JP4275394B2 - 注射用シロスタゾール水性製剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬製剤に関する。さらに詳しくは、本発明はシロスタゾールまたはその薬理学的に許容され得る塩を有効成分として含有する注射用水性製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近公表された厚生労働省厚生科学研究班による治療エビデンス集には、急性心筋梗塞や脳梗塞の患者に対する急性期の薬物療法の第一選択薬として、抗血小板薬を選択することが示されている。ところが、現在市販の抗血小板薬は全て経口製剤なので、急性心筋梗塞や脳梗塞を起こしている患者に対する、特に急性期における投与が困難であり、また経口投与では速効性が期待できない等の重大な問題点がある。
上述のように現在市販の抗血小板薬が全て経口製剤であるのは、各製剤に含まれる有効成分のいずれも水に難溶であるという理由による。抗血小板薬として汎用されているシロスタゾールも例外ではなく、水に対する溶解度が室温で3μg/mL程度にすぎず、ほとんど水に溶けない。
【0003】
上記の通りシロスタゾールは水に難溶であるから、該化合物を有効成分として含有する水性製剤についての記載は殆どないが、特許文献1にシロスタゾールを有効成分として含み、さらに、シクロデキストリン類は含有されていないが、ポリエチレングリコール4000とポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを含有する水性注射剤が記載されている。しかし、かかる水性製剤は再現性が必ずしも良くなく、たとえかかる製剤を調製できたとしても、暫く放置するとシロスタゾールが析出してしまうことがあり得るため現実的ではなかった。そこで、製剤を長時間保存してもシロスタゾールが析出することなく、用時溶解の必要がないレディー・トゥ・ユーズな製剤を提供することは、シロスタゾールを含有する注射用水性製剤の取扱いの利便性を向上させる。
【0004】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、シクロデキストリン類を添加することにより、シロスタゾールまたはその薬理学的に許容され得る塩の水への溶解度が思いがけない程度に向上するという知見を得、先に特許出願した(特許文献2、3)。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−175864号公報
【特許文献2】
特願2002−127065号
【特許文献3】
国際特許出願PCT/JP02/05705
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、シロスタゾールまたはその薬理学的に許容され得る塩を医薬用途のために充分量含有し、溶液状態が経時的に安定な注射用水性製剤を提供することを目的とする。
本発明は、さらに、シロスタゾールまたはその薬理学的に許容され得る塩を水性媒体へ溶解させるための溶解剤の含有量が可及的に少ない製剤を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討したところ、シクロデキストリンの糖結合誘導体を存在させることにより、その量が少量であってもシロスタゾールまたはその薬理学的に許容され得る塩の水性媒体への溶解度が思いがけない程度に向上することを知見した。シクロデキストリンの糖結合誘導体は、少量であっても、他のシクロデキストリン類と同等またはそれ以上に、シロスタゾールまたはその薬理学的に許容され得る塩を有効成分とする注射用水性製剤の溶液状態における経時的な安定性を向上させることができることも知見した。
本発明者らは、さらに検討を重ね、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1) シロスタゾールまたはその薬理学的に許容され得る塩と、シクロデキストリンの糖結合誘導体を含有することを特徴とする注射用シロスタゾール水性製剤、
(2) シロスタゾールまたはその薬理学的に許容され得る塩が、0.01〜10mg/mLの濃度で含有されていることを特徴とする前記(1)に記載の注射用シロスタゾール水性製剤、
