(第1の実施の形態)
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図1〜図17に従って説明する。
図1(a)及び図2(a)に示すように、厚さ方向糸挿入装置1は積層糸群送り部2、厚さ方向糸供給部3(図1(a)にのみ図示)、厚さ方向糸張力付与部4、穿孔針駆動部5、厚さ方向糸挿入針駆動部6、積層糸群押圧部7、抜け止め糸挿入部8及び抜け止め糸供給部9(図2(a)にのみ図示)を備えている。積層糸群送り部2は積層糸群Fを支持した移送テーブル10を複数(この実施の形態では3個)同時に配置可能に構成されている。厚さ方向糸供給部3は、特開平10−325043号公報に開示されたものと同様に、厚さ方向糸zが巻かれた各ボビンをモータにより滑り伝達手段を介して厚さ方向糸zの巻き戻し方向に回転させる機構を備え、各ボビンから供給される厚さ方向糸zに所定の張力を付与することが可能に構成されている。
図2(a)、図5及び図6等に示すように、積層糸群送り部2は機台フレーム11の長手方向に沿ってほぼ全長に亘って延びる左右一対の支持レール12a,12bを備えている。支持レール12a,12bは支持ブラケット13を介して機台フレーム11に固定されている。移送テーブル10はほぼ長方形の枠状に形成されたテーブル本体14を備え、その左右両側(図6における左右両側)に装備された複数(この実施の形態では6個)の走行輪14aを介して支持レール12a,12b上に移動可能に支承されている。支持レール12a,12bが移送テーブル10をその配列方向に沿って移動可能に案内する移送テーブル案内部を構成する。なお、支持レール12a,12bは図7等に示すように、上部が三角状に尖った断面形状となるように形成され、走行輪14aは外周に形成されたV状の溝が支持レール12a,12bと係合する状態で支持レール12a,12bに支承されている。
テーブル本体14には、積層糸群Fを多数の支持ピン15aによって保持する枠体15が図示しないボルト等の締結手段を介して着脱可能に固定されている。テーブル本体14の前後両側には隣接する移送テーブル10を一体移動可能に連結するための連結部16a,16bが装備されている。図1(b)、図3(a)及び図5に示すように、テーブル本体14の後側(図3(a),図5の右側)に設けられた連結部16aと前側に設けられた連結部16bとはその一部が互いに重ね合わせることが可能な形状に形成され、重畳部にそれぞれ孔17が形成されている。そして、連結部16a,16bが重畳されて孔17に連結ピン18が挿通された状態で、隣接する移送テーブル10同士が連結されるようになっている。なお、図1(b)は連結部分の部分拡大断面図である。
図5、図6及び図7等に示すように、機台フレーム11には、左側に設けられた支持レール12aと対応する位置にガイドレール19が支持レール12aと平行に設けられ、ガイドレール19と平行にボールねじ機構のねじ軸20が設けられている。ねじ軸20の一端には被動プーリ21(図5に図示)が一体回転可能に固定されている。機台フレーム11には被動プーリ21の下方に、図1(a)及び図4に示すように、ブラケット22を介してサーボモータ23が固定されている。サーボモータ23の駆動軸には駆動プーリ24が一体回転可能に固定され、該駆動プーリ24と前記被動プーリ21との間にベルト25が巻き掛けられ、サーボモータ23の駆動により、駆動プーリ24、ベルト25及び被動プーリ21を介してねじ軸20が回転されるようになっている。
ボールねじ機構のボールナット26には、ガイドレール19と対向する側の側面にガイドレール19と係合して摺動可能なガイド部材27が、下面にアクチュエータとしてのエアシリンダ28がそれぞれ装備されている。エアシリンダ28のピストンロッド28aは、テーブル本体14の側壁の前端寄りに形成された係合部としての係合穴14bに係合可能な連結部材を構成する。ピストンロッド28aはエアシリンダ28の駆動により係合穴14bと係合可能な係合位置と、係合不能な退避位置とに移動される。
ねじ軸20はテーブル本体14の長さより長く、かつボールナット26が厚さ方向糸挿入針駆動部6と対向する位置から移送テーブル10の移動方向上流側へテーブル本体14の長さより長い距離、移動方向下流側へはピストンロッド28aが係合穴14bと係合した状態でテーブル本体14の後端が厚さ方向糸挿入針駆動部6と対向する位置より移送テーブル10の移動方向下流側まで移動可能な長さに形成されている。ねじ軸20はサーボモータ23の正転時にボールナット26を図5の左側、即ち移送テーブル10の送り方向へ移動させる方向に回転され、サーボモータ23の逆転時にボールナット26を図5の右側、即ち厚さ方向糸供給部3へ近づく方向へ移動させる方向に回転される。ねじ軸20、ボールナット26、エアシリンダ28、被動プーリ21、駆動プーリ24、ベルト25及びサーボモータ23により、移送テーブル10を厚さ方向糸zの挿入を行うべき積層糸群Fが厚さ方向糸zの挿入位置を順次通過するように所定ピッチずつ移動可能な送り装置が構成されている。
図1(a)及び図2(a)に示すように、穿孔針駆動部5及び厚さ方向糸挿入針駆動部6は機台フレーム11のほぼ中央に、厚さ方向糸挿入針駆動部6が移送テーブル10の移動方向下流側(図1(a)の左側)に位置する状態で隣接して配設されている。穿孔針駆動部5及び厚さ方向糸挿入針駆動部6は機台フレーム11に対してその長手方向に沿って相対移動可能に支持された可動支持フレーム29上に配設されている。
図4及び図6等に示すように、機台フレーム11の上面には一対のレール30が固定され、レール30上にリニアガイドブロック31を介して可動支持フレーム29が、機台フレーム11に対して相対移動可能に支持されている。図3(a)及び図5等に示すように、機台フレーム11には可動支持フレーム29の近傍で可動支持フレーム29より移送テーブル10の移動方向下流側にブラケット32を介して一対のエアシリンダ33が固定されている。可動支持フレーム29はエアシリンダ33のピストンロッド33aに連結され、エアシリンダ33の作動により所定の距離、即ち穿孔針と厚さ方向糸挿入針との取り付けピッチに等しい距離を往復移動可能となっている。なお、図6は厚さ方向糸挿入針駆動部6の概略正面図であり、後方に配置された穿孔針駆動部5や厚さ方向糸張力付与部4等は省略されている。
厚さ方向糸挿入針駆動部6は基本的には本願出願人が先に提案(特開平8−218249号公報等)した装置と同様に構成されている。図6に示すように、可動支持フレーム29には左右一対のレール34が上下方向に延びるように配設され、両レール34間の中央にボールねじ機構のねじ軸35がレール34と平行に配設されている。両レール34にはリニアガイドブロック36がそれぞれ支持され、両リニアガイドブロック36は連結板37により連結されている。連結板37には中央にねじ軸35と螺合するボールナット38が固定され、図8に示すように、ボールナット38の固定位置と反対側に針支持体39が固定されている。針支持体39には厚さ方向糸挿入針(以下、単に挿入針と称す)40が所定ピッチ(例えば数mm間隔)で1列に固定されている。
可動支持フレーム29の側壁上部には支持ブラケット41を介してサーボモータ42が固定されている。サーボモータ42はベルト伝動機構43を介してねじ軸35を正逆回転する。そして、サーボモータ42の駆動により、針支持体39はボールナット38と共に移動して、挿入針40が枠体15に保持された積層糸群Fと係合不能な待機位置と、針孔(図示せず)が積層糸群Fの反対側となる位置まで積層糸群Fを貫通する作用位置(図6に示す状態)とに移動される。サーボモータ42は挿入針40が、積層糸群Fへの進入時、積層糸群Fからの退却時、積層糸群Fに接触していない時のそれぞれに応じた最適速度で移動するように、ねじ軸35を回転させる。即ち、挿入針40が積層糸群Fと接触した状態で移動中は低速で、積層糸群Fと接触しない状態では高速で移動するようにねじ軸35を回転させる。
