JP4552053B2 - ナトリウム漏えい検知方法及び装置 - Google Patents

ナトリウム漏えい検知方法及び装置 Download PDF

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Description

本発明は、高速炉等における冷却材ナトリウムの微少な漏えいを検知する方法及び装置に関するものである。
周知のように、高速炉では、冷却材としてナトリウムが使用されており、その漏えい検知は安全確保上重要な問題となっている。近年では、想定される漏えい規模に応じて、さまざまなナトリウム漏えい検知装置が開発されており、それら検知装置が、例えばナトリウムを内蔵する機器や配管からのナトリウム漏えいを監視するために使用されている。特に、微少な漏えいに対しては、ナトリウムを内蔵する機器や配管と保温材との隙間の雰囲気ガスや、それら機器が設置されている室内の雰囲気ガスを、サンプリング配管を通じて検出器に導き、当該検出器により、その雰囲気ガス中に含まれるナトリウムを検出する方法が採用されている。かかる方法に用いる検出器としては、例えば、ナトリウムイオン化検出器、差圧式検出器及び放射線イオン化検出器等が知られている(例えば特許文献1参照)。
上記検出器については、微量のナトリウムを感度良く検出することが要求されるが、その検出原理上、ナトリウムの同位体(22Na、23Na及び24Na)を区別して検出できないため、通常、雰囲気ガス中に含まれる微量の塩分粒子(NaCl)がバックグラウンドとなり、漏えいナトリウムの検出限界を制限している。
特開2001−311793号公報(段落0011〜0015)
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、雰囲気ガス中に含まれる塩分の影響を受けないナトリウム漏えい検知方法及び装置を提供することにある。
本発明に係るナトリウム漏えい検知方法は、冷却材ナトリウムの微少な漏えいを検知するための方法であって、検知対象エリアにおける雰囲気ガスをチャンバ内に導入して、当該雰囲気ガスからナトリウムを含むエアロゾルを採取する第1工程と、上記第1工程で採取したエアロゾルに含まれるナトリウムレーザアブレーションにより原子に分解する第2工程と、分解により生成されたナトリウム原子のみをレーザ照射により選択的に共鳴励起及びイオン化する第3工程と、飛行時間型質量分析法を用いてナトリウムイオンを同位体別に検出し、その検出結果に基づいて冷却材ナトリウムの漏えいを検知する第4工程とを含むことを特徴とするものである。
上記第1工程では、エアロダイナミックレンズによりエアロゾルをビーム状に収束させて、これを上記チャンバ内のターゲットに衝突させることにより、エアロゾルを採取する方式を採用するとともに、上記ターゲットを、上記エアロダイナミックレンズのある一側を向く第1位置から、これと反対の他側を向く第2位置まで180度反転可能に構成し、上記第1工程の終了後に、上記ターゲットを上記第1位置から上記第2位置に180度反転させて、上記第2工程以降の処理を上記他側で行うようにすることが望ましい。
また、本発明に係るナトリウム漏えい検知装置は、冷却材ナトリウムの微少な漏えいを検知するための装置であって、高真空状態に保たれたチャンバを有する真空装置と、検知対象エリアにおける雰囲気ガスを上記チャンバ内に導入して、当該雰囲気ガスからナトリウムを含むエアロゾルを採取するエアロゾルサンプリング装置と、採取したエアロゾルに含まれるナトリウムレーザアブレーションにより原子に分解するエアロゾル原子化装置と、分解により生成されたナトリウム原子のみをレーザ照射により選択的に共鳴励起及びイオン化するレーザ共鳴イオン化装置と、飛行時間型質量分析法を用いてナトリウムイオンを同位体別に検出する飛行時間型質量分析装置とを備えることを特徴とするものである。
