JP4261954B2 - 多層配線基板 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は配線基板の機能を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることができる配線構造を有する多層配線基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体素子や電子部品等を搭載するための配線基板としてセラミックスから成る絶縁基体に配線導体を形成したセラミック配線基板が従来よりよく知られているが、このセラミック配線基板はセラミックグリーンシート積層法を採用することによって製作されており、具体的には、セラミック原料粉末にガラス粉末・有機バインダ・溶剤・可塑剤等を添加混合して泥漿状となし、これをドクターブレード法やカレンダーロール法等によってシート状に成形してセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を得るとともに、セラミックグリーンシート表面に金(Au)・銀(Ag)・パラジウム(Pd)・白金(Pt)・銅(Cu)・タングステン(W)・モリブデン(Mo)等の金属粉末に適当なガラス粉末・有機バインダ・溶剤・可塑剤等を添加混合して得られる金属ペーストをスクリーン印刷法により所定パターンに印刷塗布し、しかる後、このセラミックグリーンシートを複数枚積層して積層体となすとともに、この積層体を約800〜1600℃の適切な温度で焼成することによって製作される。
【0003】
一方、車載機器等に用いられる配線基板においては、機器の高機能化に伴い配線基板に流れる電流値は増加する一途をたどっており、従来から用いられていた厚膜印刷法や蒸着スパッタ法にて形成された、厚みが薄く断面積の小さな配線導体では、抵抗値が高く、大電流を流すことができなかった。
【0004】
これに対して、アルミニウム板や銅板等を回路パターン形状に加工した金属片をセラミック基板等の絶縁基板の表面にロウ材等で接合して配線導体を形成した配線基板もあるが、このような配線基板では回路は絶縁基板の表面にのみ形成されるので回路の多層化が困難であるため、多機能化や小型化に対応できなかった。
【0005】
そこで、配線導体の断面積が大きく、なおかつ多層化された配線基板として、セラミック配線基板の絶縁層に配線用空間部や溝を形成し、そこに金属導体を充填して形成した断面積の大きな層内配線導体を有するものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−21635号公報
【0007】
【特許文献2】
特開昭63−194号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、そのような層内配線導体を有する従来の多層配線基板においては、絶縁層と層内配線導体との熱膨張差に起因する熱応力が残留応力として存在していた。例えば絶縁層をガラスセラミック基板で形成し、層内配線導体として銅金属粉体を充填して、絶縁層と層内配線導体とを同時焼成で形成した場合では、焼成温度である約1000℃から室温までの降温過程において熱応力が発生し、この応力が多層配線基板内に残留することとなる。
【0009】
このような残留応力は、絶縁層と配線導体の中でも断面積の大きい層内配線導体との間でとりわけ大きいものとなるので、多層配線基板に対して落下等により機械的な衝撃が加わった際や、配線基板に半導体素子を搭載して使用した際の半導体素子の動作時発熱による熱印加および冷却の繰り返し等の温度変化によって、絶縁層と層内配線導体との間に剥離が発生してしまうという問題点があった。また、層内配線導体は通常その厚みより幅の方が大きいので、層内配線導体とその側面の絶縁層との間の剥離が発生しやすく、また、この剥離を起点として絶縁層にクラックが発生し、このクラックの進展により他の配線導体が断線してしまうという問題点があった。
【0010】
その結果、従来の多層配線基板を用いた機器は、その機能を長期間にわたり正常かつ安定に発揮させることができないという問題点を有していた。
【0011】
本発明は、以上のような従来の技術の問題点を解決すべく案出されたものであり、その目的は、多層配線基板の絶縁層と断面積が大きい層内配線導体との間の剥離の発生を防止することにより、この多層配線基板を使用した機器・装置の機能を長期間にわたり正常かつ安定に発揮させることができる多層配線基板を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の多層配線基板は、絶縁層および配線導体が多層に積層されて成り、前記配線導体は、前記絶縁層に配線パターン状に形成された溝が導体で充填された層内配線導体部を有するとともに、この層内配線導体部の前記溝の開口側の主面に被着された、前記主面より幅を広くして前記配線パターン状に形成された層状の層表面配線導体部を有することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の多層配線基板は、上記構成において、前記層表面配線導体部の幅が前記層内配線導体部の前記主面の端部からそれぞれ前記層内配線導体部の幅の5%以上34%以下の大きさで広くされており、かつ前記層表面配線導体部の厚みが前記層内配線導体部の厚みの5%以上50%以下であることを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の多層配線基板は、上記構成において、前記層表面配線導体部に含まれるガラス含有量が前記層内配線導体部のそれより多いことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の多層配線基板は、上記構成において、前記層表面配線導体部に含まれる導体粉末の粒径が前記層内配線導体部のそれより大きいことを特徴とするものである。
