JP4275689B2 - 耐震構造体及び湾曲型甲殻パイプによる耐震補強方法 - Google Patents

耐震構造体及び湾曲型甲殻パイプによる耐震補強方法 Download PDF

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Description

本発明は、湾曲型甲殻パイプによるを使用して既設建築物あるいは新設建築物を耐震補強する耐震構造体、及び湾曲型甲殻パイプによる耐震補強方法に関する。
近年、各地で巨大地震が頻発している。これらの地震は高速道路や鉄道の橋脚を破壊し、擁壁を崩落させ、建築物を崩壊させて各地に深刻な被害をもたらしている。これらの地震で報告された被害は、地震の水平力が作用したときの柱下部のせん断力不足による脆性破壊が最も多かった。この被害に続き、柱中央部または柱下部から長手方向に高さの1/3付近、さらに柱上部の順で破壊が起こっている。ラーメン構造の構造物の場合、多くは中央部が破壊されており、梁に関しては梁の中央部と端部で破壊されたことが報告されている。
こうした地震被害の教訓は新規建築物の設計に活かされると思われるが、既に建設が終わった既設建築物、あるいは建設中であっても十分な耐震性を備えていないことが分かった建築物の場合、今後大きな地震に見舞われたとき倒壊する可能性がある。そこで、建造物に対してどのような補強を行えばよいのか、が問題となる。
現在、耐震改修には次の3つの方法がある。1つ目は耐震補強、2つ目は制震補強、3つ目は免震補強である。1つめの耐震補強は建築物の地震耐力を高めるか、靭性(しなやかさ、変形性能)の向上を図るものである。このうちの前者は耐震壁、ブレースなどを新設することなどが該当し、後者は柱や梁にしなやかさを与えるべく補強することなどが該当する。2つ目の制震補強は、高層建築物などで制震ダンパを設けて地震エネルギーを吸収することで建築物の損傷軽減を図るものである。そして、3つ目の免震補強は、免震構造を基礎下や中間階に設けて、地盤から伝わる地震力を大幅に低減させることで建造物の損傷軽減を図るものである。
さて、この免震構造として、従来パイプから構成された免震構造が提案されている(特許文献1参照)。この免震構造は、複数個の細長くて比較的柔軟でコンクリートが充填されたパイプから構成される。このパイプは建築物にしっかり連結されて下の基礎の方へ延長され、少なくとも幾本かのパイプは、建築物が転倒しないようにこの基礎に連結される。主荷重支承支柱は基礎に載置されてこのパイプ列を受け、支柱の上端部と構造物との間に支承装置が挿入されてこれら相互間の横方向運動を可能ならしめる。また、支柱の荷重支承力から横方向剛性を吸収することによって、地面の加速力を保護建築物に移行させないようにするものである。
この構成によって、地震時に建築物や他の建築物を保護することができる。しかし、特許文献1の免震構造は、基礎工事が必要であり、短い工期、低コストで既設建築物を補強するには馴染まないものであった。
こうした難点に対して、既存建設物に耐震補強及び制震補強を施した耐震補強構造が提案されている(特許文献2参照)。この特許文献2の耐震補強構造は、耐震壁、ブレースによる耐震補強構造であると同時に、制震ダンパを使っての制震補強を兼ねている。既存建築物の桁方向の耐震補強を行うために妻側に補強フレームを新設し、この補強フレームを、既存建築物の妻側外壁面に位置する既存外周柱の外側の位置に立設された新設柱(コンクリート充填鋼管柱)と、同じくこの新設柱と既存外周柱との間に架設された新設梁、ブレースの形態で介装される制震ダンパ、水平ブレースとから構成する。
この制震ダンパはダンパ本体と拘束部材から構成され、ダンパ本体はブレースとして機能すると共に軸方向に降伏してダンパとして機能する帯板状の鋼板であり、拘束部材はダンパ本体の外側に装着されてその面外座屈を拘束するものである。新設柱としてはコンクリート充填鋼管柱が採用されている。これにより、既存の建築物に対する耐震補強が簡略な構造で行えるというものである。
しかし、特許文献2の耐震補強構造は、既存建物の妻側に新設柱を立設して、多数の梁やブレースからなる複雑な補強フレームを妻側に設置しなければならない。その外観が与える印象は建設中の足場が設けられているような印象を受け、到底簡略な構造物とは言えず、また、居住者にとっては日照、風通しなどの点で居住性を損ね、建物及び周囲の景観を損ねるものであった。また、どうしても重量が嵩み、高コスト化する。
そして、この耐震補強構造によって耐震性を徹底しようと思えば、建築物の周囲をこの耐震補強構造で取り囲むしかなく、これは居住性を確実に損なうものであった。従って、この耐震補強構造は居住性と耐震性との間で大きな矛盾を抱えたものであった。それ故なかなか普及し難い技術であった。
