JP4263960B2 - 緊張力の導入された複合構造物 - Google Patents
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Description
本発明は、梁等の構造用部材を主たる対象とするが、他の用途(版体)を除外するものではない。
しかしながら、この4辺形状基板を接合して得られる版体構法によれば、当該版体の版面方向に働く版面力は、4辺形状基板の辺部に沿う水平方向と垂直方向との2方向分力のみとなり、力が集結されず、十分な組付け力を得ることができず、版面に直角に働く力に対しても大きな抵抗力(抵抗モーメント)を期待できない。
更に、角部が集まる交会部(節点ともいう)での作用力の収斂性・集中性が得られ難く、すなわち「ずれ」が生じやすく、かつ、そのため当該交会部から緩みが生じ、全体的な破損を惹起する原因となる。
なお又、4辺形状基板の組付け操作に付き、既に組み付けられた版体の開き空間へ次に取付ける4辺形状基板を落とし込んでゆくものであるが、このとき当該4辺形状基板の水平及び垂直性の確保が必要であり、当該組付け作業の施工効率の悪化要因ともなっている。
しかして、その締り力を得るべく、3角骨組によるトラス構法の適用により、基板を3角形状となし、かつ該基板間にくさび棒を介装し、これらの組立て体内に緊張力の導入される緊張線材を介装することにより、その実現を図りうるとの着想に至ったものである。
本発明は更に、その組立て施工方法を得ることも他の目的とする。
前記組合せ構造体の外周に、該組合せ構造体の外周のくさび棒に嵌合する枠材が配され、
かつ、前記組合せ構造体の直通する凹溝に嵌合するくさび棒に沿って緊張線材を配し、
該緊張線材に引張力を導入してなることを特徴とする。
本発明において、くさび棒の先端は直角状の角部のものと、平坦状のものとの2態様をもつ。
上記構成において、
1)緊張線材は両端の枠材に反力を取ること、
2)3角形基板は中空状あるいは中実状を採ること、
は適宜に選択される態様である。
所定数の同形の3角形基板と該基板の各溝の長さに対応するくさび棒とを用意し、3角形基板の対応する辺部を対接させ、これらの凹溝内にくさび棒を嵌入する。
これにより、適宜の形状の板体いわゆる組合せ版体を形成する。該形状は四辺形を通常とするが、他の形状を除外するものではない。
加えて、この組合せ構造体に緊張力が導入され、耐力の増大が図られ、その幅に比し長さの長い、細長状構造物の長尺化が達成できる。合わせて、軽量化が図られる。
図1〜図11によりその一実施形態の複合構造物Hを示し、梁材への適用例を示す。すなわち、図1〜図4はその複合構造物Hの全体的構成を示し、図5〜図11は各部分構成を示す。
3角形基板1(図1〜図8参照)
3角形基板1(以下単に「基板1」という)は、図1〜図7、特には図5〜図8に示すように、一定厚をなし内部に中空部1aを有する直角2等辺3角形状をなすとともに、該各辺の側面の中央部には辺に沿う凹溝6が縦設されてなる。本実施形態での凹溝6の形状は正方形の1/2、すなわち2つの凹溝6が合わさって所定の正方形を形成する。
図において、1bは基板1の表面、1cは基板1の裏面、1dは短辺の側面、1eは斜辺(長辺、底辺ともいう)の側面を示す。Aは基板1の直角部、Bは底角部を示す。Pは斜辺部の凹溝6の角部、Vは直角部の凹溝6の角部を示す。
更に図において、aは本基板1の厚さ、bは凹溝6の幅、cは凹溝6の深さを示す。また、eは短辺1cの長さ、fは斜辺1dの長さを示す(f=√2・e)。
ここに、基板1は直角を必須とするが、辺部において実質的に2等辺を確保すれば足り、要は使用される基板1がすべて同形をなすことが本質的事項である。
該基板1の素材は原則として、構造材として採用される全ての材料を含む。通常には、木材、合成樹脂材、金属、コンクリート材(RCを含む)が採られるが、その他の素材を除外するものではない。
本実施形態では基板1には中空部1aが形成されるが、該基板1をそのまま使用することも、あるいは基板1の表面及び又は裏面に化粧板等の薄板を貼る態様を採ることもできる。更には中実の態様を採ることは自由である。
くさび棒2は、所定の長さと断面形状(本実施形態では正方形)、更には端面形状を有し、基板1の凹溝6にその半分が嵌り込む。
本実施形態において、くさび棒2は長さ及び端部形状の相違する3種のくさび棒2A、2B、2Cが用意される。
