JP4271074B2 - 家庭用刃物研ぎ機 - Google Patents

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Description

本発明は家庭で包丁などの刃物を研ぐための刃物研ぎ機に関する。
従来の家庭用電動刃物研ぎ機は、モーターに連結された一本の回動軸に円盤状砥石を取り付けて回転させ、砥石の円形研ぎ面に包丁の刃部を宛がうことによって刃を研ぐ構成であった(例えば、特許文献1参照。)。また、手動刃物研ぎ機は刃を挿入溝の中に差し入れ、刃物を移動させることによって刃を研ぐ構成であった(例えば、特許文献2参照。)。
特開平9−131649号公報 実用新案登録第2547576号公報
本発明は、包丁などの刃物を効率的に研ぐことを課題とする。前述した従来の電動刃物研ぎ機のように一本の回動軸に砥石を取り付け、包丁の刃部を砥石の円形研ぎ面に宛がって研ぐものは、刃部の片面のみを研削するだけである。したがって、刃部の他方の面にバリがでるので、仕上げるときに他方の面も軽く研削する必要がある。また、一本の回動軸に砥石を取り付けてその円形研ぎ面で研削するから、包丁を移動しながら行なう研削は同じ砥石で行われることになる。そのために、包丁を移動しながら研削条件を変化させることができない。そこで本発明は、電動の刃物研ぎ機であって、包丁等を移動しながら研削するときに刃部を両面から研削することによって何度も刃部を砥石に宛がうことなくワンストローク、すなわち一方向に一度だけ包丁を移動するだけで包丁等を研ぐことができる研ぎ機を提供することを目的とする。さらには、複数の砥石を用いることによって、その砥石の条件、例えば粗めのものと仕上げのものを併用する等によって、何度も刃部を砥石に宛がうことなくワンストロークで包丁の研ぎ仕上げができる研ぎ機を提供することを目的とする。
また、前記特許文献2の研ぎ機は、円形の砥石が挿入溝方向に延びる軸で固定されている構成である。このような構成の研ぎ機は、砥石を固定するために軸の両端を支持する軸受が必要である。したがって、軸受のためのスペースが必要となるので砥石を挿入溝の端に接して取り付けることができず、挿入溝の端と砥石との間に一定の距離が置かれるのである。包丁の中にはこのような研ぎ機に適さないものが存在する。包丁は刃の厚みがほぼ一定のものと、刃の刃元を肉厚にしたものが存在する。刃元が肉厚の包丁をこのような研ぎ機で研ぐと、挿入溝の幅は狭いので肉厚の刃元を挿入することができない。そうすると、挿入溝の端と砥石の間の部分の刃は砥石に当たらないから研ぎ残しを生じるのである。そこで本発明は、刃元が肉厚の包丁であっても刃元近くまで刃を研ぐことができる包丁を提供することを目的とする。
本発明の請求項1は、モーターの動力で回動する回動軸に、円板状の砥石が取り付けられた電動刃物研ぎ機であって、回動軸は離れて2本存在し、該回動軸にそれぞれ少なくとも1つの砥石が取り付けられ、各砥石の研削面は砥石の周面であり、一方の回動軸の砥石と他方の回動軸の砥石とが軸方向にずれ、刃物を各砥石の研削面に宛がいながら回転軸方向に移動して刃物を研ぐときに、刃物が進行して来る方向を向いている砥石の平面部と研削面の交わりのかどが面取りされている構成である。
請求項2は、一方の回動軸の砥石と他方の回動軸の砥石とが、両回動軸の間で部分的に重なっている要素が請求項1に限定的に付加された構成である。請求項3は、砥石は円柱状であり、したがって、研削面は砥石平面部に対し直角をなしている要素が請求項1又は請求項2に限定的に付加された構成である。請求項4は、少なくとも一方の回動軸の砥石は円すい台状であり、該砥石は刃物の進行方向に行くに従って半径が小さくなるように取り付けられている要素が請求項1又は請求項2に限定的に付加された構成である。