さて、本発明者は既に、軽量で、簡単且つ短期間に施工でき、負荷の程度に応じたきめ細やかな調整や、施工後の補強の変更が容易に行える甲殻パイプ耐震構造体と、この構造体を使った甲殻パイプ耐震補強方法を提案している(特願2006−154363)。この甲殻パイプ耐震構造体は、構造物側面に接触して耐震補強を行う複数の甲殻パイプと、これと構造物の地震時の動きを一体化するため甲殻パイプを構造物の側面に圧接させる連結体とを備えたものである。
本発明者の提案した甲殻パイプは、特許文献2の新設柱のように殆ど変形しない剛い鋼管柱を立てて、補強フレームによって建築物を補強するのではなく、一本々は変形し易いが、多数本が束になって自身が変形することにより地震のエネルギーを吸収し、構造物の破壊を遅らせるものである。従って、甲殻パイプの一本々は細くしなやかさを備えた素材であるが、複数本を組み合わせることで耐震性をもち、特許文献2のような居住性を損ねる耐震補強構造を回避できる可能性を有するものである。
なお、従来のブレース材のように直線的な部材ではないが、円形リングが種々の荷重を受けたときの撓みを解析し、その撓み量を開示したものがある(例えば、非特許文献1参照)。
特開平6−81514号公報 特開2004−176460号公報 機械工学便覧A4−41〜42(1991年9月30日発行)
以上説明した特許文献1の免震構造は、地震が作用すると、まずパイプ内部の充填物が塑性変形することで地震の水平力を吸収し、地震に対処するものであった。この免震構造は、基礎として建築物を直列に支えるもので、建築物を建築する段階で基礎部分に組み込んで設置する必要があり、既設の建築物を短工期、低コストで補強するのは困難であった。また、基礎部分に配設される免震構造であるが故に、一回の地震で充填物が使用不可状態になる可能性が高く、改修には費用がかかり、繰り返して地震力を吸収するためには制震ダンパを別に設置する必要性があり、高コスト化するものであった。
また、特許文献2の補強構造は、耐震補強及び制震補強を行うものではあるが、建築物の妻側に新設柱を立設して、この新設柱と妻側外壁面の間に補強フレームを設置する必要があった。足場が設けられているかのような印象の構造は、居住性を損ね、景観を損ねるものであった。また、この構造は高コストで、耐震性や居住性、景観等が相矛盾する関係を有するものであった。
建築物には時間の経過に伴う環境変化、劣化等があり、また法令による耐震基準や設計方法の変更等で、更なる補強が必要になる場合もある。しかし、特許文献1,2の補強構造は、一度行った補強を変更したり、補強をきめ細かく調整したりすることができないものであった。また、地震に迅速に対処すること、低コスト、短工期で建築物を改修できること、周囲の景観を損ねることないこと、むしろ建築物に優美さを加えるような改修ができること、などが望まれる。
そこで、このような課題を解決するために本発明は、建築物の利用価値を損ねることなく、優美さを備えた形状に耐震補強することができ、軽量で、安価且つ簡単、短期間に施工でき、負荷に応じたきめ細やかな調整が行え、施工後の補強の変更が可能な耐震構造体及び耐震補強方法を提供することを目的とする。
本発明の耐震構造体は、湾曲し内部に充填材が充填され湾曲型甲殻パイプからなりその長手方向側面からみたとき閉じた楕円形状に構成された湾曲型補強体と、湾曲型補強体の楕円形状の長軸の端部を建築物若しくは該建築物傍に立設された補強柱に連結する連結体とを備え、楕円形状の湾曲型甲殻パイプによって形成されたループの撓みと充填材の塑性変形を利用して地震の衝撃を吸収し耐震補強を行うことを主要な特徴とする。
また、本発明の湾曲型甲殻パイプによる耐震補強方法は、パイプの内部に充填材を充填して長手方向側面からみて湾曲した湾曲型甲殻パイプとし、該湾曲型甲殻パイプによって長手方向側面からみたとき閉じた楕円形状をなす湾曲型補強体を構成し、該湾曲型補強体の楕円形状の長軸の端部を建築物若しくは該建築物傍に立設された補強柱に連結体によって連結して、楕円形状の湾曲型甲殻パイプによって形成されたループの撓みと充填材の塑性変形を利用して地震の衝撃を吸収し耐震補強することを主要な特徴とする。
本発明の耐震構造体及び耐震補強方法によれば、既存、新設何れの建築物であっても必要十分な耐震補強することができ、建築物がもつ利用価値を損ねることなく、湾曲型甲殻パイプがもつ優美さを利用して建築物の外観に優美なデザイン性を加える補強をすることができ、軽量で、安価且つ簡単、短期間に施工でき、負荷に応じたきめ細やかな調整が行え、施工後の補強の変更が容易に行える。
本発明の第1の形態は、湾曲し内部に充填材が充填され湾曲型甲殻パイプからなりその長手方向側面からみたとき閉じた楕円形状に構成された湾曲型補強体と、湾曲型補強体の楕円形状の長軸の端部を建築物若しくは該建築物傍に立設された補強柱に連結する連結体とを備え、楕円形状の湾曲型甲殻パイプによって形成されたループの撓みと充填材の塑性変形を利用して地震の衝撃を吸収し耐震補強を行うことを特徴とする耐震構造体である。この構成によって、既存、新設何れの建築物であっても必要十分な耐震補強することができ、建築物がもつ利用価値を損ねることなく、湾曲型甲殻パイプがもつ優美さを利用して優美なデザイン性を備えた補強をすることができ、軽量で、安価且つ簡単、短期間に施工でき、負荷に応じたきめ細やかな調整が行え、施工後の補強の変更が容易に行える。
