JP4258951B2 - 無方向性電磁鋼板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、主に電気機器の鉄心材料として用いられる無方向性電磁鋼板に関し、特にその加工性、リサイクル性および歪取り焼鈍後の磁気特性の有利な改善を図ったものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電力をはじめとするエネルギーの節減という世界的な動きの中で、電気機器についても、その高効率化が強く要望されている。また、電気機器を小型化する観点から、特に鉄心材料の小型化に対する要望も高まっている。さらに、最近では、環境への配慮から、電気機器における鉄心材料のリサイクル化への対応も急務となっている。
【0003】
上記した電気機器の高効率化や鉄心材料の小型化には、鉄心の素材となる電磁鋼板の磁気特性を改善することが有効である。
ここに、従来の無方向性電磁鋼板の分野では、磁気特性のうち、特に鉄損を低減する手段として、電気抵抗を増大させて渦電流損を低下させるために、SiやAl,Mn等の含有量を高める手法が一般に用いられてきた。しかしながら、この手法では、磁束密度の低下を免れることができないという、本質的な問題を抱えていた。
【0004】
一方、単にSiやAl等の含有量を高めるだけでなく、併せてCやSを低減すること、あるいは特開昭58−15143号公報に記載されているようにBを添加したり、特開平3−281758号公報に記載されているようにNiを添加したりするなど、合金成分を増加させることも、一般に知られている方法である。
これら合金成分を添加する方法では、鉄損は改善されるものの、磁束密度の改善効果は小さく満足できるものではなかった。また、合金添加に伴って鋼板の硬さが上昇して加工性が劣化するため、かような無方向性電磁鋼板を加工して電気機器に使用する場合の汎用性に乏しく、その用途は極めて限定されたものとなっていた。
【0005】
さらに、製造プロセスを変更し、製品板における結晶方位の集積度合い、すなわち集合組織を改善して磁気特性を向上させる方法がいくつか提案されている。例えば、特開昭58−181822号公報には、Si: 2.8〜4.0 mass%およびAl: 0.3〜2.0 mass%を含有する鋼に 200〜500 ℃の温度範囲で温間圧延を施し、{100}<UVW>組織を発達させる方法が、そして特開平3−294422号公報には、Si:1.5 〜4.0 mass%およびAl:0.1 〜2.0 mass%を含有する鋼を熱間圧延したのち、1000℃以上、1200℃以下の熱延板焼鈍と圧下率:80〜90%の冷間圧延を組み合わせることによって{100}組織を発達させる方法が、それぞれ開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの方法による磁気特性の改善効果は、未だ満足できるものではなく、さらには加工性およびリサイクル性にも問題を残していた。
すなわち、鋼中にある程度以上のAlが含まれていると、まず鋼板の硬さが上昇して加工性が阻害され、また鉄心材料をリサイクルしたり、需要家でスクラップ処理する場合に電気炉の電極を傷めるという問題があった。
【0007】
さらに、鉄心のリサイクル材を用いてモータのシャフトなどを鋳造する場合、0.1 mass%以上のAlが含まれていると、鋳込み時に溶鋼の表面酸化が進行して粘性が増大し、溶鋼の鋳型内充填性が悪化するために、健全な鋳込みが阻害されるところにも問題を残していた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、上記の問題を有利に解決するもので、加工性およびリサイクル性に優れるのはいうまでもなく、歪取り焼鈍後の磁気特性にも優れた高磁束密度無方向性電磁鋼板を提案することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
単にリサイクル性を改善するだけならば、Al含有量を所定レベルまで低減すれば良いのであるが、Al量を低減するとその分磁気特性の劣化が避けられない。
そこで、発明者らは、この点を改善すべく鋭意研究を行った結果、低Al材であっても、CとNの両者を併せて低減すると、結晶粒成長性が格段に向上し、Al添加材と遜色のない優れた磁気特性が得られることの知見を得た。
また、Sbを添加すると、磁気特性上好ましい集合組織の形成が促進されるだけでなく、鋼板の硬さ調整にも有用であることが併せて見出された。
この発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0010】
すなわち、この発明の要旨構成は次のとおりである。
1.Si:1.5〜4.0 mass%および
Mn:0.005〜2.00mass%
を含み、かつAl,CおよびNをそれぞれ、
Al:0.010 mass%以下、
C:0.0020mass%以下(但し、 0.0020mass %を除く)、
N:0.0020mass%以下(但し、 0.0020mass %を除く)
に低減し、残部はFeおよび不可避不純物の組成になり、さらに
鉄損W15/50 ≦ 3.20 W/kgかつ磁束密度B50≧(1.650+0.025 ×W15/50)T
を満足することを特徴とする無方向性電磁鋼板。
【0011】
2.上記1において、さらに
Sb:0.005〜0.50mass%
を含有する組成になることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
3.上記1または2において、さらに、 Ni , Sn , Cu ,Pおよび Cr のいずれか1種または2種以上を、 Ni : 2.0mass %以下、 Sn : 1.0mass %以下、 Cu : 1.0mass %以下、P: 0.3mass %以下、 Cr : 3.0mass %以下で含有することを特徴とする無方向性電磁鋼板。
【0012】
4.上記1〜3のいずれかにおいて、鋼板の硬さが 120 HV1 以上 200 HV1以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の解明経緯について説明する。
さて、電気機器のモータやトランスの効率を高めるためには、これらの銅損や鉄損を低減することが重要であり、銅損と鉄損を同時に低減するためには、素材の磁束密度を高めかつ鉄損を低減する必要がある。
ところが、一般に鉄損を低減するために添加するSiなどの比抵抗増加元素は、飽和磁束密度を低下させることから、鉄損および磁束密度を両立させるのは非常に困難であった。
この点、集合組織の改善は、鉄損および磁束密度を両立させ得る優れた手段であるが、これにも自ずから限界があった。
【0014】
このような状況下で、新たに材料を開発するには、まず素材の鉄損と磁束密度とをいかにバランスさせれば電気機器の高効率化につながるかを知ることが極めて重要になる。
そこで、発明者らは、最近一般的に用いられるようになった 500WのブラシレスDCモータを用い、この鉄心に種々の素材を適用した場合におけるモータ効率について調査した。ここで、モータ効率とは、DCモータにおける入力に対する出力の比率であり、92%以上であれば極めて高効率と言える。
【0015】
得られた結果を図1に示す。
同図に示したように、鉄損W15/50 が 3.2 W/kg 以下で、かつ磁束密度B50が(1.650+0.025 ×W15/50)T以上を満足する範囲に素材の鉄損と磁束密度を制御することによって、極めて良好なモータ効率が得られることが判明した。
これは、素材の鉄損−磁束密度バランスを調整することによって、機器の鉄損と銅損が良好にバランスした結果である。
【0016】
この知見は、DCモータに限らず、AC誘導モータや小型トランスにおいても基本的には同じはずである。
そこで、鉄損および磁束密度を上記の好適範囲に制御することを、新たな材料開発の指針とした。
【0017】
そこで次に、上記の知見を踏まえ、鉄損および磁束密度が上記範囲を満足し、しかも良好な加工性およびリサイクル性をも確保し得る、無方向電磁鋼板の成分組成について検討した。
まず、Alは、従来、磁気特性向上のために必要であるとして添加されてきたが、加工性およびリサイクル性を阻害することから、ここではAlを低減することが肝要である。
【0018】
すなわち、Alは、鋼板の製造工程において、鋼板表面の酸化を促進するため、圧延工程で圧延ロールの磨耗を早めて圧延性を阻害するだけでなく、鋼板の硬さを高めるために、需要家が打ち抜き加工する際に金型の劣化を早めて作業時間やコストを増大させるなど、加工性に関して不利な成分である。
また、電気機器などのスクラップを利用して鋳造を行う場合に、Alが含まれていると、鋳込み時に溶鋼の表面酸化が進行して粘性が増大し、溶鋼の鋳型内充填性が悪化するために、健全な鋳物が得られないことがあり、Alを含むスクラップはリサイクル性に乏しいものになる。
【0019】
従って、加工性およびリサイクル性を向上させるには、Alの含有量を低減することが有効となる。とはいえ、一方でAlの低減は、磁気特性とりわけ鉄損の増大を招くことになる。
【0020】
しかしながら、この点に関する発明者らの研究によれば、Alを低減したとしても、その他の鋼中成分を適切に調整してやれば、加工性およびリサイクル性、さらには磁気特性の全てを満足させ得ることが、新たに究明された。
すなわち、発明者らは、数多くの実験結果を解析するうちに、Si量が十分にあり、かつN量が低い場合には、Alをほとんど添加しなくても、良好な鉄損特性が得られることを見出した。
そこで、Al量とN量について、系統的にその影響を明らかにするために、以下の実験を行った。
【0021】
まず、成分としてC:0.002 mass%およびMn:0.20mass%を基本成分として固定し、これにSi, NおよびAl量を種々に変化させて含有させた、種々の鋼塊を溶製した。ついで、これらの鋼塊を、1050℃に加熱し、熱間圧延にて2.3 mm厚としたのち、約1000℃で熱延板焼純を施し、酸洗後、冷間圧延にて最終板厚:0.35mmに仕上げたのち、約1000℃, 10秒間の再結晶焼鈍を施して製品板とした。
【0022】
これらの製品板から、圧延方向と平行および圧延方向と直角にそれぞれサンプルを切り出し、JIS C 2550に準拠して鉄損を測定して、その平均値を求めた。
得られた結果を図2に示す。
同図に示したように、Si量が高くかつN量が低い場合には、Alが 0.030mass%以下の範囲でも、鉄損が著しく低減されることが判明した。
【0023】
前述したように、Si量の高い高級無方向性電磁鋼板では、従来鉄損を改善するために、Alを添加して固有電気抵抗を増加させる手法が採用されてきた。また、Alの添加は、結晶粒成長を抑制する鋼中析出物であるAlNを凝集粗大化させ、結晶粒の成長を促進させる効果もあった。そして、これらの効果を得るためには、一定量以上のAlを確保することが必要とされ、従来、Al量は少なくとも 0.1mass%を超える範囲に規制され、通常は 0.4〜1.0 mass%程度含有されていた。
しかしながら、発明者らの上記実験によれば、従来技術の範囲よりもはるかにAl量を低減した場合でも、N量を規制することによって、Alを含有させた場合と同等以上に良好な集合組織が発達し鉄損特性が向上することが、新たに見出されたのである。
【0024】
このように、素材成分において、Nを低減した上でAlの含有量を低減することによって、良好な集合組織が発達する理由については、必ずしも明確に解明されたわけではないが、発明者らは、不純物の粒界移動抑制効果に関連づけて以下のように考えている。
すなわち、Alを低減することにより、より純鉄に近い結晶格子の配列状態へと近づくため、粒界構造に依存する本来的な移動速度差が顕在化して、再結晶に伴う粒成長過程で一部の粒界のみが優先的に移動し、{111}、{554}、{321}など数多くの磁気的に不利な結晶粒の成長が抑制され、{100}強度が増加する方向への集合組織変化が引き起こされる結果、磁気特性が向上したものと考えられる。特に、十分なSi量を含有し、かつN量を0.0030mass%以下に低減した場合には、AlN析出物が形成されにくくなる結果、{100}強度が増加する方向への粒界移動が促進されるものと考えられる。
【0025】
このように、Alを多量添加することなく集合組織を改善して磁気特性を向上する手法では、Alが減量されるために素材のリサイクル性が改善され、また合金元素の添加量が減少するために飽和磁束密度を高めることができる。さらに、合金元素の添加量が減少されると、鋼板の硬さ上昇が抑制される結果、製品の加工性が確保されて、汎用電気製品への適用が促進されるという、利点も得られる。
【0026】
次に、発明者らは、上記の集合組織形成および粒成長を促進する効果を有すると共に、さらに、歪取り焼鈍後の磁気特性を改善することを目的として、微量元素の影響について詳細な検討を行った。
その結果、鋼中のNさらにはCを一層低減することが、上記の効果を高め、より安定して歪取り焼鈍後の鉄損および磁束密度の改善が達成されることが突き止められた。
【0027】
すなわち、Si,AlおよびN量を所定の範囲に規定しただけでは、歪取り焼鈍後の鉄損は、せん断のままと同等または若干劣化する傾向にあった。
そこで、この原因を明確にするために、Mnは 0.2mass%の一定とし、Siを 1.5〜1.8 mass%、Alを0.0004〜0.0100mass%、NおよびCを約0.0010〜0.0040mass%の範囲でそれぞれ変化させた鋼塊を溶製して実験に供した(一部脱炭)。そして、これらの鋼塊を、1000℃に加熱してから熱間圧延により2.8 mm厚としたのち、約1020℃で熱延板焼鈍を施し、酸洗後、冷間圧延にて最終板厚:0.50mmに仕上げた。ついで、冷間圧延後、約1000℃,10秒間の再結晶焼鈍を行って製品板とした。
かくして得られた製品板から、圧延方向と平行および圧延方向と直角に、それぞれサンプルを切り出し、JIS C 2550に準拠して平均の磁束密度および鉄損を測定した。この測定は、せん断ままのものと、窒素雰囲気中にて 750℃, 2hの歪取り焼鈍を施したものについて行った。
得られた結果を、図3に整理して示す。
【0028】
同図に示したように、NとCをそれぞれ、N≦0.0020mass%、C≦0.0020mass%と極力低減した場合に歪取り焼鈍後の鉄損が安定して回復することが判明した。
この理由は、必ずしも明らかではないが、Nは再結晶焼鈍時に固溶し、冷却時に過飽和状態となり、その結果、歪取り焼鈍の均熱過程で炭化物の析出が生じるためと考えられる。
従って、これらの元素を低減することによって、上記の害を低減することができ、その結果、歪取り焼鈍後においても極めて良好な磁気特性が得られるものと考えられる。
【0029】
さらに、この発明の無方向性電磁鋼板では、需要家での加工性を損なうことのないように、鋼板のビッカース硬さを 200 HV1以下に規制することが好ましい。
すなわち、Alを低減し、鋼板表面での酸化を抑制して金型の早期磨耗を回避することに併せて、鋼板の硬さを 200 HV1以下に規制することによって、鋼板の加工性が格段に改善されるのである。とはいえ、鋼板の硬さが 120 HV1未満になると、逆に打ち抜いた端面に、だれやつぶれ等が発生して金型からの離脱が阻害されたり、打ち抜き後のかえりが大きくなって鋼板の占積率などに悪影響を及ぼす場合があるため、120 HV1 以上とすることが好ましい。
【0030】
この鋼板硬さの規制は、主にAlを低減することによって達成されるものであるが、不純物元素が多量に存在したり、最終焼純において焼鈍温度が不十分であったり、あるいは焼鈍中に酸化や窒化が生じた場合などには、所望の硬さを安定して得るのが困難となることがある。従って、この発明に従って不純物を低減することは勿論、製造工程における焼鈍を、過度に酸化や窒化が生じない雰囲気にすることが有効である。
なお、この発明では、酸化や窒化の核となる鋼中Al量を低減しているため、他の鋼種と比較すると、酸化や窒化は生じにくい、利点がある。
【0031】
また、酸化や窒化に対する抑制効果のあるSbを添加することも、鋼板の硬さを 200 HV1以下に規制するのに有効である。
また、Sbの添加は、低Alの場合のAlNの微細析出を抑制し、かつこれらの粒成長阻害作用を抑制することにより、磁気特性上より有利な集合組織の形成を促進させる上でも有効である。これらの効果を得るには、Sbは 0.005〜0.50mass%の範囲で添加することが好ましい。
【0032】
次に、この発明の各構成要件の限定理由について詳述する。
まず、この発明の無方向性電磁鋼板の成分組成について説明すると、この発明では、Si:1.5 〜4.0 mass%およびMn:0.005 〜2.00mass%を含有させる必要がある。
Si:1.5 〜4.0 mass%
すなわち、Siを含有させて電気抵抗を増大させ、鉄損を低減する必要があり、この鉄損改善のためには1.5 mass%以上の含有が必要である。一方、Si含有量が4.0 mass%を超えると、磁束密度が低下するだけでなく、製品の二次加工性が著しく劣化するので、Si量は 1.5〜4.0 mass%の範囲に限定する。
【0033】
Mn:0.005 〜2.00mass%
Mnは、良好な熱間加工性を得るために必要な成分であり、そのためには少なくとも 0.005mass%の含有が不可欠である。一方、2.00mass%を超えると、飽和磁束密度の低下を招くので、Mn量は 0.005〜2.00mass%の範囲に限定する。
【0034】
Al:0.010 mass%以下
優れた磁気特性を得るためには、鋼板のAl量を0.010 mass%以下まで低減する必要がある。
すなわち、Al含有量が 0.010mass%を超えると、製品板における集合組織が劣化して磁束密度が低下するため、 0.010 mass%以下とする必要がある。
【0035】
C:0.0020mass%以下(但し、 0.0020mass %を除く)、N:0.0020mass%以下(但し、 0.0020mass %を除く)
前掲図3に示したとおり、低Al鋼において、歪取り焼鈍後に良好な磁気特性を安定して得るためには、CおよびNの両者をそれぞれ0.0020mass%以下まで低減することが肝要である。
なお、Cについては、溶鋼段階で0.0020mass%以下としてもよいし、溶鋼段階で0.0020mass%を超えている場合には途中工程での脱炭処理により0.0020mass%以下としてもよく、要は再結晶焼鈍中の鋼板におけるC含有量を 20ppm以下としておくことが重要である。
【0036】
Sb:0.005 〜0.50mass%
また、Sbは、AlN析出形態および粒界移動時の良好な集合組織形成のために、有効な成分であり、0.005 mass%未満ではその効果に乏しく、一方0.5 mass%をこえると、逆に粒成長性を阻害するため、0.005 〜0.5mass %の範囲で添加することが好ましい。
【0037】
なお、Ni, Sn, Cu, PおよびCrなども、集合組織の形成に有利に働くことが確認されており、これらを添加することに問題はない。
しかしながら、Niが 2.0mass%、Snが 1.0mass%、Cuが 1.0mass%、Pが 0.3mass%、そしてCrが 3.0mass%を超えると、粒界移動が抑制されて集合組織の形成や粒成長性が阻害されるため、これらの上限値を超えない範囲で各成分を添加することが好ましい。
【0038】
上記の成分組成に調整した鋼板は、鉄損W15/50 が 3.20 W/kg以下で、かつ磁束密度B50が(1.650 + 0.025×W15/50 )T以上の磁気特性を有し、しかも加工性およびリサイクル性、さらには歪取り焼鈍後の磁気特性に優れたものとなる。
【0039】
次に、この発明鋼板の製造方法について説明する。
上記の好適成分組成に調整した溶鋼から、通常の造塊−分塊法や連続鋳造法によってスラブを製造してもよいし、100 mm以下の厚さの薄鋳片を直接鋳造法で製造してもよい。
ついで、スラブは通常の方法で加熱して熱間圧延に供するが、鋳造後、加熱せずに直ちに熱間圧延に供してもよい。なお、薄鋳片の場合には、熱間圧延しても良いし、熱間圧延を省略してそのまま以後の工程に進めてもよい。
ついで、必要に応じて熱延板焼鈍を施し、さらに必要に応じて中間焼鈍を挟む1回以上の冷間圧延を施したのち、連続焼鈍を行い、必要に応じて絶縁コーティングを施す。積層した鋼板の鉄損を改善するために、鋼板表面に絶縁コーティングを施すが、この目的のためには、2種類以上の被膜からなる多層膜であってもよいし、樹脂等を混合させたコーティングとしてもよい。
【0040】
【実施例】
表1に示す成分組成になる鋼スラブを、連続鋳造にて製造した。この鋼スラブを、1180℃で50分間加熱後、熱間圧延にて2.8 mm厚の熱延板としたのち、1000℃,1分間の熱延板焼鈍を施し、酸洗後、スケールを除去してから、180 ℃の温度で冷間圧延を行って、0.50mmまたは0.35mmの最終板厚に仕上げた。ついで、(50%H2+50%N2)雰囲気で 950℃, 10秒の再結晶焼鈍を施したのち、半有機コーティング液を塗布し、 300℃で焼き付けて製品板とした。
【0041】
かくして得られた製品板から、圧延方向と平行および圧延方向と直角に、それぞれサンプルを切り出し、JIS C 2550に準拠して平均の磁束密度および鉄損を測定した。この測定は、せん断ままのものと、窒素雰囲気中にて 750℃, 2hの歪取り焼鈍を施したものについて行った。
得られた結果を整理して表2に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
表2に示したとおり、この発明範囲に成分組成を調整した場合には、せん断ままについてはいうまでもなく、歪取り焼鈍後においても良好な磁気特性の製品板が得られている。
また、製品板の硬さも適正であり、良好な加工性を有していることが分かる。
【0045】
【発明の効果】
かくして、この発明によれば、加工性およびリサイクル性に優れ、しかも歪取り焼鈍後の磁気特性に優れた高磁束密度無方向性電磁鋼板を安定して得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 モータ効率に及ぼす磁束密度B50および鉄損W15/50 の影響を示す図である。
【図2】 鉄損W15/50 に及ぼすAl,SiおよびN量の影響を示す図である。
【図3】 磁気特性に及ぼす鋼中のNおよびC量の影響を示す図である。
Claims (4)
- Si:1.5〜4.0 mass%および
Mn:0.005〜2.00mass%
を含み、かつAl,CおよびNをそれぞれ、
Al:0.010 mass%以下、
C:0.0020mass%以下(但し、 0.0020mass %を除く)、
N:0.0020mass%以下(但し、 0.0020mass %を除く)
に低減し、残部はFeおよび不可避不純物の組成になり、さらに
鉄損W15/50 ≦ 3.20 W/kgかつ磁束密度B50≧(1.650+0.025 ×W15/50)T
を満足することを特徴とする無方向性電磁鋼板。 - 請求項1において、さらに
Sb:0.005〜0.50mass%
を含有する組成になることを特徴とする無方向性電磁鋼板。 - 請求項1または2において、さらに、 Ni , Sn , Cu ,Pおよび Cr のいずれか1種または2種以上を、 Ni : 2.0mass %以下、 Sn : 1.0mass %以下、 Cu : 1.0mass %以下、P: 0.3mass %以下、 Cr : 3.0mass %以下で含有することを特徴とする無方向性電磁鋼板。
- 請求項1〜3のいずれかにおいて、鋼板の硬さが 120 HV1 以上 200 HV1以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
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