本明細書の中に組込まれ、その一部を成している添付の図面は、本発明の好適実施態様を描写しており、記載の説明および特許請求の範囲と合わせ、本発明の原理を説明するものである。
図1では便宜上歩行推進システム12を備えた物体10を一般的な箱形の本体14で表しているが、極細線で例としてムシ型本体14‘を示したように、物体10に希望に応じた構成または形状の本体を提供することができる。歩行システム12を以下に示し詳しく説明するが、図1に示した幾つかの顕著な特徴は本発明の実施例の少なくとも1つと本発明の実施態様の全てに共通する概念および原理の幾つかを示すことができる。
図1に示すように歩行推進システム12は、ムシ型の外観に合わせて、それぞれ駆動メカニズム31、32、33,34、35、36を持った6本の脚部ストラット21、22、23、24、25、26を含むか、または別の本数の脚部ストラットおよび付属する駆動機構を含むことができ、それらは物体10を支持面16の上を安定した形で推進する。支持面16は床、テーブル、ゲームボード、地面、プラットホームまたはその他多彩な構造体であろう。図1に示す物体10の本実施例では、脚部ストラット21、22,23、24、25、26は本体14を上に支えた状態で、支持面16の上でそれを推し進める。かかる推進力の向きは矢印18で示す様な前方向でも、または後ろ方向でもよい。輸送手段10はまた一定速度または速度を変えて推進することもできるが、このことは以下詳しく説明する様に、クランクの速度に対し個々の脚部ストラットの速度を望ましくなく、バラバラに変更することとは別である。物体10は、例えば本体14の片側の脚部ストラットを本体14の反対側の脚部ストラットより高速に動かすことによって、または以下に詳しく説明するその他操縦もしくは回転システムを用いて、片側もしくはその反対側に回転もしくは舵を切ることもできる。
本発明の大きな特徴の一つは、脚部ストラット21、22、23、24、25、26の少なくとも幾本もしくは全てを駆動し、ストライドストローク51中それぞれの末端部もしくは「足部」41,42、43,44,45、46を一定直進運動させることができ、そしてステップストロークではその足部を上方向に持ち上げ支持面16から離して、次のストライドストローク51の開始に備えることができることである。さらに詳しく説明すると、例えば図1の右前方の脚部ストラット21に注目せよ。物体10を支持面16の上方で均一、即ち一定速度で推進するために、脚部ストラット21は、その末端部または「足部」41を、直線の、即ち循環パターンのストライド部またはストライドストロークと呼ばれる直進路51を含む循環パターンで動くように駆動する。続いてストライドストローク51が終了した時点で、足部41は本体14および支持面16に関し、循環パターンのステップ部またはステップストロークと呼ばれる曲線路61を上方向に動き、そして足部41は次のサイクルに備え直進路51の開始位置に戻る。直進路51運動、即ちストライドストロークの間、足部41は支持面16と接触し、物体10を支持して支持面16の上で物体10を推進する。続いてストライドストローク51終了時に、物体10を別の足部もしくはその他構造体で支えながら、足部41を支持面16の上方に持ち上げ、直進路51の開始位置に戻すステップストローク61を動く。
図1に示す歩脚システム実施態様例では、他足部42、43、44、45、46それぞれの典型的な循環経路でもある足部41の循環経路は支持面16に極細線で示したストライドストロークの直線路51をとり、このストライドストローク51に関する説明は、ストライドストローク51の経路を本体14との関係から眺めた場合にあてはまる。また図1の実施態様例のステップストローク61では、本体14と関連付け眺めた場合に、足部41は、本体14に関して外側71および上側81に伸びているステップストローク61のアーチ形路で動く。しかし、本体14は矢印18で示す様に前方向に推し進められるため、足部41、42、43、44、45、46は図1に示す様に各ストライドストローク51、52、53、54、55、56で駆動する場合、運動中の物体を静止画として描写する際には制限を伴うので、ある長さを有する直線として支持面16上に明瞭に描かれたストライドストローク51、52、53、54、55、56は実際にはその通りではない。実際には、ストライドストローク51開始時に足部41が、例えば支持面16上のスポット87に植設されている場合、本体14は支持面16に対し前方向に推し進められる間、丁度ヒトが歩行ストライドで脚を前に進める時に床の上の一点に一方の足をしっかりと植設されている様に、前記足部をストライドストローク中、支持面16上のスポット87に植設されている。次に、足部41のストライドストローク51が終了する時点で、本体14は、残りの脚部ストラット22、23、24、25、26の幾つかによって矢印18が示す様に前方向に連続的に押し進められるが、その間足部41は支持面16から上に持ち上げられ、アーチ型の極細線88で示すように歩を前に進め、次のストライドストローク51を開始するために支持面16上の別のスポット89に植設される。即ち、図1のアーチ型の極細線88、88’は、支持面16に対する足部41の運動をより正確に描いており、一方極細線51、61は本体14に対する足部41の動きを描いている。
もちろん、上記の如く、右前方脚部ストラット21およびその末端部にある足部41の動きの描写は、物体10を前方向18に推進した時の、他の脚部ストラット22、23、24、25、26およびそれらの各足部42、43、44、45、46の動きも表している。脚部ストラット21、22、23、24、25、26およびそれらの足部41、42、43、44、45、46の動きを逆にすると、もちろん物体10を逆方向、即ち矢印18と反対方向に推進する。
また、上記の如く、安定性を得るためには、足部41、42、43、44、45、46の幾つかが−本体14の一方側で少なくとも2つ、そして本体14の他側で少なくとも1つ−が同時に各ストライドストローク内のいずれかの位置にあり、その結果いずれの瞬間においても遅れずに、少なくとも3つの足部が、相互に三脚(三角形)の関係にあって物体10を支持面16の上に支持していることが好ましい。したがって、図1に示す実施態様例の各脚部ストラット21、22、23、24、25、26がそれ独自のクランク型駆動機構31、32、33,34、35、36で駆動している間、以下より詳細に説明する様に、かかる安定性を得るためにはそれらの間の位相を調整することが好ましい。一例を挙げれば、図1に例示するように、物体10の右側では、右後方足部45が支持面16上のスポット98の上に植設され、そのストライドストローク終了間近であるときに、右前方足部41は支持面16上のスポット87に植設されていて、まさにストライドストローク51を開始しつつあるところである。一方、右中央の足部43は支持面16の上高さ83に持ち上げられており、次のストライドストローク53にむかって進むステップストローク63の最中にある。右後方足部45がストライドストローク55の終点に達してステップストローク65の中で支持面16から持ち上げられるまでには、右中央足部43は支持面16上に植設され、そのストライドストローク53を開始する。同時に、右前方足部41は支持面16の上にまだ植設されており、ストライドストローク51のほぼ中間地点にある。次に、右前方脚部41が支持面16の上方でそのステップストローク61を行うまでに、右後方足部45は支持面16に戻り、次のストライドストローク55を開始し、そして右中央足部43は支持面16上にあって、そのストライドストローク53のほぼ中間地点にある。左足部42、44、46は、それぞれの駆動クランク機構32、34、36によって同様の形で位相調整され描かれている。したがって、例えば図1に示す実施態様10では、いずれの瞬間においても遅れずに必ず支持面16上に少なくとも2つの右足部と2つの左足部が在る。
本発明の、不可欠ではないものの重要であるその他特徴は、物体10が加速または減速中であるに関わらず、ストライドストローク中の足部の本体14に対する速さは一様であること、即ち一定速度であることである。ここでは用語「速さ」および「速度」は互換的に用いられ同一の意味、即ち長さの方向または座標系とは無関係に運動の速度を意味している。また物体10の同一側にある足部のストライドストローク速度は全て同一であり、そして物体10が右または左に回転する場合以外は、物体10の両側にある足部のストライドストロークの速度は全て同一である。かかる足部41、42、43、44、45、46の一定(一定速度)直進(直線)は、それら足部が各ストライドストローク51、52、53、54、55、56の中で表面16と接触している間、物体10が本発明の歩行推進システム12を装備している場合には、物体10に極めて高い安定性を与える。物体10を右に舵取りまたは回転する場合は、右側の足部41、43、45のストライドストローク速度は、左側の足部42,44、46のストライドストローク速度に比べ遅いか、場合によっては停止もしくは逆行してもよい。逆に物体10を左に舵取り、もしくは回転する場合には、左側足部42、44、46のストライドストローク速度は、右側足部41、43、45のストライドストローク速度に比べ遅いか、場合によっては停止もしくは逆行してもよい。
ステップストローク中の足部が表面16から上に持ち上げられている間に、一定直進ストライドストローク中の足部だけが表面16上の物体10を支持し推進させるというこの組み合わせにより、本体14をボビング、ウィービングまたはサージングさせることなく支持面16に対しスムーズに動かすことができる。またこの組み合わせはある足部が別の足部の動きを妨害することを回避させるが、この妨害により、足部の引きずり、摩擦損失および駆動部の固着が起こる可能性がある。この様にして、物体10は転倒あるいは制御不能に陥ることなく、支持面上を最高速度で動き、加速、減速および回転することができる。本体14の各側にある1本またはそれ以上の足部、好ましくは本体14の左右それぞれの中央足部43、45に、ゴム製もしくはその他滑りにくい物質を取り付けて、摩擦力を大きくして回転時にピボット点として機能させながら、一方その他足部は回転時に若干滑らせて固着することを防ぐことができる。