(3) シクロデキストリンの糖結合誘導体が、100〜300mg/mLの濃度で含有されていることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の注射用シロスタゾール水性製剤、
(4) シクロデキストリンの糖結合誘導体が、シロスタゾール1モルに対し20〜70倍モル含有されていることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の注射用シロスタゾール水性製剤、
に関する。
【0009】
また、本発明は、
(5) シクロデキストリンの糖結合誘導体が、1分子のβ−シクロデキストリンにグルコース、マルトースおよびマンノースからなる群から選ばれる少なくとも1種の糖が1分子以上結合している誘導体である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の注射用シロスタゾール水性製剤、
(6) シクロデキストリンの糖結合誘導体が、少なくとも1つの塩を形成していてもよいカルボキシル基を有していることを特徴とする前記(5)に記載の注射用シロスタゾール水性製剤、
(7) シクロデキストリンの糖結合誘導体が、6−O−α−D−グルコシル−β−シクロデキストリン、6−O−α−マルトシル−β−シクロデキストリン、6−マンノシル−β−シクロデキストリン、ジ−α−マルトシル−β−シクロデキストリンならびに6−O−シクロマルトヘプタオシル−(6→1)−α−D−グルコシル−(4→1)−O−α−D−グルクロン酸およびその塩からなる群から選ばれる1種以上である前記(5)に記載の注射用シロスタゾール水性製剤、
に関する。
【0010】
また、本発明は、
(8) シクロデキストリンの糖結合誘導体が、6−O−シクロマルトヘプタオシル−(6→1)−α−D−グルコシル−(4→1)−O−α−D−グルクロン酸またはその塩である前記(6)に記載の注射用シロスタゾール水性製剤、
(9) 前記(1)〜(8)のいずれかに記載のシロスタゾール水性製剤からなる急性心筋梗塞または脳梗塞の急性期の症状改善剤、
に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に係る注射用水性製剤は、有効成分として(a)水性媒体、(b)シロスタゾールまたはその薬理学的に許容され得る塩、および(c)シロスタゾールまたはその薬理学的に許容され得る塩の水性媒体への溶解剤として、シクロデキストリンの糖結合誘導体を含むことを特長とする水性製剤である。
シロスタゾールは、下記式で表される6−[4−(1−シクロヘキシル−1,2,3,4−テトラゾール−5−イル)ブトキシ]−3,4−ジヒドロカルボスチリルである。
【0012】
【化1】
【0013】
上記シロスタゾールの薬理学的に許容され得る塩は、常法に従って、上記シロスタゾールに薬理学的に許容され得る酸を作用させることによって容易に形成され得る。該薬理学的に許容され得る酸としては、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸等の無機酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸等の有機酸を挙げることができる。
【0014】
前記シクロデキストリンの糖結合誘導体としては、下記式;
【化2】
(式中、nは6〜12を満足する整数を示す。R1、R2およびR3は個々の繰り返し単位中で同一または異なって、それぞれ水素、糖残基、アルキル基、モノヒドロキシアルキル基、ジヒドロキシアルキル基、スルホアルキル基またはカルボキシアルキル基を示し、R1、R2およびR3のうち少なくとも1つが糖残基である。)
で表される化合物が挙げられる。
【0015】
上記一般式において、R1〜R3で示される糖残基としては、例えばC3−24糖残基(例えば、エリスロシル、トレオシル、アラビノシル、リボシル、グルコシル、ガラクトシル、グリセロ−グルコ−ヘプトシル、マルトシル、ラクトシル、マルトトリオシル、マンノシル、ジマルトシル等)、好ましくはC6−24糖残基(例えば、グルコシル、ガラクトシル、グリセロ−グルコ−ヘプトシル、マルトシル、ラクトシル、マルトトリオシル、ジマルトシル等),特に好ましくはC6−12糖残基(例えば、グルコシル、ガラクトシル、グリセロ−グルコ−ヘプトシル、マルトシル、ラクトシル等)が用いられる。R1〜R3で示される糖残基としては、例えばエリスロシル、トレオシル、アラビノシル、リボシル、ガラクトシル、グリセロ−グルコ−ヘプトシル、ラクトシル、マルトトリオシル、マンノシル、ジマルトシル等が重要である。R1〜R3で示される糖残基としては、グルコシル、マルトシル、マンノシルまたはジマルトシルが好ましく、マンノシルまたはジマルトシルがより好ましい。
