JP6744833B2 - 羽ばたき飛行機 - Google Patents

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Description

本発明は、機軸の左右に揺動自在に装着された翼の羽ばたきによって飛翔する羽ばたき飛行機に関する。
機体の左右に揺動自在に装着された翼の羽ばたきによって飛翔する羽ばたき飛行機が知られている(特許文献1,2,3,4参照)。これらの発明は、昇降する部材を備え、この昇降部材の昇降運動を剛体リンクの三次元的往復揺動運動に変換する機構を有している。往復揺動運動は翼のフラッピング運動(上下運動)およびリード・ラグ運動(前後運動)さらにはフェザリング運動(翼の前縁部に対する捩り運動)に変換されて、羽ばたき飛行機が飛翔する。
特開2010−105413号公報 特開2010−018059号公報 特開2009−287723号公報 国際公開第2011/013667号
一般的なはばたきロボットは、1つのアクチュエータで左右の翅を同時に駆動させているためにフラッピング角を左右独立して変化させることはできなかった(特許文献1,2,3参照)。従って、方向転換には尾翼を追加してラダーなどの舵取り機構を用いる場合が多く、その結果全長が伸びてしまい質量も増加するという課題があった。また、左右の翼をそれぞれのアクチュエータで駆動させて角度制御を可能としているものもあるが、システムの大型化や消費電力が増加する(常時左右の翅のアクチュエータを駆動するため)という課題があった。
さらに、特許文献4のように、左右の翅のはばたき時間を変えることで左旋回もしくは右旋回を行うはばたきロボットがあるが、時間差を生み出すように構造的に設計されたものであって飛翔中の動的な旋回制御はできないという課題があった。
本発明は、前記背景におけるこれらの実情に鑑みてなされたものであり、尾翼やラダーといった付加的な装置を必要とせず、左右の翼のリード・ラグ角度をそれぞれ変化させて非対称にして、左右の翅が生成する揚力差から回転モーメントを生じさせる、ヨー制御する羽ばたき飛行機を提供することをその目的とする。
本発明に係る羽ばたき飛行機は、機軸と該機軸の法線方向に延出された対向する複数の第1翼および第2翼を有している。そして、前記機軸の延出方向をロール軸、前記法線方向をピッチ軸、該ロール軸および該ピッチ軸と互いに直交する方向をヨー軸としたとき、前記複数の第1翼を前記機軸に対してロール軸周りおよびヨー軸周りを回動自在に枢支する第1枢支部材と、前記複数の第2翼を前記機軸に対してロール軸周りに回動自在に枢支する第2枢支部材と、前記機軸に沿ってロール軸方向に設けられて、前記機軸に対して近接と遠隔を繰り返す往復運動を行う揺動軸と、前記揺動軸と前記複数の第1翼および第2翼とを結ぶ弾性体リンクと、を備えている。前記弾性体リンクが、前記揺動軸に所定の捩り・曲げを加えられて取り付けられ、前記揺動軸の往復運動によって前記複数の第1翼および第2翼を揺動させる。さらに、対向する前記第1翼のそれぞれのヨー軸周りの回動範囲を独立して規制する規制手段を有している。
この態様によれば、翼と枢支部材によって、羽ばたき飛行に必要な3つの運動である、翼を機軸に対して上下に動かすロール軸周りのフラッピング運動、翼の前縁部に対して捻るフェザリング運動、翼を機軸に対して前後に動かすリード・ラグ運動を実現させる。そして、これらの運動は揺動軸の往復運動によって動力を供給することで、羽ばたきによる飛行を実現させる。さらに、規制手段が対向する第1翼のヨー軸周りの回動範囲を規制することで、第1翼のリード・ラグ角度(羽ばたきの前後運動の振り幅)を制御することができる。第1翼の回動範囲を狭めることによって、第1翼のリード・ラグ角度を減少することで、第1翼と第2翼とを併せた翼面積が減少する。その結果、揚力を減少させて機体を下降させる。このように機体を上昇させるとともに下降させることも可能になる。
加えて、規制手段は、対向する翼のリード・ラグ角度を独立して規制することができる。例えば、片側の第1翼のリード・ラグ角度を減少させると、ヨー軸周りの回転モーメントのバランスが崩れ、リード・ラグ角度が減少した方の第1翼側の方向の回転モーメントが生ずる。この回転モーメントの発生によって、機体はリード・ラグ角度が減少した翼方向へ回転する。この機体の回転によって、羽ばたき飛行機を旋回させることができる。このように、本態様は、従来技術では困難であった、羽ばたき飛行機の上昇下降とともに旋回させる飛行制御を実現させている。
前記態様において、前記規制手段が前記枢支部材の前記回動範囲を規制する構成とすることができる。
この態様によれば、機体のヨー軸周りを回動自在に枢支する枢支部材の回動範囲を規制することで、翼のそれぞれのヨー軸周りの回動範囲を規制することができるため、簡単な構成で、羽ばたき飛行機の飛行制御を実現することができる。
本発明の他の態様は、前記規制手段が前記弾性体リンクの捩り量を規制するように構成しても良い。
この態様によれば、リード・ラグ運動の動力を伝達する弾性体リンクの捻り量が規制して、伝達される動力を減少させることで、翼のそれぞれのヨー軸周りの回動範囲を規制することができるため、簡単な構成で、羽ばたき飛行機の飛行制御を実現することができる。なお、弾性体リンクの捻り量の規制は、例えば、帯板状の弾性体リンクの長尺方向の中心線から、いずれかの側面側へ偏った箇所の弾性変位を規制することで、捻り量を規制することができる。
前記態様において、前記弾性体リンクの延在方向中間部に捻り規制部材を装着する構成とすることができる。
この態様によれば、捻り規制部材によって弾性体リンクの弾性変化する範囲を変えることができるため、簡単な構成で、羽ばたき飛行機の飛行制御を実現することができる。
前記態様において、前記規制手段が形状記憶合金であり、該記憶形状合金の動作を制御する制御手段を備えるように構成することができる。
この態様によれば、電力供給を調整することで形状記憶合金の硬軟を制御することによって、機体のヨー軸周りを回動自在に枢支する枢支部材の回動範囲を規制する部材とすることができ、もしくは弾性体リンクの延在方向中間部に曲げ規制部として備えて弾性体リンクの弾性変化する範囲を変えることができる。
