JP4273168B1 - 推力発生装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】直径の小さい噴出水流を大直径の水流に変換することが可能であると共に、船首尾端部に設けることが可能な推力発生装置を提供すること。
【解決手段】ポンプ水流の吐出口に釣鐘型のノズル12を結合し、その内部に翼型断面のリング21及びその内側水流の中心線上に砲弾型のコーン22を配置し、吐出流の整流及び推進力発生を行う。又、コーン底部を開放し、更にリング21前方のコーン肩部にスリット24を設け、コーン内部水流を外側水流に疎通させるよう構成する。さらには、ノズル12を左右舷外板開口に向け旋回可能とすると共に、ノズル12の位置と連動して外板開口を閉鎖或いは開放する回転扉を設ける。
【選択図】図4

Description

本発明は排水量型船舶の船首端部あるいは船尾端部に設置可能としたサイドスラスターの推力発生装置と、それに連動して外板開口を自動的に開閉する回転扉に関するものである。
サイドスラスターとは船舶の船首や船尾に設置されている、船を横方向に動かすための装置をいう。このサイドスラスターは、大型船、殊に離着岸の回数の多いフェリ−等船舶において装備されることが多い。一方、小型船では比較的操作がしやすいことや、省力で船が移動できることからサイドスラスターが装備されることは少ない。
しかし、小型船でも近年の人手不足や乗員の高齢化に伴い、サイドスラスター機能の要請が高くなってきた。そこで、実開平5−16594では清水冷却装置に用いられている海水用ポンプからの海水を噴流させることにより、スラスト力を発生させるサイドスラスターが提案されている。
実開平5−16594号公報
各種船舶の運用に当り、環境保全と省エネルギーは、少子、高齢化社会の進展と共に回避できない大きな問題であり、乗員の高齢化、省人化、国際化の中で船内諸作業の単純化、安全確保が重視されつつある。特に主機関の電動化を主体とする船舶自体の省エネルギー化と高性能化が重要な課題となる中で、本発明の装置は技術的に離着岸作業の単純化、合理化を容易とするサイドスラスターを提供するものである。
上記の課題の下に船価を圧迫することが少ない船上の海水ポンプの噴流を利用した推力を得る方法が提案されるが、一般に大容量ポンプは揚程も大きく無作為に高速の噴流を海中に放出しても渦流となり、求められる反力としての推力を発揮できず、その水柱は周辺海水の粘性を超えて滑りつつ静水圧下にある無限の海水域内に拡散消滅するのみで、効果的な推力を与えることが出来ない。
この現象は移動させようとする排水体の抵抗が大きい程、転回の初動が困難で実用化に至っていない。
又、排水量型船舶に対するサイドスラスターの推力は高速を得る事ではなく、微速で効果的に大きな推力を得る事が求められる。本発明の課題の一つは、直径の小さい海水ポンプの噴出水流を大直径の水流に変換することにある。つまりは、一定出力の下で効率的に実用的な直径を有する一般的なスラスターに近似の水流を排出することを目的とする。
一方、通常のサイドスラスターは左右舷に貫通するダクト内に配置した可逆推力発生機能を持つプロペラによって推力を発生させているが、本来サイドスラスターは可能な限り船首先端部に設けることが船首尾転回推力を得るに有利である。
しかし乍ら、装置全体の大きさ、つまりはプロペラを回転させるための軸系の複雑化等、船内配置上の制約により船体平行部に近い位置に設けざるを得ず、これによりダクトの長さが必要以上に長くなり、推力低下を招く事となる。そこで、サイドスラスターダクト出入口の開口位置を水線に入射角のある前方に移すと、船体の抵抗増加となり、さらには他物の流入を招く事にもなる。そこで出入口両端開口部にガードを設けると、ダクト自体の抵抗増加を招く事になる。このことは船尾部においても例外ではなく、これらの制約がサイドスラスターの最適位置への設置を困難としている。
さらに、推力発生方向について正逆何れの方向にも等しい推力を得るにはプロペラ本体を回転することによってのみ可能であり、それの実施は機構の複雑さを伴うこととなる。
