厚み方向の位相差値Rthを求めた。その結果を表1に示す。
【0171】
【表1】
【0172】
表1より、得られた光学補償B層は、光学補償A層よりも非常に薄いことが分かる。従って、延伸高分子フィルムである光学補償A層を2枚以上含む積層偏光板よりも薄い、光学補償A層と光学補償B層を含む、光学補償機能付き偏光板を提供することができた。
【0173】
(実施例4〜6)
実施例1〜3で得た光学補償機能付き偏光板(No.1〜3)を、各々5cm×5cmの大きさに切り出し、これを前記偏光板とそれぞれ組み合せ、VA型液晶セルの両面に互いに遅相軸が直交となるように配置して液晶表示装置を得た。なお、光学補償層はセル側になるように配置した。
【0174】
次に得られた液晶表示装置の上下、左右、対角45°〜225°、対角135°〜315°方向でのコントラスト比(Co)≧10の視野角を測定した。コントラスト比は、前記液晶表示装置に、白画像および黒画像を表示させ、装置(商品名Ez contrast 160D: ELDIM社製)により、表示画面の正面、上下左右について、視野角0〜70°におけるXYZ表示系のY値、x値、y値をそれぞれ測定した。そして、白画像におけるY値(YW)と、黒画像におけるY値(YB)とから、各視野角におけるコントラスト比(YW/YB)を算出した。
その結果を表2に示す。
(比較例1)
前記偏光板(商品名 NPF−1224DU(日東電工製))を、実施例1〜3で得た光学補償機能付き偏光板の代わりに用いる以外は、実施例4〜6と同様にして液晶表示装置を得た。そして得られた液晶表示装置について、実施例4〜6と同様に視野角を測定し、その結果を表2に示す。
(比較例2)
実施例1と同様に、厚さ100μmのノルボルネンフィルムを177℃でテンター横延伸し、厚さ80μmの光学補償A層を得た。その光学補償A層と、前記偏光板(商品名 NPF−1224DU(日東電工製))を厚さ25μmのアクリル系粘着剤を介して貼り合せた。そのようにして得た光学補償A層付きの偏光板を、実施例1〜3で得た光学補償機能付き偏光板の代わりに用いる以外は、実施例4〜6と同様にして液晶表示装置を得た。そして得られた液晶表示装置について、実施例4〜6と同様に視野角を測定し、その結果を表2に示す。
(比較例3)
実施例1と同様に、前記偏光板(商品名 NPF−1224DU(日東電工製))上に、1wt%のポリビニルアルコールの水溶液を塗布し、90℃で5分間乾燥して、膜厚0.01μmの皮膜を形成した。次いで、皮膜にラビング処理を施し、配向層を形成した。前記化学式(10)に示すネマチック液晶モノマー92重量部、前記化学式(38)に示すねじり力 5.5×10-4nm-1・(wt%)-1の重合性カイラル剤8重量部、UV重合開始剤5重量部およびメチルエチルケトン300重量部を混合し、この混合物を前記配向層上に塗布し、展開層を形成した。
【0175】
前記展開層を有する偏光板を90℃で1分間熱処理し、さらにUV架橋を行った。その結果、厚さ2.5μmの光学補償B層を偏光板の面上に形成し、全体の厚さ193μmの積層物を長尺で貼り合せた。
【0176】
そのようにして得た光学補償B層付きの偏光板を、実施例1〜3で得た光学補償機能付き偏光板の代わりに用いる以外は、実施例4〜6と同様にして液晶表示装置を得た。そして得られた液晶表示装置について、実施例4〜6と同様に視野角を測定し、その結果を表2に示す。
【0177】
【表2】
【0178】
表2の結果から明らかなように、実施例4〜6で得られた液晶表示装置は、広視野角の液晶表示装置であった。従って、本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板は優れた光学補償機能を有することが示された。
【0179】
【発明の効果】
従って、本発明により、延伸高分子フィルムを2枚以上積層した光学補償層よりも薄い、VA型液晶セル用光学補償機能層が積層された、VA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板を提供できることが示された。その偏光板を用いると、視認性に優れる高品位表示の液晶表示素子を提供できることも示された。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板の一例の断面模式図である。
【図2】 偏光層と光学補償層Aの貼り合わせ方向を示す斜視図である。
【図3】 本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板の一例の断面模式図である。
【図4】 本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板の他の一例の断面模式図である。
【図5】 本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板の他の一例の断面模式図である。
【図6】 本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板の他の一例の断面模式図である。
【図7】 本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板の他の一例の断面模式図である。
【図8】 本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板の他の一例の断面模式図である。
【図9】 本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板の他の一例の断面模式図である。
【図10】 本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板の他の一例の断面模式図である。
