JP4274721B2 - 農園芸用殺菌剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、農園芸用殺菌剤組成物であって、さらに詳しくは、植物系油と8−オキシキノリン銅とを有効成分とし、薬液の懸濁安定性向上、水稀釈時における水への拡散性、稀釈液の懸垂性及び乳化安定性の向上、器具への汚れ軽減効果向上等が達成され、長期保存時の安定性及び水希釈時の物理性に優れた農園芸用殺菌剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、果樹や野菜等に使用される農園芸用殺菌剤の技術進歩は目覚しく、低薬量で、広い殺菌スペクトルをもつ有機化合物が多数開発されている。しかし、農園芸用殺菌剤の過度の連用により、耐性菌の発現等による効力低下が発生し、安全性が高いとされる農薬も短命におわることも少なくない。
【0003】
耐性菌の発現がなく、安全性が高く、天敵等への影響が少ない殺菌剤化合物として銅化合物がある。もっとも、銅化合物にも、薬害の発生及び耐雨性が悪い、効果が不安定である等の問題がある。銅化合物の中で広く使用されて広い殺菌スペクトルをもつ8−オキシキノリン銅の上記問題を解決した公知技術として特開平11−1408号公報に記載された中鎖脂肪酸グリセライドと8−オキシキノリン銅とを配合してなる組成物がある。この組成物は、中鎖脂肪酸グリセライドの作用により8−オキシキノリン銅の植物体への付着物性を向上させることにより、効果の向上、並びに使用回数の低減が図られている。
【0004】
しかし、公知技術に示される組成物は、長期保存時における懸濁安定性の劣化、水希釈液における懸垂性及び乳化安定性が悪いなどの諸問題を抱えている。これらの諸問題により組成物を取り扱う際のハンドリングの悪さが生じるばかりか防除効果の振れの原因にもなる。なおここで、「懸垂性」とは、水和剤、フロワブル剤などの固体微粒子が水などの液中で均一に分散持続する性質を言い(農薬化学用語辞典、社団法人日本植物防疫協会発行)、「効果の振れ」とは、反復繰り返しの使用に際して薬剤の防除効果が一定にならないことをいい、防除率で評価される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、水希釈時における乳化性、及び懸垂性が改善された、植物性油と8−オキシキノリン銅とを有効成分とする農園芸用殺菌剤組成物を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、長期保存時の懸濁安定性が改善された、植物性油と8−オキシキノリン銅とを有効成分とする農園芸用殺菌剤組成物を提供することを目的とする。
【0007】
さらに、本発明は、植物体への付着物性が向上し、効果の安定性が改良された植物性油と8−オキシキノリン銅とを有効成分とする農園芸用殺菌剤組成物を提供することを目的とする。本発明は、薬液の分散性向上、分散状態の向上、懸垂性の向上、器具への汚れ軽減効果向上等が達成され、長期保存時の分散安定性又は水希釈時の分散性に優れた農園芸用殺菌剤組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための手段である本発明は、植物系油と、8−オキシキノリン銅と、界面活性剤とを含有してなる農園芸用殺菌剤組成物であって、前記界面活性剤は、ジオクチルスルホコハク酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンキャスターオイル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、及びマレイン酸部分エステル型ポリマーを含むことことを特徴とする農園芸用殺菌剤組成物であり、
また本発明の他の態様において、前記植物系油は中鎖脂肪酸トリグリセライドであり、
また本発明の他の態様において、前記中鎖脂肪酸トリグリセライドはカプリン酸トリグリセライド及び/又はカプリル酸トリグリセライドであり、