【0016】
さらにまた、本発明の多層配線基板は、上記構成において、前記層表面配線導体部に含まれるバインダの熱分解温度が前記層内配線導体部に含まれるバインダの熱分解温度以上であることを特徴とするものである。
【0017】
加えて、本発明の多層配線基板は、上記構成において、前記層内配線導体部に含まれるガラス含有量が15質量%以下であり、かつ前記層表面配線導体部より少ないことを特徴とするものである。
【0018】
加えて、本発明の多層配線基板は、上記構成において、前記層内配線導体部とこの層内配線導体部が形成された前記絶縁層との界面に、ガラス含有量が前記層内配線導体部よりも多い界面層を有することを特徴とするものである。
【0019】
本発明の多層配線基板によれば、配線導体が、絶縁層に配線パターン状に形成された溝が導体で充填された層内配線導体部を有するとともに、その溝の開口側の層内配線導体部の主面に被着された、その主面より幅を広くして前記配線パターン状に形成された層状の層表面配線導体部を有することから、層表面配線導体部が層内配線導体部およびこの層内配線導体部が形成された絶縁層(層内配線導体部の側面の絶縁層)の両方と接合された構造となるので、層表面配線導体部が層内配線導体部とこの層内配線導体部が形成された絶縁層との接合を補強することとなる。
【0020】
また、層内配線導体部の溝の開口側の主面が対向する位置に絶縁層が形成される場合は、層表面配線導体部は層間配線導体部として機能し、層内配線導体部の溝の開口側の主面が対向する絶縁層と層内配線導体部との接合も強固なものとなり、層内配線導体部とその絶縁層との間における剥離の発生も防止される。
【0021】
また、層表面配線導体部の幅を層内配線導体部の主面の端部からのそれぞれの張り出し量を層内配線導体部幅の5%以上34%以下の大きさで広くし、かつ層表面配線導体部の厚みをそれが被着されている層内配線導体部の厚みの5%以上50%以下としたときには、層表面配線導体部が層内配線導体部およびこの層内配線導体部が形成された絶縁層(層内配線導体部の側面が接している絶縁層)の両方と接合された構造となるため、層表面配線導体部が層内配線導体部とこの層内配線導体部が形成された絶縁層との接合をより適切に補強することができる。
【0022】
また、層表面配線導体部に含まれるガラス含有量が層内配線導体部のそれより多いものとしたときには、焼成時に層表面配線導体部から層内配線導体部や層内配線導体部が形成された絶縁層(層内配線導体部の側面が接している絶縁層)へのガラスの拡散量が多くなるために、ガラスによるアンカー効果が強まる。よって、層表面配線導体部が層内配線導体部およびこの層内配線導体部が形成された絶縁層の両方とより強く接合された構造となるため、層表面配線導体部が層内配線導体部とこの層内配線導体部が形成された絶縁層との接合をより適切に補強することができる。
【0023】
また、層表面配線導体部に含まれる導体粉末の粒径が層内配線導体部のそれより大きいものとしたときには、層表面配線導体部が層内配線導体部およびこの層内配線導体部が形成された絶縁層(層内配線導体部の側面が接している絶縁層)の両方と接合している部位におけるガラス接合面積が大きくなるために、より強く接合された構造となるため、層表面配線導体部が層内配線導体部とこの層内配線導体部が形成された絶縁層との接合をより適切に補強することができる。
【0024】
さらにまた、層表面配線導体部に含まれるバインダの熱分解温度が層内配線導体部に含まれるバインダの熱分解温度以上の場合には、層内配線導体部のバインダが昇温時に気化する際に、隣接する層表面配線導体部のバインダはこの時点ではまだ存在しており、層表面配線導体部は焼結が開始されておらずポーラスな状態のため、層内配線導体部のバインダは容易に気化することができる。これにより、層内配線導体部の焼結が均一に密に行なわれることとなるため、層表面配線導体部が、層内配線導体部およびこの層内配線導体部が形成された絶縁層(層内配線導体部の側面が接している絶縁層)の両方と安定してより強く接合された構造となる。その結果、層内配線導体部とこの層内配線導体部が形成された絶縁層との接合を、この層表面配線導体部でもってより適切に補強することができる。
【0025】
また、層内配線導体部に含まれるガラス含有量を15質量%とし、かつ層表面配線導体部より少ないものとしたときには、層内配線導体部と層表面配線導体部とが強く接合された構造を保ちながら、層内配線導体部と層内配線導体部が形成された絶縁層(層内配線導体部の側面が接している絶縁層)との界面でのガラス接合が生じるようになり、層内配線導体部と層内配線導体部が形成された絶縁層(層内配線導体部の側面が接している絶縁層)との接合をより適切に補強することができる。
【0026】
また、層内配線導体部とこの層内配線導体部が形成された絶縁層(層内配線導体部が接している絶縁層)との界面に、ガラス含有量が層内配線導体部よりも多い界面層を有するものとした場合には、層内配線導体部と、層表面配線導体部および層内配線導体部が形成された絶縁層(層内配線導体部が接している絶縁層)との接合をより適切に補強することができるとともに、接合強度を向上させるために層内配線導体部にガラスを含有させた場合と比較して、層内配線導体部に通電を阻害するガラスが含有されないため電気抵抗値を低くすることができ、その結果、大電流を流した場合の層内配線導体部の発熱を効果的に抑制することができる。
【0027】
その結果として、剥離を起点とした絶縁層のクラックの発生およびそのクラックの進展による他の配線導体の断線を防止することが可能な多層配線基板となるので、この多層配線基板を用いた機器・装置を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
【0028】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の多層配線基板を添付図面に基づき説明する。
【0029】
図1は本発明の多層配線基板の実施の形態の一例を示す断面図である。図1において、1は絶縁層、2は配線導体のうちの配線導体層、3および4は同じく配線導体のうちの層内配線導体部および層表面配線導体部、5は同じく配線導体のうちの貫通導体、6は層表面配線導体部の層内配線導体部の主面の端部からの張り出し部である。
【0030】
絶縁層1は、酸化アルミニウム質焼結体・窒化アルミニウム質焼結体・ムライト質焼結体・炭化珪素質焼結体・窒化珪素質焼結体・ガラスセラミックス質焼結体等のセラミックスから成る電気絶縁材料である。
【0031】
ガラスセラミックス質焼結体はガラス成分とフィラー成分とから成るが、ガラス成分としては、例えばSiO−B系・SiO−B−Al系・SiO−B−Al−MO系(但し、MはCa・Sr・Mg・BaまたはZnを示す)・SiO−Al−MO−MO系(但し、MおよびMは同一または異なってCa・Sr・Mg・BaまたはZnを示す)・SiO−B−Al−MO−MO系(但し、MおよびMは前記と同じである)・SiO−B−M O系(但し、MはLi・NaまたはKを示す)・SiO−B−Al−M O系(但し、Mは前記と同じである)・Pb系ガラス・Bi系ガラス等が挙げられる。また、フィラー成分としては、例えばAl・SiO・ZrOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物や、TiOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物・AlおよびSiOから選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル・ムライト・コージェライト)等が挙げられる。
【0032】
配線導体は、層内配線導体部3および層表面配線導体部4とは別に、通常の層状の配線パターン状あるいはベタパターン状の配線導体層2や貫通導体5も有している。それらを形成する導体には、例えば、タングステン(W)・モリブデン(Mo)・金(Au)・銀(Ag)・パラジウム(Pd)・白金(Pt)・ニッケル(Ni)・銅(Cu)・等の金属材料粉末を主成分とするメタライズ金属が用いられる。メタライズ金属はメタライズペーストを焼結させることにより得られるが、メタライズペーストの焼成収縮とガラスセラミックスの焼成収縮とを合わせたり、表層に形成される配線導体層2とガラスセラミックス質焼結体から成る絶縁層1との接合強度を確保したりするために、メタライズペースト中にガラス粉末やセラミック粉末を添加してもよく、配線導体層2・層内配線導体部3・層表面配線導体部4・貫通導体5を含む配線導体は、それぞれの部分で添加するガラス粉末やセラミック粉末の種類および添加量が異なるものであってもよい。
【0033】
本発明の多層配線基板は以下のようにして作製される。例えば絶縁層1がガラスセラミックス質焼結体から成る場合であれば、まずセラミック粉末・ガラス粉末等の原料粉末に適当な有機バインダ・可塑剤・有機溶剤等を添加混合して泥漿状となし、これを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法によりシート状に成形してセラミックグリーンシートを作製する。また、銅や銀等の低融点金属粉末に適当な有機溶剤・溶媒を添加混合してメタライズペーストを作製する。次に、セラミックグリーンシートに、例えば打ち抜き法により貫通導体5や層内配線導体部3を形成するための貫通孔および配線パターン状の溝を形成し、例えばスクリーン印刷法により、その貫通孔および溝にメタライズペーストを埋め込み、続いてその他の配線導体層2・層表面配線導体部4の形状にメタライズペーストを印刷する。これら導体が印刷されたセラミックグリーンシートを積層し、必要に応じて50〜100℃の温度で3〜20MPaの圧力で加圧して圧着し、約800〜1000℃の温度で焼成する。さらに、多層配線基板の表面に露出する配線導体2や層表面配線導体4の表面には、腐食防止等のためにニッケルめっきおよび金めっきを被着させるとよい。
【0034】
本発明の多層配線基板は、絶縁層1および配線導体が多層に積層されて成り、配線導体は、絶縁層1に配線パターン状に形成された溝が導体で充填された層内配線導体部3を有するとともに、この層内配線導体部3の前記溝の開口側の主面に被着された、層内配線導体部3の主面より幅を広くして前記配線パターン状に形成された層状の層表面配線導体部4を有することを特徴とするものである。このような層表面配線導体部4を有することから、層表面配線導体部4が層内配線導体部3およびこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1(層内配線導体部3の側面の絶縁層1)の両方と接合された構造となるので、層表面配線導体部4が層内配線導体部3とこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1との接合を補強するように作用し、両者の間における剥離の発生が防止される。
【0035】
また、層内配線導体部3の溝の開口側の主面が対向する位置に絶縁層1が形成される場合(層表面配線導体4が2つの絶縁層1の間にある場合)は、層表面配線導体部4は層間配線導体部として機能し、層内配線導体部3の溝の開口側の主面が対向する絶縁層1と層内配線導体部3との接合も強固なものとなり、層内配線導体部3とその絶縁層1との間における剥離の発生も防止される。これは、層表面配線導体部4と層内配線導体部3とが焼結して一体となるので、層内配線導体部3の溝の開口側の主面とその開口が対向する絶縁層1との接合面積が実質的に大きくなるからである。
【0036】
これらの結果として、断面積の大きい層内配線導体部3と絶縁層1との間における剥離を起点とした絶縁層1のクラックの発生およびそのクラックの進展による他の配線導体の断線を防止することが可能な多層配線基板となるので、この多層配線基板を用いた機器・装置を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
【0037】
層表面配線導体部4は、層内配線導体部3の溝の開口側の主面に層内配線導体部3と同様の配線パターン状にその主面より幅を広くして形成され被着されるので、溝が絶縁層1を貫通する場合には層内配線導体部3の両主面に被着されるものとなり、溝が絶縁層1を貫通しない場合は層内配線導体部3の片方の主面にしか被着されないものとなるが、いずれの場合でも同様の剥離の発生防止の効果が得られる。
【0038】
また、層表面配線導体部4の層内配線導体部3端部からの配線幅の張り出し量を層内配線導体部幅4の5%以上34%以下とし、且つ前記層表面配線導体部4の配線厚みを層内配線導体部3の配線厚みの5%以上50%以下とすることにより、層表面配線導体部4が層内配線導体部3およびこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1(層内配線導体部3の側面が接している絶縁層)の両方と接合された構造となるため、層表面配線導体部4が層内配線導体部3とこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1との接合をより適切に補強することとなる。
【0039】
層表面配線導体部4の層内配線導体部3端部からの配線幅の張り出し量(張り出し部6の張り出し幅)が層内配線導体部幅3の5%未満の場合では、層表面配線導体部4のスクリーン印刷工程による形成時において発生する印刷ズレにより、その層表面配線導体部4が層内配線導体部3およびこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1の両方と接合されない場合が発生することがある。その結果、層表面配線導体部4が補強構造として不十分な状態になり、前述した断面積の大きい層内配線導体部3と絶縁層1との間における剥離を起点とした絶縁層1のクラックの発生およびそのクラックの進展による他の配線導体の断線を防止できないことがある。よって、層表面配線導体部4の層内配線導体部3端部からの配線幅張り出し量(張り出し部6の張り出し幅)は層内配線導体部幅3の5%以上が望ましい。
【0040】
一方、34%を超えると、層内配線導体部3および層表面配線導体部4を電気信号の電流が通過する際、表皮効果が大きくなり層表面配線導体部4の電流密度が増大することがあり、このため表1および図2に示すように、層内配線導体部3の抵抗値が見かけ上増大し電気信号の電流の通過を妨げる要因となることがある。
【0041】
【表1】
Figure 0004261954
【0042】
なお、表1は張り出し幅(%)を変化させたときに配線導体層2に電流値8.00Aの電流を流すのに必要な印加電圧値(V)およびそのときの配線抵抗値(Ω)の例を示したものである。また、図2は、その張り出し幅に対する印加電圧値の変化の様子を、横軸に張り出し幅(%)を、縦軸に印加電圧値(V)をとって、各点の値をプロットするとともに特性曲線で示したものである。ここで、配線導体層2に大電流を通せることが要求される車載用の配線基板への使用を考えると、その印加電圧値として許容される上限値が約12Vであることから、表1および図2に示した評価結果によれば、層表面配線導体部4の張り出し部6の張り出し幅が層内配線導体部3の34%を超えると、配線抵抗値が急激に増加して8Aの電流を通過させるのに必要な印加電圧値が12Vを超えてしまい、不適当なものとなってしまうことが分かる。
【0043】
よって、層表面配線導体部4の層内配線導体部3の主面の端部からの配線幅の張り出し量(張り出し部6の張り出し幅)は層内配線導体部3の幅の34%以下が望ましい。
【0044】
層表面配線導体部4の配線厚みが層内配線導体部3の配線厚みの5%未満の場合では、層表面配線導体部4を導体ペーストで作製するためのスクリーン印刷工程にて不可避的に発生する印刷ズレにより、層内配線導体部3に対する層表面配線導体部4の位置ズレが発生するため、その層表面配線導体部4が層内配線導体部3およびこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1の両方と接合されない場合が発生することがある。その結果、層表面配線導体部4が補強構造として不十分な状態になり、前述した断面積の大きい層内配線導体部3と絶縁層1との間における剥離を起点とした絶縁層1のクラックの発生およびそのクラックの進展による他の配線導体の断線を防止できない。よって層表面配線導体部4の配線厚みは層内配線導体部3の配線厚みの5%以上が望ましい。
【0045】
層表面配線導体部4の配線厚みが層内配線導体部3の配線厚みの50%を超えると、前述のセラミックグリーンシートの積層時に必要に応じて50〜100℃の温度で3〜20MPaの圧力で加圧して圧着するが、その際に層内配線導体部3の配線厚みが上下の層表面配線導体部4の厚み分と同じ厚みとなり、層内配線導体部3と層表面配線導体部4との弾性収縮力が等しくなるために、加圧しても層表面配線導体部4の中央部は薄くならず、端部は平面方向に圧力が加わっていないために極端に薄くなり変形が生じることがある。よって、層表面配線導体部4の配線厚みは層内配線導体部3の配線厚みの50%以下が望ましい。
【0046】
また、層表面配線導体部4に含まれるガラス含有量が層内配線導体部3のそれより多いものとすることにより、焼成時の層表面配線導体部4から層内配線導体部3やこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1(層内配線導体部3の側面が接している絶縁層1)へのガラスの拡散量が多くなるために、ガラスによるアンカー効果が強まる。よって、層表面配線導体部4が層内配線導体部3およびこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1の両方とより強く接合された構造となるため、層表面配線導体部4が層内配線導体部3とこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1との接合をより適切に補強することとなる。
【0047】
層表面配線導体部4に含まれるガラス含有量が層内配線導体部3のそれより少ない場合では、その層表面配線導体部4が層内配線導体部3およびこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1の両方と接合されない場合が発生することがある。その結果、層表面配線導体部4が補強構造として不十分な状態になり、前述した断面積の大きい層内配線導体部3と絶縁層1との間における剥離を起点とした絶縁層1のクラックの発生およびそのクラックの進展による他の配線導体の断線を防止できないことがある。よって、層表面配線導体部4に含まれるガラス含有量が層内配線導体部3のそれより多いことが望ましい。
【0048】
一方、層表面配線導体部4単独でのガラス含有量が大きくなりすぎると、焼成工程における焼結収縮の際に、層表面配線導体部4と層内配線導体部3との熱収縮速度に差が生じる。このため層表面配線導体部4と層内配線導体部3との間にクラックが生じ、そのクラックの進展による他の配線導体の断線を防止できないことがある。また、一般的に、層表面配線導体部4単独に含まれるガラス含有量が45質量%以上になると、層表面配線導体部4内でガラス組織が連続的につながってしまい導電性を妨げてしまうことがある。このため、層表面配線導体部4単独に含まれるガラスの含有量は45質量%未満が望ましい。
【0049】
また、層表面配線導体部4に含まれる導体粉末の粒径が層内配線導体部3のそれより大きいものとすることにより、層表面配線導体部4が層内配線導体部3およびこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1(層内配線導体部3の側面が接している絶縁層)の両方と接合している部位におけるガラス接合面積が大きくなるために、層表面配線導体部4が層内配線導体部3およびそれが形成された絶縁層1の両方とより強く接合された構造となるため、層表面配線導体部4が層内配線導体部3とこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1との接合をより適切に補強することとなる。
【0050】
層表面配線導体部4に含まれる導体粉末の粒径が層内配線導体部3のそれより小さい場合では、焼結時に層表面配線導体部4が層内配線導体部3より先に焼結してしまい、層内配線導体部3の焼結収縮を阻害することがあるために、その層表面配線導体部4が層内配線導体部3およびこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1の両方と強く接合されない場合が発生することがある。その結果、層表面配線導体部4が補強構造として不十分な状態になり、前述した断面積の大きい層内配線導体部3と絶縁層1との間における剥離を起点とした絶縁層1のクラックの発生およびそのクラックの進展による他の配線導体の断線を防止できないことがある。よって、層表面配線導体部4に含まれる導体粉末の粒径が層内配線導体部3のそれより大きいことが望ましい。
【0051】
一方、層表面配線導体部4と層内配線導体部3との導体粉末の粒径が同じ大きさの場合は、焼結収縮は安定しているが、層表面配線導体部4と層内配線導体部3とのバルク強度が同じ程度のものとなるために、補強構造として存在する層表面配線導体部4へ熱的応力が加わった際に、層表面配線導体部4と絶縁層1との間は十分な強度で接合されているが、層表面配線導体部4の内部で破壊が生じ、絶縁が起こる可能性がある。このため層表面配線導体部4の内部にクラックが生じ、本来の目的である、層内配線導体部3のクラックの進展による他の配線導体の断線の防止を行なえないことがある。よって、層表面配線導体部4に含まれる導体粉末の粒径が層内配線導体部3のそれより大きいことが望ましい。
【0052】
さらにまた、層表面配線導体部4に含まれるバインダの熱分解温度を層内配線導体部3に含まれるバインダの熱分解温度以上にすることにより、層内配線導体部3のバインダが昇温時に気化する際に、隣接する層表面配線導体部4のバインダはこの時点ではまだ存在しており、層表面配線導体部4は焼結が開始されておらずポーラスな状態のため、層内配線導体部3のバインダは容易に気化することができる。これにより、層内配線導体部3の焼結が均一に密に行なわれることとなるため、層内配線導体部3およびこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1(層内配線導体部3の側面が接している絶縁層)の両方とこの層表面配線導体部4との焼結状態が均一になって、安定に、かつより強く接合された構造となり、層内配線導体部3とこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1との接合をこの層表面配線導体部4がより適切に補強することができるようになる。
【0053】
層表面配線導体部4に含まれるバインダの熱分解温度が層内配線導体部3に含まれるバインダの熱分解温度より低い場合には、焼結工程時に、層内配線導体部3のバインダが昇温時に気化する際に、隣接する層表面配線導体部4のバインダがこの時点ですでに気化しており層表面配線導体部4は焼結を開始している状態となる。すなわち、層内配線導体部3のバインダは焼結した層表面配線導体部4に阻まれることとなり、容易に気化ができない場合がある。これにより、層内配線導体部3内のバインダが層内配線導体部3内で炭化して、層内配線導体部3が疎な焼結状態となる場合がある。このため、層表面配線導体部4が層内配線導体部3およびこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1の両方と十分な強度で接合されないか、もしくは、脆弱な接合となることがある。その結果、層表面配線導体部4が補強構造として不十分な状態になり、前述した断面積の大きい層内配線導体部3と絶縁層1との間における剥離を起点とした絶縁層1のクラックの発生およびそのクラックの進展による他の配線導体の断線を確実に防止できなくなることがある。よって、層表面配線導体部4に含まれるバインダの熱分解温度が層内配線導体部3に含まれるバインダの熱分解温度より高いことが望ましい。
【0054】
一方、層表面配線導体部4と層内配線導体部3とに含まれるバインダの熱分解温度が同じ温度の場合は、層内配線導体部3内のバインダの気化は層表面配線導体部4内のバインダの気化とほぼ同時に開始され、その気化の状態が安定しているため、層表面配線導体部4と層内配線導体部3とに含まれるバインダの熱分解温度が同じであっても本発明の効果を確実に得ることができる。
【0055】
なお、このように層表面配線導体部4に含まれるバインダの熱分解温度を層内配線導体部3に含まれるバインダの熱分解温度以上にする場合には、絶縁層1のセラミックスに含まれるバインダの熱分解温度を超えない範囲に設定することが好ましい。これは、層表面配線導体部4に含まれるバインダの熱分解温度が絶縁層1のセラミックスに含まれるバインダの熱分解温度を超えると、絶縁層1のセラミックスが層表面配線導体部4より早く焼結することとなり、そうなると層表面配線導体部4に含まれるバインダが気化できなくなってしまい、絶縁層1の内部に炭素分が残留することとなってしまうためである。
【0056】
そのような好適な例としては、絶縁層1のセラミックスの焼結温度が800〜1000℃である場合には、セラミックグリーンシートに含まれるバインダの熱分解温度は400〜600℃であるので、これに対して層表面配線導体部4に含まれるバインダの熱分解温度を400℃未満とすることが適当である。
【0057】
また、層内配線導体部3に含まれるガラス含有量を15質量%とし、かつ層表面配線導体部4より少ない含有量でガラスを添加することにより、層内配線導体部3と層表面配線導体部4との強く接合された構造を保ちながら、層内配線導体部3と層内配線導体部が形成された絶縁層1(層内配線導体部の側面が接している絶縁層)との界面でのガラス接合を生じさせることができるようになり、層内配線導体部3と層内配線導体部が形成された絶縁層1(層内配線導体部の側面が接している絶縁層)との接合をより適切に補強することができる。
【0058】
これに対し、層内配線導体部3に含まれるガラス含有量が層表面配線導体部4のそれより多い場合は、その層表面配線導体部4が層内配線導体部3およびこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1の両方と十分な強度で接合されない場合が発生することがある。その結果、層表面配線導体部4が補強構造として不十分な状態になり、断面積の大きい層内配線導体部3と絶縁層1との間における剥離を起点とした絶縁層1のクラックの発生およびそのクラックの進展による他の配線導体の断線の発生を防止できないことがある。よって、層表面配線導体部4に含まれるガラス含有量は、層内配線導体部3のそれより多いことが望ましい。
【0059】
また、層内配線導体部3のガラス量がこの層内配線導体部3に占める割合で15質量%を超えると、層内配線導体部3内に十分な量を超えるガラスが存在することになり、焼成時に層表面配線導体部4から層内配線導体部3へのガラスの拡散が生じにくくなり、ガラスによるアンカー効果が弱まることがある。この結果、層表面配線導体部4と層内配線導体部3とが十分な強度で接合されなくなる場合が発生し、層表面配線導体部4が補強構造として不十分な状態になり、断面積の大きい層内配線導体部3と絶縁層1との間における剥離を起点とした絶縁層1のクラックの発生およびそのクラックの進展による他の配線導体の断線の発生を防止できなくなることがある。よって、層内配線導体部3に含まれるガラス含有量は、15質量%より少ないことが望ましい。
【0060】
また、層表面配線導体部4は層内配線導体部3の主面の幅より広い層状の導体部であるが、層内配線導体部3とこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1との接合を補強するのが目的であるから、ここでいう幅とは幅方向だけでなく長さ方向も含まれ、層表面配線導体部4の大きさは層内配線導体部3の幅方向に広いだけでなく、長さ方向にも長いものである。
【0061】
層内配線導体部3および層表面配線導体部4の形成は、上述したようにセラミックグリーンシートに配線パターン状に形成した溝に層内配線導体部3を形成する導体となるメタライズペーストを埋め込んで充填し、その主面上に層表面配線導体部4の形状にメタライズペーストを印刷すればよいが、配線パターン状の溝がセラミックグリーンシートを貫通している場合は、層表面配線導体部4の形状にメタライズペーストを印刷したセラミックグリーンシートの上に、貫通した溝を形成したセラミックグリーンシートをその層表面配線導体4の印刷パターンと貫通した溝とを位置合わせして積層した後に、その溝にメタライズペーストを埋め込み、そのメタライズペーストが充填された溝上に層表面配線導体部4の形状にメタライズペーストを印刷すれば、層内配線導体部3の両主面に層表面配線導体部4が形成される。
【0062】
次に、図3は本発明の多層配線基板の実施の形態の他の例を示す、図1と同様の断面図である。図3において図1と同様の個所には同じ符号を付してあり、1は絶縁層、2は配線導体のうちの配線導体層、3および4は同じく配線導体のうちの層内配線導体部および層表面配線導体部、5は同じく配線導体のうちの貫通導体、6は層表面配線導体部の層内配線導体部の主面の端部からの張り出し部である。そして、7は層内配線導体部3とこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1(層内配線導体部3が接している絶縁層1)との間に形成された界面層である。
【0063】
この界面層7は、層内配線導体部3とこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1(層内配線導体部3が接している絶縁層1)との界面に、ガラス含有量が層内配線導体部3のガラス含有量よりも多い層として形成されたものであり、このような界面層7を形成したときには、層内配線導体部3とこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1との界面でガラス接合を生じさせることができ、層内配線導体部3とこの層内配線導体部3が形成された絶縁層1との接合をより適切に補強することができる。さらに、層内配線導体部3に通電を阻害するガラスが含有されないため電気抵抗値を低くすることができ、その結果、大電流を流した場合の層内配線導体部3の発熱を効果的に抑制することができる。
【0064】
なお、界面層7の形状や厚みは、層内配線導体部3の材質や通電量等に応じて任意の形状・厚みを選択できるが、基板の内層配線構造の自由度を高め、かつ、基板の小型化に対応するためには、その厚みを層内配線導体部3の幅の0.1%から5%とすることが望ましい。
【0065】
なお、本発明は上述の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更は可能である。
【0066】
例えば、上述した作製方法においてガラスセラミック材料が焼結する温度では実質的に焼結収縮しない無機成分、例えばアルミナのグリーンシートをセラミックグリーンシート積層体の両面に積層して焼成すると、いわゆるX−Y平面方向の焼成収縮を抑制できるので、焼成収縮のバラツキによる配線基板の寸法のバラツキや反りを抑えることが可能となるので、好ましいものとなる。
【0067】
【発明の効果】
本発明の多層配線基板によれば、配線導体が、絶縁層に配線パターン状に形成された溝が導体で充填された層内配線導体部を有するとともに、その溝の開口側の層内配線導体部の主面に被着された、その主面より幅を広くして前記配線パターン状に形成された層状の層表面配線導体部を有することから、層表面配線導体部が層内配線導体部およびこの層内配線導体部が形成された絶縁層(層内配線導体部の側面の絶縁層)の両方と接合された構造となるので、層表面配線導体部が層内配線導体部とこの層内配線導体部が形成された絶縁層との接合を補強することとなる。
【0068】
また、層内配線導体部の溝の開口側の主面が対向する位置に絶縁層が形成される場合は、層表面配線導体部は層間配線導体部として機能し、層内配線導体部の溝の開口側の主面が対向する絶縁層と層内配線導体部との接合も強固なものとなり、層内配線導体部とその絶縁層との間における剥離の発生も防止される。
【0069】
また、層表面配線導体部の幅を層内配線導体部の主面の端部からのそれぞれの張り出し量を層内配線導体部幅の5%以上34%以下の大きさで広くし、かつ層表面配線導体部の厚みをそれが被着されている層内配線導体部の厚みの5%以上50%以下としたときには、層表面配線導体部が層内配線導体部およびこの層内配線導体部が形成された絶縁層(層内配線導体部の側面が接している絶縁層)の両方と接合された構造となるため、層表面配線導体部が層内配線導体部とこの層内配線導体部が形成された絶縁層との接合をより適切に補強することができる。
【0070】
また、層表面配線導体部に含まれるガラス含有量が層内配線導体部のそれより多いものとしたときには、焼成時に層表面配線導体部から層内配線導体部や層内配線導体部が形成された絶縁層(層内配線導体部の側面が接している絶縁層)へのガラスの拡散量が多くなるために、ガラスによるアンカー効果が強まる。よって、層表面配線導体部が層内配線導体部およびこの層内配線導体部が形成された絶縁層の両方とより強く接合された構造となるため、層表面配線導体部が層内配線導体部とこの層内配線導体部が形成された絶縁層との接合をより適切に補強することができる。
【0071】
また、層表面配線導体部に含まれる導体粉末の粒径が層内配線導体部のそれより大きいものとしたときには、層表面配線導体部が層内配線導体部およびこの層内配線導体部が形成された絶縁層(層内配線導体部の側面が接している絶縁層)の両方と接合している部位におけるガラス接合面積が大きくなるために、より強く接合された構造となるため、層表面配線導体部が層内配線導体部とこの層内配線導体部が形成された絶縁層との接合をより適切に補強することができる。
【0072】
さらにまた、層表面配線導体部に含まれるバインダの熱分解温度が層内配線導体部に含まれるバインダの熱分解温度以上の場合には、層内配線導体部のバインダが昇温時に気化する際に、隣接する層表面配線導体部のバインダはこの時点ではまだ存在しており、層表面配線導体部は焼結が開始されておらずポーラスな状態のため、層内配線導体部のバインダは容易に気化することができる。これにより、層内配線導体部の焼結が均一に密に行なわれることとなるため、層表面配線導体部が、層内配線導体部およびこの層内配線導体部が形成された絶縁層(層内配線導体部の側面が接している絶縁層)の両方と安定してより強く接合された構造となる。その結果、層内配線導体部とこの層内配線導体部が形成された絶縁層との接合を、この層表面配線導体部でもってより適切に補強することができる。