本発明の、不可欠ではないものの特有の、都合のよい、望ましいその他特徴は、各ステップストローク61、62、63、64、65、66中の足部41、42,43、44、45、46の速度は、各ストライドストローク51、52、53、54、55、56中の足部41、42、43、44、45、46の速度に比べ早いことである。換言すると、例えばストライドストローク51にある足部41の速度は、ストライドストローク経路51の全長で一様または一定であるが、ステップストローク経路61ではその速度を上げ、そして足部が次のストライドストローク51の始点に近づき、到達するとその速度をストライドストローク速度まで下げる。この特徴もまた、いずれの時点でも遅れずに6本ある足部41、42、43、44、45、46のうち少なくとも3本、好ましくは4本が必ず支持面16上に植設されていることを可能にし、そしてその状態を容易に保つことによって本発明の歩行推進システム12を装備した物体10の安定性および可転性に寄与する。
本発明の好適実施態様では、上記のように各脚部ストラット41、42、43、44、45、46はそれぞれのクランク91、92、93、94、95、96により駆動するが、これらクランクは一定速度で物体10を推進する場合には一定角速度で回転でき、支持面16に対し物体10を加速もしくは減速する場合、あるいは回転する場合には可変角速度で回転できるそれぞれの駆動機構31、32、33、34、35、36の一部である。それぞれの直進ストライドストローク51、52、53、54、55、56にある足部41、42、43、44、45、46の速度は、以下詳しく説明するように、各駆動機構31、32、33、34、35、36のクランクホイール91、92、93、94、95、96の角速度に直接比例する。したがってクランク機構31、32、33、34、35、36内のクランクホイール91、92、93、94、95、96の角速度を加速または減速すると、それに比例し物体10は支持面16に対し加速または減速する。
図1に示す歩行推進システム12の好適実施態様例では、以下詳しく説明するように、足部運動循環のストライドストローク51、52、53、54、55、56は、各クランク91、92、93、94、95、96の回転の半分以上、好ましくは約2/3を使用する。したがって足部運動循環のステップストローク61、62、63、64、65、66は各クランク91、92、93、94、95、96の回転の半分未満、好ましくは約1/3を使用する。この好適実施態様は、上記のようなストライド/ステップ循環位相順序および一側当たり3本の脚部ストラットの組を調整して、物体10の左右それぞれに3つある足部のうち少なくとも2つが常にストライドストロークにあり、そして残りの足部がステップストロークにあるようにするのが理想的である。この配置を実施するために、3つの右側クランク機構91、93、95を互いに120度位相をずらして設置して運転され、そして3つの左側クランク機構92、94、96も互いに120度位相をずらして設置し運転される。しかし連動する脚部のかかる位相設定については、注意する点がある。なぜなら、これは幾つかの位相設定では物体10に安定した支持を提供しない脚位置がクランク循環内に1またはそれ以上存在するからである。例えば、3つのクランク機構を互いに120度位相をずらして設定したものの、角度方向が不良な形で連動させた場合には、ある角度位置では連動する3つの足部、例えば足部41、43、45または足部42、44、46が互いに近接しすぎて植設され、物体10を不安定な状態にしてしまう。クランク循環の別の部分で位相が同じになると、末端脚部の一つが持ち上げられてステップストライドに入りながら、もう一端の脚部および中央脚部が踏ん張った状態ではなく、即ち物体10の重心が同一側になり、これによっても物体の支持が不安定となる。具体的には、以下詳しく説明するように、この望ましくない不安定例は隣接するクランク機構の後方に配置された各クランク駆動機構が、該隣接クランク駆動装置に対し約105〜135度の範囲、特には約120度遅れている場合に起こることがある。クランク機構のこの問題およびその他望ましくない位相遅延問題を回避するよう注意を払えば、別の循環位相順序を、図1の6脚実施態様10で用いることができ、なお良好な安定性を得ることができる。ストライドストロークに対しクランク回転の2/3が、そしてステップストロークに対してはクランク回転の1/3が与えられる望ましい位相関係では、以下詳細に説明するように安定した4脚型物体も可能である。もちろん本発明は、各ストライドストローク51、52、53、54、55、56に対しクランク回転の1/2未満、例えば5度といった回転を用いることさえ包含し、また働かせることができるが、このような配置をして、それを実行するには、安定性を保つためにより多くのクランクおよび脚部の組立体を必要とするだろう。一般に、ストライドストロークに用いるクランク回転の角度が小さいほど、物体10の安定性を得るにはより多くのクランクおよび脚部組立体が必要となる。
次に足部41、42、43、44、45、46のストライドストローク51、52、53、54、55、56で一定直進運動させるのに用いるクランク機構91,92,93,94,95,96に目を向けると、5つある駆動機構31、32、33、34、35、36は全て実質的に同一である。したがって、これらクランク機構の一つだけ、例えば右前方のクランク機構31について詳しく説明するが、これは他のクランク機構32、33、34、35、36についても同様であると理解するものとする。
図1に示す歩行推進システム12を包含する本発明の歩行推進システムに利用される幾何学原理を図2に示す。駆動機構の機能は、脚部レバーが点Bで脚部レバー100を貫通して伸びる固定ピボット軸102の回りを回転するときに、脚部レバー100上のポイントDにある足部41を直進路51内に動かすことである。脚部レバー100は、ストライドストローク中の足部41の直進(直線)経路51と直交しているライン104と角度Qを形成する。脚部レバー100が固定軸102の回りを回転して足部41を直進路51に沿って動くと、角度Qは変化する。
足部41を一定の速さまたは速度Vで直進路51に沿って、矢印106が示す方向に動かすためには、角度Qを一定速度以上で変化させる必要がある。任意の時間tでの足部41の移動距離、即ち直進路51上での位置はV×tまたはVtである。垂直線104上の点BとO間の距離dは変わらない。したがって、距離Vt、距離d、および角度Q間の数学的関係は次の通りである:
TAN(Q) = Vt / d (1)
そして任意の時間tの角度Qは次式から得られる:
Q = ARCTAN (Vt / d) (2)
式(2)のこの関係は固定ピボット軸102を用いて脚部レバー100を、脚部レバー上の一点または複数の点またはその突起部を、直線路51に沿って一定の速さまたは速度Vで動かすことができる形で揺動する機構に適用される一般的な結果である。故に、直線路51に沿って一定直線速度Vで足部41を動かし続けるためにどのような技術を用いるかにかかわらず、角度Qは式(2)による角度変化プロフィールに従わなければならない。
脚部レバー100を式(2)の角度変化プロフィールに極めて近いように揺動することができる駆動機構31の概略図を図3に示したが、この場合脚部レバー100上の点Dにある足部41がとのようにして直進経路51を正確に追ったかについては無視している。このクランク機構31では、式(2)の角度プロフィールの近似値は、脚部レバー100が、点Bを貫通して伸びる軸102の回りを回転し、そしてクランク91により駆動されることで生じる。クランク91は、レバー、ホイールまたはその他の構造体でもよく、点Cを通って伸びる軸108の回りを回転し、そしてそれは結合クランクピン110により脚部レバー100と回転可能な形で結合している。クランクピン110は、脚部レバー100の点Aを通って伸びる軸を有している。クランクピン110、即ち脚部レバー100上の点Aは、クランク軸108の回りを点CとA間の距離に等しい半径、即ち半径CAで回転する。クランク軸108はピボット軸102に関し不動位置に固定されており、したがってクランクピン110がクランク軸108の回りを回転すると、クランクピン112とピボット軸102間の距離ABは変わる。その結果、距離ABはクランク軸108とクランクピン110の間に伸びるクランクアーム112と、直進路51と直交するライン104とが成す角度Rの関数として変化する。ピン110がクランク軸108の回りを回転すると距離ABは変わること、および軸102が固定されていることから、何らかの方法により、固定軸102に関し脚部レバー100が横方向運動しないようにしながら、固定軸102に対する脚部レバー100の縦方向運動を調節する必要がある。かかる調節は以下詳しく説明する様に様々な方法により、例えば溝の付いた孔(図3には示していない)またはその他縦方向に摺動可能なガイドを利用することで実施できる。クランクアーム112が矢印114で示すようにクランク軸108の回りを回転する時に、このクランクおよびレバー駆動システム31の幾何学から生ずる運動は2つのパラメータ、即ち半径CAとクランク軸108からピボット軸102までの距離CBにより特徴付けることができる。
ここでは、直進路51はピボット軸102と平行であるストライド面のどこに於いてもラインBOと直交し、そして末端部もしくは足部41を貫通していなければならないが、末端部もしくは足部はクランク91と同一平面であっても、またはなくても良い。実際、以下に示すように、末端部または足部41は通常はクランク91の面(第一面)下から第一面の下にある別の面(第2面)に伸びて、クランク91および支持面16上にある物体10のその他部分を支持している。
上記の如く、クランク角度Rが一定の角速度ωで進むとき図3の駆動システム31内の角度Qは式(2)の角度プロフィールに従い、上記の如く脚部レバー100上の足部41は直進路51に沿って一定速度Vで動くことが望ましい。クランクピン110は一定の角速度ωで回転するとき、
R=ωt (3)
である。クランク角度Rと脚部レバー角度Qとの間には関連が見出せるが、それは時間tを式(3)のRの関数、即ち