さらに本発明の他の態様において、前記植物系油と前記8−オキシキノリン銅と前記界面活性剤との混合物の湿式粉砕処理時間が少なくとも1時間であり、
さらに本発明の他の態様において、前記農園芸用殺菌剤組成物中における前記界面活性剤の配合比率が1質量%〜15質量%である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、植物系油と8−オキシキノリン銅とを有効成分とし、さらに特定の界面活性剤を有して成る。
【0010】
前記植物系油としては、中鎖脂肪酸モノグリセライド、中鎖脂肪酸ジグリセライド、及び中鎖脂肪酸トリグリセライド(以下これら三種のグリセライドを「中鎖脂肪酸グリセリド」と総称する。)を挙げることができる。中鎖脂肪酸グリセライドは、植物油より直接精製して得られる天然物と、ナタネ、ゴマ、ヤシ、パーム等の植物体から抽出された脂肪酸エステルより工業的に合成された合成物とがある。中鎖脂肪酸グリセライドは、その化学構造中に二重結合を有しないので一般の植物油に比べて酸化しにくいという特長を有する。中鎖脂肪酸グリセライドは、グリセリン1分子に炭素数7〜11の中鎖脂肪酸の1分子、2分子、又は3分子がそれぞれ結合した構造を有する。中鎖脂肪酸トリグリセライドの一般式を以下に示す。
【0011】
【化1】
ここで、nは4〜8の整数であり、化1として示される式中の3個のnは同一でも相違していても良い。
【0012】
好適な中鎖脂肪酸グリセライドとしては、例えば、脂肪酸のカプリル酸トリグリセライド及びカプリン酸トリグリセライドを挙げることができる。これらの中鎖脂肪酸グリセライドは単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。中鎖脂肪酸グリセライドは、水和剤、フロアブル剤、ドライフロアブル剤、乳剤、及び液剤の形で農園芸用殺菌剤組成物に加用することができる。
【0013】
8−オキシキノリン銅と植物系油との配合比率は、8−オキシキノリン銅1〜90質量%に対し、植物系油99〜10質量%であり、好ましくは8−オキシキノリン銅1〜40質量%に対し、植物系油99〜60質量%である。
【0014】
本発明における界面活性剤は、ジオクチルスルホコハク酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンキャスターオイル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、及びマレイン酸部分エステル型ポリマーからなり、これらを必須の成分とする。
【0015】
前記脂肪酸エステルには、脂肪族モノカルボン酸とアルコールとから生成する脂肪酸エステルの他、脂肪族モノカルボン酸とグリセリンとから生成するグリセリン脂肪酸エステル、及び脂肪族モノカルボン酸とソルビタンとから生成するソルビタン脂肪酸エステルも含まれる。脂肪酸は、不飽和脂肪酸、飽和脂肪酸のいずれであってもよく、炭素数9以下の低級脂肪酸でも、炭素数10以上の高級脂肪酸のいずれであってもよい。
【0016】
前記ポリオキシエチレンキャスターオイル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、及びマレイン酸部分エステル型ポリマーは、重量平均分子量MWが13000〜20000であることが望ましい。
【0017】
本発明に係る農園芸用殺菌剤組成物における植物系油と、8−オキシキノリン銅と、界面活性剤との合計に対して、前記界面活性剤の含有割合は、通常、1〜15質量%であり、好ましくは8〜11質量%である。前記界面活性剤の含有割合が前記範囲内にあると本発明の目的をよく達成することができ、また、前記界面活性剤の含有割合が前記下限値よりも小さいと薬剤の水への分散力、乳化性及び懸垂性の低下に繋がることがあり、前記界面活性剤の含有割合が前記上限値を超えると農園芸殺菌剤組成物の粘度上昇により使用上支障を来すことがある。
【0018】
本発明の目的を阻害しない限り、本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、上記界面活性剤と共に、上記界面活性剤以外のアニオン系、カチオン系、ノニオン系、及び両性の界面活性剤を含むこともできる。
