JP4256400B2 - 信号処理装置 - Google Patents

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本発明は、複数チャネルの信号を入力して雑音を抑圧し目的信号のみを抽出する処理を行う信号処理装置に係り、特に音声認識装置やテレビ会議装置などの音声入力のためにマイクロホンアレイを用いて雑音を抑圧し目的の音声を抽出するマイクロホンアレイ処理装置に適した信号処理装置に関する。
配列された複数のマイクロホンからなるマイクロホンアレイを用い、このマイクロホンアレイの出力信号を処理することにより、雑音を抑圧して目的音源からの目的信号のみを抽出するマイクロホンアレイ処理装置は、音声認識装置やテレビ会議装置などにおける音声入力を目的として開発が進められている。中でも、少ないマイクロホン数で大きな雑音抑圧効果が得られる適応ビームフォーマを利用したマイクロホンアレイ処理装置については、例えば文献1:電子情報通信学会編「音響システムとデジタル処理」や、文献2:Heykin著、“Adaptive Filter Theory(Plentice Hall) ”に述べられているように、一般化サイドローブキャンセラ、フロスト型ビームフォーマおよび参照信号法など、種々の方法が知られている。
適応ビームフォーマ処理は、基本的には雑音源の方向に死角を有する指向性ビームを形成したフィルタにより雑音を抑圧する処理であり、その中でも特に一般化サイドローブキャンセラ(GSC)は、比較的性能が良いことで知られている。しかし、GSCでは設定された目的音源の方向とずれた方向から目的信号が到来した際に、目的信号がキャンセルされて劣化するという問題点がある。これを防ぐため、設定された目的音源方向の近傍の方向から到来する信号があったときにはGSCの適応を停止させる必要がある。そこで、例えば文献3:Julie E.Greenburg et.al.: “Evaluation of anadaptive beamforming method for heating aids”,pp.1662-1676,Jarnul of Acous.Soc.of Am.91(3),1992に開示されている補聴器用のマイクロホンアレイ処理装置では、二つのマイクロホン出力信号間の相関に基づいたしきい値処理により適応停止を実現している。
しかしながら、このようにGSCの適応停止を相関に基づいて行う方法では、最適なしきい値の設定は難しい。すなわち、二つのマイクロホン出力信号間の相関の値は、目的音源の方向が同じで目的信号が一定方向から到来する場合でも、目的信号の強度や雑音の状況により変化するため、目的信号の到来を許容する角度範囲を精度よく設定することができない。従って、例えば音声入力中に雑音の状況が変わった場合、今まで入力できていた音声が一時的に入力できなくなることがあり、安定性の面で問題がある。
また、適応ビームフォーマは設定した目的音源の方向と実際の目的信号到来方向がずれた場合、周波数特性が平坦とならずに歪むことがある。このような周波数特性の歪みが存在すると、例えば適応ビームフォーマを音声認識の前処理に使う場合、認識性能を低下させるおそれがある。この問題に対しては、多数のセンサを用いて音源方向を推定する方向検出処理に基づいて、適応ビームフォーマに設定される目的音源の方向を定めることにより、設定される目的音源の方向を目的信号の実際の到来方向に自動追随させる方法が提案されている。方向検出処理の他の方式として、高分解能方式と呼ばれる手法も知られている。
しかし、センサを用いて目的音源の方向を推定する方法は、センサ数が例えば2個と少ない場合には精度よく目的音源の方向を検出するのは困難であり、また高分解能方式では入力信号の相関行列の推定と空間走査処理のために目的音源の方向検出に要する演算量が多くなるという問題がある。
上述したように、従来のGSCを用いた適応ビームフォーマ処理により雑音を抑圧するマイクロホンアレイ処理装置において、設定された目的音源方向とずれた方向から目的信号が到来した際に目的信号がキャンセルされて劣化する現象を防ぐために、二つのマイクロホン出力信号間の相関に基づいたしきい値処理により、設定された目的音源方向の近傍の方向から到来する信号があったときGSCの適応を停止させる方法は、目的信号が一定方向から到来する場合でも相関の値が目的信号の強度や雑音の状況により変化するため、目的信号の許容到来角度範囲を精度よく設定することができず、音声入力中に雑音の状況が変わった場合に音声が一時的に入力できなくなるなど、安定性の面で問題があった。
一方、多数のセンサによる目的音源の方向検出と適応ビームフォーマを組み合わせることにより目的音源の方向に自動追随する方式においては、センサ数が少ない場合に精度よく目的音源の方向を検出することが難しく、さらに高分解能方式では入力信号の相関行列の推定と空間走査処理のために目的音源の方向検出に要する演算量が多くなるという問題があった。
