JP4268254B2 - 超音速分子ジェットレーザ分光分析装置およびその前処理方法 - Google Patents

超音速分子ジェットレーザ分光分析装置およびその前処理方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4268254B2
JP4268254B2 JP05710599A JP5710599A JP4268254B2 JP 4268254 B2 JP4268254 B2 JP 4268254B2 JP 05710599 A JP05710599 A JP 05710599A JP 5710599 A JP5710599 A JP 5710599A JP 4268254 B2 JP4268254 B2 JP 4268254B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
organic molecules
adsorption layer
combustion gas
gas
molecular jet
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP05710599A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2000258395A (ja
Inventor
林  俊一
裕二 藤岡
公児 齋藤
真樹 佐藤
千郷 藤本
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP05710599A priority Critical patent/JP4268254B2/ja
Publication of JP2000258395A publication Critical patent/JP2000258395A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4268254B2 publication Critical patent/JP4268254B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Electron Tubes For Measurement (AREA)
  • Other Investigation Or Analysis Of Materials By Electrical Means (AREA)
  • Sampling And Sample Adjustment (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大気、粉塵を含む燃焼ガスなどのガス中に存在するダイオキシン類等の有機分子をオンラインかつリアルタイムで高感度にかつ高選択性を持って分離定量する超音速分子ジェットレーザ分光分析装置およびその前処理装置ならびにその処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイオキシンは、ポリ塩化ジベンゾパラジオキシンの略称で、塩素の置換数、位置の差により75種もの同族体や異性体が存在する。また、ポリ塩化ジベンゾフランは、135種あり、この両者を併せてダイオキシン類と呼ばれている。
【0003】
これらは、それぞれ全く異なる毒性を示すため、ダイオキシン類は一つ一つ選択的に定量検出し、その毒性係数で重み付けした総合毒性で評価するのが一般的である。
【0004】
従来のダイオキシン類の測定・分析法は、厚生省のまとめた「ダイオキシン類の発生防止ガイドライン」の中で測定標準法として示されている。この方法は、ダイオキシン類を有機溶媒により抽出し、各種クロマトグラフィー法で濃縮・分離後、ガスクロマトグラフ質量分析法(GC/MS)によって分析するものである。この試料分析工程は、約3日間ほどを要し、分析会社に委託しても1週間から1ヶ月ほどの納期を必要とするのが現状である。これは、構造が非常に類似した異性体を濃縮・分離する工程にほとんどの時間を費やしてしまうことに起因する。焼却炉における設計や操業管理に必要となる情報を得る上では、リアルタイム分析が必須である。
【0005】
一般に、有機分子は、その分子骨格に起因する電子状態を持ち、その状態に振動状態や回転状態などが複雑に相互作用している。赤外線、紫外線等を利用した吸収分光法は、このような有機分子の分子骨格の違いによる光吸収を利用して、存在する分子種を特定する方法である。この分子固有の励起状態を利用して、リアルタイムに有機分子を選択、検出することを可能にすると期待されているのが、レーザ分光分析法の中でも、超音速分子ジェット共鳴多光子吸収イオン化法(Jet−REMPI法)である。この原理を簡単に述べる。このJet−REMPI法は、共鳴多光子吸収イオン化法(REMPI法)と超音速分子ジェット法(Jet法)を組み合わせた方法である。REMPI(Resonance Enhanced Multi-Photon Ionization)法とは、レーザ光で有機分子を励起する際、注目分子特有の励起準位にレーザ波長を同調させることで、注目分子のみを選択的に励起し、続いてイオン化(共鳴多光子吸収イオン化)させ、イオンを質量分析計を用いて検出する方法である。
【0006】
光吸収によって試料をイオン化するには、吸収断面積(吸収効率)の観点から吸収スペクトルで観測されるピーク付近の波長を利用する。しかし、常温・常圧の有機化合物の吸収スペクトルのピーク幅は、振動・回転準位からの遷移が重なるために、幅広くなり、構造が似通った異性体の吸収ピークを分離することはできない。一方、この分子を絶対零度付近(数K)まで冷却すると、振動や回転していない真の基底状態に電子が位置するようになり、また遷移の選択率によって特定の準位にのみ励起されるようになるため、数本の鋭いピークのみが観測されるようになる。ピーク幅は冷却された温度によって決まるが、通常0.01nm程度である。この程度のピーク幅であれば、波長可変レーザを用いることによって構造が非常に似通った異性体でも選択的に励起、イオン化することができる。
【0007】
一方、超音速分子ジェット(Jet)法は、分子をこのような極低温まで冷却する一つの方法である。この方法は、気化させた試料分子をヘリウムなどの希ガスとともにピンホールから真空中に噴出させて、断熱膨張冷却及び試料分子と希ガスとの衝突によって試料分子を絶対零度付近まで瞬時に冷却する方法である。分子の速度が音速の数十倍になるため、超音速分子ジェット法と呼ばれている。
【0008】
Jet−REMPI法は、このように注目分子の振動・回転準位を凍結し、その注目分子の共鳴励起準位に波長可変レーザのエネルギーを同調させることで、特定分子のみを共鳴多光子吸収イオン化し、質量分析する方法である。
【0009】
超音速分子ジェット方法と高輝度紫外線レーザを組み合わせて、ダイオキシン類発生の前駆体と考えられているクロロベンゼンやクロロフェノールを検出する技術が公開されている(特開平9−243601、特開平10−74479号公報)。
