JP4258142B2 - インクジェット式記録ヘッド - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ノズルからインク滴を吐出して記録媒体に文字等の記録像を書き込むインクジェット式記録ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット式記録装置は、ノズル開口部からインク滴を吐出させて紙などの記録媒体に文字や画像を印刷するものである。近年、より高速、高品質な印字を行うインクジェット式印刷装置が求められている。そのような印刷装置を実現するには、高周波駆動可能なインクジェットヘッドを必要とする。高周波駆動可能なヘッドを構成する技術は種々提案されている。例えば、ヘッド寸法等によって定義されるヘルムホルツ周波数を大きくして、ヘッドを構成する技術などが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、インクを高周波で吐出するとき、インク滴の飛翔速度が大きく変動するという課題を有する。これは前のインク滴の吐出後のメニスカスの残留振動が大きい為であり、場合によっては吐出不能となることもある。
【0004】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは高周波で吐出可能なインクジェットヘッドを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明の手段は、インクを吐出するノズルと、インクを供給する共通インク室とに連通する圧力発生室と、該圧力発生室の一壁面を成す振動板と、振動板を動かす圧電振動子と、前記圧力発生室と前記共通インク室との間に、リストリクタとして複数の微細穴を設けたインクジェットヘッドにおいて、前記ノズルにおけるイナータンスをMn、流体抵抗をRn、リストリクタ部におけるイナータンスをMr、流体抵抗Rrをとし、a=Mr/Mn、b=Rr/Rnとして、aを0.5<a<2.0、bを4.0<b<16.0の範囲とするリストリクタ個数Nの最大値をn、最小値をn'とした場合に、2≦n/n ' ≦3とする。
また、インクを吐出するノズルと、該ノズルとインクを供給する共通インク室とに連通する圧力発生室と、該圧力発生室の一壁面を成す振動板と、該振動板に当接し前記圧力発生室を加圧する圧電振動子と、前記圧力発生室と前記共通インク室との間に複数の微細穴からなるリストリクタを設け、前記微細穴は、リストリクタと異物除去の為のラストチャンスフィルタとを兼ねるインクジェットヘッドにおいて、前記ノズルにおけるイナータンスをMn、流体抵抗をRn、リストリクタ部におけるイナータンスをMr、流体抵抗Rrをとし、a=Mr/Mn、b=Rr/Rnとして、aを0.5<a<2.0、bを4.0<b<16.0の範囲とするリストリクタ個数Nの最大値をn、最小値をn'とした場合に、2≦n/n ' ≦3とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0007】
図1は本発明の一例となるインクジェットヘッドを示す断面図であり、図2は従来技術によるインクジェットヘッドを示す断面図である。図1、図2において、インクを吐出するノズル1と、インクを供給する共通インク室2とに連通する圧力発生室3と、圧力発生室3の一壁面を成す振動板4と、振動板を動かす圧電振動子5と、を有し、圧力発生室3と共通インク室2との間にインク滴吐出後のメニスカスの残留振動を減衰させる為の抵抗を発生させるリストリクタ6が配設されている。図2においては、共通インク室内にラストチャンスフィルタ7が配設されている。
【0008】
本発明の一例の圧力発生室は、従来技術と比較し、イナータンスMを大きくすることなく、流体抵抗Rを大きく出来る特徴を有する。このような特徴が必要となる理由、このような特徴を有する理由は次のようにして分かる。高い動作周波数を達成する為には、下記のヘルムホルツ共振周波数fを高くする必要がある。f=1/2π×√{(Mn+Mr)/((Cc+Cd)(Mn+Mr))}…(1)
ここで、Ccは圧力発生室内のインクに関するコンプライアンス、Cdは圧力発生室の各壁に関するコンプライアンス、Mnはノズルのイナータンス、Mrはリストリクタのイナータンスである。この式から、Mn、Mrが大きくなると、fは小さくなることが分かる。
【0009】
一方、リストリクタの流体抵抗Rnの大きい方が、インク滴吐出後のメニスカスの残留振動が小さい。メニスカスの残留振動が大きいと、その次に吐出されるインク滴の飛翔速度等の特性が変動し、場合によっては吐出不能となる。特性変動をおさえ、吐出不能を防ぐ為には、メニスカスの残留振動が十分に減衰するまで待って、次発を吐出する必要がある。従って、高周波数駆動の為には、インク滴吐出後のメニスカスの残留振動を小さくする、ひいてはリストリクタの流体抵抗Rnを大きくすることが必要となる。
【0010】
しかし、従来技術では、流体抵抗Rを大きくすると、イナータンスMも大きくなる、例えば円筒流路の場合、直径d、単位長さあたり流路のイナータンスMと流体抵抗Rは次の式で表される。
M=ρ/(π×d^2)×16/3…(2)
R=128×μ/(π×d^4)…(3)
ρはインクの密度、μはインクの粘度である。式(2)、(3)から半径を小さくして流体抵抗Rを大きくすると、イナータンスMも大きくなることが分かる。本発明のヘッドによれば、イナータンスMをあまり大きくすることなく、流体抵抗Rを大きくすることが出来る。
【0011】
ノズル部のイナータンスMnとリストリクタ部のイナータンスMrを、
a=Mr/Mn…(4)
とし、また、ノズル部の流体抵抗Rnとリストリクタ部の流体抵抗Rrにおいても同様に、
b=Rr/Rn…(5)
とした場合に、実験的にa、bはそれぞれ、
5<a<2.0…(6)
4.0<b<16.0…(7)
が望ましいことが分かっている。
【0012】
ここで、定数成分をそれぞれA,Bとおけば式(2)、(3)はそれぞれ、
M=A×(1/d)^2…(8)
R=B×(1/d)^4…(9)
と表されるから、ノズルの直径をdn、リストリクタ部の直径をdrとすると、ノズルのイナータンスMn、流体抵抗Rn、リストリクタのイナータンスMr、流体抵抗Rrはそれぞれ、
Mn=A×(1/dn)^2…(10)
Mr=A×(1/dr)^2…(11)
Rn=B×(1/dn)^4…(12)
Rr=B×(1/dr)^4…(13)
となり、
(1)、(10)、(12)式、(2)、(11)、(13)式より、それぞれ、
a=(dn/dr)^2…(14)
b=(dn/dr)^4…(15)
の関係式が導かれる。
【0013】
図3に、X軸にdr、左Y軸にa、右Y軸にbをとり、一例としてdnを30μmとした場合のa、bを示す。この範囲を図から(4)、(5)式の範囲を読みとると、0.5<a<2.0の範囲は21<dr<30、4.0<b<16.0の範囲は14<dr<21となり、(4)、(5)式を両立させるdrは存在しない。
【0014】
ここで、リストリクタ数を並列に増加させた場合を図7、8に示すような等価回路に置き換えて考えると、合成抵抗Rは、
1/R=1/R1+1/R2+1/R3+…+1/Rn…(16)
で表され、
R1=R2=R3=…=Rn…(17)
とすると、式(16)(17)から、
R=Rn/n…(18)
となるから、リストリクタ数を並列に増加させた場合のMr'、Rr'は、個数をNとするとそれぞれ、
Mr'=Mr/N…(19)
Rr'=Rr/N…(20)
で表される。
(1)、(10)、(19)式、(2)、(11)、(20)式からa、bは、それぞれ、
a=(dn/dr)^2/N…(21)
b=(dn/dr)^4/N…(22)
の関係式が導かれる。
【0015】
図4にリストリクタ数を増加させた場合のa、bを示す。下表1に図4から読みとった(3)(4)の成立するdr範囲及び共有範囲を示す。
【0016】
【表1】
Figure 0004258142
【0017】
表からも読み取れる様に、リストリクタ数Nを変化させることによって任意の共有範囲を採ることが出来ることが分かる。
【0018】
一方、インクジェットヘッドにおいては、従来から異物混入による詰まりの発生が報告されており、インク供給部のフィルタは重要視されてきた。この為、インクジェットヘッド内部にラストチャンスフィルタを設けることなどが提案されていると共に、
κ=dr/dn…(23)
とした場合のκは1/2以下、望ましくは1/3以下が理想とされている。図5にX軸に個数N、左Y軸にa、右Y軸にbをとり、drをそれぞれ、15μm、10μm、7.5μmとした場合のa、bを示す。この場合の(3)、(4)の成立する本数N範囲及び共有範囲を下表2に示す。
【0019】
【表2】
Figure 0004258142
【0020】
以上のことから、仮に本例におけるdnが30μmだとした場合、dr=7.5μm、N=30本とすることによって、式(3)、(4)を共に満たすことが出来ることが分かる。更には、N=16でも式(3)、(4)を共に満たすことが出来ることから、式(3)、(4)共にを満たすことが出来るNの最大値をn、最小値をn'とした場合、リストリクタをラストチャンスフィルタとして兼用した場合でも、N'=n−n'=30−16=14に相当するまでの範囲でのリストリクタの詰まりを許容することが出来ることが分かる。
【0021】
図6に、X軸にdr、Y軸にリストリクタの個数Nをとり、dnを30μmとした場合の、式(3)、(4)を満たすa、bの範囲及び共有範囲を示す。図6からも分かる様に、a、bは2乗曲線、4乗曲線となる為、ある点で交差し、n/n'は極大値を採り、実用範囲としてはn/n'=2〜3が望ましい。
【0022】
また、本例においてはノズル、リストリクタ共に円筒流路として論じているが、矩形流路やその他の形状においても、相当直径を考えた場合は本例と同様に考えることが出来る。
【0023】
また、本例においては、単位長さあたりの流路について論じているが、ノズルに対して、リストリクタの長さを小さくした場合も同様で、その為N、ひいてはN'を大きくすることが出来、より優位となる。
【0024】
また、本例においては、リストリクタ部を薄膜構造とすることで、従来デットスペースであった部分を共通インク室として利用することが出来、ノズルの高密度実装に対しても有利である。
【0025】
また、本例においては、薄板の積層構造であるが、同様な構成をシリコンや水晶などの単結晶材料をエッチングして形成しても良い。
【0026】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば高周波で吐出可能な信頼性の高いインクジェットヘッドを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一例のインクジェットヘッドを示す断面図
【図2】 従来技術によるインクジェットヘッドを示す断面図
【図3】 dnを30μmとした場合のa、bのグラフ
【図4】 リストリクタ数Nを増加させた場合のa、bのグラフ
【図5】 drを15μm、10μm、7.5μmとした場合のa、bのグラフ
【図6】 drを変化させた場合のリストリクタ数Nのグラフ
【図7】 抵抗を並列に配置した回路図
【図8】 図7の等価回路図
【符号の説明】
1はノズル、2は共通インク室、3は圧力発生室、4は振動板、5は圧電振動子、6はリストリクタ、7はラストチャンスフィルタである。

Claims (2)

  1. インクを吐出するノズルと、該ノズルとインクを供給する共通インク室とに連通する圧力発生室と、該圧力発生室の一壁面を成す振動板と、該振動板に当接し前記圧力発生室を加圧する圧電振動子と、前記圧力発生室と前記共通インク室との間に複数の微細穴からなるリストリクタを設けたインクジェットヘッドにおいて、
    前記ノズルにおけるイナータンスをMn、流体抵抗をRn、リストリクタ部におけるイナータンスをMr、流体抵抗Rrをとし、a=Mr/Mn、b=Rr/Rnとして、aを0.5<a<2.0、bを4.0<b<16.0の範囲とするリストリクタ個数Nの最大値をn、最小値をn'とした場合に、2≦n/n ' ≦3とすることを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. インクを吐出するノズルと、該ノズルとインクを供給する共通インク室とに連通する圧力発生室と、該圧力発生室の一壁面を成す振動板と、該振動板に当接し前記圧力発生室を加圧する圧電振動子と、前記圧力発生室と前記共通インク室との間に複数の微細穴からなるリストリクタを設け、前記微細穴は、リストリクタと異物除去の為のラストチャンスフィルタとを兼ねるインクジェットヘッドにおいて、
    前記ノズルにおけるイナータンスをMn、流体抵抗をRn、リストリクタ部におけるイナータンスをMr、流体抵抗Rrをとし、a=Mr/Mn、b=Rr/Rnとして、aを0.5<a<2.0、bを4.0<b<16.0の範囲とするリストリクタ個数Nの最大値をn、最小値をn'とした場合に、2≦n/n ' ≦3とすることを特徴とするインクジェットヘッド。
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