JP4271458B2 - スパークプラグ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガソリンエンジンなどの内燃機関に使用されるスパークプラグに関し、特に、火花放電を発生させる接地電極若しくは中心電極の電極成分を改良してプラグ寿命をより長くしたスパークプラグに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車エンジン等の内燃機関に使用されるスパークプラグは、プラグ本体の中心軸線を縦方向に貫く中心電極と、その中心電極を保持する中空状のアルミナ質絶縁体と、その絶縁体を周囲から保持する中空状の主体金具とで主に構成されている。主体金具は、エンジンのシリンダーヘッドにプラグを固定することに使用されるが、その先端部分には、上記中心電極の先端と間隔を持って対向する、L字型に湾曲された接地電極が設けられている。この接地電極の先端と、中心電極の先端との間に形成される隙間が放電ギャップであり、この放電ギャップで火花放電が生成される。
【0003】
上記中心電極または接地電極に用いられる材料としては、ニッケルにシリコン、アルミニュウム、イットリウムなどの添加物が入れられた電極材料が知られている。(例えば、特許文献1参照)これは、上記添加物を電極成分中に添加し、電極表面に酸化膜を形成させ、その酸化膜で内部の素材を保護することで、電極の酸化を抑制させるものである。分野は違うが、アルミニュウム表面に施されるアルマイト処理による材質保護などと同様な技術である。スパークプラグの電極にもこの様な酸化膜が形成されて、電極内部の酸化を抑制させる技術が用いられている。
【0004】
ところで、自動車エンジン等の内燃機関から排出される排気ガスによる環境破壊が重大な社会問題化されている。そこで、この環境破壊を回避すべく、排気ガス若しくは有害ガスの排出がより少ない、クリーンなエンジンが社会的に求められている。これと共に、より少ないガソリンでより遠くに走れる低燃費の車も求められている。このようなクリーンかつ低燃費のエンジンを実現する一つの手段として、空気に対するガソリンの混合比をより少なくした希薄燃焼エンジン(リーンバーンエンジン)が知られている。
【0005】
この希薄燃焼とは、理想の混合比率(ガソリン1に対して空気14.7の割合)より希薄な混合比率でガソリンを燃焼させようとするものである。従来、この様な希薄なガソリンの混合気は、着火しにくく、不完全燃焼若しくはノッキングなどの様々な問題が発生しやすい。そこで、より薄い混合ガスでも、確実に着火させることができるスパークプラグが求められている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭55−44502号公報(第1頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、放電ギャップが同じスパークプラグにおいて、着火性を改善させるのには電極形状を細くさせることが考えられる。電極先端が細くされることで、最初に発生した火炎核から電極が熱を奪う、消炎作用もより小さくできるので、着火性能も向上させることができる。しかし、電極が細くなると、別の問題が発生する。それは、電極が細くなることで電極全体の体積が減少し、熱伝導率が悪くなる。その結果、電極自体の温度が非常に高くなる傾向がある。
【0008】
また、着火性を改善させる方法として、中心電極及び接地電極をより燃焼室内の中心に近づけさせることが考えられる。具体的には、プラグ本体から突出する中心電極の量(長さ)を多くさせる。これにより、火花の飛ぶ位置がエンジン燃焼室の壁面から遠ざかり、より燃焼室の中心部に近づくため、混合気の流速の早い場所で火花が飛ぶことになる。このため、薄い混合気でも火花の飛んでいる間に火花と触れ合うガソリン分子が多くなるので、より薄い混合気に着火させる能力が高くなり、着火性が向上する。しかし、この場合にも、より多くの燃焼ガスに電極が触れることとなるため、電極の温度上昇が高くなる傾向がある。
【0009】
より高温状態になると、電極自体の酸化がさらに増大し、消耗していく。つまり、プラグの性能向上目的から、より高い温度下においても酸化しないように耐酸化性能の向上が求められる。そこで、この目的を達成するために電極成分中に添加させる添加物の量を増大させることが考えられるが、その添加物の増大は以下のような弊害を生じさせている。
【0010】
つまり、添加元素の増大に伴い、電極素材そのものの熱伝導率の低下を招いている。この熱伝導率の低下により、電極自体の温度上昇がさらに大きくなり、耐酸化性が逆に悪くなる虞がある。また、添加元素の増大に伴い電極自体の比抵抗が増大し、火花消耗性が悪化し、電極消耗が多くなる。すなわち、電極の寿命が短くなる。また、電極成分への添加元素の混入量が増大されると、実機腐食条件(温度、零囲気、冷熱・・・・等)によっては、逆に酸化を誘発する場合もある。
【0011】
そこで、本発明は、電極自体の熱伝導率や比抵抗の増大を防止して、より寿命の長い電極を用いたスパークプラグを提供することを目的とする。なお、本願において、腐食とは、金属体が置かれた環境において、科学的若しくは物理的に消耗(消失)する現象を意味する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のスパークプラグの電極は、ニッケルNiの固溶体成分が電極全体の99重量%以上を占有させると共に、この固溶体成分中の99.6重量%をニッケルNiとした。また、固溶体以外の残りを、Zr又はYその他の金属の化合物(酸化物、炭化物、窒化物など)とし、しかもそれらの化合物を粉末状態でニッケルNiの固溶体粉末と混ぜて焼き固めて電極を製造した。これにより、それらの化合物が、Niの母相から析出しつつ且つ均一に電極材内に拡散させることができた。
【0013】
【発明の実施の形態】
(1)実施例の構成。
図1には、本発明にかかる内燃機関用スパークプラグ1の垂直断面の様子が示されている。図2には、内燃機関用スパークプラグ1の先端部分を拡大した様子が示されている。内燃機関用スパークプラグ1は、円筒状の絶縁体2と、その絶縁体2の内筒内に挿入された中心電極3と中軸4と、絶縁体2の周囲を取り巻く主体金具5とから主に作られている。絶縁体2は、高温下においても高い絶縁性と熱伝導性を保持させるべく、高純度のアルミナ磁器又は窒化アルミニウム等のセラミック焼結体などの材料で作られている。具体的には、上下に貫通された貫通孔6を軸中心に備える円筒状の形に、アルミナ粉末が押し固められた後、研削により外形が成形され、さらに焼成などの手段で焼き固められて絶縁体2が作られる。
【0014】
主体金具5は、低炭素鋼等の材料で作られている。この主体金具5も中空の円筒形に作られており、その主体金具5の内筒7内に上方より絶縁体2が填め込まれた後、リング10(及びパッキングワッシャ)と共に、主体金具5の上部8がカシメられて、絶縁体2と主体金具5とが固定される。なお、主体金具5の外周面には、雄ねじ9のネジ山が作られている。この主体金具5の雄ねじ9により、内燃機関用スパークプラグ1がシリンダーヘッドにねじ込まれて固定される。
【0015】
中心電極3は、シリンダー内で高温にさらされるため、後述される成分組成のニッケル金属で作られており、さらに、熱伝導性を高めるため、内部に銅11が埋め込まれている。本発明は、この中心電極3や、後述される接地電極14の素材成分の組成に関する発明である。絶縁体2の貫通孔6内には、最初に中心電極3が挿入された後、中心電極3の上部に粉末状のガラス・シール12(グラス・シール)が充填される。さらにその上から、中軸4が、ねじ込み若しくはプレスなどの手段で貫通孔6内に押し込まれると共に、加熱及び冷却処理により、ガラス・シール12を溶融及び固化させて、中心電極3と中軸4とが絶縁体2内にシールされる。
【0016】
なお、このガラス・シール12は、特殊なガラス粉末に銅粉が混合されて作られたもので、高い導電性がある。また、このガラス・シール12内に、抵抗体13が封入される場合もある。主体金具5の下端部分には、断面が四角形でしかも、L字型に湾曲された棒状の接地電極14が溶接などの手段で設けられている。この接地電極14の先端部分が、中心電極3の先端と、間隙15を持って対向されている。
【0017】
図2には、内燃機関用スパークプラグ1の先端部分の一部断面の様子が示されている。内燃機関用スパークプラグ1の先端は、主体金具5から中心電極3が突出するように作られており(突き出し型のプラグでは、中心電極3の突出量が大きい)、この中心電極3と対向するように、主体金具5から延びる接地電極14が湾曲されている。中心電極3の先端部は、水平方向断面が円形の細長い棒状に作られている。
【0018】
この中心電極3の先端と、中心電極3と対向する接地電極14の先端部分とで、内燃機関用スパークプラグ1の火花放電部18が構成される。中心電極3の先端と接地電極14との間に存在する間隙15が、放電ギャップであり、この間隙15に火花放電が発生される。
【0019】
(2)電極の製造について説明する。
Niの純度が99.6重量%の固溶体となっているNi粉末を約99.5%と、ZrO2粉末を0.5%の割合で良く攪拌混合される。このNi粉末の混合物に、バインダーが添加された後、所望の形に圧粉成形される。つまり、混合される各原料金属が粉末状態のまま、所望の形に押し固められる。また、上記バインダーには、有機バインダーその他があるが、このバインダーは、金属粉末を、複雑な形状でかつ精度よく所望の形に固めるのに広く使用されている。その後、圧粉成形された物からバインダーを除去する脱バインダー処理が施される。
【0020】
この脱バインダー処理には、様々な方法がある。例えば、圧縮して作られた成形物をアルミナ焼結板の上に積載したまま加熱炉中に導入し、そのまま徐々に加熱昇温処理を施して、成形物より有機バインダーを蒸発させ、分解除去する方法がある。また、成形物を耐熱粉末中に埋設して、その耐熱粉末が持つ毛細管現象を利用して、加熱された耐熱粉末中に埋設した成形物から有機バインダーを急速に除去する方法などがある。何れにせよ、脱バインダー処理は、粉末状態で混合された各金属が溶融しない温度で行われるのは当然である。
【0021】
こうして、バインダーが除去された成形物が真空或いは非酸化性零囲気中で加熱された後、冷却(強制冷却、又は自然冷却他)される、所謂本焼結の処理が施される。この本焼結で棒状の素材インゴットが形成される。この素材インゴットは、Ni若しくはNiの固溶体成分が99.5重量%となっている。また、ZrO2などの酸化物(ZrO2以外に添加される金属の酸化物又は化合物の場合もある)は、Niの母相から析出した状態で、しかもインゴット内で均一に分散した状態が保持される。
【0022】
この様な素材インゴットが冷間で伸線加工される。その後、焼き鈍しなどの熱処理が施され、線材が作られる。そして、この棒状の部材がカップ成形された後、そのカップ内に銅11がプレスなどの手段で嵌め込まれた後、さらに塑性加工が施されて中心電極3が作られる。
【0023】
接地電極14も同様に、中心電極3と同一材料を混合したものから作られる。すなわち、純度が99.6重量%の固溶体のNi粉末を約99.5%と、ZrO2粉末を0.5%の割合で良く攪拌混合された物に、バインダーが添加された後、平角断面状の棒材に圧粉成形される。その後、脱バインダー処理後に本焼結されて素材インゴットが作られる。その素材インゴットに切断、伸線、湾曲その他の冷間加工が施されて、接地電極14が形成される。
【0024】
(3)次に、本発明によって製造された電極の性質、特性を以下に説明する。
なお、試験は、金属材料で作られた円柱棒状(直径2.5ミリ、長さ20ミリ)の試験体を用いて行われた。図3には、各試験体による机上試験結果及び実機評価結果が示されている。
【0025】
まず、試料20は、固溶体成分量が試験体全体の99.5重量%と、酸化物であるZrO2が0.5重量%とが、それぞれ粉末状態のままで混合されて焼き固められて作られている。試料20の固溶体中のニッケルNi量は99.6重量%とされており、その為、試験体全体におけるニッケルNiの比率は99.1重量%となっている。また、固溶体中には、シリコンSiも混入されており、その量は試験体全体の0.4重量%となっている。
【0026】
試料21は、固溶体成分量が試験体全体の99.0重量%で、酸化物であるZrO2が1.0重量%とされている。固溶体中のニッケルNi量は99.6重量%であり、試験体全体におけるニッケルNiの比率は98.6重量%となっている。また、試料20と同様、固溶体中にはシリコンSiも存在し、その量は試験体全体の0.4重量%となっている。
【0027】
試料22は、固溶体成分量が試験体全体の100重量%とされており、析出物である酸化物は一切混合されていない。結果、固溶体中のニッケルNi量は99.6重量%であり、試験体全体におけるニッケルNiの比率は99.6重量%となっている。また、試料20、21と同様、固溶体中にシリコンSiも存在し、その量は試験体全体の0.4重量%となっている。
【0028】
試料23は、固溶体成分量が試験体全体の99.0重量%で、酸化物であるY2O3が1.0重量%混合されている。固溶体中のニッケルNi量は99.6重量%であり、その結果、試験体全体におけるニッケルNiの比率は98.6重量%となっている。また、上記試料20他と同様、固溶体中にはシリコンSiも存在し、その量は試験体全体の0.4重量%となっている。
【0029】
比較例24は、固溶体成分量が試験体全体の100.0重量%とされているが、酸化物であるZrO2又はY2O3は混合されていない。固溶体中のニッケルNi量は99.4重量%と、本発明のものより少ない量となっている。この為、試験体全体におけるニッケルNiの比率は99.4重量%となっている。また、固溶体中には、シリコンSiが試験体全体の0.4重量%、クロムCrが0.2重量%それぞれ混入されている。
【0030】
比較例25は、固溶体成分量が試験体全体の98.0重量%と、本発明のものより少ない量となっており、酸化物のY2O3が2.0重量%混合されている。固溶体中のニッケルNi量は、本発明のもの(試料20〜23)と同様、99.6重量%とされているが、Y2O3量が多い為、試験体全体におけるニッケルNiの比率は97.6重量%となっている。また、固溶体中には、シリコンSiが試験体全体の0.4重量%ある。
【0031】
比較例26は、固溶体成分量が試験体全体の98.5重量%と、本発明のものより少ない量となっており、酸化物のY2O3が1.5重量%混合されている。さらに、固溶体中のニッケルNi量は、本発明のもの(試料20〜23)よりは少なく、98.48重量%とされている。この為、試験体全体におけるニッケルNiの比率は97.0重量%となり、固溶体中のシリコンSiは、試験体全体の0.4重量%となっている。
【0032】
従来例27は、固溶体成分量が試験体全体の100.0重量%とされ、ZrO2などの酸化物は一切混合されていない。固溶体中のニッケルNi量は、98.0重量%とされている。その他、固溶体中にシリコンSiが試験体全体の1.0重量%、クロムCrが1.0重量%混合している。
【0033】
従来例28は、固溶体成分量が試験体全体の100.0重量%とされ、固溶体中のニッケルNi量は、95.0重量%、シリコンSiが1.5重量%、クロムCrが1.5重量%、その他Alなどの物質が2.0重量%混合されている。従来例29は、固溶体成分量が試験体全体の100.0重量%とされ、固溶体中のニッケルNi量は、75.0重量%、クロムCrが16.0重量%、鉄Feが9.0重量%混合されている。
【0034】
以上のような組成で作られた各試験体について、机上試験(=机上物性値測定)と実機評価試験とが行われた。机上試験では、二つの異なる温度下における比抵抗(Ω・m)の測定と、机上火花消耗性の測定と、結晶粒の大きさが測定された。比抵抗は、常温(20〜25℃)時と、800℃に加熱されたときの値が測定された。机上火花消耗性では、各試験体を用いて火花放電を、実際に行った後の放電ギャップの増加量が測定された。
【0035】
この火花放電は、円柱棒状の試験体の放電面を、実験用電極に対して0.9ミリのギャップ(間隙)を持って配置させた実験装置を用いて行われた。そして、試験体と実験装置の電極との間(又は、間隙を持って配置した二つの同一成分で形成された試験体の間)に火花放電を発生させるべく高電圧が試験体に印加される。試験体に印加されるその電圧信号は、電圧の印加と停止とを60Hz周期で繰り返すパルス性のもので、しかも150時間連続して印加される。なお、7.8×(10の5乗)Paの大気圧中で行われる。そして、その実験後のギャップの増加量を計測することで、火花消耗性が評価された。
【0036】
また、机上試験においてニッケルNiの結晶粒の粗大化を測定すべく、1000℃に試験体が加熱された後の試験体内の結晶粒の大きさが測定された。この結晶粒の測定は、試験体を化学エッチングした後、光学顕微鏡で目視観測された。
【0037】
図3の各実験結果に示されるように、比抵抗は、本発明の試料20、21、22、23では常温で、7Ω・m、800℃に加熱されたときでも、43〜45Ω・mと、成分比率の違いによる比抵抗の差は余りなかった。これに対して、比較例24、26、従来例27、28、29は常温でも25Ω・m以上であり、しかも800℃に加熱すると、比抵抗は55Ω・m以上に上昇した。比抵抗が高いと、火花放電のために流れる電流に対する電気抵抗が大きいので、電気エネルギーが熱エネルギーにより多く変わることになる。このため、電極自体の温度が上昇し、電極の消耗がより早く進みやすくなる。逆に、本発明による試料20、21、22、23が、常温から800℃の温度環境で、素材自体の電気抵抗が比較的小さいので、火花放電用電流が流れることで、上昇する電極温度を低く抑えられるので、電極自体の消耗が少なくできる。
【0038】
火花消耗性は、試料20がそのギャップの増加量が0.05ミリであり、試料21が0.07ミリで、試料22が0.08ミリ、試料23が0.07ミリであった。これに対し、従来例27では、ギャップが0.15ミリ増加し、従来例28ではギャップが0.25ミリ、従来例29ではギャップが0.45ミリ増加した。このように、本発明による試料20、21、22では、ギャップの増加量が1桁小さかった。つまり、火花消耗性がより改善されていることになる。
【0039】
また、机上試験における1000℃加熱後の結晶粒の測定では、試料20〜23において、試料22以外は、0.2ミリだった。しかし、試料22は、0.6ミリと悪くなったが、これは、酸化物(ZrO2、Y2O3)が混合されていないことによると思われる。比較例24〜26においても、酸化物が混合されていない比較例24が、0.6ミリと比較例25、26の0.1ミリより悪い結果となっている。従来例27〜29では、0.5〜0.2ミリであった。以上のことから、加熱された後の結晶粒の粗大化は、酸化物の有無によって大きく左右されることが判った。加熱された後でも、結晶粒が粗大化しにくいということは、結晶粒の粗大化による電極の折損の可能性が低いことを意味する。しかも、電極自体の消耗をより少なくするには、固溶体中のニッケルNi成分量が99.6重量%であることが重要であることも試験結果から判った。
【0040】
(4)次に、実機評価結果を説明する。
図3の右端に、実機評価の結果が示されている。この実機評価試験は、各成分組成で製造された接地電極14が組み付けられた内燃機関用スパークプラグ1を実際のガソリンエンジンに装着し、スロットル全開(W.O.T)による耐久試験で行われた。なお、中心電極3は、直径1.5ミリで98%のニッケルNi合金で作られている。接地電極14は、その先端部分の直径が1.5ミリで、高さ(絶縁体2からの突出量、図2参照)が2.8ミリに形成された。また、ガソリンエンジンには、無鉛ガソリンが用いられ、5000回転(r.p.m)を200時間継続された。なお、中心電極3の最高温度はおおよそ900℃となった。
【0041】
図3に示される実機評価試験の火花消耗性は、実験後の放電ギャップの増加量を示しており、耐酸化性は、電極表面の酸化膜の厚みの評価を示した。実機評価試験の結晶粒度は、実験後のプラグ電極内の結晶粒の大きさを、化学エッチングした後、光学顕微鏡などで測定した結果である。なお、耐酸化性の評価は、試験後に形成された試験体表面の酸化膜の膜厚の大小で行い、0.1ミリ未満が良好である「○」を、0.1ミリ〜0.4ミリの膜厚の場合は良「△」で示した。
【0042】
また、実機評価試験は、試料20、22、比較例24、25、26及び従来例28、29と同一成分組成の電極を持ったプラグで行われた。つまり、試料21、試料23及び従来例27については、実機評価試験は行わなかった。実機評価試験の火花消耗性は、試料20の電極では、0、1ミリの増加であり、試料22の電極では、0.08ミリしか増加しなかった。これに対して、比較例24、25、26による電極では、0.28ミリ、0.23ミリ、0.31ミリであり、従来例28、29による電極では、0.2ミリ、0.38ミリと、火花消耗性(放電ギャップの増加)の数値が倍以上に悪い結果となった。つまり、本発明による電極が、優れた耐火花消耗性を発揮していることが判る。
【0043】
実機評価試験の耐酸化性では、比較例24、26及び従来例28によるものが、良「△」となっており、それ以外は、良好な「○」という結果となった。よって、本発明の耐酸化性は十分にスパークプラグとしての性能を持っている。また、実機評価試験の結晶粒度では、本発明による試料20の電極では、0.1ミリであり、試料22による電極では、0.5ミリと悪くなっている。これは、机上試験と同様、酸化物(ZrO2、Y2O3)が含まれているか否かによる結果であると思われる。同様に酸化物(ZrO2、Y2O3)の含まれる比較例25、26による電極では、0.05ミリであるのに対して、酸化物の含まれない比較例24では0.5ミリと悪くなった。また、従来例28、29による電極では、実機評価試験の結晶粒度が0.5ミリ、0.4ミリであった。
【0044】
机上評価、実機耐久評価共に、本発明の試験体22が他の試験体に比べて小さい値をとっていることが分かる。具体的には、机上評価では、試験体22が0.6ミリに対して、試験体20、21、230.2ミリである。また、実機耐久評価では、試験体22が0.5ミリに対して、試験体20が0.1ミリである。つまり、酸化物(Zr02、Y2O3)を含有させた試験体では、粒径が小さく、結晶粒の粗大化による折損の可能性が少ないことが分かる。
【0045】
以上の机上試験及び実機評価試験の結果から、電極成分中の固溶成分量が99.0%以上あり、且つ固溶成分中のNi量が99.6%以上含有されることで、従来と同等以上の耐酸化性を得つつ、火花消耗性に優れた電極をもつスパークプラグを得ることができる。また、固溶成分以外にZr、Yの酸化物が混合されていることで、結晶粒の粗大化を防止することができる。
【0046】
(5)応用例。
本発明は上記実施例に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、中心電極3及び/又は接地電極14の何れか一方の放電ギャップを形成する位置に、電極チップが接合されていてもよい。電極チップとは、水平方向の断面が円形の円柱体で、小さなチップ状に作られている。この様な電極チップが、上記された中心電極3及び/又は接地電極14の先端部分に溶接によって接合されていてもよい。
【0047】
図4には、中心電極3及び接地電極14の先端にそれぞれ、電極チップ16と、電極チップ17が溶接された応用例が示されている。これら電極チップ16、17により火花放電部18が構成される。なお、チップ16、17の材料としては、IrやPtを主成分とする貴金属が好ましい。なお、本願において「主成分」とは、金属材料中に着目する金属が50重量%以上含有されていることを意味する。さらに、本実施例では、中心電極3の内部に銅の良熱伝導体が内装されているが、これに限らず、中心電極3又は接地電極14の一方か又は双方共に、内部に銅などの良熱伝導体が内装されても良い。
【0048】
(6)請求項の説明。
本発明のスパークプラグは、中心電極(中心電極3)と、この中心電極の先端部と放電ギャップ(間隙15)を隔てて配置された接地電極(接地電極14)とを備えたスパークプラグにおいて、上記中心電極及び上記接地電極の少なくともいずれか一方は、固溶成分が電極全体の成分の99.0重量%以上占めており、該固溶成分のうちニッケルNiの成分が99.6重量%以上含有していることを特徴とする。
【0049】
また、上記電極の固溶成分以外の析出物は、ジルコニウムZrまたはイットリウムYの少なくともいずれか一方の化合物であることを特徴とする。
【0050】
また、上記特徴に加え、上記ジルコニウムZrまたはイットリウムYの少なくとも一方の化合物は、酸化物、炭化物または窒化物であることを特徴とする。
【0051】
また、上記電極(中心電極3又は接地電極14)を外装とし、さらに、銅Cu等の良熱伝導体芯(銅11)が内装されていることを特徴としてもよい。
【0052】
また、上記中心電極及び上記接地電極の少なくともいずれか一方は放電ギャップ(間隙15)を形成する位置に電極チップ(電極チップ16、17)が設けられており、該電極チップは白金Pt、イリジウムIrを主成分としていることを特徴としてもよい。
【0053】
【発明の効果】
以上、本発明は、電極の固溶成分が電極全体の99.0重量%以上を占めており、しかもこの固溶成分中の99.6重量%がニッケルNiであることで、Niの純度が高い電極が製造できる。これにより、比抵抗がより低くできると共に、より高い熱伝導率を保持でき、電極自体の温度上昇を極力抑えることができる。しかも、ニッケルNi以外の固溶成分が少ないので、酸化しにくくなり、火花消耗性を改善することができる。なお、電極の固溶成分が電極全体の99.0重量%未満では化合物が増加することとなり、火花消耗性を抑制することができない。また、固溶成分中のニッケルNi量が99.6重量%未満の場合、ニッケル以外の固溶成分中への添加量が増えるので、電極の比抵抗が増大し、火花消耗性を抑制することができない。
【0054】
また前記電極材にZr、Yの酸化物(又は炭化物、窒化物等の化合物)を粉末状態で混合させた後、電極を加熱・固化させることで、当該酸化物がニッケルの母相から析出しつつ且つ均一に電極内に拡散するので、高温下におけるニッケルの結晶粒の粗大化をより良く防止できる。つまり、高温下において、電極が折損することを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 内燃機関用スパークプラグ1の垂直断面の様子を示す図である。
【図2】 内燃機関用スパークプラグ1の先端部分の一部断面の様子を示す図である。
【図3】 性能評価を示す机上試験及び実機評価試験結果を示す図である。
【図4】 内燃機関用スパークプラグ1の応用例を示す図である。
【符号の説明】
1…内燃機関用スパークプラグ、2…絶縁体、3…中心電極、4…中軸、5…主体金具、6…貫通孔、7…内筒、8…上部、9…雄ねじ、10…リング、11…銅、12…ガラス・シール、13…抵抗体、14…接地電極、15…間隙、16、17…電極チップ、18…火花放電部、20、21、22、23…試料、24、25、26…比較例、27、28、29…従来例。

Claims (3)

  1. 中心電極と、この中心電極の先端部と放電ギャップを隔てて配置された接地電極とを備えたスパークプラグにおいて、
    上記中心電極及び上記接地電極の少なくともいずれか一方は、固溶成分が電極全体の成分の99.0重量%以上占めており、かつこの固溶成分以外にジルコニウムZr又はイットリウムYの少なくともいずれか一方の酸化物、炭化物または窒化物のみが含まれ、
    該固溶成分のうちニッケルNiの成分が99.6重量%以上含有していることを特徴とするスパークプラグ。
  2. 上記電極を外装とし、さらに、銅Cu等の良熱伝導体芯が内装されており、 上記固溶成分の中のニッケルNi以外の成分はシリコンSiであり、 上記電極は、固溶体のニッケルNi粉末と請求項1の酸化物、炭化物または窒化物の粉末とが撹拌混合され、さらにバインダーが混合されて圧粉成形され、さらに脱バインダー処理が施され、さらに真空または非酸化性雰囲気中で加熱されてから冷却され、さらに冷間で伸線加工されて線材が作られ、さらにこの線材がカップ成形され上記銅Cuが埋め込まれ塑性加工されることを特徴とする請求項1記載のスパークプラグ。
  3. 上記中心電極及び上記接地電極の少なくともいずれか一方は放電ギャップを形成する位置に電極チップが設けられており、該電極チップは白金Pt、イリジウムIrを主成分としていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のスパークプラグ。
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