【0010】
また、H. H. Grotheerらは、Jet−REMPI装置の最適化をすすめ、高感度分析装置化に成功した。ジクロロトルエンで0.1ppbまでの定量化を実現している(特開平8−222181号公報)。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
特開平10−74479号公報では、短パルス高輝度紫外線レーザを用いて、イオン化することによりハロゲン化ベンゼンを検出している。また、共鳴波長の利用による励起効率の向上についても言及しているが、この方法では、有機分子のフラグメンテーションを防ぐために、数100fsec程度の短パルスレーザを用いている。レーザを短パルス化すると、不確定性原理に基づく波長広がりが大きくなる。そのため、構造の非常に類似した異性体が多く存在するダイオキシン類では、吸収波長も非常に類似していることから、選択的に励起し、検出することは不可能である。
【0012】
一方、ダイオキシン類は非常に強い毒性を持つことから、評価しなければならない検出濃度レベルが0.1ng/m3と非常に微量であり、高感度化が必須である。Oserらの報告で、ジクロロダイオキシンで10ppt程度の検出限界が報告され、これまでのところ最も高感度な報告であると考えられる(H.Oser, R. Thanner, H. H. Grotheer, B. K. Gullett, N. B. French, D. Natscke, Proc. 16th Int. Conf. on Incineration and Thermal Treatment Technologies(1997))が、この検出限界は、ほぼ100ng/m3に相当する。今後評価が必要となる0.1ng/m3の検出限界を達成するには更に約1000倍の検出感度向上が必要である。
【0013】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、超音速分子ジェット中に注目するダイオキシン類等の有機分子を高濃度に存在させることで、選択性を維持しつつ、検出限界を低減させるとともに、オンラインかつリアルタイム測定装置を提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その要旨とするところは、
(1)極微量の有機分子を高感度に検出する超音速分子ジェットレーザ分光分析装置であって、燃焼炉の燃焼ガスが通過する第一配管と、該第一配管から分岐し再度合流する第二配管と、第一配管に設置した開閉バルブと、前記第二配管に配設した2つの開閉バルブと、該超音速分子ジェットレーザ分光分析のための前処理装置であり、有機分子を吸着するための有機分子の吸着能の高い吸着層を設置する試料ホルダーと、該試料ホルダーを収納する試料導入室と、該試料導入室を真空排気する排気部と、希ガスを試料導入室に導入する希ガス導入部と、前記吸着層を加熱し有機分子を脱着するための加熱部及び/又は前記有機分子の吸着能の高い吸着層に光を照射し有機分子を脱着するための光照射部と、分子ジェットを生成するパルスバルブを有する超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理装置と、レーザ光発振装置と、レーザ光を通過しうる窓を有する真空室と、発生した光子あるいは荷電粒子を検出する分析計を有し、前記第二配管に配設した2つの開閉バルブの間の空間が前記前処理装置の試料導入室を形成することを特徴とする超音速分子ジェットレーザ分光分析装置。
(2)極微量の有機分子を高感度に検出する超音速分子ジェットレーザ分光分析装置であって、燃焼炉の燃焼ガスが通過する第一配管と、該第一配管から分岐し再度合流する第二配管と、第一配管に設置した開閉バルブと、前記第二配管に配設した2つの開閉バルブと、該超音速分子ジェットレーザ分光分析のための前処理装置であり、有機分子を吸着するための有機分子の吸着能の高い吸着層を設置する試料ホルダーと、該試料ホルダーを収納する試料導入室と、該試料導入室を真空排気する排気部と、希ガスを試料導入室に導入する希ガス導入部と、前記有機分子の吸着能の高い吸着層に光を照射し有機分子を脱着するための光照射部、または前記吸着層を加熱し有機分子を脱着するための加熱部及び前記有機分子の吸着能の高い吸着層に光を照射し有機分子を脱着するための光照射部と、分子ジェットを生成するパルスバルブを有する超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理装置と、レーザ光発振装置と、レーザ光を通過しうる窓を有する真空室と、発生した光子あるいは荷電粒子を検出する分析計を有し、前記第二配管に配設した2つの開閉バルブの間の空間が前記前処理装置の試料導入室を形成する超音速分子ジェットレーザ分光分析装置であって、前記光照射部が高輝度レーザあるいは高輝度ランプ光を吸着層に照射する光学装置を持つことを特徴とする超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理装置。
(3)試料導入室の試料ホルダーには、有機分子の吸着能の高い吸着層に代え、燃焼ガス中の飛灰の直径以下の孔を持つ多孔質フィルターを配設することを特徴とする請求項1または2に記載の超音速分子ジェットレーザ分光分析装置。
(4)第二配管の燃焼ガス流れの経路の上流側の開閉バルブよりもさらに上流側に設置された飛灰の直径以下の孔を持つ多孔質フィルターを有することを特徴とする請求項1または2に記載の超音速分子ジェットレーザ分光分析装置。にある。
【0015】
また、
(5)極微量のダイオキシン類を高感度に検出する超音速分子ジェットレーザ分光分析のための前処理方法であって、有機分子の吸着能の高い吸着層に被測定ガスを一定量接触させ、ダイオキシン類が脱着する温度よりも低い温度を用いて希ガス雰囲気下で該吸着層を加熱及び/又は光照射して吸着した妨害分子を脱着し、次いでダイオキシン類が脱着する温度を用いて希ガス雰囲気下で該吸着層を加熱及び/又は光照射して吸着したダイオキシン類を脱着し、該ダイオキシン類を含む希ガスをバルブから真空中に噴出させて超音速分子ジェットを生成することを特徴とする超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理方法。
(6)極微量のダイオキシン類を高感度に検出する超音速分子ジェットレーザ分光分析のための前処理方法であって、有機分子の吸着能の高い吸着層に被測定ガスを一定量接触させ、ダイオキシン類が脱着する温度よりも低い温度を用いて希ガス雰囲気下で該吸着層を光照射、または加熱及び光照射して吸着した妨害分子を脱着し、次いでダイオキシン類が脱着する温度を用いて希ガス雰囲気下で該吸着層を光照射、または加熱及び光照射して吸着したダイオキシン類を脱着し、該ダイオキシン類を含む希ガスをバルブから真空中に噴出させて超音速分子ジェットを生成し、前記光照射は、高輝度レーザあるいは高輝度ランプ光を前記吸着層に照射することによって行うことを特徴とする超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理方法。