前記構成において、前記揺動軸を前記往復運動させる駆動部をさらに備え、前記駆動部が、前記揺動軸の前記揺動軸の前記飛行方向の反対側に前記ピッチ軸方向に軸支されたクランク軸と、一端が前記クランク軸に枢支され、他端が前記機軸に枢支され、前記クランクの回転を前記揺動軸に対する前記機軸の相対回転運動に変換して伝える連接杆と、を備える構成とすることができる。
この態様によれば、揺動軸を往復運動させる手段として駆動部を備え、その駆動部をピッチ軸方向に軸支されたクランク軸とすることで、翼の羽ばたき運動に干渉しにくい構成とできるため、機体に近接した翼とすることや、大きなフェザリング運動をさせることができる。
本発明の他の態様は前記揺動軸を前記往復運動させる駆動部をさらに備え、前記駆動部が、前記揺動軸の前記揺動軸の前記飛行方向の反対側に前記ロール軸方向に軸支されたクランク軸と、一端が前記クランク軸に枢支され、他端が前記機軸に枢支され、前記クランクの回転を前記揺動軸に対する前記機軸の相対回転運動に変換して伝える連接杆と、を備える構成とすることもできる。
この態様によれば、揺動軸を往復運動させる手段として駆動部を備え、その駆動部をロール軸方向に軸支されたクランク軸とすることで、機体の全長を短縮することができるため、コンパクトな羽ばたき飛行機とすることができる。
前記態様において、前記クランクを回転させるモータと、前記モータと前記規制手段への電力を供給する電池と、をさらに備え、前記制御部が、前記モータと前記規制手段への電力を制御する構成とすることができる。
この態様によれば、外部からエネルギを供給することなく、自立飛行できる羽ばたき飛行機とすることができる。また、制御部に通信手段を備えてもよく、リモートコントロールによる飛行も実現することができる。なお、動力源、エネルギは電池、モータに限定されることはなく、特許文献1〜3のようにゴム等によってエネルギを蓄積するとともに動力として利用しても良い。
本発明は、尾翼やラダーといった付加的な装置を必要とせず、左右の翼のリード・ラグ角度をそれぞれ変化させて非対称にして、左右の翅が生成する揚力差から回転モーメントを生じさせる、ヨー制御が可能な羽ばたき飛行機を提供することができる。
本発明の第1実施形態に係る羽ばたき飛行機の主構成を説明する斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る翼の枢支機構を説明する拡大斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る翼の枢支機構を説明する分解斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る動力伝達機構を説明する側面図である。 本発明の第1実施形態に係る弾性体リンクの挙動を説明する図である。 本発明の第1実施形態に係る羽ばたき運動を説明する側面図である。 本発明の第1実施形態に係る羽ばたき運動を説明する上面図である。 本発明の第1実施形態に係る規制部材の一実施例を説明する斜視図である。 本発明の第1実施形態に係る回旋運動を説明する図である。 本発明の第2実施形態に係る規制部材の一実施例を説明する斜視図である。 本発明の第3実施形態に係る羽ばたき飛行機の主構成を説明する斜視図である。 本発明の第3実施形態に係る動力伝達機構を説明する側面図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の羽ばたき飛行機に係る好適な実施の形態について説明する。以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。
本発明の一態様は、機軸と該機軸の法線方向に延出された対向する複数の第1翼および第2翼を有している。そして、前記機軸の延出方向をロール軸、前記法線方向をピッチ軸、該ロール軸および該ピッチ軸と互いに直交する方向をヨー軸としたとき、前記複数の第1翼を前記機軸に対してロール軸周りおよびヨー軸周りを回動自在に枢支する第1枢支部材と、前記複数の第2翼を前記機軸に対してロール軸周りに回動自在に枢支する第2枢支部材と、前記機軸に沿ってロール軸方向に設けられて、前記機軸に対して近接と遠隔を繰り返す往復運動を行う揺動軸と、前記揺動軸と前記複数の第1翼および第2翼とを結ぶ弾性体リンクと、を備えている。前記弾性体リンクが、前記揺動軸に所定の捩り・曲げを加えられて取り付けられ、前記揺動軸の往復運動によって前記複数の第1翼および第2翼を揺動させる。さらに、対向する前記第1翼のそれぞれのヨー軸周りの回動範囲を独立して規制する規制手段を有しているものであれば、その具体的態様はいかなるものであっても構わない。
(第1実施形態)
はじめに、図1〜4を参照して、本発明の第1実施形態に係る羽ばたき飛行機の主要な構成を説明する。次に、図5〜7を参照して、羽ばたき機構を説明する。そして、図8,9を参照して、ヨー軸周りの回動範囲を独立して規制する規制手段の例と規制手段による羽ばたき飛行機の回旋運動について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る羽ばたき飛行機の主構成を説明する斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る翼の枢支機構を説明する拡大斜視図である。図3は、本発明の第1実施形態に係る翼の枢支機構を説明する分解斜視図である。図4は、本発明の第1実施形態に係る動力伝達機構を説明する側面図である。図5は、本発明の第1実施形態に係る弾性体リンクの挙動を説明する図である。図6は、本発明の第1実施形態に係る羽ばたき運動を説明する側面図である。図7は、本発明の第1実施形態に係る羽ばたき運動を説明する上面図である。図8は、本発明の第1実施形態に係る規制部材の一実施例を説明する斜視図である。図9は、本発明の第1実施形態に係る回旋運動を説明する図である。
以下の説明において、機軸10の延出方向をロール軸、法線方向をピッチ軸、ロール軸およびピッチ軸と互いに直交する方向をヨー軸とし、ロール軸の延出する一方を飛行方向とする。ロール軸、ピッチ軸、ヨー軸はそれぞれ頭文字をとってR軸、P軸、Y軸と表す場合がある。
(主要構成の説明)
図1を参照すると、本発明の第1実施形態に係る羽ばたき飛行機100は、機軸10とこの機軸10のピッチ方向に延出された対向する複数の第1翼20,20および第2翼30,30を備えている。機軸10の飛行方向側に配され、第1翼20,20のロール軸周りおよびヨー軸周りを回動自在に枢支するとともに第2翼30,30のロール軸周りを回動自在に枢支する枢支部材40と、機軸10に沿ってロール軸方向に設けられて、機軸10に対して近接と遠隔を繰り返す往復運動を行う揺動軸70と、揺動軸70と第1翼20,20および第2翼30,30とを結ぶ弾性体リンク80とを備えている。また、図4に詳しく示すように、揺動軸70を往復運動させる駆動部110も備えている。
(機軸の説明)
機軸10は、飛行機の機体に相当する構造体となる長尺の部材である。機軸10には、軽量であるとともに適度な強度、弾性、柔軟性を有した樹脂、竹等の木材、金属、FRP等を適用できる。ただし、機軸10は羽ばたき運動を行う翼20、動力を提供する駆動部110、往復運動を行う揺動軸70を支持することから、これらの運動、負荷に応じた強度、弾性、柔軟性を備えた材料、形状が選択される。
図2を参照すると、機軸10の飛行方向側(以下「前端側」といい、飛行方向の反対側を「後端側」という場合がある。)の端部には、枢支部材40の一部を収容するように、ヨー方向から見て凹状の切り欠きとなる枢支部材収容部11が形成され、枢支部材40を回動自在に枢支するための機軸枢支部材結合ピン46(図3参照)が挿通される機軸枢支部材結合ピン孔15がロール軸方向に端面から枢支部材収容部11を超えた対面まで穿孔されている。
図4を参照すると、機軸10の後端側にはモータ111が装着されるとともに、揺動軸70の往復運動の支点72が配設される支持体12が、機体10のヨー方向下側に延出されている。機軸10と支持体12とは固着されている。支持体12には、軽量であるとともに適度な強度、弾性、柔軟性を有した樹脂、竹等の木材、金属、FRP等を適用できる。
支持体12にはロール軸方向の後端側へ延出するウォームギア支持体13が固着されている。ウォームギア支持体13には、軽量であるとともに適度な強度、弾性、柔軟性を有した樹脂、竹等の木材、金属、FRP等を適用できる。
このように、機軸10,支持体12,ウォームギア支持体13は、互いに固着された機体を構成しており、全てを一体で形成しても良い。
(翼の説明)
次に、再び図1を参照すると、第1翼20は、蝶の翅に類似した構成としており、前縁翅脈(しみゃく)22と、側翅脈23と、前縁翅脈22と側翅脈23との間に張られた翼膜21とからなる。同様に、第2翼30も、蝶の翅に類似した構成としており、第2前縁翅脈32と、第2側翅脈33と、第2前縁翅脈32と第2側翅脈33との間に張られた第2翼膜31とからなる。
前縁翅脈22は、羽ばたき飛行機100の飛行方向の前縁に張り出すように配された長尺の部材であり、軽量であるとともに適度な強度、弾性、柔軟性を有した樹脂、竹等の木材、金属、FRP等を適用できる。
図2,3を参照すると、前縁翅脈22の一端は、枢支部材結合部24が形成されており、枢支部材40の翼結合部44に固着される。固着は、接着剤による結合、ネジ等による機械的結合等、どのような形態でも良い。
側翅脈23は、前縁翅脈22の飛行方向後方に配された長尺の部材であり、軽量であるとともに適度な強度、弾性、柔軟性を有した樹脂、竹等の木材、金属、FRP等を適用できる。側翅脈23の一端は前縁翅脈22の枢支部材結合部24に固着され、側翅脈23は前縁翅脈22と同じ動きをする。
前縁翅脈22と側翅脈23とは扇状に広がるように配されており、その間に翼膜21が張られる。翼膜21は、軽量であるとともに適度な強度、弾性、柔軟性を有した樹脂や繊維、布等によって形成されている。
第1翼20は、羽ばたき飛行機100の羽ばたき動作によって、ヨー軸方向上下に往復し、翼を機軸に対して上下に動かすロール軸周りのフラッピング運動、翼の前縁部に対して捻るフェザリング運動を生じさせている。ここで、フェザリング運動は、羽ばたき飛行機100の機体形状やサイズ、動力の大きさに応じて、翼膜21,前縁翅脈22、側翅脈23の形状・材質を適宜組み合わせることで調整することができる。
第2前縁翅脈32は、第1翼20の側翅脈23のヨー方向下方に重畳するように配された長尺の部材であり、軽量であるとともに適度な強度、弾性、柔軟性を有した樹脂、竹等の木材、金属、FRP等を適用できる。
第2前縁翅脈32の一端は、第2枢支部材結合部34が形成されており、枢支部材40の第2翼結合部62に固着される。固着は、接着剤による結合、ネジ等による機械的結合等、どのような形態でも良い。
第2側翅脈33は、羽ばたき飛行機100の機軸10に沿うように配された長尺の部材であり、軽量であるとともに適度な強度、弾性、柔軟性を有した樹脂、竹等の木材、金属、FRP等を適用できる。第2側翅脈33の一端は第2前縁翅脈32の第2枢支部材結合部34に固着され、第2側翅脈33は第2前縁翅脈32と同じ動きをする。
第2前縁翅脈32と第2側翅脈33とは扇状に広がるように配されており、その間に第2翼膜31が張られる。第2翼膜31は、軽量であるとともに適度な強度、弾性、柔軟性を有した樹脂や繊維、布等によって形成されている。
第2翼30は、羽ばたき飛行機100の羽ばたき動作によって、第1翼20とともにヨー軸方向上下に往復し、翼を機軸に対して上下に動かすロール軸周りのフラッピング運動、翼の前縁部に対して捻るフェザリング運動を生じさせている。なお、後記するように第2翼30は、ロール軸周りのみ回動自在に枢支されている。
なお、本実施形態では、蝶の翅に類似した翅脈と翼膜という構成を適用しているが、翅脈を有さない1枚の板状翅にしても良いし、構造的な強度を高めたり、フェザリング運動の状態を変えたりするために、翅脈の数を増加させても良い。また、第1翼20および第2翼30は少なくとも2以上の複数の第1翼20および第2翼30であれば良いが、第1翼20もしくは第2翼30に追加される複数の翼は、前記した第1翼20もしくは第2翼30と同じ運動をさせることで冗長的な構成とすることができる。
(枢支部材の説明)
次に図2(A),(B),図3を参照して、枢支部材40を説明する。枢支部材40は、機軸10の前端側に配され、複数の第1翼20、20のロール軸周りおよびヨー軸周りを回動自在に、そして複数の第2翼30,30のロール軸周りを回動自在に枢支するものである。
枢支部材40は、第1枢支部材を構成する第1翼20のロール軸周りを回動自在に枢支してフラッピング運動をさせるロール枢支部41およびヨー軸周りを回動自在に枢支してリード・ラグ運動をさせるリード・ラグ枢支部42と、第2枢支部材を構成する第2翼30のロール軸周りを回動自在に枢支してフラッピング運動をさせる第2ロール枢支部61からなる。
ロール枢支部41と第2ロール枢支部61とは連結部60を介して結合され一体化されており、ロール軸周りに連動して回動する。これらは一つの部材としても良いし別体を結合するものでも良い。
はじめに第1翼20の枢支について説明する。ロール枢支部41には、ロール軸方向にロールピン孔47と、ヨー軸方向のヨーピン孔48とが貫通するように穿孔されている。
ロール枢支部41、第2ロール枢支部61および連結部60は、ロールピン孔47と機軸枢支部材ピン孔15とが連通するように、枢支部材収容部11に収容される。ロール枢支部41、第2ロール枢支部61および連結部60が枢支部材収容部11に収容された後、機軸枢支部材結合ピン46が、機軸枢支部材結合ピン孔15から挿通され、ロールピン孔47を貫通して、枢支部材収容部11を超えた対面側の機軸枢支部材結合ピン孔15まで挿入される。なお、機軸枢支部材結合ピン46は、抜け落ちることがないように処置される。
ロール枢支部41のロールピン孔47の周りは、ロール枢支部41が機軸枢支部材結合ピン46を回転軸として、ロール軸周りを回動自在となるように、枢支部材収容部11に接触しない円筒状の形状としている。ヨーピン孔48は、円筒状の一部から延出された板状の部分であるリード・ラグ枢支部42と係合する係合部50に穿孔されている。
リード・ラグ枢支部42は、直方体ブロックの一部にロール軸方向のスリット状の凹部となる係合収容部51と、スリットの幅方向に直交する方向(ヨー軸方向)に貫通した枢支部間結合ピン孔43と、係合収容部51とは反対側のヨー軸方向の上側の面の一部に翼結合部44を、下側の面の一部に弾性体リンク結合部45を備えている。
ロール枢支部41の係合部50は、ヨーピン孔48と枢支部材間結合ピン孔43と連通するように、リード・ラグ枢支部42の係合収容部51に嵌入される。その後、枢支部間結合ピン49が、枢支部材間結合ピン孔43から挿通され、ヨーピン孔48を貫通して、係合収容部51を超えた対面側の枢支部材間結合ピン孔43まで挿入される。なお、枢支部間結合ピン49は、抜け落ちることがないように処置される。
ロール枢支部41のヨーピン孔48の周りは、リード・ラグ枢支部42が枢支部間結合ピン49を回転軸として、ヨー軸周りを回動自在となるように、係合収容部51に接触しない円筒状の形状としている。
翼結合部44には第1翼20の前縁翅脈22の一端が固着され、弾性体リンク結合部45には、弾性体リンク80の一端に設けられた枢支部材結合部81が固着される。固着は、接着剤による結合、ネジ等による機械的結合等、どのような形態でも良い。
なお、枢支部材40は、互いに直交する2つの回転軸としての機軸枢支部材結合ピン46,枢支部間結合ピン49を離れた位置に設けたが、この2軸をユニバーサルジョントのような一部材として構成することもできる。
次に第2翼30の枢支について説明する。前記したように、ロール枢支部41と第2ロール枢支部61とは連結部60を介して結合され一体化されており、第2ロール枢支部61は、ロール軸周りに回動自在となっている。
第2ロール軸枢支部61の円筒状の一部から延出された板状部分のヨー軸方向上側面の一部に第2翼結合部62が形成されている。第2翼結合部62には第2翼30の第2前縁翅脈32の一端に形成された第2枢支部材結合部34が固着される。係る構成によって、第2翼30は、第1翼20と同期したフラッピング運動を行うが、ロール軸方向の前後運動であるリード・ラグ運動は規制されている。
(弾性体リンクおよび羽ばたき運動の説明)
次に図5,6も併せて参照して、弾性体リンク80と羽ばたき運動について説明する。弾性体リンク80は、機軸10や揺動軸70と比べて弾性変化がし易い、樹脂の帯板状部材を適用することができる。弾性体リンク80の一端の帯状の面はリード・ラグ枢支部42に設けられた弾性体リンク結合部45に固着され、他端は揺動軸70の前端側に設けられた弾性体リンク結合部71に固着される。固着は、接着剤による結合、ネジ等による機械的結合等、どのような形態でも良い。
図5(A)〜(D)を参照すると、弾性体リンク80は、前記揺動軸に所定の捩り・曲げを加えられて逆C字になるように、機軸10や揺動軸70に固着される。なお、図5(A)〜(D)では、弾性体リンク80が揺動軸70の弾性体リンク結合部71内に挿入されているように描いているが、これは固着状態を強調するためであり、図2(C)、(D)のように揺動軸70の面に弾性体リンク結合部71を設けて接着等する形態でも同様となる。また、弾性体リンク80と枢支部材40との結合面の位置および結合状態を変化させていないが、弾性体リンク80の挙動を説明するために簡略化している。
まず、図5(A)、(B)を参照すると、弾性体リンク80は、ロール軸とヨー軸による座面上に機軸10や揺動軸70に固着されている。このとき、弾性体リンク80には捻りはなく、揺動軸70の往復運動によって、伸縮運動を行う。このときの第1翼20,20および第2翼30,30の羽ばたきはそれぞれの翼を機軸10に対して上下に動かすロール軸周りのフラッピング運動となる。
次に、図5(C)、(D)を参照すると、弾性体リンク80の一端はロール軸とヨー軸による座面上で機軸10に、他端は座面をヨー軸で回転させた面で揺動軸70に固着されている。このとき、弾性体リンク80に捻りが付加され、揺動軸70の往復運動によって、捻りを伴った複雑な伸縮運動を行う。
この複雑な伸縮運動について図6も併せて参照して説明する。往復運動によって揺動軸70が機軸10から最も離れた状態が、図6(A)となる。このとき図5(C)に示すように第1翼20には弾性体リンク80の捻りによって後端側(図5の奥側)に押す力が働く。リード・ラグ枢支部42があるため、第1翼20はこの後端側へ押す力によって後端側へ後退する。なお、第2翼30はロール軸方向の前後運動が規制されているためこの前後運動はしない。
揺動軸70が機軸10に近づく過程では図6(B)となり、捻りが反転して、第1翼20が前端側へ移動する。さらに揺動軸70が機軸10に最も近づいた図6(C)では、図5(D)に示すように、図5(C)から反転した捻り状態となるため、第1翼20は最も前端側に移動した状態となる。このようにリード・ラグ移動長XLRがXLR1<XLR2<XLR3となる、リード・ラグ運動が実現される。なお、この構成は1例であり、例えば翼20が水平になったときに、リード・ラグ長を最大に、すなわち XLR2<XLR1、XLR3 とすることで、翼面積を最大にして飛行方向への抵抗を少なくするとともに、推進力を大きくすることができる。なお機体の姿勢に応じたリード・ラグ長の長短のコントロールは、弾性体リンク80の捩り、曲げの状態を任意に設定することで具現化することができる。
さらに、図6(A)では、第1翼20と第2翼30とが打ち下ろされることでフラッピング運動FIを発生させ、柔軟性のある第1翼20と第2翼30の構造によって図6(C)に示すようなフェザリング運動FEを発生させる。弾性体リンク80を、前記揺動軸に所定の捩り・曲げを加えられて逆C字になるように、機軸10や揺動軸70に固着することで、フラッピング運動FIとフェザリング運動FEとの位相差を発生させ、羽ばたき運動における上昇に係る空気力を効果的に発生させることができる。
詳しくは、第1翼20と第2翼30の打ち下ろし時には、左右の第1翼20、20および第2翼30,30を引き剥がす動作で両翼の上面間に負圧を生じさせ、図6(A)の状態において第1翼20、20および第2翼30,30の間の負圧が第1翼20、20および第2翼30,30の上面の全面に広がり、この上方への負圧により上から引き上げられるように機体が上昇する。そして、図6(B)から(C)に示す第1翼20、20および第2翼30,30の打ち上げにより、左右の第1翼20、20および第2翼30,30を広げる動作で両翼の下面間に負圧を生じさせ、第1翼20、20および第2翼30,30の下面が前向きに近い間、翼の上下面の圧力差により機体が前進する。
図6(A)に対応する図7(B)および図6(C)に対応する図7(A)を参照すると、リード・ラグ運動によって、ヨー軸方向から見た第1翼20の面積が変わる。図7(B)を見ると、第1翼20および第2翼30の打ち下ろし時には、羽ばたき飛行機100の機体の重心COGと第1翼20、20および第2翼30,30の推力FL、FRの力点となる右翼重心LOGR、左翼重心LOGLとの距離LL,LRは近づいており、重心COGを中心としたモーメントは機軸10を上昇させる方向に働いている。
一方、図7(A)を見ると、第1翼20および第2翼30の打ち上げ時には、羽ばたき飛行機100の機体の重心COGと第1翼20、20および第2翼30,30の推力FL、FRの力点となる右翼重心LOGR、左翼重心LOGLとの距離LL,LRは打ち下ろし時と比べて離れており、この位置関係によって機軸10の前端を上側に傾斜させて、前進とともに上昇を行う羽ばたき運動を可能としている。以上から図5に示すように、弾性体リンク80が、揺動軸70に所定の捩り・曲げを加えられて取り付けられることで、羽ばたき飛行を行うための複雑な運動を実現している。
(揺動軸および駆動部の説明)
図4を参照すると、駆動部110は、クランク軸を構成するウォームホイール113およびウォームホイール113に動力を伝達するウォーム112と、ウォーム112を回転させるモータ111と、モータ111に電力を供給する電池120と、電力を制御する制御部121と、制御部121とモータ111を電気的に連結するケーブル123とからなる。
ウォームホイール113は円盤状のはす歯歯車であって、このはす歯歯車に合うねじ歯車であるウォーム112と組み合わせてウォームギアを構成している。このウォームギアの機構によって、ウォーム112のロール軸周りの回転は、ウォームホイール113のピッチ軸周りの回転に変換される。
ウォームホイール113は、支持体12からロール軸方向後端側に延出されたウォームギア支持体13のロール軸方向の端部付近に、ピッチ軸周りに回転自在に軸支される。
ウォームホイール113の円盤の側面で回転軸心から放射線方向にずれた位置には、ピッチ軸方向に延出した突起であるガイドピン114が備えられている。このガイドピン114は、ウォームホイール113の回転に伴い、回転軸心に対して、ヨー軸方向上下に往復運動する。ガイドピン114は、揺動軸70のガイド溝73内に収容され、ガイドピン114のヨー軸方向上下の往復運動を揺動軸70に伝達している。なお、ウォームホイール113回転時のガイドピン114の位置によっては、ロール軸方向の往復運動も発生するが、ガイド溝73の長さを適宜設定することで、この往復運動の影響をキャンセルすることができる。
本実施形態では、このようにウォームホイール113とガイドピン114によって、クランク軸および連結杆としての作用を奏させることができる。また、厚みのない円盤状のウォームホイール113をピッチ軸周りに回転させることで、翼20,20の羽ばたき運動に干渉しにくい構成とできるため、機軸10に近接した位置に第2翼30を配置することや、大きなフェザリング運動をさせることができる。
モータ111は、ウォーム112を回転させる小型の電動モータであって、DCモータ、ブラシレスモータ、超音波モータ、サーボモータ、ステッピングモータ、リニアモータ等を適用できる。なお、動力の供給はモータに限定されることはなく、特許文献1〜3のようにゴム紐を撚ることで回転力を供給しても良いし、形状記憶合金を適用して直接揺動軸70を往復運動させてもよい。
モータ111は、機軸10に取り付けても良いし、支持体12に取り付けても良い。ただし、モータ111の取り付け位置は、機体全体の重心COGに影響することから、羽ばたき飛行運動を考慮して設定される。
制御部121は、予め設定されたプログラム、もしくは、外部からの指令に従って、電池120からモータ111への電力供給量を制御する。外部からの指令によって制御する場合には、通信に係る機能を搭載する。制御部121は、機軸10に取り付ける構成としているが、支持体12に取り付けても良い。ただし、モータ111の取り付け位置に応じて、機体全体の重心COGを所定の位置にするよう適宜設定される。なお、制御部121からモータ111への送電はケーブル123を通じて行われるが、無線で伝送する形式でも良い。さらに、受信部を設けて、無線で電力を供給する形式でも良い。
揺動部70は、ウォームホイール113とガイドピン114によるクランク軸としての作用であるヨー軸方向上下の往復運動を弾性体リンク80に伝達する。揺動軸70の後端側には、ガイドピン114を収容するとともに、そのガイドピン114が揺動軸70の長尺方向の所定幅を移動できるスリットが設けられたガイド溝73が形成されている。そして、揺動軸70の前端側には弾性体リンク80が固着される弾性体リンク結合部71が設けられている。
揺動軸70のガイド溝73と弾性体リンク結合部71に挟まれた中間部には、支点72が配されており、揺動軸70は支点72を中心にヨー軸方向上下に往復運動する。支点72は、例えば、支持体12にピッチ方向に貫通孔を穿孔し、揺動軸70に形成した突起を挿入して、揺動軸70をピッチ軸周りに回動自在に支持するものである。
なお、揺動軸70は、支点72を中心にピッチ軸周りに回動していることから、弾性体リンク結合部71の位置は、機軸10に対して相対的にロール軸方向で前後する。この前後運動によって、弾性体リンク80には曲げとともに捩りが生じ、第1翼20および第2翼30にフラッピング運動、フェザリング運動、第1翼20にリード・ラグ運動の奏させる弾性体リンク80の挙動を実現している。
(規制部材の説明)
次に、対向する第1翼20,20のリード・ラグ角度を独立して規制する規制手段について説明する。以下では、枢支部材40のリード・ラグ枢支部42のヨー軸周りの回転を規制する枢支部回動規制部材130の実施例を説明する。しかしながら規制手段は、これらの実施例に限定されることはなく、例えば、リード・ラグ枢支部42にエンコーダとステッピングモータを搭載して、指示するリード・ラグ角度の範囲に制御しても良い。
(枢支部回動規制についての説明)
図8を参照すると、ロール軸方向に回動自在とされたロール枢支部41に係合されているリード・ラグ枢支部42があり、ロール枢支部41の飛行方向側の面からリード・ラグ枢支部42の飛行方向側の面に架けて枢支部回動規制部材130が配されている。
枢支部回動規制部材130の一端はロール枢支部41の飛行方向側の面に固着されている。他端はリード・ラグ枢支部42の飛行方向側の面に延出されているが、枢支部回動規制部材130はリード・ラグ枢支部42には固定されておらず、構造的に自由端としている。なお、厳密な回動範囲の規制をするために、枢支部回動規制部材130をリード・ラグ枢支部42に固定した固定端としても良い。ただし、係る構成を適用する場合には、羽ばたきする力と枢支部回動規制部材130がリード・ラグ枢支部42を押圧する力との調整をとり、羽ばたきの力を過度に抑制しないように構成する必要がある。
枢支部回動規制部材130は、帯板状の形状記憶合金であり、先端部に熱を加えると、その方向に屈伸するという形状記憶合金の性質を利用している。すなわち、枢支部回動規制部材130に電流を流すワイヤ122をつなぎ、制御部121の指令によって、形状記憶合金に通電することでジュール熱を発生させ、枢支部回動規制部材130の他端を所定の方向に曲げるものである。
例えば、リード・ラグ角度を大きくとりたいときには、第1翼20のヨー軸周りの回転規制を緩和するように、枢支部回動規制部材130の他端が飛行方向に曲げられ、一方リード・ラグ角度を小さくしたいときには、第1翼20のヨー軸周りの回転規制を強化するように、枢支部回動規制部材130の他端がリード・ラグ枢支部42を押さえつけるようにする。
枢支部回動規制部材130は、機軸10に対して対向して配されている規制部材40,40のそれぞれに備えられており、制御部121の指令によって独立した曲げ制御を行い、第1翼20,20のそれぞれのヨー軸周りの回動範囲を独立して規制する規制手段として働く。
このように本実施形態によれば、機体のロール軸周りを回動自在に枢支する枢支部材40の回動範囲を、軽量かつ簡易な構成で規制することができる。この枢支部回動規制部材130によって、第1翼20,20のそれぞれのヨー軸周りの回動範囲を規制することで羽ばたき飛行機の制御を実現することができる。
(リード・ラグ角度制御の説明)
次に、図9を参照して、対向する第1翼20,20のリード・ラグ角度を独立して規制する規制手段を適用した制御について説明する。
図9(A)は、飛行方向に対して左側の第1翼20のリード・ラグ角度が、右側の第1翼20のリード・ラグ角度よりも大きい場合を示している。
図9(A)では、左側の第1翼20および第2翼30の翼面積と比べて右側の第1翼20および第2翼30の翼面積の方が小さくなる。羽ばたき飛行機において、翼の下向きの空気の流れをつくったときの反力である翅反力が、揚力・推力に寄与することから、推力FL>推力FRとなる。この推力の差は飛行方向に対して時計回りのヨー回転モーメントRMを生じさせる。ヨー回転モーメントRMの発生によって、羽ばたき飛行機100の機体は右方向に旋回する。
一方、図9(B)に示すように、飛行方向に対して右側の第1翼20のリード・ラグ角度が、左側の第1翼20のリード・ラグ角度よりも大きい場合には、推力FR>推力FLとなる。この推力の差は飛行方向に対して反時計回りのヨー回転モーメントRMを生じさせる。ヨー回転モーメントRMの発生によって、羽ばたき飛行機100の機体は右方向に旋回する。
また、対向する第1翼20,20の両方について、同時にリード・ラグ角度が減じるように規制することで、通常の直進する羽ばたき飛行におけるフラッピング運動、フェザリング運動、リード・ラグ運動を減少させて、直進方向の速度を減少させることや、上昇速度減少から下降させる制御も実現できる。
この実施形態によれば、第1翼20,20と枢支部材40によって、羽ばたき飛行に必要な3つの運動である、第1翼20,20を機軸10に対して上下に動かすロール軸周りのフラッピング運動、翼の前縁部に対して捻るフェザリング運動、翼を機軸に対して前後に動かすリード・ラグ運動の制御を実現させる。
そして、これらの運動は揺動軸70の往復運動によって動力を供給することで、羽ばたきによる飛行を実現させる。さらに、規制手段である枢支部回動規制部材130が対向する第1翼20,20のそれぞれのヨー軸周りの回動範囲を規制することで、第1翼20,20のリード・ラグ角度(機体の前後の動きの振り幅)を制御することができる。さらに、回動範囲を狭めることによって、全ての羽根のリード・ラグ角度を減少させられるため、揚力を減少させて機体を下降させる。このように機体を上昇させるとともに下降させることも可能になる。
(第2実施形態)
次に、図10を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図10は、本発明の第2実施形態に係る規制部材の一実施例を説明する斜視図である。本発明の第2実施形態は、対向する翼のリード・ラグ角度を独立して規制する規制手段に係る実施形態であり、その他の構成については第1実施形態と同じであるため、以下の説明において、第1実施形態と重複する構成については、その説明を省略する。
図10(A)を参照すると、揺動軸70の先端側ヨー方向の上面から弾性体リンク80の中間部に架けて2つの弾性体リンク捻り規制部材141、142が配されている。
弾性体リンク捻り規制部材141、142は、図10(B)に示すようにロール軸方向に平行に配され、その一端は揺動軸70の上面に固着されている。他端は弾性体リンク80の機軸10側の面方向に延出されているが、弾性体リンク捻り規制部材141、142と弾性体リンク80とは固定されておらず、構造的に自由端としている。なお、厳密な回動範囲の規制をするために、弾性体リンク捻り規制部材141、142を弾性体リンク80に固定した固定端としても良い。ただし、係る構成を適用する場合には、羽ばたきする力と弾性体リンク捻り規制部材141、142が弾性体リンク80を押圧する力との調整をとり、羽ばたきの力を過度に抑制しないように構成する必要がある。
弾性体リンク捻り規制部材141、142は、帯板状もしくはワイヤ状の形状記憶合金であり、先端部に熱を加えると、その方向に屈伸するという形状記憶合金の性質を利用している。すなわち、弾性体リンク捻り規制部材141、142に電流を流すワイヤ122をつなぎ、制御部121の指令によって、形状記憶合金に通電することでジュール熱を発生させ、弾性体リンク捻り規制部材141、142の他端を所定の方向に曲げるものである。
例えば、弾性体リンク捻り規制部材141を図10(A)のように直線的な状態を維持し、そして弾性体リンク捻り規制部材142に通電して一定の曲げにすることで、弾性体リンク80は、図10(B)の左側が手前に捻れる(ヨー軸の回転)ことを規制する。このように制御することで、第1翼20が飛行方向へ動く量を減少させて、リード・ラグ角度を減少させる。
一方、リード・ラグ角度を大きくとりたいときは、弾性体リンク捻り規制部材142を図10(A)のように直線的な状態を維持し、そして弾性体リンク捻り規制部材141に通電して一定の曲げにすることで、第1翼20が飛行方向へ動く量を増加させて、リード・ラグ角度を増加させることができる。
弾性体リンク捻り規制部材141、142は、揺動軸70の左右に対向する第1翼20,20に対応するように備えられており、制御部121の指令によって独立した捻り制御を行い、第1翼20,20のそれぞれのヨー軸周りの回動範囲を独立して規制する規制手段として働く。
このように本実施形態によれば、軽量かつ簡易な構成で第1翼20,20のそれぞれのヨー軸周りの回動範囲を規制することで羽ばたき飛行機の制御を実現することができる。
(第3実施形態)
次に、図11、12を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。図11は、本発明の第3実施形態に係る羽ばたき飛行機の主構成を説明する斜視図である。図12は、本発明の第3実施形態に係る動力伝達機構を説明する側面図である。
本発明の第3実施形態は、揺動軸および駆動部の変形例に係る実施形態であり、その他の構成については第1実施形態と同じであるため、以下の説明において、第1実施形態と重複する構成については、その説明を省略する。
図11,12を参照すると、機軸10の後端側にはヨー軸下方側にモータ支持体214が延出している。モータ支持体214は、機軸10の一部でも良いし、別体として取り付けて固定しても良い。モータ支持体214の下側には環状部材等によってモータ211が取り付けられる。モータ211の回転方向はロール軸周りとしている。なお、図11,12において、第1翼20,第2翼30については、一体となった状態として、二点鎖線で示している。
さらに機軸10の中間部には、電池220、制御部221が装着されるとともに、ヨー軸下方に延出して、支点272を構成する支点支持体230が備えられている。支点支持体230は、機軸10の一部でも良いし、別体として取り付けて固定しても良い。モータ支持体214および支点支持体230には、軽量であるとともに適度な強度、弾性、柔軟性を有した樹脂、竹等の木材、金属、FRP等を適用できる。
駆動部200は、クランク軸を構成する第2平歯車213および第2平歯車213に動力を伝達する第1平歯車212と、第1平歯車212を回転させるモータ211と、モータ211に電力を供給する電池220と、電力を制御する制御部221と、制御部221とモータ211を電気的に連結するケーブル223とからなる。なお、図では回動規制制御の指令を送るケーブル222も示している。
第2平歯車213は平歯車であって、この平歯車に合う平歯車である第1平歯車212と組み合わせている。この伝達機構によって、第1平歯車212のロール軸周りの回転が、第2平歯車213に伝達される。
第2平歯車213は、機軸10の後端からロール軸方向に延出された回転軸225によって、ロール軸周りに回転自在に軸支される。
揺動軸270の後端側にはクランク機構の連結杆となるガイド体271が、揺動軸270に対してロール軸周りに回動自在に取り付けられている。ガイド体271には図示しないガイド溝が形成されている。そして、本実施形態においても、第1実施形態の図4に示した構成と同じく、このガイド体271と、第2平歯車213の円盤の側面で回転軸心から放射線方向にずれた位置に備えられた突起状のガイドピンとでクランク軸としての作用を奏するガイド機構240としている。
揺動部270は、ヨー軸方向上下の往復運動を弾性体リンク80に伝達する。揺動軸270のガイド体271と弾性体リンク結合部275に挟まれた中間部には、支点272が配されており、揺動軸270は支点272を中心にヨー軸方向上下に往復運動する。支点272は、例えば、支点支持体230にピッチ方向に貫通孔を穿孔し、揺動軸270に形成した突起を挿入して、揺動軸270をピッチ軸周りに回動自在に支持するものである。
なお、揺動軸270は、ピッチ軸周りに回動していることから、弾性体リンク結合部275の位置は、ロール軸方向に対して相対的に前後する。この前後運動によって、弾性体リンク80には曲げとともに捩りが生じ、翼20にフラッピング運動、フェザリング運動、リード・ラグ運動のための弾性体リンク80の挙動を実現している。
本実施形態では、ロール軸周りに回転する第2平歯車213によって、クランク軸としての作用を奏させることができるため、羽ばたき飛行機機体の全長を短縮化することができる。
以上で説明を終えるが、本発明の態様は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、対向する翼をさらに増加することや、増加した翼それぞれのフラッピング角度を制御して、複雑な飛行を実現させることもできる。
10・・・機軸
11・・・枢支部材収容部
12・・・支持体
13・・・ウォームギア支持体
15・・・機軸枢支部材結合ピン孔
20・・・第1翼
21・・・翼膜
22・・・前縁翅脈(しみゃく)
23・・・側翅脈
24・・・枢支部材結合部
30・・・第2翼
31・・・第2翼膜
32・・・第2前縁翅脈
33・・・第2側翅脈
34・・・第2枢支部材結合部
40・・・枢支部材
41・・・ロール枢支部
42・・・リード・ラグ枢支部
43・・・枢支部間結合ピン孔
44・・・翼結合部
45・・・弾性体リンク結合部
46・・・機軸枢支部材結合ピン
47・・・ロールピン孔
48・・・ヨーピン孔
49・・・枢支部間結合ピン
60・・・連結部
61・・・第2ロール枢支部
62・・・第2翼結合部
50・・・係合部
51・・・係合収容部
70・・・揺動軸
71、275・・・弾性体リンク結合部
72・・・支点
73・・・ガイド溝
80・・・弾性体リンク
81・・・枢支部材結合部
100,200・・・羽ばたき飛行機
110・・・駆動部
111・・・モータ
112・・・ウォーム
113・・・ウォームホイール
114・・・ガイドピン
120・・・電池
121・・・制御部
122,123・・・ケーブル
130・・・枢支部回動規制部材
141,142・・・弾性体リンク曲げ規制部材
200・・・駆動部
211・・・モータ
212・・・第1平歯車
213・・・第2平歯車
214・・・モータ支持体
220・・・電池
221・・・制御部
222,223・・・ケーブル
225・・・回転軸
230・・・支点支持体
240・・・ガイド機構
270・・・揺動軸
271・・・ガイド体
COG・・・機体重心
FL,FR・・・推力
LOGR・・・右翼重心
LOGL・・・左翼重心
XLR1,2,3・・・リード・ラグ移動長
RM・・・回転モーメント

Claims (7)

  1. 機軸と該機軸の法線方向に延出された対向する複数の第1翼および第2翼と、
    前記機軸の延出方向をロール軸、前記法線方向をピッチ軸、該ロール軸および該ピッチ軸と互いに直交する方向をヨー軸としたとき、前記複数の第1翼を前記機軸に対してロール軸周りおよびヨー軸周りを回動自在に枢支する第1枢支部材と、
    前記複数の第2翼を前記機軸に対してロール軸周りに回動自在に枢支する第2枢支部材と、
    前記機軸に沿ってロール軸方向に設けられて、前記機軸に対して近接と遠隔を繰り返す往復運動を行う揺動軸と、
    前記揺動軸と前記複数の第1翼および第2翼とを結ぶ弾性体リンクと、を備え、
    前記弾性体リンクが、前記揺動軸に所定の捩り・曲げを加えられて取り付けられ、前記揺動軸の往復運動によって前記複数の第1翼および第2翼を揺動させる羽ばたき飛行機において、
    対向する前記第1翼のそれぞれのヨー軸周りの回動範囲を独立して規制する規制手段を有し、
    前記規制手段が前記弾性体リンクの捩り量を規制する、ことを特徴とする羽ばたき飛行機。
  2. 前記規制手段が前記第1枢支部材の前記回動範囲を規制する、ことを特徴とする請求項1に記載の羽ばたき飛行機。
  3. 前記弾性体リンクの延在方向中間部に捩り規制部材を装着する、ことを特徴とする請求項に記載の羽ばたき飛行機。
  4. 前記規制手段が形状記憶合金であり、該記憶形状合金の動作を制御する制御手段を備える、ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の羽ばたき飛行機。
  5. 前記揺動軸を前記往復運動させる駆動部をさらに備え、
    前記駆動部が、
    前記揺動軸の前記揺動軸の前記飛行方向の反対側に前記ピッチ軸方向に軸支されたクランク軸と、
    一端が前記クランク軸に枢支され、他端が前記機体に枢支され、前記クランクの回転を前記揺動軸に対する前記機体の相対回転運動に変換して伝える連接杆と、を備える、ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の羽ばたき飛行機。
  6. 前記揺動軸を前記往復運動させる駆動部をさらに備え、
    前記駆動部が、
    前記揺動軸の前記揺動軸の前記飛行方向の反対側に前記ロール軸方向に軸支されたクランク軸と、
    一端が前記クランク軸に枢支され、他端が前記機体に枢支され、前記クランクの回転を前記揺動軸に対する前記機体の相対回転運動に変換して伝える連接杆と、を備える、ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の羽ばたき飛行機。
  7. 前記クランクを回転させるモータと、
    前記モータと前記規制手段への電力を供給する電池と、をさらに備え、
    前記制御部が、前記モータと前記規制手段への電力を制御する、ことを特徴とする請求項またはに記載の羽ばたき飛行機。
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