JP4275210B2 - ラジアルタイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はラジアルタイヤに関し、さらに詳しくは、ベルトがナイロンコードおよびポリエステルコードにより補強された特定構造のベルト補強層を有し、車両内のロードノイズを低減とタイヤの転がり抵抗性の減少との双方を満足させたラジアルタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の車輌の高級化、高品質化に伴い、特に乗用車においては車輌の低振動化、乗心地性の改良が急激に進みつつある中、タイヤとしての要求特性にも低騒音、高乗心地化が求められている。
すなわち、乗心地の改良と共に、特に車内に生じるノイズの低減が望まれており、かかるノイズの一つとして、走行中のタイヤが路面の凹凸をひろい、その振動が伝達されて車内の空気を振動させることに基づいて発生するいわゆるロードノイズの改良要求は極めて高くなってきている。
また一方、車輌の低燃費変化、低公害化が進むなか、タイヤに対する低転がり抵抗性の要求も強い。
【0003】
従来より存在するロードノイズ低減方法としては、最も基本的には(1)タイヤトレッド部のゴムを軟化させる手法、(2)タイヤカーカスの形状を変化させることによりベルト層の張力を強化させる手法、(3)交差ベルト層の全部または両端部を周方向に配置されたコードをゴム引きした例えばナイロンコードの補強層で、挟持することによりベルト周方向剛性を強化させる手法、および該コード補強層を周上でジョイントをなくすためにラセン状にベルト層外側に巻きつける手法(例えば、特開平6−24208)を挙げることができる。
これらは、ごく一般的な手法として長所短所をそれぞれ有するため、目的に応じて各手法を選択あるいは、組み合わせて用いられており、特に(3)の手法はロードノイズ低減より、むしろ高速耐久性向上を満たす手法としても現在の高性能、高品質タイヤにおいては、特に主流となりつつもあるものである。
【0004】
また、特殊な方法としては(4)特開平5−238205に開示されているように、カーカス層とベルト層間に周方向コードと高モジュラスゴムシートをはさんだ手法や(5)特開平3−253406に開示されているように、タイヤ振動モードに応じた部分補強を行う手法なども知られている。さらに、前記(3)のベルト最外層にナイロンコードをラセン状に巻きつけたタイヤの応用としては、特に高速耐久性向上、高速レベル向上を目的として例えば、(6)高弾性率コードを巻きつける手法(例えば特開平2−147407,特開平1−145203)や(7)そのタイヤ加硫成型を向上させるために、最外層にラセン状に巻きつけるコードを高弾性率と低弾性率のフィラメントを撚り合わせ、応力−伸度曲線に変曲点をもたせた複合コードを用いる手法(例えば、特開平1−247204)などが挙げられ、さらには、(8)前記(7)の騒音性改良のために、撚り合わせる繊維材質を限定した例(特開平6−305304)、また(9)ベルト層のタイヤ径方向両側部分に、補強層として有機繊維を用いた例(特開平6−115312)等、多くの手法が知られているが、これら一連の手法はすべて記載の有無によらず、多少なりともベルト部張力の強化がなされているため、ロードノイズ低減効果は若干ではあるが認められている。
さらに最近では、(10)特開平9−66705にあるように、ベルト補強層のコードとしてタイヤ加硫時や使用時の物性を考慮して厳しく限定したり、ベルト補強層のコードにポリエチレン−2,6−ナフタレート繊維コードを用いる方法により、より高レベルなロードノイズ低減とともに転がり抵抗,操縦安定性,高速耐久性をの向上を図ることも試みられている。
また、(11)ベルト補強層の両端部に高弾性コード、中央部に低弾性コードを用いる手法、あるいは両端部のコード打込みを高くして中央部のコード打込みは低くする手法が知られているが(例えば、特開平3−193504,特開平4−31107,特開平9−277803など)、これらの発明はいずれも、トレッドセンター部に対してトレッド両端部を相対的に高剛性とすることで、乗心地,ロードノイズ,高速耐久性および操縦安定性を高めようとしたものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した手法によるロードノイズを低減する方法は、前記(1)においては、トレッドゴムを軟化することによってロードノイズを低減できても、耐摩耗性が大きく低下し、また操縦安定性も大幅に悪化するため実用的でなく、また前記(2)においては、タイヤのベルト層の張力を強化することはできても、タイヤの横剛性及びコーナリング性能が低下し、トレッド部以外の部分までも接地し、外観上もよくない。