t = R/ω (4)
として表し、式(2)のtをR/ωに置き換え
Q = ARCTAN (VR/ωd) (5)
として表せる。言い換えれば、脚部レバー100上の点Dにある足部41を直進路51に沿って一定の線速度Vで動かすには、クランクピン110が一定の角速度ωで回転しているとすれば、脚部レバー角度Qは式(5)で示すクランク角度Rに一致しなければならない。
クランク半径CAおよびクランク軸108からピボット軸102までの距離CBに関する数値またはパラメータ(長さ)のセットを変えると、図3の概念的駆動機構31は脚部レバー角度Qとクランク角度Rとを関連付ける曲線群を生ずるだろう。数値を最適化したとき、具体的には距離CBのCAに対する比が1.53708である時に見出されるクランク半径CAおよび距離CBに関するパラメータのかかるセットの一つは、駆動機構31を式(2)および(5)の望ましい脚部レバー角度Qおよびクランク角度Rに非常に近似させることができる。したがって、比が
|CB / CA| = 1.53708 (6)
であるとき、クランクピン110は、クランク軸108の周囲、全360度のクランクピン110の回転の少なくとも一部を一定角速度ωで回るため、図3の概念上のクランク駆動機構は足部41を直進路51に沿って一様の(一定)線速度Vで動くだろう。
クランク半径CAと距離CBが式(6)の比の時に得られる角度QとRとの関係を示す曲線を、比較のために正確な式(2)の関数と重ねて図4に示した。図4に見られる様に、この技術、即ち式(6)の比を持つこの種のクランク駆動システム31によって、式(5)の望ましい角度プロフィールは、実際のQとRの角度プロフィールの優れた近似値に近づく。足部41は、クランクピン110がクランク軸108の回りを約240度回転する間、一定直進運動を続ける。
具体的には、図4に示すように、クランクが約60〜300度回転する間、即ちクランク角度Rが60〜300度の間にあるときは、「クランクとレバー」角度の関係曲線は理想的な式(5)の角度関係ARCTAN(VR/ωd)によく適合する。
図4の「クランクおよびレバー」曲線の端は、式(5)の角度プロフィールもしくは関係に従わない部分である、クランク軸108周囲のクランクピン110回転の残りの120度の部分、即ち0〜60度および300〜360度の部分では、本発明のクランク駆動機構は足部41を素早くアーチ形経路61を通り(図3には示していないが、図1に示されている)直進経路51の始点に戻す。
図3に示した上記説明したこの種のクランク駆動機構31の使用は本発明による歩脚運動の成立にとって好適であるが、それはこの機構がクランク軸108周囲のクランクピン110の回転のかなりの部分について、足部41の一定直進運動に関し式(5)の角度関係およびプロフィールに極めて近似できること、および上記の様に足部41が素早く出発点に戻れることによる。足部41をより広いクランクピン回転範囲について直進路51に残すことができることは直進路51がより長くなるという利点をもたらし、そして足部41をより長い時間、支持面16(図1)に踏みしめた状態にすることができ、言い換えれば少ない脚部でより大きな安定とおよび牽引が実現できる。さらにクランク軸108周囲のクランクピン110の回転のより狭い範囲で足部41が迅速に復帰することにより不安定性を軽減し、物体10(図1)の転倒の機会も減らすこともできる。上記の如く、これらパラメータおよび利点は、式(6)の寸法比を与えることで最適化できる。しかしその他設計上の配慮または制約により最適比が別のものになることもあるが、これは本発明を逸脱するものではない。
上記の式(6)の比、またはそれに近い比の寸法を持つクランク機構31で駆動する足部41は、図3に示すように直線路51を進む場合には、ほぼ一定の速度Vで動くだろう。図5のグラフは、クランク機構31により駆動する足部41の正規化速度を例示しているが、ここでも直進運動域はクランク角度Rが約60度〜300度である範囲である。さらに、前述の如く、本発明ではより小さな角度範囲で直進運動させることもできるが、かかるシステムは安定させるにためにより多くの脚部を必要とするだろう。図5に示すように、このような速度は殆ど一定であり−変動は平均値1で上下7%未満である。本発明の実施では、かかる速度の変動は平均値より30%未満の範囲であることが好ましく、より好ましくは10〜20%、最も好ましくは10%未満である。
クランク駆動機構31の一例は、上記の如く脚部レバー100上の点Dにある足部41を、経路51を実質的に一定である直進運動で動かすものであり、図6に例示している。このクランク機構31では、クランクホイール91はクランク軸108の回りを回転するが、クランクホイール91の上、クランク軸108より半径距離CAの位置に配置されたクランクピン110はクランク軸108の回りを回転する。脚部レバー100基端部116はクランクピン110に回転可能な形に取り付けられており、一方ピボット軸102のピボットピン120は脚部レバー100の溝孔122を貫通して伸びている。ピボットピン120と溝孔122が組合わさって脚部100がピボット軸102に対し横方向に動かないよう機能すると同時に、脚部レバー100がピボット軸102に対し縦方向には動けるようにしている。クランクピン110がクランク軸108の回りを回転する際の距離ABの最大変化に対応できるよう、溝孔122は少なくとも半径距離CAの2倍の長さでなければならない。したがって、クランクピン110がクランク軸108の回りを回転すると、レバー100はピボットピン120を軸として回転し、同時にピボットピン120に対し前後に摺動する。その結果、上記のように半径距離CAと距離CBの比を適当にとれば、クランクピン110はクランク軸108の回りを実質的な角度で回転している間、脚部レバー100は末端部118にある足部41を均一速度Vで直進経路51に沿って動かす。上記の様に、本発明はこの様なクランクピン110が小角度で回転する直進運動にも有効である。しかし、そのようなクランクピンの小角度の回転では、足部41を直進運動させる場合、物体10を安定して支えて推進するにはより多くの脚部100が必要とする。したがって足部41のこの様な直進運動を、クランク軸108周囲のクランクピン110回転を90度より大きくして、より好ましくは約180度より大きくし、最も好ましくは約240度より大きくして維持することが望ましい。次に脚部レバー100の長さを適切に選ぶこと、即ち適切な距離AD(クランクピン110の軸から垂直方向に点Dの足部41までの距離)を選ぶことにより、足部41は図7に描くように直進路51を一定速度で動く。図7では、点Dの足部41を一定直進運動させるのに好ましい式(6)のCAとCBの比を適当な長さADを用いて図示している。図示するために、クランク軸108の回りを回転したときにクランクピン110が通る循環クランク路122の上に一連の無作為点Aを選び出した。脚部レバー100の様々な位置および向きを表している放射状の線は点Aからが出て点Bにあるピボット軸102を通り、それぞれの線の点Dにある足部41位置まで伸びている。この場合も距離ADは不変であり、したがっていずれの線も同じ長さである。図7に見られる様に、このクランク機構31は、適当な比および長さを有しており、クランクピン110が矢印122の角度方向に回転する時、点Dの足部41は矢印124の方向に直進路51を辿る。もちろんクランクピン110の回転が逆向きの場合には、足部41は逆方向に動く。
したがって、クランク機構31は3つの長さ:(1)クランク半径CA;(2)クランク軸108からピボット軸102までの距離CB;および(3)ピボットピン110から足部41までの脚部レバー100の長さADにより特徴付けられる。CAに対するCBの比が狭い範囲の場合にのみ、上記の様な角関係、即ち足部41を一定速度にする式(5)の各プロフィールQ=ARCTAN(VR/ωd)が与えられる。換言すれば、本発明は広範なCB対CA比で良好に機能するとはいえ、CB対CA比の小さな変動でも理想に近い式(5)の関係は低下、即ち理想的でないものにする。例えば、合理的に使用できる本発明による歩行装置、即ち大きなボビング、ウェービングおよび/またはサージングがない歩行装置は、CB/CA比は約1.5〜2.6の範囲内であり、またAD/CA比は約3〜12の範囲内である。しかし、足部41を一定速度にすることに関し可能な限り式(5)の理想関係に近づけようとした場合、CB/CA比は狭い範囲内にとどめるべきであり、そして長さADは実際的に直線路51を得る上で調節可能な唯一のパラメータである。このような長さADの調節または設定は経験に基づいて簡単に行われるか、または好ましい場合には数値最適化の様に数学的に行われる。出来うる限り直線運動および一定速度に近い最適な組み合わせを獲得するために、これらパラメータ3つの全てについてある程度妥協してもよい。数値最適化により得た最適足部経路プロフィール51、61の例を図8に示す。図8のプロフィール51、61内の各点はクランク軸108の回りをクランクピン110が5度進んだことを表している。直線路51に沿ってある等間隔の点は、望む一定(一定速度)直進(直線)運動が達成される範囲を示しており、曲線帰路61内にある点間の距離が一様ではなく、そしてより長いことは、帰路61では足部41の非直線運動が大きく加速されてから減速したことを示している。
図8の点プロフィールの駆動に用いた数値最適化は、一定速度の完全な直進運動と実際に得た足部運動との間の誤差に基づいていた。誤差の関数を240度のクランク回転の希望範囲について積分した。本例では、用いた誤差関数は理想的な直進運動を実行できる足部の理想位置と実際の足部位置との差の平方であった。この積分の結果は、以下2つの比の変動に基づき最小化されている:(1)クランク軸108からピボット軸102までの距離CBとクランク半径CAとの比、即ち|CB|対|CA|;および(2)脚部レバー100の長さADとクランク半径CAとの比、即ち|AD|対|CA|である。本例で得た実際の比は|CB|/|CA|=1.53708および|AD|/|CA|=6.319105であった。これらの比は、用いた特定の誤差関数に対し好ましい比である。しかし、設計目標内の変動(誤差変動)によりこれらの比はごく僅か変化する。
