JP4272871B2 - 水栓 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば湯と水との混合比及び流量を調整して給出するようにした混合水栓等の水栓に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、この種の混合水栓においては、水栓外部の給水管及び給湯管とそれぞれ連通する給水通路及び給湯通路と、吐水のための吐出通路とが水栓本体に形成されている。水栓本体上には弁ケースが接続配置され、その内部には固定弁体及び可動弁体が収容されている。そして、操作レバーの操作により可動弁体を固定弁体に対して相対移動させることにより、給水通路からの水と給湯通路からの湯との混合比及び流量が調整され、その混合流体が吐出通路を介してから吐出されるようになっている。
【0003】
そして、この種の混合水栓では、製造を容易にしてコストダウンを図るために、水栓本体や弁ケースを合成樹脂により成形することが実施されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−14420号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記のように水栓本体及び弁ケースを共に合成樹脂で形成した従来の水栓においては、これを寒冷地等で使用した場合、弁ケースの破損を生じることがあった。
【0006】
この原因としては、以下のことが考えられる。すなわち、水栓本体や弁ケースが合成樹脂であるために金属と比較して熱伝導率が低く、水栓本体や弁ケースの内部に外気温度が伝達され難い。このため、水栓本体や弁ケースの内部の水は、水栓に接続した金属製の給水管や給湯管内の水の凍結よりも遅れて凍結する。このため、水が凍結することによる体積の膨張分が水または湯の供給通路の終点である弁ケース内に集中して弁ケースの内圧が過度に上昇し、その結果、弁ケースの破損に至る。
【0007】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、合成樹脂製の弁ケースが、その内部に残留した流体の凍結等に伴う内圧上昇によって破損するおそれを防止することができる水栓を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、供給通路及び吐出通路を有する水栓本体と、その水栓本体上に接続配置され、供給通路から吐出通路への流体の流れを制御するための弁体を収容する弁ケースとを備え、前記水栓本体及び弁ケースをそれぞれ合成樹脂により形成してなる水栓において、前記水栓本体と弁ケースとの間には、前記供給通路の内圧が上昇したときに、水栓本体上からの弁ケースの離間移動を許容して水栓本体及び弁ケースの少なくとも一方の破損を防止するための移動許容手段を設け、前記弁ケースには、該弁ケースの供給通路を囲繞するように補強部材が配設されていることを特徴とするものである。
【0009】
従って、この請求項1に記載の発明によれば、水栓本体及び弁ケースが共に合成樹脂で形成されている場合、寒冷地等においてそれらの内部に残留した流体が遅れて凍結することによって内圧が上昇しても、移動許容手段の機能により、水栓本体や弁ケースの破損のおそれを確実に防止することができる。
【0011】
また、この請求項に記載の発明によれば、供給通路の内圧が所定以上に上昇したとき、弁ケースが水栓本体上から離間する位置に移動される。よって、内圧が逃がされて、水栓本体あるいは弁ケースの過度の内圧上昇を抑制することができて、水栓本体や弁ケースの破損を確実に防止することができる。
【0013】
さらに、この請求項に記載の発明によれば、常に弁ケースの一部が補強部材により外周側から囲繞保持されて補強されている。このため、供給通路の内圧上昇時に、弁ケースが破損するおそれを確実に防止することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下に、この発明を混合水栓に具体化した第1実施形態を、図1〜図5に基づいて説明する。
【0015】
図1〜図3に示すように、この混合水栓の水栓本体11は、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等のエンジニアリングプラスチック(以下、単にエンプラという)、すなわち合成樹脂により形成されている。水栓本体11の上部外周にはネジ部12が形成されるとともに、上端には一対の位置決め凹部13が形成されている。水栓本体11の下端には、螺子軸14が固定されている。そして、水栓本体11をシンクの天板等の取付板16上に配置した状態で、螺子軸14に対し締付体15を挿通し、ナット15aを螺子軸14に螺着することにより、水栓本体11が取付板16上に立設固定されるようになっている。