さらに、前記(3)においては、高速耐久性向上と共にロードノイズ低減も若干の効果はあるものの依然として、この程度のものでは満足できるものではなかった。また(3)の応用例としての前記(4)及び(5)においては、(3)以上の効果はあるが、その改良度合は小さく高速性に対する耐久性は不十分であり、前記(6)においては、実用上作りにくい点と操縦安定性悪化が認められ、前記(7)および(8)のように複合コードを用いる方法も応力一伸度曲線に変曲線を持つため、いわゆる大入力、小入力でのコードの挙動が異なってしまうため、100〜500Hzといった広範囲でのロードノイズ低減には効果は不十分である。また、これら複合させたコードはロードノイズ低減の効果の速度依存性が大きいため、実用上好ましいものではない。さらに、前記(9)においては、ロードノイズ低減効果は若干あるものの、ベルト補強層に必要なコード特性が特定されておらず、またそのコード特性をタイヤ性能に生かしきれていないため、ロードノイズ低減効果も不十分であり、唯一その実施例に記載されているように通常の芳香族ポリアミドのような高弾性率コードを単にラセン巻きにしたとしても、ロードノイズは十分低減できないと共に操縦安定性は大巾に悪化する。また、(10)の方法では、ロードノイズと操縦安定性,高速耐久性については高いレベルで改良されているが、転がり抵抗については、従来レベルをやや上回る程度で満足できるレベルではない。
さらに前記(11)の方法では、ベルト補強層の両端部の剛性を中央部より高めることによりトレッド部の締めつけ効果をバランス良く達成した例ではあるが、この方法では、コードの伸度,モジュラス,打込み密度等のみで制御しているため、有機繊維コード自体の持つ材質の特徴がコード伸度,モジュラスという形のみでしか生かされていないために、タイヤ走行時の入力に対する最適なコード材質の選定には至っておらず、ある程度の効果は認められるものの、ロードノイズ低減と転がり抵抗性の両立を高次元に達成できるものではなかった。
【0006】
また一般に、タイヤ走行時のロードノイズ低減には、周方向のベルト張力を高めるために、ベルト補強層として、ナイロンコードをラセン状に巻きつける方法が有効であり、この巻きつけるコードは、高弾性であるほどロードノイズ低減は良好となることは知られている。例えば、全面に66ナイロンコードを巻きつけるより、ポリエステルコードを巻きつけた方が、ロードノイズは低減する。
しかし、単に同方向にらせん状に巻きつける方法では、タイヤ製造時、特に加硫時に、生タイヤを加硫金型に押しつけるという工程があり、この工程においては、一般にトレッドセンター部で大きく通常2〜6%程度拡張されるため、ベルト補強コードとして極端に高弾性のコードを用いると、タイヤ加硫成型時にベルト補強コードは拡張しきれないためにタイヤ変形を生じてしまい、このことがロードノイズの原因になることを知見した。従って、ロードノイズ低減をするには、このタイヤ変形を考慮したベルト補強コードの高弾性化が必要となる。
これらの問題点を補う手法として、補強層コードに高弾性の特定コードを用いた前記(7),(8)及び(10)の方法はロードノイズ低減には効果的であるが、タイヤ転がり抵抗は悪化する傾向がある。そして、この傾向は前記いずれの方法においても同様である。
また前記(9)及び(10)においては、トレッドゴム,トレッドベースゴム,サイドゴムに低ロスゴムを用いることにより転がり抵抗の悪化抑制を試みているがそれらは未だ満足できるレベルにはない。
本発明は、このような状況下で、特定の有機繊維コードの構成からなるベルト補強層を工夫することにより、ロードノイズ低減と転がり抵抗の減少とを同時に満足させたラジアルタイヤを提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決すべく、特にベルト補強層に用いる繊維コードの材質の組み合わせ選定に着目し鋭意検討した結果、下記の手段により、ラジアルタイヤのロードノイズ低減及び転がり抵抗の減少の双方が改良されることを見出し、本発明を完成したものである。