なお、プロペラ式推進器の後流は回転流となり汎用ポンプの噴流の直進水流に比し効率的でない。
そこで本発明は、前述の諸問題を解決する為に創出されたもので、その要約は釣鐘型外筒のノズルの内部に推力発生機構を設け海水ポンプの噴出水柱を拡大、整流しつつ推力を得ることにより、同等出力のスラスター、或いはコルトノズル推進器に匹敵する推力を持つ直進流を近似の直径の下で得ようとするものである。
さらに装置がコンパクトであることを利用し、船首あるいは船尾の先端部に設置し、左右舷に旋回を可能とする事により効果的な船首尾転回推力を得ると共に、作動位置の外板開口にノズルの位置移動に連動し自動的に開閉する扉を配置する事により航海中の船体抵抗の増加と、流木、流氷等の他物の流入のないサイドスラスターを得る事を目的とする。
また、港湾等における優れた操縦力を有する全方向推力発生装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る推力発生装置は以下のように構成した。
請求項1:ポンプ水流の吐出口に釣鐘型のノズルを結合し、その内部に翼型断面のリ ング及びその内側水流の中心線上に砲弾型のコーンを配置する。
請求項2:請求項1記載の推力発生装置において、コーン底部を開放し、さらに リング前方のコーン肩部にスリットを設ける。
請求項3:船首あるいは船尾の先端部内に存するノズルを左右舷外板開口に向け旋回 可能とすると共に、ノズルの位置と連動して外板開口を閉鎖或いは開放す る回転扉を設ける。
請求項4:回転扉の上方及び船体端部水線付近に発光体を設ける。
請求項5: ポンプ水流の吐出口に釣鐘型のノズル12を結合し、その内部に翼型断
面のリング21及びその内側水流の中心線上に砲弾型のコーン22を配
置し、さらに当該ノズル12を船底部に懸垂した紡錘型半部型状のハウ
ジング65内に装備し、ポンプ水流の吐出管11の旋回に伴いハウジン
グ65及びその内部に存するノズル12を水平方向に旋回自在に設け
る。
請求項6:請求項5記載の全方向推力発生装置において、コーン底部を開放し、さら にリング前方のコーン肩部にスリットを設ける。
本発明は海水ポンプの噴流を利用するため、プロペラ式のサイドスラスターのようにサイドスラスター装置自体にモータを装備する必要がない。ゆえに本発明によればサイドスラスター及びその関連装置を小型化できる。これにより船首尾艙内あるいは機関室内に収めることが可能となると共に、サイドスラスターの位置が最適となるよう選定できる。すなわち、そのコンパクトさゆえに船首あるいは船尾端付近に設置することが可能なり、転回を効率的に行うことができるのである。
構造が単純であるので鋼製に代え高機能プラスチック化も可能となり、製品の軽量化、標準化が容易となる。
請求項1記載の推力発生装置においてはノズルからの排出流は半径方向に平準化された直進流となり、効率的に推力を得ることができる。すなわち、ポンプ水流の吐出口に釣鐘型のノズルを結合し、その内部に翼型断面のリング及びその内側水流の中心線上に砲弾型のコーンを配置してあることから、吐出流の拡大と整流が可能となり、つまりは排出流は半径方向に平準化された直進流となるのである。これにより同等出力のスラスター、或いはコルトノズル推進器に匹敵する推力を持つ排出流を近似の直径の下で得ることができるのである。
又、請求項2記載の推力発生装置は、コーンの肩部にスリットを設け、コーン後端部に発生する後流域のよどみをコーンの内部を経てノズル内部に疎通させる構造を有している。ノズル内部に疎通された水流により、ノズルの内部構造の変化に伴ってこの部位から発生する流れの乱れを抑制する効果を発揮するのである。
請求項3記載の推力発生装置においては、自動的に開閉する回転扉によりダクト開口部の抵抗増加を防ぐと共に、流木・流氷等異物の侵入を防止できる。
サイドスラスター室は非水密区画であるので軽吃水でのメンテナンスが可能となる。