点Dの足部41が描く、または辿る運動および結果生じる経路51、61は、クランク軸108に対し垂直である第一平面内にあり、距離ADはクランク軸に対し垂直である線内にある。したがって、脚部レバー100から上方または下方に伸びる下脚部ストラット21を用いると、第一平面と平行である別の平面内に経路51、61を描くことができる。例えば図9に示すように脚部レバー100から下方に伸びる下脚部ストラット21が足部41を配置しており、したがって経路51、61は脚部レバー100より下方に位置し、しかし尚第一平面同様にクランク軸108に対しては垂直である第二平面126内にある。図1の物体例10内ではこの特徴を活かして足部41、42、43、44、45、46を本体14より下に配置して、本体14が支持面16の上になるよう保持している。上記の様に、ストライド路51、即ちストライドストローク中の足部41もまたストライド平面内にあるが、この平面はピボット軸102と平行であり、そしてラインCBと第一面に対し垂直である。
実際の歩行推進システムを形作るには、足部41は図1に示すように物体10を推進するストライドストロークまたはパワーストローク51中は支持面16と接触していなければならず、そしてステップストロークまたはリターンストローク61の間は支持面16の上に持ち上げられなければならない。図1および9に示すクランク駆動機構31では、図10に示すように駆動機構31を傾けてクランク軸108を支持面16に対する垂線(垂直線)Nに関し傾斜させることにより、足部41を上記様式で動かすことができる。足部41が描く、または辿る経路51、61(図9)はクランク軸108に対し垂直である平面126内にあることから、クランク軸108を支持面16の垂線Nに対し角度α傾けると、足部経路51、61の平面126もまた支持面16に対し角度α傾斜するだろう。したがって、クランク駆動機構を支持面16の上に適当な高さで配置して足部経路の直線部51を傾斜面126内に配置すれば、足部経路の残りのアーチ部61は足部経路直線部51の始点に復帰する前に、支持面16の上にある高さ81だけ持ち上げられる。したがって、上記の様に、支持面16に対しクランク駆動機構31を傾斜させることで、簡単ではあるが洗練された方法で足部41を、それが復帰またはステップストローク61にある間、支持面16から持ち上げることができる。以下詳しく説明するように、ステップストローク中に足部41を支持面16の上方に持ち上げる方法は他にもあり、したがって本発明はクランク駆動機構31を支持面16に対し傾斜させるこの一つの方法に限定されない。
角度αの向きは、支持面16および足部41が経路51、61で動く平面126が、足部41の直進運動の直線経路51と同一ラインに沿って交差する方向である。図10に示すように、駆動機構31は支持面16から一定の間隔bを空けなければならないため、0とARCTAN(s/b)の間にある任意角度αを用いることができるが、この場合のsは、図10に示す様に駆動機構16の最下点39の真下にある支持面16上の点39’と足部41が支持面16に接触している点87との間の支持面16上の距離である。角度αおよび間隙bを実際に選ぶ場合には、駆動機構31の寸法を計測して、足部41が距離sをあけて植設されるように垂直方向に伸びる脚部ストラット21の長さを選ばなければならない。しかし、角度αが大きすぎる場合には、駆動機構31を小型化して、ストライドストローク51の長さ、およびステップストロークの高さ81を調節しなければならない。角度αが小さすぎる場合にはストライドストローク51は大きくなるが、角度αが小さいことで角度αは浅くなるため、ステップストロークの高さ81を調節する。この2つの極端例の間に、ステップストロークの高さ81が最大となるのに最適な角度αが幾つか存在する。この様な最適角度αは、数値的または分析的に見つけ出すことができる。分析方法を用いると、以下のように適正角度αを決定できる:
a = ARCCOS (J / K) (7)
式中:
L = b / s (8)
例えば、図1の物体10の様な6脚式のムシ型物体を考案する実施態様では、図6および10を参考に、次の比を設計パラメータとして使用できる:
b / |CA| = 4.0387 (11)
および
s / |CA| = 9.4236 (12)
本例では、最適なステップストローク高さ81を得るには、支持面16と足部経路51、61の平面126とが成す最適な二面角αは約33.4でなければならない。この比較的浅い角度αは、比較的大きなストライドストローク51も同時に可能にする。
ストライドストローク51の直線性とストライドストローク51での足部41の定速度Vとの調和を考え、そして更に上記の様に傾斜面126でのステッピングを考慮した場合の、本実施態様例の駆動機構31の性能を図11に示す。図11のこのグラフは、物体10例が傍らを移動するときに、平面16上の観察者に対し足部41がどのように観察されるか示したものである。理想的には、足部41は、図1の点87に相当する図11の0、0の位置にいる観察者の正面に置かれ、次に持ち上げられて支持面16から離れて図1に示す次の点89に植設される。理想的には、ストライドストロークまたはパワーストローク51の間、足部41は図1の参考点87(図11の0、0)に植設されることである。しかし、本例での数値決定ではある近似を行っており、実際には足部41が支持面16と接触している間も、足部41は支持面16上の点87(0、0)に対し若干動いている。図11のグラフ例に関するデータは、b=0.375インチおよびs=0.875インチに基づいている。最適高さbおよび物体10全体の前進距離(1脚部のみのストライドではない)は、クランクピン110の回転当たり約0.81インチである。上記のCB/CA=1.53708およびAD/CA=6.319105の例では、直線からのずれはおよそ±0.0013インチであり、速度Vが不均一であることによるずれは±0.0019であり、これは性能的には問題とならない。
より実際のムシの脚に近い外観といった美観上の理由から、図1、9および10に示した直線的な脚部ストラット伸長部21ではなく、図13の曲線的な脚部ストラット21’の様な様々な形の脚部ストラットの使用が望まれることもある。足部41がクランクピン110、ピボット軸102および摺動式脚部レバー100に対し同一位置に保持される限り、足部41をそのように配置するために脚部ストラットがどのような形または配置であっても、脚部ストラットの形状が足部41の動きまたは性能を変えることはない。言い換えれば、クランク軸108に対し垂直である平面に必要な距離ADが保たれている限りにおいて、図12の実施態様で説明した様に、脚部ストラット21の形状は問題ではない。
上記の如く、図1に示す6脚式物体10に関しては、安定を得るために、互いの位相を120度ずらして固定した各クランクホイール91を備えた右側の3つの駆動機構31、33,35を連動させることが望ましい。例えば図13の60度のクランク回転の順序で示すように、3つある足部41、43、45のうちの少なくとも2つがいずれの瞬間に於いても遅れずに、ストライドストローク中の支持面16を踏みしめることが望まれる。左側の3つの駆動機構32、34、36もまた同一目的のために同様に連動する。必須ではないが、中央脚部ストラット23、24は、図14に示すように外観上の問題から、外側に向かい互い違いに配列することが望ましい。脚部レベル100が本体部14から外側に向かって傾斜角αで伸びているため、中央脚部レバー100は前方および後方脚部レバーに比べより高い位置にある「膝」27まで伸びており、そのため中央脚部ストラット24はより長くなければならない。しかし上記の原理により、本発明はこの変化を、例えば図15に示すように中央駆動機構33、34を前方および後方駆動機構31、32、35、36よりさらに横方向外側に配置することで調節できる。
また図15に示すように、右側駆動機構31、33、35は、アイドラーギア131、133によって連結するギア形クランクホイール91、93、95を提供することで、一つに連結することもできる。同様に左側駆動機構32、34、36もアイドラーギア132、134により一つに連結できる。この場合も、連結した右側駆動機構31、33、35は、連結した左側駆動機構32、34、36とは独立して運転されるため、独立して加速または減速することができ、より高い操舵性、回転性および運動性を得ることができる。
連結駆動機構31、33、35の実施例を図16、17および18に示すが、これらは図1の物体10の本体14内に組込むことができる。動力はギア減速組立体142を通してモーター140が作り出し、右中央クランク駆動ギア93に伝えられる。動力はアイドラーギア131により右前方駆動ギア91に、そしてアイドラーギア133により右後方駆動ギア95に伝えられる。駆動ギア91、93、95は中心をはずれた偏心クランクピン110により脚部レバー100と連結している。脚部レバー100は、胴体プレートまたはフレーム144とカバープレート146の間に挟まれている。このサンドイッチ構造がクランク軸108に対する垂直面での脚部レバー100の運動を平面運動に拘束しており、そして前記クランク軸は上記のように支持面16に対し傾斜している。左側駆動機構32、34、36(図17〜18では完全には示していない)は、右側駆動機構31、33、35と同一である。図19〜21には、図6および16に最もよく見ることができる溝孔121と摺動式および回転式にはめ合い連結する6本のピボットピンを持つ胴体プレートまたはフレーム144が単独で示されている。モーター140およびギア減速組立体は、図22〜24の据付けブラケット148の上に最もよく示されている。