(1)本発明のラジアルタイヤは、一対のビード部と、両ビード部にまたがって延びるトロイド状のカーカスと、カーカスのクラウン部に位置するトレッド部と、カーカスのサイドウォール部とを備えると共に、トレッド部の内側に配置された少なくとも二層のベルトの外周側に少なくとも一枚よりなるベルト補強層をトレッド部全体及び/又は両端部に配設し、前記ベルト補強層が有機繊維からなるコードを複数本含むゴム引きされた狭幅のストリップを該コードがタイヤ周方向に実質上、平行になるようにラセン状にエンドレスに巻きつけることにより形成されるラジアルタイヤであって、前記ベルト補強層は、少なくともタイヤ幅方向中央部はナイロンコードからなるとともに、該ベルト補強層の少なくとも一層のタイヤ幅方向両端部はポリエチレン−2,6−ナフタレートコードからなることを特徴としている。
(2)本発明のラジアルタイヤは、上記(1)において、ベルト補強層がベルト部全幅を覆う一層からなり、そのタイヤ幅方向中央部はナイロンコードであると共にタイヤ幅方向両端部はポリエチレン−2,6−ナフタレートコードからなることを特徴としている。
(3)本発明のラジアルタイヤは、上記(1)において、ベルト補強層が二層からなり、第1層はベルト部全幅を覆う層でナイロンコードからなり、第2層はベルト両端部を補強する層でポリエチレン−2,6−ナフタレートコードからなることを特徴としている。
(4)本発明のラジアルタイヤは、上記(1)において、ベルト補強層が二層からなり、第1層はベルト部全幅を覆う層でタイヤ幅方向中央部がナイロンコードであると共にタイヤ幅方向両端部がポリエチレン−2,6−ナフタレートコードからなり、第2層はベルト両端部を補強する層でポリエチレン−2,6−ナフタレートコードからなることを特徴としている。
(5)本発明のラジアルタイヤは、上記(1)において、ベルト補強層が二層からなり、第1層および第2層はいずれも、ベルト部全幅を覆う層でかつタイヤ幅方向中央部はナイロンコードであると共にタイヤ幅方向両端部はポリエチレン−2,6−ナフタレートコードからなることを特徴としている。
(6)本発明のラジアルタイヤは、上記(1)において、ベルト補強層が三層からなり、第1層はベルト部全幅を覆う層でナイロンコードからなり、第2層及び第3層は、各々ベルト両端部を補強する層でポリエチレン−2,6−ナフタレートコードからなることを特徴としている。
(7)本発明のラジアルタイヤは、上記(1)〜(6)において、ベルト補強層のタイヤ幅方向両端部におけるポリエチレン−2,6−ナフタレートコードからなる部分の片側の幅が、ベルト補強層全体の最大幅の6〜28%であることを特徴としている。
(8)本発明のラジアルタイヤは、上記(1)〜(6)において、有機繊維コードとして、ナイロンコードは総表示デニールの80%がポリヘキサメチレンアジパミドよりなり、ポリエチレン−2,6−ナフタレートコードは総表示デニールの80%がポリエチレン2,6−ナフタレートコードからなることを特徴としている。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のラジアルタイヤにおいて、ベルト補強層に用いられる上記ナイロンコードは、比較的、低弾性かつ熱収縮性の高いものである必要がある。それは、中央部又は、ベルト補強層全面(即ちトレッド全面)にポリエステルコード,アラミドコードあるいは、ポリビニルアルコール(PVA),レーヨン,スチールコードのような高弾性コードを用いると、転がり抵抗は、悪化するうえ、特にアラミド,PVA,スチールコードのような超高弾性コードを使用した場合、タイヤ製品の変形を生じることがあるため好ましくないからである。従って、このトレッド中央部の一部又はトレッド全面に用いるコードは、ナイロンコードであることが必要である。ここで用いられるナイロンコードは、例えばポリテトラメチレンアジパジド(ナイロン4,6),ポリカプラミド(ナイロン6),ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン6,6),ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン6,10),ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン6,12)などのナイロン繊維が挙げられ、特にナイロン6,6が好ましい。
【0009】