請求項4記載の推力発生装置は、回転扉の上方及び船端水線付近に発光体を設けてあるので回転扉と外板との判別困難なサイドスラスターを含む船首尾端部近傍の安全性を高めることが可能となる。
請求項5及び請求項6記載の発明においては、船底部に旋回自在に懸垂した紡錘型半部型状のハウジング内に請求項1、請求項2記載のノズルやリング、コーン等を装備するものである。ハウジングが旋回自在であることからノズルから任意方向に水流を排出でき、港湾等における操縦性が高まるのである。
請求項2記載の構造、つまりは整流構造は汎用のプロペラ推進器にも転用可能なものである。具体的には図20に示すようにプロペラハブ55の外面に間隙をおいて円筒型の外筒56(非強度部材)を翼根部74に固定し、その後端面57を開放し、プロペラ翼根部74前方にスリット58を設けてある。つまりは外筒56後端部に発生する後流域のよどみを、外筒56の内部を経て翼75前方に疎通させる構造を有しているのである。これにより翼75前方に疎通された水流が、翼75近辺で発生する渦流を抑制する効果を発揮するのである。
本発明の構成を下記の各図を参照しつつ詳細に述べる。
図1は本発明装置を装備した船首部の縦断面図、図2は装置設置床面での平面図、図3は船首端部の装置位置での横断面図、図4は本装置の推力発生装置に係わるノズルの縦断面図、図5はノズルの構成を示す正面図であり、図6、図7及び図8は推力発生装置室内におけるノズル及び回転扉の各作動位置を示す平面図、図9及び図10は回転扉の旋回中心部の詳細図であり、図11は図6におけるA−A矢視図であり、図12は図6におけるB−B矢視図であり(作図の都合上回転扉、ノズルはそれぞれ船体中心線上にあると仮定した)、図13は図11におけるC−C矢視図であり、図14は同じくD−D矢視図であり、図15は推力発生装置の回転扉閉鎖機構の詳細図、図16はノズル及び回転扉のロック装置の下端部配置図であり、図17は同上装置のロック位置における詳細図であり、図18は同上装置の開放位置における詳細図であり、図19は回転扉支持材と肘板を示す概略説明図であり、図20は本発明のノズル構成の一部を汎用のプロペラ推進器に適用した場合の説明図であり、図21は本発明のノズルを平坦な船底に適用した場合の構成図であり、図22は本発明のノズルを船尾に設置した場合の概略構成図である。
本発明の適用船舶は小型船から大型船に及ぶが、利用可能な海水ポンプの能力と、その経済性によって最大船型は制約される。以下の実施形態は総トン数500トン未満の船舶でサイドスラスターとして要求される推力約2トンに対応するものである。
この場合、要求されるサイドスラスターの出力は通常180〜200PS(132〜147キロワット)であり、一般的な曳船のボラードプル100PS(73キロワット)当り1.0トン〜1.1トンに対応し、内部に推力発生装置としてのプロペラを有するダクト直径は約750ミリメートルである。
故に、以下の実施形態も、出力180PS(132キロワット)の海水ポンプによって速度が半径方向に平準化された、低速直進直径750ミリメートルの吐出流を得ようとするものである。この場合、対応する海水ポンプは通常出力180PS(132キロワット)、吐出管径は約250ミリメートル程度である。したがって、海水ポンプの吐出流の直径を3倍に拡大、減速し、ダクト径750ミリメートルの一般的なスラスターに近似の排出流を微速転回推力として利用し得る構成を実施形態とした。
先ず本発明の構成について述べる。
本発明のサイドスラスターは推力発生装置、外板開口開閉装置及びこれらの操縦装置で構成される。図1乃至図3においてサイドスラスター1は簡潔小型であるので、これを船首艙2の先端部の水密区画のサイドスラスター室3に設置することが可能であることを特徴とする。
その推力発生装置の動力源である海水ポンプ4は、船首艙2後方チェインロッカー5下方付近の上甲板6より出入可能な水密区画のポンプ室7内部に設置し、吸入管8より吸入した海水を吐出管9及びその垂直管上部10及び回転可能な垂直管下部11を経て外筒が釣鐘型のノズル12に吐出し、水流を拡大・整流した後、ノズル端部延長リング13を経て外板開口部14より排出する。
