JP4271958B2 - 給水装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、永久磁石を配置したロータと回転磁界を発生するステータを具備するブラシレスモータにより駆動され、且つインバータ等の周波数変換器によってポンプを可変速運転できる給水装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
深井戸用水中モータポンプなどのモータに、周波数変換器(インバータ等)から任意の周波数及び電圧を供給し、ポンプを可変速運転することが広く行われている。例えば、電源供給事情の悪い地域、例えば牧場等においては、太陽電池で発電した直流電力をインバータにより交流電力に変換し、水中モータポンプに供給し、該水中モータポンプで井戸から井水を地上のタンクに揚水して蓄え、必要に応じて、給水するようにした給水装置がある。このように太陽電池を用いた給水装置は日射量に対応して太陽電池で発電された電力により運転されるが、モータポンプで揚水された水を一旦タンクに溜めておくため、該タンクから必要に応じて、例えば家畜の飲料水等に利用することができる。
【0003】
太陽電池から供給される電力量は、日射量とモータポンプの運転状態(電圧、電流、周波数)によって変化する。従って、このような給水装置においては、最も効率よくポンプを運転するため、最大電力が供給できるように、電圧、電流、周波数を制御する所謂最大電力点追跡制御が行われている。
【0004】
この種の給水装置に用いる水中モータポンプのモータに上記のようにロータに永久磁石を有するブラシレスモータを使用する場合、通常運転において脱調が起きないようにモータは十分なトルクを発生するように設計されているが、ポンプに異物が噛み込まれる等により負荷トルクが異常に増大した場合、脱調状態になることがある。このような脱調状態での運転が続いた場合、給水が不可能になるだけではなく、モータが過熱損傷に至ってしまうので、この脱調状態を検知しモータを停止させる等の対策が必要である。
【0005】
ロータの磁極位置を検出する磁極位置検出手段を有する従来のブラシレスモータにあっては、検出した磁極位置を基に脱調状態の判断を行うことができるが、磁極位置検出手段を有していない本発明に係るブラシレスモータの場合、磁極位置検知による従来の方法を採ることができない。
【0006】
また、この種の給水装置では、上記のように最大電力点追跡制御による可変速運転が行われており、日射量に応じて常にモータポンプに供給される電圧、電流、周波数が変化している。図7は、この種のブラシレスモータにてポンプを駆動し、最大電力点追跡制御を行った場合の、運転周波数と通常運転時のポンプ最大電流I2、及び脱調時電流I3の関係を示したものである。
【0007】
図7に示すように、ポンプ通常運転時の最大電流I2の値が脱調時の最小電流I0より大きくなる為、従来一般的に用いられる駆動周波数に関係なく、検出された電流値が予め決められた電流値より高いと判断された場合にモータポンプの運転を停止させる過電流保護装置のみによってモータポンプを停止しようとする場合、ポンプが通常運転しているにも関わらず(脱調状態になっていないにも関わらず)停止してしまうといった問題があった。即ち、図7のAの範囲で運転が不可能となる。
【0008】
【特許文献1】
特開2002−195163公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、ポンプの通常運転を阻害することなく、脱調時には確実にポンプを停止させることができると共に、ポンプ締切り運転も防止できるロータに永久磁石を有するブラシレスモータをポンプ駆動用モータとする給水装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、永久磁石を配置したロータと回転磁界を発生するステータを具備するブラシレスモータと、該ブラシレスモータにより駆動されるポンプと、該ブラシレスモータに駆動電力を供給すると共に該ブラシレスモータの回転速度を制御する周波数変換器を備えた給水装置において、周波数変換器からブラシレスモータへ供給される駆動電力の電流を検出する電流検出手段、該駆動電力の周波数を検出する周波数検出手段と、駆動電力の周波数と該周波数に対する該ブラシレスモータのロータの脱調状態の判断基準となる脱調判断基準電流を関連づけた脱調判断基準電流値テーブルとを具備し、電流検出手段で検出された電流の値が周波数検出手段で検出された周波数を基に脱調判断基準電流値テーブルから取得した脱調判断基準電流の値より大きいと判断した場合に、ブラシレスモータを停止する制御手段を設けたことを特徴とする。
