JP4260642B2 - 羽ばたき浮上移動装置 - Google Patents

羽ばたき浮上移動装置 Download PDF

Info

Publication number
JP4260642B2
JP4260642B2 JP2004018647A JP2004018647A JP4260642B2 JP 4260642 B2 JP4260642 B2 JP 4260642B2 JP 2004018647 A JP2004018647 A JP 2004018647A JP 2004018647 A JP2004018647 A JP 2004018647A JP 4260642 B2 JP4260642 B2 JP 4260642B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
wing
transmission shaft
front edge
rising
flapping
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2004018647A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005211143A (ja
Inventor
将樹 濱本
圭太 原
佳似 太田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sharp Corp
Original Assignee
Sharp Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sharp Corp filed Critical Sharp Corp
Priority to JP2004018647A priority Critical patent/JP4260642B2/ja
Publication of JP2005211143A publication Critical patent/JP2005211143A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4260642B2 publication Critical patent/JP4260642B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Toys (AREA)

Description

本発明は、羽を羽ばたかせることによって所定の流体力を生み出すことにより浮上し移動する羽ばたき浮上移動装置に関するものである。
従来の航空機による飛行よりも機動性において優れている羽ばたき飛行の工学的実現を目指した研究が、近年盛んになっている。これは、非定常空気力学の解析手法が、数十Hz〜1kHzという高い周波数における運動を解析できるまでに発達したことによるところが大きい。
文献“Wing rotation and the aerodynamic basis of insect flight”(SCIENCE 1999 June VOL 284 pp.1954-1960)において、M.Dickinsonらは、次のことを解明したことを述べている。
彼らは、ハエの羽の拡大模型を作成し、浮遊するパーティクルを含む流体中で、その羽の拡大模型に羽ばたき運動をさせる実験を行なった。この羽の拡大模型の運動は、時間軸において、実際のハエの羽の羽ばたき運動に対して相似な羽ばたき運動である。前述の実験では、羽の拡大模型は、ハエの羽が空気中で羽ばたき運動する状態とレイノルズ数が等価な状態で、羽ばたき運動を行なう。彼らは、このとき、前述のパーティクルの運動を撮影することによって画像として抽出し、それにより、実際のハエの羽ばたき運動によって生じる流体の詳細な挙動とその際に実際のハエの羽に発生する力について解明した。
この成果に基づき、Ron. Fearingらは、数cmオーダーの羽ばたき飛行を行なう浮上移動装置を製造している。この浮上移動装置については、文献“ Wing Transmission for a Micromechanical Flying Insect”,( R.S. Fearing, K.H. Chiang, M. Dickinson, D.L. Pick, M. Sitti, and J. Yan, IEEE Int. Conf. on Robotics and Automation, April, 2000.) に、その詳細が記されている。
" Wing rotation and the aerodynamic basis of insect flight"(SCIENCE 1999 June VOL 284 pp.1954-1960) " Wing Transmission for a Micromechanical Flying Insect",( R.S. Fearing, K.H. Chiang, M. Dickinson, D.L. Pick, M. Sitti, and J. Yan, IEEE Int. Conf. on Robotics and Automation, April, 2000.)
Dickinsonらは、羽の拡大模型を剛体と見なして、流体の挙動および実際のハエの羽に生じる力を近似計算によって算出している。そのため、Dickinsonらの実験結果に基づいて製造されたFearingらの浮上移動装置は、羽が剛体である。したがって、浮上移動装置の羽は、実際のハエの羽よりも余分な質量を有している。そのため、Fearingらの浮上移動装置は、羽の駆動ストロークが大きいとともに、その駆動機構が特殊なものに限られてしまう。
以下、前述の問題を具体的に説明する。
一般的に、羽の材料が同じであれば、羽の剛性を高めるためには、その羽の厚さを大きくしなければならない。たとえば、一般的な片持ち梁について考えると、その厚さが2倍になれば剛性は8倍になる。この際、片持ち梁の質量も2倍になる。
また、浮上移動装置が、昆虫の羽のような膜と梁との複合構造からなる羽であれば、羽の剛性の大部分は梁の部分が担っている。そのため、梁の厚みを2倍にすれば、羽の剛性は8倍になると考えられる。この際、浮上移動装置の羽の質量は2倍になる。このような羽の質量の増加は、駆動トルクを増加させるとともに、羽の駆動効率を低下させる。本発明者らのシミュレーションによると、羽の質量が3倍程度になると、同一質量を浮上させるために必要な機械的エネルギーが40%程上昇することが分かっている。
ところで、トンボなどの昆虫のホバリングを図6に示すような浮上移動装置の動作に置き換えて表現すると、羽部4を前後に往復運動させるための水平方向の伝達軸33の回動角αが±45°程度であり、羽部4を捻るための伝達軸33が延びる方向回りの伝達軸33の回動角βが±30°程度である。このような動作によれば、羽部4が弾性変形することにより、羽部4の後縁の回動角が±70°程度に達する。そのため、伝達軸33を駆動する駆動装置は、単位トルク当りの揚力が最も大きくなる迎え角を有する状態で、羽部4を流体に衝突させることができる。
本発明者らのシミュレーションによれば、トンボの場合、羽の長さ2/3〜3/4付近の部位の迎え角の値が、浮上力および駆動トルクに対して大きな影響を与えることが判明している。したがって、前述の部位における迎え角が等しければ、剛体の羽であっても、変形する羽であっても、浮上力および駆動トルクのそれぞれに大きな違いは見られない。
つまり、トンボは、羽を大きく弾性変形させることによって、剛体の羽を羽ばたき運動させたときに生じる浮上力と同等の浮上力を得ている。一般に、硬い物質よりも柔らかい物質の方が比重が小さい。したがって、トンボの羽は、同じ形状および同じ大きさの剛体の羽に比較して、同一浮上力を得るための質量が小さい。要するに、浮上移動装置の羽としてある程度柔らかい羽を用いれば、剛体の羽を用いて羽ばたき飛行するときに得られる浮上力とほぼ等しい浮上力を得ることができながらも、その浮上力を得るための機械的エネルギーを低減することができる。
逆に言うと、浮上移動装置の羽として剛体の羽を用いる場合には、同一浮上力を得るための羽の質量が、トンボのような柔らかい羽を浮上移動装置の羽として用いる場合に比較して大きくなってしまうため、羽を駆動するための駆動装置の機械的エネルギーが増大してしまうという問題がある。
さらに、上述のように、浮上移動装置の羽として柔らかい羽部4を用いれば、羽部4の変形に起因して迎え角が変化するため、図6に示す伝達軸33まわりの羽部4の回動角βは、±30°程度でよい。しかしながら、剛体の羽部4を浮上移動装置の羽として用いる場合、迎え角は伝達軸33の回動角βの値そのものであるため、羽部4の回動角βは±70°程度である必要がある。つまり、剛体の羽を用いる場合には、柔らかい羽に比較して、伝達軸33の伝達軸33が延びる方向の軸まわりの回動角βのストロークが大きくなってしまうという問題がある。
以上より、従来の研究において前提条件とされていた硬い羽は、柔らかい羽に比較して、羽ばたき飛行における特性が悪いため、羽ばたき飛行に適さない。
しかしながら、トンボのような生体の羽は、生物の自己組織化機能を用いて形成されるものであり、そのような羽を人工的に製造することは非常に困難であるという問題がある。
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、羽ばたき飛行に適した羽を有する羽ばたき浮上移動装置を提供することである。
本発明の羽ばたき浮上移動装置は、前縁部と前縁部から後縁部へ向かって延びるように設けられた羽膜部とを有する羽部と、一方端が羽部に固定され、駆動力を羽部に伝達する伝達軸と、伝達軸の他方端が取り付けられた機構であって、駆動力を生じさせることにより前縁部を往復運動をさせるとともに捻るように運動させる羽駆動機構と、羽駆動機構と羽膜部との間において羽膜部の前縁部側よりも後縁部側に近い位置と前縁部または伝達軸とを接続する部材であって、羽膜部の弾性変形または羽膜部の全体形状の変化を制限する変形制限部材とを備えている。
上記の構成によれば、変形制限部材の機能によって羽部が所望の弾性変形を超える弾性変形をしてしまう不都合を防止することができる。そのため、変形制限部材が機能する所定の速度で羽部を往復運動させた場合には、羽膜部の迎え角をほぼ一定の値に維持することができる。そのため、羽ばたき方の制御が容易になる。
また、変形制限部材は、前述の往復運動の往路の羽部の所定の位置の迎え角と、前述の往復運動の復路の羽部の所定の位置の迎え角とが同じ値になるように、羽膜部の弾性変形または羽膜部の全体形状の変化を制限することが望ましい。この構成によれば、往復運動の往路および復路の双方、すなわち、羽部の打ち上げおよび打ち下ろしの双方において、ほぼ同じ浮上力を得ることができるため、ホバリング時の制御が容易になる。この場合、前縁部をほぼ一定の速度で往復運動させることが望ましい。
