JP4270735B2 - Fm放送用データ配信システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えばFM放送における多重用データを演奏所から複数の送信所に配信するデータ配信技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、FM放送送出設備では、現行のFM放送のステレオ音声信号に加えて、このステレオ音声信号中に文字や図形等で構成されるデータ信号を多重して伝送するFM多重放送を行なっている。このFM多重放送では、各種の情報番組を放送しており、その中には自局のFM放送番組に関する番組案内情報やその詳細情報を提供しているものもある。
【0003】
ところで、FM多重放送では、放送サービスエリアの拡大、放送波の届き難い地域の解消を目的として、放送サービスエリアを分担し、各分担領域毎に送信所を設置するようにしている。図2は、このような放送システムの構成を示すものである。
【0004】
図2のシステムは、各分担領域に設置される送信所10、20と、演奏所(スタジオ)30とを備えている。送信所10は、ステレオ複合信号生成部101と、多重化部102と、FM変調部103と、送信部104と、アンテナ105と、アンテナ106と、受信部107と、A/D(アナログ/デジタル)変換部108とを備えている。ステレオ複合信号生成部101は、音声信号を圧縮符号化されたAES信号をプリエンファシス処理し、マトリクス演算を行なって主チャンネル(L+R)信号と副チャンネル(L−R)信号を生成する。そして、副チャンネル(L−R)信号を副搬送波信号でDSB(Dual Side Band)変調した後、副チャンネル信号にパイロット信号を加えてステレオ複合信号を生成する。このステレオ複合信号は、多重化部102にてSCA(Subsidiary Communications Authorization)信号と多重化され、FM変調部103でFM変調された後、送信部104で規定の出力に電力増幅され、FM放送波としてアンテナ105により放送サービスエリアに向けて送信される。
【0005】
一方、SCA信号は、アンテナ106及び受信部107により受信される。この受信されたSCA信号は、A/D変換部108でデジタル信号に変換された後、多重化部102でステレオ複合信号に多重される。
【0006】
送信所20は、送信所10と全く同構成であり、ステレオ複合信号生成部201と、多重化部202と、FM変調部203と、送信部204と、アンテナ205と、アンテナ206と、受信部207と、A/D(アナログ/デジタル)変換部208とを備えている。
【0007】
上記演奏所30は、SCA変調部301と、送信部302と、アンテナ303とを備えている。SCA変調部301は、文字や図形等を含むデータ信号をSCA信号に変換する。このSCA信号は、送信部302で無線周波数帯に周波数変換し電力増幅して、アンテナ303により送信所10、20に配信される。
【0008】
ところで、上記放送システムでは、FM同期放送を行なう場合に、送信所10、20間で位相を合わせてFM放送波を送信する必要がある。なお、音声信号のみを放送する場合には、AESなどのデジタル信号で各送信所10、20に配信するので、そのデジタル信号に同期をかけることにより送信所10、20間で両放送波の位相を合わせることは容易である。しかし、SCA信号を多重して放送する場合については、SCA信号が演奏所30から各送信所10、20への伝送過程でアナログ信号で配信され、各送信所10、20で互いに独立してアナログ信号からデジタル信号に変換されてステレオ複合信号と多重されるので、各送信所10、20間で両放送波の時間差及び位相差が生じる可能性が高く、その結果、FM同期放送を実施する上で大きな障害となる。
【0009】
これを解決するためには、各送信所10、20に保守員を駐在させ、各送信所10、20間で保守員が通信を行ない、両放送波の同期及び位相を合わせるようにA/D変換部108、208の送出タイミングを調整する方法が考えられている。しかし、この方法では、放送波の同期及び位相を合わせるために、送信所10、20間で通信を行なうための通信回線を確保しなければならず、また、各送信所に保守員を駐在させる分、人件費や運用経費が増大してしまう。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上述べたように、従来のFM放送システムでは、ステレオ複合信号にSCA信号を多重してFM同期放送を実施する場合に、複数の送信所間で放送波の同期及び位相を合わせる有効な手段がなかった。
【0011】
そこで、この発明の目的は、音声信号にデータ信号を多重してFM同期放送を実施する場合に、複数の送信所間でFM放送波の同期及び位相を合わせることができるFM放送用データ配信システムを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明に係るFM放送用データ配信システムは、データ信号を制作するデータ信号制作所と、前記データ信号制作所から送られてくるデータ信号を別途入力される音声符号化信号にパイロット信号とともに多重化しFM(Frequency Modulation)変調して放送する複数の放送波送信所を有し、複数の放送波送信所から送信される放送波は互いに同期して送信されるFM放送用データ配信システムであって、データ信号制作所は、データ信号をデジタル信号へ変換する変換する変換手段と、変換手段により変換されたデジタル信号をQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調波に変換して複数の放送波送信所に伝送する伝送手段とを備え、複数の放送波送信所は、伝送手段によって伝送されたQPSK変調波を受信復調して、変換手段によりデジタル信号に変換されたデータ信号を生成する生成手段と、生成手段によって生成されたデータ信号を音声符号化信号及びパイロット信号と多重する多重化手段とを備えるようにしたものである。
【0013】
この構成によれば、データ信号は、配信前にデータ信号制作所にてアナログ信号からデジタル信号に変換され、複数の放送波送信所間で遅延差が生じないようにQPSK変調方式といった特定のデジタル変調方式によりデジタル変調波に変調されて、各送信所に配信されることになる。このデジタル変調波を受信した各放送波送信所は、デジタル変調波をデジタル信号に復調して音声符号化信号にそのまま多重するようにしている。
【0014】
すなわち、複数の放送波送信所に備えられていたアナログ/デジタル変換器を、データ信号制作所に設けられたアナログ/デジタル変換器により共用するようにし、複数の放送波送信所には、デジタル変調波を復調する機能のみを設けるようにして、データ信号制作所のアナログ/デジタル変換器の送出タイミングを放送波送信所間で放送波の同期及び位相が揃うように設定する。この際、各放送波送信所間で時間差が生じないように、データ信号制作所でデジタル信号を位相変動に対する耐性が得られるQPSK変調波に変換して各放送波送信所に配信するようにしている。これにより、各放送波送信所間で通信を行なうための通信回線の確保や、各放送波送信所に駐在させる保守員も不要となり、人件費や運用経費などを大幅に削減できる。
【0015】
このため、データ信号制作所のアナログ/デジタル変換器の送出タイミングを調整するだけで複数の放送波送信所間でFM放送波の同期及び位相を揃えることができ、これにより音声符号化信号、データ信号及びパイロット信号を多重化したFM同期放送を低コストで実施することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、この発明に係るFM放送用データ配信システムの一実施形態の構成を示すブロック図である。なお、図1において、上記図2と同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0018】
すなわち、演奏所30には、A/D変換部304と、QPSK送信部305とを設けている。これに対し、送信所10、20には、QPSK受信部109、209をそれぞれ設けている。
【0019】
このような構成において、文字や図形等を含むデータ信号は、演奏所30において、SCA変調部301でSCA信号に変換され、A/D(アナログ/デジタル)変換部304でデジタル信号に変換された後、QPSK送信部305でQPSKといったデジタル変調が施され、電力増幅されてQPSK変調波としてアンテナ303により送信される。
【0020】
一方、送信所10では、アンテナ106及びQPSK受信部109により演奏所30からのQPSK変調波を受信しデジタル信号に復調した後、多重化部102でステレオ複合信号と多重し、FM変調部103でFM変調を施し、送信部104で電力増幅してアンテナ105により放送サービスエリアに向けてFM放送波を送信する。
【0021】
また、送信所20についても、上記送信所10と同様な動作が行われる。
【0022】
ここで、送信所10、20間でFM放送波の同期及び位相を合わせるために、従来では、送信所10、20内の各データ信号受信系統に設けられたA/D変換部を保守員の手によりタイミング調整が行なわれることになる。この場合、送信所10、20間で互いに調整結果を通知する必要が生じ、通信回線を敷かなければならなかった。
【0023】
そこで、本実施形態では、演奏所30にA/D変換部304を設け、各送信所10、20にそれぞれ設けられていたA/D変換部を削除して、A/D変換部304によって代用するようにしている。また、各送信所10、20間で遅延差をなくすようにするために、演奏所30にてデジタル化したSCA信号を位相変動に対する耐性が得られるQPSK変調波に変換して各送信所10、20に配信するようにしている。これに対し各送信所10、20には、QPSK変調波を元のデジタル信号に復調するQPSK受信部109、209のみを設けるようにし、SCA信号に対し多少なりとも遅延差及び位相差を生じさせる構成回路を削減するようにして、構成上及び処理上の負担を軽減するようにしている。