【0016】
上記一般式において、R1〜R3で示されるアルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル等のC1−4アルキル基が挙げられる。R1〜R3で示されるモノヒドロキシアルキル基としては、例えばヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル等のモノヒドロキシ−C1−4アルキル基が挙げられる。R1〜R3で示されるジヒドロキシアルキル基としては、例えばジヒドロキシメチル、2,2−ジヒドロキシエチル、ジヒドロキシプロピル等のジヒドロキシ−C1−4アルキル基が挙げられる。R1〜R3で示されるスルホアルキル基としては、例えばスルホメチル、2−スルホエチル、スルホブチル等のスルホ−C1−4アルキル基が挙げられる。R1〜R3で示されるカルボキシアルキル基としては、例えばカルボキシメチル、2−カルボキシエチル等のカルボキシ−C1−4アルキル基が挙げられる。
【0017】
本発明で用いるシクロデキストリンの糖結合誘導体としては、上記一般式において、n=6であるα−シクロデキストリンの糖結合誘導体、n=7であるβ−シクロデキストリンの糖結合誘導体、n=8であるγ−シクロデキストリンの糖結合誘導体またはn=9であるδ−シクロデキストリンの糖結合誘導体を用いるのが好ましい。前記α,β,γ,δ−シクロデキストリンの糖結合誘導体としては、シクロデキストリン環の少なくとも1つのグルコース単位の6−O位に糖残基を有する誘導体がより好ましい。本明細書において、「α,β,γ,δ−シクロデキストリン」は、「α−シクロデキストリン,β−シクロデキストリン,γ−シクロデキストリンまたはδ−シクロデキストリン」を意味する。
【0018】
本発明で用いるシクロデキストリンの糖結合誘導体として、具体的には、例えば6−O−α−D−グルコシル−α,β,γ,δ−シクロデキストリン、6−O−α−D−マルトシル−α,β,γ,δ−シクロデキストリン、6−マンノシル−α,β,γ,δ−シクロデキストリン、ジ−α−マルトシル−α,β,γ,δ−シクロデキストリンまたはマルトトリオシル−α,β,γ,δ−シクロデキストリン等が挙げられる。これらの中で、6−O−α−D−グルコシル−β−シクロデキストリン、6−O−α−マルトシル−β−シクロデキストリン、6−マンノシル−β−シクロデキストリンまたはジ−α−マルトシル−β−シクロデキストリンがより好ましく、6−マンノシル−β−シクロデキストリンまたはジ−α−マルトシル−β−シクロデキストリンがさらに好ましい。
【0019】
本発明で用いるシクロデキストリンの糖結合誘導体としては、少なくとも1つのカルボキシル基を有している前記誘導体も好適な例として挙げられる。前記カルボキシル基は、遊離カルボキシル基である場合のみならず、アルカリ金属(例、リチウム、ナトリウムもしくはカリウムなど)またはアルカリ土類金属(例、カルシウムもしくはマグネシウムなど)などとの塩を形成していてもよい。
シクロデキストリンの糖結合誘導体において、塩を形成していてもよいカルボキシル基の結合位置は特に限定されないが、シクロデキストリンに結合している糖残基のヒドロキシメチル基の少なくとも1つがカルボキシル基に酸化されている誘導体(以下、分岐デキストリン−カルボン酸誘導体とも称する。)またはその塩が好ましい。
【0020】
