JP4268899B2 - フラバノン化合物、抗酸化剤、抗菌剤、抗腫瘍剤及び飲食品 - Google Patents
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Description
K.Yakushijin, K.Shibayama, H.Murata and H.Furukawa、ハスノハギリ由来の新規プレニルフラバノン(New prenylflavanones from Hernandia nymphaefolia(presl) Kubitzki)、Heterocycles, 14, 397-402, 1980.
請求項1に記載の発明のフラバノン化合物によれば、飲食品や医薬品等の様々な用途に利用することができる。請求項2に記載の発明の抗酸化剤によれば、高い抗酸化作用を発揮することができる。請求項3に記載の発明の抗菌剤によれば、高い抗菌作用を発揮することができる。請求項4に記載の発明の抗腫瘍剤によれば、高い抗腫瘍作用を発揮することができる。請求項5に記載の発明の飲食品によれば、健康増進効果又は保存性の向上を図るのが容易となる。
実施形態のフラバノン化合物は、下記化2に示される構造を有する有機化合物である。
・ 実施形態のフラバノン化合物は、上記化2に示される5,7,3',4'-テトラヒドロキシ-5'-C-ゲラニルフラバノン(イソニムフェオール−B)である。このフラバノン化合物は、抗酸化作用、抗腫瘍作用、抗菌作用等を有していることから、飲食品や医薬品を始めとする様々な種類の用途に利用することができる。特に、このフラバノン化合物は、単一の化合物でありながら複数種類の多面的な作用を同時に発揮することができることから、プロポリスに代表されるような多機能健康食品素材としての利用が可能である点は注目に値する。また、このフラバノン化合物は、エリオディクティオールと同様な用途に利用できる他、エリオディクティオールよりも親油性が高いことを利用した様々な用途に利用することができる。さらに、このフラバノン化合物は、健康食品素材として利用されているプロポリス中に含有されているものであることから、経口摂取や経皮投与における問題もない。
<化合物の単離>
沖縄産プロポリス原体50gにエタノール500mlを加え、数分間超音波処理を行い一晩室温で撹拌した後、ろ過を行なって残留物を取り除くことにより、抽出操作を行なった。得られた抽出液を減圧濃縮することによりエタノール抽出物39.73gを得た。次に、前記エタノール抽出物を以下の条件のカラムクロマトグラフィーにて(1)〜(11)の11の画分に分画した。
充填剤 : シリカゲル 約590cm3
溶出溶媒: (1) ヘキサン:酢酸エチル=90:10( 350ml)
(2) ヘキサン:酢酸エチル=80:20( 220ml)
(3) ヘキサン:酢酸エチル=70:30( 250ml)
(4) ヘキサン:酢酸エチル=60:40(1000ml)
(5) ヘキサン:酢酸エチル=50:50( 200ml)
(6) ヘキサン:酢酸エチル=40:60( 100ml)
(7) ヘキサン:酢酸エチル=30:70( 100ml)
(8) ヘキサン:酢酸エチル=20:80( 100ml)
(9) ヘキサン:酢酸エチル=10:90( 100ml)
(10) 酢酸エチル(200ml)
(11) メタノール(700ml)
次に、各画分を下記HPLC条件1で分析したところ、(4)の画分に4つの主要成分が含まれていることが確認された。
カラム : YMC-Pack R&D ODS (4.6×250mm)
溶媒 : A:水(2%酢酸)、B:アセトニトリル(2%酢酸)
溶出条件: 0-60min(グラジエント溶出 ; A:B=80:20 → A:B=20:80)
流速 : 1ml/min
検出 : UV280nm
次に、画分(4)を用いて下記HPLC条件2にて分取・精製を行なうことにより、化合物1(収量61.1mg)、化合物2(収量65.7mg)及び化合物3(収量99.8mg)を単離した。さらに、画分(4)を用いて下記HPLC条件3にて分取・精製を行なうことにより、化合物4(収量20.0mg)を単離した。
カラム: YMC-Pack R&D ODS (20×250mm)
溶媒 : 水(0.1%TFA):アセトニトリル(0.1%TFA)=40:60
流速 : 9ml/min
検出 : UV280nm
HPLC条件3
カラム: YMC-Pack R&D ODS (20×250mm)
溶媒 : 水(0.1%TFA):アセトニトリル(0.1%TFA)=20:80
流速 : 9ml/min
検出 : UV280nm
<各化合物の同定>
上記化合物2について、1H−NMR、13C−NMR、MS、IR、UVスペクトル等を測定することにより構造解析を行なった。詳細を以下に記載する。即ち、化合物2(Compound 2)の物理化学的特性を図1に示した。ESI−MSによる測定から分子量は424と確認され、IRスペクトルから3360cm-1に水酸基、1680cm-1にカルボニル基の存在が示唆された。またUVスペクトルにおいて、フラバノンあるいはフラバノールに特徴的なスペクトルを示したので、フラバノン骨格を有すると推定された。1H−NMRスペクトルの積分値から28個のプロトンが確認され、13C−NMRスペクトルでは25本のシグナルが観測された。DEPTスペクトルより3個のメチル、4個のメチレン、8個のメチン、11個の4級炭素が確認され、これらの情報から分子式をC25H28O6と推定した。これらに加えHSQCスペクトル、1H−1H COSY、HMBCスペクトル、CDスペクトル等のNMRデータを図2にまとめた。以上の結果から本化合物は上記化2に示した構造を有しており 5,7,3',4'-tetrahydroxy-5'-C-geranylflavanone であると同定した。本化合物はこれまで文献等未記載の新規化合物であった。
上記化合物1〜4が沖縄産プロポリス中にどれだけ含まれているかを下記HPLC条件4にて分析し含有量を求めた。その結果、沖縄産プロポリス原体100g中に化合物1は12.7g、化合物2は10.5g、化合物3は13.5g、化合物4は9.1g含有されていることが確認された。
カラム : YMC-Pack R&D ODS (4.6×250mm)
溶媒 : A:水(0.1%TFA)、B:アセトニトリル(0.1%TFA)
溶出条件: 0-50min(グラジエント溶出 ; A:B=65:35 → A:B=0:100)
流速 : 1ml/min
検出 : UV280nm
<DPPHラジカル捕捉活性試験>
DPPH(α,α-diphenyl-β-picrylhydradil)は517nmに極大吸収を持つ紫色の安定ラジカルであり、水素を得ることにより無色のヒドラジンになる。この呈色反応を利用して以下の方法にてラジカル捕捉活性を測定した。即ち、試料としての上記化合物2をエタノールに溶解することにより濃度25μMの試料溶液を3ml調製した。続いて、各試料溶液に0.5mMのDPPH溶液(溶媒はエタノール)を0.75ml加えて攪拌し、暗所にて1時間反応させた後に517nmにおける吸光度を測定した。一方、比較対照としては、前記化合物の代わりの試料としてBHT(butylated hydroxytoluene)、α−トコフェロール又はエリオディクティオールを用い同様に試験を実施した。また、前記試料を加えていないものをコントロールとして用い、同様に試験を実施した。ラジカル捕捉活性(%)は下記数1にて算出した。結果を下記表1に示す(全ての試験は3回行い、その平均値及び標準偏差を示した)。
この方法は、リノール酸の自動酸化に伴って生じるリノール酸過酸化物が、β−カロテンの二重結合と反応することにより、β−カロテンの色が消失する現象を利用したものであり、以下の方法にて抗酸化活性を測定した。即ち、まず、200mg/mlのTween40クロロホルム溶液2ml、100mg/mlのリノール酸クロロホルム溶液0.4ml、及び0.1mg/mlのβ−カロテンクロロホルム溶液3mlを混合した後、窒素ガスを用いて溶媒を除去した。続いて、蒸留水100mlを加え十分に攪拌することによりエマルジョンを得た。このエマルジョン3mlにエタノールを加え溶質を溶媒中に完全に溶解させた後、1.2mMの各試料溶液50μlを混合することにより反応液を調製し、該反応液を60℃で60分間インキュベートした。インキュベート前の反応液(0分の試料反応液)と、インキュベート後の反応液(60分の試料反応液)とについて470nmの吸光度を測定した。
乳癌細胞(MCF-7)を培養する際に細胞増殖促進作用のあるエストラジオール(17β-Estradiol)を添加することにより、短期間で簡易的に乳癌細胞の増殖を進めることができる。これを利用し上記各化合物が乳癌細胞に及ぼす増殖抑制効果を以下の方法にて測定した。即ち、まず、試料としての上記化合物2をジメチルスルフォキシドに希釈し試料溶液を作製した。次に、96ウェルプレートの各ウェルに2×103個の乳癌細胞(MCF-7)を播種し、4時間後にエストラジオール及び試料溶液を添加した。エストラジオールは終濃度で0.1nM、試料溶液は終濃度で0.2μM、2μM又は20μMになるようそれぞれ添加した区分を設けた。所定の培養期間経過した後(3、5days)に培地を交換し、酵素溶液(Cell counting Kit-8:Wako)を培地の10%量ずつ加えた後、37℃のインキュベーターにて2時間加温し、分光光度計で波長450nm(参照波長630nm)の吸光度を測定し、各区分における生細胞数を定量した。
抗菌活性を評価するため、グラム陰性菌の指標菌として E.coli (IFO3366)、グラム陽性菌の指標菌として Staphylococcus aureus (IFO15035)、熱殺菌等の工程にも耐性を有する芽胞菌の指標菌として Bacillus cereus (IFO15305T)、及び缶詰における変敗の原因となる菌類の指標菌として変敗缶詰から分離した Bacillus coagulans を用い、上記化合物の抗菌活性を評価した。即ち、まず、上記<化合物の単離>におけるエタノール抽出物を70%エタノールに溶解させた後、該抽出物濃度が0ppm、12.5ppm、25ppm、50ppm、100ppm又は150ppmになるように調製した標準寒天培地を作製した。続いて、これらの標準寒天培地をオートクレーブ殺菌することにより評価培地を作製し、これらの評価培地に上記各菌を接種してその生育を確認した。その結果、上記全ての指標菌に対し、エタノール抽出物の濃度に依存して抗菌効果が高められていることが確認された。さらに、エタノール抽出物濃度が50ppm以上で上記全ての指標菌が検出されなくなったことが確認された。なお、前記70%エタノールによる上記各指標菌への影響はほとんど見られなかった。
抗菌活性を評価するため、グラム陰性菌の指標菌として上記 E.coli 及び Salmonella enteritidis (S.en;NBRC3313)、グラム陽性菌の指標菌として上記 Staphylococcus aureus (Sta.)及び芽胞菌の指標菌として上記 Bacillus cereus (B.ce)を用い、上記化合物2の抗菌活性を評価した。即ち、化合物2を70%エタノールに溶解させた後、該化合物2濃度が0ppm、5ppm、10ppm、15ppm、20ppm又は50ppmになるように調製した標準寒天培地を作製した以外は、上記<エタノール抽出物に関する抗菌活性試験>と同様にして上記各菌を評価培地に接種した。次いで、各菌を培養した後、1シャーレ当たりの菌数(CFU/シャーレ)をそれぞれ測定した。その結果を表3に示す。
・ 50ppm以上のフラバノン化合物を含有することを特徴とする請求項5に記載の飲食品。50〜10000ppmのフラバノン化合物を含有することを特徴とする請求項5に記載の飲食品。このように構成した場合、飲食品の保存性を容易に高めることができる。
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