上記の如く、後方に配置されたクランク機構での位相関係の遅延または負であることが不安定という問題につながることがあるため、可能であれば、後方に配置されたクランク機構の位相関係は前進または正であるように維持することが望ましい。望ましくない遅延した、または負の位相関係を説明するので、図25を参照されたい。不安定状態を招くことがある望ましくない、遅延した位相関係を説明する上で、幾つかの定義が役立つ。例えば、この説明の目的では、前方とは駆動機構が物体10の推進を実行している、または試みている方向を意味しており、後方とはかかる推進方向の反対である。したがって、この定義によれば、本体14が矢印18の方向に推進される場合、物体10の右側のクランク機構31、33、35のなかではクランク機構31が最も前方に位置すると考えられ、一方中央クランク機構33はクランク機構31に対しては後方に位置し、最後のクランク機構35は中央クランク機構33に対して後方に位置することになる。さらに、クランク機構31、33、35の位相関係は、それらが物体10を推進している際のクランク91、93、95の回転の角度方向に関係する。推進方向が矢印18で示すように前方である場合、クランク91、93、95の回転の角度方向は矢印251、253、255が示すように時計回りである。したがってこの文脈に於いて、前進または正の位相関係とは、角回転251、253、255の方向であり、遅延または負の位相関係とは、角回転方向251、252、255と逆方向である。この説明の目的に関しては、前進および正の位相関係という用語は互換的に用いられ、遅延および負の位相関係もまた互換的に用いられる。
逆に、駆動機構31、33、35が物体10を矢印18と反対の方向に推進する場合は、駆動機構35が最前方となり、それに駆動機構33が続き、さらに駆動機構31が続く。また物体10が矢印18と逆方向に推進される時は、クランク91、93、95は矢印251、253、255と逆の角方向に回転し、結果として前進および遅延位相関係も逆になるだろう。
これらと同一の定義が、物体10の左側の連結駆動機構32、34、36にもあてはまり、この場合物体を矢印18の方向に推進する場合には、クランク92、94、96は矢印252、254、256が示す様に反時計回りに回転し、逆向き、即ち矢印18と反対方向の場合には時計回りに回転する。
より詳細には、図25の実施態様に於いて、物体10の右側の前方のクランク91および駆動機構31は直後にある、即ち中央のクランク93および駆動機構33に対し120度進んでいる。同様に中央のクランク93および駆動機構33は、最後方のクランク95および駆動機構35に対し120度進んでいる。別の形で表現すると、物体10の右側最前方のクランク91は右側中央のクランク93に対し120度進み、右側最後方のクランク95は右中央のクランク93に対し120度遅れる。
同様に物体左側でも、左側最前方のクランク92は左中央のクランク94に対し120度進み、左側最後方のクランク96は左中央のクランク94に対し120度遅れる。
それぞれ後に続くクランクおよび駆動機構が更に120度遅延するという、望ましくない形で連続的に位相が後方に向かって遅延すると、脚部レバーの配置が不安定となり、図25にはその例が2つ描かれている。物体10右側については、右側連結クランク91、93、95で起こったこの連続遅延を、右側足部41、43、45の全てが支持面16上にあるが、互いが可能な限り接近している形で示されている。足部41、43、45がこの様に接近して配置すると、物体10は不安定になり、容易に転倒する。
左側足部42、44、46は上記の連続後方位相遅延から生ずる別の不安定状態の例を示している。具体的には、左前方足部42は地面または支持面16から持ち上げられており、一方残り2つの左足部44、46は互いに接近した状態で装置10の重心C.G.の後方に於かれている。この場合も、クランク92、94、96のこの連続後方位相遅延の結果生ずる足部42、44、46のこの不安定な配置により、物体10は転倒し易くなり、そしてもし右側も植設された足部だけが重心C.G.の後方にあるという同じ状態であれば、物体10は重力だけで転倒するだろう。また、図25に描かれた不安定な配置例は、この配置から生ずる不安定な位置関係だけでなく、その問題も描き出している。
これらの、およびその他の不安定な配置を回避するために、図26に描かれた好ましい位相関係では、右側駆動機構31、33、35が連動して配置されており、そのため連続する各後方クランク33、35が最後方のクランク駆動機構に対し120度進んでいるクランク91、93、95を備えている。言い換えると、図26では右中央のクランク93は右前方クランク91に対し120度進んでおり、そして右後方クランク95は右中央クランク93に対し120度進んでいる。図26の物体10の左側でも同様に、左中央クランク94は左最前方クランク92に対し120度進んでおり、また左最後方クランク96は左中央クランク94に対し120度進んでいる。
図26に描かれる様な、後方に向かってクランクの位相が連続的に前進する関係では、図25に示した後方に向かって連続的にクランクの位相が遅れることによる脚部および足部位置の不安定化を回避する。例えば、図25および26の左側前方足部42が伸びて支持面16から上に持ち上がった場合でも、図26の残り2本の左足部44、46は一方が重心C.G.の前に、そしてもう一方が重心C.G.の後方に、距離をおいて支持面16上に植設されて安定性を高めるが、このことは図25で左足部44、46が共に重心C.G.の後方に近接して置かれたこととは対照的である。図26の右側例は、図26のクランクの連続的に後方に位相が進む関係では、前方足部41および後方足部45が最も互いに接近しても、図25の連続的に後方に位相が遅延する関係で見られた足部41、45の例ほど近づかないことを示している。
上記の如く、クランクホイールまたはギア回転の多くの部分(2/3程度)が割かれるストライドストロークの間、足部が支持面16に踏みしめた状態を保つ能力によって、4脚のみの装置の中でも本発明のクランク脚部駆動機構を使用でき、そして安定性が維持されるようにできる。この様な4脚式ムシ型装置150の例を図27に示す。4本の脚部151、152、153、154は前後の間隔を狭めて順番に並べるか、または位相を等しくして、4本ある脚部151、152、153、154のうち少なくとも3本がいずれの瞬間も遅れずにストライドストロークにあって、常に支持面と接触している。ある1本の脚部が上記のようにして持ち上げた状態のステップストロークに戻っている間は、ストライドストローク中の残り3本の脚部が三脚の形を作り、これが物体150の重心を支持し、安定にする。この様な4脚式の物体150は、自由走行、未制御装置、壁が案内する装置等の、回転または操舵能力を持たない直線運動が望ましいか、または直線運動が望ましい用途やその他同様の用途に好適である。
この様な4脚式物体150の好ましい脚部の位相合わせを図28に示すが、脚部位相の順番1〜4は、90度、位相を増加させた駆動ギアの全回転を示している。極細線は、上記6脚式物体10と同様に、脚部151、152、153、154の末端部にある足部のストライド158およびステップ159経路を表している。
旋回式クロスアクスル157で連結した2本の偽脚155、156を更に備えている改良型の4脚式装置160を図29〜33に示す。この実施態様160は、迅速かつスムーズに前方に直進でき、適当に平坦な支持面上で転倒しないで逆方向に向きを変えることができる。装置160が前進する場合は、2本ある偽脚155、156は軽く引きずられるが、4本ある脚部151、152、153、154の通常のストライド158およびステッピング159のストロークを妨害しない。しかし4本の脚部151、152、153、154を逆向きに動かす場合は、左側の偽脚156より長く、また正規の脚部151、152、153、154より長い右側の偽脚155が支持面を踏みしめ、装置160の右側を十分に持ち上げ、右脚部151、153を支持面から持ち上げる。そのことで、脚部が踏みしめている表面に対するピボット点となって、装置160の向きを変える。
図30に最もよく見られる様に、2本の偽脚155、156はアクスル157でつながれており、アクスルは装置160を横断して、即ち縦軸161の方向の前進運動に垂直に伸びている。2本の偽脚155、156はアスクル157にしっかり結合しており、アスクルは矢印163で示す回転運動ができるように本体162と回転可能な形で取り付けられている。したがって、偽脚155、156は共に互いに同調して回転する。
偽脚155、156の一方、例えば右偽脚155は正規の脚部151、152、153,154の長さよりも若干長く、左偽脚156は脚部151、152、153、154の正規の脚部よりも若干短いか、またはほぼ同じである。図31に描かれている様に、前進運動164中右偽脚は支持面16を後方に引きずられる。右偽脚155が後方に引きずられ始めると、アクスル157が回転して短い左偽脚156を支持面16の上に僅かに持ち上げる。この状態においては、装置160は支持面16の上に右偽脚155を僅かに、一般に意味のないていど引きずる以外は、正常に前進運動164する。
しかし装置160の運動をクランク駆動機構(図32には示していない)の回転方向を逆転して逆向き165すると、右偽脚155は支持面16と摩擦力によりひっかかり、図32に示すように本体162を動かす逆向き165に対して回転する。右偽脚155が他の脚部151、152、153、154よりも若干長いため、右偽脚は装置160の右側を持ち上げ、それにより図32に示す様に右前方脚151および/または右後方脚153は持ち上げられて支持面から離れる。アクスル157に結合するある種の制限装置166を取り付けて、逆方向165の引きずりが殆ど起こらないように右偽脚の回転を阻止することができる。もはや右脚部151、153は支持面16を踏みしめていないため、右偽脚155が装置160を回転させるピボット点となる。これと同時に左脚部156は、図33に示す様にアクスル157によって回転し、他の左脚部152、154がそれぞれストライドそしてステップする時に、高さ、バランスおよび安定性を維持する位置になる。
図34では8脚型の歩行物体260を示し、4脚連結のステッピングの順序の例における本発明のクランク駆動機構の応用例を描いている。ここに記載または包含されるクランク駆動機構はいずれもが利用可能であるが、図34の例は図1〜10に示し既に説明されている様式で組み立てられたクランク駆動機構261、262、263、264、265、266、267、268を用いて描かれている。