【0019】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物の製造方法には、特に限定はない。通常、界面活性剤の使用量が比較的に少量であり、また界面活性剤の添加が8−オキシキノリン銅と植物系油との混合を容易にすることから、三者をほぼ同時に混合機内に投入し、機械的に混合した後、サンドグラインダー等の湿式粉砕機で粉砕処理することが望ましい。
【0020】
湿式粉砕機における粉砕処理時間は、短くとも30分であり、好ましくは短くとも1時間であることが望ましい。特に粉砕処理時間が1時間以上であると、得られた農園芸用殺菌剤組成物が、チキソトロピーを有し、長期保存時における懸濁安定性を向上するので、より好ましい。
【0021】
本発明の農園芸用殺菌剤組成物は、散布時に所定の濃度に水で希釈して使用する。果実、野菜等の防除剤として広く利用することができる。
【0022】
【実施例】
次に実施例、比較例、参考例及び試験例によって本発明を説明するが本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
(参考例1〜10)
8−オキシキノリン銅 30部、カプリル酸トリグリセリド75%とカプリン酸トリグリセリド25%との混合品 59部、及び下記に示す供試界面活性剤のいずれか一つを11部加えて全体を100部としてこれを混合後、ガラスビーズを製剤量と等量加えてサンドグラインダーで1時間粉砕し、参考例1〜10の製剤を調製した。各製剤の試作時の混合状況、水に500倍希釈する時の薬液の水への拡散性、稀釈液の乳化性、分散保持状況、希釈器具であるビーカへの固形物の付着程度について以下に示す評価方法に従ってそれぞれ調べ、その結果を表1に示した。尚、以下表において参考例は参考と表示する場合がある。
【0023】
(供試界面活性剤)
A:ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム
B:ジオクチルスルホコハク酸カルシウム
C:ソルビタン脂肪酸エステル
D:グリセリン脂肪酸エステル
E:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル
F:ポリオキシエチレンキャスターオイル
G:ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル
H:マレイン酸部分エステル型ポリマー
I:AとEとを含有する市販品(商品名ハイマール326H、松本油脂(株)製)
J:BとFとを含有する市販品(商品名GERONOL VO-600J、ローヌプーラン社製)
(水希釈時の薬剤の拡散状況)
この試験は薬剤(薬液とも称する)の水への拡散性を評価するために行われる。
【0024】
薬剤を水の入ったビーカに入れたときの薬剤の拡散状況を以下の基準で評価した。
A:薬剤がビーカ底部に達するまでにほとんど雲状に分散する。
B:薬剤が水中を糸を引きながら分散する。あるいは薬剤の5割程度が、ビーカ底部に達するまでに雲状に分散する。
C:薬剤がほとんど分散せずに、ビーカ底部に達する。
【0025】
上記の評価内容に関し、Aの評価が薬液の拡散性良好であることを示す。
【0026】
(乳化安定性)
この試験は、水稀釈時における乳化性を評価する。以下の評価項目に示すように乳化状況が良好であることが、農園芸用殺菌剤組成物に必要である。
【0027】
水希釈後の薬剤の乳化状況を以下の基準で評価した。
○:乳化状況が良好である。
△:水希釈直後から30分以内の間に薬液面上に油状物がわずかに認められる。
×:水希釈直後から薬液面上に油状物が多量に認められる。
【0028】
(希釈器具への付着)
この試験は、農園芸用殺菌剤組成物の取り扱い性及び作業性を評価する。容器や他の器具に農園芸用殺菌剤組成物がべたべたと付着することはその取り扱いを困難にし、また作業が非効率になる。したがって、以下の評価項目において、ビーカに付着物の認められないことが、農園芸用殺菌剤組成物に必要である。
