以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る生化学的検査方法を実施する顕微鏡装置の構成を示す図である。図1において、励起光源11には、水銀光源等が用いられる。この光源11から出射される励起光の光路上には、シャッター12、レンズ13、二枚の励起フィルタ14を選択的に切り替え可能な励起フィルタユニット140、およびダイクロイックミラー15が配置され、このダイクロイックミラー15の反射光路上には、対物レンズ16および後述する生化学検査用アレイ1またはレファレンスアレイ4が配置されている。また、ダイクロイックミラー15の透過光路上には、複数枚のNDフィルタ17を選択的に切り替え可能なNDフィルタユニット170、結像レンズ18、およびCCDカメラ19が配置されている。CCDカメラ19には画像処理部20が接続され、画像処理部20には表示部21が接続されている。
図2の(a),(b)は、本第1の実施の形態で使用する生化学検査用アレイの概略構成を示す図であり、図2の(a)は上面のフォーマットを示す図、図2の(b)は一部側面図である。生化学検査用アレイ1は、図27に示した三次元アレイからなる。図2の(a)に示すように、生化学検査用アレイ1にはプローブアレイ要素3が二次元に配列されており、4隅にそれぞれ位置検出用アレイ要素2が配置されている。これらプローブアレイ要素3および位置検出用アレイ要素2は、図27に示したようにテーパ付きウェル103からなり、底部に0.1−10μm直径のチャンネル104を有し、さらに各チャンネル104は図2の(b)に示すように多くの微小な貫通孔105を有している。各貫通孔105の壁面には、プローブ31が結合している。
すなわち生化学検査用アレイ1では、プローブの結合反応を確実にするために、望ましくは多孔性ガラスウェハー101の表面の異なるテーパ付きウェル103にそれぞれプローブの溶液が供給され、該溶液中に含まれるプローブを多孔性ガラスウェハー101の内部に設けられた各チャンネル104の各貫通孔105で保持するのが良いが、多孔性ガラスウェハー101を設けずに、直接各貫通孔105にプローブの溶液を微量分注して保持しても良い。この貫通孔105を含む部材が、多孔質または繊維質の物質あるいは成形物から成る立体構造の反応担体として構成される。
図3は、本第1の実施の形態で使用するレファレンスアレイの上面のフォーマットを示す図である。レファレンスアレイ4は、蛍光分子を保持可能な三次元アレイからなる。図3に示すように、レファレンスアレイ4には蛍光分子保持用要素5が二次元に配列されており、4隅にそれぞれ位置検出用アレイ要素2が配置されている。
図2の(a),図3に示すように、生化学検査用アレイ1とレファレンスアレイ4は同一のフォーマットを有している。4隅に位置する4個の位置検出用アレイ要素2は、生化学検査用アレイ1とレファレンスアレイ4で同じ位置に存在するものであり、顕微鏡下の図示しないステージ上に生化学検査用アレイ1とレファレンスアレイ4を配置するときの両者の位置合わせ用に使用される。従って、位置検出用アレイ要素2は必ずしも図2の(a),図3に示す位置である必要はなく、両者で同じ位置に存在すればどの位置でも良い。もちろん、生化学検査用アレイ1とレファレンスアレイ4のフォーマット自身も、これらの条件を満たすものであれば任意で良い。
以下、本第1の実施の形態における生化学検査の概略を説明する。
最初に検査者は、アレイ用基板に標識として使用する蛍光分子と同一のnRM個の蛍光分子をそれぞれ蛍光分子保持用要素5に、標識と異なる発光波長の蛍光分子をそれぞれ位置検出用アレイ要素2にスポッティングしてレファレンスアレイ4を製作する。ここで、Rはレファレンスを意味する添字、Mは蛍光物質に対応する添字である。
次に、顕微鏡観察下で位置出し配置されたレファレンスアレイ4に励起照明を与えて、蛍光画像をCCDカメラ19で撮り込みレファレンス蛍光画像とする。該レファレンス蛍光画像は、標識に使用する蛍光物質の種類数だけ撮り込まれる。なお、蛍光物質の劣化を防止するために、撮り込まれた後直ちにシャッター12などで励起照明を遮断するのが好ましい。
次に検査者は、前記レファレンスアレイ4を排出し、これと同じ位置に生化学検査用アレイ1を配置する。この生化学検査用アレイ1では、あらかじめ標識と異なる発光波長の蛍光分子をアレイ用基板の位置検出用アレイ要素2に、対応するプローブ液を同じくプローブアレイ要素3にそれぞれ固相化してある。
次に検査者は、該生化学検査用アレイ1に蛍光分子で標識された被検サンプルの溶液を供給し、各プローブとサンプル溶液中の物質とで結合反応を生じさせた後、未結合の前記物質をプローブアレイ要素3から除去する。
次に、該生化学検査用アレイ1に励起照明を与えて、蛍光画像をCCDカメラ19で撮り込みサンプル蛍光画像とする。該サンプル蛍光画像は、前記レファレンス蛍光画像と同じく標識に使用する蛍光物質の種類数だけ撮り込まれる。なお、蛍光物質の劣化を防止するために、撮り込まれた後直ちにシャッター12などで励起照明を遮断するのが好ましい。
次に、前記レファレンス蛍光画像および前記サンプル蛍光画像を各々要素単位に分割し、複数の分割画像(該分割画像は、標識に使用する蛍光物質の種類数×プローブアレイ要素数×2だけ存在する)とする。なお、この時の分割条件は、4個の前記位置検出用アレイ要素2の重心位置または二値化画像の図心位置の座標と、既知のアレイフォーマットにより決定する。
さて、γ値が1の受光素子上に無収差レンズで結像した時に、最大信号の1/2のレベルでの二値化点が主光線と最適像面との交点と考えて良い。そこで、全ての前記分割画像を最大信号の1/2のレベルで二値化して、この二値化画像の領域を設定し、この領域の最大x座標、最小x座標、最大y座標および最小y座標を求める。
レファレンス二値化画像については、最大x座標をxRMkmax、最小x座標をxRMkmin、最大y座標をyRMkmaxおよび最小y座標をyRMkminとし、サンプル二値化画像については、最大x座標をxSMkmax、最小x座標をxSMkmin、最大y座標をySMkmaxおよび最小y座標をySMkminとする。同時に、前記サンプル蛍光画像の分割画像に関してのみ前記二値化画像の実面積を計算し、これをSMkとする。
図4は、前記レファレンス蛍光画像および前記サンプル蛍光画像の分割画像を示す図であり、図5は図4に表示されている線分AB上のCCDからの出力信号を示す図である。二値化領域41とこの領域の最大x座標xmax 、最小x座標xmin 、最大y座標ymax および最小y座標ymin との関係は図4および図5に示す通りである(なお、図中では添字RMkおよびSMkは区別不要のため省略してある)。
次に、測定領域42およびノイズサンプリング領域43を決定するための矩形領域を与える2つの座標を、図4および図5に示すように(x′
min ,y′
min )および(x′
max ,y′
max )として、このx′
min 、y′
min 、x′
max およびy′
max を次式で与える。
ただし、βは光学系の像倍率であり、δは次式で与える。
ここで、λは検出する標識Mの蛍光波長、aは試料側の開口数、Δはデフォーカス量である。また、右辺の第1項は回折像の中心から二次の回折ピークと三次の回折ピークとの間の谷間までの距離(回折によるボケ量)を表し、第2項はフォーカシング誤差に起因するボケ量(デフォーカスによるボケ量)を表す。すなわち、(5)式はフォーカシング誤差を考慮したときの最大ボケ量を与える式と考えて良い。
さて、分割画像は図5に示すように、検出されるべき信号51とノイズ信号52との合成信号で形成されている。ノイズは装置構成や測定環境に依存するが、一般的には励起光ノイズ(励起光に起因するノイズ)が支配的であり、時には迷光ノイズ(励起光以外の光源に起因するノイズ)も無視できない。また、励起光ノイズには励起光の基板での反射光ノイズ、励起光による基板の自家発光ノイズなどがある。
図6は、前述したノイズ信号を出力信号から差し引いた信号を示す図である。この減算処理をすることにより、検出されるべき信号61を取り出すことができる。なお、図4〜図6は説明しやすいようにモデル化して表現してあるが、実際には検出されるべき信号およびノイズ信号は平坦でなく、位置によりむらがある。特に前述した励起光ノイズは照明むらを反映するので、ノイズ信号のむらの最大の原因となる。
本実施の形態においては、検出されるべき信号のむらにより二値化領域が図4に示すような円形でない場合または1つの分割画像に複数の二値化領域が存在する場合でも、(x′min ,y′min )および(x′max ,y′max )で定まる矩形領域を測定領域とすることで、この測定領域内に検出されるべきすべての信号が含まれることが保証される。
そこで本実施の形態においては、ノイズ信号のむらを前提として、測定領域42の信号からノイズサンプリング領域43内の平均ノイズ信号を差し引き、図6に示す検出信号を得る。平均ノイズ信号は、ノイズサンプリング領域内の信号の総和をノイズサンプリング領域の面積で除することで求められる。次に、差し引かれて得られた検出信号の測定領域42内での総和を、アレイ要素ごとの信号強度とする。