その開口部14には吐出管9の垂直部分固定配管10、回動可能管11を旋回中心とする非水密の回転扉15を設ける。したがってサイドスラスター室3は外部に対しては非水密となる。
なお、係船作業甲板16には吐出管9の垂直部10、11に取付けられたギヤ17を経て導設された、サイドスラスター操作ロッド18の操作用のハンドル19を設ける。これによりハンドル19を回動させることで垂直部11を回動させることが可能となる。そして、垂直部11はエルボー管20を介してノズル12と連結されていることから、ハンドル19の回動によりノズル12は垂直部11の中心線63(図4参照)を回動中心として回動することになるものである。
続いて本発明のサイドスラスターの推力発生装置の内部構成及び作用について述べる。
図4において、釣鐘型外筒のノズル12は吐出管9の垂直部11に連結したエルボー管20の末端に結合されている。その内部には図4、図5に示すように内筒として翼型断面を持つリング21が中心線上に位置する砲弾型のコーン22と共に整流板23を介して固定されている。なお、コーン22の内部は中空で底面は開放されている。又、リング21とコーン22は整流板23で相互に固定され、さらにノズル外筒に固定されている。(図5はノズル12を吐出側から見た状態を示している)。
なお、ここに釣鐘型とは径が漸次円弧状に拡張し、最大径に至った後は外縁部が直線状の円筒型を呈する形状をいう。翼型断面とは前縁は丸く、前縁から三分の一程度のところで最大の厚みになり、後縁が細長い涙滴形状を呈し、断面の上下中間を結ぶ線が円弧状な形態をいう。砲弾型とは釣鐘型に比し径が緩やかに拡張する形態をいう。
故に、エルボー管20より吐出された噴流はノズル12の内面の断面積が増加し始める位置でコーン22によって半径方向に拡大され、ノズル12内での半径方向の流速を平準化すると共に、リング21に迎え角(θ)をもって流入し揚力(L)を発生させ、推力方向分力(T)を得ている。さらに外筒であるノズル12と内筒であるリング21の間の断面積は水流の入口より出口側が小さくなるよう設定され、リング21の内面より流速を増加させ揚力を得ているが、さらにリング21の外面、ノズル12の内側面に摩擦抵抗を減少させる塗装又はチタン等金属クラッド鋼のライニングを行い、より効果を上げることも可能である。
さらに、コーン22の肩部にスリット24を設け、コーン22後端部に発生する後流域のよどみ60をコーン22の内部を経てノズル12内部に疎通させ、ノズル12の内部構造の変化に伴ってこの部位から発生する流れの乱れを抑制する効果を与える(図4における矢印が水の流れを表している)。
なお、このコーン22の外面に発生する渦流抑制装置は、一般のプロペラのハブ渦の整流に適用可能である。すなわち図20においてプロペラハブ外面55に間隙をおいて円筒型の外筒56(非強度部材)を翼根部に固定し、その後端面57を開放し、プロペラ翼根部前方にスリット58を設ければ前述と同様な機能を得ると共に、外筒外面翼根部の回転流を緩和し直進流に近づけ、さらにハブ渦を減少させる作用が得られることを特徴とする。
続いて本発明のサイドスラスターの特徴とする外板開口部の回転扉15の構成について述べる。
図1、図6、図7、図8、図9、図11、図12、図13 において非水密回転扉15は外側板27と内側板28によって構成され、外側板27は当該部の外板「切取り板」を使用して精度を確保すると共に回転可能とする。又、内側板28との間に内部空間29を確保し、水中における見掛けの重量を、その浮力によって軽減し、回転扉15の滑動を容易に行えるものとする。
左右舷の回転扉15・15の旋回中心は吐出管の垂直部10、11の中心線63にある。回転扉15を構成する支持材30は、吐出管9の垂直部11の周囲にあって遊動可能な板リング25,26に肘板45a、45bを介して取付けられている(図19参照)。ここに肘板45a、45bはL字型を呈する板体であり、一方辺部は支持材に固定され、他方辺部には開孔50及び切欠き部51が設けられている。又、肘板45a、45bは円弧状に切欠いており当該部位で遊動リング25・26に固定されるものである。