また、変形制限部材は、移動速度が相対的に小さな前縁部の付根側の羽膜部の迎え角が、移動速度が相対的に大きな前縁部の先端側の羽膜部の迎え角よりも大きくなるように、羽膜部の弾性変形または羽膜部の全体形状の変化を制限することが望ましい。この構成によれば、速度が大きい羽部の先端側の迎え角を小さくし、速度が小さい羽部の付根側の迎え角を大きくすることができる。そのため、浮上移動装置は、失速が生じることなく、かつ、より大きな揚力を得ることができる羽ばたき方を行なうことができる。そのために、変形制限部材は、前縁部の先端よりも前縁部の付根に近い位置に設けられていることが望ましい。
なお、変形制限部材が羽部の一部であれば、浮上移動装置の構造を簡略化することができるが、変形制限部材が羽部の外部に設けられていてもよい。
また、変形制限部材は、より効率的に羽部の弾性変形を制限するために、羽面膜部の前縁部側よりも後縁部側に近い位置と前縁部または前縁部に連結された伝達軸部とを接続する部材であることが望ましい。さらに、変形制限部材と羽膜部との間に他の羽膜部が設けられていることが望ましい。この構成によれば、羽部の面積をより大きくすることができ、羽膜部のみならず他の羽膜部によっても流体力を発生させることができるため、ほぼ同じ質量の羽部を用いて、より効率的に浮上力を得ることができる。
また、前縁部を含む羽縁部は、羽膜部を保護する観点から、羽膜部よりも剛性が高い部材により構成されていることが望ましい。これによれば、羽部の質量をより高い強度を必要とする部分に効率的に集中させることができるため、羽を軽量化することができる。
また、羽部が軽量でありかつ高い強度を有するためには、前縁部と羽縁部との間に翅脈構造が形成されていることが望ましい。これにより、羽膜部の破れを防止することができる。
また、変形制限部材は、無負荷状態では所定の曲率を有しており、前縁部の往復運動によって負荷がかけられたときに曲率が小さくなる部材であることが望ましい。この構成によれば、羽部の動作が開始した直後は、羽部の速度が大きくなれば、それに伴って、羽膜部の弾性変形が大きくなるが、羽部の動作速度が変形制限部材の孕みがなくなるような値に達した後においては、羽膜部の弾性変形は制限され、羽膜部の迎え角は一定になる。したがって、より簡単な構造の変形制限部材で羽部の迎え角を一定の値に維持することが可能になる。
また、前縁部には、前縁部に沿って波板部が設けられていることが望ましい。一般に、波板部は、波板部の山または谷が延びる方向を含む平面内の曲げモーメントに対しては強いが、波板部が延びる方向を中心軸とする捻りモーメントに対しては弱い。したがって、前述の構成によれば、羽膜部は、前縁部から後縁部へ向かう方向を含む平面内の曲げ変形が生じ易くなるが、前縁部の付根から前縁部の先端へ向かう方向を含む平面内の曲げ変形が生じ難くなる。つまり、羽ばたき飛行により適した変形を羽膜部に生じさせることができる。
さらに、波板部は、少なくとも1つの山部と1つの谷部とを含むことが望ましい。この構成によれば、前縁部が延びる方向を中心軸とする捻りモーメントが前縁部に生じたときに、山部および谷部のうちいずれか一方は、角度が大きくなるが、他方は角度が小さくなるため、前縁部の捻り剛性の極端な低下を防止することができる。
羽駆動機構としては、次のような構成が好ましい。
羽駆動機構は、前述の羽ばたき浮上移動装置の本体の前後方向および左右方向を含む面に平行な面に沿って伝達軸を所定の中心点回りに回動させるアクチュエータを備えている。また、羽駆動機構は、伝達軸の周面または羽部に固定された固定部材と、伝達軸の所定の中心点回りの回動の両端の折り返し時のそれぞれにおいて、固定部材に接触する一対の被接触部材とを備えており、固定部材と被接触部材との接触により、固定部材が固定された伝達軸に伝達軸が延びる方向を回転軸とするトルクが加わる。
上記の構成によれば、1つの羽に1自由度のアクチュエータを1つ用いて浮上移動装置に羽ばたき動作を行なわせることができる。
本発明の一実施の形態の羽ばたき浮上移動装置について、図1〜図14を用いて説明する。
(全体の構成)
まず、本実施の形態の浮上移動装置の全体の主要な構成について、図1および図2を用いて説明する。なお、本実施の形態の浮上移動装置では、特に断らない限り、説明の簡便のため、羽の駆動に関わる主要な部分は、左右方向に垂直な面に対して鏡面対称の一対の構成要素からなるものとする。したがって、以後においては、浮上移動装置の左半分についてのみ説明を行ない、右半分の構成要素は、左半分に対して鏡面対称であるものとする。
ただし、主要な部分が左右対称であると仮定としたのは説明の簡便のためであり、本発明の浮上移動装置においては、左右対称であることは、必須の要件ではない。また、左右で一対の羽部が、3組以上用いられている構成および1組のみ用いられている構成のいずれであっても、本発明の浮上移動装置に適用することが可能である。
本実施の形態の羽ばたき浮上移動装置1は、図1および図2に示すように、支持構造9内にアクチュエータ2が設けられている。アクチュエータ2の駆動力がベアリング31および32を介して伝達軸33に伝えられ、それにより、伝達軸33が前後方向の往復運動を始める。伝達軸33の往復運動により羽部4が羽ばたき運動を開始する。本実施の形態では、アクチュエータ2、ベアリング31および32、伝達軸33、ならびに羽部4を主要な構成要素とする。
伝達軸33には、伝達軸33の並進運動(アクチュエータ2の回動:伝達軸33が扇型状の軌跡を描く運動)を用いて伝達軸33に伝達軸33が延びる方向を中心軸とする回動(羽部4を伝達軸33が延びる方向に見たときに羽部4が扇型状の軌跡を描く運動)を与える機構として固定部材34が伝達軸33に固定されている。なお、固定部材34は、羽部4に固定されていてもよい。
固定部材34は、アクチュエータ2の回動の両端付近それぞれにおいて、被接触部材351および352のそれぞれに接触する。固定部材34は、被接触部材351および352のそれぞれの接触面上を滑りながら移動する。それにより、伝達軸33は、伝達軸33が延びる方向を回転中心軸とする回転を行なう。固定部材34は被接触部材351および352のそれぞれに応じて2つの独立した突起部34aおよび34bのそれぞれを有している。なお、図2では、固定部材34は、単一の構成要素として描かれているが、接触部位としての突起部34aおよび34bが枝分かれしているため、2つの突起が伝達軸33に別個に2つ設けられているものと等価である。
被接触部材351および352のそれぞれは、支持構造9に対する相対的な位置が、支持構造9に設けられた被接触部材移動機構361および362のそれぞれによって変更され得るように構成されている。被接触部材移動機構361または362は、固定部材34が被接触部材351または352に接触しながらその表面上を移動する際に被接触部材351または352が固定部材34から受ける力よりも大きな力で被接触部材351,352を保持する。
また、ベアリング31および32のそれぞれは、羽部4の翼弦が鉛直方向と一致しかつ羽部4の後縁が下側を向いている状態を基準として、±30度の回転角の範囲内においてのみ回転可能である。したがって、ベアリング31および32のそれぞれは、伝達軸33が延びる方向を回転中心軸とする伝達軸33の回転を制限する伝達軸回転制限機構として機能する。
なお、前述の±30度という制限された伝達軸33の回転の角度は、説明の簡便のための一例であり、この数値に限定されるものではない。たとえば、羽部4が剛体であるならば、制限された伝達軸33の回転の角度は±80度程度であることが望ましい。
以上の構成により、アクチュエータ2が、アクチュエータ2の回動中心軸回りに往復回動運動をすると、その運動範囲の両端付近において、固定部材34が被接触部材351および352のそれぞれに接触する。それにより、伝達軸33が延びる方向を中心軸とする回動を伝達軸33が行なう。その後、伝達軸33の運動の方向が逆転し、固定部材34が被接触部材351または352から離れる。また、伝達軸33が延びる方向を中心軸とする回動の角度は、伝達軸回転制限機構により一定の値に制限されているとともに、羽部4は、所定の速度で周囲流体に衝突するように移動する。そのため、羽部4は周囲流体に対して一定の迎え角を保持した状態で移動する。以上により、羽部4は、アクチュエータ2の往復回動運動の中央部においては、羽部4に一般的な航空機の翼と同様の揚力が生じる。また、前述のアクチュエータ2の往復回動運動の両端付近では、羽部4の伝達軸33が延びる方向を中心軸とする回動運動によって生み出される回転揚力によって、羽部4に鉛直上向きの力が与えられる。この力により、浮上移動装置1は鉛直上向きに浮上する。
また、詳細については後述するが、本実施の形態の浮上移動装置1は、被接触部材移動機構361,362を用いて、左右それぞれの羽部4のアクチュエータ2の回動の振幅の中心を、別個独立して進行方向前側または進行方向後側にずらすことが可能である。それにより、浮上移動装置1は、進行方向を左および右のいずれかに変更すること、ならびに、前進および後退のいずれかを行なうことが可能である。なお、浮上移動装置1の前後方向に延びる軸を中心軸とする回転動作は、左の羽部4のアクチュエータ2および右の羽部4のアクチュエータ2のそれぞれの往復回動運動の、振幅および周波数のうち少なくともいずれかを異ならせることにより、実現されるものとする。
アクチュエータ2、ならびに、被接触部材移動機構361および362のそれぞれは、制御部5により制御される。また、アクチュエータ2、被接触部材移動機構361および362、ならびに制御部5のそれぞれは、電源6より供給される電力によって稼働する。
(支持構造)
次に、支持構造9について説明する。支持構造9は、支持構造としての機能を損なわない範囲内の質量であれば、より軽量であることが望ましい。この範囲は、従来のエンジニアリングの技術で求めることができる。たとえば、軽量化のあまり剛性が低下し過ぎてしまい、羽部4を駆動させるべきエネルギーが支持構造9の振動となって散逸することがないこと等が、その範囲を決定するための基準となる。本実施の形態の浮上移動装置1においては、軽量なカーボングラファイトが支持構造9に用いられる。
(羽駆動部)
次に、羽の駆動部について、図2〜7を用いて説明する。
(アクチュエータ)
まず、アクチュエータ2について、図2を用いて説明する。
本実施の形態の浮上移動装置1においては、アクチュエータ2として、超音波モータと一般に呼ばれているモータを用いる。本実施の形態においてアクチュエータ2として用いる超音波モータは、図2に示されるように、支持構造9に固定されているステータ部21に対してロータ部22を回動させることができる。
(ベアリングおよびその回転制限機構)
ベアリング31は、その外周部31aがロータ部22に固定されている。ベアリング32は、その外周部32aがロータ部22に固定されている。ベアリング31は、外周部31aに対して内周部31bが円滑に回転できるようになっており、内周部31bには伝達軸33が固定されている。ベアリング32は、外周部32aに対して内周部32bが円滑に回転できるようになっており、内周部32bには伝達軸33が固定されている。したがって、アクチュエータ2は、伝達軸33含む面であって、アクチュエータ2の主表面と平行な面において、伝達軸33をアクチュエータ2の回動中心軸回りに回動させることが可能である。