【0029】
水希釈後のビーカへの薬剤の付着状況を以下の基準で評価した。
○:ビーカに付着物が認められない。
△:水希釈から1時間後にビーカに黄色の固形物の付着がわずかに認められる。
×:水希釈から1時間後にビーカに黄色の固形物の付着が多量に認められる。
【0030】
(凝集の程度)
この試験は、農園芸用殺菌剤組成物の懸垂性を評価する。又、経時的に懸垂性を評価することは、保存安定性を評価することになる。
【0031】
水で希釈してから1時間経過したときにおける薬液の凝集の程度を以下の基準で評価した。
−:凝集が認められず、よく分散している。
±:若干の凝集が認められる。
+:凝集が認められる。
++:激しい凝集が認められる。
【0032】
(比較例1)
また、比較例1として特開平11−1408号公報に示された油系フロアブル製剤について参考例と同様に試験を行った。比較例1は、8−オキシキノリン銅30部、カプリル酸トリグリセリド75%及びカプリン酸トリグリセリド25%の混合品 59部、界面活性剤[E:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル]9部、界面活性剤[D:グリセリン脂肪酸エステル]1部、界面活性剤[H:マレイン酸部分エステルポリマー]1部を混合し、ガラスビーズを薬剤量と等量入
【0033】
【表1】
参考例1〜10の単独又は2種類の界面活性剤を含む薬剤は、比較例1における一部の物性を改善したが、全ての物性は改善できなかった。
【0034】
(参考例11〜13)
上記参考例1〜10の結果から、試作状況が良好であったマレイン酸部分エステルポリマーと、懸垂性向上効果のあったジオクチルスルホコハク酸カルシウムとポリオキシエチレンキャスターオイルとの混合物を、表2に示す割合で計11部となるように、8−オキシキノリン銅30部、カプリル酸トリグリセリド75%及びカプリン酸トリグリセリド25%の混合品59部に加えて、100部とし混合後、ガラスビーズを薬剤量と等量入れ、サンドグラインダーで1時間粉砕し、参考例11〜13の薬剤とした。これらの薬剤についても参考例1〜10と同様に試作状況、水への500倍希釈時の薬剤の拡散性、懸垂性、乳化安定性、希釈器具であるビーカーへの固着物の付着程度について調査した。その結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
参考例11の界面活性剤の組み合わせにおいて、比較例1に比べて混合粉砕効率及び懸垂性が向上したが、全ての物性は改善できなかった。
【0036】
(参考例14〜16)
8−オキシキノリン銅30部、カプリル酸トリグリセリド75%及びカプリン酸トリグリセリド25%の混合品59部に、表3に示す界面活性剤を合計11部となるように加えて100部とし、これらを混合した後、ガラスビーズを薬剤量と等量入れ、サンドグラインダーで1時間粉砕した。この各薬剤についても参考例1〜10と同様に試作状況、水への500倍希釈時の薬剤の拡散性、懸垂性、乳化安定性、希釈器具であるビーカへの固着物の付着程度について調査した。その結果を表3に示す。
【0037】
【表3】
参考例14の界面活性剤の組み合わせにおいて、混合粉砕効率及び懸濁性の向上、乳化保持力の改善が認められたが、全ての物性は改善できなかった。
【0038】
(参考例17〜19)
8−オキシキノリン銅30部、カプリル酸トリグリセリド75%及びカプリン酸トリグリセリド25%の混合品59部に、表4に示す界面活性剤を合計11部となるように加えて100部とし、これらを混合した後、ガラスビーズを薬剤量と等量入れ、サンドグラインダーで1時間粉砕した。この各薬剤についても参考試験1と同様に試作状況、水への500倍希釈時の薬剤の拡散性、懸垂性、乳化安定性、希釈器具であるビーカへの固着物の付着程度について調査した。その結果を表4に示す。
【0039】
【表4】
