JP4272420B2 - 熱間圧延における電力コストを加味したスケジューリング方法 - Google Patents

熱間圧延における電力コストを加味したスケジューリング方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スラブの加熱処理に続いて圧延処理をするようにした熱間圧延において用いられる電力コストを加味したスケジューリング方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特許第2984182号公報
【特許文献2】
特開2000−167610号公報
【特許文献3】
特公昭63−23846号公報
【0003】
加熱炉と圧延機により構成され、スラブの加熱処理に続いて圧延処理をするようにした熱間圧延においては、多種類の圧延製品を生産する場合、各圧延材(スラブ)の各加熱炉への割り付け、および装入順序と、加熱されたスラブの圧延機による圧延順序の計画立案、即ち熱間圧延におけるスケジューリングが、生産効率や生産コストに大きく影響している。そこで、例えば特許文献1や特許文献2のように、圧延制約と加熱効率を考慮して最適なスラブの圧延順序を決定することが種々提案され、実用に供されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1の発明は2〜4時間分のスラブ(80〜150本)を対象に圧延順序を決定するものであり、現実問題として圧延能力を最大にするためには約一日分のスラブ(800〜900本)を対象に先読みしながら圧延順序を決定する必要があるため、このスケジューリング方法では一日を通してみた場合は実用的な最適解が得られないという問題点があった。また、特許文献2の発明は同じ加熱条件を有するスラブのグループ分けを重視してスケジューリングするもので、圧延順を決定後に加熱炉の割り付けを行う方法であり、加熱炉と圧延機の能力の整合性が考慮されておらず最適解にならないという問題点があった。
【0005】
このほか特許文献3には、熱間連続圧延において燃料コストと電力コストの和をミニマムとする操業方法が記載されている。しかしこの方法は、抽出温度、抽出ピッチ、圧延速度などを制御することによりコストミニマムを追求する方法であって、スラブの圧延順をスケジューリングするものではない。このように、従来は電力コストを加味して最適なスラブの圧延順序を決定することができるスケジューリング方法は知られていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような従来の問題点を解決して、約一日分のスラブを対象に加熱炉と圧延機の能力の同期化や、圧延制約・加熱制約のほか電力コストをも考慮しながら、熱間圧延における処理能力を最大とするスケジューリング方法を提供することを目的として完成されたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明の電力コストを加味したスケジューリング方法は、スラブの加熱処理に続いて圧延処理をするようにした熱間圧延におけるスケジューリング方法において、スケジューリング対象となる全スラブを、加熱条件・圧延条件によりグループ分けし、得られた各グループについて相前後する2つのグループの加熱速度と圧延速度の速度差が小さいほど高い評価点を与えるという同期化ルールと、加熱処理時におけるグループの前後関係で加熱条件の相違が少ないほど高い評価点を与えるという前後関係ルールとに従って全グループの並び順の一次案を決定し、この一次案に基づいて加熱ロス時間の評価と、スラブ固有の圧延処理時間から算出した圧延能力と、圧延待ち時間まで含んでシミュレーションにより算出した圧延能力とを比較して算出した圧延ロス時間の評価と、総電力コストの評価とを行い、圧延ロス時間の増加が許容範囲を越えない範囲で総電力コストが最小となる並び順を再度演算し、全グループの並び順を決定することを特徴とするものである。なお、グループの圧延順序を決定した後、更にグループ内の各スラブの圧延順序をスラブ巾、スラブ厚み等の条件を考慮して最適となるように決定することが好ましい。
【0008】
以下に説明するように、本発明によれば約一日分の全スラブを対象として、加熱炉と圧延機の能力の同期化や、圧延制約・加熱制約を考慮し、さらに加熱炉の能力ロス、圧延機の能力ロス、総電力コストを総合的に考慮して、最適のスケジュールを決定することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の好ましい実施形態を示す。
この実施形態では、約一日分のスラブ(800〜900本)をスケジューリング対象とし、先ずスラブの加熱条件・圧延条件・作業タイミングによりスラブをグループ分けする。加熱条件はスラブの材質で決まるものであり、圧延条件はスラブの巾や厚みで決まるものである。また、作業タイミングは同じ時間帯にスラブが生産されるか否かをチェックするものである。このグループ分けにより、約20〜30のグループが形成される。
【0010】
次いで、得られた各グループの圧延順を最適となるようにするのであるが、本発明ではグループの並び順パターンを、同期化ルールと前後関係ルールの2つのルールに従って評価し、該評価点が最大となるものを最適なスケジュールとする。ここで同期化ルールとは、得られた各グループを加熱速度および圧延速度の早い遅いから更に複数個のカテゴリ別に分類し、該カテゴリ間の加熱速度と圧延速度の速度差が小さいほど高い評価点を与えるルールをいう。
【0011】
前記カテゴリの分類は、以下に示す[数1]、[数2]の式から、それぞれ加熱速度(Vrf)、圧延時間(Vpc)を求め、図1に示すカテゴリの分類指標に基づいてカテゴリ▲1▼からカテゴリ▲4▼のいずれかに分類する。なお、加熱速度、圧延時間のカテゴリ間の境界値は、スラブ材料等に従ってその都度定める。
【0012】
【数1】
Figure 0004272420
【数2】
Figure 0004272420
【0013】
カテゴリに分類した後、同期化ルールにより、カテゴリ間の加熱速度と圧延速度の速度差が小さいほど高い評価点を与える。例えば、圧延速度の遅いカテゴリに属するグループの後には、加熱速度の遅いカテゴリに属するグループを配置する場合は高い評価点とする。具体的には、カテゴリ▲1▼→カテゴリ▲2▼、カテゴリ▲2▼→カテゴリ▲2▼、カテゴリ▲2▼→カテゴリ▲3▼、カテゴリ▲1▼→カテゴリ▲3▼の場合である。 また、圧延速度の早いカテゴリに属するグループの後には、加熱速度の早いカテゴリに属するグループを配置する場合は高い評価点とする。具体的には、カテゴリ▲3▼→カテゴリ▲4▼、カテゴリ▲4▼→カテゴリ▲4▼、カテゴリ▲4▼→カテゴリ▲1▼、カテゴリ▲3▼→カテゴリ▲1▼の場合である。これらカテゴリの前後関係の評価をまとめると表1のとおりである。
【0014】
【表1】
Figure 0004272420
【0015】
次に、前後関係ルールとは、加熱処理時におけるグループの前後関係で加熱条件の相違が少ないほど高い評価点を与えるルールをいう。これは、スラブの材質によって加熱時間、加熱温度等の処理条件が異なるため、前後関係にあるグループの加熱条件の相違が少ないほど効率よく加熱処理できることとなるからである。具体的には、表2に示すように、グループのスラブ材質が同一、若しくは類似する関係に近いほど高い評価点を与える。
【0016】
【表2】
Figure 0004272420
【0017】
例えば、グループ[i]の後に、グループ[j]を並べた場合の評価点(Point[i][j])は、次の[数3]により求められる。
【数3】
Figure 0004272420
【0018】
以上の同期化ルールと前後関係ルールの2つのルールに従って全グループの並び順を評価し、該評価点が最大となるものを最適なスケジュールとして全グループの並び順の一次案を決定する。なお、評価点の最大値の検索はタブサーチ等の検索法により求めることができる。このようにして一次案を決定した後、本発明はさらに加熱ロス時間、圧延ロス時間、電力コストが最小となる並び順を演算する。
【0019】
まず以下の手順の概要を説明する。
最初に、一次案によるスラブの圧延順序に対して、各スラブ固有の必要加熱時間と圧延処理時間を基に、加熱時間と圧延待ち時間を算出する。算出された加熱時間とスラブ固有の必要加熱時間とを比較して加熱ロスを算出する。一方、スラブ固有の圧延処理時間から算出した圧延能力と、圧延待ち時間まで含んでシミュレーションにより算出した圧延能力とを比較して圧延ロスを算出する。そしてこれら加熱ロスと圧延ロスを同一時間軸上に表現することによりロスの発生位置と発生原因となるスラブを特定する。このスラブ情報に基づいて加熱ロス及び圧延ロスがミニマムとなるスケジュールを修正するのであるが、スケジュールごとに電力量を予測して消費電力コストを計算し、消費電力コストをも加味したスケジューリングを行う。以下に具体的な手順を示す。
【0020】
まず、各スラブの必要加熱時間:Tneed(Hr)、圧延機の通板時間:Tidle(Hr)、前スラブ圧延後の最低保証圧延間隔:Tmin idle(Hr)を入力する。ここでスラブの必要加熱時間とは、スラブの材質や巾・厚み等の物性で定まる必然的な加熱時間であり、圧延機の通板時間とは、圧延機の能力で定まる時間である。また、最低保証圧延間隔とは、圧延ロールの冷却に必要な時間である。
【0021】
次に、特定のスラブの圧延時刻を算出する。例えば、図2に示されるように、材料であるスラブAが加熱炉に入るときに、加熱炉内の先頭にスラブBが位置していたとする。なお図2において、Lrf:加熱炉長(m)、Wi:スラブ巾(m)、Wsp:スラブ間隔(m)である。この場合、スラブAの加熱時間(T)は[数4]により求めることができる。即ち、スラブAの加熱時間は、前スラブ圧延後の圧延間隔と圧延時間との和をスラブBからスラブ(A−1)まで積和した値と、スラブ固有の必要加熱時間のうちの大きい方の値とする。
【数4】
Figure 0004272420
【0022】
次に、このようにして算出したスラブAの加熱時間(T)から、スラブA前の圧延間隔時間を算出する。先ず、前記の積和した値よりもスラブ固有の必要加熱時間の方が大きい場合は、[数5]の右側の式で求めた時間をB〜A間にあるスラブのTidle i:前スラブ圧延後の圧延間隔(Hr)に加算する。
【数5】
Figure 0004272420
【0023】
一方、前記の積和した値よりもスラブ固有の必要加熱時間の方が小さい場合は、[数6]の右側の式により、その最小値を圧延間隔時間とする。
【数6】
Figure 0004272420
【0024】
次に、スラブAの加熱完了待ちのために発生する圧延ロス時間:Tloss Aを算出する。この圧延ロス時間は、[数7]に従い、スラブの必要加熱時間と、前スラブ圧延後の圧延間隔と圧延時間との和の差を取ることで求めることができる。
【数7】
Figure 0004272420
【0025】
次に、以上のようにして算出した加熱ロスと圧延ロスを、図3のグラフに示されるように、同一時間軸上に表現する。なお図3中の圧延T/Hは、圧延機の能力を示す。このようにシミュレーションにより得られる加熱時間(図中の上グラフの実線)と実際に必要な加熱時間(図中の上グラフの一点鎖線)、およびシミュレーションにより得られる理論圧延能力(図中の下グラフの破線)と実際に必要な実圧延能力(図中の下グラフの実線)を同一時間軸上に表現することにより、加熱ロスおよび圧延ロスが一目で確認することが可能となる。この結果、現時点でのスケジュールの適否を瞬時に判断することができる。
【0026】
以上のようにしてロスの発生位置と発生原因となるグループを特定した後は、この情報に基づいてスケジュールを修正する。例えば、図3中、ポジションAについては、加熱待ちによる圧延ロスが発生していることがわかるので、この空いている圧延ロス中に適当なグループの圧延を組み込む組替えを実施する。またポジションBについては、加熱ロスを発生させる原因となるグループが特定できたので、これを圧延効率が高いグループに組替えるようにスケジュールを変更する。また、ポジションCについては、加熱ロスが発生している場所が特定できたので、必要加熱時間が長いグループに組替えるようにスケジュールを変更する。
【0027】
このスケジュールの修正に際しては、消費電力コストを考慮する。電力コストの計算は次のようにして行われる。先ずスラブ1本毎の使用電力量は、スラブ重量と圧下率に過去実績から求めた係数を掛けることにより求められる。次に各時間帯の熱間圧延工場の総使用電力量は、その時間帯に圧延されるスラブについての上記使用電力量を積算し、過去実績から求めた係数をかけることによって求められる。その一例を図3の下段に示す。さらに単位電力量当たりの電力単価は昼間と夜間とで異なるため、昼間時間帯と夜間時間帯とのそれぞれの総使用電力量に、それぞれの時間帯の電力単価を掛けることにより、総電力コストが算出できる。
【0028】
この総電力コストは圧延スケジュール毎に瞬時に計算できるので、前記のようにして圧延ロス及び加熱ロスをなくすようにグループの組替えを行う際に、できるだけ総電力コストが低くなるようにスケジューリングを行う。しかし圧延ロス及び加熱ロスがミニマムとなるスケジューリングと、電力コストがミニマムとなるスケジューリングとは必ずしも一致しない。そこで一次案が決定された後は、次のとおりの手順で再演算を行う。
【0029】
▲1▼ 一次案によるスラブの圧延順序に対して、上記のようにして圧延ロス時間、その原因となるグループ、加熱ロス発生の時間帯を求める。
▲2▼ 前後関係ルールで問題なし(表1の○)の範囲内において、グループの順序を入れ替え、圧延ロス時間の評価と、総電力コストの評価とを再度行う。
▲3▼ このグループの並べ替えと評価の繰り返しを制約伝播法などの探索手法を使うことによって行い、圧延ロス時間の増加がオペレータに与えられた許容範囲を越えない範囲で総電力コストがミニマムとなるグループの順を求める。
【0030】
このようにしてグループの最適なスケジューリングが決定された後、更にグループ内の各スラブの圧延順序をスラブ巾、スラブ厚み等の条件を考慮して最適となるように決定することが好ましい。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は約一日分の全スラブを対象に加熱炉と圧延機の能力の同期化や、圧延制約・加熱制約を考慮し、さらに加熱炉の能力ロス、圧延機の能力ロス、総電力コストを総合的に考慮して、最適のスケジュールを決定することができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】カテゴリの分類指標を示すグラフである。
【図2】加熱炉内のスラブの並びを説明する図である。
【図3】加熱ロスと圧延ロスを同一時間軸上に表現したグラフである。

Claims (2)

  1. スラブの加熱処理に続いて圧延処理をするようにした熱間圧延におけるスケジューリング方法において、スケジューリング対象となる全スラブを、加熱条件・圧延条件によりグループ分けし、得られた各グループについて相前後する2つのグループの加熱速度と圧延速度の速度差が小さいほど高い評価点を与えるという同期化ルールと、加熱処理時におけるグループの前後関係で加熱条件の相違が少ないほど高い評価点を与えるという前後関係ルールとに従って全グループの並び順の一次案を決定し、この一次案に基づいて加熱ロス時間の評価と、スラブ固有の圧延処理時間から算出した圧延能力と、圧延待ち時間まで含んでシミュレーションにより算出した圧延能力とを比較して算出した圧延ロス時間の評価と、総電力コストの評価とを行い、圧延ロス時間の増加が許容範囲を越えない範囲で総電力コストが最小となる並び順を再度演算し、全グループの並び順を決定することを特徴とする熱間圧延における電力コストを加味したスケジューリング方法。
  2. グループの圧延順序を決定した後、更にグループ内の各スラブの圧延順序をスラブ巾、スラブ厚み等の条件を考慮して最適となるように決定する請求項1に記載の熱間圧延における電力コストを加味したスケジューリング方法。
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