【0073】
また、層内配線導体部に含まれるガラス含有量を15質量%とし、かつ層表面配線導体部より少ないものとしたときには、層内配線導体部と層表面配線導体部とが強く接合された構造を保ちながら、層内配線導体部と層内配線導体部が形成された絶縁層(層内配線導体部の側面が接している絶縁層)との界面でのガラス接合が生じるようになり、層内配線導体部と層内配線導体部が形成された絶縁層(層内配線導体部の側面が接している絶縁層)との接合をより適切に補強することができる。
【0074】
また、層内配線導体部とこの層内配線導体部が形成された絶縁層(層内配線導体部が接している絶縁層)との界面にガラス含有量が層内配線導体部よりも多い界面層を有するものとした場合には、層内配線導体部と、層表面配線導体部およびこの層内配線導体部が形成された絶縁層(層内配線導体部が接している絶縁層)との接合をより適切に補強することができるとともに、接合強度を向上させるために層内配線導体部にガラスを含有させた場合と比較して、層内配線導体部に通電を阻害するガラスが含有されないため電気抵抗値を低くすることができ、その結果、大電流を流した場合の層内配線導体部の発熱を効果的に抑制することができる。
【0075】
その結果として、剥離を起点とした絶縁層のクラックの発生およびそのクラックの進展による他の配線導体の断線を防止することが可能な多層配線基板となるので、この多層配線基板を用いた機器・装置を長期間にわたり正常かつ安定に作動させることが可能となる。
【0076】
以上により、本発明によれば、多層配線基板の絶縁層と断面積が大きい層内配線導体との間の剥離の発生を防止することにより、この多層配線基板を使用した機器・装置の機能を長期間にわたり正常かつ安定に発揮させることができる多層配線基板を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多層配線基板の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】層表面配線導体部の張り出し幅と印加電圧との関係を示す線図である。
【図3】本発明の多層配線基板の実施の形態の他の例を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・・絶縁層
2・・・・配線導体層
3・・・・層内配線導体部
4・・・・層表面配線導体部
5・・・・貫通導体
6・・・・層表面配線導体部の層内配線導体部の主面の端部からの張り出し部
7・・・・層内配線導体部と絶縁層との界面層

Claims (9)

  1. 絶縁層および配線導体が多層に積層されて成り、
    前記配線導体は、
    前記絶縁層に配線パターン状に形成された溝充填された、第1のバインダを含む導体ペーストを焼成することにより得られる層内配線導体部と、
    該層内配線導体部の前記溝の開口側の主面に被着された、前記主面より幅を広くして配線パターン状に形成された、前記第1のバインダの熱分解温度以上の熱分解温度を有する第2のバインダを含む導体ペーストを焼成することにより得られる層表面配線導体部と、
    を有することを特徴とする多層配線基板。
  2. 前記層表面配線導体部の幅が前記層内配線導体部の前記主面の端部からそれぞれ前記層内配線導体部の幅の5%以上34%以下の大きさで広くされており、かつ前記層表面配線導体部の厚みが前記層内配線導体部の厚みの5%以上50%以下であることを特徴とする請求項1記載の多層配線基板。
  3. 前記層表面配線導体部に含まれるガラス含有量が前記層内配線導体部のそれより多いことを特徴とする請求項1記載の多層配線基板。
  4. 前記層表面配線導体部に含まれる導体粉末の粒径が前記層内配線導体部のそれより大きいことを特徴とする請求項1記載の多層配線基板。
  5. 前記層内配線導体部に含まれるガラス含有量が15質量%以下であり、かつ前記層表面配線導体部より少ないことを特徴とする請求項1記載の多層配線基板。
  6. 前記層内配線導体部と該層内配線導体部が形成された前記絶縁層との界面に、ガラス含有量が前記層内配線導体部よりも多い界面層を有することを特徴とする請求項1記載の多層配線基板。
  7. 前記絶縁層は、前記第2のバインダの熱分解温度以上の熱分解温度を有する第3のバインダを含むセラミックスを焼成することにより得られることを特徴とする請求項1記載の多層配線基板。
  8. 絶縁層および配線導体が多層に積層されて成り、前記配線導体は、前記絶縁層に配線パターン状に形成された溝が導体ペーストで充填された層内配線導体部と、該層内配線導体部の前記溝の開口側の主面に被着された、前記主面より幅を広くして配線パターン状に形成された層表面配線導体部とを有し、
    前記層表面配線導体部に含まれる第2のバインダの熱分解温度が前記層内配線導体部に含まれる第1のバインダの熱分解温度以上であることを特徴とするグリーンシート積層体。
  9. 絶縁層および配線導体が多層に積層されて成り、前記配線導体は、前記絶縁層に配線パターン状に形成された溝が導体ペーストで充填された層内配線導体部と、該層内配線導体部の前記溝の開口側の主面に被着された、前記主面より幅を広くして配線パターン状に形成された層表面配線導体部とを有するグリーンシート積層体を焼成することにより得られる多層配線基板の製造方法であって、
    第1のバインダを含む前記層内配線導体部、および、前記第1のバインダの熱分解温度以上の熱分解温度を有する第2のバインダを含む前記層表面配線導体部を焼成する工程を含むことを特徴とする多層配線基板の製造方法。
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