JP4263831B2 - 車両のエアバッグ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、車両の側部における衝突の衝撃を緩和して乗員を保護するエアバッグ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に側突保護のためのエアバッグ装置を搭載する技術は、各種提案されている。その中で、インフレータブルカーテン(カーテンエアバッグ)と称される装置がある。この種の装置は、車体側部の窓部における上側周辺部である車体パネル(フロントピラーやルーフサイドレール等)にガーニッシュを取付けると共に、該ガーニッシュと車体パネルとの間に折りたたみ状態のエアバッグを収納し、車両衝突時にガーニッシュの一部を車室内側に変形させてエアバッグを下向きに展開させ、該エアバッグにより乗員頭部を保護するようになっている。
【0003】
そして、このエアバッグ装置で用いられるガーニッシュには、車体パネルに強固に取付けられて車体パネルを確実に隠す機能と、車両衝突時にエアバッグを下向きに展開させるべく車室内側に変形する機能の両方が求められる。従って、特開平10−181497号公報で知られているように、カバー部は上下で二分割され、上側部分は車体パネルに対して強固に取付けられるように硬質樹脂で形成され、下側部分は車室内側に変形し易いように軟質樹脂で形成されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、車室内側から見て最も目立つ部分であるガーニッシュを上下で二分割して、それぞれを異なる材質の樹脂で形成したため、ガーニッシュの上下中央部には分割線が表れると共に、上下で光沢や色調が微妙に異なり、見映えの点で好ましくない。また、ガーニッシュが二部品から構成されるため、部品点数及び作業工数の増加も招く。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に着目してなされたものであり、見映えが良く、且つ部品点数及び作業工数の低減を図ることができる車両のエアバッグ装置を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は、車体側部の窓部における上側周辺部の車体パネルにガーニッシュを取付けると共に、該ガーニッシュと前記車体パネルとの間に折りたたみ状態のエアバッグを収納し、車両衝突時に前記ガーニッシュの一部を車室内側に変形させてエアバッグを下向きに展開させる車両のエアバッグ装置であって、前記ガーニッシュは、前記車体パネルに取付けられる凹部をなす固定部と、エアバッグを覆うと共に車両衝突時には前記固定部側境界部のヒンジを中心に車室内側に開いてエアバッグの下向き展開を許容するカバー部とを、樹脂にて一体的に形成した構造であり且つガーニッシュの片面における固定部の凹部の外側の全部からカバー部のヒンジを介すると共に前記エアバッグ全面を覆う下側のカバー部先端側を少なくとも一層の補強層を接合したことを特徴とする。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、前記ガーニシュの片面における固定部の凹部の外側の全部からカバー部のヒンジを介すると共に前記エアバッグ全面を覆う下側のカバー部先端側を少なくとも一層の補強層を接合したことにより、前記エアバッグの展開時に最大の変形が生起されるヒンジを含む箇所が補強されるため、ガーニッシュの車体パネルに対する必要な取付強度が確保される。また、エアバッグに対応しない部分では、車体パネルを確実に覆うことができるし、エアバッグに対応する部分では、カバー部の形状を維持しつつ変形を可能にすることで、エアバッグ収納用カバーとして機能する。また、ガーニッシュ全体の強度を材質的に高めるのではなく、補強層を接合することで構造的に高めたため、車両衝突時にはカバー部がヒンジから変形可能で、エアバッグの下向き展開を許容する。このような機能から、ガーニッシュは、1ピースのものでよく、すっきりした見映えにすることができる。そして、部品点数の増加がなく、組立における工数増加の問題もない。いずれにしても、ガーニッシュの材質としては、格別の耐衝撃処方を施した樹脂を必要とせず、周囲の内装部品との色調や光沢の整合のための新規な開発作業が不要で、従来の材料選択手法に従えばよい。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記補強層が、前記ガーニッシュにおける前記エアバッグ側の内面に接合されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、前記補強層が、前記ガーニッシュにおける前記エアバッグ側の内面に接合されているため、補強層が車室内側から見えず、見映えの点で更に好ましい。また、車室内側の表面に接合する場合に比べて、車室内側へ開こうとするヒンジを補強する効果が大きい。更に、エアバッグの展開の際にエアバッグが補強層に接触して、エアバッグの滑性を向上させ、発熱を伴うインフレータにおいてガーニッシュ構造の熱的強度を向上させる効果がある。
【0010】
請求項3記載の発明は、前記補強層が、織布又は不織布のいずれかの布体であることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、前記補強層が織布又は不織布のいずれかの布体であるため、曲げや衝撃に対して柔軟な補強効果がある。
【0012】
請求項4記載の発明は、前記布体が、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維のいずれかの一又は複数を混織あるいは混編した織布であることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、布体と熱可塑性樹脂との接合力が高い。
【0014】
請求項5記載の発明は、前記ガーニッシュを形成する樹脂が、ABS、ポリプロピレン、オレフィン系エラストマーのいずれかであることを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、前記ガーニッシュを形成する樹脂が、熱可塑性樹脂のため、補強層との接合力が高い。
【0016】
請求項6記載の発明は、前記補強層を接合した前記ガーニッシュの衝撃強度が、−30°C以上におけるIZOD衝撃試験で非破壊であることを特徴とする。
【0017】
請求項6記載の発明によれば、低温における衝撃性が向上し、エアバッグ展開動作時における高速の曲げがあっても、原形を崩すことなく変形させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な一実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。図1中、符号1は、フロントピラーで、符号2は、ルーフサイドレールを示しており、車両側部の窓部の上側周辺部を形成している。フロントピラー1もルーフサイドレール2も、両方とも、「車体パネル」としてのインナパネル3とアウタパネル4とを結合して形成した閉断面構造をしている。そして、フロントピラー1の車内側(図2の右側)には、樹脂製のピラーガーニッシュ5が取付けられ、ルーフサイドレール2の車内側には、ルーフサイドガーニッシュ6が取付けられている。このピラーガーニッシュ5とルーフサイドガーニッシュ6とはほとんど同じ構造なので、以下ピラーガーニッシュ5の方を「ガーニッシュ」として代表的に説明する。尚、符号7は、インストルメントパネルで、符号8は、ステアリングホイールを示している。
【0019】
ガーニッシュ5には、矩形の凹部9が3カ所に形成されており、その部分がインナパネル3に予め設けられた溶接ナット10に対してボルト11により取付けられている。凹部9は、ボルト11による取付けが終了した後にガーニッシュ5と同じ樹脂で射出成形されたマスク板12にて覆われる。このマスク板12は、図示せぬ爪部により凹部9の内側に係合するようになっている。
【0020】
また、ガーニッシュ5は、ポリプロピレン樹脂を射出成形したもので、断面概略アーチ状をしており、凹部9を含む上側の固定部13と、下側のカバー部14とから形成されている。カバー部14における固定部13側の境界部分がヒンジHで、カバー部14は、このヒンジHを中心に車室内側へ開くように変形できる。ガーニッシュ5の表面には、天然皮革を模した微細の凹凸である革シボが成形金型から転写されている。カバー部14とインナパネル3との間には、スペースが形成され、そこにエアバッグ15が折りたたみ状態で収納されている。このエアバッグ15は、布などの包持体(ラッピング材)16で形状を保持しており、前端がフロントピラー1内のインフレータ17(図1)に接続されている。包持体(ラッピング材)16は、ナイロン織布、ポリエステル織布、樹脂を含浸した紙(例えばタイベック)などからできている。
【0021】
エアバッグ15は、対向する2枚の基布(ナイロンの200デニールの糸を用いた150g/m2目付量の織布)を互いに縫合し、さらに中間部に連結部18を縫合により設けて扁平に展開するようにしてある。エアバッグ15は、前後サイドウィンドウのほぼ全長に等しい長さを有した略平行四辺形をしており、下縁部には、カーテンエアバッグの技術において多くの適用例が知られるスチール、ナイロンなどの図示しないワイヤーロープが通され、展開時には、前後方向に引っ張られて、エアバッグ15が乗員を受け止めたときに外側に「逃げ」ないようになっている。エアバッグ15の上縁部は、図示しない取付タブが所定の間隔で複数設けられ、車体にビスなどで取付けられている。
【0022】
ガーニッシュ5自体は、前述のように、ポリプロピレン樹脂を射出成形したものであるが、このガーニッシュ5のエアバッグ15側の内面には、ポリプロピレン製の不織布である補強層19が接合されている。ポリプロピレン製の不織布は、長尺の原反をガーニッシュ5の内側形状をなす型に挟んで熱プレスしてプレフォーミングし、これを更に射出成形金型にインサートして一体的に積層状にしたものである(図3参照)。射出成形の他、モールスタンピング法によって積層成形してもよい。
【0023】
図3は、成形後のガーニッシュ5の断面を示しており、補強層19には、ガーニッシュ5の外形よりも外側にはみ出す余部20があり、凹部9でボルト11を貫通させる取付孔21には、閉塞部22がある。金型が閉じられて、取付孔21を形成するための金型側のピン(図示せず)によって補強層19が金型のコア(雄型)側に定位され、また余部20が金型の合わせ面で挟持されて周辺部を位置決めする。このようにして補強層19を挟み込んだ状態で閉じられた金型に樹脂を注入して冷却固化して図3に示した如き断面のガーニッシュ5となる。射出成形された溶融樹脂は、余部20及び閉塞部22によってコア側と補強層19側との間に入り込むことがなく、ガーニッシュ5と補強層19が二層をなして一体に成形される。また、同系の樹脂を組み合わせたので、界面で溶融接着が行われ、また熱プレス後、冷えきらないうちに、射出成形を実施することで密着性が良くなる。もちろん、補強層19にプラズマ処理、フレーム処理などを施して、表面活性を高めると更に良い。尚、余部20には、若干の薄い樹脂バリが形成されても良い。
【0024】
図3のように成形されたガーニッシュ5を金型から取り出し、図示しない別の加工台にセットして、同じく図示しないカッタ刃が所定の形状になるように整列され且つ該カッタが空圧駆動されて昇降する抜き型によって、前記余部20と閉塞部22とを切り取る。前記のバリも同時に切り落とされ、切り落とされた補強層19と共に再生工程に移送される。いずれもポリプロピレン樹脂であるので、特に再生用に好適である。
【0025】
次に、このようにして成形されたガーニッシュ5の車両衝突時における動作を説明する。車両が側面衝突を起こすと、図示せぬセンサーからインフレータ17に信号が送られ、インフレータ17からエアバッグ15の内部にガスが噴射される。包持体16内でエアバッグ15が膨張し、ガーニッシュ5におけるカバー部14を押し上げる。この時、補強層19が包持体16を介してエアバッグ15と当たり、展開初期の衝撃に対してカバー部14の形状を保持する。凹部9の下面に補強層19は、強く挟まれており、カバー部14の変形の支点となるヒンジHにおいて、曲げ方向の荷重に対し補強効果を奏する。カバー部14は、先端まで補強層19で補強されており、図2の矢示S方向への回動時のはね上げ動作と引き続いてその次に起こる戻り動作(揺動)に対してカバー部14の形状を維持しつつ変形を可能にする。すなわち、カバー部14の一部でも破損させることはない。
【0026】
このような動作における補強効果は、特に低温において顕著である。通常は、ガーニッシュ5に、エアバッグ15の衝撃力を想定した衝撃強度を有する材料を適用していない。従って、−30°Cにおける衝撃強度試験に通常耐えない。しかしながら、以上に説明した実施形態の構造においては、補強層19がガーニッシュ5を補強するので、クラック形成を抑え、形状を維持する。すなわち、エアバッグ15の収納に適用されるガーニッシュ5と、エアバッグ15を収納しない他の「ガーニッシュ」に対して、基本的に同一の材料を適用でき、広範な温度範囲に適合できる。また、実質的にガーニッシュ5の肉厚が増加しないので、前記のような低デニールで目付量の低い基布を使用した折りたたみ嵩を小さくできるエアバッグ15と組み合わせて、省スペース設計を実現することができる。このことから、フロントピラー1の車室内側への膨出が少なくなり、乗員の視界確保の面においても好ましくなる。