また、ベアリング31および32のそれぞれの回転角は、外周部31aと内周部31bとの間において外周部31aおよび内周部31bのそれぞれに当接することによって互いの相対的な位置関係の拘束する部位、ならびに、外周部32aと内周部32bとの間において外周部32aおよび内周部32bのそれぞれに当接することによって互いの相対的な位置関係を拘束する部位により、約60度に制限される。
なお、ベアリング31および32のそれぞれの回転角を制限する手法は、前述の手法に限定されるものではない。したがって、図2および図3では、説明の簡便のため、ベアリング31および32のそれぞれの回転角を制限する部位は、ハッチングが付された円弧状のマークで抽象的に表されている。また、回転制限機構により制限されるベアリング31および32のそれぞれの回転角の大きさを変更することが可能な機構を有していれば、羽部4の迎え角を変更することが可能である。
(被接触部材および固定部材の突起部による伝達軸回転機構)
次に、固定部材34および被接触部材351,352について図2〜7を用いて説明する。
説明の簡便のため、図2に示される円盤状のアクチュエータ2に対して相似な円形を底面に有する仮想円柱の周面内に被接触部材移動機構361,362および被接触部材351,352が位置するとみなし、その円柱の周面を展開して図3に示す。
固定部材34は、伝達軸33が延びる方向を中心軸として回転することが可能であるが、伝達軸回転制限機構として機能するベアリング31,32によりその回転が±30度の範囲内に制限される。図3に示された状態は、伝達軸33の回転角が−30度の状態、つまり、伝達軸33が羽部4の先端側から見て時計回りに最も大きく回転した状態である。
図3において、伝達軸33は右方向に移動すると仮定する。この際、羽部4に対しては、図3において左斜め上方向に流体力がかかっている。そのため、伝達軸33よりも羽部4が下側にあることから、伝達軸33には時計回り方向のトルクが羽部4から与えられる。しかしながら、伝達軸回転制限機構としてのベアリング31,32の機能により、伝達軸33は−30度より大きく時計回りに回転しない。そのため、図3に示す状態では、羽部4にかかる流体力は、伝達軸33を介して、浮上移動装置1に、図3において左斜め上方向への力として伝達される。
さらに、図3の状態よりも伝達軸33が右側に移動すると、固定部材34は被接触部材351に設けられた曲面部に接触する。その後、さらに伝達軸33が右方向へ移動することによって、固定部材34は被接触部材351の曲面部に接触しながら移動する。なお、固定部材34と曲面部との接触の態様は、アクチュエータ2の駆動態様、被接触部材351および固定部材34の取付位置、被接触部材351の移動の有無、ならびに被接触部材351の形状に基づいて決定される。本実施の形態においては、固定部材34と被接触部材351との衝突時の衝撃を和らげ、かつ、伝達軸33の回転がスムーズに開始されることが必要である。そのため、固定部材34の移動方向と、固定部材34と接触を開始する位置における曲面部が延びる方向とがほぼ同一であり、かつ、曲面部は、2次関数で表される曲線、3次関数で表される曲線または4次以上の関数で表される曲線上に位置するものとする。
さらに、伝達軸33そのものと被接触部材351との衝突を防ぐため、固定部材34は、図3に示されるように、伝達軸33に対して垂直な方向に延びる第1軸34cとその第1軸34cに対して垂直な方向であって第1軸34cが延びる方向から見たときに伝達軸33に対して垂直な方向に延びる第2軸34dとを有している。また、第2軸34dの両端には、球状の突起部34aと球状の突起部34bとが設けられている。
突起部34bが被接触部材351上の最も右端に達すると、その後、伝達軸33は、左方向に運動を始める。このとき、羽部4にかかる流体力は、図3において右斜め上方向となる。また、伝達軸33には羽部4の先端側から見て反時計回りのトルクがかかる。そのため、伝達軸回転制限機構により、伝達軸33の回転角が+30度に固定された状態で、伝達軸33は、図3の左方向へ移動する。その後、突起部34aが被接触部材352と接触する。このとき、突起部34aが被接触部材352の曲面部上を移動する態様と、突起部34bが被接触部材351の曲面部上を移動する態様とは、図3において左右対称である。ただし、図3において、突起部34aが被接触部材352の曲面部上を移動する態様と、突起部34bが被接触部材351の曲面部上を移動する態様とが異なるように、被接触部材351の形状または材質と被接触部材352の形状または材質とが異なっているか、または、突起部34aの形状または材質と突起部34bの形状または材質とが異なっていてもよい。
羽部4が剛体であれば、羽部4および伝達軸33は、図4に示すように運動する。しかしながら、実際には、羽部4は弾性変形する。そのため、図4に示す剛体の羽部4の運動と等価な運動を実現するためには、伝達軸回転制限機構の回転制限範囲を、羽部4が剛体である場合より小さく設定することが最も簡便である。その結果、羽部4の運動は、図5に示されるようなものとなる。
なお、本実施の形態の浮上移動装置1における固定部材34および被接触部材351,352は、本発明の浮上移動装置の機能を実現することができるのであれば、必ずしも図3に示した形状および位置である必要はない。たとえば、ベアリング31からさらに延長された伝達軸33の先端部に、伝達軸33に対して、図3に示す第1軸34cが延びる方向とは逆方向に第1軸が延びるように固定部材34が設けられており、この固定部材34に対応した位置に被接触部材351,352が設けられていても、本実施の形態と羽部4の運動と同様の運動を実現することができる。すなわち、アクチュエータ2よりも内側の空間において、図3において、第1軸34cと第2軸34dとの位置関係が同じ状態で、羽部4が延びる方向と同様の方向に第1軸34cが延びるように固定部材34が設けられていてもよい。
なお、本実施の形態の浮上移動装置においては、アクチュエータ2の回動角は±45°である。また、±45°のアクチュエータ2の回動によって生じる伝達軸33が延びる方向を中心軸とする羽部4の回動の角度は±30°と設定されているものとする。
(被接触部材移動機構)
次に、被接触部材移動機構361,362について、図3および7を用いて説明する。
被接触部材移動機構361,362は、支持構造9に設置されており、被接触部材351,352がアクチュエータ2の外周上の点の回動の軌跡と相似形の円弧状の軌跡を描くように被接触部材351,352の位置を移動させる機能を有する。この被接触部材351,352の位置の移動は、図3においては、被接触部材351、352が水平方向(左右方向)に移動することに相当する。
この被接触部材351,352の位置を浮上移動装置1の前方または後方にずらし、かつ、羽部4のアクチュエータ2の回動の軌跡が描かれる領域を浮上移動装置1の前方側または後方側にずらす。それにより、羽ばたき運動の振幅の範囲および振幅の中心位置を変更することができる。これにより、後述する飛行方向の転換などの制御を簡単に行なうことができる。
また、被接触部材移動機構361,362によって、伝達軸33が延びる方向を中心軸とする伝達軸33の回転の角度を制御することが可能である。たとえば、固定部材34が被接触部材351または352に接触している間に、伝達軸33の移動方向と同一方向に被接触部材351または352を移動させれば、伝達軸33が延びる方向を中心軸とする伝達軸33の回動動作は、被接触部材351または352の移動が行なわれない場合に比べて、緩慢になる。
被接触部材移動機構361および362は、トルク、質量、および消費エネルギーなどの条件が被接触部材351および352を移動させることができるように設定されているならば、特にその構成に制約はない。そこで、本実施の形態の浮上移動装置1の被接触部材移動機構361および362のそれぞれには、図7に示すように、応答性に優れた超音波リニアアクチュエータ381が用いられる。図7は、図3の展開図において、紙面に垂直に被接触部材移動機構361を切断したときの被接触部材移動機構361および被接触部材351それぞれの断面図である。
なお、被接触部材352および被接触部材移動機構362の構成と被接触部材移動機構361および被接触部材351の構成とは鏡面対称である。また、軽量化のため、被接触部材移動機構361と被接触部材351との接触部であって超音波リニアアクチュエータが存在しない部分には、潤滑性に優れたテフロン(R)ベアリング371が用いられている。また、空気から羽部4へ加えられる反力に起因して超音波リニアアクチュエータ381に加えられる力の影響を低減するため、超音波リニアアクチュエータ381は伝達軸33が延びる方向をその法線に有する面上にその面に沿って平行に延びるように設けられている。
また、被接触部材移動機構361,362は、固定部材34と被接触部材移動機構361,362との干渉を避けるため、固定部材34が移動する経路からずれた位置に設けられている。
(羽部)
次に、本実施の形態の羽ばたき装置の羽部4を、図8〜図12を用いて説明する。
<羽の主要構成>
図8および図9に示すように、羽部4は、前縁部41、内側枝部421、中央枝部422、羽面縁取部441、連結部43、羽面膜部442、および枝膜部45からなっている。また、梁状部材である前縁部41、内側枝部421、中央枝部422、羽面縁取部441、および連結部43のそれぞれは、ステンレスからなる。また、羽面膜部442および枝膜部45のそれぞれは、フィルム状部材からなっている。
前縁部41、内側枝部421、中央枝部422、および連結部43によって囲まれた領域に、枝膜部45が張られている。前縁部41、羽面縁取部441および中央枝部422によって囲まれた領域に、羽面膜部442が張られている。また、図9に示すように、連結部43は、羽部4が静止している状態において、上方に孕んでいる、すなわち、羽部4の面外方向に孕んでいる。なお、この連結部43は、羽部4の面外のいずれの側に孕んでいてもよい。また、連結部43は、羽ばたき動作の往復運動の往路および復路の双方において、孕みがなくなり、ほとんど弾性変形せずに引っ張り力が生じる程度の剛性を有する材質である。
羽面膜部442および枝膜部45のそれぞれの材料としては、室内用軽飛行機などに用いられているポリエチレン薄膜またはマイクロフィルムなどの軽量なものが用いられることが望ましい。しかしながら、この膜の性質は、本発明への関連性が低いため、本実施の形態では説明の簡便のため、その詳細については述べない。すなわち、この膜の剛性は、ステンレスに比べて遙かに小さく、かつ、羽ばたき飛行中に、極端に変形したり、破れたりして、浮上移動装置の空力特性に悪影響が及ぼされるものでなければ、いかなるものであってもよい。
<前縁部>