(7)燃焼炉の燃焼ガス経路において、燃焼ガスの一部又は全部を分岐し、一定量の前記分岐した燃焼ガスを前記吸着層に接触させることを特徴とする請求項5または6に記載の超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理方法。
(8)前記有機分子の吸着能の高い吸着層に代えて燃焼ガス中の飛灰の直径以下の孔を持つ多孔質フィルターを用いることにより、燃焼ガス中の飛灰に含まれる有機分子を検出することを特徴とする請求項に記載の超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理方法。
(9)燃焼ガス中の飛灰の直径以下の孔を持つ多孔質フィルターを通過させた後の燃焼ガスを前記吸着層に接触させることを特徴とする請求項に記載の超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理方法。
(10)極微量の有機分子を高感度に検出する超音速分子ジェットレーザ分光分析のための前処理方法であって、有機分子の吸着能の高い吸着層に被測定ガスを一定量接触させ、次いで希ガス雰囲気下で該吸着層を加熱及び/又は光照射して吸着した有機分子を脱着し、該希ガスをバルブから真空中に噴出させて超音速分子ジェットを生成し、 燃焼炉の燃焼ガス経路において、燃焼ガスの一部又は全部を分岐し、一定量の前記分岐した燃焼ガスを前記吸着層に接触させ、 前記燃焼ガス中の飛灰の直径以下の孔を持つ多孔質フィルターを通過させた後の前記燃焼ガスを前記吸着層に接触させることを特徴とする超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理方法。
(11)極微量の有機分子を高感度に検出する超音速分子ジェットレーザ分光分析のための前処理方法であって、有機分子の吸着能の高い吸着層に被測定ガスを一定量接触させ、次いで希ガス雰囲気下で該吸着層を光照射、または加熱及び光照射して吸着した有機分子を脱着し、該希ガスをバルブから真空中に噴出させて超音速分子ジェットを生成し、 燃焼炉の燃焼ガス経路において、燃焼ガスの一部又は全部を分岐し、一定量の前記分岐した燃焼ガスを前記吸着層に接触させ、 前記燃焼ガス中の飛灰の直径以下の孔を持つ多孔質フィルターを通過させた後の前記燃焼ガスを前記吸着層に接触させ、前記光照射は、高輝度レーザあるいは高輝度ランプ光を前記吸着層に照射することによって行うことを特徴とする超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理方法。にある。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明で、検出限界の低減を図るためには、超音速分子ジェット中に注目有機分子をより高濃度に存在させる必要がある。また、高感度化を達成するためには、バックグラウンドの低減が欠かせない。燃焼ガスなどの試料ガス中に大量に含まれている水分、炭化水素、炭酸ガスなどは、REMPI信号のノイズとなり、高感度化や再現性の妨害となるだけでなく、超音速分子ジェットが冷却されるときにバルブの開口部付近で凍結し、バルブの故障の原因になったり、排気系への負荷を大きくする。
【0017】
本発明においては、試料ガス中の注目有機分子を濃縮することによって検出限界を低減する。そして、試料ガス中の有機分子を、有機分子の吸着能の高い吸着層に吸着し、次いで該吸着層から有機分子を脱着して希ガスに含有させることにより、注目有機分子を濃縮することによって検出限界の低減を実現した。
【0018】
吸着層には、注目有機分子のみならず妨害物質も吸着する。本発明においては、加熱温度を選定して該吸着層を加熱することにより、注目有機分子を吸着させたままで妨害物質のみを選択的に脱着できることを見出した。そして、この現象を利用することにより、妨害物質を排除して注目有機分子のみを希ガス中に含有させることが可能になり、分析のバックグラウンドを低減して極微量の分析を可能にすることができた。
【0019】
まず、注目有機分子を吸着する能力の高い吸着層を準備する。注目有機分子の含有量を測定したいガスを試料ガスとする。試料ガスを該吸着層に接触させ、ガス中の注目有機分子を吸着させる。このとき、試料ガスに含まれている妨害物質も吸着される。この吸着層を密閉できる試料導入室に入れ、室内を排気することで、排気により脱着した水分、炭化水素、炭酸ガスなどの妨害物質を除去する。次に、試料室に希ガスを充填し、吸着層を加熱する。加熱温度は、ダイオキシン類は吸着層から放出されず、妨害分子が脱着・放出される温度(例えば、200℃)に加熱する。再び、試料導入室を排気して、加熱により脱着した妨害物質を除去する。この妨害分子の除去の工程を2〜3度繰り返し、妨害分子を極力、吸着層から除去する。その後、測定したいダイオキシン類を含む吸着層を高圧の希ガス下(〜10atom)でダイオキシン類が希ガス中に脱着される温度(例えば、500℃)で加熱して、注目するダイオキシン類を高濃度に含む希ガスを生成させることができる。この希ガスを数100μsec程度で開口するパルスバルブにより、真空装置内にジェット状に噴出させる。Jet中の分子は、繰り返される分子同士の衝突と断熱膨張冷却で、絶対零度付近まで冷却され、分子振動がほぼ凍結される。このJetに注目分子の励起状態に波長を同調させた波長可変レーザ光を集光して、照射することで、注目分子のみを共鳴多光子吸収イオン化する。イオン化した注目有機分子を質量分析計を用いて検出する。
【0020】
本法で、分子ジェット生成に、He等の希ガスを用いるのは、以下のような理由による。即ち、分子振動の凍結効果を向上させるには、超音速分子ジェットのマッハ数を大きくする必要があり、以下に示す式から、分子ジェットを吹き付ける際の気圧差を大きくすればよい。
【0021】
即ち、超音速分子ジェットにより冷却される分子の噴出ガス温度は、
T/T0=(p/p0)×exp[(γ-1)/γ]
である。
【0022】
ここで、p0,p,T0,Tは、それぞれ断熱膨張前後の圧力、温度で、γは気体の低圧比熱と定容比熱の比である。γが大きいほどJetの冷却効果が大きくなるので、γが大きい単原子分子気体が適しており、その中でも気体の中で最大の1.67程度の値を持つヘリウムやアルゴンが好ましい。分子ジェットを生成する前段階で、上記の前処理を行うことで、注目有機分子を高濃度に含み、妨害分子を含まない分子ジェットを生成させることができる。本方法で用いる吸着層は、ダイオキシン類等の注目有機分子に対する吸着能が高く、耐熱性に優れたコークス、活性炭、イオン交換樹脂(例えば、XAD樹脂)、カルドポリマー等が好ましい。また、妨害分子を脱着した後、He等の希ガスを5から10気圧程度まで加圧、充填し、その雰囲気下で吸着層を加熱することで、注目有機分子を濃縮したマッハ数の高い超音速分子ジェットを生成することができる。高圧下で行うことでP0を大きくできるため、脱離温度T0を大きくしても最終的に冷却温度を低くおさえることが出来る。