【0016】
前記水栓本体11の上下両端間には供給通路としての給水通路17及び給湯通路18が隣接して貫通形成されるとともに、水栓本体11の上端とその下部の外周との間には吐出通路19が貫通形成されている。給水通路17及び給湯通路18の下端開口部とそれぞれ連通するように、水栓本体11の下端には給水管20及び給湯管21が連結されている。吐出通路19の外周側の開口部に対応するように、水栓本体11の外周には下部ケース22が水平面内で回動可能に取り付けられ、その一部には吐出通路19と連通する吐出管22aが突設されている。
【0017】
図1及び図4に示すように、前記水栓本体11の上端には弁機構23が接続配置され、この弁機構23を覆うように、水栓本体11のネジ部12には上部ケース24が螺着されている。弁機構23は、下部弁ケース25と、その下部弁ケース25上に取り付けられた上部弁ケース26と、下部弁ケース25内に固定配置された固定弁体27と、上部弁ケース26内において水平移動可能に収容配置された可動弁体28とを備えている。また、上部弁ケース26は、その上部内側に軸支体26aを備え、その軸支体26aは上部弁ケース26の中心軸線を中心にして回動可能である。また、前記可動弁体28は、固定弁体27の上面においてその固定弁体27に対してスライド可能である。
【0018】
前記両弁ケース25,26は、それぞれPOM(ポリオキシメチレン)等のエンプラ、すなわち合成樹脂により形成されている。図1,図2及び図5に示すように、下部弁ケース25の下面には、前記給水通路17の一部を構成する給水口29及び前記給湯通路18の一部を構成する給湯口30が隣接して突出形成されるとともに、前記吐出通路19の一部を構成する吐出口31が形成されている。そして、この給水口29及び給湯口30の下面における開口周縁にはパッキン32がそれぞれ取り付けられている。また、下部弁ケース25の下面には、一対の位置決め突起33が突設されている。そして、この位置決め突起33が水栓本体11の前記位置決め凹部13に係合されることによって、下部弁ケース25の給水口29、給湯口30及び吐出口31が前記水栓本体11の給水通路17、給湯通路18及び吐出通路19にそれぞれ接続されている。
【0019】
固定弁体27及び可動弁体28は、セラミックにより形成されている。図4に示すように、固定弁体27には四半円弧状の通水孔34及び同じく四半円弧状の通湯孔35がほぼ同一円周上において形成されるとともに、通水孔34と通湯孔35との間においてほぼ半円状の吐出孔36が形成されている。これらの通水孔34,通湯孔35及び吐出孔36はそれぞれ給水通路17,給湯通路18及び吐出通路19の一部を構成する。また、可動弁体28には連通孔37が形成され、その連通孔37には通水音を低減させるための網体38が取り付けられている。そして、この給水通路17及び給湯通路18が連通孔37の部分で合流して吐出通路19となる。
【0020】
図1に示すように、前記軸支体26aの内側には連結片39aが支軸40を介して上下方向に回動可能に取り付けられ、この連結片39aの基端には操作レバー39が固定されている。このため、操作レバー39は、上部弁ケース26の中心軸線を中心にして水平面内において回動可能である。また、前記連結片39aは前記可動弁体28を支持する支持体28aを介して可動弁体28に連結されている。
【0021】
そして、この操作レバー39を前記中心軸線を中心に横方向へ回動操作したときには、連結片39a及び支持体28aを介して可動弁体28が水平回動される。この水平回動により、固定弁体27の通水孔34及び通湯孔35に対する可動弁体28の連通孔37の開口度が変更されて、水と湯との混合比が調整される。また、操作レバー39を支軸40を中心に縦方向へ回動操作したときには、連結片39a及び支持体28aを介して可動弁体28が直線的に水平移動される。この水平移動により、固定弁体27の吐出孔36に対する可動弁体28の連通孔37の開口度が変更されて、混合水の吐出流量が調整されるようになっている。従って、固定弁体27と可動弁体28とにより流体としての水及び湯の流れが制御される。
【0022】
図1に示すように、前記水栓本体11と両弁ケース25,26との間には、以下に説明する破損防止手段としての破損防止構造41が設けられている。すなわち、水栓本体11や両弁ケース25,26の給水通路17、給湯通路18あるいは前記給水管20や給湯管21内の残留水の凍結に伴ってそれらの通路17,18の内圧が上昇し、その結果、水栓本体11や両弁ケース25,26の内圧が所定以上に上昇する。この場合、その内圧上昇に起因して合成樹脂製の水栓本体11あるいは弁ケース25,26のうちの少なくとも一方が破損するおそれがあるが、この破損は破損防止構造41により防止されるようになっている。
【0023】
すなわち、この実施形態では、破損防止構造41として、前記両弁ケース25,26を含む弁機構23全体が上部ケース24内において、水栓本体11の上端面に密接する位置と離間する位置とに上下移動可能に配設されている。そして、この破損防止構造41として、上部ケース24の内面と上部弁ケース26との間には、移動許容手段を構成する付勢部材としてのゴム製の弾性リング42が介装されている。そして、通常では図1及び図2に示すように、この弾性リング42により、弁機構23が下方の水栓本体11側に移動付勢されて、下部弁ケース25が水栓本体11の上端面に密接した状態に保持されている。
【0024】
また、両弁ケース25,26の内部に残留した水の凍結により、弁ケース25,26の内圧が所定以上に上昇したときには、弾性リング42の付勢力に抗して、弁機構23の水栓本体11から上方へ離間する方向への移動が許容される。この移動により、図2に矢印で示すように、下部弁ケース25が水栓本体11の上端面から離間されて、残留水が排出され、水栓本体11や弁ケース25,26の過度の内圧上昇が抑制されるようになっている。なお、下部弁ケース25と水栓本体11と間から排出された残留水は、吐出管22aを有する下部ケース22側に流出する。よって、前記のように水栓本体11及び弁ケース25,26が共に合成樹脂で形成されていて、水栓本体11や弁ケース25,26の内部に残留した水の凍結により内圧が高騰した場合でも、その水栓本体11や弁ケース25,26が破損するおそれはない。
【0025】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(a) この水栓においては、給水通路17、給湯通路18及び吐出通路19を有する水栓本体11が合成樹脂により形成されている。また、水栓本体11上に接続配置されるとともに、給水通路17及び給湯通路18から吐出通路19への水と湯との混合比及び流量を調整するための固定弁体27及び可動弁体28を収容する弁ケース25,26も、合成樹脂により形成されている。そして、水栓本体11と弁ケース25,26との間には、水栓本体11や弁ケース25,26内の水の凍結による内圧上昇に起因して、水栓本体11や弁ケース25,26が破損するのを防止するための破損防止構造41が設けられている。
【0026】
このため、水栓本体11及び弁ケース25,26が共に合成樹脂で形成されていても、寒冷地等において水栓本体11や弁ケース25,26が、水の凍結に伴う内圧上昇によって破損するおそれを確実に防止することができる。
【0027】
(b) この水栓においては、前記破損防止構造41として、弁ケース25,26が水栓本体11に対して密接する位置と離間する位置とに移動可能に配設されている。また、破損防止構造41が、弁ケース25,26を水栓本体11と密接する位置に向かって移動付勢するための弾性リング42を備えている。そして、水栓本体11や弁ケース25,26の所定以上の内圧上昇時に、この弾性リング42の付勢力に抗して、弁ケース25,26の水栓本体11上からの離間移動が許容されるようになっている。
【0028】
このため、破損防止構造41として弾性リング42よりなる部品が増えているのみであるため、構成が簡単で、長期間にわたって安定した作動を得ることができる。すなわち、凍結により、水栓本体11や弁ケース25,26の内圧が所定以上に上昇したとき、弁ケース25,26が水栓本体11上から離間する位置に移動され、残留水が排出されて、水栓本体11や弁ケース25,26の過度の内圧上昇を抑制することができる。よって、合成樹脂製の水栓本体11あるいは弁ケース25,26が破損するおそれを確実に防止することができる。
【0029】
(c) さらに、この水栓においては、弁ケース25,26の内圧が上昇したときに、弾性リング42の弾性に抗して弁ケース25,26が移動して内圧上昇が抑制されるため、残留水の凍結以外の場合、例えばウォーターハンマーの発生時においてその内圧を逃がすことができる。従って、このような場合には、水栓本体11や弁ケース25,26だけではなく、配管等の他の部分の破損を防止できるとともに、ウォーターハンマーを瞬時に収束させることができる。
【0030】
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0031】
さて、この第2実施形態においては、図6〜図8に示すように、前記破損防止構造41として、水栓本体11の給水通路17及び給湯通路18の上端開口周縁に、ほぼ眼鏡形の補強部材としての補強リブ44が突出形成されている。このため、水栓本体11上に弁機構23の下部弁ケース25が密接配置された状態で、この補強リブ44によって、下部弁ケース25の下面に突出した給水口29及び給湯口30が囲繞されるようになっている。
【0032】
従って、この第2実施形態によれば、前記第1実施形態における(a)に記載の効果に加えて、以下のような効果を得ることができる。
(d) この水栓においては、前記破損防止構造41が、下部弁ケース25の下面に突出した給水口29及び給湯口30を囲繞するように、水栓本体11の給水通路17及び給湯通路18の開口周縁に突設された補強リブ44からなっている。このため、常に下部弁ケース25の給水口29及び給湯口30を補強リブ44により外周側から囲繞保持して補強することができる。よって、水栓本体11や弁ケース25,26内の水の凍結に伴って内圧が上昇しても、下部弁ケース25の下面に突出した給水口29及び給湯口30が破損するおそれを確実に防止することができる。さらに、破損防止構造41として水栓本体11に補強リブ44を一体形成しただけであるから、専用の部品が不要であり、構成がさらに簡単になる。
【0033】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 前記第1実施形態において、破損防止構造41の付勢部材として、実施形態の弾性リング42とは異なったバネ部材を設けること。例えば、ゴム製の弾性リング42の代わりに、弾性リングとしてリング状の波板バネを用いること。
【0034】
・ 前記第2実施形態において、破損防止構造41の補強部材として、補強リブ44を水栓本体11とは別体のものとするこ。
・ 前記各実施形態を、他のタイプの水栓、例えば浄水器に接続される水栓に実施すること。
【0035】
(別の技術的思想)
さらに、上記実施形態により把握される請求項以外の技術的思想について、以下にそれらの効果とともに記載する。
【0036】
(1) 前記移動許容手段が、弁ケースを水栓本体と密接する位置に向かって移動付勢するための付勢部材よりなる水栓。
この構成によれば、通常は弁ケースを付勢部材にて水栓本体との密接位置に移動付勢して、弁ケースと水栓本体との間の水密を保持できる。そして、流体の凍結時には、付勢部材の付勢に抗して弁ケースが水栓本体から離間する方向に移動することにより、流体の圧力が逃がされ、水栓本体や弁ケースの内圧が過度に上昇するのを確実に抑制することができる。
【0037】
(2) 付勢部材として弾性リングを用いたことを特徴とする前記技術思想(1)項に記載の水栓。
この構成によれば、弾性リングを用いるのみで過度の内圧上昇を抑制できるため、構成が簡単である。
【0038】
(3) 前記補強部材が、弁ケースの下面に突出した供給口を囲繞するように、水栓本体の供給通路の開口周縁に突設された補強リブよりなる水栓。
【0039】
この構成によれば、水栓本体上に補強リブを一体に突出形成するという構成により、弁ケースの下面に突出した供給口を強固に囲繞補強することができ、専用の部品が不要であって、構成がいっそう簡単になる。
【0040】
【発明の効果】
以上、実施形態で例示したように、この発明の水栓においては、寒冷地等で使用した場合に、合成樹脂製の水栓本体や弁ケースが、凍結に伴う内圧上昇によって破損するおそれを防止することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態の水栓を示す断面図。
【図2】 図1の2−2線における部分拡大断面図。
【図3】 図1の水栓の水栓本体を拡大して示す斜視図。
【図4】 図1の水栓の固定弁及び可動弁を拡大して示す分解斜視図。
【図5】 図1の水栓の弁ケースを拡大して示す斜視図。
【図6】 第2実施形態の水栓を示す部分断面図。
【図7】 図6の7−7線における断面図。
【図8】 図6の水栓の水栓本体を拡大して示す斜視図。
【符号の説明】
11…水栓本体、17…供給通路としての給水通路、18…供給通路としての給湯通路、19…吐出通路、23…弁機構、25…下部弁ケース、26…上部弁ケース、27…固定弁体、28…可動弁体、29…供給口としての給水口、30…供給口としての給湯口、31…吐出口、41…破損防止手段としての破損防止機構、42…移動許容手段を構成する付勢部材としての弾性リング、44…補強部材としての補強リブ。

Claims (1)

  1. 供給通路及び吐出通路を有する水栓本体と、
    その水栓本体上に接続配置され、供給通路から吐出通路への流体の流れを制御するための弁体を収容する弁ケースとを備え、
    前記水栓本体及び弁ケースをそれぞれ合成樹脂により形成してなる水栓において、
    前記水栓本体と弁ケースとの間には、前記供給通路の内圧が上昇したときに、水栓本体上からの弁ケースの離間移動を許容して水栓本体及び弁ケースの少なくとも一方の破損を防止するための移動許容手段を設け
    前記弁ケースには、該弁ケースの供給通路を囲繞するように補強部材が配設されていることを特徴とする水栓
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