本発明は上記の問題点を解決するためになされたもので、複数チャネルの信号に対しフィルタ演算処理を施して雑音を抑圧する場合に、雑音のみを確実に抑圧することを可能とした信号処理装置を提供することにある。
より具体的には、少ない演算量で目的信号の許容到来角度範囲を高精度に設定できる信号処理装置を提供することにある。
また、少ない演算量で目的信号の到来方向を高精度に推定できる信号処理装置を提供することにある。
上記の課題を解決するため、本発明に係る第1の信号処理装置は、複数チャネルの信号に対して雑音を抑圧し、設定された入力方向より入力される目的音源からの信号を出力するためのフィルタ演算処理を施す第1の適応ビームフォーマと、前記複数チャネルの信号に対して前記目的音源からの信号を抑圧し、設定された入力方向より入力される雑音源からの信号を出力するためのフィルタ演算処理を施す第2の適応ビームフォーマと、前記複数チャネルの信号の伝播位相遅れを表す方向ベクトルと前記第1の適応ビームフォーマにより生成されるフィルタ係数の各周波数成分との内積の絶対値又は内積の絶対値の2乗を周波数について加算して得られる方向毎の感度が最小となる方向を雑音源の方向と推定する雑音源方向推定手段と、前記方向ベクトルと前記第2の適応ビームフォーマにより生成されるフィルタ係数の各周波数成分との内積の絶対値又は内積の絶対値の2乗を周波数について加算して得られる方向毎の感度が最小となる方向を前記目的音源の方向と推定する目的音源方向推定手段と、前記雑音源方向推定手段により推定された前記雑音源の方向を前記第2の適応ビームフォーマの入力方向として設定する第1の制御手段と、前記目的音源方向推定手段により推定された前記目的音源の方向を前記第1の適応ビームフォーマの入力方向として設定する第2の制御手段とを具備することを特徴とする。
本発明に係る第2の信号処理装置は、複数チャネルの信号に対して雑音を抑圧し、設定された入力方向より入力される目的音源からの信号を出力するためのフィルタ演算処理を施す第1の適応ビームフォーマと、前記複数チャネルの信号に対して前記目的音源からの信号を抑圧し、設定された入力方向より入力される雑音源からの信号を出力するためのフィルタ演算処理を施す第2の適応ビームフォーマと、前記複数チャネルの信号の伝播位相遅れを表す方向ベクトルと前記第1の適応ビームフォーマにより生成されるフィルタ係数の各周波数成分との内積の絶対値又は内積の絶対値の2乗を周波数について加算して得られる方向毎の感度が最小となる方向を雑音源の方向と推定する雑音源方向推定手段と、前記雑音源方向推定手段により推定された前記雑音源の方向を前記第2の適応ビームフォーマの入力方向として設定する制御手段とを具備することを特徴とする。
本発明に係る第3の信号処理装置は、複数チャネルの信号に対して雑音を抑圧し、設定された入力方向より入力される目的音源からの信号を出力するためのフィルタ演算処理を施す第1の適応ビームフォーマと、前記複数チャネルの信号に対して前記目的音源からの信号を抑圧し、設定された入力方向より入力される雑音源からの信号を出力するためのフィルタ演算処理を施す第2の適応ビームフォーマと、前記複数チャネルの信号の伝播位相遅れを表す方向ベクトルと前記第2の適応ビームフォーマにより生成されるフィルタ係数の各周波数成分との内積の絶対値又は内積の絶対値の2乗を周波数について加算して得られる方向毎の感度が最小となる方向を前記目的音源の方向と推定する目的音源方向推定手段と、前記目的音源方向推定手段により推定された前記目的音源の方向を前記第1の適応ビームフォーマの入力方向として設定する制御手段とを具備することを特徴とする。
本発明によれば複数チャネルの信号に対しフィルタ演算処理を施して雑音を抑圧する場合に雑音のみを確実に抑圧可能であり、具体的には少ない演算量で目的信号の到来方向を高精度に推定することができる。
すなわち、本発明ではマイクロホンアレイ処理装置において、マイクロホンアレイをそれぞれの指向性の向きを異ならせて配置された複数のマイクロホンにより構成し、このマイクロホンアレイからの複数チャネルの信号に対して雑音を抑圧するためのフィルタ演算処理を施すことにより、いわゆる空間的エリアジングの影響を緩和して、全ての周波数において雑音源の方向の感度を低く抑えることができる。
さらに、本発明によれば、雑音を抑圧して目的音源からの信号を出力するための第1のフィルタ演算手段とは別に、目的音源からの信号を抑圧する第2のフィルタ演算手段を設けて、第2のフィルタ演算手段内のフィルタの指向性から目的音源の方向を推定し、その推定結果に基づいて第1のフィルタ演算手段の設定を行うことにより、相関行列の推定や逆行列、固有値展開などの演算を必要とせず、またチャネル数が少ない場合でも、少ない演算量で目的音源からの信号に追随することが容易に可能となる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態では、適応ビームフォーマにおける目的信号の誤キャンセル動作を防ぐため、複数チャネルの信号間のインパルス応答に基づいて適応ビームフォーマの制御を行う信号処理装置について説明する。
