JP4259284B2 - 成形品の製造方法 - Google Patents

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本発明は、植物由来のポリ乳酸を主成分とした樹脂材料からなる成形品の製造方法に関するものである。
この種のポリ乳酸を主成分とした樹脂(以下、ポリ乳酸樹脂と称す)からなる成形品は、従来から使用される石油系樹脂と比べガラス転移温度が低く、高温環境下に晒されると熱変形し易いという欠点がある。そこで、成形品を構成する樹脂材料の結晶化度を高めることにより、成形品の高温環境下での耐久性及び機械的強度を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
特許文献1によると、射出成形金型内の温度を樹脂の結晶化ピーク温度±50度に設定し、同金型内に充填された溶融樹脂を結晶化させた後に冷却固化する方法が開示されている。尚、結晶化ピーク温度とは、結晶化が最も進み易い温度、つまり、結晶化速度が最大となる温度のことを指す。特許文献2によると、溶融樹脂を冷却固化してなる成形品を金型から取り出した後に、射出成形とは別工程であるアニール工程により成形品を結晶化させる方法が開示されている。特許文献3によると、結晶化を促進させるための結晶核剤を溶融樹脂に添加し、この溶融樹脂を、ガラス転移温度以上結晶化開始温度以下の温度に設定された金型で加熱し、冷却固化する方法が開示されている。
特開2001−191378号公報 特開2003−191343号公報 特開2003−192883号公報
ところが、特許文献2によると、射出成形工程とアニール工程とがそれぞれ別工程であるため、工数が増加し製造コストが上昇するとともに、品質上のばらつきが増加し製品歩留まりが悪化する等の問題があった。又、特許文献1、3によると、溶融樹脂を加熱して結晶化させた後に、成形品を金型から取り出すときの温度が明確にされていない。このため、従来の射出成形の方法によると、ポリ乳酸樹脂からなる成形品は、その成形サイクルを速めるため十分に冷却されない状態で金型から取り出されてしまう場合がある。このとき、脱型する際の抵抗や成形品の自重等によって変形し易く、又、脱型する際に用いられる押出ピンにより成形品に押出痕等が付き易くなっていた。このような理由から、成形品を脱型する際に、成形品の寸法精度や外観品質が損なわれてしまうという問題があった。
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、高耐熱性及び高強度な成形品を得ることができ、寸法精度や外観品質を損なうことなく脱型することができる成形品の製造方法を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、射出成形金型にポリ乳酸を主成分とする樹脂材料からなる溶融樹脂を射出し、その溶融樹脂を冷却固化してなる成形品の製造方法であって、前記射出成形金型を型締めした状態で、該金型内の溶融樹脂を90℃以上130℃以下の加熱温度で樹脂の結晶化度が82%以上となるように所定時間加熱する加熱工程を行った後、前記射出成形金型内の溶融樹脂を前記樹脂材料のガラス転移温度未満に降温してから前記成形品を前記射出成形金型から取り出すことを要旨とする。
この構成にすれば、加熱工程において、射出成形金型内の溶融樹脂を90℃以上130℃以下の加熱温度で所定時間加熱することにより、樹脂の結晶化度を高めることができ、成形品の耐熱性及び機械的強度を向上させることができる。更に、取出時には、射出成形金型内の溶融樹脂が樹脂材料のガラス転移温度未満に降温して冷却固化されるため、成形品を高剛性にした状態で該金型から脱型することができる。このため、脱型する際の抵抗により変形が生じたり、成形品に押出痕が付いたりするのを抑制することができる。
請求項2に記載の発明は、射出成形金型にポリ乳酸を主成分とする樹脂材料からなる溶融樹脂を射出し、その溶融樹脂を冷却固化してなる成形品の製造方法であって、前記射出成形金型を型締めするとともに、該金型内に設けられるキャビティの表面温度を90℃以上130℃以下の加熱温度に設定した状態で該金型内の溶融樹脂を結晶化度が82%以上となるように所定時間加熱する加熱工程を行った後、前記キャビティの表面温度を前記樹脂材料のガラス転移温度未満に降温してから前記成形品を前記射出成形金型から取り出すことを要旨とする。
この構成にすれば、請求項1に記載の発明と同等の作用効果を発揮することができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記加熱温度を100℃以上120℃以下に設定することを要旨とする。
この構成にすれば、樹脂の結晶化度を82%以上とするまでの加熱時間が短くなる。
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記加熱温度を105℃以上115℃以下に設定することを要旨とする。
この構成にすれば、樹脂の結晶化度を82%以上とするまでの加熱時間がより短くなる。
請求項に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記加熱温度を110℃以上に設定するととともに、前記所定時間を35秒以上に設定することを要旨とする。
この構成にすれば、結晶化度の高い溶融樹脂を短時間で効率良く得ることができ、成形品の成形サイクルを速めることができる。
以上詳述したように、本発明によれば、高耐熱性及び高強度な成形品を得ることができ、寸法精度や外観品質を損なうことなく脱型することができる。
以下、本発明を具体化した成形品の製造方法の一実施形態を図1〜図4に従って説明する。
図1に示すように、成形品としての樹脂成形品10は、ポリ乳酸を主成分とする樹脂材料からなり、公知の射出成形法により形成される。樹脂成形品10は、例えば、インストルメントパネル、センターコンソール、コンソールボックス等の自動車の内装部品、ホイールキャップ、バンパーモール、バックパネル等の自動車の外装部品、更には、携帯電話、ノートパソコン等、自動車部品以外の用途に用いられる。
ポリ乳酸樹脂からなる樹脂成形品10は、主成分であるポリ乳酸と、それ以外の副成分とを含む樹脂材料を溶融した溶融樹脂を射出し、90〜130℃の加熱温度で所定時間加熱した後、該樹脂材料のガラス転移温度(例えば68℃)未満に降温し冷却固化することにより形成される。尚、このガラス転移温度とは、物質が軟質な状態から硬質な状態、又は硬質な状態から軟質な状態へと変性する境界温度のことをいい、樹脂材料に含まれるポリ乳酸以外の副成分の種類や含有量等により変動することもある。
ポリ乳酸は、トウモロコシ、さつまいも、さとうきび等の植物から抽出されたでんぷんや糖を微生物発酵させ、得られた乳酸を重合させることにより生成される。この場合、でんぷんや糖を発酵させることにより光学異性体であるL−乳酸が主に得られるが、異性化反応によって少量のD−乳酸が生成される。これらのうち、樹脂成形品10の樹脂材料としては、生分解可能である上、結晶化が進み易い等の理由から、L−乳酸を95%以上含むポリ乳酸が好適に使用される。又、樹脂成形品10の剛性を高めるのが容易であることから、重量平均分子量50000〜200000のポリ乳酸が好適に使用される。又、樹脂材料において、高耐熱性及び高強度な樹脂成形品10を得るため、結晶化可能なポリ乳酸の割合を高く設定するのが好ましく、具体的に言うと、前記樹脂材料中に含まれるポリ乳酸を70wt%以上に設定するのが好ましい。
樹脂成形品10の樹脂材料には、ポリ乳酸以外の副成分として、樹脂成分や結晶核剤等が含まれていてもよい。樹脂成分としては、例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリヒドロキシブチレート、変性澱粉、ポリカプロラクトン、エステル化澱粉、酢酸セルロース等が挙げられる。又、結晶核剤としては、例えば、含水珪酸マグネシウム(タルク)、クレイ(粘土鉱物・層状ケイ酸塩)、カーボン・ブラック、シリカ、炭酸マグネシウム、珪酸マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。
次に、樹脂成形品10を形成する射出成形装置について説明する。
図1に示すように、射出成形装置は、対向して配置される射出成形金型としての一対の固定金型11と可動金型12を備え、これらを型締めすることにより、両金型11、12間に閉空間としてのキャビティ13が形成される。各金型11、12には、キャビティ13の表面を昇降温させるための温度調節手段が設けられ、この温度調節手段は、複数本の流路15,16により構成されている。流路15,16は、型締めされた両金型11、12間のキャビティ13の近傍に配置されている。射出成形装置は、これら流路15,16に加熱媒体や冷却媒体を流入させることによって、キャビティ13の表面を昇降温可能に構成されている。この場合、加熱媒体としては、飽和蒸気、過熱蒸気、加圧水、温水等が使用され、冷却媒体としては、冷却水等が使用される。
次に、樹脂成形品10を射出成形する際の製造方法について説明する。
図2に示すように、樹脂成形品10は、両金型11、12を型締めする型締め工程と、型締めされた両金型11,12内に溶融樹脂を射出する射出工程と、両金型11,12を型締めした状態で射出後の溶融樹脂を所定時間加熱する加熱工程としてのアニール工程と、両金型11,12を冷却する冷却工程とを行うことにより成形される。その後、両金型11,12を型開きし、その型開きされた両金型11,12内から樹脂成形品10を取り出す取出工程が行われる。
まず、型締め工程では、固定金型11に対して可動金型12を近接移動させることにより、両金型11,12の型割り面(PL面)同士を接合させ、所定の型締め圧で型締めするとともに、各金型11,12の流路15,16に加熱媒体を流入させて、キャビティ13の表面を所定温度に昇温させる。前記所定温度は、好ましくは90〜130℃、より好ましくは100〜120℃、更に好ましくは105〜115℃である。前記温度が90℃未満の場合及び130℃を超える場合には、ポリ乳酸の結晶化が進みにくくなるため、樹脂の結晶化度を十分に高めることが困難となる。
次に、射出工程では、型締めされた両金型11,12内に上記ポリ乳酸を主成分とした樹脂材料からなる溶融樹脂を所定の射出速度にて射出する。前記溶融樹脂は、キャビティ13内に射出された後速やかに結晶化を開始させるために、金型11,12のキャビティ13の表面温度と同じ温度であるのが好ましい。
次に、アニール工程では、キャビティ13内の溶融樹脂が、所定の加熱温度(以下、アニール温度と称す)で所定時間(以下、アニール時間と称す)加熱される。この加熱により、キャビティ13内おいて、ポリ乳酸の結晶化が進み、樹脂の結晶化度が徐々に高められる。この場合、アニール温度は、ポリ乳酸の結晶化ピーク温度を中心とした90〜130℃の範囲が適用範囲として設定され、好ましくは100〜120℃、より好ましくは105〜115℃に設定される。又、ポリ乳酸の結晶化を十分に進行させるため、上記アニール温度に対し所定のアニール時間が適用範囲として設定されている。
又、この加熱とともに、キャビティ13内の溶融樹脂に対し保圧がかけられる。前記保圧とは、通常、射出工程における射出圧よりも低い圧力(保圧力)でキャビティ13内に溶融樹脂を注入し続ける作業のことをいう。この保圧は、キャビティ13内を所定の保圧時間、所定の保圧力に保持しながら溶融樹脂を注入し続けることにより、キャビティ13内に充填された溶融樹脂が冷却する際の樹脂の収縮に起因する体積減を補ってヒケ等の発生を防止するために行われる。
次に、冷却工程では、各流路15,16に冷却媒体を流入させることにより、両金型11,12が冷却され、キャビティ13の表面が降温される。すると、キャビティ13内の溶融樹脂が冷却され、固化される。このとき、両金型11,12は、キャビティ13の表面がポリ乳酸を主成分とする樹脂材料のガラス転移温度(約68℃)未満に降温するまで冷却される。こうして、キャビティ13の表面が冷却されることにより、溶融樹脂を冷却固化してなる樹脂成形品10が形成される。
続いて、取出工程では、キャビティ13の表面が前記樹脂材料のガラス転移温度未満に設定された所定温度(以下、取出温度と称す)に降温したときに、固定金型11と可動金型12との型開きが行われる。そして、樹脂成形品10は、押出ピン等を用いることによって、型開きされた両金型11,12から取り出される。その後、通常は、上記型締め工程、射出工程、加熱工程、冷却工程、取出工程が繰り返し行われ、樹脂成形品10が連続的に製造される。
上記実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
・アニール工程において、ポリ乳酸の結晶化ピーク温度を中心とした90〜130℃の加熱温度でキャビティ13内の溶融樹脂を加熱することにより、ポリ乳酸の結晶化を促進させることができる。このため、樹脂の結晶化度を高めることができ、樹脂成形品10の耐熱性及び材料強度を向上させることができる。こうして得られる樹脂成形品10は、例えば、炎天下の車室内等、耐熱性が要求されるインストルメントパネル等の自動車部品の用途に好適に使用することができる。この作用効果は、射出成形装置を構成する両金型11,12内のキャビティ13の表面を温度調節することによっても容易に実施される。
・アニール工程において、前記アニール温度でキャビティ13内の溶融樹脂を90秒以上加熱することにより、ポリ乳酸の結晶化を十分に進行させることができ、より結晶化度の高い樹脂成形品10を得ることができる。よって、樹脂成形品10の耐熱性及び材料強度をより一層向上させることができる。
・取出工程において、取出温度がポリ乳酸を主成分とした樹脂材料のガラス転移温度未満に設定されているため、樹脂成形品10を軟質な状態から硬質な状態に変性させることができ、樹脂成形品10を高剛性にした状態で型開きした両金型11,12から脱型することができる。よって、脱型する際の抵抗や自重等により樹脂成形品10の変形を生じにくくすることができ、又、脱型する際に用いられる押出ピンにより押出痕等が樹脂成形品10に付きにくくすることができる。従って、寸法精度や外観品質を損なうことなく、樹脂成形品10を脱型することができる。
・射出工程において、キャビティ13の表面とほぼ同温に加熱された溶融樹脂が所定の射出速度にて射出される。この場合、溶融樹脂は、それ自身が結晶化し易い温度に加熱された状態でキャビティ13内に射出される。このため、ポリ乳酸の結晶化が速やかに開始されることから、結晶化度の高い樹脂成形品10を短時間で効率良く得ることができる。よって、樹脂成形品10の成形サイクルを速めることができ、成形サイクル時間の短縮化を図ることができる。
・樹脂成形品10の樹脂材料には、ポリ乳酸以外の副成分として、含水珪酸マグネシウム、クレイ等の結晶核剤が含まれている。これら結晶核剤を溶融樹脂に含ませることにより、ポリ乳酸の結晶化を更に促進させることができる。このため、より結晶化度の高い樹脂成形品10を、より短時間で効率良く得ることができる。
・本実施形態の製造方法を用いることで、樹脂成形品10の製品歩留まりを向上させることができ、自動車、パソコン、家電、日用品等、より幅広い用途での利用が可能となる。又、上記樹脂成形品10を用いることにより、従来からの石油系樹脂の使用量を減少させることができ、大気中に排出される二酸化炭素の量を削減することができる。又、樹脂成形品10はリサイクル性も高いことから、地球環境への負荷を低減する効果も発揮する。
以下、前記実施形態を具体化した試験例1、2及び比較例1について説明する。
(試験例1)
まず、両金型11、12の型締めを行い、キャビティ13の表面が90℃付近にまで昇温したときに、ポリ乳酸を主成分とする樹脂材料からなる溶融樹脂をキャビティ13内に射出した。射出成形装置としては、シスコ・コーポレーション製の「スチームアシスト」を使用した。ポリ乳酸としては、L−乳酸を95%以上含み、重量平均分子量が約20万であるものを使用した。又、この溶融樹脂は、ポリ乳酸以外の副成分として、補強剤としての含水珪酸マグネシウム(タルク)約10wt%、結晶核剤としてのクレイ(粘土鉱物・層状ケイ酸塩)約1wt%を含む。続いて、キャビティ13の表面温度を90℃に保持したまま、前記溶融樹脂を所定時間加熱することによりアニール工程を行った。続いて、キャビティ13の表面温度を約50℃にまで降温し、キャビティ13内の溶融樹脂を冷却固化する冷却工程を行った。最後に上記温度にまで冷却された両金型11,12の型開きを行い、平板状の樹脂成形品10を取り出す取出工程を行った。ここでは、アニール時間を30秒、60秒、90秒、120秒と変化させた4種類の樹脂成形品10を製造した。
(試験例2)
前記試験例1におけるアニール温度を110℃とし、アニール時間を30秒、60秒、90秒、120秒と変化させて得られる4種類の樹脂成形品10を製造した。
(比較例1)
前記試験例1におけるアニール温度を70℃とし、アニール時間を30秒、60秒、90秒、120秒と変化させて得られる4種類の樹脂成形品を製造した。
次に、試験例1、2及び比較例1について、アニール時間(秒)と樹脂の結晶化度(%)との関係を評価した。その結果を図3に示す。
図3のグラフに示すように、試験例1、2及び比較例1を比較してみると、アニール温度を70℃とした場合、アニール時間を長くしても樹脂の結晶化度を60%未満にしか高めることができなかった。又、データは示さないが、アニール温度を130℃よりも高くした場合、ポリ乳酸の結晶化が促進されず、樹脂の結晶化度を十分に高めることはできなかった。しかし、アニール温度を90℃、110℃とした場合、アニール時間を長くすればポリ乳酸の結晶化が進み、樹脂の結晶化度を100%付近にまで高くすることが可能であった。ちなみに、データは示さないが、70〜130℃の範囲では、アニール温度が110℃付近で最も結晶化が進み易かった。このような理由から、結晶化度の高い樹脂成形品10を得るには、アニール温度を90〜130℃の範囲に設定するのが好ましいことが分かる。
次に、試験例1、2及び比較例1の試験片について、これらを荷重撓み試験に供した。荷重撓み試験とは、短冊状の試験片を油浴に入れ、一定の曲げ荷重をかけた状態で油温を上昇させ、前記サンプルが所定の寸法まで歪んだ時の温度を測定する方法のことをいう。その結果を図4に示す。
図4のグラフは、樹脂の結晶化度が高くなるに従い、荷重撓み温度が上昇する傾向を示している。この場合、荷重撓み温度の上昇カーブは、樹脂の結晶化度が約60%である点Aと樹脂の結晶化度が約80%である点Bとでそれぞれ変曲している。このため、樹脂の結晶化度を82%よりも高くすれば、荷重撓み温度を著しく上昇させることができる。
このことから、図3、図4のグラフに示すように、樹脂の結晶化度を82%以上に高めるには、アニール温度を110℃としたときアニール時間を35秒以上に設定すればよく、アニール温度を90℃にしたときアニール時間を90秒以上に設定すればよいことが分かる。これは、樹脂材料の主成分であるポリ乳酸の結晶化ピーク温度が約110℃付近であることと一致している。このため、結晶化度の高い樹脂成形品10を短時間で効率良く得るには、アニール温度をポリ乳酸の結晶化ピーク温度付近に設定するのが好ましく、例えば、100〜120℃の範囲に設定するのがより好まく、105〜115℃の範囲に設定するのが更に好ましい。又、アニール温度を110℃とした場合、アニール時間を60秒、90秒と長くすることで樹脂の結晶化度を82%よりも上昇させることができ、アニール時間を120秒にすることで樹脂の結晶化度を100%近くにまで上昇させることができた。従って、アニール温度を110℃以上とした場合、結晶化度の高い樹脂成形品10を得るのに、アニール時間を35〜120秒の範囲に設定するのが好ましい。更に、より結晶化度の高い樹脂成形品10を得るのに、アニール時間を60〜120秒の範囲に設定するのがより好ましく、90〜120秒の範囲に設定するのがより一層好ましい。
(変形例)
なお、本実施形態は、次のように変形して具体化することも可能である。
・射出成形装置において、キャビティ13の表面を昇温させるのに、蒸気や温水等の加熱媒体が用いられていたが、誘導コイルによる誘導加熱、導電部材による抵抗発熱等によって、キャビティ13の表面を昇温させる構成としてもよい。
・樹脂成形品10の樹脂材料に含まれているゴム成分を省略してもよい。又、前記樹脂材料に含まれている結晶核剤を省略してもよく、この場合、ゴム成分を結晶核剤の代替品として使用してもよい。又、前記樹脂材料に含まれているゴム成分及び結晶核剤をいずれも省略してもよい。
さらに、前記実施形態より把握できる技術的思想について以下に記載する。
・成形品の製造方法であって、対向して配置される一対の射出成形用金型の型締めを行う型締め工程と、前記型締め工程後型締めされた両型間に設けられるキャビティにポリ乳酸を主成分とした樹脂材料からなる溶融樹脂を射出する射出工程と、前記射出工程後溶融樹脂を90℃以上130℃以下の加熱温度で所定時間加熱する加熱工程と、前記加熱工程後前記キャビティ内に充填された溶融樹脂を冷却固化する冷却工程と、前記冷却工程後溶融樹脂を冷却固化してなる成形品を前記樹脂材料のガラス転移温度以下に降温し該成形品を前記射出成形金型から取り出す取出工程とを行うことを特徴とする成形品の製造方法。このようにすれば、高耐熱性及び高強度な樹脂成形品を得ることができ、その寸法精度や外観品質を損なうことなく脱型することができる。
(a)、(b)は本実施形態で使用される射出成形用金型の模式断面図。 本実施形態における樹脂成形品の製造方法を説明するための図。 実施例におけるアニール時間と樹脂の結晶化度との関係を説明するためのグラフ。 実施例における樹脂の結晶化度と荷重撓み温度との関係を説明するためのグラフ。
符号の説明
10…成形品、11…固定金型(射出成形金型),12…可動金型(射出成形金型)、13…キャビティ。

Claims (5)

  1. 射出成形金型にポリ乳酸を主成分とする樹脂材料からなる溶融樹脂を射出し、その溶融樹脂を冷却固化してなる成形品の製造方法であって、
    前記射出成形金型を型締めした状態で、該金型内の溶融樹脂を90℃以上130℃以下の加熱温度で樹脂の結晶化度が82%以上となるように所定時間加熱する加熱工程を行った後、
    前記射出成形金型内の溶融樹脂を前記樹脂材料のガラス転移温度未満に降温してから前記成形品を前記射出成形金型から取り出すことを特徴とする成形品の製造方法。
  2. 射出成形金型にポリ乳酸を主成分とする樹脂材料からなる溶融樹脂を射出し、その溶融樹脂を冷却固化してなる成形品の製造方法であって、
    前記射出成形金型を型締めするとともに、該金型内に設けられるキャビティの表面温度を90℃以上130℃以下の加熱温度に設定した状態で該金型内の溶融樹脂を結晶化度が82%以上となるように所定時間加熱する加熱工程を行った後、
    前記キャビティの表面温度を前記樹脂材料のガラス転移温度未満に降温してから前記成形品を前記射出成形金型から取り出すことを特徴とする成形品の製造方法。
  3. 前記加熱温度を100℃以上120℃以下に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の成形品の製造方法。
  4. 前記加熱温度を105℃以上115℃以下に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の成形品の製造方法。
  5. 前記加熱温度を110℃以上に設定するととともに、前記所定時間を35秒以上に設定することを特徴とする請求項1又は2に記載の成形品の製造方法。
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