少なくとも1つのカルボキシル基を有しているシクロデキストリンの糖結合誘導体としては、例えば、6−O−シクロマルトヘキサオシル−(6→1)−α−D−グルコシル−(4→1)−O−α−D−グルクロン酸、6−O−シクロマルトヘプタオシル−(6→1)−α−D−グルコシル−(4→1)−O−α−D−グルクロン酸、6−O−シクロマルトオクタオシル−(6→1)−α−D−グルコシル−(4→1)−O−α−D−グルクロン酸、6−O−シクロマルトヘキサオシル−(6→1)−α−D−グルクロン酸、6−O−シクロマルトヘプタオシル−(6→1)−α−D−グルクロン酸、6−O−シクロマルトオクタオシル−(6→1)−α−D−グルクロン酸、2−O−(6−シクロマルトヘキサオシル)−酢酸、2−O−(6−シクロマルトヘプタオシル)−酢酸、2−O−(6−シクロマルトオクタオシル)−酢酸、3−O−(6−シクロマルトヘプタオシル)−プロピオン酸、2−ヒドロキシ−3−O−(6−シクロマルトヘプタオシル)−プロピオン酸、6−O−シクロマルトヘプタオシル−O−α−D−マルトシル−(4→1)−O−α−D−グルクロン酸、または7A,7C−ジ−O−[α−D−グルクロニル−(1→4)−O−α−D−グルコシル]−(1→6)−マルトヘプタオースなどを例示できる。
【0021】
上記6−O−シクロマルトヘキサオシル−(6→1)−α−D−グルコシル−(4→1)−O−α−D−グルクロン酸、6−O−シクロマルトヘプタオシル−(6→1)−α−D−グルコシル−(4→1)−O−α−D−グルクロン酸、および6−O−シクロマルトオクタオシル−α−D−グルコシル−(4→1)−O−α−D−グルクロン酸は、それぞれα−シクロデキストリン(グルコース単位数6)、β−シクロデキストリン(グルコース単位数7)およびγ−シクロデキストリン(グルコース単位数8)のシクロデキストリン環の1つのグルコース単位にマルトースがα−(1→6)結合し、該マルトースの末端グルコースの6位ヒドロキシメチル基がカルボキシル基に酸化されてグルクロン酸が形成されている化合物である。
【0022】
前記6−O−シクロマルトヘキサオシル−(6→1)−α−D−グルクロン酸、6−O−シクロマルトヘプタオシル−(6→1)−α−D−グルクロン酸および6−O−シクロマルトオクタオシル−(6→1)−α−D−グルクロン酸は、それぞれα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンのシクロデキストリン環の1つのグルコース単位にグルコースがα−(1→6)結合し、さらに該分岐グルコースの6位ヒドロキシメチル基がカルボキシル基に酸化されてグルクロン酸が形成されている化合物である。
前記2−O−(6−シクロマルトヘキサオシル)−酢酸、2−O−(6−シクロマルトヘプタオシル)−酢酸、2−O−(6−シクロマルトオクタオシル)−酢酸は、それぞれα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンのシクロデキストリン環の1つのグルコース単位に分岐してカルボキシメチル基が結合している化合物である。
本発明においては、6−O−シクロマルトヘプタオシル−(6→1)−α−D−グルコシル−(4→1)−O−α−D−グルクロン酸またはその塩(好ましくは、ナトリウム塩)を用いることが特に好ましい。
【0023】
上記シクロデキストリンの糖結合誘導体は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。また、シクロデキストリンの糖結合誘導体がカルボキシル基を有している場合、遊離のカルボキシル基を有するシクロデキストリンの糖結合誘導体と塩を形成しているカルボキシル基を有するシクロデキストリンの糖結合誘導体が混合した状態で使用してもよい。上記シクロデキストリンの糖結合誘導体としては、グルコシル−α−シクロデキストリン、グルコシル−β−シクロデキストリン、グルコシル−γ−シクロデキストリン、マルトシル−α−シクロデキストリン、マルトシル−β−シクロデキストリンおよびマルトシル−γ−シクロデキストリンを除くシクロデキストリンの糖結合誘導体が好ましい。
本発明で用いるシクロデキストリンの糖結合誘導体は、公知の方法に従って容易に製造することができる。例えば、分岐デキストリン−カルボン酸誘導体またはその塩は、特開平7−76594号公報に記載されており、該公報に記載の方法によって製造することができる。
【0024】
本発明の注射用水性製剤における水性媒体としては、水または水を含有する媒体が挙げられる。水としては、通常滅菌水、好ましくは発熱性物質が含有されていない滅菌水が使用される。水を含有する媒体としては、医薬製剤において用いられている公知の溶媒であればよく、例えば、生理食塩水、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)または乳酸配合リンゲル液などが挙げられる。また、本発明に係る注射用水性製剤は、上述のような溶液状態の注射用水性製剤を凍結乾燥または減圧乾燥など公知の乾燥方法により乾燥して粉末状または顆粒状にし、用時に上述の水性媒体に溶解する形態の製剤であってもよい。