次に、ベルト補強層の両端部(即ちトレッド両端部)に配置するコードは、比較的高弾性かつある程度の熱収縮性を有するポリエステルコードでないと、ロードノイズを有効に低減できないうえ、タイヤ製品においてトレッド端部の性状が波状にうねりを生じることがあるので好ましくない。ちなみに、従来タイヤでは一般的なナイロンコードを用いると端部の波状のうねりは見られず性状は良好であるがロードノイズは低減できず、逆にアラミド,PVA,レーヨン,スチールコードのような高弾性かつ低収縮コードでは、ロードノイズ低減はある程度できるが、それらのコード自体が熱収縮しないためトレッド最端部でコードがタイヤ周方向に余ってしまうため波状のうねりが発生することがあり好ましくない。したがって、トレッド両端に配置するコードはポリエステルコードであることが必要である。ここで用いられるポリエステルコードとしては、例えばポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN),ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルコードが挙げられ、特にポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)コードが好ましい。
【0010】
本発明のラジアルタイヤにおいて、ベルト両端部に配置するポリエステルコード補強層の片側巾は、全ベルト補強層幅の6〜28%、特に7.5%〜25%が好ましい。6%未満の場合、ロードノイズ低減するためのタイヤ周方向の補強効果が小さくロードノイズを効果的に低減できない。また28%を越えると、ロードノイズは低減できるが転がり抵抗が悪化する。
また、本発明における前記有機繊維コードは、原糸を下撚りしこれを2本または3本合わせて、逆方向に上撚りし、式T=N×(0.139×D/ρ)1/2 ×10-3〔但し、N:コードの撚り数(回/10cm)、D:コードの実測トータルデシテックス数、ρ:コードの比重〕で定義される撚り係数Tが0.22〜0.77であることが好ましい。0.22未満ではコードの耐久性が悪くなり、0.77を超えるとスナーリングが発生してハンドリングが悪くなる。
【0011】
ところで、ベルト補強層に、高弾性コードをタイヤ周方向に実質的に0°に入れることで、ロードノイズが低減するメカニズムとしては、周方向のベルト張力が増大し、トレッド部で受けた路面の凹凸による振動をタイヤサイド部へ伝達させない、いわゆるバリアー効果によるものが大きく作用しており、特にトレッド両端部は、タイヤ接地時の踏面において周方向に大きな張力(引張り張力)が入るため、この部分の補強材の弾性率アップが特に有効となることによる。
また、トレッドセンター部分においては、接地踏面においては、非接地時に比べ、むしろ引張り張力は弱まる傾向があり、ロードノイズを効率良く低減するには、トレッド両端に配置した補強層に比べ、より柔軟な弾性率の比較的低いコードが良好である。
さらに、これらの引張り〜弛緩という繰り返し入力において、ベルト補強層のロス特性がタイヤ転がり抵抗へ与える影響は大きく、また高速走行におけるスタンディングウエーブ発生に対しては、これらの走行によるタイヤトータルの発熱とベルト補強層の自己発熱、および弾性率変化は、ロードノイズのみならず転がり抵抗の悪化に重大な影響を与えているものと考えられる。
また、タイヤ走行時のトレッド下部の温度分布は、一般にトレッドセンター部よりトレッド両端部が高くなる傾向があるが、この温度差を考慮し、ベルト補強層における弾性率,tanδ等の温度に対する依存性(変化の傾向)を、よりタイヤ使用条件にマッチさせたように適正なコード材質選定を行うことなどによって、前述したロードノイズ低減を損なうことがなく、かつ転がり抵抗をあらゆる速度域で良好に保つことが可能となるものと考えられる。
本発明は、上記の知見をも考慮して完成されたもので、前述の如く、ベルト補強層のコードとして、ナイロンコードとポリエステルコードとを組合わせ、かつ適正に配置したベルト補強層を設けることにより、ラジアルタイヤのロードノイズ低減と転がり抵抗の良化とを同時に効果的に満足させることに成功したものである。
【0012】