上記ナトリウム漏えい検知装置において、例えば、上記エアロゾルサンプリング装置は、エアロゾルをビーム状に整流しながら上記チャンバ内に取り込むエアロダイナミックレンズと、上記エアロダイナミックレンズから放出されたエアロゾルを捕集するターゲットとを備え、上記ターゲットが、上記エアロダイナミックレンズのある一側を向く第1位置から、これと反対の他側を向く第2位置まで180度反転可能に構成され、上記ターゲットの他側に、上記エアロゾル原子化装置、上記レーザ共鳴イオン化装置及び上記飛行時間型質量分析装置が配置されている。
また、上記ナトリウム漏えい検知装置において、例えば、上記レーザ共鳴イオン化装置は、ナトリウム原子を基底準位から第1励起準位へ共鳴励起する共鳴波長のレーザを出射する第1波長可変レーザシステムと、22Naあるいは24Naのみを選択的に、第1励起準位から第2励起準位へ共鳴励起する共鳴波長のレーザを出射する半導体レーザと、ナトリウム原子を第2励起準位からイオン化ポテンシャルより高い準位へ共鳴励起する共鳴波長のレーザを出射する第2波長可変レーザシステムとを有し、その各々から出射されたレーザを同軸上に合成して、これをナトリウム原子に照射することにより、22Naあるいは24Naのみを選択的にイオン化するようになっている。
本発明によれば、検知対象エリアにおける雰囲気ガス(例えば、冷却材ナトリウムを扱う機器や配管周辺の雰囲気ガス)をチャンバ内に導入して、当該雰囲気ガスからナトリウムを含むエアロゾルを採取した後、採取したエアロゾルをレーザアブレーションにより原子に分解し、分解により得られたナトリウム原子をレーザ照射によりイオン化し、その後、飛行時間型質量分析法を用いてナトリウムイオンを同位体別に検出するようにしたので、エアロゾルに含まれるナトリウムの中から、高速炉の機器や配管等から漏れたナトリウム(22Naあるいは24Na)を選択的に検出することが可能となり、雰囲気ガス中に含まれる天然ナトリウム(23Na)の影響を受けることなく、確実に冷却材ナトリウムの漏えいを検知することができる。
また、本発明においては、ターゲットを180度反転可能に構成したので、エアロゾルを採取するエアロゾルサンプリング装置と、採取したエアロゾルから冷却材ナトリウムの漏えいを検知する装置群(エアロゾル原子化装置、レーザ共鳴イオン化装置及び飛行時間型質量分析装置)とを、チャンバ内で互いに反対側に配置することができ、これにより両者間の干渉を回避して装置構成の簡素化を図ることができるとともに、エアロゾルの採取から冷却材ナトリウムの漏えい検知までの一連の処理を円滑に行うことができる。
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係るナトリウム漏えい検知装置の一実施形態を示す構成図である。このナトリウム漏えい検知装置1は、高真空状態に保たれたチャンバ7を有する真空装置2と、ナトリウム漏えいの検知対象となる機器や配管周辺の雰囲気ガスを上記チャンバ7内に導入して当該雰囲気ガスからナトリウムを含むエアロゾル10を採取するエアロゾルサンプリング装置3と、採取したエアロゾル10を原子に分解するエアロゾル原子化装置4と、分解により生成されたナトリウム原子をレーザ照射によりイオン化するレーザ共鳴イオン化装置5と、飛行時間型質量分析法を用いてナトリウムイオンを同位体別に検出する飛行時間型質量分析装置6とにより概略構成されている。
真空装置2は、真空容器8と真空ポンプ9の組合せにより構成されている。真空容器8は、断面略L字形に形成され、その内部にはチャンバ7が設けられている。真空容器8の一端面(図中下端面)には、エアロゾルサンプリング装置3のエアロダイナミックレンズ11(後述)が取り付けられ、これと対向する他端面(図中上端面)には、エアロゾル原子化装置4のパルスレーザ発振器14(後述)とレーザ共鳴イオン化装置5の波長可変レーザシステム19(後述)から出力されるレーザ30,31をそれぞれチャンバ7内に入射させるためのウィンドウ27,28が並設されている。また、チャンバ7内には、後述するターゲット12、回転機構18、電極21、イオンディフレクター23、イオンリフレクター24及びイオン検出器25等が配設されている。