本実施形態に係る信号処理装置は、図1に示されるように入力端子10−1〜10nからのnチャネルch1〜chnの信号を入力とし、これらの信号に対して雑音を抑圧するためのフィルタ演算処理(適応ビームフォーマ処理)を施す適応ビームフォーマ11と、チャネルch1〜chnの信号間のインパルス応答を推定するインパルス応答推定部12と、このインパルス応答推定部12の推定結果に従って適応ビームフォーマ11の適応処理を制御する制御部13とにより構成される。
この信号処理装置は、具体的には例えばマイクロホンアレイ処理装置であり、入力端子10−1〜10nには、図示しないn個のマイクロホンからなるマイクロホンアレイからのnチャネルch1〜chnの信号が入力される。ここでは、簡単のためチャネル数nが2の場合を例にとり説明する。
適応ビームフォーマ11の内部の処理方法は、例えば先に挙げた文献1や2に述べられているように種々の方法が知られており、一般化サイドローブキャンセラ(GSC)、適応ノイズキャンセラ、フロスト型ビームフォーマおよび参照信号法などがある。本実施形態は適応ビームフォーマであればどのようなものにも適用が可能であるが、ここでは2チャネルのGSCを例にとり説明する。
図2に、適応ビームフォーマ11の例として、2チャネルのGSCの中で一般的なJim-Griffith型のGSCの構成を示す。これは例えば文献2に示されているように、減算器21、加算器22、遅延器23、適応フィルタ24および減算器25からなるGSCである。適応フィルタ24はLMS、RLS、射影型LMSなど種々のものが使用可能であり、フィルタ長Laは例えばLa=50である。遅延器23の遅延量は例えばLa/2である。
図3に、インパルス応答推定部12の構成を示す。このインパルス応答推定部12は複数チャネルの信号間のインパルス応答、この例では第1チャネルch1と第2チャネルch2の信号間のインパルス応答を逐次推定するものであり、遅延器31と適応フィルタ32および減算器33からなる。なお、インパルス応答の推定にはクロススペクトル法なども適用可能であるが、演算量の点から図3のように適応フィルタ32を用いることが望ましい。適応フィルタ32の種類は、先に述べたように何でもよいが、フィルタ長Lbは適応ビームフォーマ11における図2中の適応フィルタ24のフィルタ長Laより小さくすることが可能であり、例えばLb=10が用いられる。これにより、インパルス応答推定部12の演算量は非常に小さくできる。
本実施形態においては、二つのチャネルch1,ch2の入力信号により適応ビームフォーマ11のビームフォーマ処理と並行してインパルス応答推定部12によるインパルス応答の推定を行い、推定したインパルス応答の成分の値に基づいて、制御部13により適応ビームフォーマ11の適応の制御を行う。この制御は、より詳しくは適応ビームフォーマ11の適応停止および適応続行の制御である。この適応ビームフォーマ11の適応の制御は、適応フィルタ24にLMS適応フィルタや射影LMS適応フィルタを用いている場合には、ステップサイズμの値を変えることにより行うことができる。
図1の適応ビームフォーマ11を構成する図2に示した2チャネルのJim-Griffith型GSCの適応フィルタ24にLMS適応フィルタを用いた場合、この適応フィルタの更新は、時刻をnとして適応フィルタ24の係数をW(n)、第iチャネルの入力信号をxi (n)、第iチャネルの入力信号ベクトルをXi (n)=(xi (n−L−1),xi (n−L−1),…,xi (n−L−2))とおくと、次式で表される。
y(n)=x0 (n)+x1 (n)
X′(n)=X1 (n)−X0 (n)
e(n)=y(n)−W(n)X′(n)
W(n+1)=W(n)−μX′(n)e(n) (1)
ここで、ステップサイズμを小さくすれば適応が遅くなるので、このμの値をインパルス応答の成分によって変化させる。
一方、インパルス応答推定部12でのインパルス応答の推定も、同様に図3の適応フィルタ32にLMS適応フィルタを用いて行うことができる。このとき、図3に示すようにインパルス応答推定に用いる二つのチャネルch1,ch2のうちの一方のチャネルch1の信号を遅延器31により例えばフィルタ長Lbの半分Lb/2だけ遅延させて目的信号とし、他方のチャネルch2の信号を遅延させずに参照信号として用いる。その場合、インパルス応答推定部12の適応フィルタ32のフィルタ係数をWbとおくと、チャネルch1,ch2間の時間遅れ0の成分は、WbのうちのLb/2番目の値Wb(Lb/2)となる。
図1の制御部13において、適応ビームフォーマ11の適応の制御にインパルス応答推定部12で推定されたインパルス応答のどの成分値を用いるかは、目的信号についてのチャネルch1,ch2間の時間遅れに基づいて決めるようにすればよい。
例えば、図4に示すように二つのチャネルch1,ch2の信号としてマイクロホンM1,M2からの信号が入力されており、両マイクロホンM1,M2を結ぶ線と垂直な方向を目的信号の到来方向(目的音源の方向)と設定した場合、インパルス応答推定部12で推定されたインパルス応答の成分のうち、時間遅れ0に相当する1個の成分Wb(Lb/2)の値を適応ビームフォーマ11の適応の制御に使うようにする。
一方、図5に示すように二つのマイクロホンM1,M2を結ぶ線と垂直な方向を目的音源の方向であると設定し、さらに±θに示した角度範囲から到来する信号についても目的信号であると許容する場合には、インパルス応答推定部12で推定されるインパルス応答の成分のうち、矢印aで示した方向から到来する信号の時間遅れと矢印bで示した方向から到来する信号の時間遅れの間の全ての時間遅れに相当する成分に関して、例えばその最大値を適応ビームフォーマ11の適応の制御に用いる。
図6に示すようにマイクロホンM1,M2の間隔をd、音速をcとすると、信号の到来角度φとチャネルch1,ch2間の時間遅れτは、
τ=dsin(φ)/c (2)
により計算できる。これより、インパルス応答推定部12中の適応フィルタ32における時間遅れの成分の番号は、Tsをサンプリング周期として、τ/Tsの整数をとることにより得られる。図5の±θのように目的信号の到来角度範囲を設定する場合、式(2)により求めたτ=dsin(θ)/cから、τ/Tsの整数部をkとすると、
{Wb(−k+Ld/2),Wb(−k+Lb/2+1),…Wb(Lb/2),Wc(Lc/2+1),…,Wb(Lb/2+k)}
の中の最大値をインパルス応答の成分値hとする。
次に、上述した本実施形態の信号処理装置における処理の流れを図7に示すフローチャートを用いて説明する。
まず、初期設定として目的音源方向(目的信号到来方向)の許容角度範囲±θを設定し(ステップS101)、次いでインパルス応答推定部12で入力信号を適応フィルタ32に入力してインパルス応答を推定する(ステップS102)。このステップS102では、前述のように予め定めた時間遅れのインパルス応答成分の成分値hを求め、さらに次式により成分値hの平均化を行って平均値bを求める。
b=h*α+b*(1−α) (3)
ここでαは忘却係数であり、例えばα=0.1を用いる。
次に、成分値hについてしきい値判定、すなわち現在の成分値hが予めたしきい値sと平均値bの和の値より大きいか否かの判定を行い、大きければ適応停止の信号を適応ビームフォーマ11に出力し、小さければ適応続行の信号を出力する。すなわち、h>b+sならば適応停止、そうでなければ適応続行とする(ステップS103)。しきい値sの値は、例えばs=0.15を用いる。
次に、例えば式(1)に従って適応ビームフォーマ11の処理を行う。このとき、ステップS103の判定結果に基づいて、適応停止信号が出ている場合は式(1)中のステップサイズμをμ=0として適応を停止し(ステップS104)、また適応続行の信号が出ている場合はμを予め定めた値、例えばμ=0.01として適応処理を行う(ステップS105)。
そして、上述したステップS101〜S015の処理を入力信号の1サンプル毎に繰り返す。信号入出力の効率化のため、繰り返しの単位を例えば256サンプル毎のブロック処理としてもよい。すなわち、ステップS102とステップS104,S105の適応フィルタ処理については、256サンプル分まとめて行い、またステップS102における成分値hの平均化とステップS103のしきい値処理については、256点に1回行うようにする。
文献3に述べられている相関に基づく適応処理の制御は、時間遅れ0に関する相関のみに着目しているため、大きくずれた目的信号の到来角度に関する制御が不安定になっていたが、本実施形態ではインパルス応答推定部12で複数チャネルの信号間のインパルス応答を求め、制御部13により該インパルス応答の成分に基づいて適応ビームフォーマ11の適応処理を制御するため、より少ない演算量で高精度に広い角度範囲から到来する信号を目的信号であると許容するように設定できる。すなわち、目的信号の許容到来角度範囲を精度よくかつ広範囲に設定することができる。従って、例えばマイクロホンへの音声入力中に雑音の状況が変わった場合でも、連続して安定に音声の入力を行うことができる。
(第2の実施形態)
次に、適応マイクロホンアレイ処理装置の入力に用いるマイクロホンとして、指向性マイクロホンを使う場合の実施形態について説明する。
一般に、適応ビームフォーマの入力としては、無指向性のマイクロホンやアンテナ素子からの信号が用いられるが、例えば二つの無指向性のマイクロホンを使った適応ビームフォーマでは、雑音を消去できない周波数帯域ができる。
図8は、2チャネルのJim-Griffith型GSCを適応ビームフォーマに用い、これを図9に示したマイクロホンM1,M2の配置と雑音源の方向を仮定して適応させた場合のGSC内のフィルタの周波数特性であり、直線aは目的音源の方向(目的信号の到来方向)、曲線bは雑音源の方向(白色雑音の到来方向)の周波数特性である。