図8では、物体例260は、物体260の両側にそれぞれ1セット、合計2セットの脚部を有している。例えば物体260右側にある4本の脚部281、283、285、287は、それぞれのクランク駆動機構261、263、265、267によって駆動し、これら駆動装置ではアイドラーギア301、303、305がそれぞれクランクギア271、273、275、277を駆動し、また一つに連結している。同様に、物体260左側のもう1セットの4本の脚部282、284、286、288はそれぞれクランク駆動機構262、264、266、268が駆動しており、これら駆動装置ではアイドラーギア302、304、306がそれぞれクランクギア272、274、276、278を駆動し、そして一つに連結している。4本の脚部の各セットは、バランスおよび安定性が保たれる形で一つに連結され、並べられている。物体260はここに記すステッピングの順序については、物体10に関する上記説明と同様に(図1、参照)、これら各脚部のセットを相互に独立して運転するのに必要な組操縦能力を持っていると考えられる。
便宜上および図34の4脚連結についての本説明を容易にするために、物体260両側にある脚部には前方から後方に向かって1、2、3、4と番号を付けた。即ち右側の脚部281、283、285、287の連結セット(右側脚部)については、脚部281は1とし、脚部283は2とし、脚部285は3とし、そして脚部287は4とする。同様に左側の脚部282、284、286、288の連結セットについては(左側脚部)、脚部282は1とし、脚部284は2とし、脚部286は3とし、そして脚部288は4とする。
また便宜上、各脚部のステッピングの順番は一定間隔で行われ、例えば脚部の新らたなステップは、右側クランクギア271、273、275、277がそれぞれ90度回転して起こる。同様に左側脚部282、284、286、288については、これら脚部の新たなステップは、左側クランクギア272、274、276、278がそれぞれ90度回転して起こる。
これら2点を描写するために、例えば図34の左側脚部282、284,286、288が示す特定のステッピングの順番を「4−2−3−1」の様にして表すことができる。言い換えると、まず脚番号4(後脚288)がステップを開始する。次にクランクギア272、274、276、278が1/4回転、即ち90度回転した後、脚番号2(前方に近い脚部284)がステップを開始する。次にクランクギア272、274、276、278がさらに1/4回転した後、脚番号3(後方に近い脚部286)がステップを開始する。次にクランクギア272、274、276、278がさらに1/4回転してから、脚番号1(前方脚部282)がステップを開始する。クランクギアがさらに1/4回転した後、この順番が再び始まる。
2本またはそれ以上の脚部が一緒にステップするステッピングの順番には6種類のものが考えられる:
1−2−3−4
1−2−4−3
1−3−2−4
1−3−4−2
1−4−3−2
1−4−2−3
これらの各順番について、一方の側にある脚部281、283、285、287および反対側の脚部282、284、286、288は本体300に沿って、右側連結機構内の足部291、293、295、297または左側連結機構内の足部292、294、296、298が互いに接触しないように、可能な限り近づけて配置されることが望ましい。また安定性のために重心C.G.周囲のバランスを保つ必要もある。
しかし、本体300の端に沿う脚部の間隔を接近させる必要がある場合、隣接する脚部が接触する問題を避ける2つの脚順が考えられる。即ち:
1−2−3−4
1−3−4−2
である。言い換えると、これら各順番では、2本の隣接する脚部の一方が完全に後ろ向きの時には、もう一方が全面的に前向きになることはなく、これにより隣接する2足部間が接触するのを防ぐ。この2つの順番のうち、順番1−3−4−2の方がバランスに優れているが、それはいずれの瞬間に於いても重心C.G.をまたぐ足部間の距離が順番1−2−3−4の場合より広いからである。
バランスのみを考えるのであれば、即ち隣接する足部または脚部間の接触を避けるために脚部の間隔を十分広くとることができるのであれば、のこり4つの脚順は:
1−2−4−3
1−3−2−4
1−4−3−2
1−4−2−3
である。これら4つの脚順のなかでは、1−4−3−2の順番が最もバランスに優れている。
連結している4脚のうちの2脚またはそれ以上を同時に歩行させるようにクランクの位相を設定することも可能である。もちろん連結する4脚の中の3脚のバランスを崩すことなく同時に歩行させるように設定または位相合わせすることは、植設している足部が1本だけになるため不可能である。したがって、正確に2脚が同時歩行する順番、即ち:
(1,2)−(3,4)
(1,3)−(2,4)
(1,4)−(3,2)
のみ考慮することが合理的である。これら3つの脚順に於いてはバランス問題から、「X」型の順番は排除されるため、次の順番が残る:
(1,3)−(2,4)
(1,4)−(3,2)
これら2つの脚順のうち、最もバランスが良いのは(1,3)−(2,4)である。
まとめると、それぞれ異なる設計目標について最も望ましいステッピングの順番が3種類ある。滑らかな運動および最小の脚間距離を望む場合には、順番1−2−3−4が最適である。滑らかな動き、バランスならびに脚部の間隔の良好な組合せを目的とする場合は、順番1−3−4−2を使用するとよい。良好な滑らかさ最善のバランスを求める場合は、順番1−4−3−2を使用するとよいだろう。順番(1,3)−(2,4)は、振動が問題とならず、タンデム歩行が望まれる場合に使用するとよい。
上記のように、当業者は、ひとたび本発明の原理を理解すれば、本発明の実施に適したクランクおよびレバー駆動機構の多くの好適な機構の変形および実施態様を考案できる。上記記載の分析が不十分な傾斜クランク駆動の実施態様の重要な特徴は、クランク、ピボットおよび前記クランクに結合し、且つ脚部レバーのピボットに対する縦方向の運動は可能であるが、横方向には動かないように制限されている脚部レバーであり、これにより上記説明した様に、脚部レバーはピボットの回りを回転できると同時にピボットに対し縦方向に動くことができる。この種の変形または別実施態様の一つであるクランク駆動機構または組立体31’を図35に示す。この変形例または実施態様31’は、脚部レバー100と脚部ストラット21を含む形に曲げられるか、または成形された1本のロッドまたはワイヤ170を有しており、これは容易に製造できる、そして確実に動かすことができる。クランクホイールまたはギア91は底フレームプレート144から上向きに伸びるスピンドルまたはアクスル176の上に回転式に取り付けられている。細長のロッド170を曲げて、基端部にクランクピン部110を作るが、この部分がクランクギア91の周縁近くにあるクランク孔172に差し込まれる。ロッド170の脚部レバー部100はクランクピン部110から旋回支持構造180の横孔または溝186を通り膝ベンド部188まで伸び、ここでロッド170は曲げられて脚部ストラット21となり末端部にある足部41まで伸びる。クランク駆動機構31’は前記同様傾けられており、その結果クランク軸108は支持面16の垂線Nに対し角度αを持つ。それ故に、クランクギア91がアクスル176に乗りクランク軸108の回りを回転すると、クランクギア91は脚部レバー100を上記の如く、極細線100”で示すようにピボット軸102に対し縦方向に旋回して動かし、脚部ストラット21および足部41を本発明のストライドおよびステップストロークの直進路およびアーチ形路に運動させる(例えば図7および8を参照)。重い物体の場合、各脚部ストラット21およびレバー100はかなりの重量を支えなければならず、旋回支持構造体180は、図35に示す様に、その頂端部182およびその底端部184がそれぞれ上部フレームプレート146および底フレームプレート144の陥凹孔181および183に回転可能な形で取り付けられる、実質的ピボットピンの形を取り、その結果支持構造体180がピボット軸102の回りを回転できることが好ましい。旋回支持構造体180の横孔または溝186は、脚部レバー100が前記孔または溝186の中の縦方向に前後摺動するときに、脚部レバー100上の物体の重量を支えるベアリング面を提供し、支持構造体180が陥凹取付け孔181、183の中で回転でき、脚部レバーがクランクギア91で駆動される時にピボット軸102の回りを脚部レバー100が旋回できるようにしている。
支持構造体180から外側に離れている、支持面16上の点87の足部41が支える物体の重量は、ロッド170のクランクピン部分110をクランク孔172に押し込み、そこに保持するような支持構造体180の回りを、垂直面内で細長ロッド170が回転しようとする偶力を作り出し、クランクピン部170にカラー174を取り付けて、脚部レバー100をクランクギア91上面から離すこともできる。この役割は、クランクギア91を貫通していないクランク孔172でも果たすことができる。したがってクランクピン部110が該クランク孔172の底に当たる。この場合も、これら組立体を作製し、本発明の上記基本構造および機能を提供する方法は数多くある。
小型の物体で軽量なものについては、支持構造体180をより薄い固定壁またはストラット等のより単純なものにして、支持構造体180全体をピボット軸102の回りに回転させることなく脚部レバー100を孔186の中を滑らせ、旋回することもできる。この様な固定壁またはストラットの孔186の変形としては、ロッド170の直径よりも若干大きくなければならず、そして孔186の縦軸に対しロッドの角度が大きい場合には、孔186を若干長めにして(未表示)結合を防いでも良い。ロッド170とかかる固定支持構造体180が共に金属の場合は、この組み合わせにより支持面上にある電気板(未表示)からの電流はロッド170の脚部ストラット21およびレバー100部分を通し、ピボット孔186内のロッド170と支持構造体180の金属−金属接触部を経て、支持構造体180を通り電気モーター(図35には未表示)に伝わる。