【図11】 本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板の他の一例の断面模式図である。
【図12】 本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板の他の一例の断面模式図である。
【図13】 実施例1の本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板の断面模式図である。
【図14】 実施例2の本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板の断面模式図である。
【図15】 実施例3の本発明のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板の断面模式図である。
【符号の説明】
1 保護層
2 接着層
3 偏光層
4 光学補償A層
5 光学補償B層
6 配向層
7 支持基材
11 トリアセチルセルロース(TAC)
12 PVA系接着層
13 偏光層
14 光学補償A層
15 光学補償B層
16 配向層
18 アクリル系粘着層
Claims (13)
- 偏光層と光学補償層とを含むVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板であって、
前記光学補償層が、高分子フィルムを含む光学補償A層及び
コレステリック液晶層を含む光学補償B層を含み、
前記光学補償A層が、以下の式(I)および(II)に示す条件を満たし、
前記コレステリック液晶層の構成分子が、液晶モノマーとカイラル剤から製造され、
前記液晶モノマーが、下記式(10)で表される化合物であり、
前記カイラル剤が、下記式(38)で表される化合物である光学補償機能付き偏光板。
20(nm)≦Re≦300(nm) (I)
1.2≦Rth/Re≦2.16 (II)
[前記式において、
Re(法線方向の位相差値)=(nx−ny)・d
Rth(厚み方向の位相差値)=(nx−nz)・d
(ここで、nx、nyおよびnzは、それぞれ前記光学補償A層におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記光学補償A層の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。dは前記光学補償A層の厚みを示す。)]
- 前記偏光層の吸収軸と前記光学補償A層の遅相軸の成す角度が、85°以上95°以下になるように配置される請求項1に記載のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板。
- 前記コレステリック液晶層の選択反射波長領域が、350nm以下に存在する請求項1または2に記載のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板。
- 配向層および基材の少なくとも一方をさらに含む請求項1〜3のいずれかに記載のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板。
- 前記高分子フィルムが、延伸フィルムまたは液晶フィルムである請求項1〜4のいずれかに記載のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板。
- 粘着剤層をさらに含み、
前記粘着剤層が前記偏光板のいずれか一方の表面に配置された請求項1〜5のいずれかに記載のVA型液晶セル用光学補償機能付き偏光板。 - 液晶セルおよび偏光板を含み、前記偏光板が請求項1〜6のいずれかに記載の偏光板であり、前記液晶セルの少なくとも一方の表面に前記偏光板が配置されたVAモードの液晶表示装置。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の偏光板を含むことを特徴とする画像表示装置。
- 高分子フィルムを含む光学補償A層及びコレステリック液晶層を含む光学補償B層を含み、
前記光学補償A層が、以下の式(I)および(II)に示す条件を満たし、
前記コレステリック液晶層の構成分子が、液晶モノマーとカイラル剤から製造され、
前記液晶モノマーが、下記式(10)で表される化合物であり、
前記カイラル剤が、下記式(38)で表される化合物であるVA型液晶セル用光学補償層。
20(nm)≦Re≦300(nm) (I)
1.2≦Rth/Re≦2.16 (II)
[前記式において、
Re(法線方向の位相差値)=(nx−ny)・d
Rth(厚み方向の位相差値)=(nx−nz)・d
(ここで、nx、nyおよびnzは、それぞれ前記光学補償A層におけるX軸、Y軸およびZ軸方向の屈折率を示し、前記X軸とは、前記光学補償A層の面内において最大の屈折率を示す軸方向であり、Y軸は、前記面内において前記X軸に対して垂直な軸方向であり、Z軸は、前記X軸およびY軸に垂直な厚み方向を示す。dは前記光学補償A層の厚みを示す。)]
- 前記コレステリック液晶層の選択反射波長領域が、350nm以下に存在する請求項9に記載のVA型液晶セル用光学補償層。
- 配向層および基材の少なくとも一方をさらに含む請求項9または10に記載のVA型液晶セル用光学補償層。
- 前記高分子フィルムが、延伸フィルムまたは液晶フィルムである請求項9〜11のいずれかに記載のVA型液晶セル用光学補償層。
- 請求項9〜12のいずれかに記載のVA型液晶セル用光学補償層を含むことを特徴とする画像表示装置。
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