このような方法によれば、検出されるべき信号の近傍でノイズ信号をサンプリングできるので、検出されるべき信号の検出精度が向上する。しかも、前述のごとくデフォーカスを考慮して測定領域を設定してあるので、デフォーカスノイズが発生しないことも明らかである。
以上により、標識に使用する蛍光物質の種類数×プローブアレイ要素数×2の数量の信号強度が得られる。今、プローブアレイ要素3および蛍光分子保持用要素5の信号強度をそれぞれPRMk およびPSMk で表す。ここでRおよびSは、それぞれレファレンスおよびサンプルを示す添字、Mは蛍光物質に対応する添字、kは蛍光分子保持用要素5の番号であると同時にこれに対応したプローブアレイ要素3の番号である。
次に、プローブアレイ要素3の信号強度P
SMk をプローブアレイ要素3の面積で補正してP
Mkとする。次式によりP
Mkを求める。
ここで、SO はプローブアレイ要素3の標準面積、SMkは先に計算された各プローブアレイ要素3の二値化画像の実面積である。この補正により、プローブ分注誤差によるノイズを除去することができる。
次に、前記サンプル蛍光画像のプローブアレイ要素3ごとの強度信号P
Mkを前記プローブアレイ要素3に存在する標識Mの蛍光分子(または化学発光分子)数n
Mkで表すと次のようになる。
ただし、ρは蛍光の発光関数の非線型係数であり定数で与えられる。また、I
Mkは次式で表すことができる。
ここで、nRMはレファレンスアレイ4の番号kの蛍光分子保持用要素5に存在する標識Mの蛍光分子数(または化学発光分子)である。
従って(8)式でI
Mkを求め、(7)式を用いて前記プローブアレイ要素3に存在する標識Mの蛍光分子(または化学発光分子)数n
Mkを求めることができる。すなわち、プローブアレイ要素3ごとに、標識物質数の信号強度P
Mkの検出値からその数だけの方程式を作り、これらの方程式を解くことにより前記プローブアレイ要素3に存在する標識Mの蛍光分子(または化学発光分子)数n
Mkを求める。(7)式および(8)式により、
となる。
(8)式において非線型係数ρが0とみなせる場合には、I
Mkは蛍光分子(または化学発光分子)1個当たりの信号強度となる。このときに(9)式は非常に簡単な式となりn
Mkは次式により求められる。
次に、非線型係数ρが0とみなせない場合のn
Mkの逐次近似法による求め方について述べる。(9)式において、i回目のn
Mkの近似値を
で表し、これを求める右辺のn
Mkにはi−1回目のn
Mkの近似値を用いる。これを式で示すと次のようになる。
ただし、i=1,2,3,…とする。また、n
Mkの初期値として
を与え、さらに、収束条件として次式を与えるのが良い。
を求めるnMkとする。
図7,図8は、本第1の実施の形態による検査手順を示すフローチャートである。以下、図7,図8に従って検査方法およびその作用を説明する。
(1)ステップS1:まず検査者は、2色の蛍光分子で標識された2種の生化学的物質の溶液を作成する。この場合検査者は、比較したい2種の生化学的物質の溶液を同一濃度で作成し、一方をFITC、他方をローダミンで標識する。これらの標識物質は、蛍光波長の異なる物質の組み合わせであれば他の物質でも構わない。その後、作成した2種の生化学的物質の溶液を1:1の割合で混合して攪拌し、生化学的物質の混合溶液とする。混合比率については、2種の生化学的物質の溶液および標識物質の特性に応じて変更しても良い。
(2)ステップS2:検査者は、2色の蛍光分子を保有するレファレンスアレイ4を製作する。この場合検査者は、アレイ用基板に蛍光標識として使用するFITCおよびローダミンを同一の蛍光分子数nRMだけそれぞれ蛍光分子保持用要素5に、標識と異なる発光波長の蛍光分子をそれぞれ位置検出用アレイ要素2にスポッティングしてレファレンスアレイ4を製作する。この際、スポッティングする位置はプローブアレイ要素3に対応する位置とする。ここでRはレファレンスを意味する添字、Mは蛍光物質に対応する添字である。
なお、スポッティングの方法は、使用する蛍光分子の重量とその分子量から使用する蛍光分子数を特定し、この蛍光分子数の蛍光分子の溶液を既定量となるように作り、この溶液をインクジェット方式によりアレイ用基板上に吐出するものである。1要素当たりの蛍光分子数nRMは、これらの諸量(溶液量および溶液中の蛍光分子数)と溶液の吐出量とから計算して求められる。なお、蛍光分子の保持方法として固相化試薬を用いると確実な保持が可能となるが、必ずしも必要ではない。
(3)ステップS3:検査者は観察光路a上のNDフィルタ17を切り替えながら、レファレンスアレイ4の蛍光画像を色別にCCDカメラ19で撮り込む。この場合、レファレンスアレイ4を励起光源11で励起照明して、各蛍光分子保持用要素5内の蛍光分子が発生する蛍光の画像をCCDカメラ19で撮り込む。この際、検査者は励起フィルタユニット140を切り替え操作して所望の蛍光分子の色に対応する励起フィルタ14を照明光路b上に配置し、さらにNDフィルタユニット170を切り替え操作して所望のNDフィルタ17を観察光路a上に配置する。
励起光源11からの励起光は、レンズ13、励起フィルタ14を介してダイクロイックミラー15で反射され、対物レンズ16を介してレファレンスアレイ4の上面全体に照射される。レファレンスアレイ4から発生した蛍光は、対物レンズ16、ダイクロイックミラー15、NDフィルタ17、および結像レンズ18を介して、CCDカメラ19に入射し、蛍光分子の色別に蛍光画像が撮り込まれる。従ってこの段階で、2色×NDフィルタの枚数分の蛍光画像が得られる。CCDカメラ19で撮り込んだ蛍光画像は、画像処理部20へ送られる。
なお、本実施の形態では受光素子としてCCDを用いているが、CCDに特定するものではなく、他のエリアセンサを用いても良い。従って、以下に記述される「CCD」は「エリアセンサ」でも通用するものである。
(4)ステップS4:検査者は観察光路a上のNDフィルタ17を切り替えながら、レファレンスアレイ4のバックグラウンド画像を蛍光分子の色別にCCDカメラ19で撮り込む。この場合、レファレンスアレイ4の蛍光画像を撮り込んだ直後にシャッター12により励起照明を遮断し、CCDカメラ19でバックグラウンド画像を撮り込む。このバックグラウンド画像の数は、蛍光画像の数と同一となる。このバックグラウンド画像は、検出強度に不要な暗電流ノイズおよび迷光ノイズにより構成される。CCDカメラ19で撮り込んだバックグラウンド画像は、画像処理部20へ送られる。
(5)ステップS5:検査者は、生化学検査用アレイ1に生化学的物質の混合溶液を供給し、各プローブと特異的に反応させる。この場合検査者は、図1に示した蛍光顕微鏡の観察下で、試料面に図2の(a)に示す生化学検査用アレイ1を配置し、その表面に一様に生化学的物質の混合溶液を供給する。これにより、生化学検査用アレイ1上のプローブアレイ要素3内のプローブと混合溶液に含まれる生化学的物質との間に特異的な結合反応が生じる。この結果、各プローブアレイ要素3内で反応の強さに応じた数量の蛍光分子が間接的にプローブに結合することになる。
(6)ステップS6:検査者は、生化学検査用アレイ1から未反応の生化学的物質を除去する。この場合検査者は、前述した結合反応後に、生化学検査用アレイ1の各プローブアレイ要素3から未結合の生化学的物質を除去する。一般的には洗浄液を用いて洗浄する方法が採用されるが、反応担体が立体構造である場合には洗浄液を用いずにポンプなどで溶液ごと除去しても良い。但し、洗浄液を用いる方が確実に除去されることは言うまでもない。
(7)ステップS7:検査者は観察光路a上のNDフィルタ17を切り替えながら、生化学検査用アレイ1の蛍光画像を色別にCCDカメラ19で撮り込む。この場合、生化学検査用アレイ1を励起光源11で励起照明して、各プローブアレイ要素3内の蛍光分子が発生する蛍光の画像をCCDカメラ19で撮り込む。この際、検査者は励起フィルタユニット140を切り替え操作して所望の蛍光分子の色に対応する励起フィルタ14を照明光路b上に配置し、さらにNDフィルタユニット170を切り替え操作して所望のNDフィルタ17を観察光路a上に配置する。
励起光源11からの励起光は、レンズ13、励起フィルタ14を介してダイクロイックミラー15で反射され、対物レンズ16を介して生化学検査用アレイ1の上面全体に照射される。生化学検査用アレイ1から発生した蛍光は、対物レンズ16、ダイクロイックミラー15、NDフィルタ17、および結像レンズ18を介して、CCDカメラ19に入射し、蛍光分子の色別に蛍光画像が撮り込まれる。この生化学検査用アレイ1の蛍光画像の数は、レファレンスアレイ4のバックグラウンド画像および蛍光画像の数と同一となる。CCDカメラ19で撮り込んだ蛍光画像は、画像処理部20へ送られる。