本発明の第2の形態は、第1の形態に従属する形態であって、湾曲型補強体が、完全な楕円からなる楕円形状、楕円一部からなる湾曲型甲殻パイプを一対組み合わせて主要部とした楕円形状、円弧からなる湾曲型甲殻パイプを一対組み合わせて主要部とした楕円形状、放物線の一部からなる湾曲型甲殻パイプを一対組み合わせて主要部とした楕円形状構成された楕円形状のうちの何れかの楕円形状を有していることを特徴とする耐震構造体である。この構成によって、楕円形状をなす湾曲型補強体をつくることが容易になり、安価な耐震構造体とすることができる。
本発明の第3の形態は、第1または第2の形態に従属する形態であって、湾曲型補強体が建築物の側面に設けられたブレース材であることを特徴とする耐震構造体である。この構成によって、既存、新設何れの建築物であっても壁部分を必要十分に耐震補強することができる。
本発明の第4の形態は、第1〜第3の何れかの形態に従属する形態であって、建築物が複数階を有する階層建築物であることを特徴とする耐震構造体である。この構成によって、マンションやビルなどの複数階を有する階層建築物を必要十分に耐震補強することができる。
本発明の第5の形態は、第1〜第3の何れかの形態に従属する形態であって、建築物が一戸建て建築物であることを特徴とする耐震構造体である。この構成によって、一戸建て建築物を短期間、且つ必要十分な強度に耐震補強することができる。
本発明の第の形態は、第4または第5の形態に従属する形態であって、建築物が複数階を有しているとき、湾曲型補強体が各階または複数階にまたがって設けられて耐震補強することを特徴とする耐震構造体である。この構成によって、建築物に作用している重量次第で、自在に補強形態を変えることができる。
本発明の第の形態は、パイプの内部に充填材を充填して長手方向側面からみて湾曲した湾曲型甲殻パイプとし、該湾曲型甲殻パイプによって長手方向側面からみたとき閉じた楕円形状をなす湾曲型補強体を構成し、該湾曲型補強体の楕円形状の長軸の端部を建築物若しくは該建築物傍に立設された補強柱に連結体によって連結して、楕円形状の湾曲型甲殻パイプによって形成されたループの撓みと充填材の塑性変形を利用して地震の衝撃を吸収し耐震補強することを特徴とする湾曲型甲殻パイプによる耐震補強方法である。この構成によって、既存、新設何れの建築物であっても必要十分な耐震補強することができ、建築物がもつ利用価値を損ねることなく、湾曲型甲殻パイプがもつ優美さを利用して優美なデザイン性を備えた補強をすることができ、軽量で、安価且つ簡単、短期間に施工でき、負荷に応じたきめ細やかな調整が行え、施工後の補強の変更が容易に行える。
本発明の第の形態は、第の形態に従属する形態であって、湾曲型補強体をブレース材として建築物に設けることを特徴とする湾曲型甲殻パイプによる耐震補強方法である。この構成によって、既存、新設何れの建築物であっても壁部分を必要十分に耐震補強することができる。
(実施例1)
本発明の実施例1における集合住宅やビルなどの建築物を補強する耐震構造体及び湾曲型甲殻パイプによる耐震補強方法について図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施例1における建築物を補強する耐震構造体の全体図、図2(a)は本発明の実施例1における耐震構造体の要部説明図、図2(b)は(a)の耐震構造体が円形の場合の説明図、図2(c)は(a)の耐震構造体が2本の甲殻パイプで座屈する場合の説明図、図3はコンクリートと鉄筋コンクリート、甲殻パイプで補強したコンクリートの比較図、図4(a)は本発明の実施例1におけるピロティー構造を補強する耐震構造体の説明図、図4(b)はアーチを含むピロティー構造を補強する耐震構造体の説明図、図5は本発明の実施例1におけるピロティー構造の耐震構造体を固定する説明図、図6(a)は本発明の実施例1におけるピロティー構造の天井を補強する耐震構造体の説明図、図6(b)は本発明の実施例1におけるピロティー構造の天井を補強する別の耐震構造体の説明図である。
図1において、1はマンション等の集合住宅あるいはビルなど(本発明の複数階を有する階層建築物)の建築物である。建築物1には窓やガラス戸など壁部分に位置する開口が設けられている。なお、実施例1においては既設の建築物を建築物1として説明するが、新規建築物であってよいのは言うまでもない。2はこの建築物1を耐震補強する耐震構造体であり、上記した窓やガラス戸等の開口が設けられている壁面を支える柱に取り付けられるか、若しくは壁面(妻側)に接触、近接した状態で設置される。通常接触していなくても、地震時に接触して地震の力を吸収できればよい。