一方舷に存する回転扉15の支持材30上部に肘板45aを固定し、当該肘板45aと、遊動可能な板リング25を固定する。他方舷に存する回転扉15の支持材30下部に肘板45bを固定し、当該肘板45bと、遊動可能な板リング26を固定するものである。これにより左右回転扉それぞれの支持材30・30の旋回滑動を同一平面上で行えるように配置していることになる。
なお、この支持材30は図13に示すように断面を箱型とし、回転扉15とバランスを持つ浮力を得る空間を保持している。
回転扉15の下端にはそり31を設け滑動を容易にし、さらに水中での浮動を抑制するため頂部にもそり32を設けている。当該そり32と摺接するガイド板64がスラスター室3内に設けられている。
又、板リング25・26の上部及び下部にも板リング25・26及び当該板リング25・26に固定された肘板45a・45bの浮動或いは沈降を抑制する目的で、垂直管11に固定した板リング33・33が、板リング25・26の上下に取付けられている。
支持材30の長さは外側板27が船体の外板と同一面にならぬよう、その内側に控えてあるが、回転扉15を開閉するとき外側板の前端が外板より僅かにはみ出す部位34が発生する(図6参照)。しかしこれは回転扉15の旋回中のみの短時間であり、問題とはならない。なお、水線の入射角が大きい船側外板の場合は、このはみ出し部位34は小さくなる。
次に、サイドスラスターの操縦装置及び固定装置について述べる。
本発明のサイドスラスターは推力を左舷、右舷の任意方向に発生させるためにノズル12自体を旋回させる必要があり、それに伴って回転扉15を連動させるので以下の機構を設けている。
図14に示すように、吐出管の垂直部11は水密座金35及び垂直軸下端のベアリング36によって旋回を可能とすると共にノズル12に発生する推力及び自重を支持する。その旋回力はギヤ17によって垂直ロッド18を介し係船作業甲板16のハンドル19によって伝達される。なお、固定されている吐出管末端の垂直部11はギヤ17内側のシール37によって水密を保持している。
次に、以上の装置を用いてノズル12と、それに連動する回転扉15の開閉動作について述べる。
図6は、ノズル12が右舷において作動中の位置、すなわち係船作業中つまりノズル12より吐出流を排出している状態では、回転扉15は左舷の開口部14の閉鎖位置にあることを示し、図7は、ノズル12が左舷において作動中の位置、すなわち係船作業中つまりノズル12より吐出流を排出している状態では、回転扉15は右舷の開口部14の閉鎖位置にあることを示している。又、図8は、ノズル12の非作動時(航海時)つまりノズル12より吐出流を排出していない状態では、ノズル12は船体中心線上の位置38に定置し、回転扉15は左、右舷共に閉鎖位置にあることを示す。つまりは航海中の位置から係船作業位置にノズル12を旋回すると、回転扉15はノズル12に押され、ストッパー39によって停止する。
さらに、ノズル12が作動時の位置から定位置或いは反対舷に移動すると、回転扉15は図9、図10に示すように、その支持材30に取付けた丸棒40とスラスター室頂板の下面に取付けた丸棒41との間に、吐出管の垂直部11を囲み介在させた、捩りコイルバネ42によって自動的に閉鎖位置に復帰し、ストッパー44により定位置に停止する。そして、その動力はノズル12が作動位置に移動するにあたって、ギヤ17を介しハンドル19の回転操作によって与えられたものである。なお、ストッパー39及びストッパー44はサイドスラスター室3の床面に設けられたものである。
又、回転扉支持材30の可動範囲は左舷,右舷それぞれのストッパー39からストッパー44の間のみとなり、ノズル12の可動範囲は船体中心上の位置38を経由し,支持材30がストッパー39によって行き止めとなり、左舷・右舷それぞれのストッパー39・39の間に制限されていることとなる。