前縁部41は、厚さが20μmであり、長さが30mmであり、幅が2.5mmである。前縁部41、羽面縁取部441および羽面膜部442の断面模式図(図8のA−B線断面)、ならびに、前縁部41、連結部43および枝膜部45の断面模式図(図8のC−D線断面)は、図10に示されている。前縁部41は、図10から分かるように、山部および谷部のそれぞれを1つずつ有する波板状の構造を有している。山部と谷部とのピッチは1mmであり、山部の高さおよび谷部の深さは、それぞれ、0.5mmである。このような波板構造を、昆虫の羽における類似の形状の呼称を用いて、コルゲーションと称する。
また、羽駆動機構部としてのアクチュエータ2に近い側のコルゲーション一端、すなわち、前縁部41の付根Lは、並進自由度および回転自由度のそれぞれが伝達軸33によって拘束されている。以後、このように並進運動および回転運動の両自由度がともに拘束されていることを、単に、「拘束されている」と言う。 このコルゲーションの存在によって、前縁部41は、その長手方向、すなわち、前縁部41が延びる方向を含む面内に生じる曲げモーメントに対して高い剛性を有する。また、前縁部41は、前縁部41が延びる方向を中心軸とする回転によって生じる捻りモーメントに対しては通常の平板の曲げ剛性と同じ程度の剛性を有している。
<内側枝部>
内側枝部421は、厚さが40μmであり、幅が約0.2mmであり、長さが約10mmである。また、内側枝部421は、前縁部41に近い側の一端が、伝達軸33に対して拘束されており、前縁部41から遠い側の一端が、連結部43に拘束されている。
上記の構成により、内側枝部421は、伝達軸33に対して、その運動が拘束される。より具体的には、内側枝部421は、前縁部41を除いた羽部4の他の外周部分の2倍程度の厚さを有するため、弾性変形の度合いが低い。そのため、内側枝部421は、連結部43を介して羽面縁取部441の一部を拘束する。その結果、内側枝部421は、羽面膜部442の迎え角が所定の値以上にならないように、羽面膜部442の変形を拘束する。
<中央枝部>
中央枝部422は、厚さが20μmであり、幅が約0.2mmであり、長さが約10mmである。中央枝部422は、その前縁部41に近い側の一端が、前縁部41に対して拘束されている。また、中央枝部422は、前縁部41から遠い側の一端が、連結部43の内側枝部421に拘束されていない側の端部に拘束されている。さらに、中央枝部422は、羽面縁取部441の前縁部41に拘束されていない側の端部に拘束されている。この構成により、羽面膜部442は、その面内方向において張力を有するように、前縁部41、羽面縁取部441および中央枝部422によって保持されている。
<連結部>
連結部43は、厚さが20μm、幅が約0.2mmであり、長さが約15mmであり、一端が内側枝部421に拘束されている。また、連結部43は、浮上移動装置が羽部4を静止させている状態においては、図9に示されるように、上方に約2mmだけ膨らんでいる。
<羽面縁取部>
羽面縁取部441は、厚さが20μmであり、幅が約0.2mmであり、長さが約20mmであり、その一端が中央枝部422によって拘束され、その他端が前縁部41によって拘束されている。
<羽の変形の様子>
羽部4の変形は、以下に記載されている現象によって支配される。
前縁部41は、その長手方向の曲げモーメント、すなわち、前縁部41が延びる方向を含む面内の回転によって生じる曲げモーメントに対して高い剛性を有し、前後方向の曲げモーメント、すなわち、前縁部41が延びる方向を中心軸とする回転によって生じる捻りモーメントに対して変形し易い。また、本実施の形態において、羽部4は、図5に示されるような運動をするため、羽部4の変形は殆ど前後方向の曲げモーメントによって生じる。
また、本実施の形態においては、羽部4は、運動速度が大きい部分、すなわちアクチュエータ2から遠い部分ほど変形の度合いが大きい。また、内側枝部421は、伝達軸33に拘束されているとともに、羽部4より厚さが大きいため弾性変形の度合いが、他の部分に比較して小さい。連結部43は、その膨らみの曲率が変化するような曲げモーメントに対しては剛性が低く、その全長が変化するような引っ張り力に対しては剛性が高い。
以上のような羽の変形の様子が、図11には、加重と変位との関係によって示されている。図11は、図8の羽部4において、前縁部41の付根Lを固定端として先端Eに荷重を加えたときの、E点の荷重とE点の変位との関係を示すグラフである。連結部43に曲げ変形が生じ、主に連結部43の膨らみの曲率が変化する範囲内の荷重が図8のE点に加えられた場合には、E点の変形は非常に大きいことが、図11から分かる。また、連結部43の曲率が小さくなり、連結部43に引っ張り変形が生じる範囲の荷重が図8のE点に加えられた場合には、E点の変位は、極端に小さくなることが、図11から分かる。羽部4が左羽であるとした場合の、打ち下ろし時の羽部4の形状を図12に示す。
<羽の変形の効果>
図12に示されるように、羽部4は、その移動速度が小さいアクチュエータ2に近い側の部分の変形が、その移動速度が大きいアクチュエータ2から遠い側の部分の変形に比較して、小さい。そのため、羽部4の移動速度が小さいアクチュエータ2に近い側の部分の迎え角が、その移動速度が大きいアクチュエータ2から遠い側の部分の迎え角に比較して、大きい。弾性変形する羽部4は、打ち下ろしおよび打ち上げの双方において、前述のように羽が変形をする。そのため、打ち下ろしおよび打ち上げの双方において、図13に示される羽ばたき方のように、伝達軸33の捻り角すなわち伝達軸33の回転角βのみを制御することで、羽部4の各部位における迎え角を適切な値にすることができる。したがって、本実施の形態の浮上移動装置1は、移動速度が小さい羽部4の内側では、迎え角を大きくすることによって揚力を増加させ、かつ、移動速度が大きい羽部4の外側では、迎え角を小さくすることによって失速を防止するとともに流体の抵抗を受け難くすることができる。
また、打ち上げと打ち下ろしとの間で羽部4の変形が反転する切り返しのときには、浮上力が低下してしまうという問題がある。そのため、羽の切り返しに要する時間を極力短くすることが望ましい。したがって、前後方向の曲げモーメント、すなわち、前縁部41が延びる方向を中心軸とする回転によって生じる捻りモーメントに対して、羽部4を変形し易くしておくことが有効である。
しかしながら、羽を前後方向の曲げモーメントに対して変形し易くすると、前述の迎え角が適切な値にならないという問題がある。そこで、本実施の形態においては、図11に示すように、連結部43の曲げ剛性と引っ張り強度との相違を利用して、非線型な荷重−変位関係を有する羽部4を製造する。それによって、迎え角が所定の値に達すれば、その後、殆ど変形しないが、抑え角が所定の値に達するまでは大きく変形する羽を用いることによって、前述の相反する2つの問題を解決している。
(浮上可能要件)
本発明者らの実験によれば、図5および図6に示す羽部4の運動により発生する浮上力の最大値は、羽1枚あたり約0.13gfである。また、この浮上力を得る際に必要なアクチュエータ2の駆動トルクは最大約1gf・cmである。
羽部4の質量は約5mgである。伝達軸33の質量は約3mgである。固定部材34の質量は約2mgである。被接触部材351、352の質量は約6mgである。アクチュエータ2の質量は約80mgである。
浮上移動装置1は、支持構造9、制御部5および電源6の重量の合計が68mg以内となるように構成されれば、浮上することが可能である。ただし、電源6を無線で供給し、無線送信される電源の変換部分および制御部5をワンチップに集積して、そのワンチップを支持構造9上にパッケージングすれば、支持構造9および制御部5の合計の質量が5mg〜10mg以内となる。
さらに、アクチュエータ2の効率は今後の技術革新により向上させることが可能であるので、本実施の形態の浮上移動装置を浮上させることは実現可能である。
(飛行制御方法)
次に、飛行の制御方法について、図6、図13および図14を用いて説明する。なお、ここに示した飛行の制御方法は第一義近似的な例示である。実際には羽ばたきの変更によって羽に及ぼされる力は、周囲流体である空気と羽部4との相互作用によって複雑にその挙動が変化する。そのため、現実には下記する羽ばたき方の変更のみに対応して羽ばたき飛行の態様が行なわれるとは限らない。
また、ある羽ばたき飛行の状態を生み出す羽ばたき方を変更する手法は、以下に記述された手法以外にも存在する。
羽ばたき飛行により、3次元空間をくまなく移動するには、前進後退、左右への旋回、上昇および下降の3つの運動要素が実現される必要がある。まず、各運動要素およびその基本動作となるホバリングを実現する手法について述べる。
(ホバリング)
本実施の形態の浮上移動装置においては、図13に示す羽ばたき方でホバリングが可能である。固定部材34および被接触部材351,352のそれぞれの形状は、被接触部材移動機構361,362により被接触部材351,352が移動しない状態で、アクチュエータ2が伝達軸33を回動角α=±45°回動させる際に、この図13に示す運動が実現されるよう設計されている。
このため、図14に示されるように、左右のアクチュエータ2の回動の振幅の中心位置のそれぞれが浮上移動装置1のほぼ真横方向になる状態で、それぞれの振幅の中心位置に対して前後に±45°の振幅で羽部4を回動させることでホバリングが実現される。つまり、左のアクチュエータ2の回動の振幅の中心位置と左の羽部4の伝達軸33が延びる方向の先端とを結ぶ線と、右のアクチュエータ2の回動の振幅の中心位置と右の羽部4の伝達軸33が延びる方向の先端とを結ぶ線とが、ほぼ一直線上になるように、左右の羽部4のそれぞれが前後方向に往復運動すれば、浮上移動装置1はホバリングを行なう。
(前進および後退)
上述の羽部4の前後方向の±45°の回動により、羽部4には、鉛直下向きの流れ以外に、伝達軸33が延びる方向において、アクチュエータ2側から羽部4の先端側(伝達軸33の先端側)へ向かうように、図14に矢印で示すような流れが発生する。この流れを利用することで浮上移動装置1に前後方向の移動をさせることができる。
たとえば、被接触部材移動機構361および362のそれぞれを前方または後方に移動させ、アクチュエータ2の回動の振幅の中心位置を真横よりも前側または後側にずらすことで、羽部4の前後方向の往復運動である羽ばたき運動を真横よりも前側または後側に偏らせる。
それにより、上述の伝達軸33が延びる方向において、アクチュエータ2側から羽部4の先端側へ向かう流れを浮上移動装置1の前方または後方へ向けることができる。そのため、浮上移動装置1は後退する力または前進する力を得ることができる。ホバリング状態の羽ばたき方から、左の羽部4および右の羽部4のそれぞれについて、伝達軸33が延びる方向においてアクチュエータ2側から羽部4の先端側へ向かう流れを、浮上移動装置1の後方へ向ける羽ばたき方へ変更すれば、羽ばたき浮上移動装置1は前進する。
また、ホバリング状態の羽ばたき方から、左の羽部4および右の羽部4のそれぞれについて、伝達軸33が延びる方向においてアクチュエータ2側から羽部4の先端側へ向かう流れを浮上移動装置1の前方へ向ける羽ばたき方へ変更すれば、浮上移動装置は後退することが可能となる。この様子を図14に示す。
(左右それぞれへの旋回)