次に図1において、3はその長手方向側面からみたとき楕円形状を有してこの耐震構造体2を構成する湾曲型甲殻パイプである。楕円形状が最適であるが、場合によっては一対の弧から構成され主要部分として部分的に楕円形状、湾曲形状をしている形状含んでいるのもよい。このような楕円形状の湾曲型甲殻パイプ3によって建築物1の側面を耐震補強する1組の湾曲型補強体が形成される。
湾曲型補強体、すなわち湾曲型甲殻パイプ3はこの形状と構造によって地震のエネルギー、とくに少なくとも衝撃の大きな最初の一波を吸収し、これによって自身が座屈や降伏などを起こすようなことがあったとしても、建築物1の破壊は免れさせるものである。
4は耐震構造体2を建築物1の側面に接触させて設けるときに利用する垂直柱(本発明の補強柱)である。従って、上記したように耐震構造体2を建築物1の外側部の柱に直接取り付ける場合には設ける必要がない。しかし、既設の建築物1などにおいては、この取り付けを許容するような強度的余裕がない設計をされている場合もあり、このような場合は垂直柱4を立設するのがよい。
従来の耐震構造であれば、少なくともこの垂直柱を立設する必要があったが、実施例1の耐震構造では、いずれの場合も選択できる。デザイン的には直接取り付ける方が望ましい。耐震構造体2を設ける建築物1の側面は、例えば建築物1が直方体の場合四面全部に設けることが望ましいが、最も大きな圧縮と引張が加わる長手側の二側面を優先して補強するのが好適である。従来の耐震構造体の場合はこのよう補強は居住性等を大きく損なってしまうし、これを補強しない場合は耐震補強にならない。
次に、5は湾曲型甲殻パイプ3で構成した湾曲型補強体の端部を垂直柱4に連結する連結部(本発明の連結体)である。地震時には、この連結部5と建築物1傍に立設された垂直柱4の少なくとも一方が建築物1の外壁面の柱等と接触し、垂直柱4が建築物1にかかる力を部分的に負担する。連結部5は金属金具等でよい。垂直柱4を設置しない場合には、連結部5は湾曲型甲殻パイプ3を建築物1の外壁面の柱に直接取り付けるための固定部材となる。6は建築物1に設けられたエントランスや駐車場となるピロティーである。そして、7はこのピロティー6を補強するためのU字形の湾曲型甲殻パイプである。その詳細は後述する。
さて、実施例1の湾曲型甲殻パイプ3について図2(a)(b)(c)、図3に基づいて詳細に説明する。図2(a)に示す湾曲型甲殻パイプ3は扁平の楕円形で、図1の湾曲型甲殻パイプ3を拡大したものである。このタイプが最もバネ作用が強くなる。X−X断面において、30はFRP,グラスファイバー等の繊維質補強合成樹脂、あるいは鉄等の金属等のパイプであり、31は湾曲型甲殻パイプ3の中に充填される樹脂、モルタル、コンクリート、砂等の充填材である。外部からの圧縮に対して耐力が大きな充填材を充填する。また、湾曲型甲殻パイプ3の湾曲形状(楕円形の形状)は、楕円そのものの形状を利用するものであっても、円の全部または一部(円弧)、楕円の一部、放物線の一部、スプライン曲線などの弧を利用するのでもよい。一部の弧を利用し一対を組み合わせる場合、これが楕円形状の主要部となる楕円形状であればよい。すなわち、本明細書でいう楕円形状とは長手方向に垂直な断面が楕円形状というわけでなく、長手方向側面が近似的に楕円形状になっていればよい。複数本の直線で線形近似する形状も含まれる。そして1対の湾曲弧で閉じた形状である。ただ、強度的には完全な楕円形の形状の方が望ましく湾曲型補強体を採用するときには完全な楕円形の湾曲型補強体の中に部分的に採用するのが好適である
さて、甲殻パイプ2の長手方向側面からみた形状は楕円形状であるが、断面形状は図2(a)のように長手方向に一様な断面の円形パイプが強度的にも優れているし、入手も容易で望ましい。しかし、円形に限らずあらゆるパイプ、例えば4角形、6角形等の多角形(筒状)のパイプ等でよく、肉厚を有し、少なくとも内部に中空部分が形成されたパイプであればよい。組み合わせによりパイプ構造となるものでも所要の組み合わせ強度を有するものは使用可能である。なお、パイプの外形、中空部分の形状が長手方向の途中で一部部分的に変化するものであっても差し支えない。すなわち、長手方向に一様断面のパイプも素材として上記の通り適当であるが、竹のように途中で節(凸凹)が形成されたパイプ、あるいは長手方向に巻き付けなどがなされたパイプ、例えば螺旋状に断面が変化する断面形状をもつパイプなども好適である。
更に説明を続けると、楕円形の長軸の端部A,B(本発明の湾曲型補強体の端部)は連結部5に連結、支持されるが、図2(c)の2本の甲殻パイプ(2つの弧状部材3a、3b)のように軸端A,Bがそれぞれ別々に連結部5に連結されるのでも、一体となったループ状の湾曲型甲殻パイプ3が端部A,Bで連結部5に連結されるのでも、その何れでもよい。この軸端A,Bに長軸側から圧縮荷重Wが加わった場合、長軸側が縮んで同時に短軸側が膨らみ、湾曲型甲殻パイプ3が撓むことで力を吸収する。