さらに、固定装置について述べる。図1、図6、図9、図14及び図16において、操作ロッド18は吐出管の垂直部11前方の船体中心線に位置し、ギヤ17と共に上下に摺動可能となっている。左、右舷の回転扉15・15は肘板45a・45bを介して遊動可能な板リング25・26に取付けられている。垂直部11には肘板46が固定されている。当該肘板45a、肘板45b、肘板46はロッド18に貫通されている。
図中におけるロッド18は最も下方に押し下げられた位置47(図17参照)にあり、各肘板45a・45b・46は、ロッド18により串刺しとなり、これにより回転扉15は閉鎖位置、ノズル12は船体中心線上の格納位置38に固定される。
係る状態(航海中位置)から係船作業に入る時は、ロッド18を図18における48位置に引上げる。すると吐出管の垂直部11に固定された肘板46は左右に旋回可能となると共に、ロッド18に設けた小径部分49の位置にある肘板45a・45bは、その開孔50に設けた切欠き部51の開放側の反対方向に旋回可能となる。これにより回転扉15は夫々の舷に向かってが旋回可能となる。そこでノズル12が回転する側の任意舷の回転扉15が、当該ノズル12によって押され、旋回することとなるが、旋回後ロッド18を押し下げると反対舷の回転扉15はロッド大径部52によって固定することが可能である。
なお、ロッド18の大径部52、小径部49及び肘板45a、45bの開孔50、切欠き部51の関係は以下の通りである。すなわち大径部52の直径は、開孔50の直径よりも小さいが、切欠き部51の幅H(図10)よりも大きい。小径部49の直径は幅Hよりも小さい。
さらに、ノズル12と両舷回転扉15の同時固定は、前述の操作により回転扉15・15は肘板45a・45b及びロッド18を介して一体化するので、両舷の回転扉の夫々のストッパー44・44によって左右への旋回を阻止し完了した事になるが、作業甲板上のハンドル19において落しボルト(不図示)の利用等により固定することで、安全装置となすことも可能である。
以上の実施形態を超える大型船に対しては、旋回操縦を軽快にする必要がある。この点ノズルには可動部分がないことから、ノズルの一部或いは全部をプラスチック化することは容易であり、さらに回転扉は正四角型とし、四隅上下方向に耐海水用キャスターを配置すること、回転扉の剛性を強化するため回転扉の浮力タンク内に発泡プラスチックを注入すること等により実施を容易にすることが可能である。
さらに大型化するためにはポンプ容量の増大が必要であり、船価の上昇を伴うが、図1に示すように吸入管側の逆止弁53a及び吐出管側の逆止弁53bを塞止弁とし、そのポンプ側に清水管54を接続し海水ポンプ4を洗浄することとすれば、汎用清水ポンプの使用が耐用年数を損ずることなくコストを抑制し実施することも可能である。
船型の大型化に伴って、スラスター室の幅が増大する。係る事態に対してはノズル12の延長リングを13を延長すること、及びノズル12自体の長さを拡大すること等によって対応可能である。又、船首部断面船型が図3に示すようにU型61或いはV型62の場合においても同様な方法で対応可能である。
又、係船作業等船首尾部において係船索を取り扱う小舟艇の回転扉付近への接触を避けるため、特に夜間濁水中等での水線付近の視認のため、作業甲板舷端付近の作業灯等、灯光を光源とする白色半球型強化ガラス製反射球、又は電力配線を必要としない発光体59に強化ガラスによる水密カバーを被せ、扉の直上及び船体端部水線付近に取り付けることにより回転扉と外板との判別困難なサイドスラスターを含む船首尾端部近傍の安全性を高めることが可能となる。
なお、本発明の実施形態は主としてバウスラスターとして述べてきたが、図22に示すように機関室73内の海水ポンプを利用し、そのまま船尾部72において適用可能な場合が多い。
また、浅吃水、巾広船等船底が平坦な場合は、請求項5及び請求項6記載の発明を適用しノズル12を船底に懸垂することによって対応することも可能である。