参考例17の界面活性剤の組み合わせにおいて、混合粉砕効率及び懸濁性の向上、乳化保持力の改善が認められ、希釈器具への固形物の付着も認められなくなったが、全ての物性は改善できなかった。
【0040】
(実施例1〜3)
8−オキシキノリン銅30部、カプリル酸トリグリセリド75%及びカプリン酸トリグリセリド25%の混合品59部に、表5に示す界面活性剤合計11部となるように加えて100部とし、これらを混合した後、ガラスビーズを薬剤量と等量入れ、サンドグラインダーで1時間粉砕した。この各薬剤についても参考試験1と同様に試作状況、水への500倍希釈時の薬剤の拡散性、懸垂性、乳化安定性、希釈器具であるビーカへの固着物の付着程度について調査した。その結果を表5に示す。
【0041】
【表5】
実施例1〜3において、混合粉砕効率及び懸濁性の向上、乳化保持力の改善が認められ、希釈器具への固形物の付着も認められなくなり、さらに薬剤の拡散性も向上し、比較例1における全ての物性が改善された。更にまた、参考例よりも改善された。
【0042】
(実施例4、5)
実施例4においてはサンドグラインダーで1時間粉砕する代わりに30分間粉砕した外は前記実施例1におけるのと同様にして、実施例5においてはサンドグラインダーで1時間粉砕する代わりに2時間粉砕した外は前記実施例1におけるのと同様にして、油系フロアブル製剤を調製した。
【0043】
試験1(長期保存における懸濁安定性試験)
実施例1、4、5で調製された油系フロアブル製剤及び比較例1の製剤を50mlのサンプル管瓶にとり、40℃虐待条件下における加速保存試験により、懸濁安定性を調べた。表6に各製剤の粘度と懸濁安定性を示した。粘度は、各製剤を充分混合した後、10分間静置し、B型粘度計で測定した。懸濁安定性は、以下の式により算出した。
【0044】
【数1】
【0045】
【表6】
比較例1に比べ、実施例1、4、5の製剤のいずれもが優れた懸濁安定性が得られた。特に実施例1及び5の製剤の安定性が優れていた。粉砕処理時間が1時間以上である実施例1、5の製剤は、粘度の数値からチキソトロピーを有することが確認された。一方同じく粉砕時間1時間の比較例1の場合は、チキソトロピーが確認されなかった。チキソトロピーを有する実施例1、5の製剤は、特に安定性に優れた。
【0046】
試験2(薬剤の付着物性試験)
実施例1の製剤を8−オキシキノリン銅が600ppmとなる濃度に希釈し、普通温州ミカンへ充分散布し、葉面上の薬液が乾燥した後、葉を採取し、葉面上の8−オキシキノリン銅濃度を液体クロマトグラフィーにより分析した。さらに、散布から2週間後の葉を採取し、葉面上及び葉内部の分析を行った。その間の総雨量は、90mmであった。
【0047】
また、比較例2として市販の有機銅フロアブル製剤(8−オキシキノリン銅35%)を、比較例3として市販の有機銅水和剤製剤(8−オキシキノリン銅40%)をそれぞれ同様に希釈して散布し、付着物性を分析した。
【0048】
結果を表7に示す。尚、表7における付着性は、薬液散布直後の葉面上の8−オキソキノリン銅濃度で評価され、耐雨性は、散布2週間後の葉面上の8−オキソキノリン銅濃度で評価され、浸透性は、散布2週間後の葉内部の8−オキソキノリン銅濃度で評価されている。耐雨性におけるかっこ内の数値は、散布直後に対する減少率(%)を示す。
【0049】
【表7】
実施例1の薬剤は、薬剤付着物性の改善が認められた。特に市販の製剤である比較例2,3の欠点であった耐雨性の改善が著しい。また実施例1の薬剤は、分析結果のばらつきが小さく、8−オキシキノリン銅がミカン葉へ均一に付着していることが認められる。
【0050】
試験3(ミカンの黒点病に対する効果試験)
実施例5、比較例1、2の製剤を8−オキシキノリン銅が表8に示す濃度となるように希釈し、青島温州ミカンに10日間隔で6回散布し、最終散布から20日後における黒点病に対する効果を調査した。その結果を表8に示した。尚、黒点病に対する評価は以下の基準で行った。
0:発病なし
1:病班面積12.5%未満
2:病班面積12.5%以上25%未満
3:病班面積25%以上50%未満
4:病班面積50.0%以上
