JP4259673B2 - 回路基板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はクロストークノイズが抑制された回路基板とその製造方法とに係り、特には、多層構造とされた回路基板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近におけるコンピュータの高速化に伴っては半導体チップの高速動作が必要となっており、半導体チップが実装される回路基板では信号の高速伝送を実現するために信号配線を伝送線路と想定したうえで設計することが行われている。また、近年の半導体チップでは入出力端子数が著しく増加しているため、回路基板の信号配線を高密度に配置しなければならず、信号配線同士の配置間隔をおのずと狭める必要が生じている。ところが、高速信号が流れる信号配線同士を近接配置している場合には、信号配線同士間で生じる寄生成分、特に、配線間容量(浮遊容量)や相互インダクタンスの影響によってクロストークなどのノイズが発生することになってしまう。
【0003】
そして、信号配線同士の間隔を狭めながらクロストークノイズの抑制を実現する必要上から、特開平9−246425号公報のような構成、つまり、回路基板上に形成されて隣接しあう信号配線間に溝を設けてなる構成を採用することが提案されている。すなわち、この従来技術にあっては、図12で示すように、回路基板101の所定位置毎に設けられた台座102間を溝103としたうえ、各台座102上に信号配線であるインナーリード104を形成することが実行されており、インナーリード104が形成された台座102同士間には比誘電率の小さい空気が存在しているため、これらの間に発生する寄生成分、特には、配線間容量を低減し得ることとなっている。その結果、この技術によれば、クロストークノイズを抑制しながら信号配線の配置間隔を狭めることが可能となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平9−246425号公報で開示されており、かつ、図12で示しているような構成を採用する際には、回路基板101の所定位置毎に設けた台座102間に溝103を形成したうえでインナーリード104を形成する必要があるため、その製造時に煩わしくて多大な手間を要することが避けられなくなる。また、一般的な回路基板においては多層構造化が要求されることになるが、インナーリード104が形成される台座102間に溝103を設けてなる図12のような構成である限りは、多層構造化を実現することが困難となってしまう。
【0005】
本発明はこれらの不都合に鑑みて創案されたものであり、クロストークノイズの十分な低減を図ることが可能であると共に、多層構造化を容易に実現することができる構成とされた回路基板と、その製造方法との提供を目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る回路基板は、絶縁層と、この絶縁層を挟んで対向しあう配線層と接地層とを備えて構成されたものであり、配線層となる信号配線のそれぞれと接地層とで挟まれた絶縁層の第1領域よりも、信号配線が設けられないで絶縁層の第1領域同士間に位置する絶縁層の第2領域の方が低誘電率化されており、前記絶縁層は光照射に伴って低誘電率化する誘電体材料からなるものであり、前記絶縁層の第1領域同士間に位置する前記絶縁層の第2領域は光照射に伴って第1領域よりも低誘電率化させられていることを特徴とする。これらの構成によれば、近接配置された信号配線同士間に位置する絶縁層の第2領域がその第1領域よりも低誘電率化されているので、信号配線同士間に発生する配線間容量を低減し得ることとなり、クロストークノイズを抑制することが可能となる。
【0009】
本発明の請求項2に係る回路基板の製造方法は請求項1に記載した回路基板を製造する際に採用される方法であり、光照射に伴って低誘電率化する誘電体材料からなる絶縁層上に複数の信号配線を形成する工程と、信号配線が形成された絶縁層の上方から光照射して絶縁層の第2領域を低誘電率化する工程とを含んでいることを特徴とする。この製造方法であれば、クロストークノイズが抑制された回路基板を安価に製造し得ると共に、多層構造とされた回路基板の製造が容易になるという利点が確保される。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は実施の形態1に係る回路基板の構成を簡略化して示す断面図、図2はその製造方法を示す工程断面であり、図3はクロストークノイズの抑制が可能となる理由を説明するための説明図である。なお、本実施の形態にあっては回路基板が1層構造を有するとしているが、1層構造に限られることはなく、2層以上の層数構造とされた回路基板であってもよいことは勿論である。
【0014】
本実施の形態に係る回路基板は、図1で示すように、誘電体材料からなる絶縁層1と、この絶縁層1を挟んで対向しあう配線層2と接地層3とを備えて構成されたものであり、所定厚みを有する絶縁層1の一面(図では、上面)上には並列配置されることによって配線層2を構成する複数の信号配線2aが設けられる一方、絶縁層1の他面(図では、下面)上には面形状とされたグランド電極であるところの接地層3が設けられている。そして、この回路基板にあっては、信号配線2aのそれぞれと接地層3とで挟まれることによって特定された絶縁層1の第1領域1aよりも、信号配線2aが設けられないままで絶縁層1の第1領域1a同士間に位置する絶縁層1の第2領域1bの方が低誘電率化させられている。つまり、この絶縁層1にあっては、その第2領域1bの比誘電率の方が第1領域1aの比誘電率よりも小さくなるように設定されている。
【0015】
すなわち、ここでの回路基板が備えている絶縁層1は、光照射に伴って比誘電率が小さくなるように変化する誘電体材料、例えば、ジアゾ系化合物を含有してなるエポキシ樹脂などのような樹脂組成物である誘電体材料を用いたうえで形成されており、信号配線2aのそれぞれと接地層3とで挟まれた絶縁層1の第1領域1a同士間に位置して配置された絶縁層1の第2領域1bは光照射に伴って不可逆的に低誘電率化させられている。そして、このような構成の回路基板を製造するに際しては、図2で示すように、絶縁層1の一面上に配線層2となる複数の信号配線2aを並列形成しておいたうえ、これらの信号配線2aが形成された絶縁層1の一面側の上方から所定波長のレーザー光4を光照射する方法が採用される。なお、接地層3が面状のグランド電極に限定されることはないのであり、例えば、面状ではなくて信号配線2aのそれぞれと各別に対応する線状のグランド電極であってもよく、また、グランド電極ではなくて電源電極などであってもよいことは勿論である。
【0016】
ところで、本実施の形態に係る回路基板の構成を採用している際は、近接配置された信号配線2aのそれぞれ同士間で発生するクロストークノイズを抑制することが可能となるが、以下、図3を参照しながらクロストークノイズの抑制が可能となる理由を説明する。まず、クロストークノイズは隣接して配置された信号配線2a同士間の容量に比例するというのが一般的な事実であり、図示省略しているが、平行配置された平板同士の間に誘電体を挟み込んでいるときの容量は、平板面積をS、平板間距離をd、誘電体の有する比誘電率をεとした場合、εS/dでもって表されることになる。しかしながら、容量がεS/dで表されるのは、平板の縁による影響を考慮する必要がなくて平板間の電場が一様になっていると仮定できる場合だけであり、図3で示すように、平行配置された平板105の端部領域では電場が零となり得ないのが実際である。なお、図3における矢印は電気力線を示している。
【0017】
すなわち、平行配置された平板105の縁の影響は、ファイマン物理学 電磁気学(宮島龍興著,1982年第3巻p.65〜80)にも詳述されているところであるが、この文献においては、平行配置された平板105の他端部領域107では電荷密度がいくらか増すことになり、これら間における容量が縁の影響を考慮しない場合に比べて大きくなるため、近似的には平板間距離dを3/8だけ延長した数値を用いて容量の計算を行うことが説明されている。そこで、このことを考慮したうえで信号配線2a同士間における静電容量を考えると、図1で示した構成の回路基板が備える信号配線2a間に発生する容量は、図2で示した構成とされて光照射が実行されなかった回路基板が備えている信号配線2a間に発生する容量よりも小さいことになる。
【0018】
なぜなら、本実施の形態に係る回路基板、つまり、図1で示すように、信号配線2aのそれぞれと接地層3とで挟まれた絶縁層1の第1領域1aよりも、これらの間に位置する絶縁層1の第2領域1bの方が低誘電率化させられた回路基板と、その製造方法を説明する図2で示された回路基板、つまり、光照射が行われずに絶縁層1の全体が同一比誘電率のままとなっている回路基板との相違点は、図3で示した平板105の他端部領域107における誘電率の違いだけであると考えられ、この領域における比誘電率が小さいほど信号配線2a間で発生する配線間容量が小さくなるからである。従って、本実施の形態に係る回路基板であれば、近接配置された信号配線2a同士間に位置する絶縁層1の第2領域1bがその第1領域1aよりも低誘電率化されている結果、これらの信号配線2a同士間に発生する寄生成分、特には、配線間容量が低減されることになり、クロストークノイズが抑制されることになる。
【0019】
(参考例1)
図4は参考例1に係る回路基板の構成を簡略化して示す断面図、図5はその製造方法を示す工程断面図、図6は製造方法の変形手順を示す工程断面図であり、図7は変形例構成とされた回路基板によってもクロストークノイズの抑制が可能となる理由を説明するための説明図である。なお、本参考例にあっては回路基板が1層構造であるとしているが、1層構造に限定されることはなく、2層以上の層数構造とされた回路基板であってもよいことは勿論である。
【0020】
本参考例に係る回路基板は、図4で示すように、ガラスエポキシやガラスセラミック、あるいは、樹脂成分などのような誘電体材料を用いて形成され、かつ、少なくとも上下一対となる位置に配置された絶縁層11a,11bと、これらの絶縁層11a,11b同士間に介装された配線層12とを備えて構成されたものであり、絶縁層11a,11bでもって挟み込まれた配線層12は、並列配置された複数の信号配線12aを具備している。そして、これら信号配線12aのそれぞれ同士間には、絶縁層11a,11bよりも低誘電率化された配線間絶縁部12bが設けられている。ところで、このような構成とされた回路基板は、図5で示すような手順からなる方法を採用したうえで製造される。
【0021】
まず、ガラスエポキシなどのような第1の誘電体材料からなり、下側に位置する第1絶縁層11aを形成し、かつ、この第1絶縁層11a上に配線用導体13を積層して被着させた後、配線用導体13上にレジスト層14を形成したうえ、図5(a)で示すように、このレジスト層14における配線間絶縁部12bと対応する位置毎に開口14aを形成する。引き続き、レジスト層14を介したうえで配線用導体13をエッチングすると、図5(b)で示すように、並列配置されて配線層12となる複数の信号配線12aが形成される。つぎに、第1絶縁層11aを形成している第1の誘電体材料よりも比誘電率が小さい誘電体材料、例えば、エポキシ樹脂のみからなる第2の誘電体材料15を用意したうえ、図5(c)で示すように、レジスト層14をも含む第1絶縁層11a上を第2の誘電体材料15でもって全面的に覆った後、レジスト層14を除去すると、図5(d)で示すように、第1絶縁層11a上に並列配置された信号配線12a同士間には、第1絶縁層11aよりも低誘電率化された配線間絶縁部12bが設けられたことになる。
【0022】
その後、図示省略するが、第1絶縁層11aと同一である第1の誘電体材料を用いたうえで配線層12上に第2絶縁層11bを形成すれば、図4で示した回路基板が製造されたことになる。なお、第1の誘電体材料がガラスエポキシなどであり、第2の誘電体材料15がエポキシ樹脂である必然性があるわけではなく、例えば、第1の誘電体材料がセラミックなどのような無機材料である場合には、多孔質で絶縁性の無機材料を第2の誘電体材料15とすることが可能である。そして、本参考例に係る構成とされた回路基板であれば、絶縁層11a,11b間に介装された配線層12となる信号配線12aのそれぞれ同士間に対し、絶縁層11a,11bよりも低誘電率化された配線間絶縁部12bが介装されているので、近接配置された信号配線12a同士間で発生する配線間容量が低減されることになり、クロストークノイズが抑制されることとなる。また、このような構成であれば、多層構造化された回路基板を容易に製造し得るという利点も確保される。
【0023】
ところで、本参考例にあっては、図5で示したような手順からなる製造方法を採用するとしているが、このような製造方法に限られることはなく、図6のような手順からなる製造方法を採用して回路基板を製造することも可能である。従って、以下、図6を参照しながら、回路基板を製造する方法の変形手順を説明する。なお、この図6において、図4及び図5と互いに同一または相当する部分には同一符号を付している。
【0024】
まず、光照射に伴ってパターニングされ、かつ、低誘電率化する樹脂組成物、例えば、光照射に伴って硬化する樹脂組成物からなる誘電体材料16を用意し、図6(a)で示すように、用意した誘電体材料16を第1絶縁層11a上に被着して積層する。そして、図6(b)で示すように、誘電体材料16上にマスクフィルム17を積層し、かつ、このマスクフィルム17を介したうえでの光照射を実行すると、光照射に伴う露光及び現像によって誘電体材料16はパターニングされると共に、低誘電率化される。さらに、図6(c)で示すように、誘電体材料16のうちから光照射されなかった部分を除去して開口16aを形成した後、図6(d)で示すように、メッキ法などを採用したうえで誘電体材料16の開口16a内に信号配線12aとなる導体材料を充填する。
【0025】
すなわち、この際においては、誘電体材料16のうちの光照射された部分のみが除去されずに残存していることになり、この残存している部分が低誘電率化された配線間絶縁部12bであることになる。その後、引き続き、図6(e)で示すように、第1絶縁層11aと同一である誘電体材料を用いたうえで配線層12上に第2絶縁層11bを形成すれば、図4で示した回路基板が製造されたことになる。なお、この際における誘電体材料16としてはジアゾ系化合物を含む樹脂組成物などが一般的であり、このような製造方法を採用した際には、樹脂組成物の露光及び現像によって配線部分をパターニングしているため、従来のエッチングによるパターニングよりもファインパターンを形成できることとなる結果、配線密度を高め得ることになるという利点が確保される。
【0026】
さらにまた、本参考例に係る回路基板では、絶縁層11a,11b間に介装されたうえで配線層12を構成する信号配線12aのそれぞれ同士間に絶縁層11a,11bよりも低誘電率化された配線間絶縁部12bを設けるとしているが、このような構成に限られることはないのであり、図示省略しているが、以下に説明するような変形例としての構成を採用することも考えられる。つまり、絶縁層11a,11bとなる誘電体材料よりも誘電損失の大きな樹脂組成物を第2の誘電体材料15とし、第2の誘電体材料15である樹脂組成物を信号配線12a間に印刷などによって充填したうえ、この樹脂組成物を配線間絶縁部12bとしてなる構成である。
【0027】
そして、このような変形例構成とされた回路基板を考えたうえ、この回路基板が備えている信号配線間の状態を電気的な等価回路で表すと、図7で模式化して示すように、端子a,b間における信号伝送経路が、誘電損失に関する抵抗成分R1及び線間容量Cの直列接続と、これら及びリーク電流に関する絶縁抵抗成分R2の並列接続との関係として表される。そのため、図7で示されるような等価回路を回路基板でもって実現されていれば、線間容量Cのインピーダンスが小さいような周波数帯域では、抵抗成分R1が大きくなるにつれて端子a,b間の信号伝送が悪化することとなり、クロストークノイズが抑制されることが理解される。なお、同一の信号配線12a内の信号が伝送される方向にあっては、誘電損失の大きな樹脂組成物からなる配線間絶縁部12bを通過する電界が弱いため、伝送損失の悪化を招く恐れはないことになる。
【0028】
(参考例2)
図8は参考例2に係る回路基板の構成を簡略化して示す断面図であり、図9はその製造方法を示す工程断面である。なお、本参考例にあっては回路基板が1層構造であるとしているが、1層構造に限定されることはなく、2層以上の層数構造とされた回路基板であってもよいことは勿論である。
【0029】
本参考例に係る回路基板は、図8で示すように、上下一対である絶縁層21a,21bと、これらの絶縁層21a,21b同士間に介装された配線層22とを備えて構成されたものであり、配線層22は並列配置されてなる複数の信号配線22aを具備している。そして、配線層22となる信号配線22aのそれぞれ同士間には、絶縁層21a,21bよりも低誘電率化された配線間絶縁部22bが設けられている。すなわち、ここでの絶縁層21a,21bは、加圧及び加熱に伴って低粘度化するエポキシ樹脂などの第1樹脂成分と、第1樹脂成分よりも比誘電率が大きくて加圧及び加熱に伴っては低粘度化しないガラス繊維やアラミド不織繊維などである固形成分、つまり、第1樹脂成分よりも強固な第2樹脂成分または無機成分とを含有してなる樹脂組成物である誘電体材料を用いて形成されたものである一方、配線間絶縁部22bは、絶縁層21a,21bとなる誘電体材料に含有された第1樹脂成分のみを用いて形成されたものとなっている。
【0030】
ところで、このような構成とされた回路基板は、図9で示すような手順からなる方法を採用したうえで製造される。まず、加圧及び加熱に伴って低粘度化する第1樹脂成分と、この第1樹脂成分よりも比誘電率が大きくて加圧及び加熱に伴っては低粘度化しない第2樹脂成分または無機成分である固形成分とを含有してなる誘電体材料を用いたうえで第1絶縁層21aを形成した後、第1絶縁層21aの一面(図では、上面)上に複数の信号配線22aをパターン形成する。すると、これら信号配線22aのそれぞれ間には、図9(a)で示すような空隙23が生じていることになる。引き続き、図9(b)で示すように、減圧条件下で、第1絶縁層と同一の誘電体材料からなる第2絶縁層21bを、信号配線22aが形成された第1絶縁層21a上に積層して形成する。
【0031】
そして、第2絶縁層21bを形成するに際しては、第1樹脂成分のみが低粘度化し、固形成分は低粘度化しないような加圧及び加熱条件を採用することが実行される。すると、第1及び第2絶縁層21a,21bからは低粘度化した第1樹脂成分が染み出してくることとなり、染み出してきた第1樹脂成分は空隙23内に充填されたうえで配線間絶縁部22bとなる。その結果、絶縁層21a,21bでもって挟み込まれたうえで配線層22となる信号配線22aのそれぞれ同士間には、絶縁層21a,21bよりも低誘電率化された配線間絶縁部22bが設けられる。
【0032】
このような構成とされた回路基板であれば、絶縁層21a,21b間に介装されて配線層22となる信号配線22aのそれぞれ同士間に対し、絶縁層21a,21bよりも低誘電率化された配線間絶縁部22bが設けられているため、近接配置された信号配線21a同士間で発生する配線間容量が低減されることとなる結果、クロストークノイズが抑制されるという利点が確保される。また、この構成を採用している際には、多層構造化された回路基板をも容易に製造し得ることとなる。
【0033】
(参考例3)
図10は参考例3に係る回路基板の構成を簡略化して示す断面図であり、図11はその製造方法を示す工程断面である。なお、本参考例にあっては回路基板が1層構造であるとしているが、1層構造に限定されることはなく、2層以上の層数構造とされた回路基板であってもよいことは勿論である。
【0034】
本参考例に係る回路基板は、図10で示すように、上下一対の絶縁層31a,31bと、これらの絶縁層31a,31b同士間に介装された配線層32とを具備しており、配線層32は並列配置されてなる複数の信号配線32aを具備している。そして、配線層32となる信号配線32aのそれぞれ同士間には、絶縁層31a,31bよりも低誘電率化された配線間絶縁部32bが設けられている。すなわち、ここでの絶縁層31a,31bは、ガラスエポキシやガラスセラミックなどのような誘電体材料を用いたうえで形成されており、また、配線間絶縁部32bは、絶縁層31a,31bと同様の誘電体材料に対して比誘電率の小さい微粒子、例えば、テフロン(登録商標)粒や中空球形状とされたセラミック粒などのような微粒子が添加されたものとなっている。
【0035】
この回路基板は、図11で示すように、つぎのような手順からなる方法によって製造される。まず、ガラスエポキシやガラスセラミックなどのような第1の誘電体材料を用いたうえで下側に配置される第1絶縁層31aを形成した後、この第1絶縁層31aの一面(図では、上面)上に複数の信号配線32aをパターン形成する。すると、これら信号配線32aのそれぞれ間には、図11(a)で示すような空隙33が生じていることになる。そこで、第1の誘電体材料よりも低誘電率化された第2の誘電体材料、つまり、比誘電率の小さい微粒子が添加されてなる第2の誘電体材料34を用意し、信号配線32aが形成された第1絶縁層31aの一面上に対して第2の誘電体材料34を印刷すると、図11(b)で示すように、信号配線32aのそれぞれ間に生じていた空隙33には第2の誘電体材料34が充填されたことになる。
【0036】
そして、空隙33に対して充填された第2の誘電体材料34は、絶縁層31aよりも低誘電率化された配線間絶縁部32bであることになり、引き続き、第1絶縁層31aと同一である第1の誘電体材料を用いたうえで信号配線32a及び配線間絶縁部32bからなる配線層32上に第2絶縁層31bを形成すれば、図10で示した回路基板が製造されたことになる。すなわち、このような構成の回路基板であれば、絶縁層31a,31b間に介装されて配線層32となる信号配線32aのそれぞれ同士間に対し、絶縁層31a,31bよりも低誘電率化された配線間絶縁部32bが介装されているので、近接配置された信号配線32a同士間で発生する配線間容量が低減されることになり、クロストークノイズが抑制されることとなる。また、このような構成であれば、多層構造化された回路基板を容易に製造し得るという利点も確保される。
【0037】
ところで、本参考例にあっては、配線間絶縁部32bとなる誘電体材料、つまり、絶縁層31a,31bとなる誘電体材料よりも低誘電率化された誘電体材料が比誘電率の小さい微粒子を添加したものであるとしているが、このような誘電体材料を用いる必然性があるわけではなく、図示省略しているが、信号配線32aのそれぞれ間に生じた空隙33に対し、絶縁層31a,31bとなる誘電体材料と同等の誘電体材料を充填しておき、比誘電率の小さい微粒子を溶射などのような方法を採用したうえで注入することを行っても、図10で示したのと同様の回路基板が容易に製造される。そして、このような手順に従って製造された回路基板であっても、クロストークノイズが抑制されることは勿論である。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る回路基板によれば、配線層となる信号配線のそれぞれと接地層とで挟まれた絶縁層の第1領域よりも信号配線が設けられないで絶縁層の第1領域同士間に位置する絶縁層の第2領域の方を低誘電率化している、あるいはまた、配線層となる信号配線のそれぞれ同士間に絶縁層よりも低誘電率化された配線間絶縁部を設けているので、クロストークノイズの十分な低減を図ることが可能となり、回路基板の多層構造化を容易に実現することができるという効果が得られる。また、本発明に係る回路基板の製造方法によれば、クロストークノイズが抑制された回路基板を容易かつ安価に製造することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1に係る回路基板の構成を簡略化して示す断面図である。
【図2】 その製造方法を示す工程断面である。
【図3】 クロストークノイズの抑制が可能となる理由を説明するための説明図である。
【図4】 参考例1に係る回路基板の構成を簡略化して示す断面図である。
【図5】 その製造方法を示す工程断面図である。
【図6】 その製造方法の変形手順を示す工程断面図である。
【図7】 変形例構成とされた回路基板によってもクロストークノイズの抑制が可能となる理由を説明するための説明図である。
【図8】 参考例2に係る回路基板の構成を簡略化して示す断面図である。
【図9】 その製造方法を示す工程断面である。
【図10】 参考例3に係る回路基板の構成を簡略化して示す断面図である。
【図11】 その製造方法を示す工程断面である。
【図12】 従来の形態に係る回路基板の構成を簡略化して示す断面図である。
【符号の説明】
1 絶縁層
1a 第1領域
1b 第2領域
2 配線層
2a 信号配線
3 接地層
Claims (2)
- 絶縁層と、この絶縁層を挟んで対向しあう配線層と接地層とを備えて構成された回路基板であって、
配線層となる信号配線のそれぞれと接地層とで挟まれた絶縁層の第1領域よりも、信号配線が設けられないで絶縁層の第1領域同士間に位置する絶縁層の第2領域の方が低誘電率化されており、
前記絶縁層は光照射に伴って低誘電率化する誘電体材料からなるものであり、前記絶縁層の第1領域同士間に位置する前記絶縁層の第2領域は光照射に伴って第1領域よりも低誘電率化させられていることを特徴とする回路基板。 - 光照射に伴って低誘電率化する誘電体材料からなる絶縁層上に複数の信号配線を形成する工程と、信号配線が形成された絶縁層の上方から光照射して絶縁層の第2領域を低誘電率化する工程とを含んでいることを特徴とする回路基板の製造方法。
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JP15339499A JP4259673B2 (ja) | 1999-06-01 | 1999-06-01 | 回路基板及びその製造方法 |
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