図5及び図9に示すように、可動支持フレーム29には穿孔針駆動部5の昇降機構を構成する一対のボールねじ・スプライン44が上下方向に延びるように配設されている。ボールねじ・スプライン44は1本の軸45に図示しないボールねじ溝とボールスプライン溝とがクロスして設けられ、それぞれのナットの外周に専用のサポートベアリングがダイレクトに組み込まれた構成で、ボールねじナット46a,46bを回転させることにより軸45が直線運動するようになっている。ボールねじ・スプラインは市販(THK株式会社製)されている。
ボールねじ・スプライン44のボールねじナット46a,46bは可動支持フレーム29の上部に回転可能に支持され、支持ブラケット41寄りに配設された一方のボールねじナット46aにはプーリ47及びプーリ48aが一体回転可能に固定されている。他方のボールねじナット46bにはプーリ48bが一体回転可能に固定され、プーリ48a,48b間にベルト49が巻き掛けられている。また、支持ブラケット41にはサーボモータ42に隣接してサーボモータ50が固定され、サーボモータ50の駆動軸50aに固定された駆動プーリ51と前記プーリ47との間にベルト52が巻き掛けられている。そして、サーボモータ50の駆動により両軸45が同期して昇降するようになっている。
図9に示すように、両軸45の下端間には連結板53が架設され、連結板53に穿孔針支持体54が固定されている。穿孔針支持体54には穿孔針55が挿入針40と同じピッチで1列に固定されている。穿孔針55は軸45の昇降に伴い、連結板53と共に昇降する。穿孔針55の上方には挿入針40に厚さ方向糸zを垂直に延びる状態で導くガイドローラ29aが、可動支持フレーム29の上部間に架設された状態で配設されている。図9は穿孔針駆動部5の概略正面図であり、後方に配置された厚さ方向糸張力付与部4や下方に配置された積層糸群押圧部7等は省略されている。
サーボモータ50は穿孔針55が、積層糸群Fへの進入時、積層糸群Fからの退却時、積層糸群Fに接触していない時のそれぞれに応じた最適速度で移動するように、軸45を回転させる。即ち、穿孔針55が積層糸群Fと接触した状態で移動中は低速で、積層糸群Fと接触しない状態では高速で移動するように軸45を回転させる。
図1(a)及び図3(a)に示すように、厚さ方向糸挿入針駆動部6より移送テーブル10の移動方向上流側には厚さ方向糸張力付与部4が配設されている。厚さ方向糸張力付与部4は厚さ方向糸供給部3から挿入針40に連なる厚さ方向糸zの経路の途中に設けられた張力付与手段56と、張力付与手段56より厚さ方向糸供給部3側に設けられたブレーキ手段57とを備えている。
図3(a)及び図10に示すように、機台フレーム11上には可動支持フレーム29より厚さ方向糸供給部3側に支持フレーム58が立設されている。支持フレーム58は積層糸群Fの幅より広い間隔をおいて配置された支持壁58aを備え、支持壁58aの上部間にガイドローラ59a〜59eが前記ガイドローラ29aと同じ高さで互いに平行に配設されている。厚さ方向糸供給部3寄りに配設された2個のガイドローラ59a,59bの間で両ガイドローラ59a,59bより低い位置にガイドローラ59fが水平に配設されている。
支持壁58aの厚さ方向糸供給部3寄り上端部には支持部58bが上側へ延出され、図10に示すように、両支持部58b間には支持プレート60が架設されている。支持プレート60の両端寄りにはブラケットを介して一対のエアシリンダ61が基端において揺動可能に支持されている。図3及び図10に示すように、各エアシリンダ61の下方にはレバー62が基端において、図示しないブラケットに支持された支軸63(図3に図示)に揺動可能に支持されている。レバー62はその先端がエアシリンダ61のピストンロッド61aに回動可能に連結されている。レバー62には支持部材64が軸65を介して回動可能に支持されている。支持部材64にはガイドローラ59a,59bと対向する位置に、ブレーキバー66が固定されている。各ブレーキバー66にはV溝が形成されるとともに、V溝にゴム等の弾性材が貼付されている。エアシリンダ61、レバー62、支持部材64及びブレーキバー66により、張力付与手段56による張力付与時に作動して厚さ方向糸zをガイドローラ59a,59bと共同で把持するブレーキ手段57が構成されている。
図10に示すように、支持フレーム58間の下部寄りでガイドローラ59c,59dと対応する位置には支持プレート67がガイドレール19と直交する状態で水平に架設され、支持フレーム58の上部と支持プレート67との間に左右一対の直動機構としてのボールねじ機構のねじ軸68a,68bが垂直に配設されている。両ねじ軸68a,68bの下部には歯付プーリ69a,69bが一体回転可能に固定され、両歯付プーリ69a,69b間に歯付ベルト70が巻き掛けられて両ねじ軸68a,68bが同期回転可能に構成されている。支持フレーム58の上方にはブラケット71を介してサーボモータ72が固定され、サーボモータ72の駆動軸に固定された駆動プーリ73aと一方のねじ軸68aの上端に固定された被動プーリ73bとの間にベルト74が巻き掛けられている。
各ねじ軸68a,68bに螺合するボールナット75間には支持板76が架設され、支持板76にエアシリンダ77が固定されている。エアシリンダ77はピストンロッド77aが両ガイドローラ59c,59dの中心を結ぶ直線と交差(この実施の形態では直交)する直線に沿って上側へ向かって延びるように固定されている。ピストンロッド77aの先端に固定された支持ブラケット78には移動ローラ79が、両ガイドローラ59c,59dと平行に支持されている。即ち、移動ローラ79はサーボモータ72により駆動されるボールねじ機構と、エアシリンダ77との2系統の駆動部により両ガイドローラ59c,59d間の厚さ方向糸zの糸長を変更する方向へ往復移動可能に構成されている。ガイドローラ59c,59d、ボールねじ機構、サーボモータ72、エアシリンダ77、移動ローラ79等により張力付与手段56が構成されている。
積層糸群押圧部7は、図8及び図11に示すように、積層糸群Fを挿入針40の進入側から押圧する第1の押圧部80と、反対側から押圧する第2の押圧部81とを備えている。第1の押圧部80を構成する第1のエアシリンダ82は支持フレーム58間に架設された支持プレート83に固定されて穿孔針駆動部5の下部近傍に配設されている。エアシリンダ82はピストンロッド82aが下方に向かって延びるように固定され、ピストンロッド82aの先端にブラケット84を介して第1の押圧部材としてのプレスプレート85が固定されている。プレスプレート85は挿入針40の配列方向に沿って延びる断面L字状の支持部85aと、支持部85aと一体的に形成された櫛歯部85bとを備えている。櫛歯部85bは各櫛歯(図示せず)の両側面に、挿入針40及び穿孔針55をガイドする凹部が形成されている。プレスプレート85は櫛歯部85bで各挿入針40あるいは穿孔針55を挟んだ状態で積層糸群Fを押圧可能となっている。プレスプレート85は枠体15の内側の幅より若干短く形成され、枠体15と係合せずに積層糸群Fを押圧可能となっている。
プレスプレート85は枠体15に保持された積層糸群Fに対して挿入針40の待機位置側において、エアシリンダ82の作動により、積層糸群Fと係合して積層糸群Fを挿入針40列の前進側へ押圧する作用位置と、積層糸群Fと係合不能な待機位置とに移動される。