表8における発病度は、以下の式より求めた。
【0051】
【数2】
また、防除率は以下の式より求めた。
【0052】
【数3】
【0053】
【表8】
実施例1の薬剤は、比較例2及び3の薬剤に比べ黒点病に対して優れた防除効果を示した。
【0054】
試験4(ぶどうにおける薬剤の付着物性試験)
実施例1、比較例2,3の製剤を8−オキシキノリン銅が300ppmの濃度となるように希釈し、紅伊豆ぶどうに7日間隔で2回散布し、第1回の散布直後、第1回の散布から7日後(その間の総雨量1mm)、第2回の散布直後、第2回散布から10日後(その間の総雨量64mm)のそれぞれにおける葉面上、葉内部における8−オキシキノリン銅濃度を試験2と同様に分析した。その結果を表9、表10に示した。
【0055】
【表9】
【0056】
【表10】
みかんの場合と同様に実施例1の薬剤は、薬剤付着物性の改善が認められた。特に市販の製剤である比較例2,3の欠点であった耐雨性の改善が著しい。
【0057】
試験5(ぶどうの黒点病に対する効果試験)
実施例1、比較例2の製剤を8−オキシキノリン銅が300ppmの濃度となるように希釈し、紅伊豆ぶどうに7日間隔で2回散布し、第1回の散布から1カ月後、第2回の散布から1ヶ月後における黒点病に対する効果を調査した。その結果を表11に示した。尚、黒点病に対する評価は試験3と同様に行った。
【0058】
【表11】
ミカンと同様に、実施例1の薬剤は、比較例2、3に比べ黒点病に対して優れた防除効果を示した。特に散布回数が1回の場合と2回の場合とで防除率に大差がなく、高い防除率を示し、散布回数の削減が可能と考えられる。
【0059】
【発明の効果】
本発明によると、従来の植物性油と8−オキシキノリン銅とを有効成分とする農園芸用殺菌剤組成物に特定種類の組合せからなる界面活性剤を配合することにより、水希釈時における乳化性、及び懸垂性が改善された農園芸用殺菌剤組成物、特に薬液の分散性向上、乳化保持力の向上、懸垂性の向上、器具への汚れ軽減効果向上等が達成され、長期保存時の懸濁安定性及び水希釈時の乳化性に優れた農園芸用殺菌剤組成物を得ることができた。
【0060】
また、上記農園芸用殺菌剤組成物を特定の時間混合することにより、チキソトロピーが発現し、水希釈時における乳化性、懸垂性及び長期保存時の懸濁安定性が改善された農園芸用殺菌剤組成物を得ることができた。
【0061】
さらに、上記農園芸用殺菌剤組成物を用いた防除剤は、従来の植物性油と8−オキシキノリン銅とを有効成分とする農園芸用殺菌剤に比べて、付着物性が向上し、効果の安定性が改善された。
Claims (5)
- 植物系油と、8−オキシキノリン銅と、界面活性剤とを含有してなる農園芸用殺菌剤組成物であって、
前記界面活性剤は、ジオクチルスルホコハク酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンキャスターオイル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、及びマレイン酸部分エステル型ポリマーを含むことを特徴とする農園芸用殺菌剤組成物。 - 前記植物系油が中鎖脂肪酸トリグリセライドであることを特徴とする請求項1に記載の農園芸用殺菌剤組成物。
- 前記中鎖脂肪酸トリグリセライドがカプリン酸トリグリセライド及び/又はカプリル酸トリグリセライドであることを特徴とする請求項2に記載の農園芸用殺菌剤組成物。
- 前記植物系油と前記8−オキシキノリン銅と前記界面活性剤との混合物の湿式粉砕処理時間が少なくとも1時間であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の農園芸用殺菌剤組成物。
- 前記農園芸用殺菌剤組成物中における前記界面活性剤の配合比率が、1質量%〜15質量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の農園芸用殺菌剤組成物。
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