さらに、上述の羽部4の表面において、伝達軸33が延びる方向においてアクチュエータ2側から羽部4の先端側へ向かう流れを用いることで、浮上移動装置1を左右のいずれかへ旋回させることが可能である。なお、浮上移動装置1の重心は、真上から見たとき、左のアクチュエータ2の回転中心点と右のアクチュエータ2の回転中心点との中点に位置するものとする。
たとえば、左の羽部4のみに関して、伝達軸33が延びる方向においてアクチュエータ2側から羽部4の先端側へ向かう流れを浮上移動装置1の後方に向ければ、羽ばたき浮上移動装置1は右へ旋回しながら前進する。逆に、右の羽部4のみに関して、伝達軸33が延びる方向においてアクチュエータ2側から羽部4の先端側へ向かう流れを浮上移動装置1の後方に向ければ、浮上移動装置1は左へ旋回しながら前進する。
また、左の羽部4のみに関して、伝達軸33が延びる方向においてアクチュエータ2側から羽部4の先端側へ向かう流れを前方に向け、かつ、右の羽部4のみに関して、伝達軸33が延びる方向においてアクチュエータ2側から羽部4の先端側へ向かう流れを後方に向ければ、浮上移動装置1は、その上方から見て反時計回りにその場で回転することができる。
(浮上および降下)
浮上および降下する最も単純な方法は、アクチュエータ2の駆動を変更し、羽ばたき周波数を上昇または低下させる手法が挙げられる。
また、前述の手法以外の浮上および降下を行なう手法としては、羽ばたきのストローク(振幅)を大きくする手法、すなわちアクチュエータ2による伝達軸33の前後方向の回動の振幅を大きくする手法が挙げられる。
より具体的には、アクチュエータ2の回動の振幅を大きくして、かつ、被接触部材移動機構361,362によって、被接触部材351,352を、伝達軸33の移動方向と同方向に、アクチュエータ2の回動の角度の大きさが増加した分だけ移動させる。たとえば、アクチュエータ2の回動角αを±45°から±55°に変更したとすると、被接触部材移動機構361,362によって被接触部材351,352を、各々+10度、−10度移動させる手法が挙げられる。また、被接触部材移動機構361、362の移動の態様をより複雑に制御すれば、浮上移動装置1に様々な羽ばたき動作をさせることができる。
(姿勢変化への対処)
上述の運動変更により、浮上移動装置1の姿勢は変化する。姿勢の変化が望ましくない場合には、浮上移動装置1の重心を、伝達軸33の位置より低くしておけばよい。これによって、ある程度の時間ホバリングすることによって、左のアクチュエータ2の回転中心点と右のアクチュエータ2の回転中心点との中間の位置の下側に浮上移動装置1の重心が位置するように、浮上移動装置1の姿勢が安定する。
なお、本実施の形態の浮上移動装置1は、浮上移動装置1を真上から見たときに、その重心位置は、左のアクチュエータ2の回転中心点と右のアクチュエータ2の回転中心点とを結ぶ線分の中点に位置するものとする。それにより、浮上移動装置は、上述のような態様でホバリングおよび左右の旋回することができる。
(駆動エネルギー供給方法)
本実施の形態の浮上移動装置1においては、駆動エネルギー供給方法は、浮上機能を損なわない限りその手法に制約はない。
たとえば、浮上移動装置1内に充電池または燃料電池等を内蔵する手法、または、外部のエネルギー供給源から電波を用いて、羽部4に設けられたアンテナに電力を送電する手法などが考えられる。なお、本実施の形態の浮上移動装置1においては後者の手法を採用するものとする。
(羽形状の他のバリエーション)
本実施の形態においては、作成可能な範囲でなるべく効率の良い羽を用いたが、効率の悪化を許容できるのであれば、本実施の形態に示された羽と一部の機能を同じくする、簡略化された羽を用いることも可である。この場合、羽の作成においてコストダウンが可能であるというメリットがある。
(その他補足)
上述した被接触部材、突起、および被接触部材移動機構は一例であり、浮上移動に支障無く、本実施の形態に示す羽ばたき方を実現することができるのであれば、浮上移動装置の駆動機構は上述した機構以外のものであってもよい。
本実施の形態の浮上移動装置1においては、現段階で浮上移動を実現することが可能である機構を提示するために、アクチュエータ2として超音波モータを用いたが、浮上移動装置1が浮上移動できるのであれば、超音波モータ以外の駆動源を用いてもよい。また、アクチュエータ2の運動は、最終的に伝達軸33に前述した運動を行なわせるものであるならば特に限定が必要なものではない。たとえば、軽量化を狙って高分子材料を用いたリニアアクチュエータ等を使用し、リンク機構によって伝達軸33を運動させる手法が用いられてもよい。また、アクチュエータとして2サイクルエンジンのような往復運動が容易な内燃機関を用いる手法も考えられる。
また、伝達軸33および羽部4の運動も、本実施の形態に示したものに限定されない。例えば、完全な剛体の伝達軸33を製造することは困難であり、伝達軸33がしなることも考えられる。この場合は、浮上移動装置1は、伝達軸33の先端が横向きの8の字を描くように運動するものであってもよい。極端に柔らかく、浮上力を損なうような伝達軸33でない限り、伝達軸33はいかなるものであってもよい。また、アクチュエータ2の回転半径が無限に大きいと仮定すると、伝達軸33は、単純に往復運動を行なうものと仮定される。この仮定の場合においても、本発明は適用され得る。
羽部4の形状は、浮上移動装置が浮上移動可能なものの一例であり、浮上移動を実現することが可能であるならば、羽部4の構成または材料などは、他の構成または材料であってもよい。たとえば、羽部4の厚さは一様である必要はない。
また、回転角制限機構が制限する回転の範囲は一定である必要はない。図5に示されるように、空力によって羽の変形は異なるため、最適な迎え角を維持するために、回転角制限機構が制限する回転の範囲を適宜変更するように制御することによって、浮上力を効率的に発生させることができる。
(特徴)
次に、本実施の形態の浮上移動装置1の特徴を、図8〜図10を用いて説明する。本実施の形態の浮上移動装置1は、図8に示すように、前縁部41から後縁部としての羽面縁取部441へ向かって延びるように設けられた羽膜部としての羽面膜部442とを有する羽部4を備えている。浮上移動装置1は、また、前縁部41を往復運動をさせるとともに捻るように運動させる羽駆動機構としての伝達軸33、アクチュエータ2、ベアリング31および32、固定部材34、ならびに、被接触部材351および352を備えている。また、浮上移動装置1は、羽面膜部442の弾性変形または羽膜部442の全体形状の変化を制限する変形制限部材としての内側枝部421および連結部43を備えている。
なお、羽膜部の弾性変形とは、羽膜部442すなわち1枚のフィルム状部材の弾性変形を意味するものとする。また、羽部4に翅脈500が設けられておらず、羽膜部442が、複数のフィルム片と複数のフィルム片のそれぞれを囲む複数のフレームとを用いて構成されている場合が考えられる。この場合、複数のフレーム同士は、相対的な位置関係を変化させ得るように、ヒンジによって結合されている。たとえば、正六角形のフレームとその中に張られた正六角形のフィルムとからなる正六角形のパーツの一辺同士をヒンジを介して連結させて羽膜部を構成する場合が考えられる。このような羽膜部に羽ばたき動作を行なわせたときにおいては、正六角形のフィルムそのものは変形せず、ヒンジによって正六角形のフィルム同士の相対的な位置関係が変化する。本発明では、このような羽膜部の変形を前述のように羽膜部の全体形状の変化と定義している。
上記の構成によれば、内側枝部421および連結部43の変形制限機能によって羽面膜部442が所望の弾性変形を超える弾性変形をしてしまう不都合を防止することができる。そのため、内側枝部421および連結部43が羽面膜部442の変形を制限する所定の速度で羽部4が往復運動する場合には、羽面膜部442の迎え角をほぼ一定の値に維持することができる。そのため、羽ばたき方の制御が容易になる。
また、内側枝部421および連結部43は、往復運動の往路の羽部4の所定の位置の迎え角と往復運動の復路の羽部4の所定の位置の迎え角とが同じ値になるように、羽面膜部442の弾性変形または羽膜部442の全体形状の変化を制限することが望ましい。この場合、前縁部41が一定の速度で往復運動することが望ましい。この構成によれば、打ち上げおよび打ち下ろしの双方において、ほぼ同じ浮上力を得ることができるため、ホバリング時の制御が容易になる。
また、内側枝部421および連結部43は、移動速度が相対的に小さな前縁部41の付根L側の羽面膜部442の迎え角が、移動速度が相対的に大きな前縁部41の先端K側の羽面膜部442の迎え角がよりも大きくなるように、羽面膜部442の弾性変形または羽面膜部442の全体形状の変化を制限することが望ましい。この構成によれば、速度が大きい羽部4の先端K側の迎え角を小さくし、速度が小さい羽部4の付根L側の迎え角を大きくできる。そのため、浮上移動装置1は、失速が生じることなく、かつ、より大きな揚力を得ることができる羽ばたき方を行なうことができる。そのためには、内側枝部421および連結部43は、前縁部41の先端Kよりも前縁部41の付根Lに近い位置に設けられていることが望ましい。
なお、内側枝部421および連結部43は羽部4の一部であるため、浮上移動装置1の構造を簡略化することができるが、内側枝部421および連結部43は羽部4の外部に設けられていてもよい。
また、内側枝部421および連結部43は、より効率的に羽部4の弾性変形を制限するために、羽面膜部442の前縁部41側よりも羽面縁取部441側に近い位置と前縁部41または前縁部41に連結された羽軸部としての伝達軸33とを接続する部材であることが望ましい。
また、羽面縁取部441は、羽面膜部442を保護する観点から、羽面膜部442よりも剛性が高い部材により構成されていることが望ましい。これによれば、羽部4の質量をより高い強度を必要とする部分に効率的に集中させることができるため、羽部4を軽量化することができる。
また、昆虫の羽と同様に羽部4が軽量でありかつ高い強度を有するためには、前縁部41と羽面縁取部441および連結部43との間に翅脈500が張られていることが望ましい。これにより、羽面膜部442および枝膜部45の破れを防止することができる。翅脈500は、羽面膜部442および枝膜部45と一体的に形成されていてもよいとともに、羽面膜部442および枝膜部45とは別の構造として形成されていてもよい。
また、連結部43は、図9および図10に示すように、前縁部41が往復運動していないときには孕んでおり、すなわち、無負荷状態では所定の曲率を有しており、前縁部41が往復運動するときには孕みがなくなる、すなわち、前縁部41の往復運動によって曲率が小さくなる部材であることが望ましい。この構成によれば、羽部4の動作が開始した直後は、羽部4の速度が大きくなれば、それに伴って、羽面膜部442の弾性変形が大きくなるが、羽部4の動作速度が連結部43の孕みがなくなるような値に達した後においては、羽面膜部442の弾性変形は制限され、羽面膜部442は一定の迎え角になる。したがって、より簡単な構造の変形制限部材で羽部4の迎え角を一定の値に維持することが可能になる。