このように湾曲で荷重を支えることができるにしても、さほど大きな力は吸収できないように思われるが、法隆寺に代表される日本の木造巨大建築物の梁がまさしくこれを実証している。これらの巨大建築物においては、梁は角柱状に製材されることなく、自然木がそのままの形状で優美に上に撥ね上がった形状に使用され、屋根からかかる巨大負荷をその撓りで数百年、千年にわたって支え、幾度となく襲った地震にも耐えてきている。これは自然木本来の湾曲構造がバネ作用を生み、屋根の負荷を支えているからである。巨大建築物が大きな負荷に耐えてこられた大きな要因の1つとしてこの跳ね上がりがあると考えられている。
そこで、この湾曲型甲殻パイプ3の湾曲形状の作用について図2(b)(c)を基に更に説明する。図2(b)は円形の湾曲型甲殻パイプ3にx軸方向から圧縮荷重Wが加わって、撓み幅Dだけx軸方向の幅が短くなり、撓み幅D分だけy軸方向の幅が膨らんだ状態を示している。円は楕円形状の中の極端な形状の1つである。
このときの撓み量は(数1)で与えられる(例えば、非特許文献1参照)。ここに、撓み幅Dは撓みによるx軸側の増加分(図2(b)においては減少分)であり、撓み幅Dがy軸側の増加分である。ここでは撓み幅Dについては直接関係しないので記載しない。このとき、湾曲型甲殻パイプ3が形成するリングの直径をl、見掛けの縦弾性係数をE、断面二次モーメントをIとすると、幅Dは(数1)となる。なお、y軸から荷重Wが作用する方向までの角度がαであり、図2(b)のようにα=π/2のとき、(数1)の値はD=0.148Wl/8EIとなる。
Figure 0004275689
ここで、比較のため図2(c)の右図に示すように、長さl、縦弾性係数E、直径d、歪み量λの丸棒を考え、これに荷重Wが加えられた場合の荷重Wと歪みλの関係を求めると、λ=4Wl/πEが得られる。また、断面円形の甲殻パイプ3が直径dの円形のパイプで、簡単のため断面二次モーメントIが中実棒と概ね等しいとすると、I=πd/64であり、D=0.148×8Wl/πEdとなる。
この棒の歪み量λと撓み幅Dが同一値を示す荷重WとWを求めると、W/W=3.38(E/E)(d/l)となる。さて、従来の耐震設計思想が制震、免震の場合は別にして、できるだけ変形を許さないことを主旨とすることから、比較例の縦弾性係数Eを剛性部材のものとし、E/Eを1〜10程度と評価し、またdがlの10%程度だとすると、WはWの4%〜40%程度となる。従って、この円形リングによって支える荷重WはWより少し小さい値を示す。しかし、その変形の程度(歪み量λに対する撓み幅Dの比)は荷重と裏腹で2倍以上に大きくなる。
これに対し、楕円形状を短軸より長軸の方がきわめて大きい扁平の楕円形のループにしたときは、極限的には図2(c)の左図に示すように、2本の棒(ここでは丸棒)で荷重Wを支えるものに近づく。この2本の棒は楕円形状の中のもう1つの極端な形状である。このとき、荷重WはWの2(E/E)倍程度に近づくものと考えられる。勿論、ループを形成しているため大きな変形性を示し、バネ作用を有する。
以上のことから、楕円形を扁平にすれば、丸棒に比べ同じ歪みで2倍以上の大きな荷重を支え、しかも撓むことによって地震のエネルギーを吸収することができ、また、円形に近いリングにした場合、支える荷重は少し小さくなるが、同一の荷重に対して大きく撓んで地震のエネルギーを吸収することができることが分かる。この中間の楕円形では中間的な傾向を示すものと考えられる。
さて、ここで本発明の耐震設計の基本的な考え方の説明を行う。一般に地震による建築物の破壊を免れさせるには、地震の第一波(S波)による衝撃を緩衝すればほぼ十分で、これに耐えたら通常その後に続く第二波以降の地震波は十分許容範囲(10mm/1000mmの歪み)内に抑えることができる。そして、この第一波による衝撃を緩衝するための対処法としては、(1)耐震構造体を高剛性部材で構成し、地震の振動が加わっても建築物の変形を許さずに破壊を防ぐ方法と、(2)耐震構造体は変形し易く、場合によっては破壊されるようなことがあっても、耐震構造体が先に破壊されることで地震のエネルギーを費消し建築物の破壊を遅延させる方法、の2つの方法がある。しかし、従来の耐震補強(制震、免震補強とは別)は専ら(1)の方法を基礎にするもので、(2)の方法が省みられることは少なかったが、本発明は(2)の方法を基礎にする方法である。従って、大きく撓んで、破壊されるにしても、建築物1より先に破壊されるものである。
そこで、ビルやマンションなどの建築物1の側面に実施例1の楕円形状の湾曲型甲殻パイプ3を設けることが、上記(2)の方法を実現するものであり、地震の第一波による衝撃を緩衝し、耐震構造体2が先に破壊されてエネルギーを費消し、建築物1本体の破壊を遅延させることを以下説明する。