請求項5は、各回動軸に少なくとも2つずつの砥石が取り付けられている要素が請求項1乃至請求項4に限定的に付加された構成である。
請求項6は、刃物の進行方向に沿って並ぶ各砥石は、刃物の進行がわにある砥石で研削された刃物の被研削面の方が、その前に研削されたその被研削面よりも平滑になるように並べられている要素が請求項1乃至請求項5に限定的に付加された構成であり、請求項7は、同じ回動軸に取り付けられた少なくとも2つの砥石は、刃物の進行がわにある砥石で研削された刃物の被研削面の方が、その前に研削されたその被研削面よりも平滑になるように並べられている要素が請求項5に限定的に付加された構成である。
請求項8は、砥石が固着されたスリーブがそれぞれの回動軸に固定され、それら2つのスリーブは砥石を含めて同一形態をなし、したがって、両回動軸にはそれぞれ同一形態の砥石付きスリーブが軸方向にずれて固定されている要素が請求項7に限定的に付加された構成であり、請求項9は、研削時に両回動軸の砥石の研削面がそれぞれ刃物をこすり上げる方向に回動する要素が請求項1乃至請求項8に限定的に付加された構成である。
請求項10は、包丁の刃を差し入れて包丁を移動させながら刃を研ぐための挿入溝が設けられ、且つ該挿入溝の一方の端部に設けられた端部挿入溝が、該端部挿入溝に続く挿入溝よりも両側を広げた幅広に形成されている要素が請求項1乃至請求項9に限定的に付加された構成である。請求項11は、端部挿入溝が、挿入溝に差し入れた包丁の柄側に形成されている要素が請求項10に限定的に付加された構成である。
請求項1は、回動軸は離れて2本存在し、回動軸にそれぞれ少なくとも1つの砥石が取り付けられ、各砥石の研削面は砥石の周面であり、一方の回動軸の砥石と他方の回動軸の砥石とが軸方向にずれている。したがって、同時に刃部の両側を研ぐので刃部の片面にバリが生じることがなく、バリを取るために反対の面を再度研削する必要がないから、ワンストロークで包丁を研ぐことができる。また、刃物を研ぐときに刃物が進行して来る方向を向いている砥石の平面部と研削面の交わりのかどが面取りされているので、包丁の移動中に包丁の刃部の顎が砥石に当って移動が阻害されるということを防止できる。
請求項2は、一方の回動軸の砥石と他方の回動軸の砥石とが、両回動軸の間で部分的に重なっている。したがって、包丁の刃部を砥石の間に差し入れて研ぐときに刃部は両側の砥石の間を通って下方に抜け出ることがなく、刃部は両側の砥石の周面に支持されながら研削されるので作業が楽である。
請求項3は、砥石は円柱状であり研削面は砥石平面部に対し直角をなしているから、砥石の周面のほぼ全体を使って刃を研ぐことになり、研ぎ作業が効率的に行われる。請求項4は、少なくとも一方の回動軸の砥石は円すい台状であり、該砥石は刃物の進行方向に行くに従って半径が小さくなるように取り付けられている。このことは、包丁を移動しながら研削するときに、刃部を研削する当初の砥石の直径は大きいので刃が非常に鋭利に研削され刃先角度が小さく形成されるが、砥石の直径が徐々に小さくなるに従って徐々に刃先角度が大きく変化することになる。すなわち鋭利さがやや減じられるのである。包丁等の刃先をあまり鋭利に形成すると刃先の強度が弱くなり、刃こぼれを生じたり刃先が曲がったりするので、この構成によって刃先の強度を維持できる。
請求項5は、各回動軸に少なくとも2つずつの砥石が取り付けられている。したがって、少なくとも4つの砥石で研ぐので効率良く作業ができ、刃部の両側の砥石はそれぞれ2以上あるので研削時に刃部を安定的に支持し、研ぎ作業を円滑に行なうことができる。
