JP4259717B2 - 火花点火装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関の燃焼室内に燃料を直接噴射する所謂、直噴エンジンにおける燃料への着火性を向上する火花点火装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、内燃機関の1燃焼サイクル中に複数回の放電を断続して行う多重放電により、燃料への着火性を高める火花点火装置が知られている。
【0003】
また、近年の直噴エンジンにおいては、エンジン負荷が小さなときには成層燃焼運転とするため、図20に示すように、ピストン頂面の燃焼室形状や吸気流形成によってインジェクタ(燃料噴射弁)から噴射された噴霧の塊である成層混合気を燃焼室内で移動させ(矢印参照)点火プラグ周辺に可燃混合気を形成するようにしている。このような成層燃焼運転における可燃混合気では、図21に示すように、点火プラグの火花ギャップでの可燃濃度範囲においても、そのときの運転条件により濃度ばらつきや時間ばらつきを有しており、その混合気濃度により着火に必要な放電エネルギの異なることが一般的に知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述の多重放電時の各パルスにおける放電エネルギ量の必要量は未知であった。このため、成層混合気のばらつきに対して多重放電するにも、従来の単発放電と同等の放電エネルギを供給している。これは、着火の容易な混合気条件に対しても多大な放電エネルギを投入している等、過剰な放電エネルギの投入となっており、点火系における電気エネルギの消費量を増大させる要因となり、それに伴い点火コイルは大型化し内燃機関への搭載性を損なっていた。また、放電エネルギ量の増大は点火プラグの放電電極の耐消耗性、バッテリやオルタネータ更には機関出力にも悪影響を及ぼすという不具合があった。
【0005】
そこで、この発明はかかる不具合を解決するためになされたもので、各放電エネルギ量を運転条件に応じて変化させ、混合気状態に応じて最適な放電エネルギの投入を行うことにより燃焼状態の改善及び放電エネルギの抑制、点火コイル大型化の抑制が可能な火花点火装置の提供を課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1の火花点火装置によれば、直噴エンジンで少なくとも成層燃焼運転条件の一部または全部で多重放電とするべく点火コイルによる高電圧の印加を短時間に断続的に複数回行い点火プラグに複数回の放電火花を発生させることで噴霧燃料の濃度変化に対応でき確実に着火される。また、成層燃焼運転条件以外の運転条件及び成層燃焼運転条件の上記多重放電を用いない条件であるときには点火プラグに1回以上の放電火花を発生させることで噴霧燃料に確実に着火される。このように、直噴エンジンの成層燃焼運転条件の一部または全部、その他の運転条件に適した回数の放電火花が所定のタイミングで噴霧燃料に対して発生されることで噴霧燃料に対する確実な着火が保証される。
また、点火制御手段では、直噴エンジンが成層燃焼運転条件にあって多重放電とするか、またはその他の運転条件にあって単発放電とするかの切替や多重放電の開始から終了までの総放電期間、各放電期間、各間欠期間を算出するにあたって直噴エンジンの運転条件毎に予め設定されたマップが用いられる。このように、予め設定されたマップを用いることで、運転条件の切替を素早く正確に行えると共に、多重放電の総放電期間、各放電期間、各間欠期間を瞬時に設定でき適切な点火制御が行われ良好な着火が得られる。
そして、多重放電の各間欠期間は、徐々に長くなるよう設定されるため、多重放電における放電終了間際であっても噴霧燃料に着火するための放電エネルギの蓄積が可能となる。このため、成層燃焼運転条件における総放電期間にわたり噴霧燃料に対する確実な着火が保証される。
更に、多重放電の総放電期間中の各放電期間における放電エネルギ密度は、直噴エンジンの運転条件に応じて噴霧燃料に対する放電火花による着火を確保するように設定される。このため、成層燃焼運転条件における放電火花による着火が保証されると共に、点火系における電気エネルギ消費が抑制される。
【0007】
請求項2の火花点火装置によれば、直噴エンジンで少なくとも成層燃焼運転条件の一部または全部で多重放電とするべく点火コイルによる高電圧の印加を短時間に断続的に複数回行い点火プラグに複数回の放電火花を発生させることで噴霧燃料の濃度変化に対応でき確実に着火される。また、成層燃焼運転条件以外の運転条件及び成層燃焼運転条件の上記多重放電を用いない条件であるときには点火プラグに1回以上の放電火花を発生させることで噴霧燃料に確実に着火される。このように、直噴エンジンの成層燃焼運転条件の一部または全部、その他の運転条件に適した回数の放電火花が所定のタイミングで噴霧燃料に対して発生されることで噴霧燃料に対する確実な着火が保証される。
また、点火制御手段では、直噴エンジンが成層燃焼運転条件にあって多重放電とするか、またはその他の運転条件にあって単発放電とするかの切替や多重放電の開始から終了までの総放電期間、各放電期間、各間欠期間を算出するにあたって直噴エンジンの運転条件毎に予め設定されたマップが用いられる。このように、予め設定されたマップを用いることで、運転条件の切替を素早く正確に行えると共に、多重放電の総放電期間、各放電期間、各間欠期間を瞬時に設定でき適切な点火制御が行われ良好な着火が得られる。
そして、多重放電の総放電期間中の各放電期間における放電エネルギ密度は、直噴エンジンの運転条件に応じて噴霧燃料に対する放電火花による着火を確保するように設定される。このため、成層燃焼運転条件における放電火花による着火が保証されると共に、点火系における電気エネルギ消費が抑制される。
請求項3の火花点火装置によれば、前記多重放電の総放電期間中の各放電期間における放電エネルギ密度を、18〔mJ/ms:ミリジュール/ミリ秒〕以上となるよう設定するものであるから、このため、成層燃焼運転条件における放電火花による着火が保証されると共に、点火系における電気エネルギ消費が抑制される。
【0008】
請求項4の火花点火装置では、多重放電の総放電期間が1.0〜3.0〔ms〕の範囲に設定されるため、多重放電における混合気形成の時間的なばらつきや混合気濃度のばらつきに対しても着火に十分な放電エネルギが供給されると共に、点火系における電気エネルギ消費が抑制される。
【0009】
請求項5の火花点火装置では、多重放電の各放電期間が0.05〜0.5〔ms〕の範囲に設定されるため、多重放電における毎回の放電エネルギ量が適切に制御される。
【0010】
請求項6の火花点火装置では、多重放電の各間欠期間が0.1〜1.0〔ms〕の範囲に設定されるため、多重放電における毎回の放電エネルギ量が適切に制御される。
【0013】
請求項7の火花点火装置における点火制御手段では、点火コイルの1次電流を通電/遮断させ点火プラグの火花ギャップに放電火花を発生させ多重放電が行われる。このように、直噴エンジンの1燃焼サイクル中の圧縮上死点付近にて多重放電を行わせることで噴霧燃料の混合気濃度変化に対応でき確実に着火される。
【0014】
請求項8の火花点火装置では、放電エネルギ密度が18〔mJ/ms〕未満となった時点で放電が持続していたとしても、多重放電の間欠期間としてカウントされるがその間欠期間が0.1〜1.0〔ms〕の範囲に設定される。このように、多重放電における各間欠期間が適切に設定されることで毎回の放電エネルギ量が適切に制御される。
【0015】
請求項9の火花点火装置では、多重放電の総放電期間中の各放電期間における点火プラグの火花ギャップの単位ギャップ長当たりの放電エネルギ密度が直噴エンジンの運転条件に応じて噴霧燃料に対する放電火花による着火を確保するための下限値である22.5〔mJ/ms/mm〕以上となるよう設定される。これにより、成層燃焼運転条件における多重放電の各放電期間で点火プラグの火花ギャップによる着火に必要な放電エネルギ密度が満足されると共に、点火系における電気エネルギ消費が抑制される。
【0016】
請求項10の火花点火装置では、点火プラグの中心電極の直径が1.1〔mm〕以下でその火花ギャップが0.4〜1.2〔mm〕の範囲に設定される。このように、点火プラグの中心電極の直径及び火花ギャップの範囲が規定されることで、直噴エンジンの運転条件に対応した噴霧燃料に対する放電火花による確実な着火が保証される。
【0017】
請求項11の火花点火装置では、点火プラグの火花ギャップの単位ギャップ長当たりの放電エネルギ密度が多重放電の各放電期間に対して80〔%〕以上で22.5〔mJ/ms/mm〕以上となるよう設定される。これにより、多重放電の各放電期間中において噴霧燃料に対して一旦、着火されたのちの火炎が燃焼の持続性により維持される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
【0019】
図1は本発明の実施の形態の一実施例にかかる火花点火装置が適用された内燃機関としての直噴エンジンを示す概略構成図、図2は図1の点火プラグの先端形状を示す拡大図である。
【0020】
図1及び図2において、各気筒内に燃料を直接噴射する直噴エンジン(直接噴射式ガソリン機関)10のシリンダヘッド11には吸気通路12が接続されている。この吸気通路12の下流側には吸気ポート13が形成され吸気バルブ14が配設されている。また、吸気通路12の上流側にはスロットルバルブ15が配設されている。このスロットルバルブ15のスロットル開度TAは、アクセルペダル41の踏込量を検出するアクセル開度センサ42からのアクセル開度APに応じて後述のECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)30にて制御される電流により調整され、スロットル開度センサ16によって検出される。そして、スロットルバルブ15を介して吸入された空気は、吸気バルブ14の開弁時期に吸気ポート13を通ってシリンダヘッド11とピストン17とで形成される燃焼室18内に供給される。
【0021】
直噴エンジン10のシリンダヘッド11の頭頂部には燃焼室18内に向けて点火プラグ19が配設されている。更に、直噴エンジン10のシリンダヘッド11の横側にはインジェクタ21が配設され、その噴射孔21aは燃焼室18内に突出されている。そして、高圧燃料ポンプ(図示略)にて加圧されインジェクタ21に供給される高圧燃料は、インジェクタ21の開弁時期に燃焼室18内に直接噴射される。この燃焼室18内に直接噴射された高圧燃料が吸気バルブ14側から導入された空気と混合され、点火プラグ19の中心電極19aと接地電極19bとの間の火花ギャップGに発生される放電火花により着火され燃焼される。
【0022】
一方、直噴エンジン10のシリンダヘッド11には排気通路22が接続されている。この排気通路22には排気ポート23が形成され排気バルブ24が配設されている。そして、燃焼室18で燃焼された排気ガスは排気バルブ24の開弁時期に排気ポート23を通って排気通路22側に排出される。
【0023】
点火プラグ19の中心電極19aには、点火コイル25の2次巻線25bの一端が接続されている。また、点火コイル25の1次巻線25aの一端はバッテリ26に接続され、点火コイル25の1次巻線25aの他端はパワートランジスタ27のコレクタ側に接続されている。直噴エンジン10の運転中においては、ECU30からパワートランジスタ27のベース側に出力される点火信号(パルス信号)IGtに基づきパワートランジスタ27がオン/オフされることで、バッテリ26から点火コイル25の1次巻線25a側を流れる1次電流I1 が通電/遮断される。そして、点火信号IGtの立下がりによってパワートランジスタ27がオフされ、点火コイル25の1次巻線25a側を流れる1次電流I1 が遮断されると、その1次電流I1 に対応する逆起電力が1次側に発生される。この逆起電力に誘導され、点火コイル25の2次巻線25b側に2次電流I2 が流れることとなる。この2次電流I2 により発生される点火コイル25の1次巻線25aと2次巻線25bとの巻数比倍である高電圧な2次電圧V2 が点火プラグ19に印加され、その火花ギャップGに放電火花が発生されるのである。
【0024】
ECU30は、周知の中央処理装置としてのCPU31、制御プログラムや制御マップを格納したROM32、各種データを格納するRAM33、B/U(バックアップ)RAM34、入出力回路35及びそれらを接続するバスライン36等からなる論理演算回路として構成されている。ECU30にはアクセル開度センサ42からのアクセル開度AP〔°〕、スロットル開度センサ16からのスロットル開度TA〔°〕、直噴エンジン10のクランクシャフト20に配設されたクランク角センサ28からのクランク角θ1 〔°CA(Crank Angle)〕、カムシャフト(図示略)に配設されたカム角センサ29からのカム角θ2 〔°CA〕等の各種センサ信号が入力されている。
【0025】
次に、本発明の実施の形態の一実施例にかかる火花点火装置で使用されているECU30内のCPU31における直噴エンジン1に対する燃料噴射・点火時期制御の処理手順を示す図3のフローチャートに基づき、図4を参照して説明する。ここで、図4は機関回転数NEとエンジン負荷としてのアクセル開度APとに基づき成層燃焼運転領域または均質燃焼運転領域にあるかを判定するためのマップである。なお、この燃料噴射・点火時期制御ルーチンは所定時間毎にCPU31にて繰返し実行される。
【0026】
図3において、ステップS101で、まず、クランク角センサ28からのクランク角θ1 による機関回転数NEが読込まれる。次にステップS102に移行して、エンジン負荷としてアクセル開度センサ42からのアクセル開度APが読込まれる。次にステップS103に移行して、エンジン負荷が小さなときの燃焼運転領域である成層燃焼運転領域であるかが判定される。ステップS103の判定条件が成立、即ち、このときのエンジン負荷が小さく、図4に示すように、機関回転数NEとアクセル開度APとによる燃焼運転領域が成層燃焼運転領域で、多重放電適用の条件にあるときにはステップS104に移行し、機関回転数NE、アクセル開度AP等のパラメータに基づきスロットル開度、燃料噴射時期、燃料噴射期間、点火時期、多重放電の開始から終了までの総放電期間、各放電期間及び各間欠期間がROM32内に予め格納されている制御マップ(図示略)により算出される。
【0027】
一方、ステップS103の判定条件が成立せず、即ち、このときのエンジン負荷が大きく、図4に示すように、機関回転数NEとアクセル開度APとによる燃焼運転領域が成層燃焼運転領域における多重放電適用の条件外や均質燃焼運転領域にあるときにはステップS105に移行し、機関回転数NE及びアクセル開度AP等のパラメータに基づきスロットル開度、燃料噴射時期、燃料噴射期間及び点火時期がROM32内に予め格納されている制御マップ(図示略)により算出される。ステップS104またはステップS105における処理ののちステップS106に移行し、クランク角センサ28からの現在のクランク角θ1 〔°CA〕が読込まれる。次にステップS107に移行して、燃料噴射時期であるかが判定される。ステップS107の判定条件が成立せず、即ち、未だ燃料噴射時期でないときにはステップS106に戻り同様の処理が繰返される。
【0028】
ステップS107の判定条件が成立、即ち、燃料噴射時期であるとステップS108に移行し、ステップS104またはステップS105で算出された燃料噴射時期及び燃料噴射期間に基づく燃料噴射信号がインジェクタ21に対して出力される。次にステップS109に移行して、クランク角センサ28からの現在のクランク角θ1 〔°CA〕が読込まれる。次にステップS110に移行して、点火時期であるかが判定される。ステップS110の判定条件が成立せず、即ち、未だ点火時期でないときにはステップS109に戻り同様の処理が繰返される。そして、ステップS110の判定条件が成立、即ち、ステップS104またはステップS105で算出された点火時期であるとステップS111に移行し、このとき成層燃焼運転領域であればステップS104で算出された総放電期間、各放電期間及び各間欠期間に基づき多重放電するための点火信号IGtがパワートランジスタ27に対して出力される。一方、このとき均質燃焼運転領域であれば単発放電するための点火信号IGtがパワートランジスタ27に対して出力され、本ルーチンを終了する。
【0029】
次に、図3の燃料噴射・点火時期制御ルーチンにおけるステップS104の総放電期間、各放電期間及び各間欠期間の設定について、成層燃焼運転領域における多重放電時の点火信号IGt、2次電圧V2 、2次電流I2 及び放電エネルギ密度dEの遷移状態を示す図5のタイムチャートを参照して説明する。
【0030】
図5に示すように、点火信号IGtはECU30から多重放電時にパワートランジスタ27に出力される。この点火信号IGtがハイレベルとなる期間、パワートランジスタ27がオンとなり、点火コイル25の1次巻線25aにバッテリ26から1次電流I1 が流れ点火エネルギが蓄えられる。そして、この点火信号IGtがローレベルとなる立下がり時点でパワートランジスタ27がオフとなり、点火コイル25に蓄えられた点火エネルギがその2次巻線25bを介して放出され、2次電流I2 が流れ点火プラグ19には高電圧な2次電圧V2 が印加される。
【0031】
このため、図5に示す点火信号IGtがハイレベルである間欠期間TH1,…,THnが長いほど放電期間TL1,…,TLnで大きな放電エネルギ量が得られ、放電エネルギ密度dEが高くなって1発の放電期間を長く設定することができる。したがって、多重放電時の総放電期間Ttを最大3〔ms〕、間欠期間TH2,…,THnを最大1〔ms〕に設定する。
【0032】
上述の実施例では、総放電期間Ttにおける1発当たりの放電エネルギ密度がそれぞれ同じであったが、放電初期の放電エネルギ密度または放電終了間際の放電エネルギ密度が高くなるよう総放電期間Ttの直前の間欠期間TH1または最後の間欠期間THnを長く設定してもよい。ここで、放電初期の放電エネルギ密度を高くしたときには、総放電期間Ttにおける最初の放電期間TL1で着火する確率を高くすることができ、結果として、点火時期のばらつきを小さくでき燃焼状態を安定させることができる。
【0033】
次に、放電終了間際の放電エネルギ密度を高くしたときの効果について説明する。
【0034】
直噴エンジン1が成層燃焼運転領域における運転状態であるときには、点火プラグ19の火花ギャップG周りの混合気は、時間経過に連れて薄くなり着火し難くなる。したがって、多重放電時における最初の時点で着火できなかった混合気に対して着火させるためには、より高い放電エネルギ密度が必要となる。
【0035】
発明者等の実験研究によれば、運転条件によるが、着火に必要な放電エネルギ密度は最低18〔mJ/ms〕であり、着火に必要な放電期間は0.05〔ms〕であった。したがって、間欠期間TH1,…,THnは、直噴エンジン1の運転条件(機関回転数NE、アクセル開度AP等)に対して決定される。
【0036】
また、発明者等の実験研究によれば、3〔ms〕の長期間連続放電によって、直噴エンジン1の運転条件が如何なる場合であっても確実に着火可能であることが確認された。これに対し、例として、ある直噴エンジンの運転条件による放電期間、間欠期間は図5に示すように、制御する必要があった。例えば、低負荷、低回転の運転条件では、総放電期間Ttが3〔ms〕の多重放電時において、1発ずつの放電エネルギ密度dEが18〔mJ/ms〕であって、放電期間が0.05〔ms〕で間欠期間が1〔ms〕以下のとき長期間連続放電と同等の結果が得られた。また、負荷増、回転増の運転条件では、放電期間が0.5〔ms〕程度で間欠期間が0.4〔ms〕程度であった。
【0037】
そして、発明者等の実験研究によれば、1発の放電火花にかかる放電エネルギ密度dEを30〔mJ/ms〕以上としても着火の確率は高くならなかった。これにより、多重放電時の放電エネルギ密度dEは30〔mJ/ms〕以上を確保すればよいことが分かった。
【0038】
このように、本実施例の火花点火装置は、各気筒内に燃料を直接噴射する直噴エンジン10の各気筒毎に取付けられた点火プラグ19と、点火プラグ19に点火時期に高電圧を印加し放電火花を発生させる点火コイル25と、点火コイル25による高電圧の印加を短時間に断続的に複数回行うことが可能なECU30にて達成される点火制御手段とを具備し、点火制御手段を達成するECU30はエンジン負荷の小さな成層燃焼運転条件における一部または全部では点火プラグ19を多重放電させ、その他の運転条件では点火プラグ19を単発放電させるものである。
【0039】
つまり、直噴エンジンでエンジン負荷が小さく成層燃焼運転条件の一部または全部であるときには多重放電とするべく点火コイルによる高電圧の印加を短時間に断続的に複数回行い点火プラグ19に複数回の放電火花を発生させることで噴霧燃料の濃度変化に対応でき確実に着火することができる。また、成層燃焼運転条件以外の運転条件であるときには単発放電とするべく点火コイルによる高電圧の印加を1回だけ行い点火プラグ19に1回の放電火花を発生させることで噴霧燃料に確実に着火することができる。このように、直噴エンジン10の成層燃焼運転条件の一部または全部、その他の運転条件に適した回数の放電火花が所定のタイミングで噴霧燃料に対して発生されることで噴霧燃料に対する確実な着火を保証することができる。
【0040】
また、本実施例の火花点火装置は、点火制御手段を達成するECU30が多重放電と単発放電との切替、多重放電の開始から終了までの総放電期間Tt、各放電期間TL1,…,TLn、各間欠期間TH2,…,THnを直噴エンジン10の運転条件毎に予め設定されROM32内に格納された制御マップに基づき算出するものである。つまり、直噴エンジン10が成層燃焼運転条件にあって多重放電とするか、またはその他の運転条件にあって単発放電とするかの切替や多重放電における制御パルスである点火信号IGtの立上がり及び立下がりの繰返しに伴う総放電期間、各放電期間、各間欠期間を算出するにあたって直噴エンジン10の運転条件をパラメータとするROM32内に格納された制御マップが用いられる。このように、予め格納された制御マップを用いることで、燃焼運転条件の切替が素早く正確にできると共に、多重放電の総放電期間、各放電期間、各間欠期間を瞬時に設定でき適切な点火制御を行うことができ良好な着火が得られる。
【0041】
そして、本実施例の火花点火装置は、多重放電における総放電期間Ttが直噴エンジン10の運転条件に応じて1.0〜3.0〔ms〕の範囲に設定される。これにより、多重放電における混合気形成の時間的なばらつきや混合気濃度のばらつきに対しても着火に十分な放電エネルギを供給できると共に、点火系における電気エネルギ消費を抑制することができる。
【0042】
更に、本実施例の火花点火装置は、多重放電における各放電期間TL1,…,TLnが直噴エンジン10の運転条件に応じて0.05〜0.5〔ms〕の範囲に設定される。これにより、多重放電における毎回の放電エネルギ量を適切に制御することができる。
【0043】
また、本実施例の火花点火装置は、多重放電における各間欠期間TH2,…,THnが直噴エンジン10の運転条件に応じて0.1〜1.0〔ms〕の範囲に設定される。これにより、多重放電における毎回の放電エネルギ量を適切に制御することができる。
【0044】
そして、本実施例の火花点火装置は、多重放電の総放電期間Tt中の各放電期間TL1,…,TLnにおける放電エネルギ密度dEが直噴エンジン10の運転条件に応じて噴霧燃料に対する放電火花による着火を確保するための下限値である18〔mJ/ms〕以上となるよう設定される。このため、成層燃焼運転条件における放電火花による着火が保証されると共に、点火系における電気エネルギ消費を抑制することができる。
【0045】
更に、本実施例の火花点火装置は、点火制御手段を達成するECU30が点火コイル25の1次電流I1 を通電/遮断させ点火プラグ19の火花ギャップGに放電火花を発生させ多重放電が行われる。このように、直噴エンジン10の1燃焼サイクル中の圧縮上死点付近にて多重放電を行わせることで噴霧燃料の混合気濃度変化に対応でき確実に着火させることができる。
【0046】
加えて、本実施例の火花点火装置は、図6に示すような、多重放電による連続した放電ではあるが、放電エネルギ密度dEが18〔mJ/ms〕を下回る期間が存在する放電については18〔mJ/ms〕を下回った時点で多重放電の間欠期間と見做してカウントされることで毎回の放電エネルギ量が適切に制御される。即ち、図6に斜線部にて示す放電エネルギ密度dEが18〔mJ/ms〕を下回る期間を0.1〜1.0〔ms〕の範囲に設定すればよい。
【0047】
ところで、上記実施例では、多重放電時における総放電期間Ttに対する間欠期間TH2,…,THnを全て同じ長さに設定したが、本発明を実施する場合には、これに限定されるものではなく、放電期間や間欠期間をそれぞれ異なる長さとしてもよく、例えば、多重放電時における放電初期または放電終了間際の単位時間〔ms〕当たりの放電エネルギ量が30〔mJ〕以上、放電中期の単位時間〔ms〕当たりの放電エネルギ量が18〔mJ〕以上となるよう放電期間TL1,…,TLnに対する間欠期間TH2,…,THnの長さを設定してもよい。このとき、例えば、図7に示すように、パラメータとしての機関回転数NEや要求トルクが大きいほど多重放電適用範囲における放電期間が長くなるよう設定される。また、例えば、図8に示すように、パラメータとしての機関回転数NEや要求トルクが大きいほど多重放電適用範囲における間欠期間が短くなるよう設定される。
【0048】
このような、多重放電時における放電初期または放電終了間際の放電エネルギ密度の設定により、放電初期または放電終了間際の噴霧燃料に対する放電火花による着火が確保されつつ点火系における電気エネルギ消費を抑制することができると共に、放電中期の噴霧燃料に対する放電火花による着火のための放電エネルギ密度が下限値以上となるよう維持されることで、放電中期の噴霧燃料に対する放電火花による着火も保証することができる。このため、成層燃焼運転時の総放電期間における点火系の電気エネルギ消費を抑制しつつ噴霧燃料に対する確実な着火を保証することができる。
【0049】
また、多重放電時の総放電期間Ttにおける間欠期間TH2,…,THnを例えば、図9に図5のタイムチャートの他の変形例を示すように、後半になるに連れて徐々に長くなるように設定してもよい。ここで、放電期間TL1,…,TLnが間欠期間TH2,…,THnに対して長いときには1発の放電毎に点火コイル25に蓄えられた点火エネルギが殆ど放出され、点火エネルギの蓄積が放電に間に合わなくなることが考えられる。これに対して、前半の放電期間を短くしておくことで、点火コイル25に蓄えられた点火エネルギが全て放出される以前に放電停止され間欠期間中のエネルギ充填が少なくて済むこととなる。これにより、成層燃焼運転時の多重放電による放電終了間際であっても噴霧燃料に着火するための放電エネルギを蓄積することができ、各放電期間TL1,…,TLnが必要な放電エネルギ密度dEである18〔mJ/ms〕以上を満足した多重放電を行うことができる。
【0050】
そして、多重放電とするか単発放電とするかの切替や多重放電における総放電期間、各放電期間、各間欠期間を算出するに当たっての運転条件パラメータは機関回転数NEのみとしてもよい。即ち、多重放電が必要な成層燃焼運転条件を含む機関回転数で、成層燃焼に有効な多重放電を実施することで、本来、多重放電が必要のない均質燃焼運転時でも多重放電を実施することにはなるが、制御の簡素化ができるといった利点もある。
【0051】
次に、本実施例の直噴エンジンに配設されている点火プラグ19の火花ギャップGのギャップ長(以下、単に『火花ギャップG』とも記す)とその火花ギャップGに放電火花を発生させ噴霧燃料に対する着火に必要な放電エネルギ密度との関係について、以下に説明する。
【0052】
図10及び図11は本実施例の直噴エンジン10による均質燃焼運転領域における単発放電時の点火信号IGt、2次電圧V2 、2次電流I2 及び放電エネルギ密度dEの遷移状態を示すタイムチャートであり、図11では図10に比べて点火プラグ19の火花ギャップGが広く設定されている。
【0053】
図10及び図11に示すように、点火信号IGtはECU30から単発放電時にパワートランジスタ27に出力される。この点火信号IGtがハイレベルとなる期間、パワートランジスタ27がオンとなり、点火コイル25の1次巻線25aにバッテリ26から1次電流I1 が流れ点火エネルギが蓄えられる。そして、この点火信号IGtがローレベルとなる立下がり時点でパワートランジスタ27がオフとなり、点火コイル25に蓄えられた点火エネルギがその2次巻線25bを介して放出され、2次電流I2 が流れ点火プラグ19に高電圧な2次電圧V2 が印加される。
【0054】
図10では、点火プラグ19の火花ギャップGが適切に設定されており、単発放電における放電エネルギ密度dE(=I2 ×V2 )が、直噴エンジンの運転条件に応じて噴霧燃料に対する放電火花による着火を確保するための下限値としての放電開始から放電終了まで着火に必要な放電エネルギ密度が満足されている。
【0055】
これに対して、図11では、点火プラグ19の火花ギャップGが図10に比べて広く設定されているため、放電開始から放電終了までの放電エネルギ密度dE(=I2 ×V2 )が着火に必要な放電エネルギ密度を大きく越え、その分が無駄となっている。また、図10及び図11に斜線(面積)にて示す放電エネルギE(=∫(I2 ×V2 )dt)は同等であるため、図11では放電開始から放電終了までの放電期間が短くなっている。これにより、運転条件によっては着火に必要な放電火花の発生タイミングが得られず火炎が生成されなくて失火に陥るという不都合が生じる要因となる。
【0056】
図12及び図13は本実施例の直噴エンジン10による成層燃焼運転領域における多重放電時の点火信号IGt、2次電圧V2 、2次電流I2 及び放電エネルギ密度dEの遷移状態を示すタイムチャートであり、図13では図12に比べて点火プラグ19の火花ギャップGが広く設定されている。
【0057】
図12及び図13に示すように、点火信号IGtはECU30から多重放電時にパワートランジスタ27に出力される。この点火信号IGtがハイレベルとなる期間、パワートランジスタ27がオンとなり、点火コイル25の1次巻線25aにバッテリ26から1次電流I1 が流れ点火エネルギが蓄えられる。そして、この点火信号IGtがローレベルとなる立下がり時点でパワートランジスタ27がオフとなり、点火コイル25に蓄えられた点火エネルギがその2次巻線25bを介して放出され、2次電流I2 が流れ点火プラグ19に高電圧な2次電圧V2 が印加される。
【0058】
図12では、点火プラグ19の火花ギャップGが適切に設定されており、多重放電における放電エネルギ密度dE(=I2 ×V2 )が、直噴エンジンの運転条件に応じて噴霧燃料に対する放電火花による着火を確保するための下限値としての放電開始から放電終了まで着火に必要な放電エネルギ密度が満足されている。
【0059】
これに対して、図13では、点火プラグ19の火花ギャップGが図12に比べて広く設定されているため、放電開始から放電終了までの放電エネルギ密度dE(=I2 ×V2 )が最初の放電期間では着火に必要な放電エネルギ密度を大きく越え、最後の放電期間では着火に必要な放電エネルギ密度を下回っている。ここで、図12及び図13に斜線(面積)にて示す放電エネルギE(=∫(I2 ×V2 )dt)は同等であるため、図13では放電開始から放電終了までの放電期間の最初のうちは放電エネルギが無駄に供給され、最後のほうでは放電エネルギが不足すると共に、放電期間が短くなっている。これにより、運転条件によっては着火に必要な放電火花の発生タイミングが得られず火炎が生成されなくて失火に陥るという不都合が生じる要因となる。
【0060】
次に、上述の着火に必要な放電エネルギ密度が過不足なく所定の放電期間で得られるよう点火プラグ19の火花ギャップGを適切に規定するため、火花ギャップGと種々のパラメータとの関係について述べる。
【0061】
まず、火花ギャップGと放電エネルギ密度変化量との関係について、図14を参照して説明する。ここで、図14(a)は火花ギャップG〔mm〕に対する放電エネルギ密度変化量を示す特性図、図14(b)は放電エネルギ密度変化量の定義を示す説明図である。
【0062】
図14(b)に示すように、放電期間における放電エネルギ密度の下限値との差分を放電エネルギ密度変化量とする。すると、図14(a)に示すように、火花ギャップGが所定長さを越えて広くなったり、所定長さ未満と狭くなったりすると放電エネルギ密度変化量が多くなる傾向にある。ここで、上述したように、放電期間における放電エネルギ密度は着火に必要な放電エネルギ密度を満足しつつその密度変化量の変動が小さいほど、結果として理想的な放電エネルギが得られるのである。
【0063】
次に、火花ギャップGと放電維持期間との関係について、図15を参照して説明する。ここで、図15(a)は火花ギャップG〔mm〕に対する放電維持期間を示す特性図、図15(b)は放電維持期間の定義を示す説明図である。
【0064】
図15(b)に示すように、点火コイル25の2次巻線25b側に流れる2次電流I2 が放電開始から放電エネルギの放出に連れて徐々に減少し零となる放電終了までを放電維持期間とする。すると、図15(a)に示すように、火花ギャップGが広くなるに連れて電気抵抗が大きくなり気中放電が困難となり放電維持期間が短くなる傾向にある。
【0065】
次に、火花ギャップGと有効放電維持回数との関係について、図16を参照して説明する。ここで、図16(a)は火花ギャップG〔mm〕に対する有効放電維持回数を示す特性図、図16(b)は有効放電及び無効放電を示す説明図である。
【0066】
図16(b)に示すように、所定の放電期間における放電エネルギ密度が着火に必要な放電エネルギ密度を越えていることで火炎が生成され噴霧燃料に確実に着火され、有効放電としてカウントされる。これに対して、図16(b)に示すように、放電エネルギ密度が着火に必要な放電エネルギ密度未満であり、かつ放電期間が短いため失火発生となり、無効放電とされる。すると、図16(a)に示すように、火花ギャップGが広くなるに連れて有効放電が減るため使用可能範囲としての有効放電維持回数が少なくなるのである。
【0067】
次に、火花ギャップGと着火に必要な単位ギャップ長当たりの放電エネルギ密度との関係について、図17の特性図を参照して説明する。図17に示すように、火花ギャップGが1.2〔mm〕を越えて広くなったり、0.4〔mm〕未満と狭くなったりすると着火に必要な単位ギャップ長当たりの放電エネルギ密度がその下限値である22.5〔mJ/ms/mm〕から極端に高くなる傾向にある。したがって、着火に必要な単位ギャップ長当たりの放電エネルギ密度の下限値である22.5〔mJ/ms/mm〕を確保しつつその密度変化量の変動を抑えることで、好ましい放電エネルギが得られることとなる。なお、着火に必要な単位ギャップ長当たりの放電エネルギ密度の下限値である22.5〔mJ/ms/mm〕が多重放電の各放電期間の80〔%〕以上で確保されると、多重放電の各放電期間中において噴霧燃料に対して一旦、着火されたのちの火炎は燃焼の持続性により維持され途切れることがないことも発明者等の実験研究により分かった。
【0068】
更に、より好ましい放電エネルギを得るため、点火プラグ19の火花ギャップGとその中心電極径(中心電極19aの直径)とについて、図18及び図19を参照して説明する。ここで、図18は点火プラグ19における着火達成領域を中心電極径と火花ギャップGとをパラメータとして示す特性図であり、図19は点火プラグ19における着火に必要な放電エネルギ密度達成領域を中心電極径と火花ギャップGとをパラメータとして示す特性図である。
【0069】
図18に斜線にて着火達成領域を示すように、点火プラグ19の中心電極径が1.1〔mm〕以下、かつ火花ギャップGが0.4〔mm〕以上であるときには、火花ギャップGが極端に広くならない限り確実な着火が得られ、失火発生や放電ミス発生が起きることがない。ここで、点火プラグ19の放電ギャップGが0.4〔mm〕未満と狭くなると放電火花の大きさが小さくなり火炎が生成し難く、点火プラグ19の放電ギャップGが大き過ぎるとその電気抵抗が大きくなり気中放電が実現できなくなる。また、点火プラグ19の中心電極径が大きくなるに連れて電極部材による冷却作用を受け易くなり火炎が生成し難くなる。
【0070】
一方、図19に斜線にて着火に必要な放電エネルギ密度達成領域を示すように、点火プラグ19の中心電極径の大きさに殆ど関わらず火花ギャップGが1.2〔mm〕以下であれば着火に必要な放電エネルギ密度が得られている。ここで、点火プラグ19の放電ギャップGが1.2〔mm〕を越えて大きくなると放電期間が縮小し、多重放電の実現が難しくなる。したがって、点火プラグ19の中心電極径を1.1〔mm〕以下とし、かつ火花ギャップGを0.4〜1.2〔mm〕の範囲となるよう設定することで、結果として理想的な放電エネルギを得ることができる。なお、実際の点火プラグ19の中心電極径は、その中心電極19aの材質による耐久性や生産性等が考慮され決定される。
【0071】
このように、本実施例の火花点火装置は、多重放電の総放電期間Tt中の各放電期間TL1,…,TLnにおける点火プラグ19の火花ギャップGの単位ギャップ長当たりの放電エネルギ密度が22.5〔mJ/ms/mm〕以上となるよう設定するものである。また、本実施例の火花点火装置は、点火プラグ19の中心電極径を1.1〔mm〕以下、その火花ギャップGを0.4〜1.2〔mm〕の範囲に設定するものである。
【0072】
これにより、多重放電の各放電期間で点火プラグ19の火花ギャップGによる着火に必要な放電エネルギ密度が満足され、かつ運転条件に対応した放電火花が適切なタイミングで噴霧燃料に対して発生されることで噴霧燃料に対する確実な着火が保証される。また、直噴エンジンで可燃混合気が点火プラグ19周りに存在するタイミングがばらつく場合でも、着火に必要な放電エネルギ密度が満足されることで、理論空燃比より極めてリーン側の燃焼を安定して実現でき、更なる燃費向上が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明の実施の形態の一実施例にかかる火花点火装置が適用された直噴エンジンを示す概略構成図である。
【図2】 図2は図1の点火プラグの先端形状を示す拡大図である。
【図3】 図3は本発明の実施の形態の一実施例にかかる火花点火装置で使用されているECUにおける直噴エンジンに対する燃料噴射・点火時期制御の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】 図4は本発明の実施の形態の一実施例にかかる火花点火装置で用いられる機関回転数とアクセル開度とに基づき成層燃焼運転領域または均質燃焼運転領域にあるかを判定するためのマップである。
【図5】 図5は本発明の実施の形態の一実施例にかかる火花点火装置が適用された直噴エンジンで成層燃焼運転時の点火信号、2次電圧、2次電流及び放電エネルギ密度の遷移状態を示すタイムチャートである。
【図6】 図6は本発明の実施の形態の一実施例にかかる火花点火装置が適用された直噴エンジンで成層燃焼運転時の点火信号、2次電圧、2次電流及び放電エネルギ密度の遷移状態の変形例を示すタイムチャートである。
【図7】 図7は本発明の実施の形態の一実施例にかかる火花点火装置が適用された直噴エンジンで多重放電適用範囲における放電期間の長さを機関回転数及び要求トルクをパラメータとして示す特性図である。
【図8】 図8は本発明の実施の形態の一実施例にかかる火花点火装置が適用された直噴エンジンで多重放電適用範囲における間欠期間の長さを機関回転数及び要求トルクをパラメータとして示す特性図である。
【図9】 図9は本発明の実施の形態の一実施例にかかる火花点火装置が適用された直噴エンジンで成層燃焼運転時の点火信号、2次電圧、2次電流及び放電エネルギ密度の遷移状態の他の変形例を示すタイムチャートである。
【図10】 図10は本発明の実施の形態の一実施例にかかる火花点火装置が適用された直噴エンジンで均質燃焼運転領域における単発放電時で点火プラグの火花ギャップを適切に設定したときの点火信号、2次電圧、2次電流及び放電エネルギ密度の遷移状態を示すタイムチャートである。
【図11】 図11は図10に対して点火プラグの火花ギャップを広くしたときの点火信号、2次電圧、2次電流及び放電エネルギ密度の遷移状態を示すタイムチャートである。
【図12】 図12は本発明の実施の形態の一実施例にかかる火花点火装置が適用された直噴エンジンで成層燃焼運転領域における多重放電時で点火プラグの火花ギャップを適切に設定したときの点火信号、2次電圧、2次電流及び放電エネルギ密度の遷移状態を示すタイムチャートである。
【図13】 図13は図12に対して点火プラグの火花ギャップを広くしたときの点火信号、2次電圧、2次電流及び放電エネルギ密度の遷移状態を示すタイムチャートである。
【図14】 図14は本発明の実施の形態の一実施例にかかる火花点火装置が適用された直噴エンジンで使用される点火プラグの火花ギャップと放電エネルギ密度変化量との関係を示す特性図である。
【図15】 図15は本発明の実施の形態の一実施例にかかる火花点火装置が適用された直噴エンジンで使用される点火プラグの火花ギャップと放電維持期間との関係を示す特性図である。
【図16】 図16は本発明の実施の形態の一実施例にかかる火花点火装置が適用された直噴エンジンで使用される点火プラグの火花ギャップと有効放電維持回数との関係を示す特性図である。
【図17】 図17は本発明の実施の形態の一実施例にかかる火花点火装置が適用された直噴エンジンで使用される点火プラグの火花ギャップと着火に必要な単位ギャップ長当たりの放電エネルギ密度との関係を示す特性図である。
【図18】 図18は本発明の実施の形態の一実施例にかかる火花点火装置が適用された直噴エンジンで使用される点火プラグにおける着火達成領域を中心電極径と火花ギャップとをパラメータとして示す特性図である。
【図19】 図19は本発明の実施の形態の一実施例にかかる火花点火装置が適用された直噴エンジンで使用される点火プラグにおける着火に必要な放電エネルギ密度達成領域を中心電極径と火花ギャップとをパラメータとして示す特性図である。
【図20】 図20は一般的な直噴エンジンで成層燃焼運転における成層混合気の時間的な移動を示す説明図である。
【図21】 図21は図20の直噴エンジンの点火プラグの火花ギャップにおける混合気濃度と時間との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
10 直噴エンジン
19 点火プラグ
19a 中心電極
25 点火コイル
30 ECU(電子制御ユニット)(点火制御手段)
G 火花ギャップ

Claims (11)

  1. 各気筒内に燃料を直接噴射する直噴エンジンにおける火花点火装置であって、
    前記直噴エンジンの各気筒毎に取付けられた点火プラグと、前記点火プラグに点火時期に高電圧を印加し放電火花を発生させる点火コイルと、前記点火コイルによる高電圧の印加を短時間に断続的に複数回行うことが可能で、多重放電と単発放電との切替、多重放電の開始から終了までの総放電期間、各放電期間、各間欠期間を前記直噴エンジンの運転条件毎に予め設定されたマップに基づき算出する点火制御手段とを具備し、
    前記点火制御手段は、少なくとも成層燃焼運転条件における一部または全部では前記点火プラグを多重放電させ、かつ、前記多重放電の総放電期間中の各放電期間における放電エネルギ密度が所定量となるように設定し、前記多重放電の各間欠期間は、徐々に長くなるよう設定することを特徴とする火花点火装置。
  2. 各気筒内に燃料を直接噴射する直噴エンジンにおける火花点火装置であって、前記直噴エンジンの各気筒毎に取付けられた点火プラグと、前記点火プラグに点火時期に高電圧を印加し放電火花を発生させる点火コイルと、前記点火コイルによる高電圧の印加を短時間に断続的に複数回行うことが可能で、多重放電と単発放電との切替、多重放電の開始から終了までの総放電期間、各放電期間、各間欠期間を前記直噴エンジンの運転条件毎に予め設定されたマップに基づき算出する点火制御手段とを具備し、
    前記点火制御手段は、少なくとも成層燃焼運転条件における一部または全部では前記点火プラグを多重放電させ、かつ、前記多重放電の総放電期間中の各放電期間における放電エネルギ密度が所定量となるように設定することを特徴とする火花点火装置。
  3. 前記多重放電の総放電期間中の各放電期間における所定量の放電エネルギ密度は、18〔mJ/ms:ミリジュール/ミリ秒〕以上となるよう設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の火花点火装置。
  4. 前記多重放電の総放電期間は、1.0〜3.0〔ms:ミリ秒〕の範囲に設定することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の火花点火装置。
  5. 前記多重放電の各放電期間は、0.05〜0.5〔ms〕の範囲に設定することを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の火花点火装置。
  6. 前記多重放電の各間欠期間は、0.1〜1.0〔ms〕の範囲に設定することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1つに記載の火花点火装置。
  7. 前記点火制御手段は、前記点火コイルの1次電流を通電/遮断して多重放電を行うことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1つに記載の火花点火装置。
  8. 前記多重放電は、放電が持続していても放電エネルギ密度が18〔mJ/ms〕未満となった時点で前記多重放電の間欠期間と見做すことを特徴とする請求項7に記載の火花点火装置。
  9. 前記多重放電の総放電期間中の各放電期間における前記点火プラグの火花ギャップの単位ギャップ長当たりの放電エネルギ密度は、22.5〔mJ/ms/mm:ミリジュール/ミリ秒/ミリメートル〕以上となるよう設定することを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1つに記載の火花点火装置。
  10. 前記点火プラグは、中心電極の直径を1.1〔mm:ミリメートル〕以下、その火花ギャップを0.4〜1.2〔mm〕の範囲に設定することを特徴とする請求項9に記載の火花点火装置。
  11. 前記点火プラグの火花ギャップの単位ギャップ長当たりの放電エネルギ密度は、前記多重放電の各放電期間に対して80〔%〕以上で22.5〔mJ/ms/mm〕以上となるよう設定することを特徴とする請求項9に記載の火花点火装置。
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