曲線bは大部分の周波数でパワーが数十dB低下しており、雑音除去が働いていることを示しているが、0周波数付近とfoで示した周波数付近においては雑音が除去されないことを示している。これは、図9に示したようなマイクロホンM1,M2の配置と雑音源の方向の場合に、設定した雑音源方向からの到来雑音が各マイクロホンM1,M2に到達する際の時間遅れに相当する位相が目的信号の時間遅れの位相と2πの整数倍で一致してしまうためであり、空間的エリアジングと呼ばれている。この現象は、多数のマイクロホンを使う場合は避けられるが、このような2チャネル構成の場合は回避が困難であった。
このような問題を解決するため、本実施形態では無指向性マイクロホンに代えて指向性マイクロホンを用い、それらを指向性の向きを異ならせて配置することにより、空間的エリアジングの影響を小さくしている。本実施形態における指向性マイクロホンの種々の配置と指向性パターンの例を図10に示す。
まず、図10(a)では二つの単一指向性マイクロホンを用い、指向性の向きを目的方向(目的音源の方向)に対して角度±φだけずらせて対称となるように各マイクロホンを並べている。空間的エリアジング抑圧の効果を十分出すには、ずれ角φの値を20°≦φ≦180°の範囲に設定することが望ましい。マイクロホンの指向性は図10(a)のような単一指向性に限る必要はなく、双指向性でも狭指向性でもよい。二つのマイクロホンの指向性パターンが同じであれば、図10(a)のような対称な配置でよい。
一方、二つのマイクロホンの指向性パタンは必ずしも同じである必要はなく、例えば図10(b)に示すように一方が無指向性、他方が単一指向性であってもよい。この場合、目的方向に対する感度が二つのマイクロホンで一致するように感度の調整を行う必要がある。例えば、図10(b)の配置の場合、第1チャネルch1の単一指向性マイクロホンの目的方向の感度g1と、第2チャネルch2の無指向性マイクロホンの感度g2が一致する角度を選ぶか、両マイクロホンの出力信号に対して振幅が一致するような補正を施すようにする。信号振幅の補正は、二つのマイクロホンの感度差を振幅に変換した係数を両マイクロホンの出力信号に乗じればよい。
また、目的方向は二つのマイクロホンを結ぶ直線lと垂直である必要はなく、図10(c)に示すように二つのマイクロホンを結ぶ直線lと目的方向とが一致したり、図10(d)に示すように直線lと目的方向が任意の角度をなしてもよい。これらの場合、図11に示すようにビームフォーマ本体15の前に、遅延器14を配置し、目的方向から信号が到来した場合の各チャネルch1,ch2の信号の位相が一致するように、一方のチャネルch2の信号を遅延時間d/cだけ遅延させるようにする。ここでcは信号の伝播速度である。
以上述べたマイクロホン配置を用いた場合の2チャネルJim-Griffith型GSC内のフィルタの周波数特性を図8に重ねて示す。図8の曲線c,d,eは、図9と同じ配置のマイクロホン各々を単一指向性にし、ずれ角φ=10°,30°,60°にした場合の雑音到来方向に対する周波数特性である。この結果から、ずれ角φを大きくするに従い、曲線bの無指向性の場合に出ていた空間的エリアジングのピークが小さくなり、全ての周波数において雑音源の方向の感度が低くなっていることが分かる。
(第3の実施形態)
本実施形態では、目的信号が設定された目的音源の方向とずれた方向から到来した場合でも、その方向にビームフォーマに設定される目的音源の方向を追随させることにより、目的信号を劣化させずに出力することを可能とした信号処理装置について説明する。
従来、信号の到来方向の推定は、例えば文献1に述べられているように最小分散法やMUSIC法により行う場合、入力信号の相関行列を推定して、相関行列の逆行列や固有ベクトルを求め、さらに空間的な走査処理を行う必要があった。しかし、これらの処理は演算量が多く、また環境変化への追随性を考慮した相関行列の推定を行わなければならないという煩雑さがある。
これに対し、本実施形態では目的音源の方向に追随するため、目的信号を出力する第1のビームフォーマとは別に第2のビームフォーマを設けて、第2のビームフォーマ内のフィルタの指向性から目的音源の方向を推定し、その推定結果に基づいて第1のビームフォーマの設定を行う。これにより、相関行列の推定や逆行列、固有値展開などの演算を必要とせず、少ない演算量で目的信号への追随を可能にしている。
図12に、本実施形態に係る信号処理装置の構成を示す。入力端子40−1,40−2からのチャネルch1,ch2の信号は、第1および第2のビームフォーマ41,42に入力される。第1のビームフォーマ41では目的信号が出力され、第2のビームフォーマ42では目的信号が抑圧され雑音が出力される。
雑音源方向推定部43は、第1のビームフォーマ41内のフィルタのフィルタ係数から雑音源の方向(雑音信号の到来方向)を推定し、その推定結果を第1の制御部44に与える。目的音源方向推定部45は、第2のビームフォーマ42内のフィルタのフィルタ係数から目的音源の方向(目的信号の到来方向)を推定し、その推定結果を第2の制御部46に与える。以降、第1および第2ビームフォーマ41,42において設定されている目的音源の方向を入力方向と呼ぶことにする。
第1の制御部44は、雑音源方向推定部43により推定された雑音源の方向が入力方向として設定されるように第2のビームフォーマ42を制御する。第2の制御部46は、目的音源方向推定部45により推定された目的音源の方向が入力方向として設定されるように第1のビームフォーマ41を制御する。第2のビームフォーマ42の入力方向を雑音源の方向に設定するのは、第2のビームフォーマ42により雑音源の方向が推定されるのを防ぐためである。
第1および第2のビームフォーマ41,42は、既に述べたようにGSCでもフロスト型でも参照信号型でもよい。この場合、第1のビームフォーマ41内のフィルタでは雑音源の方向に、第2のビームフォーマ42内のフィルタでは目的音源の方向にそれぞれ感度の低い死角ができているため、各々のフィルタのフィルタ係数からその指向性を調べることにより、雑音源および目的音源の方向を推定することができる。
一般に、ビームフォーマの入力方向の設定は、よく知られているように入力方向からの信号がチャネルどうし同位相になるように入力信号に遅延を与えることにより行われる。このため本実施形態においても、第1および第2のビームフォーマ41,42の内部を図11に示した構成として、遅延器14により上記の遅延を与えている。なお、第1および第2のビームフォーマ41,42が参照信号型の場合は、参照信号の到来方向を入力方向に合わせてもよいし、フロスト型の場合は、例えば文献4:Kazuaki Takao et.al.: “An adaptive antenna array under directional constraint”,IEEE Teans.on Antenna Propag.Vol.AP-24,No.5,Sep.1976 に開示されているように、任意の入力方向からの到来信号が減衰しないように線形拘束条件を設定することによっても行うことができる。
雑音源方向推定部43と目的音源方向推定部45では、前述のように第1および第2のビームフォーマ41,42内のフィルタの指向性から雑音源および目的音源の方向を推定するため、図13のフローチャートに示すような手順で処理を行う。なお、ここでは入力信号が2チャネルの場合の処理を例として述べるが、2チャネルに限定されるものではない。
まず、初期設定として探索範囲θr 、フィルタ長L、FFT長(FFTポイント数)N、チャネル数Mなどを設定する(ステップS201)。第1のビームフォーマ41では、任意の雑音源の方向に対応するために、目的音源の方向を基準(0°)として探索範囲θr は90°とし、第2のビームフォーマ42では目的信号の到来範囲内のみを探索するため、例えばθr =20°とする。探索角度範囲は、入力方向±θr の範囲とする。フィルタ長Lとチャネル数Mはビームフォーマ41,42と同じ値を用い、例えば各々L=50、M=2とし、FFT長Nは、フィルタ長Lより大きい値、例えばこの場合は64点とする。
次に、ビームフォーマ41,42がGSCならばフィルタ変換を行い(ステップS203)、そうでなければFFTを行う(ステップS204)。
ステップS203では、ビームフォーマ41,42がGSCの場合、フィルタ係数をトランスバーサル型のビームフォーマと等価な形に変換する。例えば、2チャネルのJim Griffith型GSCの場合、GSC内の適応フィルタの特性をwg=(w0 ,w1 ,w2 ,…,wL-2 ,wL-1 )とおくと、第1チャネルch1の等価フィルタの特性は、we1=(−w0 ,−w1 ,−w2 ,…,−wL/2 +1,…,−wL-2 ,−wL-1 )、第2チャネルch2の等価フィルタの特性は、we2= (w0 ,w1 ,w2 ,…,wL/2 -1,…,wL-2 ,wL-1 )とおけばよい。
次に、チャネル毎にフィルタ係数のFFT(高速フーリエ変換)を行い、その周波数成分Wei(k) を求める(ステップS204)。ここで、kは周波数成分の番号、iはチャネルの番号である。
次に、探索範囲の中のある一つの方向をθとすると、θ方向から到来する信号に関する各チャネルの伝播位相遅れを表わす方向ベクトルS(k,θ)を生成する(ステップS205)。方向ベクトルS(k,θ)は、例えば図6に示したマイクロホン配置の場合、第1チャネルch1を基準にすると、S(k,θ)= (1,e-jk/Nfsdsin(θ) )となる。fsはサンプリング周波数である。
次に、FFTにより求めたフィルタの周波数成分We =(We1(k) 、We2(k))と方向ベクトルS(k,θ)=(1,e-jk/Nfsdsin(θ) )の内積の絶対値の2乗|S・W|2 を求める(ステップS206)。