【0025】
本発明に係る注射用水性製剤において、シロスタゾールまたはその薬理学的に許容される塩の含有量は、塩の種類または製剤の使用目的などにより異なるので一概には言えないが、上記有効成分の濃度が約0.01〜10mg/mL程度、好ましくは約0.05〜5mg/mL程度、より好ましくは約0.1〜3mg/mL程度、さらに好ましくは約0.5〜2mg/mL程度であることが好ましい。なお、本発明の注射用水性製剤が上述のような用時溶解製剤の形態である場合、上記シロスタゾールまたはその薬理学的に許容される塩の濃度は、該有効成分を水性媒体に溶解したときの濃度をさす。
【0026】
本発明に係る注射用水性製剤においてシクロデキストリンの糖結合誘導体の含有量は、糖の種類または製剤の使用目的などにより異なるので一概には言えないが、約100〜300mg/mL程度、好ましくは約110〜250mg/mL程度、より好ましくは約120〜240mg/mL程度である。また、シクロデキストリンの糖結合誘導体の含有量は、シロスタゾール1モルに対し約20〜70倍モル程度、好ましくは約25〜65倍モル程度、より好ましくは約30〜60倍モル程度である。
【0027】
本発明に係る注射用水性製剤においては、上記(a)シロスタゾールまたはその薬理学的に許容され得る塩および(b)シクロデキストリンの糖結合誘導体の他に、さらに他の添加剤を含有させてもよい。そのような他の添加剤としては、注射用水性製剤において、当技術分野で通常使用されている添加剤を適宜用いることができる。
上記添加剤としては、具体的には、等張化剤、安定化剤、緩衝剤、保存剤、キレート剤、抗酸化剤、無痛化剤または溶解補助剤などが挙げられる。等張化剤としては、例えば、ブドウ糖、ソルビトール、マンニトール等の糖類、塩化ナトリウム、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。安定化剤としては、例えば亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。緩衝剤としては、例えば、ホウ酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酒石酸緩衝剤、酢酸緩衝剤などが挙げられる。保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、ベンジルアルコール、クロロクレゾール、フェネチルアルコール、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。キレート剤としては、例えば、エデト酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。抗酸化剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。無痛化剤としては、例えばアルブミン、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール、リドカイン塩酸塩、ベンジルアルコールなどが挙げられる。溶解補助剤としては、例えば、デキストラン、ポリビニルピロリドン、安息香酸ナトリウム、エチレンジアミン、サリチル酸アミド、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油誘導体などが挙げられる。中でも、デキストランおよびポリビニルピロリドンから選ばれる少なくとも1種の溶解補助剤を配合すれば、本発明の注射用水性製剤の溶解安定性(析出防止)をより向上させることができるので好ましい。これら溶解補助剤の配合量は特に限定されず、シロスタゾールの量やシクロデキストリンの糖結合誘導体の量に応じて適宜必要量を選択できる。
【0028】