また、図8に示すように、内側枝部421および連結部43は、羽駆動機構としてのアクチュエータ2等と羽面膜部442との間に設けられており、内側枝部421および連結部43と羽面膜部442との間に他の羽膜部としての枝膜部45が設けられていることが望ましい。この構成によれば、枝膜部45によっても揚力を発生させることができるため、ほぼ同じ質量の羽部4を用いて、より効率的に浮上力を得ることができる。
また、前縁部41には、前縁部41が延びる方向に沿って波板部としてのコルゲーションが設けられていることが望ましい。一般に、コルゲーションは、コルゲーションが延びる方向を含む平面内の曲げモーメントに対しては剛性が高いが、コルゲーションが延びる方向を中心軸とする捻りモーメントに対しては剛性が低い。したがって、前述の構成によれば、羽面膜部442は、前縁部41から羽面縁取部441へ向かう方向(翼弦方向)を含む面内の曲げ変形が生じ易くなるが、前縁部41の付根Lから前縁部41の先端Kへ向かう方向を含む面内の曲げ変形が生じ難くなる。つまり、羽ばたき飛行により適した変形を羽面膜部442に生じさせることができる。
さらに、コルゲーションは、少なくとも1つの山部と1つの谷部とを含むことが望ましい。この構成によれば、前縁部41が延びる方向を中心軸とする捻りモーメントが前縁部41に生じたときに、山部および谷部のうちいずれか一方は、角度が大きくなるが、他方は角度が小さくなるため、前縁部41の捻り剛性の極端な低下を防止することができる。
(羽部の設計思想)
次に、羽部4の設計思想を、図15〜図22を用いて説明する。本実施の形態の浮上移動装置1の羽部の設計の手順は次のようなものである。
まず、図15に示すように、前縁部41に羽面膜部442が設けられている羽部4の構造が考え出された。この構造の特徴は、前縁部41がコルゲーション構造であることである。この構造によれば、前縁部41は、コルゲーションの山部と谷部とが延びる方向を含む面内に生じる曲げモーメントに対しては剛性が高いが、コルゲーションの山部と谷部とが延びる方向を回転中心軸とする回転に対する曲げモーメントすなわち捻りモーメントに対しては剛性が低い。そのため、羽面膜部442は、コルゲーションの山部と谷部とが延びる方向を含む面内において曲げ変形し難く、かつ、コルゲーションの山部と谷部とが延びる方向を回転軸として捻り変形し易い。
したがって、前縁部41の切り替えし時の伝達軸33の回動角すなわち図6のβが小さくても、羽面膜部442の後縁部の回動角を大きくすることができる。つまり、図6に示す伝達軸33の回転角βが同じである場合には、図16に示す羽の前縁部41が剛体の円柱である場合の羽面膜部442の後縁部の回転角εaより、図17に示す前縁部41がコルゲーション構造である場合の羽面膜部442の後縁部の回転角εbの方が大きくなる。その結果、本実施の形態の浮上移動装置1は、前後方向の往復動作(図6の回転角αで示される運動)において羽部4の切り替えし動作(図6の回転角βで示される運動)を機敏に行なうことができる。
次に、羽面膜部442の破れを防止するために、羽面膜部442の縁部に沿って羽面膜部442の中央枝部422および羽面縁取部441を設けた。これにより、羽面膜部442の強度が確保されている。
また、前述の図15の羽部4の構造では、コルゲーションは、山部と谷部とがそれぞれ少なくとも1つずつ設けられている。逆に、山部および谷部のうちいずれか1つしか設けられていないコルゲーションであれば、図18(A)に示すように、羽面膜部442に負荷がかかっていない状態では前縁部41の山部または谷部の角度がa°であるが、図18(B)に示すように、羽面膜部442に負荷がかかっている状態では前縁部41の山部または谷部の角度はb°(>a°)となる。つまり、図18に示す羽部4は、山部または谷部が開いてしまうため、前縁部41を折り目として、折れ曲がってしまう。
しかしながら、コルゲーションとして山部と谷部とがそれぞれ1つずつ設けられていれば、図19の(A)に示すように、羽面膜部442に負荷がかかっていない状態において前縁部41の山部および谷部のうち一方の角度がc°であり他方の角度がd°である羽部4に負荷がかかった場合、図19の(B)に示すように、前縁部41の山部および谷部のうち一方の角度がe°(>c°)となるが、他方の角度はf°(<d°)となる。つまり、前縁部41に捻りに対する復元力が存在するために、羽面膜部442は、前縁部41から後縁部に向かってしなるように変形する。したがって、羽部4は、前縁部41を折り目として折れ曲がってしまうことはない。
また、前述のように、図6に示す伝達軸33の回転角βを小さくするためには、羽面膜部442に弾性係数が低い部材を用いる必要がある。しかしながら、羽面膜部442に弾性係数が低い部材を用いると、羽ばたき動作によって羽面膜部442が流体になびく、すなわち、流体の流れに沿った状態となってしまうため、羽面膜部442の迎え角が小さくなり過ぎてしまうおそれがある。
そのため、前述の図15に示す羽面膜部442が流体に対して所定の迎え角を有するように、羽面膜部442の弾性変形を制限する変形制限部材が必要になる。変形制限部材は、羽面膜部442の弾性変形を制限するという目的を達成するだけであれば、羽部4のいかなる位置に設けられていてもよい。たとえば、図8において、前縁部41の先端K、すなわち伝達軸33と前縁部41とを接続する部分を前縁部41の付根Lとしたときに、その付根Lから最も遠い位置に変形制限部材が設けられていてもよい。
しかしながら、羽ばたき動作においては、前縁部41の先端Kの速度が大きく、前縁部41の付根Lの速度が小さいため、羽部4は、前縁部41の付根L側で迎え角が大きく、前縁部41の先端K側で迎え角が小さいことが望ましい。したがって、本実施の形態では、図8に示すように、伝達軸33と前縁部41とを接続する部分に変形制限部材の一部としての内側枝部421を設けている。また、羽面膜部442の変形を制限するためには、内側枝部421と羽面膜部442とを接続する必要がある。このとき、内側枝部421の先端Fと中央枝部422の先端Eとを接続すれば、羽面膜部442の弾性変形を最も効率的に制限することができる。
そこで、まず、図20に示すように、内側枝部421の先端Fと中央枝部422の先端Eとが、バネ100で接続された羽部4と、図21に示すように、内側枝部421の先端Fと中央枝部422の先端Eとが、紐200で接続された羽部4とが考え出された。図20に示す羽部4と図21に示す羽部4とを比較するために、羽面膜部442の運動速度と羽面膜部442の迎え角との関係が図22に示されている。図22に示すように、図21の羽部4は、変形制限部材として紐200を用いているため、羽面膜部442の動作速度が所定の値に達すれば、羽面膜部442の迎え角もほぼ一定の大きさに達するため、迎え角の制御が容易である。また、図21の羽部4は、羽面膜部442の速度をより早い時期に大きくすることができる。
一方、図22に示すように、図20の羽部4は、変形制限部材としてバネ100を用いているため、羽面膜部442の迎え角は、羽面膜部442の速度の平方根に比例して大きくなる。そのため、迎え角を適切な状態にするまでに時間がかかる。また、羽面膜部442にはバネ100の復元力が常にかかっているため、図20の羽部4は、迎え角を一定の状態で維持することができない。
したがって、図21に示す羽部4のように、変形制限部材としは、紐200のような引張り強度は高いが曲げ強度、捻り強度および圧縮強度をほとんど有していない材料を用いることが望ましいことは、一般的な力学的見地から容易に理解できる。
ただし、変形制限部材としての紐200のような材料は、羽部4に負荷かかかっていない状態では、弛んでいて、羽部4が羽ばたき動作において所定の速度に達したときに、引っ張り力が生じる程度の長さである必要がある。このような変形制限部材用いれば、羽ばたき動作の往復運動の双方において、迎え角を同じ値に維持することが可能になる。
また、変形制限部材は、連結部43が前縁部41と中央枝部422とを連結するようなものであってもよいとともに、連結部43が前縁部41と羽面縁取部441とを連結し、羽面膜部442の表面上をその表面に沿って延びるように設けられているものであってもよい。また、図8に示す羽部4のように、中央枝部422と内側枝部421との間の距離が大きい場合には、羽部4を構成する膜部の全体の面積を大きくするため、前縁部41、連結部43、内側枝部421、および中央枝部422とにより囲まれた領域に、枝膜部45が張られた構造であることが望ましい。
ただし、連結部43が羽部4に負荷がかかっていない状態では弛んでおり負荷がかかったときに延びて引っ張り力が生じる材料であるため、枝膜部45も、同様に、羽部4に負荷がかかっていない状態では連結部43の状態に伴って弛んだ状態であり、羽面膜部442に負荷がかかったときに延びて引っ張り力が生じるような材質であることが必要である。これによれば、枝膜部45も変形制限部材として機能する。
上記のような設計思想により図8に示す本実施の形態の浮上移動装置1の羽部4が設計された。
なお、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
実施の形態の浮上移動装置の構成を示す概略図である。 実施の形態の浮上移動装置の駆動機構の主要部の構成を示す概略図である。 実施の形態の浮上移動装置の固定部材(突起部)および被接触部材の機能を説明するための展開図である。 剛体の羽の挙動を示す概念図である。 実施の形態の浮上移動装置の弾性変形する羽の挙動を示す概念図である。 実施の形態の浮上移動に用いる羽の運動態様を示す概念図である。 実施の形態の浮上移動装置の被接触部材移動機構の断面図である。 実施の形態の浮上移動装置の羽の形状を説明するための図である。 実施の形態の浮上移動装置の羽の形状を説明するための図である。 実施の形態の浮上移動装置の羽の形状を説明するための図である。 実施の形態の浮上移動装置の羽の剛性を、荷重に対する変位量を用いて示すグラフである。 実施の形態の浮上移動装置の、羽の変形の様子を表す概略図である。 実施の形態の浮上移動装置の図6に示す羽の回動角αおよびβと時間との関係とを表すグラフである。 実施の形態の浮上移動装置の方向制御の方法を説明するための図である。 実施の形態の浮上移動装置の羽部の設計思想を説明するための図である。 実施の形態の浮上移動装置の羽部の設計思想を説明するための図である。 実施の形態の浮上移動装置の羽部の設計思想を説明するための図である。 実施の形態の浮上移動装置の羽部の設計思想を説明するための図である。 実施の形態の浮上移動装置の羽部の設計思想を説明するための図である。 実施の形態の浮上移動装置の羽部の設計思想を説明するための図である。 実施の形態の浮上移動装置の羽部の設計思想を説明するための図である。 実施の形態の浮上移動装置の羽部の設計思想を説明するための図である。
符号の説明
4 羽部、41 前縁部、43 連結部、45 枝膜部、421 内側枝部、422 中央枝部、441 羽面縁取部、442 羽面膜部。