第1のエアシリンダ82より厚さ方向糸供給部3側にはブラケット86を介してアクチュエータとしてのエアシリンダ87が水平に配設されている。エアシリンダ87のピストンロッド87aには、第1のエアシリンダ82のピストンロッド82aの動作範囲に配置されてピストンロッド82aの没入側への移動を規制するストッパ88が固定されている。ストッパ88はエアシリンダ87の駆動によりピストンロッド82aの動作範囲に出し入れ可能となっている。即ち、プレスプレート85のストロークが複数段階に調整可能となっている。この実施の形態ではストッパ88がピストンロッド82aの動作範囲に配置された状態と、動作範囲から退避した状態の2段階に調整可能となっている。
図11及び図12に示すように、機台フレーム11の左右両側には支持ブラケット13より下方に一対の支持ブラケット89a,89bが固定されている。支持ブラケット89a,89bにはそれぞれボールねじ機構のねじ軸90a,90bと、ガイドロッド91a,91bとが上下方向に延びるように配設されている。両ねじ軸90a,90bの下端に一体回転可能に固定されたプーリ92a,92b間にベルト92cが巻き掛けられている。一方のねじ軸90aの上端にはハンドル93が一体回転可能に固定され、ハンドル93の回動操作により両ねじ軸90a,90bが同期して回動されるようになっている。なお、図11及び図12では、支持フレーム96を昇降可能に支持する部分に関して左右で異なる部分の断面を合成した図となっている。また、図12では第1の押圧部80を省略している。
ねじ軸90a,90bに螺合するボールナット94a,94b及びガイドロット91a,91bに摺動可能に支承されたブロック95とを介して、側面コ字状の支持フレーム96が厚さ方向糸挿入位置の下方で昇降可能に配設されている。支持フレーム96には第2のエアシリンダ97,98が移送テーブル10の移動方向に沿って並んで固定されている。エアシリンダ97,98はピストンロッド97a,98aが上方に向かって延びるように固定され、ピストンロッド97a,98aの先端に第2の押圧部材としての対を成すプレスブロック99a,99bが固定されている。両プレスブロック99a,99bは側面L字状に形成されるとともにプレスプレート85と同じ長さに形成されている。両プレスブロック99a,99bには支持フレーム96を貫通する一対のガイドロッド100がそれぞれ固定されている。両プレスブロック99a,99bはプレスプレート85の櫛歯部85bと対向する位置でかつ、挿入針40又は穿孔針55の進入を許容する隙間が生じるように互いに近接して配設されている。エアシリンダ97,98の駆動により各プレスブロック99a,99bは、積層糸群Fと係合して積層糸群Fを挿入針40列の後退側へ押圧する作用位置と、積層糸群Fと係合不能な待機位置とに移動される。
図8に示すように、支持フレーム96には厚さ方向糸供給部3側に向かって延びる支持ブラケット101を介してアクチュエータとしてのエアシリンダ102が水平に配設されている。エアシリンダ102のピストンロッド102aには、第2のエアシリンダ97,98のピストンロッド97a,98aの動作範囲に配置された状態で、プレスブロック99a,99bと係合してピストンロッド97a,98aの没入側への移動を規制するストッパ103が固定されている。ストッパ103の上面には段差が形成され、厚さ方向糸供給部3から離れた側に配設された一方のプレスブロック99aと係合する係合部103aが、他方のプレスブロック99bと係合する係合部103bより低くなっている。
ストッパ103はエアシリンダ102の作動によりピストンロッド97a,98aの動作範囲に出し入れ可能となっている。即ち、プレスプブロック99a,99bのストロークが複数段階に調整可能となっている。この実施の形態ではストッパ103がピストンロッド97a,98aの動作範囲に配置された状態と、動作範囲から退避した状態の2段階に調整可能となっている。
図2(a)及び図4に示すように、抜け止め糸挿入部8は機台フレーム11の側方に突出する状態で配設されている。図12に示すように、抜け止め糸挿入部8の支持フレーム104は支持フレーム96に一端が固定されている。図13に示すように、支持フレーム104には移送テーブル10より若干低い位置で水平に延びる部分に、一対のプーリ105a,105bが同じ高さ位置に、その軸が挿入針40列の配列方向と直交する方向に延びるように配設されている。両プーリ105a,105b間に無端状のベルト106が、その走行経路の一部が挿入針40列の配列方向と平行になるように巻き掛けられている。機台フレーム11に近い側に配設されたプーリ105bが一体回転可能に固定された回転軸107(図12に図示)の端部にはプーリ108が一体回転可能に固定されている。支持フレーム104にはプーリ105bの下方においてサーボモータ109が固定され、サーボモータ109の駆動軸に固定された駆動プーリ110と、プーリ108との間にベルト111が巻き掛けられている。そして、サーボモータ109の正逆回転駆動に伴ってベルト106が往復走行される。
ベルト106は上側の水平走行位置が抜け止め糸Pを挿通すべき高さと同じ高さで、挿入針40列の配列方向と平行に延びるように配設されている。ベルト106の外周面にはロッド固定用部材112が固定されている。図13(a)に示すように、ロッド固定用部材112に支持部としてのロッド114の基端が固定され、その先端に抜け止め糸挿通用針113が固定されている。ロッド114は炭素繊維強化樹脂で形成されている。
図12及び図13に示すように、支持フレーム104にはガイドレール115がベルト106の上側及び下側の水平走行位置の中間と対応する位置において水平に固定されている。ロッド固定用部材112にはガイドレール115に沿って摺動可能なガイド116が固定され、ロッド固定用部材112はガイド116によりベルト106の幅方向への揺れが規制されている。支持フレーム104には作用位置に配置された状態の挿入針40列の端部近傍に位置するように、ロッドガイド117がブラケット118を介して固定されている。ロッドガイド117の上面にはロッド114の横揺れを規制するガイド溝が形成されている。また、ベルト106の水平走行部の上方には、ロッド114が上方へ移動するのを規制するカバー119が設けられている。
各サーボモータ23,42,50,72,109は制御装置120(図1にのみ図示)と電気的に接続されており、制御装置120からの指令信号により制御される。また、各エアシリンダ28,33,82,87,97,98,102への圧縮空気の供給・排気を制御する図示しない電磁弁がそれぞれ制御装置120と電気的に接続されており、制御装置120からの指令信号により電磁弁が制御されて、各エアシリンダが所定の順序で駆動されるようになっている。
次に前記のように構成された厚さ方向糸挿入装置1の作用を説明する。厚さ方向糸zの挿入作業を開始する前は、厚さ方向糸挿入装置1の各作動部は待機位置又は原位置に配置されている。例えば、図14(c)及び図16(c)に示すように、ストッパ88,103はプレスプレート85及び両プレスブロック99a,99bと係合不能な待機位置に配置され、プレスプレート85及び両プレスブロック99a,99bは移送テーブル10と干渉しない待機位置に配置されている。