ステップS205〜S206の処理を全ての周波数、すなわちk=1からk=2/Nまでについて行い、求めた内積の2乗和を方向θ毎に周波数kについて加算し、全帯域についてまとめた方向毎の感度
D(θ)=Σ|W(k) S(k,θ)|2 (4)
を求める(ステップS207〜S208)。このとき、方向を例えば1°ずつ変化させ、探索範囲の全ての方向について調べるようにする。
次に、求めた方向毎の感度が最小となる方向θmin をD(θ)から求め、これを信号(目的信号または雑音信号)の到来方向とする(ステップS209)。このとき、雑音による推定誤差の影響を軽減するため、推定された音源方向に対しビームフォーマの出力により重み付けを行い、過去に推定された音源方向との平均化を行いながら、入力方向を更新するようにする。例えば、次式に従って計算を行う。
θ1 =θ′1 *g1 −(1.0−g1 )*θ0
θ2 =θ′2 *g2 −(1.0−g2 )*θn
1 =1.0−1/(f(p1 −pth) f(r1 −rth)+1.0)
2 =1.0−1/(f(p2 −pth) f(r2 −rth)+1.0)
1 =p1 /p2 、r2 =p2 /p1
ここで、g1 ,g2 はそれぞれ第1および第2のビームフォーマ41,42の入力方向更新のための重み、p1 ,p2 はそれぞれ第1および第2のビームフォーマ41,42のブロック単位の出力パワー、pthはパワーのしきい値、rthはパワー比のしきい値、θ′1 ,θ′2 はそれぞれ第1および第2のビームフォーマ41,42の更新前の入力方向、θ1 ,θ2 はそれぞれ第1および第2のビームフォーマ41,42の更新後の入力方向、θ0 ,θn はそれぞれ新たに推定された目的音源と雑音源の方向、f(x)はxが正ならばx、負ならば0を与える関数である。
このような更新により、目的音源からの目的音のパワーが大きく、雑音のパワーが小さいときには更新を速くし、それ以外では更新を遅くするように制御している。g1 ,g2 、pth、rthの値は、例えば入力信号が16ビットのディジタル信号で、256点毎に出力パワーを求める場合、g1 =0.3、g2 =0.02、pth=1.0、rth=0.5とするが、状況に応じて実験的に決めるのがよい。
次に、上述した信号方向推定の処理を含む本実施形態の全体的な処理の流れを図14に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、ここでは2チャネルアレイの処理を例として述べるが、2チャネルに限定されず、多チャネルでも応用可能である。
まず、初期設定として目的音源の方向として許容する範囲Φを設定し、第1のビームフォーマ41の入力方向θ1を例えば0°に、第2のビームフォーマ42の入力方向θ2を例えば90°に、雑音源方向推定部43の探索範囲θr1を例えば90°に、目的音源方向推定部45の探索範囲θr2を例えば20°にそれぞれ設定する(ステップS301)。目的音源方向の許容範囲Φは、第2のビームフォーマ42の探索範囲θrと同じ値とし、Φ=θr2=20°とする。この設定により、±Φの角度範囲に到来した信号を目的信号とみなすようになる。ここで、方向は二つのマイクロホンを結ぶ直線に垂直な方向を0°としている。
次に、第1のビームフォーマ41の入力方向を設定する(ステップ302)。ここでは、2チャネルの信号に遅延を与えることにより、設定した入力方向からの信号が等価的にアレイに同時に到達するようにする。このため、図11の構成の第1のビームフォーマ41において、遅延器14により第1チャネルch1の信号に与える遅延をτ=dsin(θ1)/cにより計算する。
次に、第1のビームフォーマ41の処理を行い(ステップS303)、得られたフィルタ係数から上述した方法により探索範囲±θr1内で雑音源の方向を推定する(ステップS304)。推定された雑音源の方向をθnとする。
次に、ステップS304で推定された雑音源の方向θnが目的音源の方向の近傍(0°±Φ)にあるか否かを判断し(ステップS305)、近傍にある場合はそのままステップS308に進む。
一方、ステップS304で推定された雑音源の方向θnが目的音源の方向の近傍でない場合は、推定された雑音源の方向を入力方向とするように第2のビームフォーマ42の入力方向を設定する(ステップS307)。すなわち、θ2の値を先にのべた平均化により更新する。ステップS302と同様に、第2チャネルch2の信号に遅延を与えて入力方向からの信号が等価的にアレイに同時に到達するようにするため、図11の構成の第2のビームフォーマ42において、遅延器14により第1チャネルch1に与える遅延をτ=dsin(θ2)/cにより計算する)。
次に、第2のビームフォーマ42の処理を行い(ステップS308)、探索範囲±θr2の中で目的音源の方向を推定し(ステップS309)、再びステップS302に戻って、推定された目的音源の方向を入力方向とするように第1のビームフォーマ41の入力方向を設定する。このときも、先に述べた平均化により入力方向を更新する。