請求項6は、刃物の進行方向に沿って並ぶ各砥石は、刃物の進行がわにある砥石で研削された刃物の被研削面の方が、その前に研削されたその被研削面よりも平滑になるように並べられている。したがって、刃物を研ぐときに最初は粗めに研ぎ、その後で仕上げ面に研ぐことができるので、ワンストロークの研削作業を効率良く行なうことができ、最後に研ぎ面を平滑な仕上げ面に仕上げることができる。請求項7は、同じ回動軸に取り付けられた少なくとも2つの砥石は、刃物の進行がわにある砥石で研削された刃物の被研削面の方が、その前に研削されたその被研削面よりも平滑になるように並べられている。刃部の両面の最初の研ぎと仕上げの研ぎが、それぞれ両面で同じ粗面又は仕上げ面の砥石で行われるから、刃部の両面の研削具合が等しくなる。
請求項8は、砥石が固着されたスリーブがそれぞれの回動軸に固定され、それら2つのスリーブは砥石を含めて同一形態をなし、この構成により両回動軸にはそれぞれ同一形態の砥石付きスリーブが軸方向にずれて固定されている。したがって、回動軸に複数の砥石を間隔をあけて1個ずつ装着する手間を必要とせず、砥石付きスリーブを回動軸に取り付けるだけで砥石を回動軸に装着できるから、製造にかかる手間が減少する。請求項9は、研削時に両回動軸の砥石の研削面がそれぞれ刃物をこすり上げる方向に回動する。このことは2つの回動軸が互いに反対方向に回転していることになるが、刃物をこすり上げる方向はすなわち、研ぎ面に対して刃物を刃先方向に移動させながら研ぐことと同じであるから、刃先にバリが出ず鋭利で強度も有する刃先を得ることができる。
請求項10は、包丁の刃を差し入れて包丁を移動させながら刃を研ぐための挿入溝が設けられ、且つ挿入溝の一方の端部に設けられた端部挿入溝が、この端部挿入溝に続く挿入溝よりも両側を広げた幅広に形成されている。したがって、刃元や刃の先端部の表面が膨出した包丁を研ぐときに、その膨出部の直前まで刃を研ぐことができる。請求項11は、端部挿入溝が、挿入溝に差し入れた包丁の柄側に設けられている。したがって、刃元が肉厚の包丁の刃を刃元直前まで研ぐことができる。
次に本発明を実施するための最良の形態を図面に従って説明する。この実施の形態は包丁用の研ぎ機である。研ぎ機は、図1に示す研ぎ機本体1と、図3に示す砥石ボックス2と、図18に示す蓋3とから成る。砥石ボックス2は研ぎ機本体1に着脱自在に取り付けることができるように構成されている。砥石ボックスの砥石カバー部4を取り外した内部が図6及び図7に示されている。砥石ボックス2の内部には2本の回動軸5,6がそれぞれの端部を支持することにより装着されている。一方の回動軸5に第1砥石7と第3砥石8が固着され、他方の回動軸6に第2砥石9と第4砥石10が固着されている。包丁を研ぐときは、最初に第1砥石7が刃部に当り、次に第2砥石9が刃部に当り、次に第3砥石8が刃部に当り、最後に第4砥石10が当るように包丁を移動させて使用する。
各砥石7,8,9,10は円柱状であり、砥石の平面部と研削面である周面のかどが面取りされて斜面11に形成されている。第1砥石7と第2砥石9は同じ材料で形成され同じ粗さであって粗度が120番であり、荒研ぎをなす。第3砥石8と第4砥石10はそれらよりも目が細かく粗度が180であり、仕上げ研ぎをなす。第3砥石8と第4砥石10は同じ材料である。本発明はこれに限定されることはなく、すべての砥石が異なり、第1砥石7から第4砥石10まで順次砥石の目が細かく変化するものであっても差し支えない。また、砥石の形状は円柱状に限定されるものでなく、図8に示すように少なくとも一方の回動軸に取り付けられた砥石が円すい台状であっても差し支えない。