【0024】
このため、演奏所30でA/D変換部304の送出タイミングを各送信所10、20間でFM放送波の同期及び位相が合うように設定するだけで、各送信所10、20から互いに同期及び位相が合わせられたFM放送波が送出されることになる。それ故に、送信所10、20間でFM放送波の同期及び位相を合わせるために、通信回線の確保や、各送信所10、20に駐在させる保守員も不要となり、人件費や運用経費などを大幅に削減できる。
【0025】
以上述べたように上記実施形態では、演奏所30において、SCA変調部301から出力されるSCA信号をA/D変換部304でデジタル信号に変換してQPSK送信部305でQPSK変調波に変換してアンテナ303によりこのQPSK変調波を各送信所10、20に配信するようにしている。そして、各送信所10、20は、アンテナ106、206及びQPSK受信部109、209により受信したQPSK変調波を元のデジタル信号に復調し、このデジタル信号を多重化部102によりステレオ複合信号にそのまま多重するようにしている。以後、FM変調部103、203でFM変調し、送信部104、204で電力増幅してFM放送波としてアンテナ105、205により放送サービスエリアに向けて送出する。
【0026】
すなわち、各送信所10、20に既に備えられていたA/D変換部を、演奏所30に設けられた1個のA/D変換部304により共用するようにし、各送信所10、20には、QPSK変調波を復調するQPSK受信部109、209のみを設けるようにして、演奏所30のA/D変換部304の送出タイミングを送信所10、20間でFM放送波の同期及び位相が揃うように設定する。この際、各送信所10、20間で遅延差が生じないように、演奏所30でデジタル化したSCA信号を位相変動に対する耐性が得られるQPSK変調波に変換して各送信所10、20に配信するようにしている。
【0027】
従って、演奏所30のA/D変換部304の送出タイミングを調整するだけで各送信所10、20間でFM放送波の同期及び位相を揃えることができ、これによりステレオ複合信号及びSCA信号を多重化したFM同期放送を低コストで実現することができる。
【0028】
なお、上記実施形態では、デジタル化したSCA信号をQPSK変調波に変換して各送信所10、20に配信する例について説明したが、その他に、QPSK変調波以外のデジタル変調波に変換するようにしても同様に実施できる。さらに、演奏所30と各送信所10、20との間をケーブルで接続するようにしても同様に実施できる。
【0029】
【発明の効果】
以上詳述したようにこの発明によれば、音声信号にデータ信号を多重してFM同期放送を実施する場合に、複数の送信所間でFM放送波の同期及び位相を合わせることが可能なFM放送用データ配信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態に係るFM放送用データ配信システムの構成を示すブロック図。
【図2】従来のFM放送システムの構成を示すブロック図。
【符号の説明】
10、20…送信所、
30…演奏所、
101、201…ステレオ複合信号生成部、
102、202…多重化部、
103、203…FM変調部、
104、204…送信部、
105、205、106、206…アンテナ、
107、207…受信部、
108、208…A/D変換部、
109、209…QPSK受信部、
301…SCA変調部、
302…送信部、
303…アンテナ、
304…A/D変換部、
305…QPSK送信部。
Claims (1)
- データ信号を制作するデータ信号制作所と、前記データ信号制作所から送られてくるデータ信号を別途入力される音声符号化信号にパイロット信号とともに多重化しFM(Frequency Modulation)変調して放送する複数の放送波送信所を有し、前記複数の放送波送信所から送信される放送波は互いに同期して送信されるFM放送用データ配信システムであって、
前記データ信号制作所は、
前記データ信号をデジタル信号へ変換する変換する変換手段と、
前記変換手段により変換された前記デジタル信号をQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調波に変換して前記複数の放送波送信所に伝送する伝送手段とを備え、
前記複数の放送波送信所は、
前記伝送手段によって伝送された前記QPSK変調波を受信復調して、前記変換手段によりデジタル信号に変換された前記データ信号を生成する生成手段と、
前記生成手段によって生成された前記データ信号を前記音声符号化信号及び前記パイロット信号と多重する多重化手段とを備えることを特徴とするFM放送用データ配信システム。
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