【0027】
【発明の効果】
この発明によれば、前記ガーニッシュの片面における固定部の凹部の外側の全部からカバー部のヒンジを介すると共に前記エアバッグ全面を覆う下側のカバー部先端側を少なくとも一層の補強層を接合したことにより、前記エアバッグの展開時に最大の変形が生起されるヒンジを含む箇所が補強されるため、ガーニッシュの車体パネルに対する必要な取付強度が確保される。また、エアバッグに対応しない部分では、車体パネルを確実に覆うことができるし、エアバッグに対応する部分では、カバー部の形状を維持しつつ変形を可能にすることで、エアバッグ収納用カバーとして機能する。また、ガーニッシュ全体の強度を材質的に高めるのではなく、補強層を接合することで構造的に高めたため、車両衝突時にはカバー部がヒンジから変形可能で、エアバッグの下向き展開を許容する。このような機能から、ガーニッシュは、1ピースのものでよく、すっきりした見映えにすることができる。そして、部品点数の増加がなく、組立における工数増加の問題もない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の一実施形態に係るフロントピラー及びルーフサイドレールを示す車室内側から見た側面図。
【図2】 図1中矢示SA−SA線に沿う断面図。
【図3】 成形時における図2に示すガーニッシュの断面図。
【符号の説明】
1 フロントピラー
2 ルーフサイドレール
3 インナパネル(車体パネル)
5 ピラーガーニッシュ(ガーニッシュ)
6 フールサイドガーニッシュ(ガーニッシュ)
9 凹部
13 固定部
14 カバー部
15 エアバッグ
17 インフレータ
19 補強層
H ヒンジ
Claims (6)
- 車体側部の窓部における上側周辺部の車体パネルにガーニッシュを取付けると共に、該ガーニッシュと前記車体パネルとの間に折りたたみ状態のエアバッグを収納し、車両衝突時に前記ガーニッシュの一部を車室内側に変形させてエアバッグを下向きに展開させる車両のエアバッグ装置であって、
前記ガーニッシュは、前記車体パネルに取付けられる凹部をなす固定部と、エアバッグを覆うと共に車両衝突時には前記固定部側境界部のヒンジを中心に車室内側に開いてエアバッグの下向き展開を許容するカバー部とを、樹脂にて一体的に形成した構造であり且つガーニッシュの片面における固定部の凹部の外側の全部からカバー部のヒンジを介すると共に前記エアバッグ全面を覆う下側のカバー部先端側を少なくとも一層の補強層を接合したことを特徴とする車両のエアバッグ装置。 - 請求項1記載の車両のエアバッグ装置であって、
前記補強層が、前記ガーニッシュにおける前記エアバッグ側の内側に接合されていることを特徴とする車両のエアバッグ装置。 - 請求項1又は請求項2記載の車両のエアバッグ装置であって、
前記補強層は、織布又は不織布のいずれかの布体であることを特徴とする車両のエアバッグ装置。 - 請求項3記載の車両のエアバッグ装置であって、
前記布体が、ポリアミド繊維、ポリエチレン繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維のいずれかの一又は複数を混織あるいは混編した織布であることを特徴とする車両のエアバッグ装置。 - 請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両のエアバッグ装置であって、
前記ガーニッシュを形成する樹脂が、ABS、ポリプロピレン、オレフィン系エラストマーのいずれかであることを特徴とする車両のエアバッグ装置。 - 請求項1〜5のいずれか1項に記載の車両のエアバッグ装置であって、
前記補強層を接合したガーニッシュの衝撃強度が、−30℃以上におけるIZOD衝撃試験で非破壊であることを特徴とする車両のエアバッグ装置。
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- 1999-12-28 JP JP37582899A patent/JP4263831B2/ja not_active Expired - Lifetime
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