この場合、大きい砥石12と小さい砥石13が用いられ、両砥石12,13の周面は1つの直線に沿って並んでいる。使用時には包丁の刃部が最初に大きい砥石12に当り、次いで小さい砥石13に当るように構成する。これにより、刃部の仕上げの段階で刃先角度をやや大きくして刃先の強度を増加させることができる。図7に示したように、左右の砥石は両回動軸5,6の中央でわずかに重なっている。わずかに重ねることによって、両側の砥石で構成されるほぼV字形の研削溝の底の角度が小さくなるので刃部を鋭利に研削できる。
図9は砥石を回動軸に取り付ける前の状態を示した図である。砥石7,8は回動軸5に直接取り付けるのでなく、中央が膨出したスリーブ14の両端に砥石7,8を固着したものを製造する。そしてスリーブの孔15に回動軸5を通して所定の位置で固着する。他方の回動軸6にもこれと同じ砥石付きスリーブ14を所定の位置に固着する。したがって、同じ砥石付きスリーブを多数製造して適宜回動軸に固着することにより、効率的に砥石を回動軸に装着できる。
砥石ボックス2の上面には包丁の刃部を差し込んで移動させるための挿入溝16が設けられている。図5は砥石カバー部4の内面、特に挿入溝16の構成を明らかにしたものである。挿入溝16は全長に亘って底が抜けているのではなく、挿入溝16の両端付近に底面部17,18が設けられている。その間の部分は底が抜けており、細長孔19が形成されている。符号20、21,22,23は底面部17,18まで届く凸壁であって、底面部18と凸壁21の間の空間部24に第1砥石7が入り込み、凸壁21と凸壁23の間の空間部25には第3砥石8が入り込み、凸壁20と凸壁22の間の空間部26には第2砥石9が入り込み、凸壁22と底面部17の間の空間部27には第4砥石10が入り込む。したがって、各砥石の周面は挿入溝16内の各空間部24,25,26,27に研ぐに必要なわずかな面を覗かせるだけなので、使用時に研ぎカスが周囲に飛び散る虞がなく各空間部から砥石ボックス2内に落ちる。砥石ボックス内の研ぎカスは排出孔39から排出することができる。
砥石ボックス2の底面及び研ぎ機本体1の上面には、砥石ボックス2を研ぎ機本体1に着脱自在に且つ確実に装着するための係合装置が設けられている。図1に示すように研ぎ機本体1の上面に、砥石ボックス2を装着するための凹所28が設けられている。凹所28は側壁29と端壁30とで2面が囲まれている。図7に示すように側壁29はこの図の下方に行くに従って左側に広がるように曲がっている。そして、この側壁29の湾曲度に合わせて砥石ボックス2の一方の側面31も曲がっている。したがって、側壁29と砥石ボックスの一方の側面31が密接し、端壁30と砥石ボックスの端面32が密接するので、砥石ボックス2は研ぎ機本体1にしっかりと固定され、使用時に砥石ボックス2がガタつくことがない。凹所28の外側部付近の底面33にガイド溝34が設けられている。また、このガイド溝34と対向するガイド溝が側壁29を溝の底部とするように形成されている(図示せず。)。すなわち、対向するガイド溝は側壁29にL形突片を一体に設けることにより形成される。図4に示すように、ガイド溝34及びこれに対向するガイド溝に嵌合する突部35,35が砥石ボックス2の底面に設けられている。ガイド溝に突部35,35を嵌合するときは、端壁30と砥石ボックスの端面32の間をあけるようにして側壁29に砥石ボックスの側面31を宛がい、そのまま砥石ボックス2を端壁30に当るまで押せばよい。