【0011】
上記のように、電流検出手段で検出された電流の値が周波数検出手段で検出された周波数を基に脱調判断基準電流値テーブルから取得した脱調判断基準電流の値より大きいと判断した場合にブラシレスモータを停止する制御手段を設けたので、ブラシレスモータの運転周波数全域において、脱調判断基準電流の値を通常運転時の最大電流値と脱調電流値の中間に設定できるため、通常運転を阻害することなく脱調時にブラシレスモータを停止できる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、永久磁石を配置したロータと回転磁界を発生するステータを具備するブラシレスモータと、該ブラシレスモータにより駆動されるポンプと、該ブラシレスモータに駆動電力を供給すると共に該ブラシレスモータの回転速度を制御する周波数変換器を備えた給水装置において、周波数変換器からブラシレスモータへ供給される駆動電力の電流を検出する電流検出手段、該駆動電力の周波数を検出する周波数検出手段と、周波数と該周波数に対する該ブラシレスモータの締切り運転状態の判断基準となる締切り判断基準電流を関連づけた締切り判断基準電流値テーブルとを具備し、電流検出手段で検出された電流の値が周波数検出手段で検出された周波数を基に締切り判断基準電流値テーブルから取得した締切り判断基準電流の値より小さいと判断した場合にブラシレスモータを停止する締切り運転防止機能を具備することを特徴とする。
【0013】
上記のように、電流検出手段で検出された電流の値が周波数検出手段で検出された周波数を基に締切り判断基準電流値テーブルから取得した締切り判断基準電流の値より小さいと判断した場合にブラシレスモータを停止する締切り運転防止機能を具備するので、ポンプの締切り運転によりモータの過熱に起因する損傷を防止できる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る給水装置全体の概略構成例を示す図である。なお、以下の説明では、太陽電池を電源として用いる例を説明するが、電源としては太陽電池に限定されるものではなく、風力発電機、蓄電池或いは商用電源を電源として用いてもよい。
【0015】
図1に示すように、本発明に係る給水装置は、太陽光を電気エネルギーに変換する太陽電池1と、インバータ2と、井戸6の底部に設置されたモータポンプ3と、貯水タンク5を備えている。太陽電池1で発電された直流電力はインバータ2により、モータポンプ3にその運転に適した交流電力に変換し、供給される。
【0016】
モータポンプ3は、ポンプとキャンドモータとが一体化された水中モータポンプであり、モータにはロータに永久磁石を有し、ステータより発生する回転磁界により回転するブラシレスモータが使用される。モータポンプ3を運転することにより、井戸6内の水は吐出管4を通って貯水タンク5に揚水され、蓄えられる。貯水タンク5内の水は、バルブ7を開くことにより、配管8を介して所要の地域に供給される。
【0017】
太陽電池1は、入射する太陽エネルギーを電気エネルギーに変換し、インバータ2に100〜175V程度の直流電圧を供給する。インバータ2は、太陽電池1で発電された直流電力をパルス幅変調により交流電力に変換し、該交流電力をケーブル9を通してモータポンプ3に供給する。インバータ2はモータポンプ3に最大240Hzの運転周波数を供給する。この運転周波数は通常の商用電源周波数50Hz又は60Hzに比べてかなり高く、このようにモータポンプ3の回転速度を速くすることで、モータポンプ3の寸法自体を小型化することができる。
【0018】
上記構成の給水装置において、モータポンプ3のポンプ部に異物が噛み込むこと等によりモータの負荷トルクが異常に増大した場合、脱調状態になることが考えられる。このような脱調状態が続いた場合、揚水が不可能になるだけでなくモータが過熱損傷に至ってしまう。そこで請求項1に記載の発明に係る給水装置では、このような脱調状態でモータポンプ3が運転されることを防止するために制御装置10を設置し、脱調状態と判断した場合インバータ2に停止指令を送り、モータポンプ3に供給する駆動電力を停止している。図2はこの制御装置の構成を示すブロック図である。
【0019】
一般にロータに永久磁石を有するブラシレスモータにおいて、脱調した状態での電流値は、運転周波数が同一の場合における通常運転時の電流値よりも大きくなる。従って、脱調判断のための脱調判断基準電流を予め脱調時電流と通常運転時電流の中間に設定しておけば、モータポンプ3の運転電流がこの脱調時判断基準流の値を上回った場合に、脱調状態と判断することができる。