先ず、準備作業として、公知の方法で複数の糸層を積層して形成された少なくとも2軸配向となる積層糸群Fを保持する枠体15が固定された移送テーブル10が、厚さ方向糸挿入針駆動部6より移送テーブル10の移動方向上流側において支持レール12a,12b上に載置される。次に移送テーブル10は、その係合穴14bが待機位置に配置されたボールナット26に固定されたエアシリンダ28のピストンロッド28aと対向する状態となる位置まで手作業で移動される。この状態でエアシリンダ28が駆動され、ピストンロッド28aが突出されて係合穴14bと係合する係合位置に配置され、移送テーブル10がボールナット26と共にガイドレール19に沿って移動可能な状態となる。
次にサーボモータ23が駆動されてねじ軸20が正転駆動され、ボールナット26と共に移送テーブル10が移動され、積層糸群Fの最初の厚さ方向糸挿入箇所が穿孔針55と対向する厚さ方向糸挿入開始位置に配置される。次にエアシリンダ82,97,98が駆動され、プレスプレート85及び両プレスブロック99a,99bが作用位置に配置される。その状態でエアシリンダ87,102が作動され、ストッパ88,103がそれぞれプレスプレート85及び両プレスブロック99a,99bと係合可能な作用位置に配置され、図14(a)及び図16(a)に示す状態となる。次にエアシリンダ82,97,98が駆動され、図14(b)及び図16(b)に示すように、プレスプレート85及び両プレスブロック99a,99bはストッパ88,103と係合する待機位置に配置される。ストッパ88,103はその後、積層糸群Fの厚さ方向糸zを挿入すべき全領域への厚さ方向糸zの挿入作業が完了するまで、前記作用位置に配置される。従って、プレスプレート85及び両プレスブロック99a,99bのストロークは、ストッパ88,103が待機位置に配置された状態のストロークより小さくなる。
次に厚さ方向糸供給部3から繰り出された厚さ方向糸zを、図3(a)に示すように、ガイドローラ59a,59f,59b,59c、移動ローラ79、ガイドローラ59d,59e,29aの順に巻き掛けた後、挿入針40の針孔(図示せず)に挿通し、その端部を枠体15に固定する。以上で厚さ方向糸zの挿入準備作業が完了する。
挿入針40の作動時に、厚さ方向糸zの扱いに支障の無い程度で厚さ方向糸zが弛まないための弱い張力が付与された状態で、厚さ方向糸zが挿入針40に係止された状態とするため、挿入針40の作動に先だって両ガイドローラ59c,59d及び移動ローラ79間に所定長の厚さ方向糸zが屈曲状態でリザーブされる。所定長の厚さ方向糸zをリザーブする際は、ブレーキバー66が非制動位置に配置され、移動ローラ79が両ガイドローラ59c,59dとほぼ同じ高さに配置された状態で、サーボモータ72が正転駆動され、ボールねじ機構を介して移動ローラ79が下降される。所定長の厚さ方向糸zをリザーブする位置まで移動ローラ79が下降した時点でエアシリンダ61が駆動され、ブレーキバー66が制動位置に配置される。そして、厚さ方向糸zがブレーキバー66とガイドローラ59a,59bとにより把持され、ガイドローラ59c,59d及び移動ローラ79との間に一定長の厚さ方向糸zがリザーブされる。
この状態から厚さ方向糸zの挿入作業が開始される。先ずエアシリンダ82,97,98が駆動され、プレスプレート85及び両プレスブロック99a,99bが作用位置に配置される。プレスプレート85及び両プレスブロック99a,99bにより積層糸群Fは穿孔針55列と対応する箇所が圧縮状態に保持される。その状態でサーボモータ50が正転駆動され、ボールねじ機構を介して穿孔針55列が積層糸群Fに向かって前進し、穿孔針55が積層糸群Fを貫通する作用位置に配置された後、サーボモータ50が逆転駆動されて穿孔針55が待機位置まで後退する。穿孔針55は積層糸群Fと接触(係合)していない状態では高速で移動され、積層糸群と接触(係合)している状態では低速で移動される。穿孔針55は各櫛歯部85bにガイドされて移動し、積層糸群Fに対して垂直に挿通される。積層糸群Fを構成する繊維(糸)がプレスプレート85及び両プレスブロック99a,99bの圧縮作用によりある程度密に配置された状態にあるため、穿孔針55の抜き跡に孔が形成される。積層糸群Fは穿孔針55の突出側が両プレスブロック99a,99bにより押圧されているため、穿孔針55の前進時に各糸の配列が乱れることはない。
次に挿入針40列が穿孔針55によって形成された孔と対向する位置に配置されるように、エアシリンダ33が突出作動されて可動支持フレーム29が厚さ方向糸供給部3側へ移動される。
次にエアシリンダ97が作動されてプレスブロック99aが待機位置に配置された後、サーボモータ42が正転駆動され、ボールねじ機構を介して挿入針40が積層糸群Fに向かって前進して作用位置に配置される。挿入針40は針孔が積層糸群Fの下方に出るまで積層糸群Fに挿通される。挿入針40が前進端に達した後、サーボモータ42が逆転駆動されて挿入針40が所定量後退する。その結果、図15に示すように、積層糸群Fから針孔に連なる各厚さ方向糸zが抜け止め糸挿通用針113の通過を許容するループを形成した状態となる。挿入針40は積層糸群Fと係合しない状態では高速で移動され、積層糸群Fと係合した状態では低速で移動される。
サーボモータ42の駆動による挿入針40の前進移動時、挿入針40の前進速度に対応してガイドローラ59c,59d及び移動ローラ79間にリザーブされていた厚さ方向糸zを繰り出すために、サーボモータ72が逆転駆動されて移動ローラ79が上昇される。
挿入針40が積層糸群3に挿通されるときプレスブロック99aが待機位置に配置されて積層糸群Fを押圧する力が弱くなる。しかし、挿入針40は穿孔針55によって形成された孔に挿通されるため、挿入針40の挿通時の抵抗が小さくなって積層糸群Fの糸の配列の乱れを引き起こさない。
次にサーボモータ109が正転駆動され、ロッド固定用部材112と共に抜け止め糸挿通用針113が前進移動する。抜け止め糸挿通用針113はその先端が各挿入針40に保持された各厚さ方向糸zのループ内を次々に通過し、積層糸群Fの端部を過ぎた位置に到達した時点で停止される。このとき、抜け止め糸供給部9に連なる抜け止め糸Pが、抜け止め糸挿通用針113の先端の糸係止部113aに係止される。そして、抜け止め糸挿通用針113のベラ(図示せず)が閉じてループを引き込まないようにして引き戻され、図15に示すように、抜け止め糸Pが厚さ方向糸zのループ内に折り返し状に挿通される。
その後、サーボモータ42が逆転されて挿入針40が後退し、積層糸群Fから離脱して待機位置に配置される。挿入針40は積層糸群Fと係合する状態では低速で、積層糸群Fと係合しない状態では高速で移動される。次に、エアシリンダ97が作動されてプレスブロック99aが再び作用位置に配置される。この状態で厚さ方向糸張力付与部4の作用により厚さ方向糸zが引き戻され、積層糸群F内に挿入された厚さ方向糸zが抜け止め糸Pにより抜け止めされた状態で締付けられる。
挿入針40が積層糸群Fから引き抜かれた後、厚さ方向糸zによる積層糸群Fの糸層の締付け動作は、サーボモータ72が正転駆動されて移動ローラ79が所定位置まで下降された後、エアシリンダ77に所定の圧力の圧縮エアが供給されることにより行われる。即ち、エアシリンダ77に供給される圧縮エアの圧力で締め付けが行われる。
次にエアシリンダ33が駆動され、可動支持フレーム29が原位置に移動され、穿孔針55列及び挿入針40列が初期位置に戻される。また、エアシリンダ82,97,98が駆動されてプレスプレート85及びプレスブロック99a,99bが待機位置に配置される。以上により厚さ方向糸zの1回の挿入サイクルが完了する。
次にサーボモータ23が正転駆動されて移送テーブル10がボールナット26と共に厚さ方向糸zの挿入ピッチ分、前進移動され積層糸群Fの次に厚さ方向糸zを挿入すべき位置が穿孔針55と対向する状態となる。以下、前記と同様にして厚さ方向糸zのリザーブを含む厚さ方向糸zの挿入サイクルが実行される。そして、最後に厚さ方向糸zを挿入すべき位置への厚さ方向糸zの挿入作業のときは、厚さ方向糸zによる積層糸群Fの締め付けが完了した後、エアシリンダ82,97,98が駆動される前にエアシリンダ87,102が駆動され、ストッパ88,103が待機位置に配置される。次にエアシリンダ82,97,98が駆動され、プレスプレート85及びプレスブロック99a,99bがストッパ88,103と係合しない図14(c)及び図16(c)に示す待機位置に配置される。
また、積層糸群Fの全ての領域への厚さ方向糸zの挿入が完了する前に、次に厚さ方向糸zの挿入を行うべき積層糸群Fを保持した枠体15が固定された移送テーブル10が、厚さ方向糸zの挿入が完了していない移送テーブル10の後側に連結される。従って、積層糸群Fへの厚さ方向糸zの挿入作業が完了した時点では、図17(a)に示すように、厚さ方向糸zの挿入が完了した積層糸群を支持した網掛けを施して示す移送テーブル10に、厚さ方向糸zを挿入すべき積層糸群を支持した移送テーブル10が連結された状態にある。
この状態で、エアシリンダ28が駆動され、ピストンロッド28aが移送レールの係合穴14bから離脱した状態となる。次にサーボモータ23が逆転駆動され、後続の移送テーブル10の係合穴14bとピストンロッド28aとが対向する状態となる位置までボールナット26が移動される。その状態でエアシリンダ28が駆動されてピストンロッド28aが突出し、ピストンロッド28aが係合穴14bと係合し、移送テーブル10がボールナット26と共に移動可能となる。この状態でサーボモータ23が正転駆動され、後続の移送テーブル10が厚さ方向糸zの挿入が完了した積層糸群Fを支持した移送テーブル10を押しながら前進移動され、図17(b)に示すように、最初の厚さ方向糸zの挿入範囲が一点鎖線で示す厚さ方向糸zの挿入位置まで移動される。そして、その位置から前記と同様にして厚さ方向糸zの挿入作業が開始される。
厚さ方向糸供給部3からガイドローラ59a〜59f等を経て挿入針40の針孔に挿通された厚さ方向糸zが、厚さ方向糸zの挿入が完了した積層糸群Fに繋がった状態にあるため、後続の移送テーブル10が厚さ方向糸zの挿入開始位置に配置された状態で、準備作業なしに厚さ方向糸zの挿入作業が開始される。そして、厚さ方向糸zの挿入サイクルが繰り返されて、図2(a)に示すように、厚さ方向糸zの挿入が完了した移送テーブル10の連結部16aが厚さ方向糸挿入針駆動部6より移送テーブル10の移動方向下流側まで移動した時点で、両移送テーブル10の積層糸群F間に繋がった状態にある厚さ方向糸zが切断される。そして、両移送テーブル10の連結が解除された後、厚さ方向糸zの挿入が完了した積層糸群Fを支持している移送テーブル10が厚さ方向糸挿入装置1から取り外される。
この実施の形態では次の効果を有する。
(1) 穿孔針55及び挿入針40の積層糸群Fへの挿入時及び積層糸群Fと係合状態での後退時における糸の配列の乱れを防止したり、厚さ方向糸zによる積層糸群の繊維層の締め付けの際に締め付け作業を円滑に行うための第1及び第2の押圧部材(プレスプレート85及びプレスブロック99a,99b)が、エアシリンダ82,97,98で駆動されるとともに、そのストロークの調整がアクチュエータ(エアシリンダ87,102)により駆動されるストッパ88,103により行われる。第1及び第2の押圧部材がストッパ88,103と係合しない待機位置に配置された状態で、移送レール10の通過を許容するために、第1及び第2の押圧部材と積層糸群Fとの間隔を十分広くしても、所定周期で頻繁に行われる押圧部材の通常の往復移動時のストロークが最短に保持され、動作時間の短縮が図られる。その結果、三次元繊維組織を製造する際の厚さ方向糸の挿入工程における所要時間の短縮を図り、三次元繊維組織の生産性を向上することができる。
(2) 押圧部材の駆動にエアシリンダ82,97,98が使用されているため、モータとボールねじ機構を使用した場合に比較して、構成が簡単になるとともに、積層糸群Fに作用する押圧力の調整を供給される圧縮エアの圧力調整により簡単に行うことができる。また、エアシリンダはボールねじ機構と異なりクッション作用を有するため、積層糸群Fを過大な力で押圧するのを回避できる。
(3) ストッパ88,103を駆動するアクチュエータとしてエアシリンダ87,102が使用されているため、モータとボールねじ機構を使用した場合に比較して構成が簡単になる。
(4) 第2の押圧部81全体が支持フレーム96と共に厚さ方向糸zの挿入位置に配置された積層糸群Fに対して直交する方向に移動可能に構成されている。従って、製作すべき三次元繊維組織の厚さ、即ち積層糸群Fの厚さに応じて、第2の押圧部材(プレスブロック99a,99b)の基準位置を調整でき、積層糸群Fの厚さに応じて待機位置と積層糸群Fまでの距離を適正な値に調整できる。
(5) 支持フレーム96がボールねじ機構のボールナット94a,94bを介して昇降可能に支持され、ボールねじ機構のねじ軸90aが手動操作のハンドル93によって回動される。従って、支持フレーム96の昇降機構の構成が簡単になる。
(6) 厚さ方向糸zに対して張力を付与する張力付与手段を構成する移動ローラ79が、固定位置に配置された2本のローラ(ガイドローラ59c,59d)の間で、モータ(サーボモータ72)により駆動される直動機構(ボールねじ機構)と、エアシリンダ77との2系統の駆動部により、両ローラ間の厚さ方向糸zの糸長を変更する方向へ往復移動可能に構成されている。従って、厚さ方向糸zのリザーブ作業や厚さ方向糸の挿入作業時の挿入針40の移動量が大きなときには、サーボモータ72による駆動で移動ローラ79を所定の位置まで素早く移動させることができる。サーボモータ72によって駆動されるボールねじ機構だけでは、厚さ方向糸zの挿入条件に応じた種々の範囲の張力に設定するための制御が難しいが、厚さ方向糸zに付与する張力の調整はエアシリンダ77に供給する圧縮エアの圧力調整で行うことができる。その結果、三次元繊維組織の製作条件に対応した適正な張力付与を簡単に短時間で行うことができ、三次元繊維組織を製造する際の厚さ方向糸の挿入工程における所要時間の短縮を図り、三次元繊維組織の生産性を向上することができる。
(7) 厚さ方向糸zの挿入が完了した積層糸群Fを保持した枠体15を支持した移送テーブル10と、次に厚さ方向糸zの挿入を行うべき積層糸群Fを保持した枠体15を支持した移送テーブル10とを同時に、厚さ方向糸の挿入を行うべき積層糸群Fが厚さ方向糸zの挿通位置を順次通過するように所定ピッチずつ移動可能な送り装置(積層糸群送り部2)を備えた。従って、複数の積層糸群Fに厚さ方向糸zを挿入する場合、従来技術と異なり、挿入作業の終了した移送テーブル10の取り外しと、新たな移送テーブル10の設置を行うだけで、厚さ方向糸zの挿入作業を連続して行うことができ、各積層糸群への挿入作業毎に面倒な準備作業を繰り返す必要がなくなる。その結果、三次元繊維組織を製造する際の厚さ方向糸の挿入工程における所要時間の短縮を図り、三次元繊維組織の生産性を向上することができる。
(8) 移送テーブル10は連結部16a,16bで隣接する移送テーブル10同士が連結された状態で移動され、移送テーブル10に装備された係合部(係合穴14b)と係合可能な連結部材(ピストンロッド28a)を備えたアクチュエータ(エアシリンダ28)がボールねじ機構のボールナット26と共に移送テーブル10の長さより長い所定範囲で往復移動されることにより、移送テーブル10を移動させる。従って、移送テーブル10を所定ピッチずつ所定範囲内で移動させる構成が簡単になり、しかも送り量の調整が正確にできる。