該くさび棒2の素材は、原則として基板1に対応した素材を採るが、異種を除外しない。
(くさび棒2A,2B,2C)
くさび棒2Aは基板1の短辺1d相互の対向する溝部に嵌合され、くさび棒2Bは基板1の短辺1dと枠材3との対向する溝部に嵌合され、くさび棒2Cは基板1の斜辺1e相互の対向する溝部に嵌合される。
(鉛直くさび棒2A)
くさび棒2Aはいわゆる鉛直くさび棒と称され、基板1の短辺1d相互の溝6に嵌合される。端部は平坦面に形成される。その長さは短辺1dの長さeよりc及び(√2+1)分だけ短い。すなわち、[e−c−(√2+1)c=e−(2+√2)c]。
(水平くさび棒2B)
くさび棒2Bはいわゆる水平くさび棒であって、基板1の水平に配される短辺1dの溝6に嵌合される。端部は平坦面に形成される。その長さは基板1の短辺1dの長さeに等しく、鉛直くさび棒2Aより(2+√2)cだけ長い。
該水平くさび棒2Bは図例では基板1の短辺1dの角部すなわち交会部(及びそれより少しずれて)に合わせて配されるが、交会部を跨いで配されてもよい。
留意すべきは、該水平くさび棒2Bはその横断面形状において2つの角部が斜面部7をもって切り欠かれて、当該切欠き部が溝6へ嵌合して緊張線材4の配設空間を形成する。
(斜めくさび棒2C)
くさび棒2Cはいわゆる斜めくさび棒と称され、基板1の斜辺1e相互の溝6に嵌合される。端部は斜辺の角部に対応して直角(90°)状に尖った形状とされる。また、その長さは斜辺1eの長さfより2√2c分だけ短く、f−2√2・cを採る。
(端部の寸法関係)
基板1とくさび棒2との組付け関係における端部の寸法関係を図8に示す。
3角形基板1とくさび棒2とにより、中間構成としての組合せトラスIが組み立てられる。
すなわち、該組合せトラスIは、図1及び図2に示すように、2つの3角形基板1がくさび棒2Cを介して互いに斜辺1eを対向させ、正方形状に組み付け、更にそれらの短辺1dにくさび棒2A,2Bを嵌合させ、これらを順次横方向に組み付けて構成させる。
枠材3は、3角形基板1とくさび棒2との組付け体すなわち組付けトラスIの外周縁に配される。該枠材3は直棒状体をなし、その長さはくさび棒2の水平くさび棒2Bと等しく、その厚さは3角形基板1の厚さに等しく、該枠材3の内面3aには凹溝8が縦設される。該凹溝7は3角形基板1の凹溝6と幅及び深さにおいて同形状をなし、くさび棒2の他の半分が密接状に嵌り込む。枠体3の長さは本実施形態ではくさび棒2と等しいとしたが、その長さは適宜のものとすることができる。
組付けトラスIの端部には端部枠材3Aが配される。該端部枠材3Aは緊張線材4の緊張定着を図るため、該緊張線材4を挿通する挿通孔9が相並んで貫通状に開設される(図11)。該端部枠材3Aにおけるその余の構成は枠材3に同じである。
緊張線材4は、所定長さの鋼線もしくは鋼棒よりなり、本複合構造体Hの上下に平行して配され、端部の締具11により緊張力が導入される。
緊張線材4は水平くさび棒2Bの斜面部7と基板1の溝6との間に形成された空間に配され、その端部は端部枠材3Aに形成された挿通孔9に挿通され、締具11に把持される。緊張線材4の端部には締具11に把持されるねじ部12が螺設される。
本実施形態において、この緊張線材4は本複合構造体Hの上下に平行して配され、上下の緊張線材4a,4bの緊張力の加減により効果的な緊張力の導入をなすものであるが、梁材の性質上、下方の緊張線材4aのみでもよいことは勿論である。
図例では鋼棒態様を示したが、複数本の細径鋼線よりなる線態様を採る場合には、その端部において表面にねじの螺設されたねじ体をもって強力に把持する。ねじ体の外径はより線の外径よりわずかに大径であって、枠材3の挿通孔9への挿通を妨げない。
(締具11)
締具11は、端部枠材3Aの外面に当接する座金板13と、円筒状をなすとともにねじ部12に螺合する内面にねじ部14aを有する円筒ナット14とからなる。
もっと詳しくは、座金板13は、端部枠材3Aの外面に当接し、該端部枠材3Aに開設された挿通孔9に対応して相並んで孔もしくは溝が形成される。該座金板13は適宜の止め具をもって端部枠材3Aに固設される。円筒ナット14は、内面のねじ部14aに緊張線材4のねじ体12を螺合し、該円筒ナット14の端面を座金板13に当接したまま該円筒ナット14を回動して緊張線材4に引張り力を導入する。円筒ナット14の側面には平面状のナット掛け14bが形成され、回動の用に供される。勿論、ナット掛けに替えて、回動棒(図示せず)の係合孔であってもよい。
締具11は通常は緊張線材4の両端部に配されるが、場合によっては緊張線材14の一端部に配され、緊張線材14の他端部には止め具(例えば、座金板13と膨径状の係合端部4aとの組合せ)のみであってもよい。
本複合構造体Hの組合せトラスIは、その構成材である基板1及びくさび棒2のそれぞれが交会部を有し、その交会部によりトラス構造を構成し、合理的な力学形状となっている。
基板1においては、2つの頂角部A及び4つの底角部Bがそれぞれ1点に合し、交会部S,Tを形成する。
くさび棒2においては、2つの斜めくさび棒2Cがその頂角部Qでその延長上で1点に合する。
加えて、この複合構造体Hには緊張線材4により、上下に平行して緊張力が導入される。
この導入力により、交会部S,Tにおいてより一層の締込み力が加わる。
本実施形態の複合構造体Hは次の手順をもって組み立てられる。
図4を参照にして、その右方から左方へ組み立ててゆく手順に付き説明する。
(1) 本複合構造体Hの構築される長さを保持して、両端部に端部枠材3Aが配され、両部材3A間にわたって緊張線材4(4a,4b)が上下各々に2本、計4本張設される。緊張線材4は端部枠材3A間の距離よりも十分に長く、その両端部はねじ部12を長く採る。
緊張線材4はその両端において、締具11の円筒ナット14をねじ部12に螺合して仮固定しておく。
しかる後、該第1番目の基板1の上辺(短辺)1dに対応する枠材3が水平くさび棒2Bを介して嵌め込まれる。
しかる後、該第2番目の基板1の下辺(短辺)に対応する枠材3が水平くさび棒2Bを介して嵌め込まれる。
上記において、枠材3はその都度取り付けられるが、適宜取り付けてもよい。
(2) 〜 (4)の工程において、各基板1はその鉛直長さhは最小距離を採り、従って上下の緊張線材4間に余裕をもって入り込み、基板1を徐々に鉛直に立てることにより、その溝6内に緊張線材4を収めることができる。
叙上の方法において、緊張線材4の両端にねじ部12が切られた態様を示したが、一端(左端側)を膨径部4aとした態様においては、終端側端部枠材3の移動は緊張線材4を進退動させることによってなされる。
従って、従来の矩形板での平行を保持しつつ組み立てる煩雑さはなく、また熟練度を要せず、かつ、基板1の底角部B及びくさび棒2の先端角部Qでの当接斜面の自動求心作用により、精度の高い組立てがなされる。また、交会部T,Qではくさび効果により締込みがなされ、この部分で板面方向及び該板面に直角方向に大きな強度が発揮される。
また、解体も叙上の手順の逆になせばよく、操作は容易である。
本実施形態の複合構造物Hは、梁材に限定されず、壁体版、床体版、天井版、屋根版等多様な用途を採る。
本複合構造物Hは恒久構造材としても仮設構造材としても用いられる。基板1とくさび棒2とを接着固定すれば構造物Hはより一体化され、恒久構造材として使用される。また、接着しない場合には、分解も容易であり、仮設用としても使用される。
図12(a)(b)は本発明の広がり面を有する板体状としての他の態様を示す。
この直角3角形基板1Aは不等辺3角形状であり、短辺が3対2の割合のものを示す。該基板1Aの底角部は2種のものとなり、これに対応してくさび棒2は先端の斜面が不等辺となる。
しかして、この直角3角形基板1Aの斜辺部を対接したものは長方形状のものが得られる。
1)本実施形態では緊張線材4は上下に各々2本配したが、上下各1本であってもよい。この場合、緊張線材4は溝6の中央に配され、これに対応して水平くさび棒2Bには中央に該緊張線材4を収容する溝(図示せず)が縦設される。
Claims (3)
- 一定厚にして一定の直角3角形状をなすとともに、該各辺の側面には辺に沿って、凹溝が縦設されてなる3角形基板と;前記相対接する基板相互の凹溝に合致し、かつ該凹溝に沿って密接状に嵌合されるくさび棒と;の組合せにより横方向に連続する組合せ構造体が構成され、
前記組合せ構造体の外周に、該組合せ構造体の外周のくさび棒に嵌合する枠材が配され、
かつ、前記組合せ構造体の直通する凹溝に嵌合するくさび棒に沿って緊張線材を配し、
該緊張線材に引張力を導入してなる、
ことを特徴とする複合構造物。 - 緊張線材は両端の枠材に反力を取る請求項1に記載の複合構造物。
- 3角形基板は中空である請求項1又は2のいずれかに記載の複合構造物。
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