次に図面により、本発明において好適なラジアルタイヤについて説明する。図1(a)〜(e)は、本発明におけるタイヤのベルト補強層の例として、第1スチールベルトと第2スチールベルトからなる二層ベルトを覆うベルト補強層の断面構造を示したものである。ここで、図1(a)は、ベルト補強層がベルト全幅を覆う一層からなり、そのタイヤ幅方向中央部はナイロンコードであると共にタイヤ幅方向両端部はポリエステルコードからなっている。図1(b)はベルト補強層が二層からなり、第1層はベルト部全幅を覆い全てがナイロンコードからなる層であり、第2層はベルト両端部がポリエステルコードからなっている。図1(c)は、ベルト補強層が二層からなり、第1層はベルト部全幅を覆う層でタイヤ幅方向中央部がナイロンコードであると共にタイヤ幅方向両端部がポリエステルコードからなり、第2層はベルト両端部を補強する層でポリエステルコードからなっている。図1(d)は、ベルト補強層が二層からなり、第1層および第2層はいずれも、ベルト部全幅を覆う層でかつタイヤ幅方向中央部はナイロンコードであると共にタイヤ幅方向両端部はポリエステルコードからなることなっている。図1(e)は、ベルト補強層が三層からなり、第1層はベルト部全幅を覆う層でナイロンコードからなり、第2層及び第3層は、各々ともにベルト両端部を補強する層でポリエステルコードからなっている。また、本発明によるラジアルタイヤの一例を図3に示すが、一対のビード部1,1’と、両ビード部にまたがって延びるカーカス2とカーカスのサイドウォール部3とを備え、トレッド4の内側に2枚のベルト5と、その外側にベルト補強層6(前記図1(a)の構造)が配設されている。
【0013】
本発明のラジアルタイヤにおいて、ベルト補強層の少なくとも中央部(即ちトレッド中央部)に配置されるナイロンコードおよびベルト補強層両端部(即ちトレッド両端部)に配置されるポリエステルコードの製造方法は、通常のタイヤ用コードを用途とする繊維の製造方法によればよく、特に制限されるものではない。
すなわち、ナイロンコードの場合には、製糸工場において、固相重合で得られた所定分子量のナイロンを紡糸口金下10〜60℃のガス雰囲気にて急冷しながら、紡糸速度500〜1000m/分で延伸倍率3.0〜4.0の範囲内で最適条件を選択して紡糸することにより原糸が得られる。
また、ポリエステルコードの場合、例えばポリエチレン−2,6−ナフタレートは、85モル%以上がポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる重合体を用いることができる。この重合体は公知の方法例えば特開平5−163612の第2欄26行〜3欄21行に従って合成することができ、同公報の第4欄7行〜5欄35行に従って原糸を製造することができる。この重合体は通常の溶融重合、固相重合のいずれの方法によっても合成できる。このような方法により得られた実質的にポリエチレン−2,6−ナフタレート(固有粘度0.72)の樹脂チップを溶融紡糸する。紡糸速度を600m/分とし、紡糸口金直下に雰囲気温度340°C、長さ44cmの加熱筒を設定する。紡糸された未延伸糸をオイリングローラーで油剤を付与して巻き取る。次いで、得られた未延伸糸を1%のプリテンションをかけた後、227°Cの加熱ロールと非加熱ロールの間で2.2%弛緩率で収縮熱セットを行い300m/分で巻き取る。なお、紡糸機の温度は重合体が溶融したエクストルーダーの後半部で300〜315°C、以降口金から吐出するまでの温度を318°Cとするのが好適である。また、上記加熱筒を通過させた後に長さ35cmにわたり相対湿度65%、温度25°Cにて冷却固化させると良い。このようにして、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの原糸が得られる。
【0014】
さらに、他のポリエステルコードとしてのポリエチレンテレフタレート繊維コードは、例えば以下の方法により得られる。すなわち、ポリエチレンテレフタレート重合体の合成においては、テレフタル酸2モル、エチレングリコール3モル、触媒として三酸化アンチモン(テレフタル酸に対して、2×10-4モル)、を攪拌機付き反応容器に仕込み、窒素ガスで十分置換した後、反応容器内を窒素ガスにて0.18MPaに加圧し240℃で反応を行う。ほぼ理論量の水と副生成物を系外へ除去した後、40mmHg・255℃で60分間、15mmHg・270℃で60分間、1mmHg・275℃で所定の分子量になるまで重縮合反応を行い、反応終了後直ちに氷水中で冷却する。重縮合反応終了後、氷水中で急冷した試料を、2mm〜3mmのペレット状にカットし、5gを100mlの丸底フラスコに入れ、減圧後(0.1mmHg)丸底フラスコをオイルバス中に入れ、160℃中30rpmの攪拌速度で2時間の結晶化及び予備乾燥を行う。その後、各試料の(融点−18℃)の温度、30rpmの攪拌速度で所定の時間、固相重合を行う。なお、固相重合時間は、重合開始時のポリマー固有粘度=0.60(重量平均分子量=5.5×104 )を用いた場合、237℃にて固有粘度=0.98(重量平均分子量=7.5×104 レベル)となるまで約7時間である。得られた固相重合ポリエチレンテレフタレート(固有粘度0.98)を紡糸口金下で10〜60°C(例えば25°C)のガス雰囲気にて急冷し、紡糸速度1500〜6000m/分(例えば4200m/分)で紡糸して巻き取り、次いで延伸倍率1.2〜2.30(例えば1.31)で延伸して、ポリエチレンテレフタレート原糸が得られる。
【0015】
上記の如くして得られた有機繊維コードの原糸は前記撚り係数が0.30〜0.75となるように調整し、ベルト補強層に用いられるコードが得られる。さらに、本発明におけるラジアルタイヤの製造におけるディップ処理工程において、かかるコードは接着剤付与後に、コードの緊張熱処理として、乾燥部,第1の加熱延伸部(ヒートセットゾーン),第2の加熱延伸部(ノルマライジングゾーン)において所定条件下で熱処理される。
このようにして得られた本発明におけるベルト補強層で用いられる有機繊維コードの熱処理後の物性として、JIS L1017−1983(7.7)により定義される一定荷重(W)時の伸び率、例えば1400dtex/2のナイロンコードの場合は、66N(ニュートン)荷重時の伸び率が、4.8〜9.0%特に5.8〜8.0%であることが好ましい。一定荷重時の伸び率が4.8未満では、ナイロンコードの熱収縮が大きくなりすぎタイヤユニフォミティが悪くなり、また9.0%を越えると、ベルト補強層としてタイヤ周方向の締めつけ効果が弱くなり、高速耐久性が低下するからである。
また、本発明におけるベルト補強層で用いられるポリエステルコードの熱処理後の物性として、上記で定義される一定荷重(W)時の伸び率は1.7〜4.5%であることが好ましい。一定荷重時の伸び率が1.7%未満では、タイヤの製造工程(加硫時)にタイヤ金型に押しつけられる際にコードが伸びないため、該コードとタイヤ径方向内側にあるスチールベルトの層間ゲージ(つまりポリエステルコードとスチールコードとの距離)が小さくなりすぎ、タイヤ耐久性が悪くなる。一方、一定荷重時の伸び率が4.5%を越えると、タイヤショルダー部のベルト端部より外側に配置された部分で、ベルト補強層のコードが蛇行することがあり、特に高速耐久性に悪影響を及ぼす。さらに、上記ポリエステルコードがポリエチレン−2,6−ナフタレートコードの場合、一定荷重時の伸び率は2.0〜3.0%であることがより好ましく、またポリエチレンテレフタレートコードの場合、一定荷重時の伸び率は3.0〜4.0%がより好ましい。
【0016】
【実施例】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
〔コードのディップ処理〕
実施例及び比較例で用いた各コードは、ゴムとの接着を確保するために、ディップ処理工程において、下記の条件で処理した。
<ナイロンコードのディップ処理>
水593部(重量部、以下同じ)、レゾルシン18.2部、37%ホルマリン水溶液26.9部、水酸化ナトリウム10%水溶液6.6部、ビニルピリジンラテックス(日本合成ゴム製,商品名JSR0650)176部,スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス180部からなる溶液に浸漬した後、乾燥,ヒートセット,ノルマライジングの各ゾーンの順で、第1表に示す時間,温度,テンションの条件下で処理して目標とする物性を有する処理コードを得た。
【0017】
【表1】
Figure 0004275210
【0018】
<ポリエチレン−2,6−ナフタレートコード(PEN)及びポリエチレンテレフタレートコード(PET)のディップ処理>
水98.6部(重量部、以下同じ)、ジグリセロールトリグリシジルエーテル1.2部、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート(70%)0.02部、水酸化ナトリウム10%水溶液7部0.14部からなる溶液で処理した後、さらに上記のナイロンコードの処理液と同じ溶液に浸漬した後、乾燥,ヒートセット,ノルマライジングの各ゾーンの順で、第2表に示す時間,温度,テンションの条件下で処理して目標とする物性を有する処理コードを得た。
【0019】
【表2】
Figure 0004275210
【0020】