【0020】
このような脱調時電流の値がモータポンプ3の運転周波数(インバータ2からの駆動電力周波数)によって変化する為、運転周波数毎に脱調判断基準電流値を設定しておく必要がある。本実施形態例においては、後述するように図2に示す制御装置10の内部に設置された記憶装置(図示せず)に、モータポンプ3の運転周波数とその周波数における脱調状態の判断基準となる脱調判断基準電流とを関連づけた脱調判断基準電流値テーブル20が格納されている。
【0021】
図3はこの脱調判断基準電流値テーブル20の例を示す図である。図示するように、A、B、C、D、Eの5点のモータポンプ3の運転周波数値と脱調判断基準電流値との組合わせを用意し、各点間は直線等で補間して脱調判断基準電流値テーブル20としている。図4はA、Bの2点間で脱調判断基準電流I1を設定した場合の例を示す図である。図示するように周波数0〜250Hzの全域において、脱調判断基準電流I1は脱調時電流I3とモータポンプ3の通常運転時の最大電流I2の中間に位置している。
【0022】
また、制御装置10は、図2に示すように、インバータ2の2次側電流の周波数、即ちモータポンプ3の運転周波数を検出する周波数検出器21と、該周波数検出器21により検知された周波数に対応する脱調判断基準電流の値を上記脱調判断基準電流値テーブル20を参照して取得する脱調判断基準電流値取得器22と、インバータ2の2次側電流の値(モータポンプ3に供給される電流の値)を検出する電流検出器23と、該電流検出器23により検出された電流の値と脱調判断基準電流値取得器22により取得された脱調判断基準電流の値とを比較する比較器24とを備えている。比較器24は電流検出器23で検出されたモータポンプ3への供給電流の値が脱調判断基準電流値取得器22により取得された脱調判断基準電流の値以上となった場合、脱調状態としてモータポンプ3の停止指令S1をインバータ2に出力する。
【0023】
次に、請求項2の発明に係る給水装置には、従来一般的に用いられている駆動周波数に関係なく、検出された電流値が予め決められた電流の値(過電流判断基準電流の値)より高いと判断された場合にモータポンプ3の運転を停止させる過電流保護装置と、ポンプが締切り運転状態で運転されることを防止する締切り運転防止装置を備えている。
【0024】
一般にポンプが締切り運転の状態では、ポンプは揚水するという仕事をしないため負荷が異常に軽くなる。従って、最低負荷電流(締切り電流)を予め設定しておけば、モータポンプ3の運転電流がこの電流値を下回った場合に、ポンプの締切り運転と判断することができる。このような締切り電流はポンプの回転速度(運転周波数)によって変化するため、回転速度毎に締切り判断基準電流の値を設定しておく必要がある。
【0025】
本実施形態例においては、制御装置10の内部に設置された記憶装置(図示せず)に、ポンプの運転周波数とその周波数における締切り運転の判断基準となる締切り判断基準電流の値とを関連づけた締切り判断基準電流値テーブル30が格納されている。図5はこのような締切り判断基準電流値テーブル例を示す図である。図示すように、A、B、C、D、Eの5点のモータポンプ3の運転周波数と締切り判断電流の値との組合わせを用意し、各点間は直線等で補間して締切り判断基準電流値テーブル30としている。
【0026】
また、制御装置10は、図2の脱調判断基準電流値取得器22に替えて、インバータ2の2次側電流の周波数を該周波数検出器21により検知された周波数に対応する締切り判断基準電流の値を上記締切り判断基準電流値テーブル30を参照して取得する締切り判断基準電流値取得器(図示せず)を用いる。比較器24は、電流検出器23により検出されたモータポンプ3へ供給される電流値が前記締切り判断基準電流値取得器により取得された締切り判断基準電流の値以下となったら締切り運転状態と判断し、インバータ2に所定のタイミング(ポンプの締切り運転によりモータの過熱に起因して損傷に至る時間よりも短い時間)で停止指令S1を出力する。
【0027】
図6は、本実施形態例における脱調運転防止を説明するための図である。先ず、過電流判断基準電流I4は、通常運転時の最大電流I2よりも高く、且つ比較的高い周波数領域において脱調時電流I3よりも低い値に設定することにより、高い周波数領域(a)においてはモータポンプ3の運転電流がこの過電流判断基準電流I4を上回った場合に、脱調状態と判断することができる。更に、脱調時電流I3が該過電流判断基準電流I4の値を下回る比較的低い周波数領域(b)にあっては、締切り運転防止装置の締切り運転判断基準電流I5の値を脱調時電流I3の値よりも高く設定することで、締切り運転の場合と同様に脱調による過熱損傷を防止することができる。
【0028】
この場合、低い周波数領域(b)においては、通常運転時においてもモータポンプ3の運転は不可能となるが、高い周波数領域(a)と低い周波数領域(b)との境界周波数(c)をモータポンプ3の定格運転周波数の50%以下とすれば、ポンプ揚程は定格揚程の25%と以下となり、通常この種の給水装置において実用的に使用される範囲を外れる為、問題とはならない。
【0029】
【発明の効果】
以上、説明したように各請求項に記載の発明によれば、下記のような優れた効果が得られる。
【0030】
請求項1に記載の発明によれば、電流検出手段で検出された電流の値が周波数検出手段で検出された周波数を基に脱調判断基準電流値テーブルから取得した脱調判断基準電流の値より大きいと判断した場合にブラシレスモータを停止する制御手段を設けたので、ブラシレスモータの運転周波数全域において、脱調判断基準電流の値を通常運転時の最大電流値と脱調電流値の中間に設定できるため、通常運転を阻害することなく脱調時にブラシレスモータを停止でき、モータとポンプが一体となったモータポンプの脱調による過熱に起因する損傷を防止することができる。
【0031】
請求項2に記載の発明によれば、上記のように、電流検出手段で検出された電流の値が周波数検出手段で検出された周波数を基に締切り判断基準電流値テーブルから取得した締切り判断基準電流の値より小さいと判断した場合にブラシレスモータを停止する締切り運転防止機能を具備するので、ポンプの締切り運転によりモータの過熱に起因する損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る給水装置の全体の概略構成例を示す図である。
【図2】本発明に係る給水装置の制御装置の構成例を示す図である。
【図3】本発明に係る給水装置の脱調判断基準電流値テーブル例を示す図である。
【図4】本発明に係る給水装置の脱調判断基準電流の設定例を示す図である。
【図5】本発明に係る給水装置の締切り判断基準電流値テーブル例を示す図である。
【図6】本発明に係る給水装置の脱調運転防止方法を説明するための図である。
【図7】ポンプ運転周波数に対する通常運転時の最大電流と脱調時電流の関係を示す図である。
【符号の説明】
1 太陽電池
2 インバータ
3 モータポンプ
4 吐出管
5 貯水タンク
6 井戸
7 バルブ
8 配管
9 ケーブル
10 制御装置
20 脱調判断基準電流値テーブル
21 周波数検出器
22 脱調判断基準電流値取得器
23 電流検出器
24 比較器
30 締切り判断基準電流値テーブル

Claims (2)

  1. 永久磁石を配置したロータと回転磁界を発生するステータを具備するブラシレスモータと、該ブラシレスモータにより駆動されるポンプと、該ブラシレスモータに駆動電力を供給すると共に該ブラシレスモータの回転速度を制御する周波数変換器を備えた給水装置において、
    前記周波数変換器から前記ブラシレスモータへ供給される駆動電力の電流を検出する電流検出手段、該駆動電力の周波数を検出する周波数検出手段と、駆動電力の周波数と該周波数に対する該ブラシレスモータのロータの脱調状態の判断基準となる脱調判断基準電流を関連づけた脱調判断基準電流値テーブルとを具備し、前記電流検出手段で検出された電流の値が前記周波数検出手段で検出された周波数を基に前記脱調判断基準電流値テーブルから取得した脱調判断基準電流の値より大きいと判断した場合に、前記ブラシレスモータを停止する制御手段を設けたことを特徴とする給水装置。
  2. 永久磁石を配置したロータと回転磁界を発生するステータを具備するブラシレスモータと、該ブラシレスモータにより駆動されるポンプと、該ブラシレスモータに駆動電力を供給すると共に該ブラシレスモータの回転速度を制御する周波数変換器を備えた給水装置において、
    前記周波数変換器から前記ブラシレスモータへ供給される駆動電力の電流を検出する電流検出手段、該駆動電力の周波数を検出する周波数検出手段と、周波数と該周波数に対する該ブラシレスモータの締切り運転状態の判断基準となる締切り判断基準電流を関連づけた締切り判断基準電流値テーブルとを具備し
    記電流検出手段で検出された電流の値が前記周波数検出手段で検出された周波数を基に前記締切り判断基準電流値テーブルから取得した締切り判断基準電流の値より小さいと判断した場合に前記ブラシレスモータを停止する締切り運転防止機能を具備することを特徴とする給水装置。
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