以下、本発明の実施形態に係る情報記録媒体について説明する。
(情報記録媒体の実施形態)
本発明の情報記録媒体に係る実施形態は、基板と、該基板上に形成されており、記録された記録情報を再生可能とするための再生パワー範囲と前記記録情報を消去可能とするための消去パワー範囲とが少なくとも部分的に重なっている記録特性を持つ記録層とを備える。
本発明の情報記録媒体に係る実施形態によれば、再生パワー範囲及び消去パワー範囲は、記録層に固有であり、基本的には、記録層の材料(材質)及び膜厚により決定される。従って、例えば光ディスクプレーヤ等の情報再生装置において、当該情報記録媒体に対して、消去パワー範囲と再生パワー範囲とが重なった範囲内にあるパワーを有するレーザを、再生用レーザとして照射することで再生を行えば、記録情報を再生しつつ記録情報を消去することが可能となる。より具体的には、記録層に固有の消去パワー範囲内であって且つ再生パワー範囲内にあるパワーを有するレーザ光を、再生用レーザとして、当該記録層に照射すると、記録層から出射される光(例えば、典型的には反射光、或いは回折光、屈折光、透過光などの出射光)における光学特性(例えば、反射率、偏光状態等)が変化するので、例えば相変化によるピットとして記録された記録情報の再生が可能とされる。同時に、照射されたレーザによって、例えば相変化によるピットとして記録された記録情報が消去される。
このように、記録層に記録された記録情報を例えば一回だけ再生可能となる。更に、やはり記録層に固有である記録情報が記録可能とされる記録パワー範囲内にあるパワーを有するレーザを、記録用レーザとして、上述の如く記録情報が消去された記録層に対しては照射することで、再び記録情報を記録することもできる。このように、何度でも記録情報を記録しこれを一回だけ再生しつつ消去するプロセスを繰り返すことも可能となる。
但し、このような記録については、市販されている民生用の情報記録再生装置(例えば、光ディスクレコーダ)によっては不可能なようにするのが好ましく、専用の情報記録装置によって行われるのが好ましい。即ち、このように構成すれば、例えば、回収業者において、ユーザ側で消去された部分のみを再度記録することによって、記録された状態を比較的簡単に復元でき、ユーザによる不正な復元を防止することが出来る。
尚、上述のように再生パワー範囲と消去パワー範囲とが重なる記録特性を有するように記録層を形成するには、例えば、実験的、経験的又は理論的若しくはシミュレーション等により、当該記録層を構成する複数材料間の比率と層厚とを調整して、個別具体的に該記録特性が得られるようすればよい。更に、上述の如き記録特性を有する多層構造の記録層を形成するには、多層について同様に実験的等により比率や層厚を調整すればよい。
本発明の情報記録媒体に係る実施形態の一態様では、前記記録層には、記録トラックに沿って前記記録情報がピットとして記録されており、前記ピットが形成された前記記録トラック上の領域は、前記ピットが形成されていない前記記録トラック上の領域と光学特性が相異なる。
この態様によれば、記録トラック上には、例えば高反射率の鏡面上に、相変化によるピット、即ち反射率が低く黒くされたピットが形成される。そして、このようなピットの光学特性は、再生用レーザ等のレーザ照射によって比較的容易に変更可能である(即ち、レーザ照射により消去可能である)ので、1回だけ再生可能なピットを比較的容易に形成できる。
この態様では、前記ピットの平面形状は、前記再生用レーザの照射によって消去される部分に起因した信号変化分を補償する形状とされているように構成してもよい。
このように構成すれば、記録情報が記録されたピットが消去されることによって生じ得る、例えばRF再生信号等のピットからの反射光に基づく出力信号の減少分を、当該ピットの平面形状に応じて補償することが可能となる。
この場合には更に、前記ピットの平面形状は、前記再生用レーザが相対的に早く照射される部分が細く且つ前記再生用レーザが相対的に遅く照射される部分が太くなるように形成されているように構成してもよい。
このように構成すれば、特に、例えばRF再生信号等の出力信号が、再生用レーザが相対的に遅く照射される部分、即ち、ピットの後半部分に対応して減少することを未然に防止することが可能となる。ピットの前半部分では、ピットが消去された個所が無いので、出力信号へのピットの影響が相対的に大きくなるのに対して、ピットの後半部分では、消去された個所があるので、出力信号へのピットの影響が相対的に(消去された分だけ)小さくなる。従って、仮にピットがこのように補償するための形状でなければ、後半部分に行くほど出力信号が減少しかねないのである。
尚、このような形状のピットは、パルス状のレーザのパワー及び照射時間を制御することで形成することができる。
本発明の情報記録媒体に係る実施形態の他の態様では、前記記録層は、前記再生パワー範囲が0.7mW以下となり、前記消去パワー範囲が0.2mW以上であり且つ1.0mW以下となるように形成されている。
この態様によれば、再生パワー範囲0.7mW以下のDC(直流)のレーザが照射されると再生可能となる。他方で、消去パワー範囲0.2mW以上であり且つ1.0mW以下のDCのレーザが照射されると消去可能となる。即ち、一定の熱を与えることで、記録層は、例えばピットとして黒くなくなって消えてしまう。従って、消去パワー範囲と再生パワー範囲とが重なった範囲内、即ち、0.2mW以上であり且つ0.7mW以下のパワーを有する再生用レーザを用いれば、記録層における各部分(例えば、各ピット)につき、一回のレーザ照射によって再生しつつ消去することが可能となる。加えて、記録パワー範囲が0.7〜2.0mWにあるパルス状の記録用レーザが照射されることで、記録層は、例えばパルス長に応じた長さを有するピットとして黒くなり、記録情報の記録が可能となる。即ち、比較的簡単に再利用が可能となる。
因みに、汎用の光ディスクでは、消去パワー範囲は、3.0mW以上であり且つ8.0mW以下のDCであるのに対して、再生パワー範囲0.7mW以下のDCのレーザが、再生用レーザとして使用されるので、レーザ照射によって再生しつつ消去が行われることはない。加えて、記録パワー範囲が7.5mW以上であり且つ14.0mW以下にあるパルス状の記録用レーザが照射されることで、記録層は、例えばパルス長に応じた長さを有するピットとして黒くなり、記録情報の記録が可能となる。
本発明の情報記録媒体に係る実施形態の他の態様では、前記基板には、グルーブが形成されており、前記記録層には、前記グルーブに沿って前記記録情報が記録される。
この態様によれば、当該情報記録媒体の回収業者が専用の情報記録装置によって、ユーザ側で消去された部分のみを再度記録する際に、グルーブによって情報記録媒体上の位置を高精度に特定することができる。従って、比較的簡単に再利用できる。
本発明の情報記録媒体に係る実施形態の他の態様では、前記基板における一の領域は、情報記録用のエンボスピットが形成されることでROM(Read Only Memory)領域とされており、前記基板における他の領域は、前記エンボスピットが形成されることなく、一回だけ再生可能な領域とされている。
この態様によれば、ROM領域と一回だけ再生可能な領域とが共存する、所謂、ハイブリッド型の情報記録媒体を実現可能である。
本発明の情報記録媒体に係る実施形態の他の態様では、前記記録層は、Ge(ゲルマニウム)、In(インジウム)、Sb(アンチモン)及びTe(テルル)を主成分として含有する。
この態様によれば、記録層において、再生パワー範囲と消去パワー範囲とを高精度に重ならせることが可能である。
特にそれらの主成分の組成比は、例えば、約5:3:7:2が好適とされる。この際、記録層の層厚は、例えば10〜20(nm)が好適とされる。
本発明の情報記録媒体に係る実施形態の他の態様では、前記基板上に、前記記録層を挟持する第1誘電体層及び第2誘電体層と反射層とを更に備え、前記基板上に、前記第1誘電体層、前記記録層、第2誘電体層及び前記反射層はこの順に積層されている。
この態様によれば、記録層を第1誘電体層及び第2誘電体層で挟み込む構造になっているため、記録層における、例えば相変化等の化学変化のための熱伝導を効率的に行うことができる。
この態様では、前記第1誘電体層及び前記第2誘電体層は夫々、ZnS(硫化亜鉛)及びSiO2(酸化シリコン)を主成分として含有するように構成してもよい。
このように構成すれば、記録層における、例えば相変化等の化学変化のための熱伝導をより効率的に行うことができる。
特に、第1及び第2誘電体層の主成分の組成比は、例えば、約8:2が好適とされる。また、第1誘電体層の層厚は、例えば10〜20(nm)が好適とされ、第2誘電体層の層厚は、例えば70〜90(nm)が好適とされる。
この態様では、前記反射層はAg(銀)、Nd(ネオジウム)及びCu(銅)を主成分として含有するように構成してもよい。
このように構成すれば、上述のように再生パワー範囲と消去パワー範囲とが重なる記録特性を比較的容易に実現できる。
特に、反射層の主成分の組成比は、例えば、約98:1:1が好適とされる。反射層31の膜厚は、例えば140〜160(nm)が好適とされる。
本実施形態のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施例から明らかにされる。
以上説明したように、本発明の情報記録媒体に係る実施形態によれば、再生パワー範囲が消去パワー範囲と少なくとも部分的に重なっている記録特性を持つ記録層を備えるので、例えば、既存の再生専用装置等によっても、記録された情報の再生回数を制限することが可能となる。
(第1実施例−第1記録マーク−)
以下、本発明の情報記録媒体の第1実施例について図1から図9を参照して説明する。
先ず図1を参照して、第1実施例の光ディスクの基本構造について説明する。ここに図1は、本発明の情報記録媒体の第1実施例である光ディスクの基本構造を示し、上側部分は複数の記録領域を有する光ディスクの概略平面図であり、これに対応付けられる下側部分は、その径方向における記録領域構造の図式的概念図である。
本実施例に係る情報記録媒体は、一回だけ記録情報の再生が可能であると共に該一回の再生によって記録情報が消去され、更に消去後に再び記録情報の記録が可能であると共に、これらの記録、再生(消去)、再記録という処理を多数回に亘って繰り返すことが可能であるリードワンス型光ディスクからなる。
図1に示すように、光ディスク100は、例えば、DVDと同じく直径12cm程度のディスク本体上の記録面に、センターホール1を中心として内周側から外周側に向けて、本実施例に係るリードインエリア101、データゾーン102及びリードアウトエリア103が設けられている。そして、各記録領域には、例えば、センターホール1を中心にスパイラル状或いは同心円状に、例えば、グルーブトラック及びランドトラック等のトラック10が交互に設けられている。このトラック10上には、データがセクタ11という単位で分割されて記録される。セクタ11は、記録データがエラー訂正可能なプリフォーマットアドレスによるデータ管理単位である。
尚、本発明の光ディスク100は、1層構造でなくてもよい。2層片面、即ち、デュアルレイヤー又は1層両面、即ち、ダブルサイドであってもよい。
次に、図2及び図3を参照して本発明の第1実施例に係る光ディスク100の記録層30における記録マーク20の詳細な物理構造について説明する。ここに、図2は本発明の第1実施例に係る光ディスクの一部を、レーザ照射側から見た図式的拡大斜視図である。図3は本発明の第1実施例に係る光ディスクの層構造を示した図式的拡大断面図である。
図2及び図3に示されるように、第1実施例に係る光ディスク100は、基板32と、基板32上に積層された、誘電体層35、記録層30、誘電体層34、反射層31及び保護層33とを備えて構成されている。尚、これらの層の他、接着層等から構成される保護層33の下層側にカバー基板等が貼り付けられてもよい。
基板32には、その表面(図2中、下側の表面)に、レーザ光等のビームを誘導するためのガイド用トラックとしてのグルーブトラックG及びランドトラックLがエンボス加工等により形成されている。グルーブトラックG上には、記録マーク20が記録層30に形成されている。記録マーク20は、記録用レーザを照射することで、相変化によるピット(相変化により黒くされたピット)として構成されている。
但し、このようにグルーブトラックG上に記録マーク20を形成するに代えて又は加えて、ランドトラックL上に記録マーク20を形成してもよい。いずれにせよ、このような記録マーク20は、記録用レーザを照射することで、相変化によるピット(相変化により黒くされたピット)として構成されている。
尚、この基板32において、隣り合ったグルーブトラックGとグルーブトラックGとの間の領域をランドトラックLと呼ぶ。グルーブトラックG及びランドトラックLとの呼び名は、ベースとしての基板32から見て凹部をグルーブトラックGと呼び、凸部をランドトラックLと呼んでいることを付記しておく。即ち、光ピックアップの側から見ると、グルーブ(溝)が凸状部に相当し、ランド(丘)が凹状部に相当する。
加えて、本実施例では、リーダブルエンボスエリアEA内におけるグルーブトラックG上には、エンボスピットEP及びエンボススペースESがエンボス加工により形成されている。このようなエンボスピットEPは、例えば、アドレス情報等を記録するために、或いはクロック信号を検出するために利用可能である。但し、このようなエンボスピットEPは必ずしも必要ではなく省略可能である。
またグルーブトラックG及びランドトラックLについても、省略可能であり、省略した場合には、平坦な記録層30に対して、記録マーク20の記録が行われることになる。この場合には、トラッキングを容易ならしめるため、アドレスピット等を記録マークとは別に予め作成しておいてもよい。
このように光ディスク100は、データ記録層としての記録層30を備えた相変化型ディスクの一種として構成されている。
即ち、記録層30に記録マーク20が形成されることで、データが再生と共に消去可能に記録される。記録マーク20は、後述される第1記録マーク21、第2記録マーク22及び第3記録マーク23を含む。より詳細には、反射率の大きい結晶状態の記録層30に光ビームが照射され、部分的に記録層30が融解されると共に、急速に冷やされる。このことにより、記録層30が部分的にアモルファス状態にされることで、反射率を小さくさせることができる。この部分的にアモルファス状態にされた記録層30が記録マーク20である。他方、アモルファス状態の記録層30にレーザビームが照射され、部分的に記録層30が融解されると共に、ゆっくりと冷やされる。このことにより、記録層30が結晶状態に戻されることで、反射率を大きく戻すことができる。即ち、データが消去可能となる。
次に、基板32及び基板32上に形成された各層に関する材料、層厚等の詳細について更に説明する。
基板32の材料は、通常ガラス、セラミックスあるいは樹脂であり、樹脂基板が成形性、コストの点で好適である。樹脂の例としてはポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂などがあげられるが、成型性、光学特性、コストの点で優れるポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。また、基板の形状としてはディスク状、カード状あるいはシート状であってもよい。その厚みは、十分な強度と十分なデフォーカス特性が得られる等の観点から、例えばコンマ数mm〜数mm程度とされる。
記録層30は、“Ge”、“In”、“Sb”及び“Te”を主成分とし、“Ge”及び“In”の組成比、即ち原子パーセント比率は、“5:3”が好適であり、“Sb”及び“Te”の組成比は、“7:2”が好適である。記録層30の膜厚としては、ジッター等の初期特性、オーバーライト特性、量産効率等を考慮すると、10〜20(nm)が好適である。10nmより薄いと光吸収能が著しく低下し、記録層30としての役割を果たさなくなる。また、20nmより厚いと高速で均一な相変化が起こり難くなる可能性がある。このような記録層30は、各種気相成長法、たとえば真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーテイング法、電子ビーム蒸着法などによって形成できる。特に、RFスパッタリング法による形成が量産性、膜質等において優れている。
誘電体層34及び35は記録層30の両面に配置され、そのうち、誘電体層34は記録層30と反射層31の間に配置される。他方、誘電体層35は記録層30と基板32の間に配置される。誘電体層34及び35は、“ZnS”及び“SiO2”を主成分とし、“ZnS”及び“SiO2”の組成比は、“8:2”が好適である。誘電体層34の膜厚としては、10〜20(nm)が好適である。10nmより薄いと耐熱性保護層としての役割を果たさなくなると共に、記録層30に対して感度の低下を生じさせる可能性がある。他方、20nmより厚いと低速な線速度で使用した場合に界面剥離を生じさせる可能性があると共に、繰り返し記録させる性能が低下する可能性がある。誘電体層35の膜厚としては、記録及び再生で十分な信号特性を得るために、70〜90(nm)が好適である。このような誘電体層34及び35の形成は、記録層30と同様に、RFスパッタリング法によるのが量産性、膜質等において優れている。
反射層31は、誘電体層34とカバー基板33の間に配置される。反射層31は、“Ag”、“Nd”及び“Cu”を主成分とし、これら“Ag”、“Nd”及び“Cu”の組成比は、“98:1:1”が好適である。反射層31の膜厚としては、140〜160(nm)が好適である。このような反射層31の形成は、DCスパッタリング法によるのが量産性、膜質等において優れている。
尚、上述したパラメータ数値情報は、記録速度を、DVDのCLV方式で1倍速(3.49m/s)又は2倍速に対してより好適である。
次に図4から図6を参照して、本発明の第1実施例に係る光ディスクにおける再生パワー範囲、消去パワー範囲及び記録パワー範囲の一具体例について説明する。
ここに、図4は、比較例に係る、例えばDVD−R/W等の光ディスクの記録層における再生パワー範囲、消去パワー範囲及び記録パワー範囲の一具体例を示したグラフ図である。図5は、本発明の第1実施例に係る光ディスクの記録層における再生パワー範囲、消去パワー範囲及び記録パワー範囲の一具体例を示したグラフ図である。図6は、本発明の第1実施例及び、例えばDVD−R/W等の比較例に係る光ディスク等における再生パワー範囲、消去パワー範囲及び記録パワー範囲の一具体例の相関関係を示したグラフ図である。
図4、図5及び図6において、縦軸は、レーザのパワーの値を、単位をmW(ミリワット)として示し、横軸は、光ディスクの種類に加えて又は代えて例えば、再生用、消去用及び記録用等のレーザの種類を示す。即ち、横軸に定量的な意味は無い。
図4に示されるように、比較例に係る光ディスク、例えばDVD−R/Wの記録層は、再生パワー範囲Prが0.7mW以下となるように形成され、消去パワー範囲Pe1が、3.0mW以上であり且つ8.0mW以下となるように形成され、更に、記録パワー範囲Pw1が、7.5mW以上であり且つ14.0mW以下となるように形成されている。
このように、比較例に係る光ディスク、例えばDVD−R/W等に代表される書き換え型情報記録媒体は、同じデータを複数回、再生できることを目的として、且つ必要な時は消去できることを目的に情報記録媒体及び情報記録再生装置が設計及び構築されている。したがって、再生パワー範囲Prと消去パワー範囲Pe1との間に間隔、即ちマージンを設け、再生時に誤消去しないように設計及び構築されている。
これに対して、図5に示されるように、本発明の第1実施例に係る光ディスク、即ち、再生回数が一回だけに制限された光ディスクの記録層は、再生パワー範囲Prが原則として0.7mW以下となるように形成されている。更に、後述される消去パワー範囲Peと再生パワー範囲Prとを重ねるために、再生パワー範囲Prが0.2mW以上であり且つ0.7mW以下となるように、記録層は形成されてもよい。記録層は、消去パワー範囲Peが、0.2mW以上であり且つ1.0mW以下となるように形成され、記録パワー範囲Pwが、0.7mW以上であり且つ2mW以下となるように形成されている。
このように、本発明の第1実施例に係る光ディスクに対して、消去パワー範囲Peと再生パワー範囲Prとが重なった範囲内にあるパワーを有するレーザを、再生用レーザとして照射することで再生を行えば、記録情報を再生しつつ消去することが可能となる。特に、再生パワー範囲Prと消去パワー範囲Peとが、例えば、50%以上の割合で重なっていてもよい。また、消去パワー範囲Peが、再生パワー範囲Prを包含していてもよい。
また図4から図6に示すように、例えばDVD−R等の追記型情報記録媒体又は、例えばDVD−R/W等の書き換え型情報記録媒体の比較例における記録層の記録パワー範囲Pw1と本発明の第1実施例に係る光ディスクの記録層の記録パワー範囲Pwは重なっていない。従って、市販されている書き換え型又は追記型情報記録媒体のライターによって本発明の第1実施例に係る情報記録媒体に記録することはできない。このため、光ディスク100の提供者が意図しないような、記録情報の再記録が行われ、制限をかけた筈の再生回数を超えた不正な再生を未然防止できる。他方で、光ディスク100の回収者(例えば、提供者)は、図5に示した如き記録用レーザの照射によって記録情報を再記録することができ、光ディスク100の再利用が可能となる。
次に図7から図9を参照して、本発明の第1実施例に係る光ディスクの記録層における第1記録マークの特性について説明する。
先ず、図7を参照して、本発明の実施例に係る光ディスクの記録層における第1記録マークの形状とこの第1記録マークを形成するためのパルス状のレーザ(以下、「記録パルス」と称す。)との関係について説明する。ここに、図7(a)は、本発明の第1実施例に係る光ディスクの記録層における第1記録マークの形状を記録面側から見た外観上面図である。図7(b)は第1記録マークに対応する記録パルスを示したグラフ図であり、その縦軸は、記録パルスのパワーを示し、その横軸は時間を示す。尚、図7(a)中の矢印は、レーザ光の進行方向(即ち、トラックの接線方向)を指す。
図7(a)に示されるように、第1記録マーク21は夫々、レーザ光の進行方向に沿って、一定の幅で延びる平面形状を有する。
図7(b)に示されるように、第1記録マーク21を形成するために、記録パルスは、最初のトップパルスtop、照射時間を短く分割した複数のマルチパルスmp及びクーリングパルスclより構成されている。尚、トップパルスtopが照射されている時間間隔をTtop、マルチパルスmpが照射されている時間間隔をTmp、及び、クーリングパルスclが照射されている時間間隔をTclと定義する。
第1実施例において、トップパルスtop及びマルチパルスmpは、例えば、1.2(mW)の記録用レーザのパワーLwに設定されている。この記録用レーザのパワーLwで照射されていない時間間隔、即ち、休止期間では、例えば、0.6(mW)という消去用レーザのパワーLeより小さいバイアス用レーザのパワーLbに設定されている。クーリングパルスclは、記録パルスの最後に設けられ、休止期間と同様に、バイアス用レーザのパワーLbに設定されている。
特に、第1実施例においては、マルチパルスmpが照射される時間間隔Tmpは等間隔に設定されている。
このように設定されているので、第1記録マーク21においては記録用レーザのパワーPwによってマルチパルスmpが照射されている期間Tmpでの熱エネルギーによる温度上昇と、休止期間及びクーリングパルスclが照射されている期間Tclでの熱拡散とのバランスをとることが可能となる。よって、第1記録マーク21は、幅方向の温度分布が矢印で示されたトラック方向に対して等しくなり、図7(a)で示されるように、均等な幅を持った形状となる。
次に、図8を参照して、本発明の第1実施例に係る光ディスクにおける第1記録マークと光ビームとの再生時の位置関係及び時間経過にしたがったRF再生信号出力について説明する。ここに、図8(a)は、本発明の第1実施例に係る光ディスクにおける第1記録マークと光ビームとの再生時の位置関係を記録面側から見た外観上面図である。図8(b)は、第1記録マークにおける時間経過にしたがったRF再生信号出力を示したグラフ図であり、図8(b)の縦軸は、RF再生信号出力値を示し、横軸は時間を示す。尚、図8(a)中の矢印は、レーザ光の進行方向(即ち、トラックの接線方向)を指す。
図8(a)において、再生時には、第1記録マーク21上を、再生用レーザである光ビームLBが矢印方向に進む。図中、黒丸がレーザ光LBにより第1記録マーク21上に形成される光スポットを示している。本実施例では、第1記録マーク21の長さは例えば、1.5(μm)であり、幅は例えば、0.7(μm)である。他方、光ビームLBの記録面上における直径、即ち、光スポット径は、DVDの場合、半導体レーザの波長が例えば、650(nm)であり、NA(Numerical Aperture)が例えば、0.6であることから、約1.32(μm)と計算される。例えば、0.6(mW)の再生用レーザのパワーで照射された光ビームLBが図8(a)上の矢印方向に進むにしたがって、図8(b)で示されるように、RF再生信号が出力される。但し、第1記録マーク21は、光ビームLBの通過に伴って、図中、再生を完了した第1記録マーク21のみならず、再生中の第1記録マーク21内における光スポットを示す黒丸の後方に位置する白丸で示した領域部分が、再生と共に消去されるので、RF再生信号出力値は中盤において急激に減少し、後半部分においてはこの減少された値のまま維持される。尚、このRF再生信号出力値の減少を改善することを目的とした第2実施例については後述される。但し、仮にこのように後半部分においてRF再生信号出力が減少しても、図8(b)から分かるように、第1記録マーク21の再生は可能である。即ち、第1記録マーク21の長さの検出やRF再生信号出力値の相対的な大きさの検出は、なお可能である。
次に、図9を参照して、本発明の第1実施例における更なる作用効果について検討を加える。ここに、図9(a)は、第1実施例の光ディスクにおけるエンボスピットEP(ROMピット)と光ビームとの再生時の位置関係を記録面側から見た外観上面図である。図9(b)は、エンボスピットEP(ROMピット)における時間経過にしたがったRF再生信号出力を示したグラフ図であり、図9(b)の縦軸は、RF再生信号出力値を示し、横軸は時間を示す。
図2に示したように、第1実施例の光ディスク100は、リーダブルエンボスエリアEAを有しており、該リーダブルエンボスエリアEA内に、レーザ照射により消去不可能なエンボスピットEPを有する。
従って図9(a)に示すように、エンボスピットEP上を光ビームLBが矢印方向に進むと、図9(b)で示されるように一定出力のRF再生信号が出力され、図8(b)のように途中でRF再生信号が減少することはない。即ち、エンボスピットEPについては、0.6(mW)の再生用レーザのパワーで照射された光ビームLBの通過、即ち、再生と共には消去されないので、RF再生信号出力値は一定の値に維持される。更に、このようなエンボスピットEPは、何度でも再生可能であるので、1回だけ再生可能であり消去されるピットとは別に、エンボスピットEPを設けておくと、即ち、ハイブリッド型としておくと、当該光ディスク100における用途の多様性が広がる。エンボスピットEP上に記録膜を生成されていてもされていなくても、リードパワー、即ち再生用レーザのパワーは一定のイレースモード、即ち消去用レーザのパワーと同じなので、同様の効果が得られるが、記録膜の反射率が一般的に低いので、エンボスピットEP上に記録膜を生成したほうが、再生にとって好ましい。とくにエンボスピットEPの部分と再生回数が制限された部分が細かい領域で交互にある場合はとくに好ましい。
(第2実施例−第2記録マーク−)
次に図10及び図11を参照して、本発明の第2実施例に係る光ディスクにおける第2記録マークの特性について説明する。尚、第2実施例においては、図1〜図6において説明した基本的な物理特性及び構造等は第1実施例と同様である。
先ず、図10を参照して、本発明の実施例に係る光ディスクにおける第2記録マークの形状と記録パルスとの関係について説明する。ここに、図10(a)は、本発明の第2実施例に係る光ディスクにおける第2記録マークの形状を記録面側から見た外観上面図である。図10(b)は第2記録マークに対応する記録パルスを示したグラフ図であり、図10(b)の縦軸は、記録用レーザのパワーを示し、横軸は時間を示す。尚、図10(a)中の矢印は、レーザ光の進行方向(即ち、トラックの接線方向)を指す。
図10(a)に示されるように、第2記録マーク22は夫々、レーザ光の進行方向に沿って、幅が広がりつつ延びる平面形状を有する。
図10(b)に示されるように、第2記録マーク22を形成するために、記録パルスは、最初のトップパルスtop、照射時間を徐々に長くした複数のマルチパルスmp及びクーリングパルスclより構成されている。尚、Ttop、Tmp及びTclの定義は、前述した第1実施例を示した図7の説明と同様である。また、第2実施例において、トップパルスtop、マルチパルスmp、クーリングパルスcl及び休止期間における記録用レーザのパワーLw、消去用レーザのパワーLe及びバイアス用レーザのパワーLbについては第1実施例を示した図7の説明と同様である。
特に、第2実施例においては、マルチパルスmpが照射される時間間隔Tmpは徐々に大きくなるように設定されている。
このように設定されているので、第2記録マーク22においては記録用レーザパワーPwによってマルチパルスmpが照射されている期間Tmpでの熱エネルギーによる温度上昇が、休止期間及びクーリングパルスclが照射されている期間Tclでの熱拡散より大きくなることが可能となる。よって、第2記録マーク22は、幅方向の温度分布が矢印で示されたトラック方向に対して徐々に大きくなり、図10(a)で示されるように、トラック方向に対して徐々に幅が大きくなった形状となる。
次に、図11を参照して、本発明の第2実施例に係る光ディスクにおける第2記録マークと光ビームとの再生時の位置関係及び時間経過にしたがったRF再生信号出力について説明する。ここに、図11(a)は、本発明の第2実施例に係る光ディスクにおける第2記録マークと光ビームとの再生時の位置関係を記録面側から見た外観上面図である。図11(b)は、第2記録マークにおける及び時間経過にしたがったRF再生信号出力を示したグラフ図であり、図11(b)の縦軸は、RF再生信号出力値を示し、横軸は時間を示す。尚、図11(a)中の矢印は、レーザ光の進行方向(即ち、トラックの接線方向)を指す。
図11(a)において、再生時には、第2記録マーク22上を、再生用レーザである光ビームLBが矢印方向に進む。図中、黒丸がレーザ光LBにより第2記録マーク22上に形成される光スポットを示している。本実施例では、第2記録マーク22の長さは例えば、1.5(μm)であり、幅は例えば、0.7(μm)から0.9(μm)へと大きくなる。他方、光ビームLBの記録面上における直径、即ち、光スポット径は、第1実施例と同様に、約1.32(μm)と計算される。例えば、0.6(mW)の再生用レーザのパワーで照射された光ビームLBが図11(a)上の矢印方向に進むにしたがって、図11(b)で示されるように、RF再生信号が出力される。但し、第2記録マーク22は、光ビームLBの通過に伴って、図中、再生を完了した第2記録マーク22のみならず、再生中の第2記録マーク22内における光スポットを示す黒丸の後方に位置する白丸で示した領域部分が、再生と共に消去される。しかし、第2実施例では、第1実施例と異なり、第2記録マークが消去されることによって、RF再生信号出力が減少するのを予め計算にいれ、即ちこの信号の減少分を補償するため、第2記録マークの幅を徐々に大きくしているので、図11(b)に示したように、RF再生信号出力の減少を殆ど又は完全に無くす事ができる。
(第3実施例−第3記録マーク−)
次に図12及び図13を参照して、本発明の第3実施例に係る光ディスクにおける第3記録マークの特性について説明する。尚、第3実施例においては、図1〜図6において説明した基本的な物理特性及び構造等は第1実施例と同様である。
先ず、図12を参照して、本発明の実施例に係る光ディスクにおける第3記録マークの形状と記録パルスとの関係について説明する。ここに、図12(a)は、本発明の第3実施例に係る光ディスクにおける第3記録マークの形状を記録面側から見た外観上面図である。図12(b)は第3記録マークに対応する記録パルスを示したグラフ図であり、図12(b)の縦軸は、記録用レーザのパワーを示し、横軸は時間を示す。尚、図12(a)中の矢印は、レーザ光の進行方向(即ち、トラックの接線方向)を指す。
図12(a)に示されるように、第3記録マーク23は夫々、レーザ光の進行方向に沿って延びると共に幅が途中で広くなる平面形状を有する。
図12(b)に示されるように、第3記録マーク23を形成するために、記録パルスは、最初のトップパルスtop、照射時間を後半において極端に長くしたマルチパルスmp及びクーリングパルスclより構成されている。尚、Ttop、Tmp及びTclの定義は、前述した第1実施例を示した図7の説明と同様である。また、第3実施例において、トップパルスtop、マルチパルスmp、クーリングパルスcl及び休止期間における記録用レーザのパワーLw、消去用レーザのパワーLe及びバイアス用レーザのパワーLbについては第1及び第2実施例を示した図7及び図10の説明と同様である。
特に、第3実施例においては、マルチパルスmpが照射される時間間隔Tmpが後半において極端に大きくなるように設定されている。
このように設定されているので、第3記録マーク23においては記録用レーザパワーPwによってマルチパルスmpが照射されている期間Tmpでの熱エネルギーによる温度上昇が、休止期間及びクーリングパルスclが照射されている期間Tclでの熱拡散より後半において一様に大きくなることが可能となる。よって、第3記録マーク23は、中盤から後半にかけて幅方向の温度分布が矢印で示されたトラック方向に対して一様に大きくなり、図12(a)で示されるように、トラック方向に対して中盤から後半にかけて一様に幅が大きくなった形状となる。
次に、図13を参照して、本発明の第3実施例に係る光ディスクにおける第3記録マークと光ビームとの再生時の位置関係及び時間経過にしたがったRF再生信号出力について説明する。ここに、図13(a)は、本発明の第3実施例に係る光ディスクにおける第3記録マークと光ビームとの再生時の位置関係を記録面側から見た外観上面図である。図13(b)は、第3記録マークにおける時間経過にしたがったRF再生信号出力を示したグラフ図であり、図13(b)の縦軸は、RF再生信号出力値を示し、横軸は時間を示す。尚、図13(a)中の矢印は、レーザ光の進行方向(即ち、トラックの接線方向)を指す。
図13(a)において、再生時には、第3記録マーク23上を、再生用レーザである光ビームLBが矢印方向に進む。図中、黒丸がレーザ光LBにより第3記録マーク23上に形成される光スポットを示している。本実施例では、第3記録マーク23の長さは例えば、1.5(μm)であり、幅は例えば、0.7(μm)から0.9(μm)へと大きくなる。他方、光ビームLBの記録面上における直径、即ち、光スポット径は、第1実施例と同様に、約1.32(μm)と計算される。例えば、0.6(mW)の再生用レーザのパワーで照射された光ビームLBが図13(a)上の矢印方向に進むにしたがって、図13(b)で示されるように、RF再生信号が出力される。但し、第3記録マーク23は、光ビームLBの通過に伴って、図中、再生を完了した第3記録マーク23のみならず、再生中の第3記録マーク23内における光スポットLBを示す黒丸の後方に位置する白丸で示した領域部分が、再生と共に消去される。しかし、第3実施例では、第1実施例と異なり、第3記録マーク23が消去されることによって、RF再生信号出力が減少するのを予め計算にいれ、即ちこの信号の減少分を補償するため、第3記録マーク23の幅を後半において一様に大きくしているので、図13(b)に示したように、RF再生信号出力の減少を殆ど又は完全に無くす事ができる。
(情報再生装置)
次に図14を参照して、本発明の実施例に係る光ディスク100の情報再生装置について説明する。ここに、図14は本発明の実施例に係る光ディスク100の情報再生装置200の全体構成を示すブロック図である。
情報再生装置200は、光ディスク100、光ピックアップ202、スピンドルモータ203、ヘッドアンプ204、総和生成回路210、ピットデータ復調回路211、ピットデータ訂正回路212、バッファ213、インターフェース214、プッシュプル信号生成回路220、ローパスフィルタ221及びサーボユニット222を備えて構成されている。
光ディスク100には、第1クロック信号CK1に同期したピットデータDPが記録マーク20の長短によって記録されている。RF再生信号成分の第1クロック信号CK1は、前述の光ディスク100の各種実施例で説明したように、ウォブリング又はアンリーダブルエンボス等に応じて、ほぼ一定周期で変動する光ディスク100のRF再生信号成分から、当該情報再生装置200により生成可能な信号であり、本実施例では、ピットデータ復調回路211により生成される。尚、本実施例では、記録マーク20はピットとも解釈でき、トラックはこのピット列によって構成される。
情報再生装置200は、より具体的には、光ディスク100に対して再生ビームを照射するとともに反射光に応じた信号を出力する光ピックアップ202と、光ディスク100の回転を制御するスピンドルモータ203と、サーボユニット222を備える。サーボユニット222には、第1クロック信号CK1及びピット同期信号SYNCpが供給される。サーボユニット222は、これらの信号に同期して、スピンドルモータ203の回転を制御するスピンドルサーボ、光ピックアップ202の光ディスク100に対する相対的位置制御であるフォーカスサーボ及びトラッキングサーボを実行する。
光ピックアップ202は、再生ビームを照射するレーザーダイオード、図示しない4分割検出回路を備える。4分割検出回路は、再生ビームの反射光を図15の上方に示す領域1A、1B、1C、1Dに4分割し、各領域の光量に応じた信号を各々出力する。ヘッドアンプ204は、光ピックアップ202の各出力信号を各々増幅し、領域1Aに対応する分割読取信号1a、領域1Bに対応する分割読取信号1b、領域1Cに対応する分割読取信号1c、及び領域1Dに対応する分割読取信号1dを出力する。
総和生成回路210は、分割読取信号1a、1b、1c、及び1dを加算して、総和読取信号SRFを出力する加算回路からなる。なお、総和読取信号SRFは、記録マークの長短を表す信号である。
ピットデータ復調回路211は、総和読取信号SRFに基づいてピットデータDPを再生すると共に第1クロック信号CK1を生成する。より具体的にはピットデータ復調回路211は、ピット同期信号SYNCpを基準位置として、再生されたピットデータDPを所定のテーブルを用いて復調して再生データを生成する。例えば、変調方式としてEFM変調が採用される場合には、14ビットのピットデータDPを8ビットの再生データに変換する処理が施される。そして、再生データの順序を予め定められた規則に従って並べ換えるデスクランブル処理が実行されて、処理済の再生データが出力される。
このようにして得られた再生データは、ピットデータ訂正回路212へ供給され、そこで、エラー訂正処理や補間処理等が施された後、バッファ213に記憶される。インターフェース214はバッファ213に記憶されたデータを順次読み出して所定の出力形式に変換して外部機器へ出力する。
プッシュプル信号生成回路220は、(1a+1d)−(1b+1c)を算出して、プッシュプル信号を生成する。成分(1a+1d)は、読取方向に対して左側の領域1A及び1Dに対応する一方、成分(1b+1c)は、読取方向に対して右側の領域1B及び1Cに対応する。プッシュプル信号の値は再生ビームとピットの相対的な位置関係を表している。
プッシュプル信号はローパスフィルタ221を介してサーボユニット222へ出力される。サーボユニット222は、プッシュプル信号に基づいてトラッキング制御を実行する。
尚、上述の実施例では、情報記録媒体の一例として光ディスクについて説明したが、本発明は、このような光ディスクに限られるものではなく、他の高密度記録或いは高転送レート対応の各種情報記録媒体にも適用可能である。また、上述した実施例によれば、記録された記録情報を一回だけ再生可能な情報記録媒体を示したが、膜厚を変えるなどにより複数回の再生により記録情報が消去されるものであっても良い。
本発明は、上述した実施例に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う情報記録媒体もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。