本発明の注射用水性製剤には、pHを調整するために、当技術分野で通常用いられている種々のpH調整剤が含有されていても良い。pH調整剤は、酸類であっても塩基類であってもよい。具体的には、酸類としては、例えば、アスコルビン酸、塩酸、グルコン酸、酢酸、乳酸、ホウ酸、リン酸、硫酸、酒石酸、クエン酸などが挙げられる。塩基類としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどが挙げられる。その他のpH調整剤として、グリシン、ヒスチジン、ε-アミノカプロン酸などのアミノ酸類なども挙げられる。
【0029】
本発明に係る注射用水性製剤は、常法により製造できる。例えば、まず、水性媒体に、本発明に係る注射用水性製剤に含有される成分(以下、含有成分という)を溶解させる。含有成分の混合順序は特に問わず、全ての含有成分を同時に混合してもよいし、一部の含有成分のみを先に上記水性媒体に溶解し、その後、残りの含有成分を溶解させてもよい。より好ましくは、上述したような水性媒体にシクロデキストリンの糖結合誘導体を溶解し、これにシロスタゾールまたはその薬理学的に許容される塩を溶解するのが好ましい。さらに、所望により上述したような他の添加剤を混合してもよく、その混合順序は特に限定されない。
【0030】
ついで、得られた溶液を、通常、例えばメンブランフィルターによるろ過滅菌、オートクレーブによる加圧熱滅菌、間欠滅菌法等による熱滅菌処理に施す。なかでも、ろ過滅菌を行うのが好ましい。このようにして得られる溶液は、pHが約6〜8程度であることが好適である。
【0031】
本発明に係る注射用水性製剤が溶液状態である場合は、上記のようにして得られた滅菌済みの溶液を例えばアンプルなどの容器に充填後、アンプルの場合は熔閉する。
本発明においては、シクロデキストリンの糖結合誘導体を含有することにより上述した有効成分の水性媒体への溶解度が向上するので、シクロデキストリンの糖結合誘導体を含有させない場合と比較して、有効成分を製剤中に高濃度に含有させることができる。その結果、有効成分を有効量投与するために必要な投与量を減ずることができるという利点がある。その結果、例えば、有効成分を有効量投与するのに、本発明に係る注射用水性製剤を10mLのワンショット注射剤とすることも可能になる。
【0032】
本発明に係る注射用水性製剤を用時溶解製剤の形態とする場合は、上述と全く同様にして含有成分を含む溶液を作製し、上述のような滅菌後、該溶液を粉末または顆粒とする。溶液を粉末・顆粒とする方法は、公知の方法を用いてよく、例えば凍結乾燥や減圧乾燥などの公知の乾燥方法を用いるのが好ましく、中でも凍結乾燥を用いるのがより好ましい。
【0033】
本発明に係る注射用水性製剤としては、より具体的には、静脈内注射剤、動脈内注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉内注射剤、脊髄腔内注射剤または腹腔内注射剤等が挙げられる。
【0034】
本発明に係る注射用水性製剤は、特に制限はなく、患者の年令、性別その他の条件、疾患の程度などに応じた方法で投与される。例えば、単独で静脈内、動脈内、筋肉内、皮内、皮下、脊髄腔内または腹腔内などに投与される。また、本発明に係る注射用水性製剤は輸液と混和でき、本発明に係る注射用水性製剤と輸液との混合物として、特に静脈内に投与することもできる。輸液は特に限定されないが、商業的に入手可能なまたは通常の輸液が使用される。輸液の具体例としては、ブドウ糖注射液、キシリトール注射液、D−マンニトール注射液、フルクトース注射液、生理食塩液、デキストラン40注射液、デキストラン70注射液、アミノ酸注射液、リンゲル液、乳酸リンゲル液などが挙げられる。
【0035】
本発明に係る注射用水性製剤の投与量は、用法、患者の年令、性別その他の条件、疾患の程度などにより適宜選択される。通常は、シロスタゾールまたはその薬理学的に許容される塩の量が体重1kg当り約1μg〜100mg程度となるように1日当りの投与量を選択するのがよい。
【0036】
本発明に係る注射用水性製剤は、血小板凝集抑制作用、ホスホジエステラーゼ(PDE)の阻害作用、抗潰瘍作用、降圧作用および消炎作用を有し、抗血栓症剤、脳循環改善剤、消炎剤、抗潰瘍剤、降圧剤、抗喘息剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤などとして有用である。本発明に係る注射用水性製剤は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療剤としても有用である。特に、急性心筋梗塞または脳梗塞の急性期の症状改善剤として有用である。