(9) 移送テーブル10が水平状態で移動し、穿孔針駆動部5及び厚さ方向糸挿入針駆動部6が移送テーブル10の移動範囲の上方に配設されている。従って、移送テーブル10を介して積層糸群Fを順次厚さ方向糸zの挿入位置を通過するように移動させる積層糸群送り部2の構成が簡単になる。
(10) 挿入針列に連なる厚さ方向糸zのループを貫通するように抜け止め糸Pを挿通するための抜け止め糸挿通用針113が、モータ(サーボモータ109)によって駆動されるプーリ105a,105b間に巻き掛けられた無端状のベルト106に支持部を介して固定され、ベルト106の往復走行によって直線移動される。従って、抜け止め糸挿通用針113をサーボモータによって駆動されるボールねじ機構を使用して駆動する構成に比較して、高速で往復移動させることができ、三次元繊維組織を製造する際の厚さ方向糸の挿入工程における所要時間の短縮を図り、三次元繊維組織の生産性を向上することができる。
(11) 穿孔針55の往復移動がサーボモータ50によって駆動されるボールねじ機構を介して行われ、穿孔針55は積層糸群Fと接触(係合)していない状態では高速で移動され、積層糸群と接触(係合)している状態では低速で移動される。従って、三次元繊維組織の品質を確保しながら製作速度を上げることができ、三次元繊維組織の生産性を向上することができる。
(12) 挿入針40の往復移動がサーボモータ42によって駆動されるボールねじ機構を介して行われ、挿入針40は積層糸群Fと接触(係合)していない状態では高速で移動され、積層糸群と接触(係合)している状態では低速で移動される。即ち、挿入針40の移動速度が1ストローク内で制御できる。従って、三次元繊維組織の品質を確保しながら製作速度を上げることができ、三次元繊維組織の生産性を向上することができる。
(13) 抜け止め糸挿入部8の支持フレーム104が、第2の押圧部81が配設された支持フレーム96に固定されている。従って、積層糸群Fの厚さに対応して第2の押圧部81の基準位置が変更される際に、抜け止め糸挿入部8の適正位置、即ち抜け止め糸挿通用針113の積層糸群Fに対する位置も自動的に適正位置に変更される。
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態を図18及び図19に従って説明する。この実施の形態は第2の押圧部81を構成する支持フレーム96が手動操作ではなく、自動的に昇降可能な点が前記実施の形態と異なっており、その他の構成は同じである。図19に示すように、ねじ軸90aの上方に、支持ブラケット89a上に固定されたブラケット121を介してサーボモータ122が配設され、サーボモータ122の駆動軸にカップリングを介してねじ軸90aが一体回転可能に連結されている。サーボモータ122は制御装置120に電気的に接続され、制御装置120からの指令によって駆動される。
制御装置120は厚さ方向糸zの挿入の準備作業として積層糸群Fの厚さに対応した適正位置に支持フレーム96の高さを調整する場合は、図示しない入力装置により入力された積層糸群Fの厚さに基づいた所定高さとなるように、サーボモータ122を駆動制御する。積層糸群Fの厚さと支持フレーム96の適正位置との関係は記憶装置にデータベースとして記憶されており、制御装置120は入力された積層糸群Fの厚さに対応した適正位置をデータベースから求めて、サーボモータ122の制御を行う。
また、制御装置120は厚さ方向糸zの抜け止め糸Pの挿通作業の際に、抜け止め糸挿入部8を昇降させるため、サーボモータ122を駆動制御して支持フレーム96を昇降させる。この実施の形態では厚さ方向糸zの1挿入サイクルの中で、挿入針40が作用位置へ移動されて先端に厚さ方向糸zのループが形成され、図18aに示すようにそのループに抜け止め糸挿通用針113によって抜け止め糸Pが折り返し状に挿通されるまでは基準位置に配置されている。そして、挿入針40が後退するとともに厚さ方向糸zが引き戻される際、挿入針40の後退に同期して、抜け止め糸挿通用針113の位置が積層糸群Fの下面と対応する図18(b)に示す状態となる位置まで、支持フレーム96が上昇される。
このとき、プレスブロック99a,99bが積層糸群Fに過大な圧力を加えるのを確実に回避するため、エアシリンダ97,98へ供給される圧縮エアの圧力を低くした状態で、支持フレーム96の上昇が行われる。そして支持フレーム96が所定の位置まで上昇した後、エアシリンダ97,98へ再び所定の圧力が供給される。そして、厚さ方向糸zによる積層糸群Fの締め付け動作が終了した後、サーボモータ122が駆動されて支持フレーム96が下降され、抜け止め糸挿通用針113が基準位置に配置される。
従って、この実施の形態では第1の実施の形態の(1)〜(13)の効果の他に次の効果を有する。
(14) 厚さ方向糸zの挿入の準備作業として、制御装置120に入力装置により積層糸群Fの厚さを入力すると、積層糸群Fの厚さに対応した適正位置に、支持フレーム96の高さがサーボモータ122の駆動によって自動的に調整される。従って、手動操作でハンドル93を回動する場合に比較して準備作業が簡単になる。
(15) 挿入針40が後退するとともに厚さ方向糸zが引き戻される際、挿入針40の後退に同期して、抜け止め糸挿通用針113の位置が積層糸群Fの下面と対応する所定の位置まで支持フレーム96が上昇される。従って、抜け止め糸挿通用針113の上下方向の位置が一定に保持される第1の実施の形態の構成と異なり、図18(c)に示すように抜け止め糸挿通用針113が抜け止め糸Pを介して厚さ方向糸zの締め付け力を妨げるように作用することがなくなる。その結果、製作された三次元繊維組織の端部の締め付け力が不足する事態を確実に回避できる。
実施の形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 厚さ方向糸挿入装置1は積層糸群送り部2、厚さ方向糸張力付与部4、積層糸群押圧部7及び抜け止め糸挿入部8の少なくとも一つが第1の実施の形態の構成であれば、それぞれが三次元繊維組織を製造する際の厚さ方向糸の挿入工程における所要時間の短縮を図り、三次元繊維組織の生産性の向上に寄与する。従って、残りの構成が従来装置と同様な構成でも三次元繊維組織の生産性が向上する。そして、全てが第1の実施の形態あるいは同等の効果を有する構成であれば、三次元繊維組織の生産性がより向上する。
○ 積層糸群押圧部7の第1の押圧部材(プレスプレート85)及び第2の押圧部材(プレスブロック99a,99b)の両者のストロークを複数段階に調整可能とする代わりに、いずれか一方のみを複数段階に調整可能としてもよい。この場合、両者を複数段階に調整可能とした場合に比較して作業速度は遅くなるが、従来装置に比較すれば作業速度は速くなる。
○ 積層糸群Fの厚さがその長手方向で段階的に変化する場合、例えば2段階に変化する場合は、ストッパ103として各厚さに対応した厚さの2組の係合面を備えたものを使用すると共に、アクチュエータとして2段階にストローク調整可能なものを使用する。その結果、プレスブロック99a,99bはストッパ103と係合して移動が規制される待機位置が2箇所でき、ストロークを3段階に調整できる。また、厚さの異なる2個のストッパ103を2個のアクチュエータで移動させる構成でも、同様な効果が得られる。
○ ストッパ88,103を駆動するアクチュエータとしてエアシリンダに代えてソレノイドを使用してもよい。
○ 移送テーブル10を水平に移動させる構成に代えて垂直状態又は斜めの状態で移動させる構成としてもよい。
○ 移送テーブル10の係合部として係合穴14bに代えて係合孔を形成したり、他の形状の係合部を設けてもよい。また、アクチュエータとしてエアシリンダに代えてソレノイドを使用したり、連結部材としてピストンロッド28aやソレノイドのプランジャを直接係合穴14bや係合孔等の係合部と係合させずに、ピストンロッドやプランジャに係合部と係合するのに適した形状の連結部材を固定してもよい。
○ 移送テーブル10の送り装置としてリニアパルスモータを使用する。そして、固定子をガイドレール19の位置に配設し、可動子(移動子)にアクチュエータ(エアシリンダ28)を固定する。この場合はサーボモータ23とボールねじ機構を使用する構成に比較して構造が簡単になる。
○ 移送テーブル10の送り装置は移送テーブル10との連結部材及びアクチュエータが直線的に往復移動される構成に限らず、無端状のベルトあるいはチェーン等の巻き掛け伝動部材に固定され、循環移動する構成としてもよい。
○ 抜け止め糸挿通用針113の駆動装置としてリニアモータを使用してもよい。
○ 第2の実施の形態において、エアシリンダ97,98への供給エアの圧力を所定の値に保ったままで、抜け止め糸挿通用針113を上昇位置へ移動させてもよい。
○ 抜け止め糸挿通用針113及びその駆動部を、第2の押圧部81と独立して昇降可能に構成し、挿入針40の後退時に第2の押圧部は移動させずに、抜け止め糸挿通用針113及びその駆動部を所定位置へ移動させるように制御する。この場合、第2の押圧部81を厚さ方向糸挿入サイクル毎に昇降させる必要がなく、エネルギー消費が少なくなる。
○ 厚さ方向糸張力付与部4の移動ローラ79を往復移動させるためのモータにより駆動される直動機構として、ボールねじ機構に代えて、ラックとピニオンとの組み合わせや、リニアモータを使用してもよい。また、ボールねじ機構やラックとピニオンの組み合わせを駆動するモータとしてサーボモータ以外のモータを使用してもよい。
○ ブレーキバー66を支持する支持部材64を、レバー62を介してエアシリンダ61で作動する代わりに、支持部材64をエアシリンダ61のピストンロッド61aに取り付けてもよい。
○ 厚さ方向糸zの走行経路に厚さ方向糸z同士が絡み合うのを防止するための糸ガイドを設けてもよい。
○ 積層糸群Fとして糸の配列のみで構成したものに限らず、糸の配列とクロスの積層とを組み合わせて積層糸群を形成したものに適用してもよい。
○ 積層糸群Fの厚さや繊維の種類によっては穿孔針55による孔開けを行わずに、挿入針40を積層糸群Fに直接挿入してもよい。
前記実施の形態から把握できる技術的思想(発明)について、以下にその効果とともに記載する。
(1) 複数の糸層を積層して形成された少なくとも2軸配向となる積層糸群に、前記各糸層と交差する方向に配列された厚さ方向糸にて結合された構造の三次元繊維組織を製造する際に使用される三次元繊維組織の厚さ方向糸挿入装置であって、枠体に保持された前記積層糸群の厚さ方向に沿って移動可能に設けられ、複数の穿孔針が厚さ方向糸挿入針と対応した所定ピッチで1列に装備された穿孔針支持体を、穿孔針が前記積層糸群と係合不能な待機位置と積層糸群を貫通する作用位置とに移動させる穿孔針駆動部を備え、前記穿孔針駆動部を前記穿孔針が積層糸群と係合していない状態では高速で移動させ、積層糸群と係合している状態では低速で移動させるように変速制御可能とした。この場合、三次元繊維組織の品質を確保しながら製作速度を上げることができ、三次元繊維組織の生産性を向上することができる。
(2) 前記アクチュエータは前記移送テーブルの移動方向に沿って延設されるとともにサーボモータにより駆動されるボールねじ機構のボールナットに固定されている。この場合、移送テーブルを所定ピッチずつ所定範囲内で移動させる構成が簡単で、しかも送り量の調整が正確にできる。
(3) 前記係合部は移送テーブルに形成された穴又は孔であり、前記アクチュエータはエアシリンダ又はソレノイドである。この場合、アクチュエータと移送テーブルとを一体移動可能に連結する構成が簡単になる。
(4) 前記移送テーブル案内部は移送テーブルが水平状態で移動するように案内する。この場合、移送テーブルが積層糸群を順次厚さ方向糸の挿入位置を通過するように移動させる積層糸群送り部の構成が簡単になる。また、穿孔針駆動部及び厚さ方向糸挿入針駆動部を移送テーブルの移動範囲の上方に配設することができ、両駆動部の配置スペースの確保が容易となる。
(5) 前記第2の押圧部材及び第2のエアシリンダを支持する支持フレームは、厚さ方向糸の挿入位置に配置された積層糸群に対して直交する方向に移動可能に支持されている。この場合、製作すべき三次元繊維組織の厚さ、即ち積層糸群の厚さに応じて、第2の押圧部材の基準位置を調整でき、積層糸群Fの厚さに応じて待機位置から積層糸群までの距離を適正な値に調整できる。
(6) 前記支持フレームがボールねじ機構のボールナットを介して昇降可能に支持され、ボールねじ機構のねじ軸が手動操作のハンドルに連結されている。この場合、支持フレームの昇降機構の構成が簡単になる。
(7) 前記厚さ方向糸挿入針列を構成する各厚さ方向糸挿入針の針孔が積層糸群の反対側となる位置まで積層糸群を貫通する作用位置に配置されたときの挿入針列に連なる厚さ方向糸のループを貫通するように抜け止め糸を挿通する抜け止め糸挿通用針と、該抜け止め糸挿通用針を駆動する駆動部とを、前記支持フレームに対して一体的に移動可能に支持した。この場合、積層糸群の厚さに対応して第2の押圧部材の基準位置が変更される際に、抜け止め糸挿通用針及びその駆動部の適正位置、即ち抜け止め糸挿通用針の積層糸群に対する位置も自動的に適正位置に変更され、準備作業が容易になる。
(8) 複数の糸層を積層して形成された少なくとも2軸配向となる積層糸群に、前記各糸層と交差する方向に挿入された厚さ方向糸にて結合された構造の三次元繊維組織を製造する際に使用される三次元繊維組織の厚さ方向糸挿入装置であって、厚さ方向糸挿入針列を構成する各厚さ方向糸挿入針の針孔が積層糸群の反対側となる位置まで積層糸群を貫通する作用位置に配置されたときの厚さ方向糸挿入針列に連なる厚さ方向糸のループに抜け止め糸を挿通するための抜け止め糸挿通用針と、その駆動部とを支持する支持フレームを、厚さ方向糸挿入針の厚さ方向糸挿入時の移動方向に沿って移動可能に設け、厚さ方向糸挿入針の後退時に前記支持フレームを抜け止め糸挿通用針の位置が積層糸群の厚さ方向糸挿入針の挿入側と反対側の面と対応する状態となるまで移動させる駆動手段を設けた。この場合、抜け止め糸挿通用針の上下方向の位置が一定に保持される構成と異なり、厚さ方向糸の締め付け作業時に抜け止め糸挿通用針が抜け止め糸を介して厚さ方向糸の締め付けを妨げるように作用することがなくなる。その結果、製作された三次元繊維組織の端部の締め付け力が不足する事態を回避できる。
(9) 複数の糸層を積層して形成された少なくとも2軸配向となる積層糸群に、前記各糸層と交差する方向に挿入された厚さ方向糸にて結合された構造の三次元繊維組織を製造する際に使用される三次元繊維組織の厚さ方向糸挿入装置であって、
厚さ方向糸供給部から厚さ方向糸挿入針に連なる厚さ方向糸の経路の途中に設けられ、厚さ方向糸に対して張力を付与する張力付与手段と、前記張力付与手段より前記厚さ方向糸供給部側に設けられるとともに前記張力付与手段による張力付与時に作動して厚さ方向糸を把持するブレーキ手段とを備えた厚さ方向糸張力付与部が設けられ、前記張力付与手段は前記厚さ方向糸と交差する状態で固定位置に配置された2本のローラと、両ローラの中心を結ぶ直線と交差する直線に沿って移動可能に設けられ、モータにより駆動される直動機構と、エアシリンダとの2系統の駆動部により両ローラ間の厚さ方向糸の糸長を変更する方向へ往復移動可能な移動ローラとを備えている三次元繊維組織の厚さ方向糸挿入装置。