Claims (11)

  1. 前縁部と該前縁部から後縁部へ向かって延びるように設けられた羽膜部とを有する羽部と、
    一方端が前記羽部に固定され、駆動力を前記羽部に伝達する伝達軸と、
    前記伝達軸の他方端が取り付けられた機構であって、前記駆動力を生じさせることにより前記前縁部を往復運動をさせるとともに捻るように運動させる羽駆動機構と、
    前記羽駆動機構と前記羽膜部との間において前記羽膜部の前記前縁部側よりも前記後縁部側に近い位置と前記前縁部または前記伝達軸とを接続する部材であって、前記羽膜部の弾性変形または前記羽膜部の全体形状の変化を制限する変形制限部材とを備えた、羽ばたき浮上移動装置。
  2. 前記変形制限部材は、前記往復運動の往路の前記羽部の所定の位置の迎え角と前記往復運動の復路の前記羽部の所定の位置の迎え角とが同じ値になるように、前記羽膜部の弾性変形または前記羽膜部の全体形状の変化を制限する、請求項1に記載の羽ばたき浮上移動装置。
  3. 前記変形制限部材は、移動速度が相対的に小さい前記前縁部の付根側の前記羽膜部の迎え角が、移動速度が相対的に大きな前記前縁部の先端側の前記羽膜部の迎え角よりも大きくなるように、前記羽膜部の弾性変形または前記羽膜部の全体形状の変化を制限する、請求項1に記載の羽ばたき浮上移動装置。
  4. 前記変形制限部材は、前記羽部の一部である、請求項1に記載の羽ばたき浮上移動装置。
  5. 前記変形制限部材と前記羽膜部との間に他の羽膜部が設けられた、請求項1に記載の羽ばたき浮上移動装置。
  6. 前記前縁部を含む羽縁部は、前記羽膜部よりも剛性が高い部材により構成された、請求項1に記載の羽ばたき浮上移動装置。
  7. 前記前縁部と前記羽縁部との間に、翅脈構造が形成された、請求項6に記載の羽ばたき浮上移動装置。
  8. 前記変形制限部材は、無負荷状態では所定の曲率を有しており、前記前縁部の往復運動によって負荷がかけられたときに曲率が小さくなる部材である、請求項1に記載の羽ばたき浮上移動装置。
  9. 前記前縁部には、該前縁部に沿って波板部が設けられた、請求項1に記載の羽ばたき浮上移動装置。
  10. 前記波板部は、少なくとも1つの山部と1つの谷部とを含む、請求項9に記載の羽ばたき浮上移動装置。
  11. 前記羽駆動機構として、
    当該羽ばたき浮上移動装置の本体の前後方向および左右方向を含む面に平行な面に沿って前記伝達軸を所定の中心点回りに回動させるアクチュエータと、
    前記伝達軸の周面または前記羽部に固定された固定部材と、
    前記伝達軸の前記所定の中心点回りの回動の両端の折り返し時のそれぞれにおいて、前記固定部材に接触する一対の被接触部材とを備え、
    前記固定部材と前記被接触部材との接触により、該固定部材が固定された前記伝達軸に該伝達軸が延びる方向を回転軸とするトルクが加わる、請求項1に記載の羽ばたき浮上移動装置。
JP2004018647A 2004-01-27 2004-01-27 羽ばたき浮上移動装置 Expired - Fee Related JP4260642B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004018647A JP4260642B2 (ja) 2004-01-27 2004-01-27 羽ばたき浮上移動装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004018647A JP4260642B2 (ja) 2004-01-27 2004-01-27 羽ばたき浮上移動装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005211143A JP2005211143A (ja) 2005-08-11
JP4260642B2 true JP4260642B2 (ja) 2009-04-30