【0037】
【実施例】
以下、製剤例を実施例として挙げるが、本発明はこれに限定されないことは言うまでもない。
〔製剤例1〕
注射用水に6−O−α−D−グルコシル−β−シクロデキストリンを溶解し、更にシロスタゾール、亜硫酸水素ナトリウムおよびパラオキシ安息香酸メチルを溶解し、下記の濃度に調製した。得られた注射液を0.22μmのメンブランフィルターで濾過し、 10mLずつガラスアンプルに充填、熔閉して、最終製品とした。
この最終製品は、1年間常温で放置しても、外観変化は全く観察されない。
6−O−α−D−グルコシル−β−シクロデキストリン 176g/L
シロスタゾール 1g/L
亜硫酸水素ナトリウム 10g/L
パラオキシ安息香酸メチル 20g/L
【0038】
〔製剤例2〕
6−O−α−D−グルコシル−β−シクロデキストリンの代わりに、6−O−α−マルトシル−β−シクロデキストリン197g/Lを用いたほかは製剤例1と同様にして製造した。この最終製品は、1年間常温で放置しても、外観変化は全く観察されない。
【0039】
〔製剤例3〕
6−O−α−D−グルコシル−β−シクロデキストリンの代わりに、6−マンノシル−β−シクロデキストリン120g/Lを用いたほかは製剤例1と同様にして最終製品を得た。この最終製品は、1年間常温で放置しても、外観変化は全く観察されない。
【0040】
〔製剤例4〕
6−O−α−D−グルコシル−β−シクロデキストリンの代わりに、ジ−α−マルトシル−β−シクロデキストリン240g/Lを用いたほかは製剤例1と同様にして最終製品を得た。この最終製品は、1年間常温で放置しても、外観変化は全く観察されない。
【0041】
【発明の効果】
本発明に係る注射用水性製剤においては、水難溶性である有効成分のシロスタゾールまたはその薬理学的に許容される塩が、シクロデキストリンの糖結合誘導体を共存させることにより、実用的な濃度で水性媒体に溶存している。さらに、本発明に係る注射用水性製剤は溶液状態における経時的な安定性に優れており、例えば、長時間保存している間に上記有効成分が析出してくること等が実質的にない。本発明は、レディー・トゥ・ユーズな水性製剤はもちろん、用時溶解する固形注射製剤も提供することができる。そして、本発明によれば、例えば急性期の患者が服用しにくい等の経口製剤のみしか存在しなかったことによる問題点が解決され、例えば急性心筋梗塞や脳梗塞の患者に対して投与しやすく、かつ速効性のある注射製剤を提供できる。従って、本発明製剤は、特に急性期の患者の処置に極めて有用である。
【0042】
シクロデキストリンの糖結合誘導体は、その添加量が少なくても、他のシクロデキストリン類と同等またはそれ以上に、シロスタゾールまたはその薬理学的に許容され得る塩の水性媒体への溶解度を増加させ、シロスタゾールまたはその薬理学的に許容され得る塩を有効成分として含有する注射用水性製剤の溶液状態における経時的な安定性を向上させることができる。その結果、シロスタゾールまたはその薬理学的に許容され得る塩の水性媒体への溶解剤の含有量を少なくすることができるため、一回の投与量が少なくなり、患者のコンプライアンスを向上することができる。加えて、本発明の注射用水性製剤をより安価に提供することもできる。
Claims (3)
- シロスタゾールまたはその薬理学的に許容され得る塩と、6−O−α−D−グルコシル−β−シクロデキストリン、6−O−α−マルトシル−β−シクロデキストリン、6−マンノシル−β−シクロデキストリンならびにジ−α−マルトシル−β−シクロデキストリンおよびその塩からなる群から選ばれる1種以上であるシクロデキストリンの糖結合誘導体を含有し、シロスタゾール1モルに対し、シクロデキストリンの糖結合誘導体が25〜70倍モル含有されていることを特徴とする注射用シロスタゾール水性製剤。
- シロスタゾールまたはその薬理学的に許容され得る塩が、0.01〜10mg/mLの濃度で含有されていることを特徴とする請求項1に記載の注射用シロスタゾール水性製剤。
- シクロデキストリンの糖結合誘導体が、100〜300mg/mLの濃度で含有されていることを特徴とする請求項1に記載の注射用シロスタゾール水性製剤。
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