図1に示すように正面部36寄りの凹所底面33には一対の嵌合溝37,37が設けられ、図4に示すようにこれらの嵌合溝と嵌合する嵌合突起38,38が設けられ、砥石ボックス2が研ぎ機本体1に取り付けられたときに、嵌合突起38,38が嵌合溝37,37に嵌合して砥石ボックス2を強固に固定する。
符号40は、装着された砥石ボックス2が正面方向に移動して外れることを防止するためのストッパーである。ストッパー40は出没可能に弾性的に支持されており、図11に示すストッパー装置41と共に研ぎ機本体1に取り付けられている。符号42は係止突部であって反対側にも設けられており、ストッパー装置41を研ぎ機本体1に固定するためのものである。ストッパー40はノブ43と一体に形成されており両者の連結部がコイルバネ44で弾性的に支持されている。したがって、ノブ43を押し下げるとストッパー40と共に弾性的に下降し、ストッパー40は研ぎ機本体1内に没入する。ストッパー40の上面は傾斜面に形成されている。したがって、砥石ボックス2を研ぎ機本体1に装着する場合に、砥石ボックス2が端壁30に当るよりも前に、砥石ボックス2の底面に設けられた係止壁45が傾斜面に当ってストッパー40を押し下げて研ぎ機本体内に没入させる。そのまま砥石ボックス2を端壁30方向に移動させて砥石ボックス2が端面30当るときにストッパー40は係止凹部46内に弾性的に突き出る。そして、突き出たストッパー40が係止壁45に当って砥石ボックス2が移動することを防止する。砥石ボックス2を移動して研ぎ機本体1から外すときは、前述したようにノブ43を押し下げてストッパー40を没入させればよい。
研ぎ機本体のハウジング47の中にモーター(図示せず。)が装着されており、種々の動力伝達装置を経て分離可能なスプライン軸継手により回動軸に動力が伝達される。図3に示すように、回動軸5,6の動力伝達側の端部にスプライン軸継手の挿入体48,48が取り付けられている。挿入体48は4つの歯49が十字形をなすように一体に設けられている。図2に示すように、この挿入体48と連結する筒体50,50は研ぎ機1内に取り付けられており、筒体50の内部に4つの溝51が十字形をなすように設けられている。図10に示すように各溝51の内面は挿入口52付近で隣りの溝の内面とテーパー面53,53をなしている。したがって、各溝の挿入口52は広がるように形成されているから、筒体50に挿入体48を円滑に挿入できるから、砥石ボックス2を研ぎ機本体1に取り付ける作業が容易である。また、十字形をなす4つの溝51内に挿入体の歯49を挿入するスプライン軸継手であるから、結合部がほとんどガタつかず振動の発生を防止できる。
研ぎ機本体の上面54に補助溝55が形成されている。この補助溝55は取り付けた砥石ボックスの挿入溝16と連通する。図12に示すように、補助溝55と挿入溝16が連通することによって実質的に溝が延長されるので、その長い溝に包丁の刃部が挿入したときに包丁を安定させることができる。図1に示すように補助溝55の幅は挿入溝16の幅よりも広く形成されている。しかし、補助溝55の幅の広がりは対称でなく、図1において右側の内面のみが広がっている。したがって、左側の内面は砥石ボックスの挿入溝16の内面と面一である。また、図1において補助溝55を境として右側の上面54は途中に段差56を有していて、段差56よりも正面部36寄りの上面の高さは変わらないが、背面寄りの上面はそれよりも低く形成されている。これにより、包丁の刃部を補助溝55に挿入するときは、まず右側の上面54に包丁の刃先を宛がってから手前に引く。そして、包丁の刃部の顎が段差56に当ったときに包丁をそのまま左側に移動すれば刃部は自然に補助溝55に挿入されるから、刃部を容易に補助溝55に挿入することができる。挿入溝16と補助溝55の一方の内面は面一であるから、その面に包丁の刃部を宛がって手前方向、すなわち正面部36方向に引けば刃部を幅の狭い挿入溝16に容易に挿入できる。このように、包丁は補助溝55から挿入溝16方向に移動して研削する。補助溝55及び挿入溝16は前述したスプライン軸継手の間に延在しているので、研ぎ機全体の高さを低くすることができる。なお、段差56は図1及び図6に示すように正面部36寄りに設けてもよく、図7、図12及び図15に示すようにそれよりも正面部36から遠ざかる位置に設けてもよい。
次にモーターから回動軸5,6に動力を伝達する構成について説明する。図13は研ぎ機本体1及びそれに取り付けられた砥石ボックス2の内部を示したものである。モーターは図示していないが、砥石7,8,9、10の真下で研ぎ機本体1の底に取り付けられている。モーターの動力の伝達は後述するようにベルト伝動装置が使用されるが、研ぎ機本体1内のモーター及び回動軸5,6が装着されている空間と、ベルト伝動装置が取り付けられた空間とが、軸受板57で仕切られている。
モーターから連なる原動軸58は回動軸5,6と平行に延び、端部に原動歯車59が取り付けられている。図14に示すように、原動歯車59の軸孔66は一部が欠けた円形であり、原動軸58も同様の形状にすることによって回動を確実に伝達できる。原動歯車59の上方にそれよりも大きな第1歯車60と第2歯車61とが並んで取り付けられている。原動軸58及び第1歯車60と第2歯車61は軸受板57に支持されている。第1歯車60は一体に回動する同軸の下方プーリー62と共に取り付けられ、第2歯車61は一体に回動する同軸の下方プーリー63と共に取り付けられている。原動歯車59は第1歯車60と噛み合い、第2歯車61は第1歯車60と噛み合っている。したがって、原動歯車59の動力はまず第1歯車60に伝達され、次いで第2歯車61に伝達される。
研ぎ機本体1の上端に近い位置に2つの上方プーリー64,65が軸受板57に支持されて取り付けられている。図14に示すように、上方プーリー65のプーリー軸67に2つの突起68,68が設けられ、上方プーリー65の軸孔にその突起68,68を嵌め込む凹部69,69が設けられている。この構成によって上方プーリー65の回動をプーリー軸67に確実に伝達できる。他のプーリーも同様である。下方プーリー62と上方プーリー64の間、及び下方プーリー63と上方プーリー65の間には伝動ベルト70,71が掛け渡されて動力が伝達される。プーリー軸67の砥石方向の端部には前述したスプライン軸継手の筒体50が取り付けられている。この筒体50と回動軸の挿入体48が端壁30に設けられた丸孔を介して連結することにより回動軸5が回動し、それと一体に第1砥石7及び第3砥石8が回動する。隣りの上方プーリー64、回動軸6及び第2砥石9及び第4砥石10も同様にして回動する。この構成による2つの回動軸5,6は反対方向に回動し、砥石が包丁の刃先をこすり上げる方向に回動する。本発明はこれに限定されるものでなく歯車を介在させる等の手段によって回動軸が同じ方向に回動する構成にしてもよいことは勿論である。
図13に示すように、2つの上方プーリー64,65の間に空間が存在し、軸受板57の上端中央に溝72が設けられている。補助溝55はこれらの空間及び溝72の間に挿入されるので、研ぎ機全体の高さを低くすることができる。
次に、使用時に研ぎ機を固定するための把持部について説明する。図12に示すように正面部36が手前になるように研ぎ機をセットし、左手で把持部73を包むようにして握る。図15に示すように、把持部の側面75はやや丸みを帯びていて、手の平にフィットするように形成されている。また、把持部73の背面には凹状に湾曲した凹状端面74が形成されている。把持部73を手で包むように握ったときに、把持部73からはみ出した指先を折り曲げて凹状端面74に宛がって研ぎ機を固定する。このとき、親指は把持部73の上面に自然に宛がわれ、親指を少し伸ばすことによってスイッチ76を操作できるので取り扱い易い。把持部73は研ぎ機の側方に張り出しており、ハウジング47の一部として形成されている。
把持部73の内部には、モーター及びこれに繋がった電気コード以外の電気装置が配置されている。例えば、交流モーターであるときはプラグ及びこれに繋がった電気コードを収納したり、直流モーターであるときは乾電池を収納したりする。また、スイッチ76も配置されている。図16は研ぎ機の底面を示しており、電気コード収納部の収納蓋77が取り付けられ、使用時に電気コードを通す溝78が設けられている。溝78には爪79,79が一体に設けられており、コードを溝78に確実に通して研ぎ機が浮き上がることを防止する。また、通孔80を設けてあるからモーターの熱を放出することができる。収納蓋77の隣りにも通孔81が設けられているので通孔80と通孔81のいずれかが外気を吸い込む作用をなし、他方が加熱された空気を排出する作用をなすので研ぎ機の内部の空気が対流して冷却効果を高めることができる。
図17及び図18に示すように、研ぎ機の把持部73以外の上面に蓋3を取り付けることができる。これは、図12に示すように研ぎ機本体の上面54の周囲の縁部83、及び砥石ボックス2の周囲の縁部84が連続するように構成したからである。
図19は挿入溝の端部に幅広の端部挿入溝85を設けた研ぎ機である。回動軸5,6は端部挿入溝85の両側を通っている。この研ぎ機は図20に示すように刃の刃元86が肉厚に形成された包丁87を研ぐときに効果的な研ぎ機であって、このような構成の包丁は鍛造包丁に多く見られる。すなわち、このような肉厚の刃元86を端部挿入溝85に挿入することにより刃元86の直前の刃は挿入溝16内の砥石付近まで近づくので、刃を刃元86の直前まで研ぐことができる。また、図19の研ぎ機の端部挿入溝85は砥石ボックス2に設けられているが、砥石ボックスを有する研ぎ機に限定されることはなく、砥石ボックスを有しない研ぎ機にも適用されることは勿論である。この研ぎ機の使用方法は、まず、包丁の刃元86が端部挿入溝85に挿入されるように刃88を挿入溝16に挿入した後、包丁を手前に引くことにより刃を研ぐことができる。なお、砥石ボックス2の挿入溝方向の長さは69.5mmであり、挿入溝16の全長は端部挿入溝85を含めて67.5mmである。また、端部挿入溝85の長さは16.5mmであり、その最大幅は17mmである。
研ぎ機本体の斜視図 研ぎ機本体の内部の一部を表わした斜視図 砥石ボックスの斜視図 底面からみた砥石ボックスの斜視図 砥石カバー部の内面図 砥石カバー部を外した研ぎ機の斜視図 砥石カバー部を外した研ぎ機の平面図 砥石の実施例図 砥石とスリーブの斜視図 筒体の正面図とA−A断面図 ストッパー装置の斜視図 本発明の斜視図 研ぎ機の内部を示す斜視図 ベルト伝動装置の斜視図 本発明の斜視図 底面から見た本発明の斜視図 蓋を装着した状態の正面図 蓋を装着した状態の平面図 端部挿入溝を幅広に形成した本発明の斜視図 刃元が肉厚に形成された包丁の斜視図
符号の説明
1 研ぎ機本体
2 砥石ボックス
3 蓋
4 砥石カバー部
5,6 回動軸
7 第1砥石
8 第3砥石
9 第2砥石
10 第4砥石
11 斜面
12 大きい砥石
13 小さい砥石
14 スリーブ
15 スリーブの孔
16 挿入溝
17 底面部
18 底面部
19 細長孔
20〜23 凸壁
24〜27 空間部
28 凹所
29 側壁
30 端壁
31 砥石ボックスの側面
32 砥石ボックスの端面
33 底面
34 ガイド溝
35 突部
36 正面部
37 嵌合溝
38 嵌合突起
39 排出孔
40 ストッパー
41 ストッパー装置
42 係止突部
43 ノブ
44 コイルバネ
45 係止壁
46 係止凹部
47 ハウジング
48 挿入体
49 歯
50 筒体
51 溝
52 挿入口
53 テーパー面
54 上面
55 補助溝
56 段差
57 軸受板
58 原動軸
59 原動歯車
60 第1歯車
61 第2歯車
62 63 下方プーリー
64 65 上方プーリー
66 軸孔
67 プーリー軸
68 突起
69 凹部
70 71 伝動ベルト
72 溝
73 把持部
74 凹状端面
75 把持部の側面
76 スイッチ
77 収納蓋
78 溝
79 爪
80 81 通孔
83 縁部
84 縁部
85 端部挿入溝
86 刃元
87 包丁
88 刃

Claims (11)

  1. モーターの動力で回動する回動軸に、円板状の砥石が取り付けられた電動刃物研ぎ機であって、回動軸は離れて2本存在し、該回動軸にそれぞれ少なくとも1つの砥石が取り付けられ、各砥石の研削面は砥石の周面であり、一方の回動軸の砥石と他方の回動軸の砥石とが軸方向にずれ、刃物を各砥石の研削面に宛がいながら回転軸方向に移動して刃物を研ぐときに、刃物が進行して来る方向を向いている砥石の平面部と研削面の交わりのかどが面取りされていることを特徴とする電動刃物研ぎ機。
  2. 一方の回動軸の砥石と他方の回動軸の砥石とが、両回動軸の間で部分的に重なっている請求項1記載の電動刃物研ぎ機。
  3. 砥石は円柱状であり、したがって、研削面は砥石平面部に対し直角をなしている請求項1又は請求項2のいずれか一項記載の電動刃物研ぎ機。
  4. 少なくとも一方の回動軸の砥石は円すい台状であり、該砥石は刃物の進行方向に行くに従って半径が小さくなるように取り付けられている請求項1又は請求項2のいずれか一項記載の電動刃物研ぎ機。
  5. 各回動軸に少なくとも2つずつの砥石が取り付けられている請求項1乃至請求項4のいずれか一項記載の電動刃物研ぎ機。
  6. 刃物の進行方向に沿って並ぶ各砥石は、刃物の進行がわにある砥石で研削された刃物の被研削面の方が、その前に研削されたその被研削面よりも平滑になるように並べられている請求項1乃至請求項5のいずれか一項記載の電動刃物研ぎ機。
  7. 同じ回動軸に取り付けられた少なくとも2つの砥石は、刃物の進行がわにある砥石で研削された刃物の被研削面の方が、その前に研削されたその被研削面よりも平滑になるように並べられている請求項5記載の電動刃物研ぎ機。
  8. 砥石が固着されたスリーブがそれぞれの回動軸に固定され、それら2つのスリーブは砥石を含めて同一形態をなし、したがって、両回動軸にはそれぞれ同一形態の砥石付きスリーブが軸方向にずれて固定されている請求項7記載の電動刃物研ぎ機。
  9. 研削時に両回動軸の砥石の研削面がそれぞれ刃物をこすり上げる方向に回動する請求項1乃至請求項8のいずれか一項記載の電動刃物研ぎ機。
  10. 包丁の刃を差し入れて包丁を移動させながら刃を研ぐための挿入溝が設けられ、且つ該挿入溝の一方の端部に設けられた端部挿入溝が、該端部挿入溝に続く挿入溝よりも両側を広げた幅広に形成されている請求項1乃至請求項9のいずれか一項記載の電動刃物研ぎ機。
  11. 端部挿入溝は、挿入溝に差し入れた包丁の柄側に形成されている請求項10記載の電動刃物研ぎ機。
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