この構成では、厚さ方向糸供給部から繰り出された厚さ方向糸は、厚さ方向糸張力付与部を経て厚さ方向糸挿入装置に供給される。厚さ方向糸はその走行方向と交差する状態で固定位置に配置された2本のローラと、両ローラの中心を結ぶ直線と交差する直線に沿って移動可能な移動ローラとに巻き掛けられた状態で供給される。そして、張力付与時には厚さ方向糸が張力付与部より厚さ方向糸供給部側でブレーキ手段によって把持され、移動ローラに厚さ方向糸に作用する張力が増大する方向への力がエアシリンダを介して作用する。また、前記2本の固定ローラと移動ローラとの間に所定量の厚さ方向糸をリザーブする場合は、モータが駆動されて直動機構の作用により移動ローラが前記両ローラ間の厚さ方向糸の糸長を増大する方向へ移動される。
従って、厚さ方向糸に対して張力を付与する移動ローラが、移動量が大きなときにはモータによる駆動で素早く移動でき、厚さ方向糸に付与する張力の調整はエアシリンダに供給する圧縮エアの圧力調整で行うことができる。その結果、厚さ方向糸に対する三次元繊維組織の製作条件に対応した適正な張力付与を簡単に短時間で行うことができ、三次元繊維組織を製造する際の厚さ方向糸の挿入工程における所要時間の短縮を図り、三次元繊維組織の生産性を向上することができる。
(10) 複数の糸層を積層して形成された少なくとも2軸配向となる積層糸群に、前記各糸層と交差する方向に挿入された厚さ方向糸にて結合された構造の三次元繊維組織を製造する際に使用される三次元繊維組織の厚さ方向糸挿入装置であって、
前記積層糸群を保持する枠体を支持する少なくとも2個の移送テーブルを、厚さ方向糸の挿入が完了した積層糸群を保持した枠体を支持する移送テーブルと、次に厚さ方向糸の挿入を行うべき積層糸群を保持した枠体を支持した移送テーブルとを同時に、その配列方向に沿って移動可能に案内する移送テーブル案内部と、前記移送テーブルを前記厚さ方向糸の挿入を行うべき積層糸群が厚さ方向糸の挿入位置を順次通過するように所定ピッチずつ移動可能な送り装置とを備えた三次元繊維組織の厚さ方向糸挿入装置。
この構成では、積層糸群を保持する枠体を支持する移送テーブルが、送り装置の作用により所定ピッチずつ移送テーブル案内部に沿って移動され、積層糸群が厚さ方向糸の挿入位置を順次通過する。複数の積層糸群に連続して順次厚さ方向糸の挿入を行う場合、移送テーブル案内部は厚さ方向糸の挿入が完了した積層糸群を保持した枠体を支持する移送テーブルと、次に厚さ方向糸の挿入を行うべき積層糸群を保持した枠体を支持した移送テーブルとを同時に、その配列方向に沿って案内する。
従って、厚さ方向糸の挿入作業の終了した移送テーブルの取り外しと、新たな移送テーブルの設置を行うだけで、厚さ方向糸の挿入作業を連続して行うことができ、各積層糸群への挿入作業毎に面倒な準備作業を繰り返す必要がなくなる。その結果、三次元繊維組織を製造する際の厚さ方向糸の挿入工程における所要時間の短縮を図り、三次元繊維組織の生産性を向上することができる。
(11) 前記移送テーブルは隣接する移送テーブルを一体移動可能に連結する連結部を備え、前記送り装置は前記移送テーブルに装備された係合部と係合可能な連結部材と、該連結部材を前記係合部と係合可能な係合位置と、係合不能な退避位置とに駆動するアクチュエータとを備え、前記連結部材及び前記アクチュエータは移送テーブルの移動方向に沿って移送テーブルの長さより長い所定範囲で往復移動可能に構成されている前記(10)に記載の三次元繊維組織の厚さ方向糸挿入装置。
この構成では、前記移送テーブルは互いに隣接する移送テーブル同士が連結部において連結される。また、送り装置は移送テーブルに装備された係合部と係合可能な連結部材を備え、該連結部材がアクチュエータにより前記係合部との係合位置に配置された状態で、アクチュエータが移送テーブルの移動方向に沿って移動されることにより、移送テーブルが移動される。
従って、移送テーブルを所定ピッチずつ所定範囲内で移動させる構成が簡単になる。
(12) 複数の糸層を積層して形成された少なくとも2軸配向となる積層糸群に、前記各糸層と交差する方向に挿入された厚さ方向糸にて結合された構造の三次元繊維組織を製造する際に使用される三次元繊維組織の厚さ方向糸挿入装置であって、
枠体に保持された前記積層糸群に対して厚さ方向糸を複数本同時に挿入する厚さ方向糸挿入針列の配列方向に沿って移動可能に配設され、前記厚さ方向糸挿入針列が、該挿入針列を構成する各厚さ方向糸挿入針の針孔が積層糸群の反対側となる位置まで積層糸群を貫通する作用位置に配置されたときの挿入針列に連なる厚さ方向糸のループを貫通する作用位置と、積層糸群と対応する位置から退避した待機位置とに配置される抜け止め糸挿通用針を備え、走行経路の一部が前記厚さ方向糸挿入針列の配列方向と平行にかつ該平行走行部の長さが前記抜け止め糸挿通用針の糸係止部を抜け止め糸の挿通に必要な距離以上直線移動可能に複数のプーリ間に巻き掛けられた無端状のベルトに、前記抜け止め糸挿通用針を支持部を介して固定し、前記プーリをモータにより駆動する抜け止め糸挿入部を備えている三次元繊維組織の厚さ方向糸挿入装置。
この構成では、厚さ方向糸挿入針列が積層糸群を貫通する作用位置に配置され、積層糸群の厚さ方向糸挿入針の先端貫通側に厚さ方向糸のループが形成された状態で、抜け止め糸挿通用針が前記ループを貫通する作用位置に配置される。そして、糸係止部で抜け止め糸を係止した状態で抜け止め糸挿通用針が積層糸群と対応する位置から退避した待機位置に配置されることにより、前記ループ内に抜け止め糸が折り返し状に挿通される。抜け止め糸挿通用針はモータにより駆動される無端状のベルトの移動に伴って、支持部を介して一体に移動される。従って、モータの回転速度が同じであれば、抜け止め糸挿通用針がボールねじ機構のナットに支持部を介して固定された場合より高速で移動される。
従って、抜け止め糸挿通用針をモータによって駆動されるボールねじ機構を使用して駆動する構成に比較して、高速で往復移動させることができ、三次元繊維組織を製造する際の厚さ方向糸の挿入工程における所要時間の短縮を図り、三次元繊維組織の生産性を向上することができる。
1…厚さ方向糸挿入装置、3…厚さ方向糸供給部、4…厚さ方向糸張力付与部、8…抜け止め糸挿入部、10…移送テーブル、12a,12b…移送テーブル案内部を構成する支持レール、19…同じくガイドレール、14b…係合部としての係合穴、15…枠体、16a,16b…連結部、20…送り装置を構成するねじ軸、23…同じくサーボモータ、26…同じくボールナット、28…アクチュエータとしてのエアシリンダ、28a…連結部材としてのピストンロッド、40…厚さ方向糸挿入針、59c,59d…張力付与手段を構成するガイドローラ、72…同じくサーボモータ、77…同じくエアシリンダ、79…同じく移動ローラ、61…ブレーキ手段を構成するエアシリンダ、66…同じくブレーキバー、82…第1のエアシリンダ、85…第1の押圧部材としてのプレスプレート、87,102…アクチュエータとしてのエアシリンダ、88,103…ストッパ、97,98…第2のエアシリンダ、105a,105b…プーリ、106…ベルト、109…サーボモータ、112…支持部としてのロッド固定用部材、113…抜け止め糸挿通用針、z…厚さ方向糸、P…抜け止め糸。