JP4265747B2 - 多段変速機の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主変速機と副変速機とからなる多段変速機の制御装置において、特に、変速パターンの改良技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
大型商用車の分野では、特許文献1に開示されるように、主変速機の各変速段について、これを副変速機により高速段(H)又は低速段(L)に半段ずらすことで、ギヤ比がクロスした多段変速機を実現した技術が利用されている。例えば、12段変速機では、1速〜6速の6段を有する主変速機と、H及びLの2段を有するスプリッタ(副変速機)と、を組み合わせることで、1L〜6Hの変速段が構成される。また、12段変速機では、積荷状態などに応じて変速パターンを変更可能とすべく、スプリッタによる変速を行うか否かを選択する12段変速スイッチが備えられる。
【0003】
そして、12段変速スイッチをONにすると、シフトアップのときには、1L→1H→2L→2H→・・・・→5L→5H→6L→6Hのように、1段飛びに変速が実行される。一方、12段変速スイッチをOFFにすると、シフトアップのときには、1H→2H→・・・・→5H→6H又は1L→2L→・・・・→5L→6Lのように、2段飛びに変速が実行される。なお、シフトダウンのときには、この逆のシフトパターンにより変速が実行される。
【0004】
【特許文献1】
実開平6−8825号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、12段変速機には、加減速で多用される低速段(1H〜4H)のギヤ比が近接すると共に、巡航走行で多用される高速段(5L〜6H)のギヤ比が離れているという特性がある。このため、発進直後の加速時に12段変速スイッチがONになっていると、エンジンが許容回転速度に短時間で到達してしまうことから、シフト操作が忙しくなってしまう。一方、巡航走行時に12段変速スイッチがOFFになっていると、燃焼効率が良好な運転領域での走行が困難となり、燃費が低下してしまうおそれがある。また、加速と巡航走行とに応じて、12段変速スイッチをON又はOFFに切り換えながら走行すると、スイッチ操作の煩わしさが発生してしまう。
【0006】
そこで、本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、副変速機による変速を行わない設定となっていても、加減速で多用されるギヤ比が近接する低速段では2段飛びで変速させる一方、巡航走行で多用されるギヤ比が離れている高速段では1段飛びで変速させることで、燃費低下を抑制しつつ、変速操作の煩わしさを解消した多段変速機の制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1記載の発明では、主変速機の各変速段を副変速機により高又は低に切り換える多段変速機の制御装置であって、前記副変速機による切り換えを行うか否かを指定する指定手段と、前記指定手段により切り換えを行う指定がなされたときに、前記多段変速機を1段飛びに変速する第1の変速制御手段と、前記指定手段により切り換えを行う指定がなされないときに、加減速で多用されるギヤ比が近接する低速段では多段変速機を2段飛びに変速する一方、巡航走行で多用されるギヤ比が離れている高速段では多段変速機を1段飛びに変速する第2の変速制御手段と、を含んで構成され、前記第2の変速制御手段は、前記多段変速機を低速段から高速段にシフトアップするときの副変速機の切り換え状態を記憶し、前記多段変速機を高速段から低速段にシフトダウンするときに、記憶した状態に副変速機を切り換えることを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、副変速機による切り換えを行う指定がなされているときには、多段変速機の変速領域全域に亘って1段飛びに変速が実行される。一方、副変速機による切り換えを行う指定がなされていないときには、加減速で多用されるギヤ比が近接する低速段では2段飛びに変速が実行されると共に、巡航走行で多用されるギヤ比が離れている高速段では1段飛びに変速が実行される。
このとき、多段変速機を低速段から高速段にシフトアップするときに、副変速機の切り換え状態が記憶される。そして、多段変速機を高速段から低速段にシフトダウンするときに、記憶した状態に副変速機が切り換えられる。このため、副変速機による切り換えを行う指定がなされていないときであっても、シフトアップとシフトダウンとで同じ変速パターンを辿ることとなる。
【0011】
請求項2記載の発明では、前記第1の変速制御手段及び第2の変速制御手段は、夫々、変速指示が入力されるシフトレバーの操作に応じて多段変速機を変速することを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、変速指示が入力されるシフトレバーの操作に応じて、多段変速機が変速される。このため、多段変速機を手動で変速するものにおいても、本発明が適用可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、添付された図面を参照して本発明を詳述する。
図1は、本発明に係る多段変速機の制御装置を備えた車両構成を示す。
【0014】
エンジン10には、機械式クラッチ(以下「クラッチ」という)12を介して、多段変速機14が取り付けられる。多段変速機14は、1速〜6速の6段を有する主変速機の入力側に、その各変速段を高(H)又は低(L)に切り換える副変速機としてのスプリッタが連結された構成をなす。そして、主変速機の各変速段について、スプリッタにより高速側又は低速側に半段ずらすことで、1L〜6Hからなる12段の変速段が構成される。
【0015】
エンジン10には、マイクロコンピュータを内蔵したエンジンコントロールユニット16により燃料噴射量が制御される燃料噴射ポンプ18と、エンジン回転速度を検出する回転速度センサ20と、が取り付けられる。また、クラッチ12には、クラッチ駆動用アクチュエータとしてのクラッチブースタ22の出力軸が接続されると共に、そのストロークからクラッチの断接状態を検出するクラッチストロークセンサ24が取り付けられる。
【0016】
一方、多段変速機14には、マイクロコンピュータを内蔵した変速機コントロールユニット26により開閉制御される電磁弁28を介して、主変速機及びスプリッタを空気圧で切り換えるメインアクチュエータ30及びスプリッタアクチュエータ32が夫々取り付けられる。また、多段変速機14には、主変速機及びスプリッタの変速段を検出するメインポジションセンサ34及びスプリッタポジションセンサ36、並びに、アウトプットシャフトの回転速度から車速を検出する車速センサ38が夫々取り付けられる。
【0017】
運転室内には、アクセルペダル40の操作量を検出するアクセル開度センサ42と、変速指示を入力するシフトレバー44と、現在の変速段を表示するモニター46と、が夫々備えられる。また、シフトレバー44には、スプリッタを作動させて12段変速とするか否かを指定する12段変速スイッチ44A(指定手段)が組み込まれている。
【0018】
そして、アクセル開度センサ42の信号がエンジンコントロールユニット16に入力され、アクセルペダル40の操作量に応じて、燃料噴射ポンプ18が制御される。一方、回転速度センサ20,クラッチストロークセンサ24,メインポジションセンサ34,スプリッタポジションセンサ36,車速センサ38及びシフトレバー44の各信号が変速機コントロールユニット26に入力され、エンジンコントロールユニット16と相互通信しつつ、自動変速制御又は手動変速制御が行われるべく、電磁弁28及びモニター46が夫々制御される。
【0019】
図2及び図3は、シフトレバー44が操作されたときに、変速機コントロールユニット26で実行される変速制御内容を示す。なお、図2及び図3に示す制御内容により、第1の変速制御手段及び第2の変速制御手段が夫々実現される。
【0020】
ステップ1(図では「S1」と略記する。以下同様)では、メインポジションセンサ34からの信号に基づいて、現在の変速段(以下「現変速段」という)が前進段であるか否かが判定される。そして、現変速段が前進段であればステップ2へと進み(Yes)、現変速段が前進段でない(後進段)であればステップ6へと進む(No)。
【0021】
ステップ2では、メインポジションセンサ34及びスプリッタポジションセンサ36からの信号に基づいて、現変速段が4H(主変速機が4速,スプリッタがH;以下同様)以下であるか否かが判定される。ここで、現変速段が4H以下であるときには、多段変速機14が加減速で多用されるギヤ比が近接する低速段に変速されていると判定することができる。そして、現変速段が4H以下であればステップ3へと進み(Yes)、現変速段が4Hより大きい、即ち、巡航走行で多用されるギヤ比が離れている高速段であればステップ6へと進む(No)。
【0022】
ステップ3では、スプリッタポジションセンサ36からの信号に基づいて、スプリッタがHに切り換えられているか否かが判定される。そして、スプリッタがHに切り換えられていればステップ4へと進み(Yes)、フラグに1が設定される。一方、スプリッタがLに切り換えられていればステップ5へと進み(No)、フラグが0に設定される。
【0023】
ここで、ステップ1〜ステップ5の一連の処理によれば、現変速段が前進段かつ低速段にあれば、スプリッタの切り換え状態に応じてフラグが1(H)又は0(L)に設定される。このため、後述する処理により高速段から低速段へのシフトダウンを実行するときに、フラグを参照することで、スプリッタを高・低のどちらに切り換えるべきであるかが一意に決定可能となる。
【0024】
ステップ6では、シフトレバー44からの信号がシフトアップ信号であるか否かが判定される。そして、シフトアップ信号であればステップ7へと進み(Yes)、ステップ7〜ステップ14の一連の処理によりシフトアップが実行される。一方、シフトアップ信号ではない、即ち、シフトダウン信号であればステップ15へと進み(No)、ステップ15〜ステップ25の一連の処理によりシフトダウンが実行される。
【0025】
ステップ7では、現変速段が5L以上の高速段であるか否かが判定される。そして、現変速段が5L以上の高速段であればステップ8へと進み(Yes)、現変速段が5L未満の低速段であればステップ10へと進む(No)。
【0026】
ステップ8では、現変速段が6L以下であるか否か、即ち、シフトアップを実行可能な変速段であるか否かが判定される。そして、現変速段が6L以下であればステップ9へと進み(Yes)、多段変速機14を6Hに1段シフトアップすべく、電磁弁28が作動される。一方、現変速段が6Lより大(6H)であれば、シフトアップが実行できないので処理を終了する(No)。
【0027】
ステップ10では、現変速段が4H以下の低速段であることを前提とし、シフトレバー44からの信号に基づいて、12段変速スイッチ44AがONになっているか否かが判定される。そして、12段変速スイッチ44AがONになっていればステップ11へと進み(Yes)、多段変速機14を1段シフトアップすべく、電磁弁28が作動される。一方、12段変速スイッチ44AがOFFになっていればステップ12へと進む(No)。
【0028】
ステップ12では、現変速段が4Hであるか否かが判定される。そして、現変速段が4Hであればステップ13へと進み(Yes)、多段変速機14を5Lに1段シフトアップすべく、電磁弁28が作動される。一方、現変速段が4Hではない、即ち、1L〜4Lであればステップ14へと進み(No)、多段変速機14を2段シフトアップすべく、電磁弁28が作動される。
【0029】
ステップ15では、現変速段が5L以上の高速段であるか否かが判定される。そして、現変速段が5L以上の高速段であればステップ16へと進み(Yes)、現変速段が5L未満の低速段であればステップ23へと進む(No)。
【0030】
ステップ16では、現変速段が5Lであるか否かが判定される。そして、現変速段が5Lであればステップ17へと進み(Yes)、高速段から低速段へのシフトダウンに伴う処理が実行される。一方、現変速段が5Lでなければステップ22へと進み(No)、多段変速機14を1段シフトダウンすべく、電磁弁28が作動される。
【0031】
ステップ17では、シフトレバー44からの信号に基づいて、12段変速スイッチ44AがONになっているか否かが判定される。そして、12段変速スイッチ44AがONになっていればステップ18へと進み(Yes)、多段変速機14を5Lから4Hに1段シフトダウンすべく、電磁弁28が作動される。一方、12段変速スイッチ44AがOFFになっていればステップ19へと進む(No)。
【0032】
ステップ19では、フラグが1に設定されているか否か、即ち、低速段から高速段にシフトアップするときに、スプリッタがHに切り換えられていたか否かが判定される。そして、フラグが1に設定されていればステップ20へと進み(Yes)、多段変速機14を5Lから4Hに1段シフトダウンすべく、電磁弁28が作動される。一方、フラグが0に設定されていればステップ21へと進み(No)、多段変速機14を5Lから4Lに2段シフトダウンすべく、電磁弁28が作動される。
【0033】
ステップ23では、現変速段が4H以下の低速段であることを前提とし、シフトレバー44からの信号に基づいて、12段変速スイッチ44AがONになっているか否かが判定される。そして、12段変速スイッチ44AがONになっていればステップ24へと進み(Yes)、多段変速機14を1段シフトダウンすべく、電磁弁28が作動される。一方、12段変速スイッチ44AがOFFになっていればステップ25へと進み(No)、多段変速機14を2段シフトダウンすべく、電磁弁28が作動される。
【0034】
かかる変速制御によれば、12段変速スイッチ44AがON、即ち、スプリッタを作動させて12段変速とするときには、図4(A)に示すように、1L〜6Hの全域に亘って1段飛びに変速が実行される。このため、積荷重量が重いときであっても、各ギヤ比がクロスした多段変速機14を最大限に活用して、燃焼効率が良好な運転状態での運行ができる。
【0035】
一方、12段変速スイッチ44AがOFFであるときには、同図(B)に示すように、加減速で多用されるギヤ比が近接する低速段(1L〜4H)では2段飛びに変速が実行されると共に、巡航走行で多用されるギヤ比が離れている高速段(5L〜6H)では1段飛びに変速が実行される。このため、12段変速スイッチ44AがOFFになっていても、高速段では1段飛びに変速が実行されることから、燃焼効率が良好な運転領域での運行が可能となり、燃費低下を抑制することができる。また、低速段では2段飛びに変速が実行されることから、発進直後の加速時にエンジンが許容回転速度に短時間で到達することがなく、シフト操作が忙しくなってしまうことが防止される。さらに、加速と巡航走行とに応じて、12段変速スイッチ44Aを切り換えながら走行する必要がなく、スイッチ操作の煩わしさも発生しない。
【0036】
ところで、低速段から高速段へシフトアップされるときに、スプリッタの切り換え状態がフラグにセットされる。そして、高速段から低速段へシフトダウンされるときに、フラグのセット状態に応じて、スプリッタをH又はLのどちらに切り換えるべきであるかが決定される。このため、12段変速スイッチ44AをOFFにしているときには、シフトアップとシフトダウンとで同じ変速パターンを辿ることとなり、運転者の意思を尊重した変速制御を実行することができる。
【0037】
なお、以上の説明では、1L〜4Hを低速段、5L〜6Hを高速段としたが、多段変速機14のギヤ比によっては、他の変速段で低速段と高速段とが区画される。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、副変速機による切り換えを行う指定がなされているときには、各ギヤ比がクロスした多段変速機を最大限に活用して、燃焼効率が良好な運転状態での運行を行うことができる。一方、副変速機による切り換えを行う指定がなされていないときには、高速段では1段飛びに変速が実行されることから、燃焼効率が良好な運転領域での運行が可能となり、燃費低下を抑制することができる。また、低速段では2段飛びに変速が実行されることから、発進直後の加速時にエンジンが許容回転速度に短時間で到達することがなく、シフト操作が忙しくなってしまうことが防止される。
【0039】
このとき、副変速機による切り換えを行う指定がなされていないときであっても、シフトアップとシフトダウンとで同じ変速パターンを辿ることとなり、運転者の意思を尊重した変速制御を実行することができる。
【0040】
請求項2記載の発明によれば、多段変速機を手動で変速するものにおいても、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る多段変速機の制御装置を備えた車両構成図
【図2】 同上の制御内容を示すフローチャート
【図3】 同上の制御内容を示すフローチャート
【図4】 同上の変速パターンを示し、(A)は12段変速スイッチがONのときの説明図、(B)は12段変速スイッチがOFFのときの説明図
【符号の説明】
14 多段変速機
26 変速機コントロールユニット
28 電磁弁
30 メインアクチュエータ
32 スプリッタアクチュエータ
34 メインポジションセンサ
36 スプリッタポジションセンサ
44 シフトレバー
44A 12段変速スイッチ
Claims (2)
- 主変速機の各変速段を副変速機により高又は低に切り換える多段変速機の制御装置であって、
前記副変速機による切り換えを行うか否かを指定する指定手段と、
前記指定手段により切り換えを行う指定がなされたときに、前記多段変速機を1段飛びに変速する第1の変速制御手段と、
前記指定手段により切り換えを行う指定がなされないときに、加減速で多用されるギヤ比が近接する低速段では多段変速機を2段飛びに変速する一方、巡航走行で多用されるギヤ比が離れている高速段では多段変速機を1段飛びに変速する第2の変速制御手段と、
を含んで構成され、
前記第2の変速制御手段は、前記多段変速機を低速段から高速段にシフトアップするときの副変速機の切り換え状態を記憶し、前記多段変速機を高速段から低速段にシフトダウンするときに、記憶した状態に副変速機を切り換えることを特徴とする多段変速機の制御装置。 - 前記第1の変速制御手段及び第2の変速制御手段は、夫々、変速指示が入力されるシフトレバーの操作に応じて多段変速機を変速することを特徴とする請求項1記載の多段変速機の制御装置。
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