JP4275461B2 - 蛍光ランプ用蛍光体の回収再生方法および蛍光ランプ - Google Patents

蛍光ランプ用蛍光体の回収再生方法および蛍光ランプ Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は蛍光ランプ用蛍光体の回収再生方法及び蛍光ランプに関する。更に詳細には、水銀の放電により発生する紫外線によって発光させるタイプの蛍光ランプの蛍光膜等から回収された蛍光体に付着もしくは混入した水銀および/または水銀化合物(以下、単に「水銀」という)を除去し、再使用可能な蛍光ランプ用蛍光体を再生する回収再生方法及びこの回収再生蛍光体を用いた蛍光ランプに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年来、照明用を主用途とする蛍光ランプは、ハロ燐酸塩蛍光体の単一成分蛍光体からなる蛍光膜を有するタイプに加えて、およそ450、540及び610nmの各波長域に強く、かつ半値幅の狭い発光スペクトルのピークを有する混合蛍光体を蛍光膜とする3波長形蛍光ランプが急速に普及してきた。特に省エネルギーの観点からはこれら3波長形蛍光ランプや高周波点灯形蛍光ランプの普及は著しいものがある。
【0003】
さらに近年、省資源の観点から家庭用電化製品のリサイクルが行われるようになってきた。しかし使用済みの蛍光ランプは不燃物ゴミとして処理されたり、分別回収されても粉砕して埋没廃棄したり、あるいは蛍光ランプの外囲器であるガラスのみがリサイクルされているのが現状である。3波長形蛍光ランプは比較的高価な混合蛍光体を用いることから、これら蛍光ランプより回収された混合蛍光体(回収蛍光体)を再度利用することが望まれている。そのためには蛍光膜を構成する蛍光体を劣化させることなく蛍光膜に付着した水銀を除去し、蛍光体を回収再生する必要がある。
【0004】
蛍光ランプから回収された蛍光体の再生方法については余り報告されていないが、従来水銀を除去する方法としては、水銀を溶解することが一般的で、通常は硝酸を用いて溶解させ除去する。しかしこの方法を蛍光ランプから回収された蛍光体の再生処理に適用し、水銀が溶解し得る濃度の硝酸で蛍光ランプからの回収蛍光体を処理すると、水銀は溶解除去されるが、同時に蛍光体の一部も溶解するため蛍光体の結晶構造が変化し発光色度が変化するだけでなく、その蛍光体が紫外線に長時間晒されると次第に蛍光体の輝度低下(紫外線劣化)を起こしたり、その蛍光体を蛍光ランプの蛍光膜として再使用した際、蛍光ランプの継続点灯時に発光輝度が経時的に低下(光束維持率低下)したりするようになる弊害があった。
【0005】
一方、蛍光体が溶解しないようにするため、回収蛍光体を硝酸ではなく水で処理する方法が考えられるが、この場合蛍光体へのダメージは少なく、発光色度等の変化はないが、水銀の除去が不完全で、そのため回収再生された蛍光体の輝度がもとの蛍光体よりも低かったり、蛍光ランプとした際、そのランプの光束維持率低下が生じるという弊害があった。またこのような処理方法においては、蛍光体から水銀を完全に分離することが出来ないので、蛍光体及び水銀のリサイクル化は出来ず、コスト面及び環境への影響の面で好ましい状況ではなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたものであり、水銀の放電によって生じた紫外線により蛍光膜を発光させるタイプの蛍光ランプから回収された蛍光体等の、水銀を含む蛍光体から水銀を除去する処理を施して再生蛍光体とした場合、発光色や演色性等の発光特性に影響することなく、また、この再生蛍光体を蛍光ランプの蛍光膜として再使用した際に蛍光ランプの光束の低下がなくて、光束維持率が高い蛍光ランプを得ることのできる回収再生蛍光体を得る方法及び蛍光ランプを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、3波長形蛍光ランプ用蛍光体等の紫外線励起用蛍光体やこれらの蛍光体を含む混合蛍光体を蛍光膜とする蛍光ランプから回収された水銀を含む回収蛍光体について、これらの蛍光体を化学的に処理する蛍光体処理液のpH、その種類や添加量、反応時間等の条件を変えて反応させ、得られた蛍光体の輝度および残留水銀の濃度、さらに蛍光体処理液により処理して得られた蛍光体を蛍光膜として用いた蛍光ランプの光束や光束維持率について詳細に調べた結果、蛍光ランプから回収された蛍光体を特定のpH値および量の蛍光体処理液中に分散させて一定時間浸漬し、得られた蛍光体を蛍光膜として用いることによって上記目的を達成し得ることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明の蛍光ランプ用蛍光体の回収再生方法及び蛍光ランプは以下の構成からなる。
【0008】
(1)蛍光ランプの蛍光膜から回収された水銀を含む回収蛍光体をpHが2〜5である酸性水溶液からなる蛍光体処理液中に分散させた後、該蛍光体処理液のpHが2より大で以下に達した時、前記回収蛍光体を該蛍光体処理液から分離することによって、該蛍光体処理液から前記回収蛍光体を前記水銀と分別して回収することを特徴とする蛍光ランプ用蛍光体の回収再生方法。
(2)前記回収蛍光体を蛍光体処理液から分離するときの該蛍光体処理液のpHが5〜8であることを特徴とする前記(1)に記載の蛍光ランプ用蛍光体の回収再生方法。
)前記回収蛍光体を前記蛍光体処理液中に分散させてから10〜30分経過後に前記回収蛍光体を該蛍光体処理液から分別することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の蛍光ランプ用蛍光体の回収再生方法。
)前記蛍光体処理液の重量が前記回収蛍光体の重量の3〜10倍であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の蛍光ランプ用蛍光体の回収再生方法。
【0009】
)前記回収蛍光体がY:Eu、(Sr,Ba,Ca,Mg)10(POCl:Euの少なくとも一つを含むことを特徴とする前記(1)〜()のいずれかに記載の蛍光ランプ用蛍光体の回収再生方法。
)前記蛍光体処理液から分別された後の前記回収蛍光体に含まれる水銀の含有量が該蛍光体処理液中に分散させる前の前記回収蛍光体に含まれる水銀の量の20%以下であることを特徴とする前記(1)〜()のいずれかに記載の蛍光ランプ用蛍光体の回収再生方法。
)ガラス管の内壁に蛍光膜を形成してなる蛍光ランプにおいて、前記蛍光膜が前記(1)〜()のいずれかに記載の回収再生方法により得られた蛍光体を含むことを特徴とする蛍光ランプ。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の蛍光ランプ用蛍光体の回収再生方法は、先ず、3波長形蛍光ランプをはじめとする水銀の放電により蛍光膜を発光させるタイプの蛍光ランプの蛍光膜より回収された、水銀、その他若干の夾雑物等の発光特性を阻害する物質を含む回収蛍光体の一定量を、所定の酸性度に調整された酸性水溶液からなる蛍光体処理液(以下、単に処理液という)中に分散させて、これを適宜攪拌しながら一定時間処理液と接触させることによって、処理液が水銀と反応してこれを溶解させることなく、蛍光体粒子と徐々に反応して回収蛍光体の粒子に付着している水銀を剥離、脱落させるので、次いでその処理液から回収蛍光体を水銀と分別して分離することにより再生蛍光体を得るものである。
【0011】
処理液としては酸を希釈した酸性水溶液が用いられる。処理液として用いられる酸の種類については特に制限はないが、環境への影響度が少なく、かつ回収蛍光体が比較的溶解され難い、塩酸、硫酸等の鉱酸や酢酸等の有機酸がより好ましい。上記の酸を、そのpH値が2〜5の範囲になるように調整された酸性水溶液を処理液として用いることによって、再生処理による回収蛍光体へのダメージが少なく、回収再生前の蛍光体の発光特性を保持し得る点で好ましい。
処理液の量は、被処理蛍光体である回収蛍光体に対して3〜10倍量の範囲とするのが再生効率上望ましい。処理液の量が少な過ぎると水銀の除去が不十分となり、逆に処理液が多すぎると回収蛍光体の種類によりその程度は異なるものの回収蛍光体が過剰に溶解する場合があるのでそれぞれ好ましくない。
【0012】
また、処理液から回収蛍光体を分離するまでの時間、すなわち、回収蛍光体を処理液中に分散、浸漬させておく時間(回収蛍光体を蛍光体処理液中に投入してから該処理液から分離するまでの時間。以下、この時間を反応時間ともいう)は、処理液のpH値や回収蛍光体の種類にもよるが、反応時間が短かすぎると水銀の除去が不十分になり、逆に長すぎると蛍光体が過剰に溶解する可能性があるので、10〜30分の範囲とするのが望ましい。
回収蛍光体の種類によっては反応時間を長くすると処理液の酸が徐々に消費されて処理液のpHが次第に上昇し、例えば、回収蛍光体中にY23:Eu蛍光体や(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu蛍光体を含有する場合では、これらの蛍光体の溶解が進行して処理液のpHが8〜9の範囲にまで変化するので、処理液から回収蛍光体を分離するタイミングのもう一つの目安としては、回収蛍光体を分散させた処理液のpHが5〜8の範囲になった時点とすることが必要で、その場合、処理液から回収蛍光体を分離する時点の目安としては上記反応時間よりも処理液のpH値が5〜8の範囲になった時点を優先することが望ましい。
【0013】
本発明の蛍光ランプ用蛍光体の回収再生方法において、最も重要な要素は、用いる蛍光体処理液の酸性度の設定である。前述のように処理液として蛍光体を比較的溶解し易い硝酸を用いたり、硝酸以外の酸を用いる場合でもその酸濃度がpH2より小さい比較的高濃度の酸性水溶液を用いて回収蛍光体に付着した水銀を直接溶解し分離回収する方法では回収蛍光体本体まで溶解し品質的ダメージを与え易いという弊害があるが、pH2〜5に調節された、比較的低濃度の酸性度を有する処理液中に分散させて回収蛍光体と処理液とを接触させるようにすれば、回収蛍光体の本体には影響を与えない程度に、蛍光体の最表面をわずかに溶解することにより、蛍光体表面に付着していた水銀が溶解する前にこれを剥離し、処理液中に脱落させることができる。そのため、本発明の蛍光ランプ用蛍光体の回収再生方法によると、再生蛍光体の品質への影響はなく、水銀をメタルの状態のままで回収できるため、コスト的にも品質的にも、また環境面においても好ましい再生方法である。
【0014】
本発明の回収再生方法により処理される回収蛍光体としては、酸にほとんど溶解しないLaPO4:Ce,Tb(以下LAPという)蛍光体、BaMgAl1017:Eu(以下BAMという)蛍光体や、酸に対する溶解度の低いY23:Eu蛍光体(以下YOXという)、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO46Cl2:Eu蛍光体(以下SCAという)を含む回収蛍光体が推奨され、回収蛍光体中にハロ燐酸カルシウム系蛍光体のような、pH2〜5の酸性水溶液に容易に溶解する蛍光体はできるだけ含有しない方が好ましい。ハロ燐酸カルシウム系蛍光体のようなpH2〜5の酸性水溶液に容易に溶解する蛍光体を含む回収蛍光体を処理した場合には再生蛍光体中の残留水銀濃度が高くなり、特にその含有量が20%以上になると再生蛍光体中の残留水銀の量が著しい。これは処理液中の酸がハロ燐酸カルシウム系蛍光体のようなpH2〜5の酸性水溶液に容易に溶解する蛍光体に消費されてしまい、水銀の除去に利用されなくなるためである。
また回収蛍光体を分散させて処理を終えた処理液は、該処理液中の不純物や回収蛍光体と処理液との反応により生じた不純物を取り除くために、再生蛍光体として該処理液から分離する前に該処理液の電導度がほぼ50μS/cm以下になるまで純水を加えてデカンテーション法で洗浄し、さらにそのスラリーはオープニング100μm以下のメッシュを通過させることによって蛍光体処理液中に含まれる凝集物を除去しておいても良い。
【0015】
次いで、一定時間処理液中に分散させて攪拌し、処理を終え、更に必要に応じて洗浄を終えた処理液から回収蛍光体と、蛍光体から剥離、脱落した水銀とを分別して分離される。処理液から蛍光体と水銀とを分別して分離する方法としては、回収蛍光体を含む処理液を攪拌して該処理液中で懸濁させ、回収蛍光体から剥離した蛍光体よりも比重の大きい水銀が最初に沈降し、蛍光体は未だ沈降せずに該処理液中に分散している時に、該処理液と共にスラリー状態で該処理液内に沈降している水銀成分から分別してから、該スラリー(蛍光体成分を含む処理液)を濾過などの手段で固液分離する方法や、回収蛍光体を含む処理液を攪拌してからそのまま静置しておいてこれを沈降させることによって、比重の大きい水銀から先に沈降させ、その上層に蛍光体が沈降してくるのを待って処理液を除去した後に、固形分の中の上層に沈降している蛍光体を分離する等の方法で行われる。
【0016】
本発明の蛍光ランプは上述の本発明の回収再生方法によって製造された蛍光体がその蛍光膜として使用される外は従来の蛍光ランプと同様であり、使用済みの蛍光ランプの蛍光膜から回収された蛍光体から上述のようにして再生された蛍光体に、必要に応じて新規に製造された未使用の蛍光体を所定量加えた混合蛍光体を外囲器の内面に塗布して蛍光膜とする以外は従来公知の方法によって製造することが出来る。
【0017】
表1は酸の濃度(pH値)の異なる塩酸酸性の処理液に主な蛍光ランプ用蛍光体をそれぞれ単独で分散させ、浸漬する処理を施した後、これを該処理液から分離、回収した時の、蛍光体を各処理液から分離する直前の該処理液のpH値(処理後のpH)とその時の蛍光体の回収率(収率)をそれぞれ示したものであり、いずれの蛍光体についても、蛍光体150gを1.05kgの処理液中に10分間浸漬して処理した場合である。なお、表1には3N硝酸溶液を処理液として用いた時の収率(回収率)も併記してある。
表1から明らかなようにLAPとBAMでは、処理後のpHは処理液のpHとほぼ同じであるのに対し、YOXとSCAでは処理後の該処理液のpHはおよそ5〜8の範囲まで大きく変化している。またYOXおよびSCAではpHが低くなる(酸性度が高くなる)と処理後の収率も低くなっていることから、YOXおよびSCAは酸と反応し、蛍光体表面が次第に溶解するのに対し、LAPおよびBAMは酸と反応(酸に溶解)し難いことを示している。従って、YOXまたはSCAを含有する混合蛍光体をpHの低い酸性水溶液で処理した場合、SCAおよびYOXが溶解し、混合蛍光体中に含まれるSCAおよびYOXの配合量が変化するために混合蛍光体の発光色度が変化し、そのため再度蛍光ランプの蛍光膜用として用いる場合には色度調整の必要が生じ、作業上およびコスト的に不利益になる。
【0018】
【表1】
Figure 0004275461
【0019】
表2は表1で示した、酸性度(pH値)の異なる処理液で処理された各蛍光体を用いてそれぞれ単色の蛍光ランプ(FL40S)の実球を作製し、その光束と光束維持率を未使用の蛍光体(すなわち未だ蛍光ランプに使用されていない同種の蛍光体)を用いた蛍光ランプと比較した結果を示したものである。
【0020】
【表2】
Figure 0004275461
【0021】
表2から明らかなようにLAPとBAMを用いた蛍光ランプでは、光束および光束維持率は未処理の蛍光体を用いた蛍光ランプとほぼ同等であり、LAPおよびBAMは、水銀を溶解除去できるような硝酸溶液でこれを処理しても問題ないこと示している。一方、YOXとSCAを用いた蛍光ランプでは光束および光束維持率は未処理の蛍光体に比べ大きく低下しており、特にSCAを用いた蛍光ランプの低下率は大きい。これはYOXおよびSCAが酸と反応または酸によって溶解することによって蛍光体が劣化することを示しており、YOXまたはSCAを含有する回収蛍光体から水銀を除去する際には、SCAまたはYOX、特にSCAが酸と反応もしくは酸によって溶解しにくい条件で回収再生しなければならないことを示している。
【0022】
また、表2においてYOXおよびSCAを用いた蛍光ランプでは処理液のpHが低くなると光束および光束維持率が低下しており、特にpH1の処理液で再生処理された蛍光体を用いた蛍光ランプにおいては光束及び光束維持率の低下は著しく、このことは処理液のpHが低いほど蛍光体の劣化が大きくなることを示しており、蛍光体処理液のpHは2以上であることが望ましい。
このように、蛍光体表面に付着している水銀を除去する際は、酸の濃度の高い処理液で蛍光体を処理すると、蛍光体が劣化し再使用できなくなってしまうため、水銀を直接溶解するのではなく、水銀そのものは溶解せずに蛍光体の最表面層だけをわずかに溶解するだけで蛍光体の本体には影響を与えない程度の酸濃度の低い酸性水溶液で回収蛍光体を処理することにより、蛍光体表面に付着している水銀を剥離、脱落させて除去することができる。
【0023】
【実施例】
次に、実施例により本発明を説明する。
〔実施例1〕
充分点灯使用され、寿命末期となったFL40S/EX−N型蛍光ランプからガラス内面に塗布形成された蛍光膜を剥がし取った。剥がし取った蛍光膜を純水に分散させ、オープニング100μmのメッシュで篩った後、脱水・乾燥・篩がけの工程を経て蛍光体を回収した。この蛍光体(回収蛍光体)に含まれる水銀濃度は0.3重量%であり、254nmの紫外線で励起し、発光させたときの発光色度はx=0.374、y=0.374で、相対輝度は90%であった。なお相対輝度は、YOX40%、LAP32%、SCA28%からなり、発光色度がx=0.374、y=0.374の未使用の混合蛍光体(標準蛍光体)の輝度を100とした時の相対値である。
なお、蛍光体を回収した上記FL40S/EX−N蛍光ランプにはYOXとLAPとSCAの混合蛍光体が使用されており、ハロ燐酸カルシウム系蛍光体は含まれていない。
【0024】
一方、処理液として塩酸でpH3.0に調整した酸性水溶液を調製し、この処理液105gに上記回収蛍光体15gを攪拌しながら10秒間で投入して分散させた回収蛍光体のスラリーを、さらに攪拌を10分間行った。攪拌終了時の処理液のpHは6.2であった。攪拌終了後直ちに該スラリーをスラリー容器の底に沈降している水銀を残して濾過し蛍光体成分を回収するとともに、該蛍光体スラリー容器底中に沈降している水銀を金属として回収した。
上記のようにして蛍光体スラリー中から回収された蛍光体を100gの純水に分散させ上澄み液の電導度が50μS/cm以下になるまで純水でデカンテーションにより洗浄し、さらにそのスラリーをオープニング40μmのメッシュを通過させてスラリー中に含まれる凝集物を除去した。その後脱水・乾燥・篩の工程を経て蛍光体を再生し実施例1の再生蛍光体を製造した。
【0025】
次に、上述のようにして得た実施例1の再生蛍光体に未使用のYOXとSCAを添加し発光色度を標準蛍光体と同一(発光色度x=0.374、y=0.374)にした実施例1の混合蛍光体にニトロセルロースのラッカーと共に酢酸ブチルを添加し十分に混合して蛍光体を懸濁させたスラリーを調製し、このスラリーをガラス管に塗布して乾燥し、通常の方法で色温度5000Kの実施例1の蛍光ランプ(FL20S/EX−N)を製造した。
標準蛍光体についても同様の方法で蛍光ランプ(FL20S/EX−N)を製造した。
【0026】
〔比較例1〕
混合蛍光体として実施例1の混合蛍光体に代えて、YOX40%、LAP32%、SCA28%からなる発光色度x=0.374、y=0.374の未使用の蛍光体(標準蛍光体)を用いた以外は実施例1の蛍光ランプと同様にして比較例1の蛍光ランプを製造した。
【0027】
〔実施例2〜4〕
実施例1の処理液(pH3.0の酸性水溶液)に代えて、pH2.0、pH4.0、pH5.0の各塩酸酸性水溶液をそれぞれ処理液として用いる以外は実施例1と同様にして実施例2〜4の再生蛍光体を製造した。
また、蛍光膜用の蛍光体として実施例1の再生蛍光体に代えて、実施例2〜4の各再生蛍光体のそれぞれにYOXとSCAを混合していずれの蛍光体も混合後の蛍光体の発光色度が標準蛍光体と同一(発光色度x=0.374、y=0.374)となるようにした実施例2〜4の各混合蛍光体を用いた以外は実施例1の蛍光ランプと同様にして実施例2〜4の蛍光ランプを製造した。
【0028】
〔比較例2〜4〕
実施例1の蛍光体処理液(pH3.0の酸性水溶液)に代えて、pH1.0、pH6.0、pH7.0の各塩酸水溶液をそれぞれ処理液として用いた以外は実施例1と同様にして比較例2〜4の再生蛍光体を製造した。
また、混合蛍光体として、実施例1の再生蛍光体に代えて、比較例2〜4の各再生蛍光体のそれぞれに未使用のYOXとSCAを混合してその発光色度が標準蛍光体と同一(発光色度x=0.374、y=0.374)となるようにした比較例2〜4の混合蛍光体を用いた以外は実施例1の蛍光ランプと同様にして比較例2〜4の蛍光ランプを製造した。
【0029】
表3には上述の実施例1〜4および比較例1〜4の再生蛍光体を製造する際の処理の条件{処理液のpH、被処理蛍光体に対する処理液の量比、反応時間及び処理後のpH(処理液から回収蛍光体を分離する直前時点での処理液のpH)}、粉体の特性(再生蛍光体を波長254nmの紫外線で励起して発光させた時の発光を視感度フイルターを透過させて輝度計で検出することによって求めた粉体輝度、色度)、蛍光ランプの特性(各再生蛍光体を蛍光膜として用いた実施例1〜4及び比較例1〜4の各蛍光ランプの初期光束、光束維持率)及び各再生蛍光体中に含まれるHg量(Hg含有量)を示す。
なお表3において、各蛍光ランプの初期光束(表中、「光束」の欄)は標準蛍光体を使用した比較例1の蛍光ランプの初期光束を100とした時の相対値で示してあり、光束維持率は各ランプを連続点灯した時の1000時間後における光束を、それぞれの蛍光ランプの点灯直後における光束(初期光束)に対する百分率で表した値である。また、回収蛍光体とは実施例2〜4の回収再生処理に供される前の蛍光体である。
【0030】
【表3】
Figure 0004275461
【0031】
表3からわかるように、pH2〜pH5の酸性水溶液を処理液として用いて得られた実施例1〜4の各再生蛍光体は、回収蛍光体と比べたとき発光色度の変化が小さく発光輝度(粉末輝度)が改善されており、水銀も十分に除去されていた。また、本発明の方法で再生された実施例1〜4の各蛍光体を色度調整して蛍光膜として用いた本発明の実施例1〜4の蛍光ランプは、未使用の標準蛍光体のみを蛍光膜とする比較例1の蛍光ランプに対する初期光束の低下の程度が少なく、光束維持率は同等であった。
【0032】
一方、pH1.0の酸性水溶液を処理液として用いて回収蛍光体を再生することによって得られた比較例2の再生蛍光体では、水銀は十分に除去されているが、回収蛍光体と比べたとき発光色度の変化が大きく、比較例2の蛍光体を色度調整して蛍光膜として用いた比較例2の蛍光ランプは、未使用の標準蛍光体のみを蛍光膜とする比較例1の蛍光ランプや実施例1〜4の本発明の蛍光ランプと比べて初期光束が低く、光束維持率も低くなっていた。
さらにpH6.0およびpH7.0の酸性水溶液を処理液として用い再生された比較例3〜4の再生蛍光体では、回収蛍光体と比べたとき発光色度の変化は小さいが、発光輝度(粉末輝度)が改善されていない上、水銀の除去も不完全であった。さらに比較例3〜4の蛍光体を色度調整して蛍光膜として用いた比較例3〜4の蛍光ランプは、未使用の標準蛍光体のみを蛍光膜とする比較例1の蛍光ランプや実施例1〜4の本発明の蛍光ランプと比べ光束維持率は同等であるが、初期光束は大幅に低くなっていた。
【0033】
〔実施例5〜7〕
蛍光体処理液として実施例1の酸性水溶液を105g(回収蛍光体の7倍量)用いる代わりに、それぞれ45g(回収蛍光体の3倍量)、75g(回収蛍光体の5倍量)及び150g(回収蛍光体の10倍量)の酸性水溶液をそれぞれ処理液として用いる以外は実施例1と同様にして実施例5〜7の再生蛍光体を製造した。
また、混合蛍光体として実施例5〜7の各再生蛍光体に未使用のYOXとSCAを混合し、それぞれの発光色度を標準蛍光体と同一(発光色度x=0.374、y=0.374)にした実施例5〜7の混合蛍光体をそれぞれ用いる以外は実施例1の蛍光ランプと同様にして実施例5〜7の蛍光ランプを製造した。
【0034】
表4に上述の実施例5〜7の再生蛍光体を製造する際の処理の条件、処理後のpH、粉体の特性、蛍光ランプの特性及び再生蛍光体中に含まれるHg量(Hg含有量)を実施例1及び比較例1と共に示す。なお、表4に示されているこれらの各特性項目の意味するところは表3の場合と同様である。
なお表4において、各蛍光ランプの初期光束及び光束維持率は実施例1〜4と同様にして測定した値である。
【0035】
【表4】
Figure 0004275461
【0036】
表4からわかるように、蛍光体に対して3倍量から10量の酸性水溶液を蛍光体処理液として用いて得られた実施例1および5〜7の各再生蛍光体は、回収蛍光体と比べたとき発光色度の変化が小さく発光輝度(粉末輝度)が改善されており、水銀も充分に除去されていた。また本発明の方法で再生された蛍光体を色度調整して蛍光膜として用いた本発明の実施例1、5〜7の各蛍光ランプは、未使用の標準蛍光体のみを蛍光膜とする比較例1の蛍光ランプと比べて初期光束の低下の程度が少なく、光束維持率は同等であった。
【0037】
〔実施例8〕
処理液中に回収蛍光体を添加して攪拌する時間(反応時間)を10分ではなく30分とする以外は実施例1と同様にして実施例8の再生蛍光体を製造した。
また、混合蛍光体として実施例1の混合蛍光体に代えて実施例8の再生蛍光体に未使用のYOXとSCAを混合して発光色度を標準蛍光体と同一(発光色度x=0.374、y=0.374)にした実施例8の混合蛍光体を用いる以外は実施例1の蛍光ランプと同様にして実施例8の蛍光ランプを製造した。
【0038】
表5には上述の実施例8の再生蛍光体を製造する際の 処理の条件、処理後のpH、粉体の特性、蛍光ランプの特性及び再生蛍光体中に含まれるHg量(Hg含有量)を実施例1及び比較例1と共に示す。なお、表5に示されているこれらの各特性項目の意味するところは表3の場合と同様である。また、表5において、各蛍光ランプの初期光束及び光束維持率は実施例1〜4と同様にして測定した値である。
【0039】
【表5】
Figure 0004275461
【0040】
表5からわかるように、30分間攪拌し処理液中に浸漬して処理された実施例8の再生蛍光体は、回収蛍光体と比べたとき発光色度の変化が小さく発光輝度(粉末輝度)が改善されており、水銀も除去されていた。また本発明の方法で再生された蛍光体を色度調整して蛍光膜として用いた実施例8の蛍光ランプは、未使用の標準蛍光体のみを蛍光膜とする比較例1の蛍光ランプと比べて初期光束の低下の程度が少なく、光束維持率は同等であった。
【0041】
〔実施例9〕
実施例1の回収蛍光体14.25gに5%のハロ燐酸カルシウム蛍光体0.75gを加えた混合蛍光体を回収蛍光体として用いた以外は実施例1と同様にして実施例9の再生蛍光体を製造した。
表6に上述の実施例9の再生蛍光体を製造する際の処理の条件、処理後のpH及び再生蛍光体中に含まれるHg量(Hg含有量)を実施例1の場合と共に示す。なお、表6に示されているこれらの各特性項目の意味するところは表3の場合と同様である。
【0042】
【表6】
Figure 0004275461
表6からわかるように、ハロ燐酸カルシウム蛍光体の混合割合が5%の場合の再生蛍光体では水銀は十分に除去されていた。
【0043】
【発明の効果】
本発明の方法により、使用済み蛍光ランプの蛍光膜から回収された蛍光体を再生処理することにより得られた再生蛍光体を蛍光ランプの蛍光膜として用いた場合、使用前の蛍光ランプの発光色や演色性等の発光特性と同等の発光特性を維持し、また、蛍光ランプの光束の低下がなくて、光束維持率の高い蛍光ランプを得ることが可能となる。

Claims (7)

  1. 蛍光ランプの蛍光膜から回収された水銀を含む回収蛍光体をpHが2〜5である酸性水溶液からなる蛍光体処理液中に分散させた後、該蛍光体処理液のpHが2より大で以下に達した時、前記回収蛍光体を該蛍光体処理液から分離することによって、該蛍光体処理液から前記回収蛍光体を前記水銀と分別して回収することを特徴とする蛍光ランプ用蛍光体の回収再生方法。
  2. 前記回収蛍光体を蛍光体処理液から分離するときの該蛍光体処理液のpHが5〜8であることを特徴とする請求項1に記載の蛍光ランプ用蛍光体の回収再生方法。
  3. 前記蛍光体処理液の重量が前記回収蛍光体の重量の3〜10倍であることを特徴とする請求項1または2に記載の蛍光ランプ用蛍光体の回収再生方法。
  4. 前記回収蛍光体を前記蛍光体処理液中に分散させてから10〜30分経過後に前記回収蛍光体を該蛍光体処理液から分別することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光ランプ用蛍光体の回収再生方法。
  5. 前記回収蛍光体がY:Eu、(Sr,Ba,Ca,Mg)10(POCl:Euの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光ランプ用蛍光体の回収再生方法。
  6. 前記蛍光体処理液から分別された後の前記回収蛍光体に含まれる水銀の含有量が該蛍光体処理液中に分散させる前の前記回収蛍光体に含まれる水銀の量の20%以下であることを特徴とする請求項1〜のいずれか一項に記載の蛍光ランプ用蛍光体の回収再生方法。
  7. ガラス管の内壁に蛍光膜を形成してなる蛍光ランプにおいて、前記蛍光膜が請求項1〜のいずれか一項に記載の回収再生方法により得られた蛍光体を含むことを特徴とする蛍光ランプ。
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