【0023】
本法により、連続的に発生するガス中の有機分子を測定する場合は、発生ガスの流路に吸着層を設置し、一定量のガスを接触させた後、上記の操作を行ってもよいが、後述するように、上記の試料室中を、発生ガスが通過するようにガス流路に設置して、注目有機分子の吸着からジェットの発生までを試料室中で行ってもよい。
【0024】
次に、本法に用いる前処理装置とJet−REMPI装置の概要を第1図に示す。本装置は、試料導入室9と試料導入室9の中に吸着層4を固定するための試料ホルダー21が設置されており、試料導入室9は、吸着層4を試料ホルダー21に入れるための試料導入部15と、試料導入時の開閉のための試料導入用バルブ19を備えている。試料導入室9は、吸着層を加熱できる位置に加熱部11、試料導入室9内の気体を排気するための排気バルブ8を有した排気部7、希ガスを導入するための希ガス導入バルブ10を有する希ガス導入部22を備えている。試料導入室9とJet−REMPI装置との接続部には、分子ジェットを生成させるためのパルスバルブ14が備えられている。Jet−REMPI装置は。パルスバルブ14と接続する飛行時間型質量分析装置31と波長可変レーザ29からなる。
【0025】
次に、分析操作の手順を説明する。予め注目有機分子を吸着した固体吸着物質4を試料導入部15から試料導入用バルブ19を介して、加熱部11の中心部に位置する試料ホルダー21に設置する。試料導入バルブ19を閉じ、排気バルブ8を開放することで、排気部7により、試料導入室9が排気される。水分等の妨害物質が同時に吸着している場合には、希ガス導入バルブ10を開放して、試料導入室9をHeで充填し、注目有機分子は吸着層4から放出されず、妨害分子のみが脱着・放出される温度(例えば200℃)に加熱部11により吸着層4を加熱する。このようにしてHe中に放出された妨害分子を排気バルブ8を開放して排気する。再び、希ガス導入バルブ10を開放し、試料導入室9をHeで充填し、加熱部11により、吸着層4をダイオキシン類の脱着・放出される温度(例えば500℃)で加熱する。この操作により脱着された有機分子を含むHeガスはパルスバルブ14をパルス状に開口することにより、超音速分子ジェット35となって、真空中に放出される。真空中に放出された有機分子は、その有機分子の固有の励起エネルギーに波長を同調させた波長可変レーザ29から発振されるレーザ光33を吸収して、選択的に励起、イオン化される。イオン化された有機分子32は、引き出し電極34により加速され、飛行時間型質量分析計31内を飛行して、検出器30で検出される。
【0026】
吸着層に吸着した分子の脱着は、加熱だけでなく、赤外線や紫外線を照射しても良いし、これらの波長を持つレーザや高輝度ランプを吸着層に照射してもよい。これは、用いる試料ガス温度を低く保つことができるため、マッハ数の向上に有利である。紫外線を照射する際は、注目する有機分子の分解波長を含まない波長のレーザを用いた方がよい。例えば、ダイオキシン類は、250nmから350nm付近の波長を持つランプ照射により光分解する分子が多いため、その波長を避けるようにする。この反応により、注目するダイオキシン類は脱塩素化反応が促進されることが指摘されており、その後の選択検出を意味のないものにしてしまう可能性が高い(腰岡政二、PPM,5(1991)53−60)。パルスレーザを用いる際は、レーザ照射とパルスバルブの同期を取ることで、注目有機分子を数多く含む超音速分子ジェットを生成できる。試料を加熱する場合は、吸着層の種類、あるいは測定対象となる有機分子の種類により有機分子の放出温度が異なるので、有機分子の分解温度以下で、かつ吸着層から放出される温度で加熱すればよい。ダイオキシン類の場合は、第2図に示すように、高温になるほど飽和蒸気圧が大きくなるので、高温で加熱する方がダイオキシン類を脱着させやすいが、700℃以上で分解してしまうことから700℃以下で加熱する必要がある。たとえば、400℃から600℃程度が操作上は好ましいが、400℃以下であっても、あらかじめ有機分子の脱着率を求めておき、測定値を補正すれば支障なく定量できる。
【0027】
有機分子の脱着率は、例えば、測定対象となる有機分子の標準試料の既知量をあらかじめ吸着層に吸着させ、試料ガス中の有機分子を測定するのと同様の操作で脱着量を求めることにより、算出できる。
【0028】
第3図は、レーザを用いて固体吸着物質から注目有機分子の脱着を行う超音速分子ジェット多光子吸収イオン化装置用前処理装置を示す。より高いマッハ数を得るには、加熱温度を低温化する必要がある。そこで、試料から効率よく、注目有機分子を脱離させるために、レーザ光17を用いる。レーザ光17をレンズ16により、吸着層4内の集光位置を変化させることで、試料内の有機分子を万遍なく脱着させる。また、脱着の際は、吸着層4を加熱部11により加熱しておけば、レーザ光17により脱着した有機分子の吸着層4内への再吸着が起こりにくくすることもできる。また、吸着層4の種類により、レーザ光あるいはランプ光が試料内部に侵入できないものもあるが、加熱部11による吸着層4の加熱を併用すれば、内部に吸着した有機分子が吸着層表面へ拡散するため、光照射による有機分子の希ガス中への効率的な脱着・放出が促進される。
【0029】
また、本発明は、前述のように、その濃縮をリアルタイムで行うことで、Jet−REMPI技術の大きな特徴であるリアルタイム・オンラインモニタリングの特徴を保ったままで、より高感度化を達成することができる。即ち、第4、5図に示すように、燃焼炉などの燃焼ガスの煙道と直結したシステムを構築する。通常の燃焼ガスの放出経路(第1配管)1とは別の経路(第2配管)2を配し、第2配管には、上流バルブ5と下流バルブ6の2つの開閉バルブを設置し、第1配管1にも第1配管開閉バルブ3を設置する。そして、この第2配管の上流バルブ5と下流バルブ6の間に前記前処理装置を設置する。燃焼ガス中のダイオキシン類の濃度を求める時は、第1配管開閉バルブ3を閉じ、第2配管2のバルブ2つを開く。第2配管2の2つのバルブ間に設置された吸着層4が燃焼ガス20中のダイオキシン類を吸着する。このとき、吸着層を通過したガス量を流量計12を用いて測定しておく。所定のガス量が吸着層に接触し、吸着が終了後、第2配管2の2つの開閉バルブを閉じ、第1配管開閉バルブ3を開く。閉じた2つのバルブに挟まれた空間は試料導入室9となり、排気部7と希ガス導入部22により妨害ガスを除去した後、空間を希ガスで充満し、加熱部11、レーザ17によりダイオキシン類を脱着させることで、希ガス中には高濃度にダイオキシン類が含まれ、このガスにより超音速分子ジェットを発生させる。
【0030】
燃焼ガス中に多く含まれる水分を完全に除去するために、乾燥剤として水和錯体を形成し、かつその錯体が中性あるいは酸性を示す金属塩、即ち塩化カルシウムや塩化亜鉛などを吸着層の近くに設置すると、ダイオキシン類が吸着、分解されることなく、水分のみを選択的に吸収するので効果的である。
【0031】
第6図から第9図に示す装置は、燃焼ガス中に存在する飛灰と飛灰以外の燃焼ガスに含まれる注目有機分子を分離して測定することを目的にした装置の概要である。
【0032】
飛灰中に吸着した注目有機分子のみの情報を得たい場合、第6図に示すように、試料ホルダー21に吸着層4の代わりに飛灰の最小直径以下の孔径の多孔質フィルター13を設置しておき、燃焼ガス20を通過させることで、一定量のガス中に含まれる飛灰を吸着させた後、第5図での説明と同様な過程を通して、飛灰等の固体物質に含まれる注目有機分子のみの存在量を検出するシステムである。多孔質フィルター13としては、バグフィルター、セラミックスフィルター、金属メッシュなどの耐熱性に優れたものを利用する。
【0033】
第7図は、飛灰を飛灰の直径以下の孔を持つ多孔質フィルター13により除去し、後段に配置した活性炭等の吸着層4により、試料ガス20中に存在する有機分子を吸着させ、He等の希ガス雰囲気中で高輝度レーザ17照射により脱離させることで、試料ガス20中の飛灰以外の燃焼ガス中のみに存在する注目有機分子を検出するシステムである。
【0034】
第8、9図は、第6、7図の装置が飛灰中と飛灰以外の燃焼ガス中の注目有機分子を別個に測定していたのに対して、同じ燃焼条件下で、同時に飛灰中と飛灰以外の燃焼ガス中の注目有機分子を別々に検出するための装置の概要を示している。第8図では、2つの試料導入室にそれぞれ接続する2つのJet−REMPI装置で構成されるシステムである。第2配管2の中に設置した第1試料導入室9に多孔質フィルター13を設置し、第2試料導入室28に吸着層4を設置し、第1試料導入室9は、上流バルブ5と下流バルブ6で隔離され、第2試料導入室28は、第2試料導入室上流バルブ23と第2試料導入室下流バルブ24で隔離される。第2配管2に燃焼ガス20を通過させると、上流側の第1試料導入室9内の多孔質フィルター13により、選択的に飛灰がトラップされ、下流側の第2試料導入室28内の吸着層4により、飛灰以外の燃焼ガス中の有機分子がトラップされる。これを2つのパルスバルブ14に接続された2つのJet−REMPI装置により、飛灰中と飛灰以外の燃焼ガス中の注目有機分子を別個に検出する。
【0035】
第9図は、2つの試料導入室から飛灰中と飛灰以外の燃焼ガス中の注目有機分子の各々の存在量を1つのJet−REMPI装置によって得ることを目的とした装置の概要である。Jet−REMPI装置は、波長可変レーザと飛行時間型質量分析計を必要とし、非常に高価な分析装置となる。そこで、超音速分子ジェット生成部以降を共有しつつ、飛灰中の注目有機分子と飛灰以外の燃焼ガス中の注目有機分子を分離して検出するシステムとしたのが第9図の装置である。第8図で説明したように、第1試料導入室9に多孔質フィルター13、第2試料導入室28に吸着層4を設置し、燃焼ガス20中の飛灰と飛灰以外の燃焼ガス中の有機分子を別々に吸着させるが、燃焼ガス20を通過させる際は、第1試料導入室ジェット導入用バルブ25および第2試料導入室ジェット導入用バルブ26を閉鎖しておく。所定のガス量が通過した後、第1試料導入室9と第2試料導入室28で、それぞれ飛灰と飛灰以外の燃焼ガス中の注目有機分子を吸着した多孔質フィルター13および吸着層4から有機分子を高圧のHeガス中に脱着・放出させる。その後、飛灰中の注目有機分子を測定する場合は、排気バルブ8と希ガス導入バルブ10、第2試料導入室ジェット導入用バルブ26を閉じ、第1試料導入室ジェット導入用バルブ25を開いた後、パルスバルブ14を開いて、超音速分子ジェットを生成する。選られた情報は飛灰中のみの注目有機分子の量となる。また、飛灰以外の燃焼ガス中の注目有機分子を測定する場合は、第2試料導入室28の排気バルブ8と希ガス導入バルブ10、第1試料導入室ジェット導入用バルブ25を閉じ、第2試料導入室ジェット導入用バルブ26を開いた後、パルスバルブ14を開いて、超音速分子ジェットを生成する。この後は、Jet−REMPI装置により、飛灰以外の燃焼ガス中の注目有機分子の量のみを得る。このシステムにより、飛灰と飛灰以外の燃焼ガス中の注目有機分子を同一燃焼条件において、測定することが可能となる。
【0036】
超音速ジェット中の分子を測定する他の手段として、ジェットで冷却された分子にレーザ光を照射すると、分子がそのレーザ光を吸収し、励起された準位からの緩和による発光光を分光光度計で分光すれば、注目分子のみの発光光を検出することが可能である。本手段を用いれば、分子の冷却により発光光のピーク幅が狭くなっていること、および、分光により照射するレーザ光の波長と異なる波長の注目分子の発光光のみを検出することができるので、照射レーザの影響を受けることがないことなどにより、質量分析と同様に高感度な分析が可能である。
【0037】
なお、本前処理方法で、さらに正確な定量を行うには、たとえば、標準試料として測定対象となる有機分子を13Cでラベル化した化合物を用い、その既知量をあらかじめ吸着層に加えておき、その吸着層を用いて試料ガス中の有機分子の測定を行い、あらかじめ加えた13Cでラベル化した化合物の脱着量から求めた脱着率を用いて、試料ガス中の有機分子の測定値を修正すればよい。
【0038】
【実施例】
実施例1
燃焼炉から放出された燃焼ガスを通過させた吸着層を、図1に示す装置の試料導入部15から試料導入用バルブ10を介して、ヒーターの中心部にある試料ホルダー21に導入した。導入後、試料導入用バルブ19を閉じ、試料導入室9を大気から閉鎖した。希ガス導入バルブ10、パルスバルブ14を閉じた状態で、排気バルブ8を開き、試料導入室9を排気した。次に、排気バルブ8を閉じ、希ガス導入バルブ10を開いて、試料導入室9をHeで充填した。ヒーター11で試料を200℃まで加熱し、妨害ガス成分を希ガス中に放出させた。再び、試料導入室を排気し、妨害ガスを系外に排出した。妨害ガスを十分に排気後、希ガス導入バルブ10を開いて試料導入室9をHeで5atom程度にし、ヒーター11により試料温度を500℃まで加熱した。30分後、ジェネラルバルブ社のソレノイドバルブGV 9−637−900パルスバルブ14を開き、超音速分子ジェットを生成させた。パルスバルブの開口パルス幅を200μ秒で制御し、超音速分子ジェットには、パルスバルブと同期したNd:YAGレーザ励起の色素レーザ17を用い、313.5nmの波長で2,3−ジクロロダイオキシンの共鳴多光子吸収イオン化を起こさせた。検出は、静電反射型飛行時間質量分析計31を用い、ジクロロダイオキシンと等しい質量数の信号強度を20000パルス積算して求めた。表1に同一条件下で作成した吸着層を第1図に示す前処理装置とJet−REMPI装置により得た結果と従来法(GC/MS法)で2,3−ジクロロダイオキシンを測定した結果を示す。得られた結果は、ほぼ等しい値を示しており、本発明の有効性を示している。
【0039】
【表1】
Figure 0004268254
【0040】
実施例2
第3図のレーザを用いるシステムを用いて、加熱脱着による装置との比較を行った。ヒーターを用いて、吸着層を200℃まで加熱しながら、レーザを照射することでレーザにより脱離した有機分子の吸着層内での再吸着を抑制した。この装置を用いて、実施例1の試料を測定した結果、0.33ng/Nm3の2,3−ジクロロダイオキシンを検出した。従来法の結果と比較的よい一致を見た。
【0041】
実施例3
操業が定常状態に達した焼却炉から排出された燃焼ガス中の2,3−ジクロロダイオキシンを第4図に示すJet−REMPI装置を用いて測定した。燃焼ガス通路である第1配管1から分岐する第2配管2に、燃焼ガスの一部又は全部を分岐させる。該第2配管2に配設した2つの開閉バルブ5、6の間の空間は試料導入室9を形成しており、試料導入室9内の試料ホルダー21には有機分子の吸収能の高い吸着層4を配設する。第2配管2を通過する燃焼ガスは吸着層4に接触し、燃焼ガス中の有機分子が吸着層4に吸着される。吸着層を通過させる燃焼ガス量は流量計を用いて制御した。
【0042】
次いで、実施例1に示した手順に従い、吸着層4から妨害分子の除去をおこなった後、試料導入室内の圧力を5気圧となるようにHeガスを充填した。加熱部11により吸着層の加熱温度を500℃にし、2,3−ジクロロダイオキシンを十分に吸着層4から脱着させた。パルスバルブ14の開口パルス幅を200μ秒で制御し、超音速分子ジェットには、パルスバルブと同期したNd:YAGレーザ励起の色素レーザ29を用い、313.5nmの波長で2,3−ジクロロダイオキシンの共鳴多光子吸収イオン化を起こさせた。検出は、静電反射型飛行時間質量分析計31を用い、ジクロロダイオキシンと等しい質量数の信号強度を20000パルス積算して求めた。吸着層4を通過した燃焼ガス流量を1,10,50,100m3と変化させた時のREMPIスペクトル信号量と流量の関係を第10図に示す。図からわかるように、流量に対してREMPI信号積算強度が非常に高い相関を示し、定量化が可能であることがわかった。1m3を通過させた吸着層を従来法であるGC/MSで測定した結果、試料ガス中の2,3−ジクロロダイオキシン濃度は10pptであった。
【0043】
第11図では、第6、第7図の装置を用いて、それぞれ試料ガス中の飛灰と飛灰以外の気相に存在する2,3−ジクロロダイオキシン量を別個に測定した結果を示した。気相、固相成分とも流量との相関が非常に高い。また、検出量から飛灰中と気相中のジクロロダイオキシンの存在比がほぼ10:1となっていることがわかった。気相中の検出量から、検出限界は1pptに達していることがわかり、Oserらの報告している2,3−ジクロロダイオキシンの検出限界である10pptを越える検出感度が得られたことが確かめられた。
【0044】
上記実施例及び実施の形態の説明においては、被測定有機分子としてダイオキシン類を例に挙げているが、本発明において測定できる極微量の有機分子としてはダイオキシン類には限られない。吸着層4に吸着可能なあらゆる種類の有機分子を極微量領域において精度良く測定することが可能になる。
【0045】
【発明の効果】
本発明により、ダイオキシン類等の有機分子を高感度に高選択的に検出することで、これまでにない定量限界を低減することを可能にする。また、オンラインかつリアルタイムで総合毒性を評価しうるJet−REMPI装置を提供できるし、吸着層と多孔質フィルターの使い分けで、飛灰に吸着した成分と燃焼ガス中のガス成分とを別個に測定することも可能にする。本発明は、如何なる試料ガス中に含まれる極微量の有機分子の検出を可能にするが、特に焼却炉や焼結炉などの燃焼ガスを放出する燃焼炉の評価に有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1の前処理装置とJet−REMPI装置の構成を示す図である。
【図2】ダイオキシン類の飽和蒸気圧曲線
【図3】本発明の実施例2の装置構成を示す図である。
【図4】本発明で開発したオンライン・リアルタイムJet−REMPI装置における燃焼ガスの流れを示す図である(燃焼ガスを吸着していない状態を示す)。
【図5】本発明で開発したオンライン・リアルタイムJet−REMPI装置における燃焼ガスを吸着している状態を示す。
【図6】本発明で開発したオンライン・リアルタイムJet−REMPI装置における燃焼ガス中の飛灰に存在する有機分子のみを選択的に吸着させる前処理装置を示す図である。
【図7】本発明で開発したオンライン・リアルタイムJet−REMPI装置における飛灰以外の燃焼ガス中に存在する有機分子のみを選択的に吸着させる前処理装置を示す図である。
【図8】本発明で開発したオンライン・リアルタイムJet−REMPI装置において、飛灰と飛灰以外の燃焼ガス中に存在する有機分子を別個の試料導入室から別個のJet−REMPI装置を用いて検出するJet−REMPI装置図である。
【図9】本発明で開発したオンライン・リアルタイムJet−REMPI装置において、飛灰と飛灰以外の燃焼ガス中に存在する有機分子を別個の試料導入室から単一のJet−REMPI装置を用いて検出するJet−REMPI装置図である。
【図10】通過した燃焼ガスの流量を1,10,50,100m3と変化させた時の吸着層から放出された超音速ジェットからのREMPIスペクトル信号量と流量の関係を示す図である。
【図11】第5、第6図の装置システムを用いて、それぞれ試料ガス中の飛灰と飛灰以外の気相に存在する2,3−ジクロロダイオキシン量を別個に測定した結果を示す図である。
【符号の説明】
1・・・・・第1配管
2・・・・・第2配管
3・・・・・第1配管開閉バルブ
4・・・・・吸着層
5・・・・・上流バルブ
6・・・・・下流バルブ
7・・・・・排気部
8・・・・・排気バルブ
9・・・・・試料導入室(第1試料導入室)
10・・・・・希ガス導入バルブ
11・・・・・加熱部
12・・・・・流量計
13・・・・・多孔質フィルター
14・・・・・パルスバルブ
15・・・・・試料導入部
16・・・・・レンズ
17・・・・・脱着用レーザ
18・・・・・レーザ用窓
19・・・・・試料導入用バルブ
20・・・・・燃焼ガス
21・・・・・試料ホルダー
22・・・・・希ガス導入部
23・・・・・第2試料導入室上流バルブ
24・・・・・第2試料導入室下流バルブ
25・・・・・第1試料導入室ジェット導入用バルブ
26・・・・・第2試料導入室ジェット導入用バルブ
27・・・・・流量計前バルブ
28・・・・・第2試料導入室
29・・・・・波長可変レーザ
30・・・・・検出器
31・・・・・飛行時間型質量分析計
32・・・・・イオン化された有機分子
33・・・・・イオン化用レーザ光
34・・・・・引き出し電極
35・・・・・超音速分子ジェット

Claims (11)

  1. 極微量の有機分子を高感度に検出する超音速分子ジェットレーザ分光分析装置であって、
    燃焼炉の燃焼ガスが通過する第一配管と、該第一配管から分岐し再度合流する第二配管と、第一配管に設置した開閉バルブと、前記第二配管に配設した2つの開閉バルブと、
    該超音速分子ジェットレーザ分光分析のための前処理装置であり、有機分子を吸着するための有機分子の吸着能の高い吸着層を設置する試料ホルダーと、該試料ホルダーを収納する試料導入室と、該試料導入室を真空排気する排気部と、希ガスを試料導入室に導入する希ガス導入部と、前記吸着層を加熱し有機分子を脱着するための加熱部及び/又は前記有機分子の吸着能の高い吸着層に光を照射し有機分子を脱着するための光照射部と、分子ジェットを生成するパルスバルブを有する超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理装置と、
    レーザ光発振装置と、
    レーザ光を通過しうる窓を有する真空室と、
    発生した光子あるいは荷電粒子を検出する分析計を有し、
    前記第二配管に配設した2つの開閉バルブの間の空間が前記前処理装置の試料導入室を形成することを特徴とする超音速分子ジェットレーザ分光分析装置。
  2. 極微量の有機分子を高感度に検出する超音速分子ジェットレーザ分光分析装置であって、
    燃焼炉の燃焼ガスが通過する第一配管と、該第一配管から分岐し再度合流する第二配管と、第一配管に設置した開閉バルブと、前記第二配管に配設した2つの開閉バルブと、
    該超音速分子ジェットレーザ分光分析のための前処理装置であり、有機分子を吸着するための有機分子の吸着能の高い吸着層を設置する試料ホルダーと、該試料ホルダーを収納する試料導入室と、該試料導入室を真空排気する排気部と、希ガスを試料導入室に導入する希ガス導入部と、前記有機分子の吸着能の高い吸着層に光を照射し有機分子を脱着するための光照射部、または前記吸着層を加熱し有機分子を脱着するための加熱部及び前記有機分子の吸着能の高い吸着層に光を照射し有機分子を脱着するための光照射部と、分子ジェットを生成するパルスバルブを有する超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理装置と、
    レーザ光発振装置と、
    レーザ光を通過しうる窓を有する真空室と、
    発生した光子あるいは荷電粒子を検出する分析計を有し、
    前記第二配管に配設した2つの開閉バルブの間の空間が前記前処理装置の試料導入室を形成する超音速分子ジェットレーザ分光分析装置であって、前記光照射部が高輝度レーザあるいは高輝度ランプ光を吸着層に照射する光学装置を持つことを特徴とする超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理装置。
  3. 試料導入室の試料ホルダーには、有機分子の吸着能の高い吸着層に代え、燃焼ガス中の飛灰の直径以下の孔を持つ多孔質フィルターを配設することを特徴とする請求項1または2に記載の超音速分子ジェットレーザ分光分析装置。
  4. 第二配管の燃焼ガス流れの経路の上流側の開閉バルブよりもさらに上流側に設置された飛灰の直径以下の孔を持つ多孔質フィルターを有することを特徴とする請求項1または2に記載の超音速分子ジェットレーザ分光分析装置。
  5. 極微量のダイオキシン類を高感度に検出する超音速分子ジェットレーザ分光分析のための前処理方法であって、有機分子の吸着能の高い吸着層に被測定ガスを一定量接触させ、ダイオキシン類が脱着する温度よりも低い温度を用いて希ガス雰囲気下で該吸着層を加熱及び/又は光照射して吸着した妨害分子を脱着し、次いでダイオキシン類が脱着する温度を用いて希ガス雰囲気下で該吸着層を加熱及び/又は光照射して吸着したダイオキシン類を脱着し、該ダイオキシン類を含む希ガスをバルブから真空中に噴出させて超音速分子ジェットを生成することを特徴とする超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理方法。
  6. 極微量のダイオキシン類を高感度に検出する超音速分子ジェットレーザ分光分析のための前処理方法であって、有機分子の吸着能の高い吸着層に被測定ガスを一定量接触させ、ダイオキシン類が脱着する温度よりも低い温度を用いて希ガス雰囲気下で該吸着層を光照射、または加熱及び光照射して吸着した妨害分子を脱着し、次いでダイオキシン類が脱着する温度を用いて希ガス雰囲気下で該吸着層を光照射、または加熱及び光照射して吸着したダイオキシン類を脱着し、該ダイオキシン類を含む希ガスをバルブから真空中に噴出させて超音速分子ジェットを生成し、
    前記光照射は、高輝度レーザあるいは高輝度ランプ光を前記吸着層に照射することによって行うことを特徴とする超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理方法。
  7. 燃焼炉の燃焼ガス経路において、燃焼ガスの一部又は全部を分岐し、一定量の前記分岐した燃焼ガスを前記吸着層に接触させることを特徴とする請求項5または6に記載の超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理方法。
  8. 前記有機分子の吸着能の高い吸着層に代えて燃焼ガス中の飛灰の直径以下の孔を持つ多孔質フィルターを用いることにより、燃焼ガス中の飛灰に含まれる有機分子を検出することを特徴とする請求項に記載の超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理方法。
  9. 燃焼ガス中の飛灰の直径以下の孔を持つ多孔質フィルターを通過させた後の燃焼ガスを前記吸着層に接触させることを特徴とする請求項に記載の超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理方法。
  10. 極微量の有機分子を高感度に検出する超音速分子ジェットレーザ分光分析のための前処理方法であって、有機分子の吸着能の高い吸着層に被測定ガスを一定量接触させ、次いで希ガス雰囲気下で該吸着層を加熱及び/又は光照射して吸着した有機分子を脱着し、該希ガスをバルブから真空中に噴出させて超音速分子ジェットを生成し、
    燃焼炉の燃焼ガス経路において、燃焼ガスの一部又は全部を分岐し、一定量の前記分岐した燃焼ガスを前記吸着層に接触させ、
    前記燃焼ガス中の飛灰の直径以下の孔を持つ多孔質フィルターを通過させた後の前記燃焼ガスを前記吸着層に接触させることを特徴とする超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理方法。
  11. 極微量の有機分子を高感度に検出する超音速分子ジェットレーザ分光分析のための前処理方法であって、有機分子の吸着能の高い吸着層に被測定ガスを一定量接触させ、次いで希ガス雰囲気下で該吸着層を光照射、または加熱及び光照射して吸着した有機分子を脱着し、該希ガスをバルブから真空中に噴出させて超音速分子ジェットを生成し、
    燃焼炉の燃焼ガス経路において、燃焼ガスの一部又は全部を分岐し、一定量の前記分岐した燃焼ガスを前記吸着層に接触させ、
    前記燃焼ガス中の飛灰の直径以下の孔を持つ多孔質フィルターを通過させた後の前記燃焼ガスを前記吸着層に接触させ
    前記光照射は、高輝度レーザあるいは高輝度ランプ光を前記吸着層に照射することによって行うことを特徴とする超音速分子ジェットレーザ分光分析用前処理方法。
JP05710599A 1999-03-04 1999-03-04 超音速分子ジェットレーザ分光分析装置およびその前処理方法 Expired - Fee Related JP4268254B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP05710599A JP4268254B2 (ja) 1999-03-04 1999-03-04 超音速分子ジェットレーザ分光分析装置およびその前処理方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP05710599A JP4268254B2 (ja) 1999-03-04 1999-03-04 超音速分子ジェットレーザ分光分析装置およびその前処理方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2000258395A JP2000258395A (ja) 2000-09-22
JP4268254B2 true JP4268254B2 (ja) 2009-05-27

Family

ID=13046246

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP05710599A Expired - Fee Related JP4268254B2 (ja) 1999-03-04 1999-03-04 超音速分子ジェットレーザ分光分析装置およびその前処理方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4268254B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN1756945A (zh) 2003-02-21 2006-04-05 密科理股份有限公司 工作流体流中污染物的分析方法
JP2009030669A (ja) * 2007-07-25 2009-02-12 Tokyo Institute Of Technology 超臨界流体ジェット噴射用パルスバルブ装置
JP2013013840A (ja) * 2011-07-01 2013-01-24 Seiko Epson Corp 流体分離装置、気体分離装置及びそれを用いた検出装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2000258395A (ja) 2000-09-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6663407B2 (ja) ガス混合物の質量分析試験のための方法および質量分析計
KR101538825B1 (ko) 극자외선 리소그래피 장치 내의 오염 물질의 검출
KR20140143403A (ko) Art ms트랩 내의 미량 가스 농축법
TWI222096B (en) Detecting device for chemical matter and detecting method for chemical matter
CA2381070C (en) Detector of chemical substances and concentration-measuring method of chemical substances
JP5023886B2 (ja) 大気圧maldi質量分析装置
JP4268254B2 (ja) 超音速分子ジェットレーザ分光分析装置およびその前処理方法
RU2414697C1 (ru) Способ детектирования и идентификации химических соединений и устройство для его осуществления
Simeonsson et al. Trace detection of nitrocompounds by ArF laser photofragmentation/ionization spectrometry
Petrik et al. Electron-stimulated reactions in thin D 2 O films on Pt (111) mediated by electron trapping
Heidberg et al. Infrared-laser-induced desorption by resonant multiphoton excitation of adsorbate virbation in CH3F NaCl at different coverages
Li et al. Resonant two-photon ionization of enkephalins and related peptides volatilized by using pulsed laser desorption in supersonic beam mass spectrometry
Soni et al. Trace analysis of polyaromatic hydrocarbons in water using multiphoton ionization‐membrane introduction mass spectrometry
JP7225672B2 (ja) 気体状組成物の分析方法および分析システム
JP4552053B2 (ja) ナトリウム漏えい検知方法及び装置
JP2007171064A (ja) ガス分析用Jet−REMPI装置
Zenobi Advances in surface analysis and mass spectrometry using laser desorption methods
Cisper et al. Silica-fiber microextraction for laser desorption ion trap mass spectrometry
JP4175458B2 (ja) 洗浄装置及びこれを利用する有機ハロゲン化物の検出装置
JP3616060B2 (ja) 有機ハロゲン化物濃度校正装置
Zenobi et al. Multiphoton ionization spectroscopy in surface analysis and laser desorption mass spectrometry
Heidberg et al. Selective Desorption from the Binary Coadsorbate C2H6-CH3F-NaCl By Resonant Vibrational Excitation with Laser Infrared Radiation
JP3540756B2 (ja) 有機微量成分の検出装置
JP2000180316A (ja) ダイオキシン類の抽出方法及び定量分析方法並びにそのシステム
Kim et al. UV photo-dissociation and photodesorption of N2O on Ag (111)

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20050913

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080701

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080829

RD02 Notification of acceptance of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422

Effective date: 20080829

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20081118

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20081217

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20090122

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090217

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090220

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 4268254

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120227

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120227

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130227

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130227

Year of fee payment: 4

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130227

Year of fee payment: 4

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130227

Year of fee payment: 4

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130227

Year of fee payment: 4

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140227

Year of fee payment: 5

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees