JP2012002319A - 車両用自動変速機の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】レンジホールドタイプのシーケンシャルシフトの特性を活かしつつスポーティなマニュアル変速を実現する車両用自動変速機の制御装置を提供する。
【解決手段】車速V及びアクセル開度ACCに応じて自動変速機16の変速比を定める2種類の変速線図を記憶する記憶装置22を備え、手動操作によるレンジの切替が指示された時点において、車速V及びアクセル開度ACCが変速線図に係る畳み込み領域に含まれる場合には自動変速機16の変速を実行するものであり、且つその自動変速機16の変速判断の基準となる変速線図の種類をアクセル開度ACCに応じて切り替えるものであることから、変速範囲の上限を上げる手動操作が行われた場合にアップ変速が行われるように変速線図を切り替える一方、その後適宜変速線図を復帰させることにより、キックダウン変速等のイージードライブ性を保証することができる。
【選択図】図7
【解決手段】車速V及びアクセル開度ACCに応じて自動変速機16の変速比を定める2種類の変速線図を記憶する記憶装置22を備え、手動操作によるレンジの切替が指示された時点において、車速V及びアクセル開度ACCが変速線図に係る畳み込み領域に含まれる場合には自動変速機16の変速を実行するものであり、且つその自動変速機16の変速判断の基準となる変速線図の種類をアクセル開度ACCに応じて切り替えるものであることから、変速範囲の上限を上げる手動操作が行われた場合にアップ変速が行われるように変速線図を切り替える一方、その後適宜変速線図を復帰させることにより、キックダウン変速等のイージードライブ性を保証することができる。
【選択図】図7
Description
本発明は、車両用自動変速機の制御装置に関し、特に、レンジホールドタイプのシーケンシャルシフトの特性を活かしつつスポーティなマニュアル変速を実現するための改良に関する。
自動変速機において成立可能な変速範囲をそれぞれ制限する複数のレンジを手動操作に応じて切り換えるレンジホールドタイプのシーケンシャルシフトを実行する車両用自動変速機の制御装置が知られている。また、斯かる車両用自動変速機の制御装置において、運転者の運転指向に適合した変速線図に切り替える技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載された車両用自動変速機の変速制御装置がそれである。この技術によれば、運転者の手動操作が判定されることに基づいて運転が加速指向であることが判定された場合、複数種類の変速線図から前記判定された運転指向に対応する変速線図が選択されてそれに切り替えられることで、運転者の運転指向に適合した変速制御を実現することができるとされている。
ところで、レンジホールドタイプのシーケンシャルシフトを実行する車両用自動変速機の制御装置において、前記手動操作によるレンジの切替が指示された時点において、車速及び駆動力要求量が前記変速線図に係る畳み込み領域に含まれる場合には前記自動変速機の変速を実行するものが知られている。しかし、前述したような従来の技術による制御では、例えば変速範囲の上限を上げる手動操作が行われた場合にアップ変速が行われないことが考えられ、スポーツ走行には向かないという不具合があった。一方、変速線図を低速側に移行させた場合、手動操作に対する応答性は向上するが、例えばキックダウン変速等のイージードライブ性が低下させられる結果となる。このため、レンジホールドタイプのシーケンシャルシフトの特性を活かしつつスポーティなマニュアル変速を実現する車両用自動変速機の制御装置の開発が求められていた。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、レンジホールドタイプのシーケンシャルシフトの特性を活かしつつスポーティなマニュアル変速を実現する車両用自動変速機の制御装置を提供することにある。
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、自動変速機において成立可能な変速範囲をそれぞれ制限する複数のレンジを手動操作に応じて切り換えるレンジホールドタイプのシーケンシャルシフトを実行する車両用自動変速機の制御装置であって、車速及び駆動力要求量に応じて前記自動変速機の変速比を定める2種類の変速線図を記憶する記憶装置を備え、前記手動操作によるレンジの切替が指示された時点において、車速及び駆動力要求量が前記変速線図に係る畳み込み領域に含まれる場合には前記自動変速機の変速を実行するものであり、且つその自動変速機の変速判断の基準となる変速線図の種類を駆動力要求量に応じて切り替えることを特徴とするものである。
このようにすれば、車速及び駆動力要求量に応じて前記自動変速機の変速比を定める2種類の変速線図を記憶する記憶装置を備え、前記手動操作によるレンジの切替が指示された時点において、車速及び駆動力要求量が前記変速線図に係る畳み込み領域に含まれる場合には前記自動変速機の変速を実行するものであり、且つその自動変速機の変速判断の基準となる変速線図の種類を駆動力要求量に応じて切り替えるものであることから、変速範囲の上限を上げる手動操作が行われた場合にアップ変速が行われるように変速線図を切り替える一方、その後適宜変速線図を復帰させることにより、キックダウン変速等のイージードライブ性を保証することができる。すなわち、レンジホールドタイプのシーケンシャルシフトの特性を活かしつつスポーティなマニュアル変速を実現する車両用自動変速機の制御装置を提供することができる。
ここで、好適には、前記手動操作によるレンジの切替が指示された時点における駆動力要求量が予め定められた閾値以上である場合には、前記自動変速機の変速判断の基準として前記記憶装置に記憶された2種類の変速線図のうち低速側の変速線図を選択するものである。このようにすれば、変速範囲の上限を上げる手動操作が行われた場合にアップ変速が行われるように変速線図を切り替えることにより、スポーティなマニュアル変速を実現することができる。
また、好適には、前記自動変速機の変速判断の基準として前記記憶装置に記憶された2種類の変速線図のうち低速側の変速線図が選択された場合において、駆動力要求量が高速側の変速線図におけるアップ線よりも低い領域に含まれることとなった場合には、前記自動変速機の変速判断の基準として前記記憶装置に記憶された2種類の変速線図のうち高速側の変速線図を選択するものである。このようにすれば、手動操作に応じたスポーティな変速が行われた後に、実用的な態様で変速線図を復帰させることができる。
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明が好適に適用される車両の駆動装置10及びその制御系統を説明する図である。この図1に示す駆動装置10は、エンジン12と、トルクコンバータ14と、自動変速機16とを、備えて構成されており、走行用の駆動力源(主動力源)である上記エンジン12と図示しない一対の駆動輪との間に設けられて、そのエンジン12から出力される動力を駆動装置の他の一部を構成する差動歯車装置等を順次介して斯かる一対の駆動輪へ伝達する動力伝達装置である。
上記エンジン12は、例えば、気筒内噴射される燃料の燃焼によって駆動力を発生させるガソリンエンジン或いはディーゼルエンジン等の内燃機関である。また、上記トルクコンバータ14は、上記エンジン12のクランク軸に連結されたポンプ翼車、及び出力側部材に相当するタービン軸を介して上記自動変速機16に連結されたタービン翼車を備えており、流体を介して動力伝達を行う流体式動力伝達装置である。また、それらポンプ翼車及びタービン翼車の間には、その係合により上記ポンプ翼車及びタービン翼車を一体回転させるように構成された直結クラッチが設けられている。また、上記自動変速機16は、例えば、複数の油圧式摩擦係合装置を備えて構成され、油圧制御回路18から供給される油圧に応じてそれぞれ所定の変速比γに相当する複数の変速段(変速ギヤ段)が選択的に成立させられる有段式の自動変速機構(オートマチックトランスミッション)であり、予め定められた複数(例えば、第1速〜第4速)の前進変速段、後進変速段、及びニュートラルのうち何れかが選択的に成立させられ、それぞれの変速比γに応じた速度変換が成されるように構成されている。
また、図1に示すように、前記駆動装置10には、前記エンジン12の出力制御や前記自動変速機16の変速制御等、前記駆動装置10に関する各種制御を行うための電子制御装置20が備えられている。この電子制御装置20は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、予め記憶装置22に記憶された関係から車両の各種状態に基づいて、前記エンジン12の出力制御や、上記油圧制御回路18を介しての前記自動変速機16の変速制御等の各種制御を実行するように構成されており、必要に応じて前記エンジン12の制御用と前記自動変速機16の制御用等に分けて構成される。
また、図1に示すように、上記電子制御装置20には、車両の各部に設けられてその車両の状態を示す各種センサからの信号が入力されるようになっている。すなわち、車速センサ24により検出された前記自動変速機16の出力回転速度に対応する車速Vを表す車速信号、アクセル開度センサ26により検出される図示しないアクセルペダルの操作量(踏込量)に対応するアクセル開度ACCを表すアクセル開度信号、スロットルセンサ28により検出される図示しない電子スロットル弁の開度θTHを表すスロットル開度信号、吸入空気量センサ30により検出される実際の吸入空気量aを表す吸入空気量信号、及びシフトポジションセンサ36により検出されるシフト操作装置32におけるシフトレバー34の操作位置すなわちシフトポジションPSHを表す信号等が供給されるようになっている。なお、本実施例においては、シーケンシャルシフトを実行するための操作装置としてシフトレバー34を有するシフト操作装置32を備えた構成について説明するが、例えばパドルシフト型の装置等、他の構成によりシーケンシャルシフトを実行するものであっても構わない。
また、前記電子制御装置20からは、車両の各部における作動を制御するための信号が出力されるようになっている。すなわち、前記エンジン12の出力制御のためのエンジン出力制御指令信号SEとして、例えば、図示しない電子スロットル弁の開閉を制御するためのスロットルアクチュエータを駆動するスロットル信号、燃料噴射装置から噴射される燃料の量を制御するための噴射信号、及び点火装置による前記エンジン12の点火時期を制御するための点火時期信号等が出力される。また、前記自動変速機16の変速制御を行うために、前記油圧制御回路18を介してその自動変速機16に備えられた油圧アクチュエータの駆動を制御するための制御信号が出力される。
図2は、複数種類のシフトポジションPSHを人為的操作により切り換えるシフト操作装置32の一例を示す図である。このシフト操作装置32は、例えば運転席の近傍に配設され、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー34を備えている。斯かるシフトレバー34は、前記駆動装置10内すなわち前記自動変速機16内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ前記自動変速機16の出力軸をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、前記駆動装置10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とするための中立ポジション「N(ニュートラル)」、前記自動変速機16において第1速ギヤ段乃至第4速の前進ギヤ段を選択的に成立させる前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、又は手動変速走行モード(手動モード)を成立させて前記自動変速機16における高速側の変速段を制限する所謂変速レンジを設定するための前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。前記駆動装置10においては、前記シフトレバー34の各シフトポジションPSHへの手動操作に連動して前記自動変速機16の後進ギヤ段「R」、ニュートラル「N」、前進ギヤ段「D」における各変速段等が成立するように、例えば前記油圧制御回路18に備えられた電磁制御弁等が電気的に切り換えられる。
上記「M」ポジションには、前記シフトレバー34の操作毎に変速レンジをアップ側にシフトさせるためのアップシフト位置「+」、そのシフトレバー34の操作毎に変速レンジをダウン側にシフトさせるためのダウンシフト位置「−」が備えられている。アップシフト位置「+」及びダウンシフト位置「−」は何れも不安定で、前記シフトレバー34はスプリング等の付勢手段により自動的に「M」ポジションへ戻されるようになっており、アップシフト位置「+」又はダウンシフト位置「−」への操作回数或いは保持時間等に応じて変速レンジが変更される。すなわち、前記自動変速機16における変速レンジとして、第4速ギヤ段「4th」以下の前進ギヤ段で変速制御が行われる4レンジ、第3速ギヤ段「3rd」以下の前進ギヤ段で変速制御が行われる3レンジ、第2速ギヤ段「2nd」以下の前進ギヤ段で変速制御が行われる2レンジ、及び第1速ギヤ段「1st」に固定されるLレンジが定められており、上記「M」ポジションにおいては前記シフトレバー34の操作に応じてそれら4レンジ、3レンジ、2レンジ、及びLレンジの何れかが選択的に成立させられるようになっている。
換言すれば、前記駆動装置10では、前記自動変速機16において成立可能な変速範囲をそれぞれ制限する複数のレンジを前記「M」ポジションにおける前記シフトレバー34の手動操作(マニュアル操作)に応じて切り換えるレンジホールドタイプのシーケンシャルシフトが実行される。例えば、前記自動変速機16において第1速ギヤ段から第4速ギヤ段までを選択的に成立させる4レンジが成立している状態において、前記シフトレバー34がダウンシフト位置「−」へ1回操作されると、変速レンジが前記自動変速機16において第1速ギヤ段から第3速ギヤ段までを選択的に成立させる3レンジに切り換えられる。また、前記自動変速機16において第1速ギヤ段又は第2速ギヤ段を選択的に成立させる2レンジが成立している状態において、前記シフトレバー34がアップシフト位置「+」へ2回操作されると、変速レンジが前記自動変速機16において第1速ギヤ段から第4速ギヤ段までを選択的に成立させる4レンジに切り換えられる。また、前記自動変速機16において第4速ギヤ段が成立しており且つ4レンジが成立している状態において、前記シフトレバー34がダウンシフト位置「−」へ1回操作されると、変速レンジが3レンジに切り換えられて第3速ギヤ段「3rd」へ強制的にダウンシフトさせられる。すなわち、前記シフト操作装置32における「M」ポジションにおいては、運転者の手動操作(マニュアル操作)により前記自動変速機16におけるギヤ段を変更することができる。
図3は、前記電子制御装置20に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。この図3に示す変速制御手段40は、予め定められた関係から車両の状態に基づいて前記自動変速機16の変速制御を実行する。例えば、予め定められて前記記憶装置22に記憶された変速マップから、前記車速センサ24により検出される車速V及び駆動力要求量に基づいて、前記自動変速機16において成立させられるべき変速段を判定し、その変速段が成立させられるように前記自動変速機16へ供給される油圧を制御する。具体的には、前記油圧制御回路18に備えられた電子制御弁の作動(出力油圧)を制御することで、その油圧制御回路18から前記自動変速機16における各油圧アクチュエータへ供給される油圧を制御する。ここで、上記駆動力要求量とは、前記アクセル開度センサ26により検出されるアクセル開度ACC、前記スロットルセンサ28により検出されるスロットル弁開度θTH、或いはそのアクセル開度ACCから算出される目標出力トルクTOUT等であり、運転者による図示しないアクセルペダルの踏込操作量等に応じた値である。
図4は、前記記憶装置22に記憶された前記自動変速機16の変速制御に係る変速線図を例示する図である。この図4に示すように、本実施例の駆動装置10においては、車速V及び駆動力要求量としてのアクセル開度ACCに応じて前記自動変速機16の変速比を定める2種類の変速線図が前記記憶装置22に記憶されている。すなわち、第1の変速線図として実線で示すマニュアル変速時の低速側変速線と、第2の変速線図として破線で示す通常時の高速側変速線(ノーマル変速線)とが各ギヤ段の間の変速を定める関係として記憶されている。この図4に示す変速線図は、例えば、前記自動変速機16における第3速ギヤ段と第4速ギヤ段との間の変速を定める関係(第3速ギヤ段から第4速ギヤ段へのアップ変速を定めるアップ変速線及び第4速ギヤ段から第3速ギヤ段へのダウン変速を定めるダウン変速線)に相当するものであり、第1の変速線図においては第2の変速線図よりも低速側で変速が行われるように設定されている。すなわち、第1の変速線図では、少なくともその一部において第2の変速線図よりも低い車速Vに対応して変速が行われるように、各ギヤ段の間の変速を定めるアップ変速線及びダウン変速線が設定されている。
前記変速制御手段40は、前記シフト操作装置32の操作により変速レンジの切替が指示された時点において、車速V及び駆動力要求量が前記記憶装置22に記憶された変速線図に係る畳み込み領域に含まれる場合には前記自動変速機16の変速を実行する。例えば、前記シフトレバー34が「M」ポジションからアップシフト位置「+」へ操作された時点において、前記車速センサ24により検出される車速V及び前記アクセル開度センサ26により検出される駆動力要求量としてのアクセル開度ACCが、後述する図5乃至図6に示すような畳み込み領域に含まれる場合には、前記自動変速機16のアップ変速を実行する。換言すれば、車速V及びアクセル開度ACCが変速線図におけるアップ変速線を超えない場合であっても、それら車速V及びアクセル開度ACCが上記畳み込み領域に含まれる場合には、前記自動変速機16のアップ変速を実行する。
図5及び図6は、前記シフト操作装置32の操作により変速レンジの切替が指示された場合における変速制御に係る畳み込み領域について説明する図であり、図5は通常時の変速線図(図4に破線で示す第2の変速線図)に係る畳み込み領域を、図6はマニュアル用の変速線図(図4に実線で示す第1の変速線図)に係る畳み込み領域をそれぞれ斜線範囲で示している。これらの図に示すように、本実施例では、各変速線図においてアップ変速線とダウン変速線との間に挟まれた領域がその変速線図に係る変速(例えば第3速ギヤ段と第4速ギヤ段との間の変速)に対応する畳み込み領域に相当する。すなわち、車速Vによって定まる駆動力要求量としてのアクセル開度ACCがこの畳み込み領域に含まれる場合には前記自動変速機16の変速を実行する。なお、図5及び図6から、マニュアル用の変速線図に係る畳み込み領域は、通常時の変速線図に係る畳み込み領域よりも特に車速V方向に関して領域の幅が狭いことがわかる。
図3に戻って、変速線図選択手段42は、前記シフト操作装置32の操作により変速レンジの切替が指示された時点において、前記自動変速機16の変速判断の基準となる変速線図の種類を駆動力要求量に応じて切り替える。例えば、前記シフトレバー34が「M」ポジションからアップシフト位置「+」へ操作された時点において、前記アクセル開度センサ26により検出される駆動力要求量としてのアクセル開度ACCに応じて、前記記憶装置22に記憶された2種類の変速線図すなわち図4に実線で示す第1の変速線図及び破線で示す第2の変速線図の何れかを変速判断の基準として選択する。なお、上記変速線図選択手段42は、通常時すなわち特に変速線図の切り替えを行わない場合においては、図4に破線で示す第2の変速線図すなわち通常時の変速線図(ノーマル変速線)を前記自動変速機16の変速判断の基準として選択する。
上記変速線図選択手段42は、好適には、前記シフト操作装置32の操作により変速レンジの切替が指示された時点における駆動力要求量としてのアクセル開度ACCが予め定められた閾値a以上である場合には、前記自動変速機16の変速判断の基準として低速側の変速線図すなわち図4に実線で示すマニュアル用の変速線図を選択する。図7は、この変速線図の選択の基準となる閾値a及びノーマル変速線への復帰条件について説明する図である。上記変速線図選択手段42は、好適には、前記シフト操作装置32の操作により変速レンジの切替が指示された時点におけるアクセル開度ACCが図7に示す閾値a以上である場合には、実線で示す低速側のマニュアル用の変速線図を選択する。この閾値aは、それ以上の領域が高開度領域となる値であって、例えば図示しないアクセルペダルを踏み込んでも駆動力の上昇が飽和して向上しないような領域である。斯かる制御により、例えば、前記シフトレバー34が「M」ポジションからアップシフト位置「+」へ操作された時点において、車速V及びアクセル開度ACCが図7に左上から右下への斜線範囲で示す領域Aに含まれる場合には、新たに選択されたマニュアル用の変速線図におけるアップ変速線を超えているため、前記変速制御手段40により前記自動変速機16のアップ変速が実行される。また、上記操作時点において、車速V及びアクセル開度ACCがマニュアル用の変速線図に係る畳み込み領域すなわちダウン変速線及びアップ変速線の間にある場合も同様に、前記変速制御手段40により前記自動変速機16のアップ変速が実行される。
また、前記変速線図選択手段42は、好適には、前記自動変速機16の変速判断の基準として前記記憶装置22に記憶された2種類の変速線図のうち低速側の変速線図が選択された場合において、駆動力要求量が高速側の変速線図におけるアップ線よりも低い領域に含まれることとなった場合には、前記自動変速機16の変速判断の基準として前記記憶装置22に記憶された2種類の変速線図のうち高速側の変速線図を選択する。すなわち、上述のように前記シフト操作装置32の操作により変速レンジの切替が指示された時点におけるアクセル開度ACCが図7に示す閾値a以上であって実線で示す低速側のマニュアル用の変速線図が選択された後、車速Vによって定まる駆動力要求量としてのアクセル開度ACCが高速側の変速線図すなわち図7に破線で示す通常時の変速線図におけるアップ線よりも低い領域すなわち図7に右上から左下への斜線範囲で示す領域Bに含まれることとなった場合には、前記自動変速機16の変速判断の基準を通常時の変速線図(ノーマル変速線図)に復帰させる。
以上のような本実施例の制御によれば、レンジホールドタイプのシーケンシャルシフトの特性を活かしつつスポーティなマニュアル変速を実現することができる。すなわち、従来の制御においては、例えば、前記シフトレバー34が「M」ポジションからアップシフト位置「+」へ操作された時点において、車速V及びアクセル開度ACCが図7に示す領域Aにある場合、変速線図(破線で示す通常時の変速線図)のアップ変速線を超えておらず且つダウン変速線とアップ変速線との間の畳み込み領域にも含まれないため、変速範囲をアップ方向へ拡大する操作が行われているにもかかわらずアップ変速が行われなかった。一方、本実施例の制御によれば、前記シフトレバー34が「M」ポジションからアップシフト位置「+」へ操作された時点において、車速V及びアクセル開度ACCが図7に示す領域Aにある場合には、低速側の変速線図が選択されることにより前記自動変速機16のアップ変速が実行され、運転者の意思が好適に変速動作に反映される。
ここで、前記シフトレバー34の操作に応じたアップ変速が実行された後も低速側のマニュアル用の変速線図が前記自動変速機16の変速の基準とされ続けた場合を考える。例えば、図示しないアクセルペダルが急速に踏込操作された場合、高速側の通常時の変速線図を基準とする変速制御ではそのアクセルの踏込操作に応じたダウン変速すなわち所謂キックダウン変速が実行されるが、マニュアル用の変速線図を基準とした変速制御では斯かるキックダウン変速が実行されないおそれがある。そこで、前記シフトレバー34の操作に応じてマニュアル用の変速線図が選択された後、車速Vによって定まる駆動力要求量としてのアクセル開度ACCが高速側の変速線図すなわち図7に破線で示す通常時の変速線図におけるアップ線よりも低い領域すなわち領域Bに含まれることとなった場合には、前記自動変速機16の変速判断の基準を通常時の変速線図に復帰させることで、キックダウン変速等のイージードライブ性を保証することができる。
図8は、前記電子制御装置20による前記シフトレバー34の操作に応じたシーケンシャルシフト制御の要部について説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、前記アクセル開度センサ26により検出されるアクセル開度ACCが予め定められた閾値aよりも大きいか否かが判断される。このS1の判断が否定される場合には、S4以下の処理が実行されるが、S1の判断が肯定される場合には、S2において、前記シフトレバー34が「M」ポジションからアップシフト位置「+」へ操作されたか否かが判断される。このS2の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、S2の判断が肯定される場合には、S3において、前記自動変速機16の変速判断の基準として低速側の変速線図であるマニュアル用の変速線図が選択(切替)された後、本ルーチンが終了させられる。S4においては、前記アクセル開度センサ26により検出されるアクセル開度ACCが高速側の変速線図すなわち通常時の変速線図におけるアップ線よりも低い領域Bに含まれるか否かが判断される。このS4の判断が肯定される場合には、S5において、前記自動変速機16の変速判断の基準として高速側の変速線図である通常時の変速線図が選択(切替)された後、本ルーチンが終了させられるが、S4の判断が否定される場合には、S6において、前記自動変速機16の変速判断の基準としてその時点で選択されている変速線図が維持された後、本ルーチンが終了させられる。以上の制御において、S3、S5、及びS6が前記変速線図選択手段42の動作に対応する。
このように、本実施例によれば、車速V及び駆動力要求量としてのアクセル開度ACCに応じて前記自動変速機16の変速比を定める2種類の変速線図を記憶する記憶装置22を備え、前記手動操作によるレンジの切替が指示された時点において、車速V及びアクセル開度ACCが前記変速線図に係る畳み込み領域に含まれる場合には前記自動変速機16の変速を実行するものであり、且つその自動変速機16の変速判断の基準となる変速線図の種類をアクセル開度ACCに応じて切り替えるものであることから、変速範囲の上限を上げる手動操作が行われた場合にアップ変速が行われるように変速線図を切り替える一方、その後適宜変速線図を復帰させることにより、キックダウン変速等のイージードライブ性を保証することができる。すなわち、レンジホールドタイプのシーケンシャルシフトの特性を活かしつつスポーティなマニュアル変速を実現する車両用自動変速機16の制御装置を提供することができる。
また、前記手動操作によるレンジの切替が指示された時点におけるアクセル開度ACCが予め定められた閾値a以上である場合には、前記自動変速機16の変速判断の基準として前記記憶装置22に記憶された2種類の変速線図のうち低速側の変速線図を選択するものであるため、変速範囲の上限を上げる手動操作が行われた場合にアップ変速が行われるように変速線図を切り替えることにより、スポーティなマニュアル変速を実現することができる。
また、前記自動変速機16の変速判断の基準として前記記憶装置22に記憶された2種類の変速線図のうち低速側の変速線図が選択された場合において、アクセル開度ACCが高速側の変速線図におけるアップ線よりも低い領域に含まれることとなった場合には、前記自動変速機16の変速判断の基準として前記記憶装置22に記憶された2種類の変速線図のうち高速側の変速線図を選択するものであるため、手動操作に応じたスポーティな変速が行われた後に、実用的な態様で変速線図を復帰させることができる。
また、スポーティなマニュアル変速に対応した変速制御装置とイージードライブを実現するための変速に対応した変速制御装置とを切り分ける必要がないため、電子制御部品種類が増加することによるコストアップを好適に抑制できるという利点がある。
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
16:自動変速機
22:記憶装置
22:記憶装置
Claims (3)
- 自動変速機において成立可能な変速範囲をそれぞれ制限する複数のレンジを手動操作に応じて切り換えるレンジホールドタイプのシーケンシャルシフトを実行する車両用自動変速機の制御装置であって、
車速及び駆動力要求量に応じて前記自動変速機の変速比を定める2種類の変速線図を記憶する記憶装置を備え、
前記手動操作によるレンジの切替が指示された時点において、車速及び駆動力要求量が前記変速線図に係る畳み込み領域に含まれる場合には前記自動変速機の変速を実行するものであり、且つ該自動変速機の変速判断の基準となる変速線図の種類を駆動力要求量に応じて切り替えるものであることを特徴とする車両用自動変速機の制御装置。 - 前記手動操作によるレンジの切替が指示された時点における駆動力要求量が予め定められた閾値以上である場合には、前記自動変速機の変速判断の基準として前記記憶装置に記憶された2種類の変速線図のうち低速側の変速線図を選択するものである請求項1に記載の車両用自動変速機の制御装置。
- 前記自動変速機の変速判断の基準として前記記憶装置に記憶された2種類の変速線図のうち低速側の変速線図が選択された場合において、駆動力要求量が高速側の変速線図におけるアップ線よりも低い領域に含まれることとなった場合には、前記自動変速機の変速判断の基準として前記記憶装置に記憶された2種類の変速線図のうち高速側の変速線図を選択するものである請求項1又は2に記載の車両用自動変速機の制御装置。
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JP2010139966A JP2012002319A (ja) | 2010-06-18 | 2010-06-18 | 車両用自動変速機の制御装置 |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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DE102013202951A1 (de) | 2012-02-24 | 2013-08-29 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Gangschaltanweisungsvorrichtung und Gangschaltanweisungsverfahren |
CN110001616A (zh) * | 2017-12-28 | 2019-07-12 | 本田技研工业株式会社 | 车辆的控制装置 |
CN110939727A (zh) * | 2019-12-30 | 2020-03-31 | 盛瑞传动股份有限公司 | 一种手自一体自动变速器手动模式下换挡提示方法 |
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2010
- 2010-06-18 JP JP2010139966A patent/JP2012002319A/ja active Pending
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