ビルやマンションなどの建築物1の構造は、柱と、水平の梁と、この柱と梁の間の面を埋める壁の3種類の要素から構成される。柱が大きな圧縮と引張と曲げモーメントを負担し、梁は引張力、壁はせん断力の大部分と曲げモーメントの一部を負担する。窓やガラス戸などがない壁面は耐震壁とされて耐震対策が施されている。しかし、窓やガラス戸などが設けられている壁面は、日照と通気、その他の居住のための環境を提供する必要から、開口を有し基本的に開放された状態である。従って、こうした建築物1の耐震性は、無防備な壁面部分に作用するせん断力と曲げモーメントの支配を大きく受ける。実施例1の湾曲型甲殻パイプ3は、地震時にこの壁面部分に作用するエネルギーを撓むことによって吸収し、建築物1本体の破壊を遅延させるものである。
壁面部分にせん断力や曲げモーメントが作用したとき、壁面の対角線上には外側の柱が受けた力が圧縮力若しくは引張力として作用する。そこで実施例1においては、図1に示すような壁面の対角方向にブレース材として湾曲型甲殻パイプ3を設けて、この圧縮力若しくは引張力に対抗させている。これにより、地震の揺れに対して外側の柱や垂直柱4を介して建築物1と耐震構造体が一体となって基礎、地盤に力を伝えることができ、地震の衝撃を緩衝することができる。直下型地震にも耐えるものである。なお、建築物1の基礎と垂直柱4の補強基礎は一体化されている。
さて、湾曲型甲殻パイプ3からなる湾曲型補強体は圧縮力が加わると短軸側が外側に撓む。このとき樹脂、モルタル等の充填材31を押し潰すように、塑性変形し外力を吸収する。逆に引張力が加わると、短軸側が内側に楕円形が更に扁平になるように変形し、その変形に伴って充填材31が塑性変形して力を吸収する。湾曲型甲殻パイプ3は、この撓みによって変形するパイプ30の長手方向形状及び断面形状と、充填材31の塑性変形を利用した耐震補強体ということができる。
ここで、このパイプと充填材とからなる湾曲型甲殻パイプ、湾曲型補強体の特性について詳細に説明する。まず、基本となる甲殻パイプの特性について説明する。図3の上段に示すように、コンクリートだけでつくられた梁上に外力を加えると破断する。これはコンクリートが圧縮力に強いが、引張力に弱いためであり、このため従来引張力を補強する目的で鉄筋がコンクリート内部に埋め込まれている。
図3の中段は鉄筋コンクリートでつくられた梁上に外力を加えた状態を示す。この鉄筋コンクリートは圧縮力にも引張力にも強い構造物をつくることができる。鉄筋は引張力に強いだけでなく、加工が自由で、安価であって優れた材料である。しかし、更に安価にするため、ある程度の加工性を持ち引張力に強い材料を鉄筋の代わりに使用することも提案されている。実際例えば、過去に竹を鉄筋の代わりにしたコンクリートも提案されている。従って、引張力に富むグラスロッド等が鉄筋の代わりに使えることは言うまでもない。
さて、湾曲型甲殻パイプ、湾曲型補強体の特性の説明を続けると、梁に外力が加わったとき、鉄筋周りでは、引っ張られる鉄筋にくっついて離されまいとするコンクリートの抗力が生じる。これが付着力であり、コンクリートの付着力は引張力同様に圧縮力に比べて弱い。そして、付着力は鉄筋の外周面積が大きいほど大きいから、必要な断面積が同じであれば、鉄筋は中実棒よりも中空のパイプの方が有利になる。これが、従来の鉄筋コンクリートと比較して甲殻パイプが優れている所以である。
図3の下段は甲殻パイプでつくられた梁上に外力を加えた状態を示す。コンクリート中の鋼材に対し、軸力方向に引張力が働くだけであれば鉄筋で十分であるが、直下型地震のような左右の揺れだけではなく、突き上げる上下動が加わった場合、鋼材の断面二次モーメント、断面係数の大きいものの方が耐震性を備えていることになる。甲殻パイプは鉄筋コンクリートより耐震性を備えている。
これを実例で説明すると、例えば清涼飲料水が入った缶を潰すには大きな力が要るが、飲み終わった空缶は簡単に潰すことができる。鉄筋より強い甲殻パイプもこの缶と同様で、中空のパイプより内部に充填物が詰まった甲殻パイプの方が潰れにくい。これは、パイプに曲げ応力が加わった場合、パイプが外力により変形しようとすると充填物に圧縮力が加わり、充填物がこの力を受けとめ、パイプの変形を防ぐからである。ここに充填されたパイプの有用性がある。
これを生物学的にみると昆虫の甲殻構造と対応する。この昆虫の甲殻構造は堅い蛋白組織を外側に持ち、内部に筋肉を有する。哺乳動物が内部に堅い骨格を有し、その周りに筋肉が付着しているのと好対照である。昆虫はその甲殻構造から大きな力を生み出し、その力はスケール換算で人間の数倍数十倍にも及ぶ。
現在の建築物の殆どは鉄筋コンクリートで内骨外筋構造を採用している。鉄筋が骨でありコンクリートが筋肉である。しかし、甲殻構造を建築物に取り入れることができれば、より大きな抗力を有する建築物となる。甲殻パイプを建築物に採用することにより、予測しきれない大きな力が加わる直下型地震などに対して、より好適に対応することができる。
続いて、図1に示したピロティー6の耐震補強について説明する。ピロティー6には窓などと同様に、エントランス等の大きな開口が設けられており、建築物1の耐震性において、ここに大きなせん断力、曲げモーメントが作用することになる。ここにも上述した湾曲型甲殻パイプ3を側面に設けて耐震補強することができるが、エントランスや駐車場は開口を通路として使うため、湾曲型甲殻パイプ3を設けると人や車などの出入りの障害になる。必要最小限の開口はどうしても必要である。
そこで、このようなピロティー6については、図4(a)のようなU字型の湾曲型甲殻パイプ7(U字状の湾曲弧を含む形状の湾曲型甲殻パイプ)を使用する。側面からみてU字型の頂点を天井側に向けて設置する。図4(a)の上段のように、頂点を天井側に接して比較的大きな湾曲の湾曲型甲殻パイプ7を壁面部分に設けたり、下段のように角張った矩形型の湾曲型甲殻パイプ7を壁面部分に設けたりすることができる。地震の際、柱や梁が圧縮力、引張力、曲げモーメントを受けて壁面の開口が図のような矩形の状態から平行四辺形に変形しようとするが、U字型の湾曲型甲殻パイプ7がこれを防止する。楕円形状の1対の湾曲型甲殻パイプ3からなる湾曲補強体ではなく、1本の弧を主要部分としてU字型にした場合の湾曲型甲殻パイプ、湾曲補強体である。
取り付けにあたっては、湾曲型甲殻パイプ7と柱部分を帯鉄や補強シートで巻き立てて固定する。図5は角形の湾曲型甲殻パイプ7を柱の間に設置した様子を示す。33は補強シート、34は帯鉄であり、補強シート33、帯鉄43の巻き立てによって柱を更に補強することができる。この巻き立て手段は全てが補強シート33、帯鉄43の何れか一方だけ、あるいは両者が混在したものでもよい。また、柱と柱の間に断面角形(例えば矩形断面)の湾曲型甲殻パイプ7を設置し、柱と湾曲型甲殻パイプ7を密着させ、柱の鉄筋の少ない部分にボルト等で固定してもよい。湾曲型甲殻パイプ7は基礎床面に接するか、または支持することで地震や加重による外力を地盤に伝達する。
なお、マンションやビル等の建築物1に設けられたピロティー6の構造とは異なるが、アーチ構造の柱をもつ建築物(例えば、レンガ造り等の建築物)の場合は、図4(b)のようにアーチに沿って湾曲型甲殻パイプ7を取り付ければ耐震補強することができる。眼鏡橋のように橋自体がピロティー構造のときも、これを曲型甲殻パイプ7で耐震補強することもできる。このほか、倉庫や桟橋等のピロティーにこの耐震構造体を施すことができる。
続いて、図6(a)(b)はピロティー6の天井を補強する場合を示している。図6(a)に示すように、ピロティー6の四壁面内にそれぞれ湾曲型甲殻パイプ7を設けると同時に、隅角部の柱から対角方向に斜めに交差してその頂点が天井面に接する湾曲型甲殻パイプ7を設ける。天井面で交差する2本の湾曲型甲殻パイプ7は中央位置で一方を上に他方を下にして固定される。交差部分ではこのようにするのがよい。湾曲型甲殻パイプ7は両端を基礎床面に接する、若しくは支持する、ことで外力を地盤に伝達する。さらに、湾曲型甲殻パイプ7と柱部を鋼板や補強シートで締め付けた場合、この巻き立てで柱に対する一層の補強をすることができる。
また、図6(b)に示すように、ピロティー6の四面の壁面内にそれぞれ湾曲型甲殻パイプ7を設けると共に、頂点を天井面に接し、二面の壁面に平行に湾曲型甲殻パイプ7を梁状に架設することができる。この梁状の湾曲型甲殻パイプ7の両端は残り二面内に設けられた湾曲型甲殻パイプ7に固定される。なお、この残り二面内に設けた湾曲型甲殻パイプ7が頂点で天井と接している場合に、この位置の梁状の甲殻パイプを設けるときは、この梁状の甲殻パイプは直線の甲殻パイプとなり、交差する2つの甲殻パイプは上下にして天井に固定される。
従来のピロティーにおいては、梁方向に斜材を入れて筋交いにすると天井スラブ下空間を大きくとるため、対角方向に補強を行うことは難しかった。しかし、湾曲型甲殻パイプ7を用いることによって空間を最大限に活かして補強することが可能になる。また、このことにより、耐震補強だけでなく、階層式倉庫やアーチ構造の載荷荷重を上げることも可能になる。
このように実施例1の耐震構造体及び耐震補強方法は、集合住宅やビルなどで既存、新設何れの建築物であっても、必要十分な耐震補強することができ、建築物がもつ居住性等の利用価値を損ねることなく、湾曲型甲殻パイプがもつ優美さを利用して建築物の外観に優美なデザイン性を付加することができ、軽量で、安価且つ簡単、短期間に施工でき、負荷に応じたきめ細やかな調整が行え、施工後の補強の変更が容易に行える。
(実施例2)
本発明の実施例2における一戸建ての建築物を補強する耐震構造体及び耐震補強方法について図面に基づいて説明する。図7は本発明の実施例2における既設建築物を補強する耐震構造体の全体図である。実施例2は実施例1と建築物が相違するだけであって、基本的に同一構成であるがから、同一構成には同一符号を付して説明は省略する。
一戸建ての建築物1を補強するとき、実施例1と同様、各階で個別に補強することもできるが、図7に示すように建築物1の側面全体で、ここでは三階分あるいは2階と3階を二階分まとめて、耐震補強している。すなわち、一戸建ての場合建築物1は木造家屋などが多く、地震によって作用する外力はビルなどと比較して小さくてすみ、各階で補強するのではなく、側面全体のブレース材として交差する2組の湾曲型甲殻パイプ3を設けて圧縮力若しくは引張力に対抗させるものである。耐震構造体2の軽量化を実現すると共に、必要十分な補強で、直下型地震にも耐え得るものである。
実施例2の建築物1では湾曲型甲殻パイプ3を直接その柱に取り付け、その既設基礎に連結して補強している。しかし、補強基礎(図示しない)を打ち、これに垂直柱4を立設して、この垂直柱4に湾曲型甲殻パイプ3を取り付けることもできる。垂直柱4を設けた場合、地震時にはこの連結部5と垂直柱4の少なくとも一方が建築物1の外壁面の柱等と接触して、垂直柱4が建築物1にかかる力を部分的に負担する。これにより、地震の揺れに対して、既設基礎と一体化した補強基礎によって建築物と耐震構造体が一体となって地盤に地震の力を逃がすことができ、地震の衝撃を緩衝することができる。
このように実施例2の耐震構造体及び耐震補強方法は、既存、新設何れの一戸建て建築物に対しても必要十分な耐震補強をすることができ、居住性等の利用価値を損ねることなく、湾曲型甲殻パイプがもつ優美さを利用して建築物の外観に優美なデザイン性を付加することができ、耐震構造体を軽量化でき、安価且つ簡単、短期間に施工でき、負荷に応じたきめ細やかな調整が行え、施工後の補強の変更が容易に行える。
本発明は、構造物の耐震性を向上させる耐震構造体に適用することができる。
本発明の実施例1における建築物を補強する耐震構造体の全体図 (a)本発明の実施例1における耐震構造体の要部説明図、(b)(a)の耐震構造体が円形の場合の説明図、(c)(a)の耐震構造体が2本の甲殻パイプで座屈する場合の説明図 コンクリートと鉄筋コンクリート、甲殻パイプで補強したコンクリートの比較図 (a)ピロティー構造を補強する耐震構造体の説明図、(b)アーチを含むピロティー構造を補強する耐震構造体の説明図 ピロティー構造の耐震構造体を固定する説明図 (a)ピロティー構造の天井を補強する耐震構造体の説明図、(b)ピロティー構造の天井を補強する別の耐震構造体の説明図 本発明の実施例2における既設建築物を補強する耐震構造体の全体図
符号の説明
1 建築物
2 耐震構造体
3 湾曲型甲殻パイプ
4 垂直柱
5 結部
6 ピロティー
7 湾曲型甲殻パイプ
30 パイプ
31 充填材
33 補強シート
34 帯鉄

Claims (8)

  1. 湾曲し内部に充填材が充填され湾曲型甲殻パイプからなりその長手方向側面からみたとき閉じた楕円形状に構成された湾曲型補強体と、前記湾曲型補強体の楕円形状の長軸の端部を前記建築物若しくは該建築物傍に立設された補強柱に連結する連結体とを備え、前記楕円形状の湾曲型甲殻パイプによって形成されたループの撓みと前記充填材の塑性変形を利用して地震の衝撃を吸収し耐震補強を行うことを特徴とする耐震構造体。
  2. 前記湾曲型補強体が、完全な楕円からなる楕円形状、楕円一部からなる湾曲型甲殻パイプを一対組み合わせて主要部とした楕円形状、円弧からなる湾曲型甲殻パイプを一対組み合わせて主要部とした楕円形状、放物線の一部からなる湾曲型甲殻パイプを一対組み合わせて主要部とした楕円形状構成された楕円形状のうちの何れかの楕円形状を有していることを特徴とする請求項1記載の耐震構造体。
  3. 前記湾曲型補強体が前記建築物の側面に設けられたブレース材であることを特徴とする請求項1または2記載の耐震構造体。
  4. 前記建築物が複数階を有する階層建築物であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載された耐震構造体。
  5. 前記建築物が一戸建て建築物であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載された耐震構造体。
  6. 前記建築物が複数階を有しているとき、前記湾曲型補強体が各階または複数階にまたがって設けられて耐震補強することを特徴とする請求項4または5記載の耐震構造体。
  7. パイプの内部に充填材を充填して長手方向側面からみて湾曲した湾曲型甲殻パイプとし、該湾曲型甲殻パイプによって長手方向側面からみたとき閉じた楕円形状をなす湾曲型補強体を構成し、該湾曲型補強体の楕円形状の長軸の端部を建築物若しくは該建築物傍に立設された補強柱に連結体によって連結して、前記楕円形状の湾曲型甲殻パイプによって形成されたループの撓みと前記充填材の塑性変形を利用して地震の衝撃を吸収し耐震補強することを特徴とする湾曲型甲殻パイプによる耐震補強方法。
  8. 前記湾曲型補強体をブレース材として前記建築物に設けることを特徴とする請求項記載されたる湾曲型甲殻パイプによる耐震補強方法。
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