この場合もクランクギア91は様々な方法で駆動できる。例えば、電気モーター(図35では未表示)を、上記のようにクランクギア91の外周に取り付けられたギアの歯145と嵌合する、ギア減速組立体142(図16〜18)に取り付けられたピニオンギア143(図16〜18および36参照)と共に上部フレームプレート146の上に取り付けることができる。また、前述の様に複数のクランク機構を、複数の隣接するクランクギアの歯と嵌合するアイドラーギアを使って一つに連結して駆動することもできる。
図37に示す別の駆動機構190は、前記のように図6、10および35に示した別のクランク駆動実施態様に関する記述と同様に、脚部レバー100が縦方向に旋回運動できる形でピボットピン120が溝孔121内に納まる範囲で横方向、外側に向かって伸びている修正脚部レバー100’を有している。さらに脚部100は、図6、10および35に示した様に膝部188まで、または脚部ストラット21まで横方向に真っ直ぐ伸びる変わりに、細長の脚部レバー伸長部100’は脚部レバー100の基端部116から下方に向かって、脚部レバー100より低い位置を横方向、外側に膝部188に伸び、脚部ストラット21となって脚部ストラット21の末端にある足部41につながる。この変形または実施態様190は特に脚部が物体の横方向部ではなく腹側から伸びるカブトムシ型装置のクランクおよびレバー機構として有用であり、故に以下この機構を「腹底部型」脚部実施態様とよぶことがある。
この腹底部型脚部実施態様190では、クランクギア91は、上部フレームプレート146から下に向かって突き出て、そしてクランク軸108を画定しているスピンドルまたはクランクアクスル176に回転可能に取り付けられている。脚部レバー100はクランクギア91と底フレームプレート144の間に摺動可能に挟まれており、そして脚部レバー100の基端部116近くの脚部レバー100より上向きに突き出てクランクギア91のクランクピンホール172に入るクランクピン110を持っている。したがってクランクギアがクランク軸108の回りを回転すると、クランクギアが脚部レバー100を、底プレート144から上向きに突き出て脚部レバー100の溝孔121を通っているピボットピン120に対し横方向に旋回するように動かす。
図37に示すように、脚部取付けシャフト193は脚部レバー100から下向きに伸びて底プレート144の大型孔192を通る。脚部レバー伸長部100’は、シャフト193に回転も動くこともできない形でしっかりと取り付けられ、そして例えばネジおよび/またはセルフタッピングネジ195のような固定具を使ってそこに固定されているソケット194から横方向に向かって伸びている。絶対的ではないが、脚部レバー伸長部100’および脚部ストラット21は十分に横方向、外側に伸びて適当な間隔Dを提供して、上述したような一定直進ストライドストロークとアーチ形の素早い復帰ステップストロークを作り出すことが望ましい。ソケット194の内部形状に結合もしくは嵌合するように、シャフト193に溝をつけるか、または例えば六角形またはその他多角形の外周を持つ形状にすることができ、ソケット194および脚部レバー伸長部100’が脚部レバー100に対し不要に回転するのを防ぐことができる。前記の他実施態様で説明した様に、クランクギア91はピニオンギア(図37には表示されていない)および電気モーター(図37には表示されていない)もしくはその他駆動機構により動かすことができる。
上記のクランクおよびレバー駆動システムは全て、クランク駆動システムを支持面16に対し傾斜させることによって足部経路のステップストローク61時に足部41を支持面16から持ち上げるが、図38および39に示す本発明の別の実施態様では、別の方法で足部を持ち上げる。この別の実施態様200では、第一クランク201および旋回式の脚部レバー203を用いて式(5)が求める角度プロフィールを実現して、ストライドストローク中の速度を一定にする。受動ストラット202を用いて足部41に平坦運動を続けさせる一方で、第二クランク204を用いて足部41の動きをストライドストローク51中は直進方向に拘束し、そしてステップストローク61の間は必要な足部41の持ち上げを提供する。
図38は、図39に図示される上記別実施態様の歩行構造体および制御部を備えた物体200の概略図である。本実施態様を描写する際の参考として、右回りの座標系206を示している。図38および39では、物体200に望まれる前進運動方向がY軸方向であるとすると、図39では、Y軸方向は紙面に対し垂直な方向、紙面に向かう方向である。
図39および40に最もよく見られる様に、大腿部20を含む脚部レバー203は、本体208(図38)に対し固定位置にあるピボット軸207の回りを旋回して式(5)の望ましい角度プロフィールを作り出す。しかし本実施態様では、脚部レバー203はピボット軸207に対し縦方向に前後して摺動することはない。その代わりに、脚部レバー203はピボットピン212に替わってクランクピン210を受ける溝孔209を持つ。したがって、第一クランク201がクランク軸213の回りを矢印211の方向(またはその反対方向)に回転すると、クランクピン210が脚部レバー203およびその大腿部205を動かし、矢印214が示す様に、式(5)の角度プロフィール通りにピボット軸207の回りを前後に旋回させる。この場合も、クランク201は図40の中では、例えばピニオン215により駆動するギアとして描かれているが、それはホイール、プーリー、レバーまたはその他回転可能な装置であればよく、そして機械工学分野の当業者にとって自明である様々な方法で駆動することができる。
脚部レバー203の旋回運動214のピボット軸207は、座標系206のZ軸に対し垂直または平行でなければならず、したがってピボット軸207を回る脚部レバー203の旋回運動214は必ずX−Y平面にある。しかし脚部レバー203の大腿部205の基端部218は、図40に示す様にヒンジピン等を用いて、脚部レバー203のベース部217に旋回可能な形で結合しており、したがって大腿部205の末端部219もまた、図39で矢印223が示す様に、水平方向のピボット軸221の回りをZ方向に上下して動くか、または旋回することができる。もちろん、例えばボールジョイント、ユニバーサルジョイント等の様に、大腿部205の末端部219をZ方向に垂直にだけでなく、X−Y平面上で前後に動かすか、または旋回させることができる当業者周知のその他旋回式結合部が多数ある。
大腿部の末端部219にある膝結合部220およびふくらはぎ部または下脚部ストラット21の基端部222もまた、図39に最もよく見られるように旋回式またはヒンジ式に結合されている。膝結合部220は、下脚部ストラット21の膝部220および基端部222と足部41がピボット軸207および大腿部205の基端部よび末端部218、219が存在する平面内にくるように配置する。(もし大腿部205および下脚部ストラット21が直線であれば、それらは同一平面内に存在する) 言い換えると、上から見た場合、ピボットピン212、ヒンジ220および足部41は共線的、即ち全てのものが同一直線上にあり、そしてクランク201が回転するとかかる直線はピボット軸207の回りを旋回する。また、かかる直線は一定速度で足部41を動かすための式(5)の角度プロフィール獲得の基礎である。
足部41を直進運動させるために、ストライドストロークの間、第一クランク201が脚部レバー203、大腿部205、膝部220、下脚部ストラット21および足部41を式(5)の角度プロフィールに従い揺動する一方で、受動ストラット202は足部41を平面X=0内に保つように下脚部ストラット21を拘束し、能動ストラット224が下脚部ストラット21を拘束して足部41を平面Z=0内に保持する。したがって、受動ストラット202によって足部41を平面X=0に、そして能動ストラット224により平面Z=0内に保持されると、その結果足部41は平面X=0と平面Z=0が交差(図38)する直進(即ち直線)路51内だけを動くように拘束される。その結果、受動ストラット202および能動ストラット224が拘束する形に、第一クランク201が引き起こす運動のこの組み合わせにより、本発明のストライドストロークに適した、直線路51に沿った足部41の望ましい一定直進運動が生まれる。直進ストライドストローク路51の終点では、能動ストラット224も用いて足部41を平面Z=0の上に持ち上げてステップストローク61に備え、次に足部41を加速して素早く次のストライドストローク51の始点に戻す。
ステップストローク61中に足部41をX=0(垂直)面にとどめる必要がない場合でも、そうすることは幾つかの応用にとって有利である。例えば足部41をX=0(垂直)面に維持すれば、地面またはその他支持面に対する物体208の垂直運動を、不要な拘束なしにいくらか調節する幾つかの形態の屈曲性サスペンション(未表示)の実現が見込める。
図39に示す様に、受動ストラット202は、受動ストラットが垂直軸228および水平軸229の両方の回りを旋回して、大腿部205と能動ストラット224によって生み出される下脚部ストラット21の運動を調節する旋回型結合部226によって本体208または物体200のその他フレーム構造体に固定されている。しかし旋回型結合部226は、受動ストラット202基端部231の、本体208に対する横(X方向)、縦(Y方向)または垂直(Z方向)いずれの運動も許さない。受動ストラット202の末端部232は膝部220の下方で下脚部ストラット21と旋回可能な形で、好ましくはボールジョイントもしくはXおよびZ方向2本の直交軸の回りを旋回運動できるその他結合部233により結合している233。したがって、受動ストラット202は下脚部ストラット21のある特定の動きだけを阻止するか、または許可する。これは下脚部ストラット21にいかなる運動も起こさない。一方能動ストラット224は第二クランク204により動かされ、下脚部ストラット21に特定の動き、即ち足部41の平面運動を起こす。最適な解決策の選定には、結果の得やすさや意図する応用への適合性を含む様々な要素が考えられる。例えば、単純な連結方法を用いる場合には、本体208への旋回型結合部226の取り付けにはある範囲に限定され、結合部226のかかる取り付けが可能な他の場所は他の構成要素に接触するかもしれない。
本発明を例示するために、受動ストラット202の結合部226および233の配置が、クランクおよびレバー機構といった他の構成部分にこの様に接触しないようにする本発明の一例をここに示す。この具体的なデザイン例のパラメータは、X、Y、Z座標系206に関連付けて考えるが、この場合座標(0,0,0)を任意に、大腿部205が脚部レバー203に旋回可能に結合している場所212、216とする。したがってこの座標設定では、足部41に望ましい垂直面は図35に示したようなX=0ではなく、若干X値からずれている。この例では、足部拘束に望ましい垂直面はX=5、即ち足部に好適な垂直面は旋回結合部212、216から横に5インチずれている。本例に適したパラメータ(インチ表示、ストライドストローク51中間点で画定)
図39の構成に適したパラメータのこのセットでは、足部41に望ましい運動範囲は−3.3<Y<3.3、−5.5<Z<−3.9およびX=5である。足部41の運動の平面X=5からの誤差は垂直方向の足部運動1インチに対し0.030インチ未満であり、運動全範囲に対して0.2インチ未満である。
上記の様に、足部41は式(5)の角度プロフィール(X−Y(即ち水平)面上に投影された)に従って動く。この角度運動プロフィールでは、上記の様に、クランク201サイクルまたは回転の中のストライドストローク51部では、足部41が定められた通りに一定速度であることを見込んでおり、そしてステップストローク61に加速して迅速に戻ることを含む。ストライドストローク51では、能動ストラット84は足部41を一定Z値、例えば図38ではZ=0に維持しなければならず、これにより足部41は支持面上に植設された状態と本体208に対して直線51上を動く状態を続ける。ステップストローク61では、能動ストラット224(リフティングストラットとも呼ぶ)は足部41を支持面16の上に持ち上げて(図39)引きずらないようにしなければならない。
能動ストラット224は第二クランク204により作動または駆動して上記機能を実行するが、該第二クランクは、図39に最もよく見ることが出来るように、クランク軸213と同一であるZ方向(即ち水平X−Y支持面に対し垂直)と平行な軸の回りを回転する。第二クランク204は大腿部205が実行する角度プロフィール(X−Y平面上に投影された)と同期しなければならず、該大腿部は上記のように第一クランクが駆動する。したがって第二クランク204は第一クランク201の真上に配置することができ、第一クランク201と第二クランク204の両方と結合する垂直シャフト230を使って駆動し、クランク軸213の回りを回転することができる。能動ストラット224は旋回式結合部235によって、垂直面および水平面の両方で能動ストラット224が旋回運動できる形で、基端部236で第二クランクピン238と結合している。さらに能動ストラットはその末端部237に於いて、大腿部205および脚部ストラット21両方に対し、水平軸および垂直軸両方の回りの回転運動を可能にするボールジョイント等の旋回式結合部によって、膝部220に旋回可能に結合している。
経験的には、第二クランク204は、図41に示すように動く。この図は、サイクルの4連続点、即ちクランク224の回転の4連続点にある、第二クランク204、能動ストラット224、大腿部205および膝部220の平面図である。ストライドストローク(1)および(2)の間、膝部は通常第二クランク224と同一方向に回転するが、これは足部41を一定のZ値に保つのに必要な運動、即ち支持面にある足部41を持ち上げない運動である。しかし、ステップストローク61開始時では、大腿部205は前方に動き始めるが、一方第二クランク204は旋回式クランク結合部335を循環路で回転させ続ける。この位相またはサイクル部分では、膝部220およびクランク結合部335は通常相互に反対方向に動くが、これが膝部280および下部脚部ストラット21を比較的唐突に持ち上げて、ステップストローク61へ入る足部41を持ち上げる。図41のステップストローク(4)の中点近くでクランク結合部235は旋回式結合部212、216のピボット軸207から最も遠くなり、足部41をその最高点まで持ち上げる。
ひとたびこの全体像が決定されると、数値最適化を行って設計を仕上げることができる。第二クランク軸213位置および半径は数値決定され、運動面をそのままにするために、初期に決定された他の脚部パラメータの決定とは柔軟に結びつくものである。
以下のパラメータは、上記記載の適切に位置決めされ、最適な半径を持つ第二クランク204を用いて、歩行における直線運動に最適なものとして数値決定した:
第二クランク半径0.33。
足部41は受動ストラット202よってある平面、例えば図38では平面X=0に拘束されていること、そして上記の様に膝部220によって足部は常に旋回式結合部212、216と同一直線上に並ぶこと、そして更に摺動脚部レバー203および大腿部205の角度プロフィールが式(5)の角度プロフィールに近似することから、第一クランク201が回転の大きな部分を動く間、足部41が一定直進運動51で動くことは明らかである。この様にした足部41の、本体208に対する平面X=0での運動を図42に示す。図42のグラフに示される様に、足部運動サイクルのストライドストローク51中、足部41の動きは極めて直線に近く、そしてストライドストローク51中のチェックマークの間隔が均一であることから、足部41の動きがほぼ一定速度であることが分かる。次に足部41は上方向に進むと、ステップストローク61のチェックマークの間隔は開いて不均一となるが、このことは足部41が迅速に戻るためにステップストローク61に加速して入り、続いて次のストライドストローク51の始点に減速しながら戻ることを表している。
地面または支持面上の固定点から眺めると、足部41は図43に示す軌跡を描く。このプロフィールは理想に近いものであり、足部41はほぼ垂直な形で上下して障害物を容易にまたぎ、そうでない時に起こることがある足部引きずりによる停滞を防ぐ。また図43に示すように、ストライドストローク中、足部41はほぼ完全な形で植設され続け、例えば図43ではゼロの位置に在り続ける。
上記図38〜40のクランクおよびレバー駆動装置の変形を図44に示す。この変形は図39の212、216および220にあった複雑な旋回式結合部を必要としない。図44に示す様に、脚部レバー203と大腿部205が旋回結合240をされる点は、基点ではなく、ピボット軸207のピボット基点212から横に距離239離れており、その結果点は実際にZ軸(垂直)と平行であり、基点を通る軸207の回りを、X−Y平面でアーチ形路を描く、即ち旋回する。大腿部205は結合点240の回りを、240、241、212の3点がZ軸を含む面を画定するように旋回する。この配置では各結合で調節が必要な回転軸が1本であることから、結合部240および212での結合は、前記実施態様での複雑な結合212、216に比べて単純である。同様に、前記実施態様の複雑な膝部結合220も、図44の実施態様では、簡素化した旋回接続部241の上を、能動ストラット224と脚部ストラット21との旋回式追加結合部244まで伸びた脚部ストラット21の伸長部243によって、簡素化されている。そのため、大腿部205と能動ストラット224の両方を同一ピボット軸で下脚部ストラット21と結合する必要がなくなっている。しかしそれでも旋回式結合部244は垂直軸および水平軸の回りの回転、即ち自由度2の回転ができる必要がある。第一クランク201および第二クランク204は、図36のこれらクランク201、204と実質的に同一であるため、図44には示していない。図44の変形を最適化することで、図39の実施態様と実質同じ性能が実現できる。
図44のこの変形のデザインは、サスペンション(未表示)の追加の可能性を考慮にいれながら、2段階で最適化された。サスペンションがない場合、足部41はストライドストローク51の間、共直線になることだけが求められる。サスペンションを追加した場合には、足部41をその全運動を通してY−Z面と平行な面、例えば図55の平面X=0に拘束することが必要である。それ故、2種類の最適化を行った。第一の最適化は、全運動を通して足部41が同一平面運動をするように、受動ストラット202に対して旋回式アンカー結合部226の位置を固定した。第二の最適化は、第二(持ち上げ)クランク204(図44では示していない)の位置および半径を最適な歩行に合わせて設定した。第一の最適化の結果を表3に示す。
足部41にとって望ましい運動域は−2.7<Y<2.7、−5.9<Z<−5.0およびX=5である。平面X=5からの足部41の運動誤差を図45に示した。図の6つの曲線は、運動域を画定する面内の6つの経路を通る足部41のX座標を表したものである。平面X=5からの偏差は0.030インチ以内である。
図46には6つの経路が示されている。最適化に用いた誤差関数は、これら6つの経路の積分に基づいた。
この方法は、平面内にあるこの経路上にないその他の点の誤差が同程度以下の誤差をもつと仮定している。これら経路間にある曲線の幾つかを調べて、この仮定を検証した。図45の誤差については、パラメータを適当に選んだ場合、足部41の動きは望まれる運動域全体について誤差0.6%の範囲内である面に拘束されると解釈される。
第二の最適化を行い、駆動軸213および第二(持ち上げ)クランク204の半径の最適位置を見出した。最適パラメータの完全な組み合わせを表4に示す。特徴的な足部41の動きは、図39のクランクおよびレバー機構の特徴的な動きと実際的に区別がつかない。
ストラットクランク半径0.33.
上記の説明は本発明の原理の例示と解釈される。更に、数多くの改良および変更が当業者にとって容易であることから、本発明を上記示し、説明した構造および行程そのものに限定することは望ましくない。したがって、適当な変更および均等物は全て本発明の範囲内であることを主張する。「(一つのものを)含む」、「(複数のものを)含む」、「含んでいる」、「包含している」および「包含する」という言葉は、本明細書の中で使用される場合には、記載された特徴、数値、構成要素またはステップの存在を明記するものであるが、1またはそれ以上の、その他特徴、数値、構成要素、ステップまたはその組み合わせの存在または追加を排除するものではない。