このようにして得られた有機繊維コードの66N荷重時の伸び率は、6,6ナイロンコードで7.0%、ポリエチレン−2,6−ナフタレートコードで2.5%,ポリエチレンテレフタレートコードで3.5%であった。
〔タイヤ試験方法〕
タイヤについてのロードノイズ及び転がり抵抗性の評価は、以下に示す試験方法に従って評価した。
(1)ロードノイズ試験
195/65R14,内圧0.20MPa,リムサイズ6J−14の供試タイヤを1800cc排気量セダンタイプの自動車に4輪とも装着し、2名乗車してロードノイズ評価路のテストコースで60km/時の速度で走行し、運転席の背もたれの部分の中央側に集音マイクを取り付け、100〜500Hzの全音圧(デシベル)を測定した。この値を比較例1のコントロールタイヤの値を100として、指数を表示した。この値が高い程、ロードノイズは良好と評価する。
(2)転がり抵抗性試験
転がり抵抗は、スチール平滑面を有する外径が1707.6mm、幅が350mmの回転ドラムを用い、400kgの荷重の作用下で、50〜150km/時の速度で回転させたときの惰行法をもって測定して評価した。速度は20km/時ごとに測定し、その各速度の平均値によって評価し、それを比較例1のコントロールタイヤを100として指数表示した。この数値が大きい程、転がり抵抗は良好(小さい)と評価する。
【0021】
実施例1〜12及び比較例1〜5
実施例および比較例におけるタイヤは、すべてタイヤサイズ195/65R14で、カーカスコードはポリエチレンテレフタレート(PET)を用いたタイヤであり、このタイヤの製造は、加硫条件は180℃×13分、ポストキュアインフレーション条件は内圧0.25MPa,26分に設定して行った。
ここで製造したタイヤ構造は、すべて同一のチューブレス構造とし、ベルトはスチールベルで二層(第1スチールベルト幅150mm,第2スチールベルト幅140mm)となっており、そのスチールコードは1×5×0.23構造、打込み数は34.0本/5cm、第1ベルト層の角度は周方向に対して左22度、第2ベルト層の角度は周方向に対して右22度とした。
さらにベルト補強層は、コードをタイヤ周方向0〜5°に配列しており、トレッド部全面に一層から二層、トレッド部両端では一層から三層となるように、所定の有機繊維コード5〜20本をゴム引きして5〜20mm程度の狭幅な長尺状としたストリップを、上記の如くタイヤ周方向にらせん状に巻きつけることにより形成された。
ベルト補強層コードのうち、トレッド中央部又は全面に配置するナイロンコードは、1400dtex/2(デュポン社製の6,6ナイロン,商品名:Type728)を用いた。また、トレッド両端部に配置するポリエステルコードは、ポリエチレン−2,6−ナフタレートコード(1670dtex/2)及びポリエチレンテレフタレートコード(1670dtex/2)を用いた。また、ベルト補強層におけるコード打込み数は、ナイロンコード,ポリエステルコード共に50本/5cmとした。
上記の方法により、第3表および第4表に示す構造のベルト補強層を有するラジアルタイヤを製造し、得られたタイヤについて、前記の試験方法によりロードノイズ及び転がり抵抗性を評価した。その結果を第3表および第4表に示す。
【0022】
【表3】
Figure 0004275210
【0023】
【表4】
Figure 0004275210
【0024】
【表5】
Figure 0004275210
【0025】
上記第3表において、実施例1〜3は、ベルト補強層が一層からなりその中央部はナイロンコードでなると共に両端部はポリエステルコードからなる本発明のタイヤ(図1(a)参照)、実施例4〜6は、ベルト補強層が二層からなり第1層は全面ナイロンコードからなり第2層は両端部がポリエステルコードからなる本発明のタイヤ(図1(b)参照),実施例7〜12は、ベルト補強層が二層からなり第1層は中央部はナイロンコードであると共に両端部はポリエステルコードであり、第2層は両端部がポリエステルコードからなる本発明のタイヤ(図1(c)参照)である。
【0026】
【表6】
Figure 0004275210
【0027】
また、上記第4表における比較例1及び比較例2(図2(f)参照)は、ベルト補強層が一層でかつ全面が同一繊維素材からなる従来型タイヤの例であり、繊維素材として、比較例1はナイロンコード(66NY)であり、比較例2はポリエステルコード(PET)から構成されている。そして比較例3〜5(図2(g)参照)は、ベルト補強層が二層で、かつこれらの層は全て同一繊維素材のコードからなり、第1層はベルト全体を被覆する層であると共に第2層はベルト両端部を補強する他の従来型タイヤの例であり、その繊維素材として、比較例3は66NY、比較例4はPEN,比較例5はPETより構成されている。
上記第3表および第4表において、実施例1〜12を、従来型タイヤの比較例1〜5と比較すれば、実施例3〜6および実施例8〜12では、ロードノイズと転がり抵抗の双方が著しく改良されており、また実施例1,2及び7においても、転がり抵抗の性能は維持したままでロードノイズが著しく改良されていることが分かる。なお、比較例2,4及び5ではロードノイズは改良されているが、その一方で転がり抵抗は著しく悪化している。
【0028】
【発明の効果】
本発明のラジアルタイヤにおいては、上記の如く、特にベルト補強層において、ナイロンコードとポリエステルコードとを組み合わせ、かつ特定の位置に配設することにより、転がり抵抗を悪化させることなくロードノイズ(車内騒音)を著しく減少させることができ、またこの双方の性能を同時に著しく向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】の(a)〜(e)は、各々本発明によるラジアルタイヤのベルト補強層の一例を示す断面図である。
【図2】の(f)及び(g)は、従来のラジアルタイヤにおけるベルト補強層の一例を示す断面図である。
【図3】は、本発明に適用可能なベルト補強層の一例を示すラジアルタイヤの断面図である。
【符号の説明】
1,1’:ビード部
2: カーカス
3: サイドウォール部
4: トレッド
5: ベルト
6: ベルト補強層

Claims (8)

  1. 一対のビード部と、両ビード部にまたがって延びるトロイド状のカーカスと、カーカスのクラウン部に位置するトレッド部と、カーカスのサイドウォール部とを備えると共に、トレッド部の内側に配置された少なくとも二層のベルトの外周側に少なくとも一枚よりなるベルト補強層をトレッド部全体及び/又は両端部に配設し、前記ベルト補強層が有機繊維からなるコードを複数本含むゴム引きされた狭幅のストリップを該コードがタイヤ周方向に実質上、平行になるようにラセン状にエンドレスに巻きつけることにより形成されるラジアルタイヤであって、前記ベルト補強層は、少なくともタイヤ幅方向中央部はナイロンコードからなるとともに、該ベルト補強層の少なくとも一層のタイヤ幅方向両端部はポリエチレン−2,6−ナフタレートコードからなることを特徴とするラジアルタイヤ。
  2. ベルト補強層がベルト部全幅を覆う一層からなり、そのタイヤ幅方向中央部はナイロンコードであると共にタイヤ幅方向両端部はポリエチレン−2,6−ナフタレートコードからなる請求項1記載のラジアルタイヤ。
  3. ベルト補強層が二層からなり、第1層はベルト部全幅を覆う層でナイロンコードからなり、第2層はベルト両端部を補強する層でポリエチレン−2,6−ナフタレートコードからなる請求項1記載のラジアルタイヤ。
  4. ベルト補強層が二層からなり、第1層はベルト部全幅を覆う層でタイヤ幅方向中央部がナイロンコードであると共にタイヤ幅方向両端部がポリエチレン−2,6−ナフタレートコードからなり、第2層はベルト両端部を補強する層でポリエチレン−2,6−ナフタレートコードからなる請求項1記載のラジアルタイヤ。
  5. ベルト補強層が二層からなり、第1層および第2層はいずれも、ベルト部全幅を覆う層でかつタイヤ幅方向中央部はナイロンコードであると共にタイヤ幅方向両端部はポリエチレン−2,6−ナフタレートコードからなる請求項1記載のラジアルタイヤ。
  6. ベルト補強層が三層からなり、第1層はベルト部全幅を覆う層でナイロンコードからなり、第2層及び第3層は、各々ベルト両端部を補強する層でポリエチレン−2,6−ナフタレートコードからなる請求項1記載のラジアルタイヤ。
  7. ベルト補強層のタイヤ幅方向両端部におけるポリエチレン−2,6−ナフタレートコードからなる部分の片側の幅が、ベルト補強層全体の最大幅の6〜28%である請求項1〜6のいずれかに記載のラジアルタイヤ。
  8. 有機繊維コードとして、ナイロンコードは総表示デニールの80%がポリヘキサメチレンアジパミドよりなり、ポリエチレン−2,6−ナフタレートコードは総表示デニールの80%がポリエチレン2,6−ナフタレートコードからなる請求項1〜6のいずれかに記載のラジアルタイヤ。
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