JP4259805B2 - ポリ乳酸系二軸延伸フィルムおよびその製造方法 - Google Patents

ポリ乳酸系二軸延伸フィルムおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリ乳酸系二軸延伸フィルムに関し、特に、機械的強力と横方向のカット性に優れたポリ乳酸系二軸延伸フィルムおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリスチレン系(以下、「OPS」と略称する。)二軸延伸フィルムやポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略称する。)フィルムは、優れた透明性、光沢性、カット性、デッドホールド性、適度なガス透過性を有するため、青果物包装、粘着テープ、ラベル、窓付き封筒、ポリスチレン系基材へのラミネート等、幅広い用途に使用されている。
【0003】
しかしながら、これらのプラスチックフィルムは、自然環境中に廃棄されるとその化学的安定性のためにほとんど分解せずにゴミとして蓄積する一方である。将来的にはゴミ処分場,埋立地の確保が益々困難になり、また自然環境,野生動物に悪影響を及ぼすなどの問題が懸念されている。そのため、近年の環境保全に対する社会的要求の高まりに伴い、微生物などにより分解可能な生分解性を有し、コンポストでの堆肥化処理が可能な生分解性を有する樹脂からなるフィルムが要求されている。生分解性樹脂の中でもポリ乳酸は、各種でんぷんや糖類などを発酵して得られる乳酸を重合した植物由来の原料で、最終的には再び炭酸ガスと水となって地球的規模で環境リサイクルされる理想的なポリマー原料として各種用途に利用され始めている。
【0004】
しかしながら、ポリ乳酸は硬くて脆いという性質を有し、ポリ乳酸からなる無延伸フィルムは、強度や伸度が低く、耐衝撃性に劣るため、そのままでは成形体としての実用性が不足する。
【0005】
そこでポリ乳酸の脆性を向上するために、一軸あるいは二軸延伸して配向させる方法が知られている。このような延伸フィルムは、情報記録材料(磁気カード),工業用パッケージ,農業用マルチフィルムなどに展開され、一部は実用化に至っているものもある。特に、機械的強力や衝撃強度の向上や改善を図るために二軸延伸処理によりフィルム化されたポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、OPSフィルムやPETフィルムに似た透明性や腰の強さや高い衝撃強度を有するため、各種ラベル、オーバーラッピング、紙貼り用フィルムなどの用途においてOPSフィルムやPETフィルムの代替素材の一つといえる。
【0006】
各種ラベル、オーバーラッピング、紙貼り用フィルム等の用途に使用されるフィルムには、機械的強力や高い衝撃強度、透明性などのほかに、耐水性や加工ライン適性が要求される。ここでいう加工ライン適正とは、特に、製袋工程や紙貼り時工程においてフィルムを良好にカットできるフィルムのカット性(裁断性)のことをいう。
【0007】
ポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、元来吸水性や吸湿性の低いフィルムであるため、ガラス転移温度付近の高温高湿度下でなければ耐水性にはほぼ問題がない。しかし、二軸延伸化により縦、横両方向に強靭なフィルムが得られるものの、製袋工程や紙貼り時工程においてフィルムをカット(裁断)しにくいという問題がある。例えば、封筒窓貼り用フィルムの裁断は加工速度がおよそ800枚/分と高速で行われるが、このような高速加工においても紙とフィルムの貼り合わせずれが生じないように良好にカットできることが求められている。しかし、ポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、このような加工速度で供給された場合にフィルムを良好にカットすることができず、近年の加工ラインの高速化に伴い、フィルムのカット性(裁断性)の向上が強く望まれている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記問題点を解決し、優れた機械的強力と高速加工に対応可能なフィルムカット性とを兼ね備えたポリ乳酸系二軸延伸フィルムおよびその製造方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、特定のポリ乳酸系樹脂を特定の条件下で二軸延伸することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明に至ったものである。
【0010】
すなわち本発明は、樹脂成分が、L−乳酸とD−乳酸との割合が(L−乳酸)/(D−乳酸)=100/0〜94/6(モル%)であるポリ乳酸のみからなる二軸延伸フィルムであって、前記フィルムの縦方向の引張伸度が60%以上100%未満であり、縦方向の引張強度が130MPaよりも大きく217MPa以下であり、横方向の引裂強度が15mN以上50mN未満であり、フィルム衝撃強度が . 72J以上1.5J未満であることを特徴とするポリ乳酸系二軸延伸フィルムを要旨とするものである。
【0011】
また、本発明は、樹脂成分が、L−乳酸とD−乳酸との割合が(L−乳酸)/(D−乳酸)=100/0〜94/6(モル%)であるポリ乳酸のみからなる樹脂組成物を溶融製膜し、フィルムの縦延伸倍率をX、横延伸倍率をYとしたときに、前記Xが2.5倍以上4.5倍以下であり、XのYに対する延伸倍率比(X/Y)が0.9〜2.0の範囲となるように二軸延伸してフィルム化することを特徴とするポリ乳酸系二軸延伸フィルムの製造方法を要旨とするものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、樹脂成分が、L−乳酸とD−乳酸との割合が(L−乳酸)/(D−乳酸)=100/0〜94/6(モル%)であるポリ乳酸のみからなる必要がある。ポリ乳酸系樹脂に占めるD−乳酸の含有量が6モル%を越えると、ポリ乳酸系樹脂は明確な融点を示さなくなり結晶性に乏しいものとなる。その結果、延伸時の厚み精度が著しく悪化し、なおかつ延伸後の熱セットによる配向結晶化が進行しなくなるため、フィルムの巻き取り時にフィルムに割れや裂けが発生するという問題が生じるだけでなく、二次加工の面でもフィルムテンションによるフィルム破断や、ブロッキングによるトラブルが発生する。また、L−乳酸を単独で使用してもよいが、D−乳酸が配合されているほうが結晶性が緩和され、製膜性の良いものが得られる。従って、本発明においては、L−乳酸とD−乳酸とが、(L−乳酸)/(D−乳酸)=99/1〜95/5(モル%)の範囲で配合されていることが、より好ましい。なお、L−乳酸とD−乳酸とは、上記の割合で配合されていれば共重合体であってもブレンド体であっても良い。
【0013】
ポリ乳酸系樹脂の数平均分子量は、5万〜30万の範囲にあることが好ましく、より好ましくは8万〜15万である。数平均分子量が5万未満であると、得られるフィルムは機械的強力に劣る湯ものとなり、延伸工程や巻き取り工程での切断も頻繁に起こり、操業性の低下を招く。一方、数平均分子量が30万を越えると、加熱溶融時の流動性が乏しくなって製膜性が低下する。
【0014】
ポリ乳酸を得るための重合法としては、縮合重合法及び開環重合法のいずれの方法を採用することも可能であり、分子量増大を目的として少量の鎖延長剤、例えばジイソシアネート化合物,ジエポキシ化合物,酸無水物等を使用してもよい。
【0015】
また、製造工程あるいは二次加工工程でのハンドリング、フィルム走行性の面からアンチブロッキング剤を添加することができる。アンチブロッキング剤とは、シリカ、二酸化チタン、タルク、アルミナ等の安定な金属酸化物、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム等の安定な金属塩、またはポリ乳酸に対して不活性な有機樹脂からなるいわゆる有機系ビーズが好適に使用できる。これらのアンチブロッキング剤はいずれか1種類を単独で用いても良く、また2種類以上を併用しても良い。
【0016】
本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、各種ラベル、オーバーラッピング、紙貼り用フィルム等の用途に好適に使用できるだけの優れた機械的強力を有するとともに、高速加工にも対応可能な優れたフィルムカット性を有する必要がある。フィルムカット性としては、特に、横方向のフィルムカット性が重要であり、横方向のフィルムカット性が悪い場合には、フィルム加工工程で機械内にフィルム詰まりが起こり易くなり、加工速度を落として製袋やラミネート加工する必要が生じる。横方向のフィルムカット性を決定する要因としては、縦方向の引張伸度、縦方向の引張強度、横方向の引裂強度、フィルム衝撃強度の4つが挙げられる。本発明においては、この4つの要因が以下のような値を有する必要がある。
【0017】
まず、フィルムの縦方向の引張伸度は100%未満である必要がある。フィルムの縦方向の引張伸度が100%以上であると、横方向のカット性が低下して、製袋工程やラミネート加工工程等の高速化に対応できなくなる。また引張伸度が100%以上であるということは、フィルムの縦物性が高度化されていないため後述の縦方向の引張強度に劣る可能性があり、さらに加えてフィルムが容易に縦方向に伸びやすくなって、加工工程でしわや蛇行が発生しやすくなるため好ましくない。
【0018】
また、フィルムの縦方向の引張強度は130MPaよりも大きい必要がある。フィルムの縦方向の引張強度が130MPa未満であると、上記と同様にフィルムが容易に縦方向に伸びやすくなり、加工工程でしわや蛇行が発生しやすくなるため好ましくなく、加工工程の高速化にも対応できない。
【0019】
また、フィルムの横方向の引裂強度は50mN未満である必要がある。フィルムの横方向の引裂強度が50mN以上であると、フィルムをカットする際の抵抗が大きくなるばかりでなく、切り口が必ずしも横方向にならないため、高速化に対応できなくなると共に、カットミスが発生しやすくなる。
【0020】
さらに、フィルム衝撃強度は1.5J未満である必要がある。フィルム衝撃強度が1.5J以上であると、フィルムをカットする際のカッター刃に対する抵抗が強過ぎて良好にフィルムをカットすることができず、加工工程の高速化に対応できない。また、フィルム衝撃強度が1.5J以上のフィルムを作製するためには、後述のように高延伸倍率での延伸処理が必要となるが、高延伸倍率での延伸処理を行うと、フィルムの切断が頻発して操業性が悪化する。
【0021】
上記のような物性を有するポリ乳酸系二軸延伸フィルムであると、フィルムの機械的強力に優れると共に横方向にカットし易くなるため、製袋、ラミネート等加工工程の高速化に対応可能となり、加工効率を著しく向上させることができる。
【0022】
このような物性を有するポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、このポリ乳酸系二軸延伸フィルムを作製する際の延伸方法及び延伸条件を適宜調整することによって実現できる。
【0023】
延伸方法は、同時二軸延伸法または逐次二軸延伸法のいずれでも良いが、本発明の構成要件を満足させる容易性の点から同時二軸延伸法がより好適である。同時二軸延伸法は、フィルムを縦方向と横方向に同時に延伸するため、分子鎖が特定の方向性を持たずに延伸される。その結果、延伸途中での結晶化が生じにくくなり、縦延伸倍率の高倍率化が可能となる。縦延伸倍率の高倍率化が可能になると、フィルムの縦方向の引張強度、弾性率、フィルム衝撃強度の向上が図れる。また、フィルムの縦方向の引張伸度を低下させるので、それに伴って横方向の引裂強度を低下させることとなり、その結果、横方向のカット性が向上することとなる。
【0024】
二軸延伸処理を行う際には、フィルムの縦延伸倍率をX、横延伸倍率をYとしたときに、縦延伸倍率Xが2.5倍以上であり、XのYに対する延伸倍率比(X/Y)が0.9〜2.0の範囲となるようにして延伸処理することが必要である。縦延伸倍率Xが2.5倍未満であると、十分な機械的強力が得られず、実用性に劣るものとなる。また、縦延伸倍率X及び横延伸倍率Yの上限は特に限定されるものではないが、縦延伸倍率Xが6.0倍を超えるとフィルム破断が生じやすくなるので、縦延伸倍率は3.0〜6.0倍とすることが好ましい。また、延伸倍率比(X/Y)が0.9未満であると、フィルムの縦方向の機械的強力が不足するため、加工工程においてしわや蛇行が発生して、カット性が低下しやすくなる。また、延伸倍率比(X/Y)が2.0を超えると、フィルムの製造工程においてフィルム破断が生じやすくなる。従って、延伸倍率比(X/Y)は、1.1〜1.5の範囲であることがより好ましい。
【0025】
なお、本発明においては、同時二軸延伸処理を行うに際し、縦横の軌跡を自由に選択して延伸する同時二軸延伸法を単独で行っても良いが、固定倍率の同時二軸延伸処理を行う前後で縦延伸処理を別に実施する方法も有効である。この場合、縦延伸処理は、同時二軸延伸処理の前もしくは後のどちらか一方だけで行っても良いし、両方で行っても良い。また、同時二軸延伸処理の前後に縦延伸処理を行う場合には、この縦延伸処理の縦延伸倍率をX1、固定倍率の同時二軸延伸処理の縦延伸倍率をX2としたときに、X1×X2で表される全縦延伸倍率Xが上記の範囲にあることが必要である。
【0026】
本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、必要に応じて、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等の表面処理をしても良く、フィルムの表面処理は二次加工における印刷性の向上の点から有効な手段である。中でも、コロナ放電処理は簡便さの点からが最も好ましい。これらの表面処理は、フィルム製造工程中いわゆるオンラインに行っても、スリット時いわゆるオフラインに行ってもよいが、いずれの場合にも二次加工における印刷性や接着剤の密着力の点から、処理面のぬれ張力が40mN/mを超えるよう処理することが望ましい。
【0027】
本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムには、必要に応じて顔料,酸化防止剤,可塑剤,紫外線吸収剤,滑剤,結晶核剤、帯電防止剤等を任意の割合で添加することができる。
【0028】
本発明におけるポリ乳酸系二軸延伸フィルムの厚みは特に制限なく、用途,要求性能,価格等によって適宜設定すればよいが、10〜200μm程度の厚さであるのが適当である。
【0029】
以下に、本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムの製造方法について、一例を挙げて説明する。
本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムの製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、Tダイ法,インフレーション法,カレンダー法等が挙げられるが、Tダイを用いて溶融混練して押出すTダイ法が好ましい。
【0030】
Tダイ法により製造する場合には、特定のポリ乳酸にさらに必要に応じて可塑剤,滑剤を適量配合したポリ乳酸系樹脂組成物を押出機ホッパーに供給し、押出機を例えば、シリンダー温度180〜260℃、Tダイ温度200〜250℃に加熱し、溶融混練して押し出し、20〜40℃に制御された冷却ロールで冷却し、厚さ100〜500μmの未延伸フィルムを得る。
【0031】
未延伸フィルムの二軸延伸方法としては、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法のいずれでも良いが、上記のフィルム特性を有するポリ乳酸系二軸延伸フィルムを容易に実現できるという点から、同時二軸延伸が好ましい。また、延伸倍率や延伸軌跡を自由に選択できる点で、リニアモーター駆動方式を用いることも有効である。
【0032】
例えば、未延伸フィルムを同時二軸延伸法によって延伸フィルムとする場合には、未延伸フィルムを同時二軸延伸機に導びいて予熱温度70〜90℃、延伸温度70〜90℃で縦方向に3倍および横方向に3倍となるように同時に延伸する。なお、同時二軸延伸に先だって、駆動ロールの回転速度比によって縦方向にロール表面温度60〜90℃で、延伸倍率1〜2.0倍で縦方向に延伸する予備延伸を行っても良い。さらに、同時二軸延伸後に、再度縦方向に延伸することも有効である。
【0033】
延伸倍率は、特に限定されるものではないが、上記のように機械的特性や横方向のカット性を考慮すると、フィルムの縦延伸倍率をX、横延伸倍率をYとしたときに、Xが2.5倍以上であり、XのYに対する延伸倍率比(X/Y)が0.9〜2.0の範囲となるようにして同時二軸延伸することが好ましい。
【0034】
また、上記の延伸処理後に、要求性能に応じて100〜150℃で5〜60秒間の熱固定処理と、2〜8%の条件下での弛緩処理を行うことが好ましい。
このようにして得られた本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、ラベル、紙貼り用フィルム、スナック食品ケース、医薬品ケース、磁気テープ、磁気ディスク等の個包装あるいは集積包装に適したオーバーラッピング用途の包装用フィルムとして好適に使用できる。また、ゴミとして廃棄された場合には、土壌中で微生物により分解され、自然環境、野生動物に対する環境負荷を軽減することができる。
【0035】
【実施例】
次に実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、実施例、比較例における各種物性値の測定方法は、以下のとおりである。
(1)縦引張強度(MPa)及び縦引張伸度(%):ASTM−D882の測定法に準じて、長さ100mm,幅10mmの試料で測定した。本発明においては、縦方向の引張強度が130MPa以上であり、引張伸度が100%以下であるものを合格とした。
(2)フィルム衝撃強度(J):フィルム衝撃試験機(東洋精機製作所製)を用い、測定温度23℃、50%RHの雰囲気中で振子容量15kg・cm、12.7mmφの衝撃頭を用いて測定した。フィルム衝撃強度は1.5J以下を合格とした。
(3)横引裂強度(mN):JIS K−7128に準じて、横方向に試験片を引き裂くのに要する荷重を測定値とした。横方向の引裂強度が50mN以下を合格とした。
(4)横方向カット性:1個の窓貼り部を有する封筒用の紙(封筒としたときのサイズ120mm×230mm)に、巾215mmのロール状フィルムを長さ80mmに切断したフィルムを高速封筒試験機(シーベルヘグナー社製)を用いて糊にて貼り付け、以下のように評価した。
【0036】
まず、フィルムと紙との貼り合わせ速度を800枚/分として10分間貼り合わせを行い、作製した8000枚の紙の中から無作為に100枚のサンプルを抽出してフィルムの所定の貼り付け位置からのずれを測定し、フィルムの所定の貼り付け位置からのずれが全て1mm以下であった場合を○で表した。
【0037】
また、前記100枚のサンプルの中に所定の貼り付け位置からのずれが1mmを超えるものがあった場合は、フィルムと紙との貼り合わせ速度を500枚/分に落として上記と同様にフィルムと紙との貼り合わせを行い、作製した5000枚の紙の中から無作為に100枚のサンプルを取り出してフィルムの所定の貼り付け位置からのずれを測定した。そして、フィルムの所定の貼り付け位置からのずれが全て1mm以下であった場合を△で表し、貼り合わせ速度を500枚/分に落としても貼り付け位置からのずれが1mmを超えるものがあった場合を×で表した。
(5)総合評価:全ての項目が合格で横方向のカット性の評価が○であり、加工性に優れていたものを○、不合格の項目が有った、あるいは横方向のカット性の評価が△、×であり、加工性に劣ったものを×で表した。
実施例1
ポリ乳酸として、数平均分子量が93,000、MFRが6.5g/10分(210℃)、L−乳酸とD−乳酸との割合が(L−乳酸)/(D−乳酸)=98.5/1.5(モル%)であるポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマー社製)を用いた。このポリ乳酸100重量部に対し、アンチブロッキング剤として平均粒径が1.4μmの不定形シリカ(富士シリシア化学社製、サイリシア310P)を0.1重量部を配合した。
【0038】
このポリ乳酸系樹脂組成物を、90mmφの口径を有する単軸押出機で230℃で溶融し、Tダイにてシート状に押し出し、同時に表面温度が20℃のキャストロールで急冷固化して、厚み270μmの未延伸フィルムを得た。樹脂の押し出し量は、後述の延伸倍率を考慮して、フィルム厚みが最終的に25μmとなるように調整した。
【0039】
得られた未延伸フィルムを予熱ロール62℃,延伸ロール75℃の条件下で1.2倍に縦方向に延伸した。引き続いて、倍率可変式パンタグラフ方式の同時二軸延伸機に供給して、ステンター内の予熱温度85℃、延伸温度80℃として、縦方向に3.0倍、横方向に3.0倍の同時二軸延伸を行い、続いて横方向の弛緩率を4%として125℃で熱処理を施し、厚み25μmの二軸延伸フィルムを得た。
【0040】
得られたフィルムの物性を表1に示す。
【0041】
【表1】
Figure 0004259805
実施例2
未延伸フィルムを予備縦延伸を行わずに同時二軸延伸機に供給し、縦方向に3.6倍、横方向に3.0倍の同時二軸延伸を行った。そしてそれ以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを作製した。
【0042】
得られたフィルムの物性等を表1に示す。
実施例3
実施例1と同様にして厚み215μmの未延伸フィルムを作製した。この未延伸フィルムを予備縦延伸は行わずに同時二軸延伸機に供給して、縦方向に2.85倍、横方向に3.0倍の同時二軸延伸を行った。そしてそれ以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを作製した。
【0043】
得られたフィルムの物性等を表1に示す。
実施例4
ポリ乳酸として、数平均分子量が95,000、MFRが7.2g/10分(210℃)、L−乳酸とD−乳酸との割合が(L−乳酸)/(D−乳酸)=95.0/5.0(モル%)であるポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマー社製)を用いて、実施例1と同様にして厚み235μmの未延伸フィルムを作製し、予熱ロール66℃,延伸ロール78℃で1.3倍の予備縦延伸を行った。そしてそれ以外は実施例1と同様にして厚み20μmの延伸フィルムを作製した。
【0044】
得られたフィルムの物性等を表1に示す。
実施例5
ポリ乳酸として、実施例1で使用したポリ乳酸50質量部と実施例4で使用したポリ乳酸50質量部との合わせて100質量部を用い、予熱ロール72℃,延伸ロール80℃で1.5倍の予備縦延伸を行った。そしてそれ以外は実施例1と同様にして厚み20μmの延伸フィルムを作製した。
【0045】
得られたフィルムの物性等を表1に示す。
実施例6
未延伸フィルムを予熱ロール72℃,延伸ロール85℃の条件下で3.6倍に縦方向に延伸した。引き続いて、テンター内に導き、予熱温度80℃、延伸温度86℃で3倍の横延伸を行った。そしてそれ以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを作製した。
【0046】
得られたフィルムの物性等を表1に示す。
実施例1〜6は、いずれもポリ乳酸を構成するL−乳酸とD−乳酸との割合が本発明の範囲内であり、本発明における好適な延伸倍率で延伸処理が施されていたため、機械的強力に優れるとともに横方向カット性に優れたポリ乳酸系二軸延伸フィルムが得られた。また、いずれの実施例も総合評価は全て○であり、加工性の良いものであった。
比較例1
ポリ乳酸として、数平均分子量が90,000、MFRが8.4g/10分(210℃)、L−乳酸とD−乳酸との割合が(L−乳酸)/(D−乳酸)=90.0/10.0(モル%)であるポリ乳酸(カーギル・ダウ・ポリマー社製)を用いた。また、未延伸フィルムの延伸工程において予熱ロール60℃,延伸ロール72℃とした。そしてそれ以外は実施例1と同様にして厚さ25μmの延伸フィルムを作製した。
【0047】
得られたフィルムの物性等を表2に示す。
【0048】
【表2】
Figure 0004259805
比較例2
ポリ乳酸の代りに脂肪族ポリエステル(昭和高分子社製、ビオノーレ1903)を用いた。また、未延伸フィルムの延伸工程において予熱ロール60℃,延伸ロール72℃とした。そしてそれ以外は実施例1と同様にして厚さ25μmの延伸フィルムを作製した。
【0049】
得られたフィルムの物性等を表2に示す。
比較例3
厚み235μmの未延伸フィルムを作製し、予備縦延伸は行わずに、縦倍率3.0倍、横倍率3.9倍の同時二軸延伸機に導き、厚さ20μmの延伸フィルムを作製した。そしてそれ以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを作製した。
【0050】
得られたフィルムの物性等を表2に示す。
比較例4
厚み145μmの未延伸フィルムを作製し、予熱ロール60℃,延伸ロール67℃で1.2倍の予備縦延伸を行い、続いて縦倍率2.0倍、横倍率2.0倍の同時二軸延伸機に導き、厚さ30μmの延伸フィルムを得た。そしてそれ以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを作製した。
【0051】
得られたフィルムの物性等を表2に示す。
比較例5
未延伸フィルムの延伸工程において、予熱ロール75℃,延伸ロール85℃として2.2倍の予備縦延伸を行い、続いて縦倍率3.0倍、横倍率3.0倍の同時二軸延伸を行った。そしてそれ以外は実施例1と同様にして延伸フィルムを作製した。
【0052】
得られたフィルムの物性等を表2に示す。
比較例1は、L−乳酸とD−乳酸の配合割合が本発明の範囲外であったため、得られた延伸フィルムは機械的強力や横方向カット性に劣り、加工性の悪いものであった。
【0053】
比較例2は、本発明のポリ乳酸の代りに脂肪族ポリエステルを用いたため、機械的強力や横方向カット性に劣り、加工性の悪いものであった。
比較例3は、延伸倍率比が本発明の範囲外であったため、機械的強力に劣り、横方向カット性にもやや劣り、加工性の悪いものであった。
【0054】
比較例4は、縦延伸倍率が本発明の範囲外であったため、機械的強力や横方向カット性に劣り、加工性の悪いものであった。
比較例5は、延伸倍率比が本発明の範囲外であったため、フィルム化が困難であった。
【0055】
【発明の効果】
以上のように本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムによれば、樹脂成分が、L−乳酸とD−乳酸とが特定の割合で配合されたポリ乳酸系樹脂のみからなる樹脂組成物を、特定の条件で二軸延伸することで、機械的強力に優れ、特に横方向のフィルムカット性に優れたポリ乳酸系二軸延伸フィルムが得られる。このようなポリ乳酸系二軸延伸フィルムは、オーバーラッピングや紙貼り用フィルムに好適に使用でき、特に透視窓付き封筒との高速貼り合わせに好適に使用できる。
【0056】
また、本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムの製造方法によれば、本発明のポリ乳酸系二軸延伸フィルムを容易に実現できる。

Claims (2)

  1. 樹脂成分が、L−乳酸とD−乳酸との割合が(L−乳酸)/(D−乳酸)=100/0〜94/6(モル%)であるポリ乳酸のみからなる二軸延伸フィルムであって、前記フィルムの縦方向の引張伸度が60%以上100%未満であり、縦方向の引張強度が130MPaよりも大きく217MPa以下であり、横方向の引裂強度が15mN以上50mN未満であり、フィルム衝撃強度が . 72J以上1.5J未満であることを特徴とするポリ乳酸系二軸延伸フィルム。
  2. 樹脂成分が、L−乳酸とD−乳酸との割合が(L−乳酸)/(D−乳酸)=100/0〜94/6(モル%)であるポリ乳酸のみからなる樹脂組成物を溶融製膜し、フィルムの縦延伸倍率をX、横延伸倍率をYとしたときに、前記Xが2.5倍以上4.5倍以下であり、XのYに対する延伸倍率比(X/Y)が0.9〜2.0の範囲となるように二軸延伸してフィルム化することを特徴とするポリ乳酸系二軸延伸フィルムの製造方法。
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