以下、その詳細について述べる。図21において紡錘型半部型状のハウジング65は釣鐘型ノズル12と、舵軸として利用される吐出管11の外側の水流を整える目的のもので、その上下には舵面として作用する水平断面が流線形のフィン66を設け、全体がバランスラダーとして機能する面積配分となっている。
吐出管垂直部11は舵機室67底部において、軸受68によって水平方向の垂力と上下浮動に対応し、さらにその上部には360度旋回可能な操舵機69を設置してある。なお、これらの装置は実用化されている既存の技術を利用可能である。
さらに、舵軸として利用されている吐出管垂直部11上方には海水ポンプ4と共に固定配管となっている吐出管10を配管し、シールケース70によって連結部の水密を保持している。
本装置によれば図22に示すように、船尾部のサイドスラスターとして機能させるほか、推進器としての転用も可能であり、その場合、排出流の拡大と共に船体の前進に伴う伴流利得を利用し、さらに推力を得るために翼型断面を有するリング71を後端に追加付設している。
なお、船型によっては本装置を海水ポンプを含み複数個装備し、さらにインバーター制御電動機駆動によるポンプ能力の拡大等により、推力を増加させることは容易である。
本発明装置を装備した船首部の縦断面図。 装置設置床面での平面図。 船首端部の装置位置での横断面図。 本装置の推力発生装置に係わるノズルの縦断面図。 ノズルの構成を示す正面図。 推力発生装置室内におけるノズル及び回転扉の各作動位置を示す平面図。 推力発生装置室内におけるノズル及び回転扉の各作動位置を示す平面図。 推力発生装置室内におけるノズル及び回転扉の各作動位置を示す平面図。 回転扉の旋回中心部の詳細図。 回転扉の旋回中心部の詳細図。 図6におけるA−A矢視図。 図6におけるB−B矢視図。 図11におけるC−C矢視図。 図11におけるD−D矢視図。 推力発生装置の回転扉閉鎖機構の詳細図。 ノズル及び回転扉のロック装置の下端部配置図。 同上装置のロック位置における詳細図。 同上装置の開放位置における詳細図。 回転扉支持材と肘板を示す概略説明図。 本発明のノズル構成の一部を汎用のプロペラ推進器に適用した場合の説明 図。 本発明のノズルを平坦な船底に適用した場合の構成図。 本発明のノズルを船尾端部に設置した場合の概略構成図
符号の説明
12・・ノズル
14・・外板開口部
15・・回転扉
22・・コーン
24・・スリット
55・・プロペラハブ
56・・外筒
57・・底部
58・・スリット
65・・ハウジング
74・・翼根部

Claims (6)

  1. ポンプ水流の吐出口に釣鐘型のノズル12を結合し、その内部に翼型断面のリング21及びその内側水流の中心線上に砲弾型のコーン22を配置し、吐出流の拡大と整流及び推進力発生を行う推力発生装置。
  2. コーン22底部を開放し、更にリング21より上流側のコーン肩部にスリット24を設け、コーン22内部水流を外側水流に疎通させた請求項1記載の推力発生装置。
  3. 船首あるいは船尾の先端部内に存するノズル12を左右舷外板開口14に向け旋回可能とすると共に、ノズル12の位置と連動して外板開口14を閉塞或いは開放する回転扉15を設けた請求項1又は2に記載の推力発生装置。
  4. 回転扉15の上方及び船体端部水線付近に発光体59を設けた請求項3記載の推力発生装置。
  5. ポンプ水流の吐出口に釣鐘型のノズル12を結合し、その内部に翼型断面のリング21及びその内側水流の中心線上に砲弾型のコーン22を配置し、さらに当該ノズル12を船底部に懸垂した紡錘型半部型状のハウジング65内に装備し、ポンプ水流の吐出管11の旋回に伴いハウジング65及びその内部に存するノズル12を水平方向に旋回自在とした全方向推力発生装置。
  6. コーン22底部を開放し、更にリング21より上流側のコーン肩部にスリット24を設け、コーン22内部水流を外側水流に疎通させた請求項5記載の全方向推力発生装置。
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