Family

ID=34903099

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004018647A Expired - Fee Related JP4260642B2 (ja) 2004-01-27 2004-01-27 羽ばたき浮上移動装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4260642B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009006762A (ja) * 2007-06-26 2009-01-15 Sharp Corp 羽ばたき装置
JP5207458B2 (ja) * 2008-07-08 2013-06-12 学校法人千葉工業大学 羽ばたき飛行機
JP6566585B2 (ja) * 2017-09-26 2019-08-28 株式会社A.L.I.Technologies 飛行体

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005211143A (ja) 2005-08-11

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101031869B1 (ko) 큰 날갯짓 각도를 발생하는 날갯짓 장치
RU2450952C2 (ru) Лопасть несущего винта для винтокрылого летательного аппарата
JP4142034B2 (ja) 移動装置
JP5207463B2 (ja) 往復揺動機構およびこれを用いた羽ばたき飛行機
CN107867397B (zh) 一种直线超声电机驱动的微型扑翼飞行器
JP4115349B2 (ja) 羽ばたき浮上移動装置
JP2013123988A (ja) 水中推進体
JP3989943B2 (ja) 羽ばたき浮上移動装置
JP4260642B2 (ja) 羽ばたき浮上移動装置
EP2703286A1 (en) Actuation system for an active element in a rotor blade
JP2009006762A (ja) 羽ばたき装置
Cox et al. Actuator development for a flapping microrobotic microaerial vehicle
JP3920076B2 (ja) 羽ばたき飛行装置
JP6744833B2 (ja) 羽ばたき飛行機
JP4078191B2 (ja) 羽ばたき浮上移動装置
JP4219257B2 (ja) 浮上移動装置
JPWO2019117304A1 (ja) ブレードの可変捩り角機構を有する回転翼航空機
JP2007161251A (ja) 浮上移動装置
JP3940353B2 (ja) 浮上移動装置
EP2703287B1 (en) Actuation system for an active element in a rotor blade
JP4030488B2 (ja) 浮上移動装置
JP4294454B2 (ja) 羽ばたき装置
JP4722019B2 (ja) 浮上移動装置
KR100515031B1 (ko) 정지 비행이 가능한 날개짓 추진 기구
CN109552622A (zh) 一种飞行器

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060125

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20070920

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080729

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080908

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20081104

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20081209

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20090127

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20090204

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120220

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4260642

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120220

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130220

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130220

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140220

Year of fee payment: 5

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees