JP4257179B2 - 成形加工用t4処理アルミニウム合金圧延板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は自動車のボディシートや航空機部品などの輸送用機器部品、あるいは各種電子電気機器の筐体や部品などに使用される成形加工用アルミニウム合金圧延板およびその製造方法に関するものであり、特に溶体化処理−冷却(焼入れ)後、室温に放置して成形加工に供し、さらに成形加工後に塗装焼付処理(塗装ベーク)を行なって硬化(ベークハード)するT4処理アルミニウム合金圧延板およびその製造方法に関するものである。
自動車のボディシートには、従来は主として冷延鋼板を使用することが多かったが、最近では車体軽量化等の観点から、アルミニウム合金圧延板を使用することが多くなっている。一般に自動車のボディシートは、プレス加工を施し、さらに塗装ベークを施して使用することから、成形加工性が優れていること、また成形加工時における表面歪模様(いわゆるリューダースマークやパラレルバンド)の発生がないこと、さらに塗装ベーク後にも高強度を有すること等が要求される。
従来このような自動車ボディシート向けのアルミニウム合金としては、Al−Mg系合金やAl−Mg−Si系合金が使用されている。
これらのうち、Al−Mg系合金は、強度と延性のバランスに優れ、成形性も良好であるが、本来Al−Mg系合金は非熱処理型合金であって、通常のプレス加工で硬化(加工硬化)はしても、その後の塗装ベーク時に回復軟化が生じ、そのため塗装ベーク後の強度として高強度を得難く、その点が自動車用ボディシート材料として欠点となっていた。
一方Al−Mg−Si系合金は、成形性は一般にAl−Mg系合金より劣るが、本来熱処理型の合金であって時効性を有するため、塗装ベーク時に析出硬化による強度増加(ベークハード)を生じさせることができ、そのため塗装ベーク後の強度として高強度を得ることができる。
そこで、成形性の優れたAl−Mg系合金についても、Al−Mg−Si系合金と同様に塗装ベーク時に析出硬化により硬化する性質、すなわちベークハード性を付与することが可能となれば、自動車用ボディシート等の材料として極めて有用なものが得られる筈である。
ところで従来から、Al−Mg系合金については、Cuを添加することにより塗装ベーク時の軟化防止、さらにはベークハード性の付与を図り得ることが知られており、例えば特許文献1〜特許文献6等において提案されている。
しかしながらこれらの提案によるCu添加型Al−Mg系合金ボディシート材は、ベークハード性の点では未だAl−Mg−Si系合金のボディーシート材には及ばない。したがって、Al−Mg−Si系合金に劣らないベークハード性を有するAl−Mg系合金の開発が望まれている。例えばAl−Mg−Si系合金の場合は、溶体化処理−焼入れを行なった材料に対して、2%の加工歪を与えた後、170℃×30分のベークを行なえば、195MPa〜200MPaもの耐力を有する高強度の材料が得られることが知られ(非特許文献1)ており、そこでベークハード可能なAl−Mg系合金としても、これと同等のベークハード後耐力を有する材料の開発が求められている。
なおCu含有量の多いAl−Cu−Mg系合金に関しては、Agの添加が析出硬化を促進するとの報告(非特許文献2)があるが、Cuを添加したAl−Mg系合金のベークハード性に対するAg添加の影響については報告されておらず、特に高延性や成形歪模様の発生防止など、自動車用ボディシート材として求められる総合的な性能を適切に制御することについては、これまで全く解明されていなかったのが実情である。
特公平4−80979号公報 特許第2595836号公報 特許第2856936号公報 特許第2997145号公報 特許第2997146号公報 特許第2997156号公報 アルミニウムの製品と製造技術、軽金属学会、(2001),229. S.P.RINGER et Al.:Acta Mater.、45−9(1997)、3731
この発明は以上の事情を背景としてなされたもので、従来のAl−Mg系合金を改良して、Al−Mg−Si系合金ボディシート材なみの良好なベークハード性を有していて、塗装ベーク後に充分な高強度を示し、かつ延性や成形性にも優れ、さらにはプレス成形によってリューダースマーク等の表面歪模様も発生しにくいAl−Mg系ベースのアルミニウム合金からなる成形加工用アルミニウム合金T4処理圧延板を提供することを目的とするものである。
前述のような課題を解決するためAl−Mg系ベースのT4処理圧延板について鋭意実験・検討を重ねた結果、Cu、Agを適切な量だけ添加するとともに、Mg/Cu比と、不純物としてのFe量、Si量を適切に規制し、さらには平均結晶粒径を適切に規制することによって、延性や成形性を損なうことなくベークハード性をAl−Mg−Si系合金なみに向上させることが可能となり、またプレス加工時における表面歪模様の発生も防止できることを見出し、さらにはこのような優れた性能を有するT4処理圧延板を製造するためのプロセスとして、溶体化処理−焼入れの適切な条件を見出し、この発明をなすに至った。
具体的には、請求項1の発明の成形加工用T4処理アルミニウム合金圧延板は、Mg2.8〜4.8%、Cu0.7〜1.7%、Ag0.1〜0.5%を含有し、かつMg量(%Mg)とCu量(%Cu)との比(%Mg)/(%Cu)の値が2.8以上であり、さらに不純物としてのFeおよびSiがそれぞれ0.3%未満に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金からなり、かつ平均結晶粒が30〜100μmの範囲内にあることを特徴とするものである。
また請求項2の発明の成形加工用T4処理アルミニウム合金圧延板は、Mg2.8〜4.8%、Cu0.7〜1.7%、Ag0.1〜0.5%を含有し、かつMg量(%Mg)とCu量(%Cu)との比(%Mg)/(%Cu)の値が2.8以上であり、さらにMn、Cr、Zrのうちから選ばれた1種または2種以上を合計で0.05〜0.3%含み、また不純物としてのFeおよびSiがそれぞれ0.3%未満に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金からなり、かつ平均結晶粒が30〜100μmの範囲内にあることを特徴とするものである。
さらに請求項3の発明は、請求項1もしくは請求項2に記載の成形加工用T4処理アルミニウム合金圧延板において、板の導電率(IACS%)が、Mg量(%Mg)、Cu量(%Cu)、Ag量(%Ag)に応じて、
導電率≦52−{4×(%Mg)+2×(%Cu)+2×(%Ag)}
を満たすことを特徴とするものである。
また請求項4の発明の成形加工用T4処理アルミニウム合金圧延板の製造方法は、請求項1もしくは請求項2に記載の成分組成のアルミニウム合金を素材とし、鋳造後、熱間圧延および冷間圧延により所要の板厚として、530〜560℃の範囲内の温度に5秒〜60分保持する溶体化処理を施した後、5℃/秒以上100℃/秒未満の冷却速度で冷却して、請求項1〜請求項3のいずれかの請求項に記載の圧延板を得ることを特徴とするものである。
そしてまた請求項5の発明の成形加工用T4処理アルミニウム合金圧延板製造方法は、請求項1もしくは請求項2に記載の成分組成のアルミニウム合金を素材とし、鋳造後、熱間圧延および冷間圧延により所要の板厚として、530〜560℃の範囲内の温度に5秒〜60分保持する溶体化処理を施した後、100℃/秒以上200℃/秒以下の冷却速度で冷却して、請求項1〜請求項3のいずれかの請求項に記載の圧延板を得ることを特徴とするものである。
この発明の成形加工用T4処理アルミニウム合金圧延板は、熱処理型合金として時効性を有するAl−Mg−Si系合金なみの良好なベークハード性を有していて、塗装ベーク後に自動車用ボディシート材等として充分な高強度を示し、また延性、成形性に優れ、さらにはプレス加工による表面歪模様の発生をも防止することができる。またこの発明の成形加工用T4処理アルミニウム合金圧延板の製造方法によれば、上述のような優れた性能を有する板を、確実かつ安定して製造することができる。
この発明のT4処理アルミニウム合金圧延板においてベースとなる基本的な合金系は、熱処理型合金であるAl−Mg−Si系合金とは異なり、成形性等を阻害するSi量を抑制したAl−Mg系合金であり、このようなAl−Mg系合金は、通常は時効性を持たない非熱処理型合金であるが、この発明では、特にCuおよびAgを適量添加し、T4処理状態(溶体化−焼入れのまま室温に放置した状態)で、成形加工および塗装ベークを行なった時に析出硬化を生じていわゆるベークハード性を示し、塗装ベーク後にAl−Mg−Si系合金なみの高強度を示すようにしている。
そこでこの発明の成形加工用T4処理アルミニウム合金圧延板における合金成分組成の限定理由について説明する。
Mg:
Mgはこの発明で対象としている系の合金で基本となる合金元素であり、固溶強化により強度向上に寄与するばかりでなく、この発明の場合は特に塗装ベーク時(典型的には160〜200℃程度の温度での加熱)における析出硬化による強度向上(ベークハード性向上)に寄与する主要添加元素であり、また延性の向上にも効果を有する。Mg量が2.8%未満では、溶体化処理−冷却のままの状態、すなわちT4処理状態で延性が不充分となり、また塗装ベーク後の強度も不足する。一方Mg量が4.8%を越えれば、熱間加工性が低下して、健全な板材を製造することが困難となるから、Mg量は2.8〜4.8%の範囲内とした。
Cu:
Cuも固溶強化により強度向上に寄与するばかりでなく、塗装ベーク時の析出硬化による強度向上(ベークハード性向上)に寄与する元素である。Cu量が0.7%未満では、強度向上、ベークハード性向上が充分ではなく、一方Cu量が1.7%を越えれば、熱間加工性が低下し、また溶体化処理−冷却後の材料を室温で保管した場合に析出硬化が生じて機械的特性の経時変化が大きくなってしまう。したがってCu量は0.7〜1.7%の範囲内とした。
Mg/Cu比:
Mg量、Cu量を、それぞれ単独で上記の範囲内に調整するばかりでなく、相対的な比(%Mg/%Cu比)も規制する必要がある。Mg/Cu比が2.8未満では室温での経時変化が生じやすくなり、室温での放置後に延性が低下してしまうおそれがある。そこでMg/Cu比を2.8以上に規制すこととした。
Ag:
Agは塗装ベーク時における析出硬化を促進してベークハード性を向上させ、塗装ベーク後にAl−Mg−Si系合金なみの高強度を得るために必要な元素である。またAgは、塗装ベーク温度での析出硬化は促進しながらも、室温での析出硬化による経時変化を抑制する効果を有する。Ag量が0.1%未満ではこれらの効果が充分に発揮されず、一方Ag量が0.5%を越えれば、ベークハード性の向上の度合は少なくなり、高価なAg添加コストとベークハード性向上効果との兼ね合いから不経済となる。そこでAg量は0.1〜0.5%の範囲内とした。なお、この発明の場合よりもCu添加量が多いAl−Cu−Mg系合金については、非特許文献2に示すように、既にAg添加による析出硬化促進効果について報告がなされているが、ボディシートなどの成形加工用に有用なMgリッチ(Mg/Cu比が2.8以上)の板材については先例がなく、特にMg/Cu比を2.8以上として室温での経時変化の抑制、ひいては延性の維持、安定化を図った成形加工用素材として有用なものはこの発明によって初めて実現された。
Fe、Si:
これらはいずれもこの発明では不純物とし、それぞれ0.3%未満に規制する。Fe量、Si量が0.3%を越えれば成形性が低下し、この発明の基本的な目的、すなわち成形性を損なうことなくベークハード性を向上させる目的を損なう。またSiを0.3%以上含む場合、板製造段階においてMgSiの粗大粒子が生成されて、これが溶体化処理時に完全には固溶せずにマトリックス中に残り、その結果塗装ベーク時における析出硬化性が低下して、ベークハード性が低下するおそれがある。そこでFe量、Si量はいずれも0.3%未満に規制することとした。なおFe量、Si量は、0.3%以下の範囲内でも特に0.15%以下に規制することが好ましい。このようにFe量、Si量を0.15%以下に規制することは、99.7%程度の普通純度のアルミニウム地金を用いることによって達成可能である。
Mn、Cr、Zr:
前述の各元素のほか、さらに結晶組織の安定化のために、Mn、Cr、Zrのうちの1種または2種以上を添加しても良い。これらの元素の合計添加量が0.05%未満ではこれらの添加効果が得られず、一方合計量が0.3%を越えれば結晶粒が適正範囲より小さくなってしまって、プレス加工において表面歪模様が発生してしまうおそれがあるから、Mn、Cr、Zrの1種または2種以上を添加する場合のこれらの元素の合計量は0.05〜0.3%の範囲内とした。なおこのようなMn、Cr、Zrの合計添加量範囲は、積極的に添加する場合の範囲として示したものであり、0.05%より少ない合計量でこれらを不純物として含有する場合を排除するものではない。
以上の各元素のほかは、基本的にはAlおよび不可避的不純物とすれば良い。
なお通常のアルミニウム合金の鋳造時においては、鋳造組織微細化剤としてAl−Ti−B合金を添加することが多いが、この発明の場合もこれらの微細化剤に起因する成分としてTi、Bを含有することは許容される。但しその場合のTi量は0.1%以下、B量は0.02%以下が好ましい。
さらにこの発明の成形加工用T4処理アルミニウム合金圧延板では、合金の成分組成を前述のように調整するばかりでなく、平均結晶粒径を30〜100μmの範囲内に調整することも重要である。ここで、T4処理板の平均結晶粒径が30μm未満では、成形加工時に表面歪模様、例えばリューダースバンドやパラレルバンドが生じて、成形品の外観不良を招くおそれがある。一方平均結晶粒径が100μmを越えれば、成形加工時に肌荒れが生じやすくなり、外観を損なうばかりでなく、曲げ性の低下を招くおそれがある。そこでT4処理板の平均結晶粒径を30〜100μmの範囲内に規制することとした。
そしてまたこの発明に成形加工用T4処理アルミニウム合金圧延板においては、板の導電率(IACS%)が、Mg量(%Mg)、Cu量(%Cu)、Ag量(%Ag)に応じて、次の式1
導電率≦52−{4×(%Mg)+2×(%Cu)+2×(%Ag)} ・・式1
を満たしていることが望まれ、これを規定したのが請求項3である。このように導電率を規定した理由は次の通りである。
一般に材料の導電率は、材料中における元素の固溶量の影響を受け、固溶量が大きいほど、導電率は低くなる傾向を示すから、導電率は材料中の固溶元素の固溶量の指標となる。一方、この発明の合金においては、Mg、Cu、Agは析出硬化に寄与する元素であり、塗装ベークのような短時間時効ではこれらの3元素を含むクラスタが形成されることにより強度向上(ベークハード)が生じる。このようなクラスタの形成には、これらの3元素が材料中の含有成分として添加されているだけでは不充分であって、溶体化処理によって充分な量が固溶された状態となっていることが必要である。そこで、充分なベークハード性を得るために必要なこれらの3元素の固溶量を確保するための指標となる条件として、式1を規定した。式1が満たされない場合は、ベークハードに寄与する元素(Mg、Cu、Ag等)の元素の固溶が不充分で、塗装ベーク時において析出硬化が充分に行なわれず、ベークハード性が低くなってしまう。
ここで、式1は、Mg量、Cu量、Ag量が多い場合にはそれだけ導電率を小さく規制する必要があること、すなわちこれらの元素の固溶量を多くすることが必要であることを表わす。すなわち、これらの析出硬化に寄与する3元素を多く添加した合金組成でも、製造条件等により固溶が不充分な場合には、期待通りの高いベークハード性は得られない。式1のように導電率を制御することにより、3元素の添加を少なくしても、必要なベークハード性が確保されることになり、熱間加工性や耐食性、経済性の点で有利となるからである。なお%Mg、%Cu、%Agに付されている係数(4または2)は、各合金元素が固溶した状態で導電率に与える影響度の点から定めた。
上述のように導電率、ひいては固溶量を制御するためには、溶体化処理の条件が重要であり、溶体化処理温度が低い場合等については固溶が不充分となるから、請求項4、請求項5に示すように製造プロセスにおける溶体化処理条件を適切に定めている。またこれに加えて、固溶を阻害する要因としてはMg、Cu、Ag以外の含有元素の影響も考慮する必要がある。特に材料中のSi量が多い場合には、SiがMgと結合したMg−Si系の比較的粗大な粒子が形成されて、溶体化処理時にMgの固溶が不充分となり、式1で規定する導電率の条件を満たさなくなり、ベークハード性の低下を招く。したがってこの発明では既に述べたようにSi量の規制もベークハード性向上の目的との関係で重要である。
次にこの発明の成形加工用T4処理アルミニウム合金圧延板の製造方法について説明する。
この発明の製造方法では、溶体化処理前までの圧延板とするための工程・条件は特に詳細に限定されるものではない。例えばDC鋳造法等の通常の鋳造法によって前記成分組成の合金を鋳造し、得られた鋳塊に均質化処理を施した後、面削して熱間圧延を行ない、さらに冷間圧延を行なって所要の板厚の圧延板とすれば良く、またここで熱間圧延の後、あるいは冷間圧延の中途において中間焼鈍を施しても良い。なお溶体化処理に供する圧延板の厚みは特に限定されるものではないが、自動車用ボディシート等の成形加工用途では通常は0.5〜2.5mm程度が好ましい。
所要の板厚とされた圧延板に対しては、溶体化処理を施し、溶体化処理後直ちに冷却(焼入れ)する。溶体化処理は、既に述べたところから明らかなように、ベークハードに寄与するMg、Cu、Ag等の元素を固溶させるために重要な工程であり、530〜560℃の範囲内の温度で5秒〜60分保持する必要がある。溶体化処理の加熱温度(材料温度)が530℃未満では前述のようなベークハードに寄与する有効元素の固溶が充分に行なわれず、充分なベークハード性が得られない。一方溶体化処理温度が560℃を越えれば材料に局部的溶融が生じるおそれがある。また溶体化処理の保持時間が5秒未満の場合も有効元素の固溶が不充分となって充分なベークハード性が得られず、一方60分を越える長時間保持してもそれ以上はベークハード性の向上等に効果はなく、エネルギおよび処理時間の点から好ましくない。
溶体化処理後には直ちに冷却(焼入れ)を行なう。溶体化処理後の冷却は、冷却速度5℃/秒以上100℃/秒未満で行なう(第1の方法:請求項4のプロセス)か、あるいは冷却速度100℃/秒以上2000℃/秒未満で行なう(第2の方法:請求項5のプロセス)。冷却速度が5℃/秒未満では、冷却中に粒界などに析出が生じて、後の塗装ベーク時に析出硬化に寄与する有効元素の固溶量が不充分になる。一方2000℃/秒以上の高い冷却速度では、歪の小さい板材を工業的に製造することが困難となる。
ここで、溶体化処理後の冷却を第1の方法、すなわち5℃/秒以上100℃/秒未満の冷却速度で行なう場合は、材料の焼入れ時の変形が小さく、形状性の良好な板材を安定して得ることができる。但しこの場合は冷却時にも若干の析出硬化が生じることがあり、そのためT4処理材での耐力が高めとなる傾向がある。この第1の方法を実施するための具体的な手段としては、冷風による強制空冷が代表的なものであり、空冷を用いたCAL(連続焼鈍ライン)装置では、コイルの連続処理が可能となる。
一方、溶体化処理後の冷却を第2の方法、すなわち100℃/秒以上2000℃/秒以下の冷却速度で行なう場合は、T4処理材の耐力を低く抑えられるため、プレス成形時にスプリングバックが少ない板材を製造したい場合に適する。但し、この場合には冷却時に歪が生じやすい。この場合の具体的手段としては、水焼入れが代表的である。水焼入れは、バッチ式で実施してもよいが、水冷式の連続焼入れ装置を用いることにより連続処理も可能となる。またそのほか、強制空冷、ミスト焼入れ、スプレー焼入れ、水焼入れなどを組合せて行なっても良い。
溶体化処理−冷却(焼入れ)の後には、必要によりテンションレベリング、ローラレベリングなどの方法により歪矯正を行なっても良い。この歪矯正を行なうことにより、成形加工時におけるリューダースマークの発生防止の効果を奏することができる。
溶体化処理−冷却後の材料は、プレス成形等の成形加工が施されるまでの間、実質的に室温に保持されることになり、その間に若干の室温時効硬化を生じていわゆるT4処理状態となる。このような室温保持中における経時的な機械的特性の変化(耐力の上昇など)が大きければ、成形性のばらつきが生じる原因となる。そこでこのような経時変化を抑えるために、溶体化処理−冷却後の材料は30℃以下で保管することが望ましい。
表1の合金符号A〜Lに示す種々の成分組成の合金を、通常のDC鋳造法により鋳塊とし、500℃×10hの均質化処理の後、熱間圧延により厚さ2.5mmとし、さらに冷間圧延により1mm厚の板材とした。得られた各板材について溶体化処理を施して直ちに焼入れた。溶体化処理はソルトバスを用い、焼入れは、水焼入れと、ファンにより冷風を当てて冷却する強制空冷のいずれかで行なった。このような方法は、CAL(連続焼鈍ライン)での処理を模して試験レベルで熱処理を行なう際の一般的な方法である。溶体化処理の条件、焼入れの具体的手段および条件を表2、表3に示す。
溶体化処理−焼入れを行なった各板材について、室温で20℃で1週間保持してT4処理状態とし、そのT4処理材について、平均結晶粒径の測定および導電率の測定を行ない、また引張試験を行なって機械的特性(引張り強さ、耐力、伸び、降伏伸び)を調べ、さらに成形性評価として曲げ性および限界絞り比(LDR)を調べた。また一部のものについては、前述のように溶体化処理−焼入れ後20℃で1週間室温保持してから、さらに同じく20℃で1ケ月室温放置したときの耐力上昇を調べた。また前述のように20℃で1週間室温保持した材料(T4処理材)について、ベークハード性(BH後耐力)を調べた。これらの結果お表4、表5に示す。
ここで平均結晶粒径は、長手方向断面の組織観察により切断法により測定した。また導電率評価としては、板自体の導電率を測定して式1の左辺値C1とし、また合金のMg量、Cu量、Ag量から式1の右辺値C2を求め、これらのC1、C2の大小関係を評価した。さらに引張試験は、圧延板の長手方向にJIS5号試験片を採取して測定した。そしてまた引張試験の際に、S−Sカーブから、耐力値付近で応力の上昇を伴わずに変形が起こる降伏伸びの大きさを測定し、この降伏伸びを成形加工時のリューダースバンドによる表面模様形成の指標とした。
また曲げ性は、予歪として4%の引張変形を与えた後に、内側のR0.5mmとなるよう180°曲げして、目視により表面のクラックの有無を調べ、クラックが発生した場合をNG、クラックが全く発生しない場合をOKとして評価した。限界絞り比(LDR)は、ポンチ寸法がφ50mmでR5mmの金型を用い、グラファイトグリースを潤滑材として測定した。
T4処理材のベークハード性については、プレス成形による加工歪を想定して2%の引張変形を与えた後、170℃×20minのベークを加えた後の耐力(BH後耐力)を測定して評価した。なおこのベークハード性評価では、6000系(Al−Mg−Si系)合金のボディシート材で達成されている195MPa程度のBH後耐力値を評価基準値とした。
Figure 0004257179
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この発明の条件範囲内の実施例1〜実施例9の場合は、組成および結晶粒径、導電率を適切に制御することにより、ベークハード後耐力(BH後耐力)195MPa以上を達成することができ、成形性なども良好な水準に達した。また降伏伸びもほとんど見られないことからリューダースバンドによる成形品表面模様発生の問題も生じないと考えられる。
これに対し、成分組成はこの発明の範囲内でありながら、溶体化処理温度の低かった比較例1、2では、導電率が式1を満たさず、ベークハード性が低下した。またこれらのうち比較例2では、結晶粒径がこの発明の規定より小さくなって、1%に近い降伏伸びが発生し、プレス成形時の表面模様の防止の点から不適当となった。
さらにこの発明で規定する溶体化処理温度の上限付近で、規定を越えた溶体化処理保持時間を適用した比較例3では、100μmを越えた結晶粒径となり、曲げ性が低下して成形時の肌荒れも顕著になった。また溶体化処理温度上限の560℃を越えた温度で溶体化処理を行なった比較例4では、局部的な溶融により焼入れ時に材料が割れを起こし、健全な板が得られなかった。
また一方、Mg量が低く、Mg/Cu比<2.8の合金Fを用いた比較例5では、ベークハード耐力が低いにもかかわらず、室温保持1ケ月での耐力上昇が大きくなり、また伸びとLDRも低くなった。逆にMg量が上限を越える合金Gを用いた比較例6では、DC鋳造は可能であったが、圧延時に割れが顕著で健全な板材が得られなかった。
またCu量が下限値より少ない合金Hを用いた比較例7では、ベークハード性が低くなってしまった。さらにCu量が上限を越える合金Iを用いた比較例8では、伸びや成形性が劣るに加え、室温での耐力の経時変化が大きく、成形性安定性の点から不適当となった。また合金Iを用いて本発明範囲内の高めの溶体化処理温度555℃で溶体化処理を行なった比較例9では、局部溶融が起こり、材料表面に割れが生じて健全な板が得られなかった。
さらに比較例10は、Ag添加の少ない合金Jを用いた例であり、この場合は充分なベークハード性が得られなかった。またSi量が多い合金Kを用いた比較例11では、導電率が式1を満たさず、充分なベークハード性が得られなかった。これは強化に有効なMgがSiと結合して粗大な粒子MgSiを形成し、請求項4、5で規定する溶体化処理条件内でもMgの固溶が不充分となったためと考えられる。またこの比較例11では、Si量が多いことにより、伸びや曲げ性も劣った。さらに、Fe量の多い合金Lを用いた比較例12は、Feが粗大な晶出物粒子を形成しやすいため、伸び、曲げ性、成形性が劣ってしまった。

Claims (5)

  1. Mg2.8〜4.8%(mass%、以下同じ)、Cu0.7〜1.7%、Ag0.1〜0.5%を含有し、かつMg量(%Mg)とCu量(%Cu)との比(%Mg)/(%Cu)の値が2.8以上であり、さらに不純物としてのFeおよびSiがそれぞれ0.3%未満に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金からなり、かつ平均結晶粒が30〜100μmの範囲内にあることを特徴とする、ベークハード性に優れた成形加工用T4処理アルミニウム合金圧延板。
  2. Mg2.8〜4.8%、Cu0.7〜1.7%、Ag0.1〜0.5%を含有し、かつMg量(%Mg)とCu量(%Cu)との比(%Mg)/(%Cu)の値が2.8以上であり、さらにMn、Cr、Zrのうちから選ばれた1種または2種以上を合計で0.05〜0.3%含み、また不純物としてのFeおよびSiがそれぞれ0.3%未満に規制され、残部がAlおよび不可避的不純物よりなるアルミニウム合金からなり、かつ平均結晶粒が30〜100μmの範囲内にあることを特徴とする、ベークハード性に優れた成形加工用T4処理アルミニウム合金圧延板。
  3. 板の導電率(IACS%)が、Mg量(%Mg)、Cu量(%Cu)、Ag量(%Ag)に応じて、
    導電率≦52−{4×(%Mg)+2×(%Cu)+2×(%Ag)}
    を満たすことを特徴とする、請求項1もしくは請求項2に記載のベークハード性に優れた成形加工用T4処理アルミニウム合金圧延板。
  4. 請求項1もしくは請求項2に記載の成分組成のアルミニウム合金を素材とし、鋳造後、熱間圧延および冷間圧延により所要の板厚として、530〜560℃の範囲内の温度に5秒〜60分保持する溶体化処理を施した後、5℃/秒以上100℃/秒未満の冷却速度で冷却して、請求項1〜請求項3のいずれかの請求項に記載の圧延板を得ることを特徴とするベークハード性に優れた成形加工用T4処理アルミニウム合金圧延板の製造方法。
  5. 請求項1もしくは請求項2に記載の成分組成のアルミニウム合金を素材とし、鋳造後、熱間圧延および冷間圧延により所要の板厚として、530〜560℃の範囲内の温度に5秒〜60分保持する溶体化処理を施した後、100℃/秒以上200℃/秒以下の冷却速度で冷却して、請求項1〜請求項3のいずれかの請求項に記載の圧延板を得ることを特徴とする、ベークハード性に優れた成形加工用T4処理アルミニウム合金圧延板の製造方法。
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