真空容器8には、例えば金属製の容器が用いられ、内部を高真空状態に維持できるようシールドが施されている。また、真空ポンプ9には、例えば、ターボ分子ポンプが用いられている。
エアロゾルサンプリング装置3は、エアロダイナミックレンズ11とターゲット12により概略構成されている。エアロダイナミックレンズ11は、金属製のチューブの中に複数段のオリフィス13が連なった構造を有し、真空容器8の内外の圧力差を利用することにより、外部のエアロゾル10をビーム状に整流しながらチャンバ7内に取り込むようになっている。ターゲット12は、エアロダイナミックレンズ11から放出されたエアロゾル10を捕集するためのもので、例えば、タングステン等の金属板により構成されている。ターゲット12は、回転機構18により回転可能な状態でチャンバ7内に設置され、エアロダイナミックレンズ11のある一側(図中下側)を向く第1位置P1から、これと反対の他側(図中上側)を向く第2位置P2まで180度回転可能に構成されている。本実施形態では、回転機構18の両側にそれぞれターゲット12が設けられ、その一方が第1位置P1に配置されているときに、他方が第2位置P2に配置されるようになっている。そして、上記他側には、エアロゾル原子化装置4、レーザ共鳴イオン化装置5及び飛行時間型質量分析装置6がそれぞれ設置されている。
エアロゾル原子化装置4は、ターゲット12上のエアロゾル10をレーザアブレーションにより原子に分解するもので、パルスレーザ発振器14、光ファイバ導入光学系15、光ファイバ16及び集光レンズ17等から構成されている。これらは何れも真空容器8の外部に設置され、パルスレーザ発振器14から出力されたパルス状のレーザ30が、光ファイバ導入光学系15、光ファイバ16及び集光レンズ17を経由して、ウィンドウ27からチャンバ7内の第2位置P2にあるターゲット12上のエアロゾル10に照射されるように各々が配置されている。また、集光レンズ17の焦点は、第2位置P2のターゲット表面に設定されている。パルスレーザ発振器14には、例えば、QスイッチNd:YAGレーザ発振器が使用されている。光ファイバ導入光学系15は集光レンズと位置決め装置を内蔵し、位置決め装置に光ファイバ16の端部が固定されている。光ファイバ16には、例えば、石英コアを有するステップインデックス型の光ファイバが用いられている。
レーザ共鳴イオン化装置5は、所定波長のレーザを照射してナトリウム原子のみを選択的に共鳴励起・イオン化するためのレーザ照射部と、ナトリウム原子の周囲に電場を形成するための電場形成部とを備えている。レーザ照射部は、波長可変レーザシステム19、全反射ミラー22及び集光レンズ17により構成され、波長可変レーザシステム19から出力された共鳴イオン化用のレーザ31が、全反射ミラー22及び集光レンズ17を経て、ウィンドウ28からチャンバ7内のナトリウム原子に照射されるように各々が配置されている。また、集光レンズ17の焦点は、レーザアブレーションによりプラズマ32が生成される位置(第2位置P2のターゲット表面から離間した位置)に設定されている。波長可変レーザシステム19としては、例えば、光パラメトリック発振器や色素レーザを含むレーザシステムが使用される。
一方、電場形成部は、電極21と、該電極21にパルス電圧を印加するパルス電圧発生器20とにより構成されている。電極21は、上記プラズマ32を間に挟むように所定間隔を配して対向配置された一対の金属板により構成されている。それら金属板は、レーザ30,31の光路を遮ることがないよう、ターゲット12から離間した位置に、ターゲット12に対して垂直な向きで設置されている。このうち、一方の金属板(パルス電圧発生器20のマイナス端子に接続された金属板)の中心部には開口部が設けられ、該開口部には金属製のメッシュが取り付けられている。この金属板の後方(外面側)には、飛行時間型質量分析を行うための測定領域が設けられている。
飛行時間型質量分析装置6は、ナトリウムイオンを飛行時間型質量分析法で分析するもので、本実施形態では、イオンディフレクター23、イオンリフレクター24及びイオン検出器25からなる反射型の飛行時間型質量分析装置が用いられ、上記イオン検出器25には、マイクロチャンネルプレートが用いられている。飛行時間型質量分析装置6は、上記電場でパルス的に加速されたナトリウムイオンがイオン検出器25に到達するまでに要する時間を検出し、その検出値に基づいてナトリウムイオンを質量別(すなわち同位体別)に検出可能となっている。
次に、上記装置を用いたナトリウム漏えい検知方法の一実施形態について説明する。
このナトリウム漏えい検知方法は、雰囲気ガスからナトリウムを含むエアロゾル10を採取する第1工程と、採取したエアロゾル10を原子に分解する第2工程と、分解により得られたナトリウム原子をレーザ照射によりイオン化する第3工程と、飛行時間型質量分析法を用いてナトリウムイオンを同位体別に検出し、これに基づいてナトリウム漏えいを検知する第4工程とからなる。なお、第1工程ではエアロゾルサンプリング装置3、第2工程ではエアロゾル原子化装置4、第3工程ではレーザ共鳴イオン化装置5、第4工程では飛行時間型質量分析装置6がそれぞれ用いられる。
第1工程では、先ず、ナトリウム漏えいの検知対象となる機器や配管(例えば1次系ナトリウムを内蔵する機器や配管など)の周辺の雰囲気ガスが、サンプリング配管29を通じてエアロダイナミックレンズ11の内部に導入される。上記機器や配管から微少のナトリウムが漏えいした場合、そのナトリウムが雰囲気中の酸素と化学反応して、Na2O等を主成分とするエアロゾル10が形成される。また、雰囲気ガスにはNaClを主成分とする海塩粒子等のエアロゾル10も含まれている。これらのエアロゾル10は、エアロダイナミックレンズ11の内部に設けられた数段のオリフィス13によって細いビーム状に整流された後、真空容器内部のチャンバ7内に導入される。なお、チャンバ7内は真空ポンプ9によって10-3Pa程度の負圧に保たれており、真空容器8の外部は大気圧であるため、その圧力差によりエアロゾル10が真空容器8の外部からチャンバ7内に導入される。チャンバ7内に導入されたエアロゾル10は、第1位置P1に配置されたターゲット12に衝突し、その全部あるいは一部がターゲット12の表面に付着する。この際に、エアロゾル10はエアロダイナミックレンズ11の作用によりビーム状に絞られた状態でターゲット12に衝突することとなるので、エアロダイナミックレンズ11を使用しない場合と比較して、ターゲット表面における単位面積当たりのエアロゾル付着量を増加させることができる。
第2工程では、エアロゾル10を付着したターゲット12が回転機構18により180度回転されて第2位置P2に配置された後、パルスレーザ発振器14からパルス状のレーザ30が出射される。このレーザ30は、光ファイバ導入光学系15に内蔵された集光レンズで収束された後、光ファイバ16で伝送され、その後、集光レンズ17で収束されて、ウィンドウ27を介して、第2位置P2にあるターゲット12の表面に照射される。レーザ照射を受けたターゲット12の表面上には、レーザアブレーションの現象によって高温のプラズマ32が形成され、Na2O等の分子構造を有するエアロゾル10が原子レベルに分解される。
第3工程では、ナトリウム原子を基底準位から主量子数が15以上のRydberg準位に共鳴励起する共鳴波長を有するレーザ31が、波長可変レーザシステム19から出射される。例えば、波長が244.4193,244.0013,243.6597,243.3768,243.1399,242.9395,242.7684,242.6213,242.4937,242.3825,242.1987,242.1223,242.0542,241.9933,241.9386(nm)等に設定されたレーザ31が波長可変レーザシステム19から出射される。このレーザ31は、集光レンズ17で収束された後、ウィンドウ28を介して、第2工程で原子化されたエアロゾル10に照射される。また、このレーザ照射と同期して、パルス電圧発生器20から電極21にパルス電圧が印加されることにより、電極間に電場が形成される。
その結果、エアロゾル10に含まれていたナトリウム原子は、上記レーザ照射を受けて、基底準位から主量子数が15以上のRydberg準位に共鳴励起された後、電場の作用により電離してナトリウムイオン33になる。すなわち、上記共鳴波長を有するレーザ31により共鳴励起されたナトリウム原子のみが、選択的にイオン化されることとなる。その後、ナトリウムイオン33は、電場によるクーロン力を受けて加速し、その一部が電極21に設けられたメッシュを通過して、飛行時間型質量分析装置6の測定領域に飛行していく。
第4工程では、飛行時間型質量分析装置6の測定領域に入射したナトリウムイオン33を飛行時間型質量分析法で分析する処理が行われる。上記ナトリウムイオン33は、上記測定領域に入射した後、イオンディフレクター23によって偏向され、その後、イオンリフレクター24によって反射され、イオン検出器25で検出される。ナトリウムイオン33は上記電場において一定の運動エネルギーが付与されることとなるため、ナトリウムイオン33は、質量の小さいものほど速く、その飛行時間は、質量の大きいものほど長くなる。したがって、この特性を利用することにより、ナトリウムイオン33を同位体別に検出することができる。この飛行時間型質量分析装置6によって得られる質量スペクトルの模式図を図2に示す。
ナトリウム同位体としては、22Na、23Na及び24Naが存在するが、海塩等に含まれる天然のナトリウムは全て23Naであり、22Naと24Naは高速炉の1次系ナトリウムに含まれるものである。したがって、天然のナトリウムと、高速炉の機器や配管等から漏れたナトリウムとを区別して検出することができる。なお、高速炉の1次系の22Na及び24Naの濃度は、23Naの濃度よりも8桁〜10桁小さいと推定されるが、上述したように、検出感度の向上を図っているため、微量の22Na及び24Naであっても、それらを感度良く検出することができる。
以上のように、本実施形態によれば、先ず、検知対象エリアにおける雰囲気ガス(例えば、冷却材ナトリウムを扱う機器や配管周辺の雰囲気ガス)をチャンバ7内に導入して、当該雰囲気ガスからからナトリウムを含むエアロゾル10を採取した後(第1工程)、採取したエアロゾル10をレーザアブレーションにより原子に分解し(第2工程)、分解により得られたナトリウム原子をレーザ照射によりイオン化し(第3工程)、その後、飛行時間型質量分析法を用いてナトリウムイオンを同位体別に検出するようにした(第4工程)ので、エアロゾル10に含まれるナトリウムの中から、高速炉の機器や配管等から漏れたナトリウム(22Naあるいは24Na)を選択的に検出することが可能となり、雰囲気ガス中に含まれる天然ナトリウム(23Na)の影響を受けることなく、確実に冷却材ナトリウムの漏えいを検知することができる。
また、本実施形態においては、ターゲット12を180度反転可能に構成したので、エアロゾル10を採取するエアロゾルサンプリング装置3と、採取したエアロゾル10から冷却材ナトリウムの漏えいを検知する装置群(エアロゾル原子化装置4、レーザ共鳴イオン化装置5及び飛行時間型質量分析装置6)とを、チャンバ7内で互いに反対側に配置することができ、これにより両者間の干渉を回避して装置構成の簡素化を図ることができるとともに、エアロゾル10の採取から冷却材ナトリウムの漏えい検知までの一連の処理を円滑に行うことができる。
すなわち、従来のナトリウム漏えい検知装置においては、エアロゾルサンプリング装置3と、採取したエアロゾル10から冷却材ナトリウムの漏えいを検知する装置群が、ターゲットに対して同じ側に配置されていたために、両者間で干渉が生じ、採取したエアロゾル10からナトリウムイオンを生成する間(第2工程から第3工程の間)は、エアロゾルの採取を行うことができず、検知データの採取間隔が長くなるという問題点があった。これに対して、本発明に係るナトリウム漏えい検知装置においては、上述したように、ターゲット12を180度反転可能に構成したので、上記問題点を解消することができ、採取したエアロゾル10からナトリウムイオンを生成している間も、もう一つのターゲット12を用いて、エアロゾルの採取を行うことができ、検知データの採取間隔を短縮できるという効果も得られる。
また、本実施形態においては、エアロゾル10の原子化に、パルスレーザ発振器14を用い、ナトリウム原子の共鳴励起・イオン化に、波長可変レーザシステム19を用いるようにしたので、原子化後に共鳴励起・イオン化するタイミングを最適化することが可能となるとともに、原子密度の高い部分に共鳴励起・イオン化用のレーザを照射することが可能となるので、生成するナトリウムイオンの量を増加させることができるという効果が得られる。
なお、以上の実施形態においては、波長可変レーザシステム19、全反射ミラー22、集光レンズ17、電極21及びパルス電圧発生器20からなるレーザ共鳴イオン化装置5を例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図3に示すようなレーザ共鳴イオン化装置を使用することも可能である。
このレーザ共鳴イオン化装置は、2台の波長可変レーザシステム41,42、半導体レーザ43、全反射ミラー44、ダイクロイックミラー45、集光レンズ17、電極21及び電圧発生器46等により構成されている。波長可変レーザシステム41,42としては、例えば、光パラメトリック発振器や色素レーザを含むレーザシステムが使用される。半導体レーザ43は、例えば、20MHz程度の極めて細い波長線幅のレーザを出射する装置である。ダイクロイックミラー45は透過率及び反射率に波長依存性があるミラーであり、ここでは、異なる波長のレーザを同軸上に合成するために使用される。
このレーザ共鳴イオン化装置において、一方の波長可変レーザシステム(第1波長可変レーザシステム)41は波長がλ1のレーザを出射し、他方の波長可変レーザシステム(第2波長可変レーザシステム)42は波長がλ3のレーザを出射する。また、半導体レーザ43は波長がλ2のレーザを出射する。これら3つのレーザはダイクロイックミラー45によって同軸上に合成された後、集光レンズ17で収束され、ウィンドウ28を介して、原子化されたエアロゾル10に照射される。
図4は、レーザ照射によりナトリウム原子が共鳴イオン化する過程を模式的に示したものである。この図4に示すように、波長:λ1は、ナトリウム原子を基底準位から第1励起準位へ共鳴励起する共鳴波長に設定されている。波長:λ2は、ナトリウム原子の同位体シフトと超微細構造を考慮して、22Naあるいは24Naのみを選択的に、第1励起準位から第2励起準位へ共鳴励起する共鳴波長が選定されている。波長:λ3は、ナトリウム原子を第2励起準位からイオン化ポテンシャルより高い準位へ共鳴励起する共鳴波長に設定されている。したがって、エアロゾル10に含まれていたナトリウム原子は、上記のレーザ照射を受けて、基底準位から第1励起準位へ共鳴励起した後、22Naあるいは24Naのみが選択的に第2励起準位へ励起し、イオン化される。こうして生成されたナトリウムイオン33は、図1のレーザ共鳴イオン化装置5と同様に、電場によるクーロン力を受けて加速され、その一部が電極21に設けられたメッシュを通過して、飛行時間型質量分析装置6の測定領域に飛行していく。ここで、第1励起準位は、例えば3p20 1/2であり、第2励起準位は14s21/2である。また、レーザ波長に関しては、例えば、λ1を589.756(nm)、λ2を約420.032(nm)、λ3を589.756(nm)に設定することが可能である。
上記構成からなるレーザ共鳴イオン化装置によれば、22Naあるいは24Naのみを選択的にイオン化することができる。したがって、後段の飛行時間型質量分析装置6において、23Naに由来する強い信号が22Na及び24Naの検出性能を低下させる現象を防止することが可能となり、22Naあるいは24Naをさらに感度良く検出することが可能となる。よって、かかるレーザ共鳴イオン化装置を用いたナトリウム漏えい検知装置によれば、雰囲気ガスに含まれる塩分の影響を受けることなく、しかも高感度にナトリウム漏えいを検知することができる。
本発明に係るナトリウム漏えい検知装置の一実施形態を示す構成図である。 質量スペクトルの模式図である。 レーザ共鳴イオン化装置の変形例を示す構成図である。 図3の変形例におけるレーザ共鳴イオン化過程を説明するための模式図である。
符号の説明
1 ナトリウム漏えい検知装置
3 エアロゾルサンプリング装置
4 エアロゾル原子化装置
5 レーザ共鳴イオン化装置
6 飛行時間型質量分析装置
7 チャンバ
10 エアロゾル
11 エアロダイナミックレンズ
12 ターゲット
18 回転機構

Claims (5)

  1. 冷却材ナトリウムの微少な漏えいを検知するための方法であって、
    検知対象エリアにおける雰囲気ガスをチャンバ内に導入して、当該雰囲気ガスからナトリウムを含むエアロゾルを採取する第1工程と、
    上記第1工程で採取したエアロゾルに含まれるナトリウムレーザアブレーションにより原子に分解する第2工程と、
    分解により生成されたナトリウム原子のみをレーザ照射により選択的に共鳴励起及びイオン化する第3工程と、
    飛行時間型質量分析法を用いてナトリウムイオンを同位体別に検出し、その検出結果に基づいて冷却材ナトリウムの漏えいを検知する第4工程とを含むことを特徴とするナトリウム漏えい検知方法。
  2. 上記第1工程では、エアロダイナミックレンズによりエアロゾルをビーム状に収束させて、これを上記チャンバ内のターゲットに衝突させることにより、エアロゾルを採取する方式を採用するとともに、
    上記ターゲットを、上記エアロダイナミックレンズのある一側を向く第1位置から、これと反対の他側を向く第2位置まで180度反転可能に構成し、
    上記第1工程の終了後に、上記ターゲットを上記第1位置から上記第2位置に180度反転させて、上記第2工程以降の処理を上記他側で行うようにしたことを特徴とする請求項1に記載のナトリウム漏えい検知方法。
  3. 冷却材ナトリウムの微少な漏えいを検知するための装置であって、
    高真空状態に保たれたチャンバを有する真空装置と、
    検知対象エリアにおける雰囲気ガスを上記チャンバ内に導入して、当該雰囲気ガスからナトリウムを含むエアロゾルを採取するエアロゾルサンプリング装置と、
    採取したエアロゾルに含まれるナトリウムレーザアブレーションにより原子に分解するエアロゾル原子化装置と、
    分解により生成されたナトリウム原子のみをレーザ照射により選択的に共鳴励起及びイオン化するレーザ共鳴イオン化装置と、
    飛行時間型質量分析法を用いてナトリウムイオンを同位体別に検出する飛行時間型質量分析装置とを備えることを特徴とするナトリウム漏えい検知装置。
  4. 上記エアロゾルサンプリング装置は、エアロゾルをビーム状に整流しながら上記チャンバ内に取り込むエアロダイナミックレンズと、上記エアロダイナミックレンズから放出されたエアロゾルを捕集するターゲットとを備え、
    上記ターゲットが、上記エアロダイナミックレンズのある一側を向く第1位置から、これと反対の他側を向く第2位置まで180度反転可能に構成され、
    上記ターゲットの他側に、上記エアロゾル原子化装置、上記レーザ共鳴イオン化装置及び上記飛行時間型質量分析装置がそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項3に記載のナトリウム漏えい検知装置。
  5. 上記レーザ共鳴イオン化装置は、
    ナトリウム原子を基底準位から第1励起準位へ共鳴励起する共鳴波長のレーザを出射する第1波長可変レーザシステムと、
    22Naあるいは24Naのみを選択的に、第1励起準位から第2励起準位へ共鳴励起する共鳴波長のレーザを出射する半導体レーザと、
    ナトリウム原子を第2励起準位からイオン化ポテンシャルより高い準位へ共鳴励起する共鳴波長のレーザを出射する第2波長可変レーザシステムとを有し、
    その各々から出射されたレーザを同軸上に合成して、これをナトリウム原子に照射することにより、22Naあるいは24Naのみを選択的にイオン化することを特徴とする請求項3に記載のナトリウム漏えい検知装置。
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