(8)ステップS8:検査者は観察光路a上のNDフィルタ17を切り替えながら、生化学検査用アレイ1のバックグラウンド画像を蛍光分子の色別にCCDカメラ19で撮り込む。この場合、前述した生化学検査用アレイ1の蛍光画像を撮り込んだ直後にシャッター12により励起照明を遮断し、CCDカメラ19でバックグラウンド画像を撮り込む。この生化学検査用アレイ1のバックグラウンド画像の数は、蛍光画像の数と同一となる。このバックグラウンド画像は、レファレンスアレイ4のバックグラウンド画像と同様に、検出強度に不要な暗電流ノイズおよび迷光ノイズにより構成される。CCDカメラ19で撮り込んだバックグラウンド画像は、画像処理部20へ送られる。
(9)ステップS9:画像処理部20は、レファレンスとサンプルの各蛍光画像から各バックグラウンド画像を差し引き、色別およびNDフィルタ別の補正画像とする。一般的に、受光素子の出力には暗電流ノイズや迷光ノイズなどの直流ノイズが含まれる。この直流ノイズを除去するために、レファレンスアレイ4および生化学検査用アレイ1について各々蛍光画像からバックグラウンド画像を差し引き、これを補正画像と称し以後の処理の対象とする。従って、この段階で2色×NDフィルタの枚数の補正画像が得られる。なお、蛍光画像およびバックグラウンド画像は、以後不要となる。
(10)ステップS10:画像処理部20は、各補正画像中の位置検出用アレイ要素2に対応する画像の重心位置を検出する。図2の(a)および図3に示すように、生化学検査用アレイ1およびレファレンスアレイ4に形成されるアレイ要素は二次元に配列されており、共に4隅に位置する4個のアレイ要素が位置検出用アレイ要素2として用いられる。それ以外のアレイ要素はプローブアレイ要素3または蛍光分子保持用要素5として用いられる。
位置検出用アレイ要素2は位置信号を出すためのものであるから、その要素内の物質は発光物質または反射物質であれば何でも良いことになるが、望ましくは使用される2色の蛍光波長とは異なる蛍光波長の蛍光物質を用いる方が良い。その理由は、位置検出用アレイ要素2から発生する蛍光がノイズとして作用する可能性を無くすことができるからである。この場合には、位置検出用の励起波長で照明し、位置検出をすることになる。
(11)ステップS11:画像処理部20は、各補正画像を回転移動して、色別およびNDフィルタ別の回転画像とする。この場合、レファレンスアレイ4および生化学検査用アレイ1について各々得られた4個の位置座標で形成される各四辺形が最小偏差で矩形となるように位置座標を修正してから、各矩形の各辺が座標軸と平行になるように各画像中心を回転中心として各補正画像を回転移動する。移動後の画像を各々回転画像と呼ぶ。なお、各補正画像は以後不要となる。
(12)ステップS12:画像処理部20は、各回転画像を蛍光分子保持用要素5およびプローブアレイ要素3ごとの画像に分割し、各々色別、NDフィルタ別および要素別の分割画像とする
この場合、画像処理部20は、レファレンスアレイ4および生化学検査用アレイ1の各回転画像の4個の位置座標と蛍光分子保持用要素5およびプローブアレイ要素3の配列条件とから分割条件を決定して、この分割条件ですべての回転画像を蛍光分子保持用要素5またはプローブアレイ要素3ごとの画像に分割し、分割画像とする。なお、レファレンスアレイ4の回転画像の分割画像をレファレンス分割画像、生化学検査用アレイ1の回転画像の分割画像をサンプル分割画像と呼ぶ。従ってこの段階で、2×NDフィルタの枚数×プローブアレイ要素数分の分割画像が得られる。なお、各回転画像は以後不要となる。
(13)ステップS13:画像処理部20は、最適なNDフィルタ17に対応する各分割画像を色別および要素別の測定用画像として抽出する。
この場合、画像処理部20は、同一色で同一位置の蛍光分子保持用要素5のNDフィルタ枚数分のレファレンス分割画像の中から、最大信号強度がダイナミックレンジの範囲内にあり、その中で信号強度が最大であるレファレンス分割画像を1個抽出する。これを測定用レファレンス画像と呼ぶ。同様に画像処理部20は、同一色で同一位置のプローブアレイ要素3のNDフィルタ枚数分のサンプル分割画像の中から、最大信号強度がダイナミックレンジの範囲内にあり、その中で信号強度が最大であるサンプル分割画像を1個抽出する。これを測定用サンプル画像と呼ぶ。
(14)ステップS14:画像処理部20は、抽出した各測定用画像を二値化し、色別および要素別の二値化画像とする。測定用レファレンス画像および測定用サンプル画像のすべてについて、各々最大信号の1/2レベルで二値化し、これをそれぞれレファレンス二値化画像およびサンプル二値化画像とする。サンプル二値化画像については二値化領域41の面積SMkを算出する。
(15)ステップS15:画像処理部20は、各二値化画像により測定領域42およびノイズサンプリング領域43を設定する。
この場合画像処理部20は、レファレンス二値化画像のすべてについて、各々の最大x座標xRMkmax、最小x座標xRMkmin、最大y座標yRMkmaxおよび最小y座標yRMkminを求める。同様にサンプル二値化画像のすべてについて、各々の最大x座標xSMkmax、最小x座標xSMkmin、最大y座標ySMkmaxおよび最小y座標ySMkminを求めてから、ノイズのサンプリング領域を設定するための座標x′RMkmax、x′RMkmin、y′RMkmax、y′RMkmin、x′SMkmax、x′SMkmin、y′SMkmaxおよびy′SMkminを算出する。
そして、点(x′RMkmin,y′RMkmin)および点(x′RMkmax,y′SMkmax)で定まる矩形内を測定用レファレンス画像の測定領域とし、該矩形外を測定用レファレンス画像のノイズサンプリング領域とする。同様に、点(x′SMkmin,y′SMkmin)および点(x′SMkmax,y′SMkmax)で定まる矩形内を測定用サンプル画像の測定領域とし、該矩形外を測定用サンプル画像のノイズサンプリング領域とする。
(16)ステップS16:画像処理部20は、測定用画像上で測定領域42の信号から平均ノイズ信号を差し引く。
この場合画像処理部20は、測定用レファレンス画像のノイズサンプリング領域43の信号から単位面積当たりのノイズを求め、測定用レファレンス画像の測定領域42の信号からこの信号を差し引いてレファレンス画像の検出信号とする。同様に、測定用サンプル画像のノイズサンプリング領域43の信号から単位面積当たりのノイズを求め、測定用サンプル画像の測定領域42の信号からこの信号を差し引いてサンプル画像の検出信号とする。
(17)ステップS17:画像処理部20は、プローブアレイ要素3の標準面積当たりの信号強度を色別に算出する。
この場合画像処理部20は、各蛍光分子保持用要素5の測定領域42内での検出信号の総和をPRMk として算出する。同様に、各プローブアレイ要素3の測定領域42内での検出信号の総和をPSMk として算出する。次いで、プローブアレイ要素3の標準面積SO 当たりの信号強度を(6)式を用いて色別に算出する。これらの信号強度は、励起光むら、励起光ノイズおよびプローブの分注誤差により生じる強度誤差が除去された強度として得られる。
(18)ステップS18:画像処理部20は、プローブアレイ要素3の標準面積当たりに存在する蛍光分子(または化学発光分子)数を色別に算出する。この場合画像処理部20は、プローブアレイ要素3の標準面積SO 当たりの信号強度から、(11)式、(12)式および(13)式を用いてプローブアレイ要素3の標準面積SO 当たりに存在する蛍光分子数nMkを色別に算出する。
(19)ステップS19:画像処理部20は、色別に算出した蛍光分子(または化学発光分子)数を両軸とする散布図を表示する。この場合画像処理部20は、2色の蛍光物質のプローブアレイ要素3ごとの蛍光分子数を各々x軸およびy軸とした散布図を、表示部21に表示する。
図9は、上記散布図の例であり、x軸をサンプルAの蛍光分子数、y軸をサンプルBの蛍光分子数として対数メモリ上に示している。図9はm個のプローブアレイ要素3の各プローブについて簡略して示しており、‘プローブ3’以外はサンプルAとサンプルBの蛍光分子数のバランスが範囲91(二本の破線間)内にある。この場合、サンプルAとサンプルBについて、そのプローブとの結合反応が同程度と判断され、プローブ3についてはサンプルBの反応がサンプルAの反応よりも明らかに強いと判断される。なお、x軸およびy軸はいずれも対数軸とし、前記範囲91を決定する二本の破線は、y=mnx および y=(1/mn)x、実線はy=xの直線で表わされる(3本の直線は数学的に平行となる)。y=xに対して±10%の範囲を設定する場合には、mn=1.1とし、この値を画像処理部20で適宜設定して表示できる。このような散布図により、各プローブアレイ要素のプローブとサンプルとの反応状態を正確に表現できる。
本第1の実施の形態によれば、レファレンス蛍光画像を導入しているので、励起照明に空間的にむらがある場合でも適切に出力補正することができる。さらに、使われる蛍光分子の発光特性およびその時間的変動をも考慮した方法であるので、各プローブアレイ要素ごとに存在する標識Mの蛍光分子数nMkすなわちプローブと対象物質との反応状態を正確に求めることができる。この場合には、標識は蛍光分子に限らず、化学発光分子等の発光性分子であれば良い。なお、レファレンス蛍光画像の撮り込みとサンプル蛍光画像の撮り込みは、順序を逆にしても何ら支障がない。
図10は、本第2の実施の形態で使用する生化学検査用アレイの上面のフォーマットを示す図である。図10に示す生化学検査用アレイ6は、図2の(a)に示した生化学検査用アレイ1における4個の位置検出用アレイ要素2を、それぞれプローブアレイ要素3に代えた構成をなしている。
図11は、本第2の実施の形態で使用するレファレンスアレイの上面のフォーマットを示す図である。図11に示すレファレンスアレイ7は、蛍光分子を保持可能な三次元アレイからなり、一面の蛍光分子保持領域8が設けられている。該蛍光分子保持領域8は、図10に示した全プローブアレイ要素3の占める領域よりも広い領域として設定される。なお、生化学検査用アレイ6およびレファレンスアレイ7は、第1の実施の形態に示した生化学検査用アレイ1およびレファレンスアレイ4に代えて用いられる。
以下、本第2の実施の形態における生化学検査の概略を説明する。
最初に検査者は、アレイ用基板に標識として使用する蛍光分子と同一の蛍光分子を蛍光分子保持領域8に均一な分布で供給してレファレンスアレイ7を製作する。
次に、顕微鏡観察下で位置出し配置されたレファレンスアレイ7に励起照明を与えて、蛍光画像をCCDカメラ19で撮り込みレファレンス蛍光画像とする。該レファレンス蛍光画像は、標識に使用する蛍光物質の種類数だけ撮り込まれる。なお、蛍光物質の劣化を防止するために、撮り込まれた後直ちにシャッター12などで励起照明を遮断するのが好ましい。
次に検査者は、前記レファレンスアレイ7を排出し、これと同じ位置に生化学検査用アレイ6を配置する。この生化学検査用アレイ6では、あらかじめプローブ液をプローブアレイ要素3にそれぞれ固相化してある。
次に検査者は、該生化学検査用アレイ6に蛍光分子で標識された被検サンプルの溶液を供給し、各プローブとサンプル溶液中の物質とで結合反応を生じさせた後、未結合の前記物質をプローブアレイ要素3から除去する。
次に、該生化学検査用アレイ6に励起照明を与えて、蛍光画像をCCDカメラ19で撮り込みサンプル蛍光画像とする。該サンプル蛍光画像は、前記レファレンス蛍光画像と同じく標識に使用する蛍光物質の種類数だけ撮り込まれる。なお、蛍光物質の劣化を防止するために、撮り込まれた後直ちにシャッターなどで励起照明を遮断するのが好ましい。前記サンプル蛍光画像の各プローブアレイ要素3ごとの信号強度をPMkで表す。ここでMは蛍光物質に対応する添字、kはプローブアレイ要素の番号である。
次に画像処理部20は、各プローブアレイ要素3の位置および実面積SMkを画像処理により検出し、(6)式を用いてPMkを算出し、前記レファレンス蛍光画像から前記位置と同じ位置におけるプローブアレイ要素3の標準面積SO に相当する信号強度を切り出し、この信号強度をPRMk で表す。ここでRはレファレンスを意味する添字である。
次に、前記サンプル蛍光画像のプローブアレイ要素3ごとの信号強度PMkを前記プローブアレイ要素3に存在する標識Mの蛍光分子数nMkで表すと、前述と同じ(7)式となる。
以後の処理は、第1の実施の形態と同様である。ただし、本第2の実施の形態は第1の実施の形態と異なりnRMが不明であるので、一般的には蛍光物質の構成比率を求めるに留まる。しかし、レファレンスアレイ7を第1の実施の形態に使用するレファレンスアレイ4で予め較正することによりIMkを求めておけば、蛍光物質の絶対数量を求めることもできる。
本第2の実施の形態では、望ましくは自家蛍光作用の無いレファレンス用基板を用いる方が良い。これは、レファレンスアレイ7では自家蛍光ノイズを除去するためのサンプリング領域が確保できないためである。しかしながら、レファレンスアレイ7と同一の基板をそのまま第二のレファレンスアレイとし、この中の各プローブアレイ要素に対応する領域をサンプリング領域として自家発光強度を検出し、これを前記信号強度PMkから差し引くことにより、自家蛍光作用を有するレファレンス用基板であっても自家蛍光ノイズを除去することができる。この場合は、他のノイズも同時に除去することができる利点がある。また、本第2の実施の形態の固有の効果は、レファレンスアレイの製作が容易であることにある。なお、レファレンス蛍光画像の撮り込みとサンプル蛍光画像の撮り込みは、順序を逆にしても何ら支障がないことは第1の実施の形態と同様である。
本発明によれば、以下のような作用を奏する。
(1)本発明の生化学的検査方法によれば、サンプル光画像をレファレンス蛍光画像で補正することにより、照明が均一でない場合でも各プローブアレイ要素内でのプローブと生化学的物質との反応状態を正確に検査することができる。
(2)立体構造の反応担体を用いる場合、反応系が複雑となるため不正確になりがちであるが、本発明の生化学的検査方法によれば、実比較できるため上記(1)による作用効果が増大する。
(3)本発明の生化学的検査方法によれば、上記(1)による作用効果に加えて、各プローブアレイ要素に保持されるプローブの状態に差が有る場合でも、参照サンプルと被検サンプルの反応状態の比較から、各プローブアレイ要素ごとのプローブと被検サンプルとの反応状態を正確に検査することができる。
(4)本発明の生化学的検査方法によれば、各プローブアレイ要素ごとのプローブと被検サンプルとの反応状態を正確に検査することができる。
(5)本発明の生化学的検査方法によれば、レファレンスアレイを容易に製造することができる。
(6)本発明の生化学的検査方法によれば、プローブアレイ要素の近傍での励起光ノイズを除去することができるため、各プローブアレイ要素における反応状態を正確に検査することができる。
(7)本発明の生化学的検査方法によれば、立体構造の反応担体を用いる場合、表面での光学的特性が複雑であるため、プローブアレイ要素の近傍でのノイズを補正でき、上記(6)による作用効果が増大する。
(8)本発明の生化学的検査方法によれば、上記(6)による作用効果に加えて、各プローブアレイ要素に保持されるプローブの状態に差が有る場合でも、参照サンプルと被検サンプルの反応状態の比較から、各プローブアレイ要素ごとのプローブと被検サンプルとの反応状態を正確に検査することができる。
(9)本発明の生化学的検査方法によれば、アレイ要素の近傍での励起光ノイズを除去することができるため、各アレイ要素における反応状態を正確に検査することができる。
(10)本発明の生化学的検査方法によれば、立体構造の反応担体を用いる場合、反応量がプローブアレイ要素の面積に比例するので、この面積で補正することによりプローブの分注誤差を除去することになる。従って、各プローブアレイ要素ごとのプローブと被検サンプルとの反応状態の比較を正確に行なうことができる。
(11)本発明の生化学的検査方法によれば、上記(10)による作用効果に加えて、各プローブアレイ要素に保持されるプローブの状態に差が有る場合でも、参照サンプルと被検サンプルの反応状態の比較から、各プローブアレイ要素ごとのプローブと被検サンプルとの反応状態の比較を正確に行なうことができる。
(12)本発明の生化学的検査方法によれば、例えば立体構造の反応担体を用いる場合、反応量がプローブアレイ要素の面積に比例するので、この面積で補正することによりプローブの分注誤差を除去することになる。従って、各プローブアレイ要素ごとのプローブと被検サンプルとの反応状態の比較を正確に行なうことができる。
(13)本発明の生化学的検査方法によれば、一般的にプローブアレイ要素内の蛍光分子数と総発光強度とは比例しないので、総発光強度を線型係数、非線型係数および係数蛍光分子数の結合式で与える。この非線型係数は分子間距離、プローブアレイの構造および反応条件により決定される定数である。そして、採用するシステムに合わせた非線型係数を導入することにより、各プローブアレイ要素内に存在する発光性分子の数を正確に求めることができる。
(14)本発明の生化学的検査方法によれば、立体構造の反応担体を用いる場合、反応系が複雑となるため、システムに対応する非線型係数を用いることで上記(13)による作用効果が増大する。
(15)本発明の生化学的検査方法によれば、上記(13)による作用効果に加えて、各プローブアレイ要素に保持されるプローブの状態に差が有る場合でも、参照サンプルと被検サンプルの反応状態の比較から、各プローブアレイ要素ごとのプローブと被検サンプルとの反応状態を正確に検査することができる。
(16)本発明の生化学的検査方法によれば、一般的にプローブアレイ要素内の発光性分子の数と総発光強度とは比例しないので、総発光強度を線型係数、非線型係数および発光性分子の数の結合式で与える。この非線型係数は分子間距離、プローブアレイの構造および反応条件により決定される定数である。そして、採用するシステムに合わせた非線型係数を導入することにより、各プローブアレイ要素内に存在する蛍光分子数を正確に求めることができる。
(17)本発明の生化学的検査方法によれば、一般的にプローブアレイ要素内の発光性分子の数と総発光強度とは比例しないので、総発光強度を線型係数、非線型係数および発光性分子の数の結合式で与える。この非線型係数は分子間距離、プローブアレイの構造および反応条件により決定される定数である。そして、採用するシステムに合わせた非線型係数を導入することにより、各プローブアレイ要素内に存在する蛍光分子数を正確に求めることができる。
(18)本発明の生化学的検査方法によれば、一般的にプローブアレイ要素内の発光性分子の数と総発光強度とは比例しないので、総発光強度を線型係数、非線型係数および発光性分子の数の結合式で与える。この非線型係数は分子間距離、プローブアレイの構造および反応条件により決定される定数である。そして、採用するシステムに合わせた非線型係数を導入することにより、各プローブアレイ要素内に存在する蛍光分子数を正確に求めることができる。
(19)本発明の生化学的検査方法によれば、各プローブアレイ要素内に存在する色ごとの発光性分子の数を求めることができる。
(20)本発明の生化学的検査方法によれば、一般的にプローブアレイ要素内の発光性分子の数と総発光強度とは比例しないので、総発光強度を線型係数、非線型係数および発光性分子の数の結合式で与える。この非線型係数は分子間距離、プローブアレイの構造および反応条件により決定される定数である。そして、採用するシステムに合わせた非線型係数を導入することにより、各プローブアレイ要素内に存在する蛍光分子数を正確に求めることができる。
図12は、本発明の第3の実施の形態に係る生化学的検査方法を実施する顕微鏡装置の構成を示す図である。図12において図1と同一な部分には同符号を付してある。
図12において、画像処理部20には、システム制御部22、ファイル処理部23、および入力部24が接続されている。ファイル処理部23には記憶部25が接続されている。入力部24は、マウスや各種ボタンを備えている。なお、励起フィルタ14、ダイクロイックミラー15、およびNDフィルタ17は、キューブユニットを構成する。励起フィルタ14とダイクロイックミラー15とNDフィルタ17の観察光路aおよび照明光路b上での組み合せに応じて、異物検出キューブ、レファレンス用キューブ、蛍光M用キューブが構成される。
図13〜図21は、本第3の実施の形態による検査手順を示すフローチャートである。以下、図13〜図21に従って検査方法およびその作用を説明する。
図13は、蛍光輝度測定の手順を示すメインフローチャートである。ステップS21で、表示部21にシステムイメージの画像が表示される。ステップS22で、画像処理部20はファイル処理部23を介して記憶部25からシステム変数を読み込む。システム変数は、以下の通りである。
β;光学系の横倍率 AS;検出開口数 Δ;デフォーカス量の絶対値
λG;異物検出波長 Nx,Ny;カメラの有効画素数
PI;カメラの画素ピッチ B;AD変換ビット数 t0;最小蓄積時間
ステップS23で、チップアレイフォーマットとして生化学検査用アレイ1のフォーマットが設定される。ステップS24で、測定条件が設定される。ステップS25で、画像処理部20は、HG=0,HS=0、測定開始スイッチ=0、測定終了スイッチ=0とする。ステップS26で、SWR=1である場合、ステップS27で、レファレンスが設定され、ステップS28で、検査者によりサンプルチップである生化学検査用アレイ1がセットされる。ステップS26で、SWR=1でない場合、ステップS28で、生化学検査用アレイ1がセットされる。ステップS29で、測定開始スイッチ=1になった場合、ステップS30で、画像処理部20は、測定開始スイッチ=0とする。
ステップS31で、SWG=1である場合、システム制御部22は、ステップS32で上記キューブユニットを異物検出キューブに切換え、ステップS33で励起光の光路上のシャッター12を開く。ステップS34で、画像処理部20がCCDカメラ19から異物画像(ゴミ画像)を撮り込んだ後、ステップS35で、システム制御部22はシャッター12を閉じる。画像処理部20は、ステップS36で異物画像を微分し、ステップS37で異物判定度を決定し、ステップS38で異物関数を決定し、ステップS39で、wGt(x,y)=wG(x,y)とする。
ステップS39の後、またはステップS31でSWG=1でない場合、ステップS40で、システム制御部22はシャッター12を開く。ステップS41で、画像処理部20がCCDカメラ19からサンプル画像を撮り込んだ後、ステップS42で、システム制御部22はシャッター12を閉じる。
画像処理部20は、ステップS43で蛍光輝度の測定を行い、ステップS44で測定データのアレイイメージを表示部21に表示し、ステップS45でt測定データをファイル処理部23を介して記憶部25に保存する。なお、測定データは、ρR;レファレンス異物占有率、ρ;サンプル異物占有率、ΓMB;蛍光バックグラウンド輝度、(i,j);スポット番地、Γ”M(i,j);スポット輝度、ΓMC(i,j);蛍光クロストーク輝度、SM(i,j);スポット面積、REMM(i,j);メッセージ、からなる。
ステップS46で測定終了スイッチ=1である場合、ステップS47で、ファイル処理部23は、チップアレイフォーマット、サンプル条件、測定条件の記述されたファイルを記憶部25に保存し、処理を終了する。ステップS46で測定終了スイッチ=1でない場合、ステップS29以降の処理が行われる。
図14は、上記ステップS23に示したチップアレイフォーマット設定の手順を示すサブフローチャートである。ステップS101で、検査者は、入力部24のオプションボタンにより、アレイフォーマット設定画面を指定する。なお、オプションボタン‘A’は「既存のアレイフォーマットファイルを編集する」、‘B’は「最後に使用したアレイフォーマットファイルを編集する」、‘C’は「新規にアレイフォーマットファイルを設定する」であり、デフォルトは‘B’である。
ステップS102で、検査者は、入力部24のコマンドボタンにより確定をする。なお、コマンドボタン‘OK’は「アレイフォーマット設定画面を確定して次に進む」であり、‘中止’は「ファイルを更新しないで終了する」である。
ステップS103でオプションボタン‘A’が設定され、ステップS104で保存可能なFD(フロッピー(登録商標)ディスク)がセットされ、ステップS105でFDに指定ファイルが有る場合、ステップS106で、ファイル処理部23はFDにディレクトリを移動する。検査者は入力部24から、ステップS107でリストボックスによりファイルを指定し、ステップS108でコマンドボタンにより指定ファイルを開く。
ステップS103でオプションボタン‘B’が設定された場合、ステップS109で、ファイル処理部23は記憶部25に保存されているリースントファイルを開く。ステップS103でオプションボタン‘C’が設定された場合、ステップS110で、ファイル処理部23はデフォルトファイルを開く。ステップS108、S109、S110の後、ステップS111で、検査者は、入力部24のコマンドボタンによりアレイフォーマットの設定値を確定する。
ステップS112で、画像処理部20は、テキストボックスによりステップS111で確定したチップアレイ変数を読み込む。チップアレイ変数は、以下の通りである。
S0;プローブ1個の標準面積 Px,Py;プローブのピッチ
mx,my;プローブ配列数 NP;位置検出用プローブ数
ステップS113で、画像処理部20は、
R0=0.64+1.44S0/πPxPy
を計算し、処理を終了する。
図15は、上記ステップS24に示した測定条件設定の手順を示すサブフローチャートである。ステップS201で、検査者は、入力部24のオプションボタンにより、測定条件設定画面を指定する。なお、オプションボタン‘A’は「既存の測定条件ファイルを編集する」、‘B’は「最後に使用した測定条件ファイルを編集する」、‘C’は「新規に測定条件ファイルを設定する」であり、デフォルトは‘B’である。
ステップS202で、検査者は、入力部24のコマンドボタンにより確定をする。なお、コマンドボタン‘OK’は「測定条件設定画面の指定方法を確定して次に進む」であり、‘中止’は「ファイルを更新しないで終了する」である。
ステップS203でオプションボタン‘A’が設定された場合、検査者は入力部24から、ステップS204でリストボックスによりファイルを指定し、ステップS205でコマンドボタンにより指定ファイルを開く。ステップS203でオプションボタン‘B’が設定された場合、ステップS206で、ファイル処理部23は記憶部25に記憶されているリースントファイルを開く。ステップS203でオプションボタン‘C’が設定された場合、ステップS207で、ファイル処理部23は記憶部25に記憶されているデフォルトファイルを開く。
ステップS205、S206、S207の後、ステップS208で、検査者は、入力部24にてテキストボックスによりユーザー変数の編集を行う。ステップS209で、検査者は、入力部24にてチェックボックスによりユーザー機能の追加と削除を行う。ステップS210で、検査者は、入力部24にて測定条件の編集を行う。ステップS211で、検査者は、入力部24のコマンドボタンにより測定条件を確定する。
ステップS212で、画像処理部20は入力部24から、ステップS211で確定したユーザー標識変数、ユーザー測定変数、及びユーザー機能変数を読み込み、画像処理部20は処理を終了する。
ユーザー標識変数は、以下の通りである。(()内はデフォルト値)
Mmax;蛍光標識数(2)
MA;サンプルAの蛍光標識(FITC)(λA自動入力)
MB;サンプルBの蛍光標識(TEXS RED)(λB自動入力)
(Mmax=2の時)
ユーザー測定変数は、以下の通りである。(()内はデフォルト値)
t0;最小蓄積時間(t0) nmax;蓄積階層数(AUTO)
kmax;測定回数(10)
NP; 位置検出用マーカー数(位置検出用プローブ数)(0)
ユーザー機能変数は、以下の通りである。(機能付は1、無は0、()内はデフォルト値)
SWR;レファレンス処理(1)
SWRG;レファレンスチップの異物処理(1)(SWR=1の時)
SWB;バックグラウンド処理(1)
SWG;サンプルの異物処理(1)(オプションボタン併用)
(非処理データとの併用出力の場合はSWG=2)
図16は、上記ステップS27に示したレファレンス設定の手順を示すサブフローチャートである。ステップS301で、検査者は、入力部24のオプションボタンにより、レファレンスモードを指定する。なお、オプションボタン‘A’は「既存のレファレンスファイルを使用する」、‘B’は「最後に使用したレファレンスファイルを使用する」、‘C’は「新規にレファレンス輝度を測定する」であり、デフォルトは‘B’である。
ステップS302で、検査者は、入力部24のコマンドボタンにより確定をする。なお、コマンドボタン‘NEXT’は「次に進む」であり、‘BACK’は「前に戻る」である。
ステップS303でオプションボタン‘A’が設定された場合、ステップS304で、検査者は入力部24からリストボックスによりファイルを指定し、ステップS305で、画像処理部20は指定されたファイルを対象ファイルとする。ステップS303でオプションボタン‘B’が設定された場合、ステップS306で、画像処理部20はリースントファイルを対象ファイルとする。ステップS305またはステップS306の後、ステップS307で、画像処理部20は対象ファイルからWR(x,y)を読み込み、処理を終了する。
ステップS303でオプションボタン‘C’が設定された場合、ステップS308で、検査者によりレファレンスチップであるレファレンスアレイ4がセットされる。ステップS309でSWRG=1である場合、システム制御部22は、ステップS310で上記キューブユニットを異物検出キューブに切換え、ステップS311でシャッター12を開く。ステップS312で、画像処理部20がCCDカメラ19から異物画像を撮り込んだ後、ステップS313で、システム制御部22はシャッター12を閉じる。画像処理部20は、ステップS314で異物画像を微分し、ステップS315でレファレンス異物判定度を決定し、ステップS316で異物関数を決定し、ステップS317で、wRG(x,y)=wG(x,y)とする。
ステップS317の後、またはステップS309でSWG=1でない場合、システム制御部22は、ステップS318で上記キューブユニットをレファレンス用キューブに切換え、ステップS319でシャッター12を開く。ステップS320で、画像処理部20がCCDカメラ19からレファレンス蛍光画像を撮り込んだ後、ステップS321で、システム制御部22はシャッター12を閉じる。
画像処理部20は、ステップS322でレファレンスバックグラウンドの補正を行い、ステップS323でファイル処理部23がリースントファイルとしてレファレンス変数を保存する。
ステップS324で、検査者が入力部24のオプションボタンにより、‘保存する’を指定した場合、ステップS325で、検査者は入力部25からリストボックスによりファイルを指定し、ステップS326で、ファイル処理部23はリースントファイルを指定されたファイルにコピーし、処理を終了する。ステップS324で、検査者が入力部25のオプションボタンにより、‘保存しない’を指定した場合、画像処理部20は処理を終了する。
図17は、上記ステップS41に示したサンプル画像撮り込みの手順を示すサブフローチャートである。画像処理部20は、ステップS401でM=1とし、ステップS402でnMmax=nmaxとする。ステップS403で、検査者は上記キューブユニットを蛍光M用キューブに切換える。画像処理部20は、ステップS404でn=1とし、ステップS405でk=1,ΓMn(x,y)=0とする。
システム制御部22及び画像処理部20は、ステップS406でCCDカメラ19から、蓄積時間2n−1t0でサンプルチップの蛍光画像を第n階層蛍光画像Γ’Mn(x,y)として撮り込み、ステップS407で、ΓMn(x,y)=ΓMn(x,y)+Γ’Mn(x,y)を計算する。画像処理部20は、ステップS408で、k=kmaxでない場合、ステップS409でk=k+1とし、ステップS406以降の処理を行う。
ステップS408で、k=kmaxである場合、画像処理部20は、ステップS410で、ΓMn(x,y)=ΓMn(x,y)/kによりkmax個の平均画像を計算し、ステップS411で、画像中央部の最小輝度ΓMnminの計測を行う。
このように、蓄積時間を同一とするサンプルチップの複数の蛍光画像が撮り込まれ、それら蛍光画像の平均画像が算出される。
画像処理部20は、ステップS412でn=nMmaxでなく、ステップS413でΓMnmin>2B−1でない場合、ステップS414でn=n+1とし、ステップS405以降の処理を行う。画像処理部20は、ステップS413でΓMnmin>2B−1である場合、ステップS415でnMmax=nとする。
ステップS415の後、またはステップS412でn=nMmaxである場合、画像処理部20は、ステップS416でM=Mmaxでなければ、ステップS417でM=M+1とし、ステップS402以降の処理を行い、ステップS416でM=Mmaxであれば、処理を終了する。
図18は、上記ステップS411に示した中央部の最小輝度計測の手順を示すサブフローチャートである。画像処理部20は、ステップS501でΓMnmin=2B−1とし、ステップS502でy=0、ステップS503でx=0とする。画像処理部20は、ステップS504で、0.45Nx−1<x<0.55Nx−1であり、ステップS505で、0.45Ny−1<y<0.55Ny−1であり、ステップS506で、ΓMn(x,y)<ΓMnminである場合、ステップS507で、ΓMnmin=ΓMn(x,y)とする。
ステップS507の後、またはステップS504で0.45Nx−1<x<0.55Nx−1でない場合、またはステップS505で0.45Ny−1<y<0.55Ny−1でない場合、またはステップS506でΓMn(x,y)<ΓMnminでない場合、画像処理部20は、ステップS508でx=Nx−1でなければ、ステップS509でx=x+1とし、ステップS504以降の処理を行う。
ステップS508でx=Nx−1であり、ステップS510でy=Ny−1でない場合、画像処理部20は、ステップS511でy=y+1とし、ステップS503以降の処理を行う。ステップS510でy=Ny−1である場合、画像処理部20は処理を終了する。
図19は、上記ステップS43に示した蛍光輝度測定の手順を示すサブフローチャートである。画像処理部20は、ステップS601でM=1とし、ステップS602で、サンプル蛍光画像の迷光補正と空間移動平均化処理を行う。画像処理部20は、ステップS603で画像分割線を決定し、ステップS604でサンプル蛍光画像を回転し、ステップS605で蛍光バックグラウンド補正を行う。この蛍光バックグラウンド補正では、サンプル蛍光画像のノイズサンプリング領域(ローカルバックグラウンド領域)内の蛍光の最小検出量を蛍光バックグラウンドとし、該蛍光バックグラウンドを前記サンプル蛍光画像から差し引いた蛍光画像を対象画像とする。この場合、図4に示すように、測定領域42の境界とノイズサンプリング領域43の境界とを同一とする。
画像処理部20は、ステップS606でj=1、ステップS607でi=1、ステップS608でn=n
maxとする。画像処理部20は、ステップS609で最適画像のチェックをし、ステップS610で、
である場合、ステップS611で測定領域を決定する。
画像処理部20は、ステップS612で、x’min=b2’(i,j−1)でなく、ステップS613で、x’max=b2’(i,j)でなく、ステップS614で、y’min=b1’(i−1)でなく、ステップS615で、y’max=b1’(i)でない場合、ステップS616でスポット輝度を計測する。ステップS612でx’min=b2’(i,j−1)であるか、ステップS613でx’max=b2’(i,j)であるか、ステップS614でy’min=b1’(i−1)であるか、ステップS615でy’max=b1’(i)である場合、ステップS617で、画像処理部20は、REMM(i,j)=スポット異常とする。
でなく、ステップS618でn=1でない場合、画像処理部20は、ステップS619でn=n−1とし、ステップS609以降の処理を行う。ステップS618でn=1である場合、画像処理部20は、ステップS620で、REMM(i,j)=蓄積時間大により計測不能とする。
ステップS616またはステップS620の後、画像処理部20は、ステップS621でi=mxでない場合、ステップS622でi=i+1とし、ステップS608以降の処理を行う。画像処理部20は、ステップS621でi=mxであり、ステップS623でj=myでない場合、ステップS624でj=j+1とし、ステップS607以降の処理を行う。画像処理部20は、ステップS623でj=myであり、ステップS625でM=Mmaxでない場合、ステップS626でM=M+1とし、ステップS602以降の処理を行う。ステップS625でM=Mmaxである場合、画像処理部20は処理を終了する。
なお、上記ステップS602では、サンプル蛍光画像に対して空間移動平均化により平滑化処理を行ったが、平均化オペレータを用いて平滑化処理を行なってもよい。
図20は、上記ステップS602に示したサンプル蛍光画像の迷光補正と空間移動平均化の手順を示すサブフローチャートである。画像処理部20は、ステップS701でn=1とし、ステップS702で、k=1,Γ(x,y)=0とする。画像処理部20は、ステップS703でCCDカメラ19から、蓄積時間2n−1t0でサンプルチップの第n階層迷光バックグラウンド画像をΓ’(x,y)として撮り込み、ステップS704で、Γ(x,y)=Γ(x,y)+Γ’(x,y)とする。
ステップS705でk=kmaxでない場合、画像処理部20は、ステップS706でk=k+1とし、ステップS703以降の処理を行う。ステップS705でk=kmaxである場合、画像処理部20は、ステップS707で、Γn(x,y)=ΓMn(x,y)−Γ(x,y)/kによりkmax個の平均画像を計算し、ΓMnmax=0、ΓMnmin=2B−1とする。画像処理部20は、ステップS708でy=kSとし、ステップS709でx=kSとする。
を計算し、ステップS711で、画像中央部の最大輝度
の計測を行う。
画像処理部20は、ステップS712で、x=Nx−kS−1でない場合、ステップS713でx=x+1とし、ステップS710以降の処理を行う。ステップS712でx=Nx−kS−1であり、ステップS714で、y=Ny−kS−1でない場合、画像処理部20は、ステップS715でy=y+1とし、ステップS709以降の処理を行う。ステップS714でy=Ny−kS−1であり、ステップS716で、n=nMmaxでない場合、画像処理部20は、ステップS717でn=n+1とし、ステップS702以降の処理を行う。ステップS716でn=nMmaxである場合、画像処理部20は処理を終了する。
図21は、上記ステップS603に示した画像分割線決定の手順を示すサブフローチャートである。ステップS801で、位置検出用マーカー数(位置検出用プローブ数)NP=0である場合、画像処理部20は、ステップS802で最適反応像(全体像)の二値化を行い、二値化された全体画像に対して、ステップS803でノーマーカー用行勾配の演算を行い、ステップS804でノーマーカー最小列ピッチの演算を行い、ステップS805でノーマーカー用列信号の挿入を行い、ステップS806で行分割線関数の演算を行う。
さらに画像処理部20は、二値化されたサンプル蛍光画像の全体画像に対して、ステップS807でノーマーカー用列勾配の演算を行い、ステップS808でノーマーカー最小行ピッチの演算を行い、ステップS809でノーマーカー用行信号の挿入を行い、ステップS810で列分割線関数の演算を行う。画像処理部20は、ステップS811で、得られた画像分割線の適否判断を行う。
ステップS801でNP=1である場合、画像処理部20は、ステップS812でマーカー1個の位置検出を行い、ステップS813で最適反応像(全体像)の二値化を行い、二値化された全体画像に対して、ステップS814でノーマーカー用行勾配の演算を行い、ステップS815で1点マーカー最小列ピッチの演算を行い、ステップS816でノーマーカー用列信号の挿入を行い、ステップS817で行分割線関数の演算を行う。
さらに画像処理部20は、二値化された全体画像に対して、ステップS818でノーマーカー用列勾配の演算を行い、ステップS819で1点マーカー最小行ピッチの演算を行い、ステップS820でノーマーカー用行信号の挿入を行い、ステップS821で列分割線関数の演算を行う。画像処理部20は、ステップS822で、得られた画像分割線の適否判断を行う。
ステップS801でNP=2である場合、画像処理部20は、ステップS823でマーカー2個の位置検出を行い、ステップS824で最適反応像(全体像)の二値化を行い、二値化された全体画像に対して、ステップS825でノーマーカー用行勾配の演算を行い、ステップS826でノーマーカー用列勾配の演算を行い、ステップS827で2点マーカー用分割線関数の演算を行う。画像処理部20は、ステップS832で、最適反応画像を決定する。
ステップS801でNP=3である場合、画像処理部20は、ステップS828でマーカー3個の位置検出を行い、ステップS829で3点マーカー用分割線関数の演算を行い、ステップS832で最適反応画像を決定する。ステップS801でNP=4である場合、画像処理部20は、ステップS830でマーカー4個の位置検出を行い、ステップS831で4点マーカー用分割線関数の演算を行い、ステップS832で最適反応画像を決定する。
ステップS811またはステップS822またはステップS832の後、ステップS833で、画像処理部20は表示部21に、
y=a1x+b1(k)(行分割線)、x=a2y+b2(k)(列分割線)の表示
を行う。
図22は、表示部21のサンプル蛍光画像上に表示された分割線を示す概念図である。図22は、位置検出用マーカー数(位置検出用プローブ数)NP=0である場合を示している。図22に示すように、画像処理部20は、複数の行分割線71(横破線)と列分割線72(縦破線)により、サンプル蛍光画像をプローブアレイ要素単位で複数の分割画像70に分割する。この場合、各分割画像70は略正方形状をなしている。検査者は、表示部21に拡大表示されるサンプル蛍光画像の各分割画像70上で、入力部25のマウス等により、測定領域とノイズサンプリング領域(ローカルバックグラウンド領域)とを指定する。画像処理部20は、該ノイズサンプリング領域からローカルバックグラウンドを検出し、この検出量で前記測定領域からの検出量を補正する。
ステップS834で、検査者は、入力部25のコマンドボタンにより確定をする。なお、コマンドボタン‘分割線補正’は「分割線を補正する」であり、‘NEXT’は「次に進む」であり、‘BACK’は「メインフローチャートの測定条件の設定(ステップS24)に戻る」であり、‘異常領域指定’は「異常領域を異物画像に加えて再計算する」である。
検査者は、‘異常領域指定’を確定した場合、入力部25のマウス等により、表示部21に表示されるサンプル蛍光画像上で、異常領域を指定する。異常領域とは、異常とみなされるものの、異物画像としては処理されない領域である。画像処理部20は、指定された異常領域を検査対象外の領域とする。さらに画像処理部20は、前記異常領域に異物画像の領域を加えて検査対象外の領域とする。
図23は、表示部21のサンプル蛍光画像上に表示された分割線を示す概念図である。図23は、位置検出用マーカー数(位置検出用プローブ数)NP=0である場合を示している。図23に示すように、画像処理部20は、複数の行分割線71と列分割線72により、サンプル蛍光画像をプローブアレイ要素単位で複数の分割画像70に分割する。この場合、各分割画像70は平行四辺形状をなしている。
生化学検査用アレイにおけるプローブアレイ要素3の配列状態は、図23に示すように、行毎(または列毎、または行毎及び列毎)に連続的にずれ、列毎(または行毎、または行毎及び列毎)に勾配を有している場合がある。この場合、図22に示したような分割を行い、プローブアレイ要素3毎の分割画像を略正方形状とすることはできない。このため画像処理部20は、プローブアレイ要素3の配列状態に応じて、全ての行分割線71と全ての列分割線72の少なくとも一方(図23では全ての列分割線72)を所定角度傾ける処理を行う。これにより、プローブアレイ要素3毎の分割画像は、平行四辺形状になる。
図24は、二値化されたサンプル蛍光画像の行分割線と列分割線の勾配演算例を示す概念図である。図24は、位置検出用マーカー数(位置検出用プローブ数)NP=0である場合を示している。図24は、全体画像中の各プローブアレイ要素3の部分が明領域、その他の部分が暗領域である二値化画像をなしているものとする。なお画像処理部20は、サンプル蛍光画像の二値化に際し、測定領域内での出力値の中央値で二値化を行い、二値化画像を得る。
画像処理部20は、全体画像中の明領域と暗領域を、−x方向から+x方向へ向けて検出して+x方向へ圧縮処理し、全列の明領域圧縮像と暗領域圧縮像を生成する。図24では、この圧縮処理の結果、明領域と検出された領域がON信号で、暗領域と検出された領域がOFF信号で示されている。そして画像処理部20は、圧縮した明領域と暗領域を示す各ON信号と各OFF信号のy軸方向での幅(縦幅)を検出する。
生化学検査用アレイにおけるプローブアレイ要素3の配列状態は、行毎に傾きを有している場合がある。このため、図24に示すように行毎に傾き角度に差がある場合、各ON信号間でy軸方向の幅に差が生じるとともに、各OFF信号間でy軸方向の幅に差が生じる。
画像処理部20は、最も広い幅を有するOFF信号(圧縮した暗領域)が生じたプローブアレイ要素3の行の傾き角度(勾配)、すなわちOFF信号の示す領域に接する一方の行の傾き角度を算出する。そして画像処理部20は、算出した傾き角度を、全ての行分割線の傾き角度(勾配)とする。
また同様に、画像処理部20は、全体画像中の明領域と暗領域をy方向から−y方向へ向けて検出して−y方向へ圧縮処理し、全行の明領域圧縮像と暗領域圧縮像を生成する。この圧縮処理の結果、明領域と検出された領域がON信号で、暗領域と検出された領域がOFF信号で示される。そして画像処理部20は、圧縮した明領域と暗領域を示す各ON信号と各OFF信号のx軸方向での幅(横幅)を検出する。
生化学検査用アレイにおけるプローブアレイ要素3の配列状態は、列毎に傾きを有している場合がある。このため、列毎に傾き角度に差がある場合、各ON信号間でx軸方向の幅に差が生じるとともに、各OFF信号間でx軸方向の幅に差が生じる。
画像処理部20は、最も広い幅を有するOFF信号(圧縮した暗領域)が生じたプローブアレイ要素3の列の傾き角度(勾配)、すなわちOFF信号の示す領域に接する一方の列の傾き角度を算出する。そして画像処理部20は、算出した傾き角度を、全ての列分割線の傾き角度(勾配)とする。
次に、二値化されたサンプル蛍光画像の各行分割線の間隔と各列分割線の間隔の第1の演算例について説明する。画像処理部20は、図24に示すように、全列の圧縮像の各明領域の中央位置をpとし、全列の圧縮像の各暗領域の中央位置をqとする。そして画像処理部20は、各明領域の中央位置pを示す各点を基に、各行分割線の間隔を算出する。あるいは、画像処理部20は、各明領域の中央位置qを示す各点を基に、各行分割線の間隔を算出する。
また画像処理部20は、全行の圧縮像の各明領域の中央位置をp’(不図示)とし、全行の圧縮像の各暗領域の中央位置をq’(不図示)とする。そして画像処理部20は、各明領域の中央位置p’を示す各点を基に、各列分割線の間隔を算出する。あるいは、画像処理部20は、各明領域の中央位置q’を示す各点を基に、各列分割線の間隔を算出する。
行分割線と列分割線の勾配演算の際に、生化学検査用アレイ6上に異物等が存在すると、圧縮した明領域の幅が、プローブアレイ要素3のみによる本来の明領域圧縮像の幅よりも広くなる。この場合、画像処理部20は、連続する各明領域の幅をプローブアレイ要素3の配列条件と比較し、前記各明領域の幅が本来の明領域圧縮像の幅に相当するか否かを判断する。そして画像処理部20は、前記各明領域のうち本来の明領域圧縮像の幅に相当しない部分がある場合、その部分の領域をプローブアレイ要素3の配列条件に基づく暗領域に置き換える。その後、画像処理部20は、各行分割線または各列分割線の間隔を算出する。これにより、異物等による影響を除いた適切な行分割線と列分割線の勾配演算を行える。
次に、二値化されたサンプル蛍光画像の各行分割線の間隔と各列分割線の間隔の第2の演算例について説明する。位置検出用マーカー数(位置検出用プローブ数)NP=1,2,3,4である場合、画像処理部20は、生化学検査用アレイに設けられた所定の位置検出用アレイ要素2の中心位置を検出し、該中心位置を基に行分割線および列分割線の初期位置を算出する。そして画像処理部20は、前記初期位置と、各位置検出用アレイ要素2を基準としたプローブアレイ要素3の配列条件とに基づき、各行分割線の間隔と各列分割線の間隔を算出する。
次に、分割画像における測定領域の決定処理について説明する。
図25は、レファレンス蛍光画像およびサンプル蛍光画像の分割画像を示す図である。図25において図4と同一な部分には同符号を付してある。画像処理部20は、分割画像に対して該分割画像内の出力値の中央値で二値化を行い、二値化画像を得る。その後、画像処理部20は、この二値化画像の二値化ライン40に外接する矩形411を一定量膨張させた矩形412を、ノイズサンプリング領域(ローカルバックグラウンド領域)43の境界とする。そして画像処理部20は、分割画像内でこの境界の外側を前記ノイズサンプリング領域43とし、この境界の内側を測定領域42とする。これにより、二値化領域41全域とその周辺を含めた領域を、測定領域42とすることができる。
なお画像処理部20は、λを検出する蛍光波長、aを試料側の開口数、Δをデフォーカス量とした場合、膨張の量δを下式
δ=1.619×λ/a+a|Δ|
により定める。
図26は、レファレンス蛍光画像およびサンプル蛍光画像の分割画像を示す図である。図26において図4と同一な部分には同符号を付してある。画像処理部20は、分割画像に対して該分割画像内の出力値の中央値で二値化を行い、二値化画像を得る。その後、画像処理部20は、この二値化画像の二値化ライン40に内接する矩形411を一定量収縮させた矩形412を、測定領域42の境界とする。そして画像処理部20は、分割画像内でこの境界の内側を前記測定領域42とし、二値化ライン40の外側をノイズサンプリング領域43とする。これにより、二値化領域41のみを、測定領域42とすることができる。
なお画像処理部20は、λを検出する蛍光波長、aを試料側の開口数、Δをデフォーカス量とした場合、収縮の量δを下式
δ=1.619×λ/a+a|Δ|
により定める。
図25または図26に示した測定領域の決定処理の後、画像処理部20は、測定領域42の単位面積当りの平均発光強度からノイズサンプリング領域43の単位面積当りの平均発光強度を差し引いた強度を、各プローブの反応強度として検出する。
なお、本発明の生化学的検査方法は以下の構成を有する。
(1)レファレンスアレイは、生化学検査用アレイと同一のフォーマットで各プローブアレイ要素に対応するアレイ要素に同数の前記発光性分子が保持されている。
(2)光で励起発光する複数の異なる発光性分子で標識された第1の生化学的物質を含む複数のサンプルの混合溶液を被検サンプルの溶液とし、複数の異なる発光性分子が一定の割合で混在して保持されたレファレンスアレイを用いて、各プローブアレイ要素内のプローブと前記各サンプルとの反応状態を検査する。
(3)プローブアレイ要素の標準面積に対応する発光強度または単位面積当たりの平均発光強度を検出する。
(4)発光関数として、光で励起発光する複数の異なる発光性分子で標識された第1の生化学的物質を含む複数のサンプルの混合溶液を被検サンプルの溶液とし、前記複数の異なる発光性分子が一定の割合で混在して保持されたレファレンスアレイを用いて、各プローブアレイ要素内のプローブと前記各サンプルとの反応状態を検査する。
(5)発光関数を定めるパラメータとして非線型係数を設定し、該非線型係数を用いて各プローブアレイ要素内に存在する発光性分子の数を求める。
(6)n
Mkをプローブアレイ要素k内の発光性分子Mの数量、Jを発光性分子の種類数、I
Mkを前記プローブアレイ要素k内の発光性分子Mの1分子当たりの発光強度、ρを非線型係数、P
Mkを前記プローブアレイ要素k内の発光性分子Mの発光強度とし、前記発光関数を
とする。
(8)P
Mkを前記プローブアレイ要素k内の発光性分子Mの発光強度、n
RMを前記レファレンスアレイの要素k内の発光性分子Mの数量、P
RMk を前記レファレンスアレイの要素k内の発光性分子Mの発光強度とし、前記プローブアレイ要素k内の発光性分子Mの数量n
Mkを式
により求める。
(9)ρを非線型係数、n
RMを前記レファレンスアレイの要素k内の発光性分子Mの数量、P
RMk を前記レファレンスアレイの要素k内の発光性分子Mの発光強度、P
Mkを前記プローブアレイ要素k内の発光性分子Mの発光強度、
を前記プローブアレイ要素k内の発光性分子Mの数量n
Mkのi番目の演算値とし、初期値
を前記プローブアレイ要素k内の発光性分子Mの数量nMkとする。
(10)光で励起発光する複数の異なる発光性分子で標識された第1の生化学的物質を含む複数のサンプルの混合溶液を被検サンプルの溶液とし、該被検サンプルの溶液を生化学検査用アレイに供給する。
(11)予め生化学検査用アレイの異物画像を取得し、異常領域に該異物画像の異物領域を加えて非対象領域とする。
(12)λを検出する蛍光波長、aを試料側の開口数、Δをデフォーカス量とし、膨張の量δを式
δ=1.619×λ/a+a|Δ|
により定める。
(13)λを検出する蛍光波長、aを試料側の開口数、Δをデフォーカス量とし、収縮の量δを式
δ=1.619×λ/a+a|Δ|
により定める。
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されず、要旨を変更しない範囲で適宜変形して実施できる。