以降、以上の処理を繰り返す。なお、処理の単位は効率化のため例えば256点を1ブロックとしたブロック単位で行ってもよい。この場合、ビームフォーマ41,42の処理は1ブロック分のデータを続けて処理した後のフィルタ係数を次のステップの入力とするようにする。
このように本実施形態によれば、二つのビームフォーマ41,42のうち、第2のビームフォーマ42内のフィルタのフィルタ係数から目的音源の方向(目的信号の到来方向)を推定するようにしたため、目的音源の方向が設定と大きくずれた各ビームフォーマ41,42の入力方向から目的信号が到来した場合に目的信号がキャンセルされる現象を抑えて、少ない演算量で高精度に目的信号の抽出を行うことができる。
(第4の実施形態)
本実施形態では、第3の実施形態で述べた目的信号への追随を用いたビームフォーマ処理の際、第1の実施形態で述べたインパルス応答成分に基づいた適応制御を組み合わせることにより、信号方向推定の精度を高めるようにした信号処理装置について説明する。
図15に、本実施形態に係る信号処理装置の構成を示す。この信号処理装置は図12に示した第3の実施形態の構成に、インパルス応答推定部47が追加された構成となっている。インパルス応答推定部47は、チャネルch1,ch2の信号間のインパルス応答を推定し、その推定結果であるインパルス応答の成分値を第1および第2の制御部44,46に与える。第1および第2の制御部44,46は、該インパルス応答の成分値に基づいて第1および第2のビームフォーマ41,42の適応処理を制御する。
第1の実施形態で述べたように、インパルス応答は複数チャネルの信号間の時間遅れに相当した成分の値が大きくなる。この時間遅れは信号の到来方向に対応しているので、第1のビームフォーマ41の入力方向に対応した時間遅れを求め、この時間遅れに相当するインパルス応答の成分値が一定値以上のときには第1のビームフォーマ41の適応を停止して第2のビームフォーマ42の適応を行い、一定値以下のときにはその逆の処理とすることにより、各ビームフォーマ41,42が自身の入力方向からの信号に適応する目的信号キャンセルの現象を防ぐことができるので、適応フィルタのフィルタ係数を用いた信号方向推定精度の劣化を防ぐことができ、結果として全体の性能向上を図ることができる。
次に、図16に示すフローチャートを参照しながら本実施形態の処理の流れについて説明する。
なお、ここでは2チャネルアレイの処理を例として述べるが、2チャネルに限定されず、多チャネルでも応用可能である。
まず、初期設定として第3の実施形態と同様に、目的信号の到来方向として許容する範囲Φを設定し、第1のビームフォーマ41の入力方向θ1を例えば0°に、第2のビームフォーマ42の入力方向θ2を例えば90°に、雑音源方向推定部の43探索範囲θr1を例えば90°に、目的音源方向推定部45の探索範囲θr2を例えば20°にそれぞれ設定する(ステップS401)。目的音源方向の許容範囲Φは、第2のビームフォーマ42の探索範囲θrと同じ値とし、Φ=θr2=20°とする。この設定により、±Φの角度範囲に到来した信号を目的信号とみなすようになる。ここで、方向は二つのマイクロホンを結ぶ直線に垂直な方向を0°としている。
次に、第1のビームフォーマ41の入力方向を設定する(ステップ402)。ここでは、2チャネルの信号に遅延を与えることにより、設定した入力方向からの信号が等価的にアレイに同時に到達するようにする。このため、図11の構成の第1のビームフォーマ41において、遅延器14により第1チャネルch1の信号に与える遅延をτ=dsin(θ1)/cにより計算する。
次に、同様に第1チャネルch1の信号に与える遅延をτ=dsin(θ2)/cにより計算して、第2のビームフォーマ42の入力方向を設定する(ステップS403)。
次に、インパルス応答推定部47においてチャネルch1,ch2の信号間のインパルス応答を推定し、第1の実施形態で述べたと同様に、定めた時間遅れのインパルス応答の成分値hとその平均値bを求める(ステップS404)。
次に、現在の成分値hが予めたしきい値sと平均値bの和の値より大きいか否かを判定し(ステップS405)、大きければステップS406の第1のビームフォーマ41の処理に進み、小さければステップS410の第1のビームフォーマ41の処理に進む。ステップS406では、適応を停止して第1のビームフォーマ41の処理を行う。すなわち、適応フィルタのステップサイズμを0とおいて処理する。ステップS407では、適応を停止せず通常の第2のビームフォーマの処理を行う。すなわち、適応フィルタのステップサイズμを所定の値、例えば0.01として処理する。
次に、第2のビームフォーマ42のフィルタ係数から、第3の実施形態に述べた方法により、目的音源の方向を推定し(ステップS408)、推定した方向から第1のビームフォーマ41の入力方向を第3の実施形態で述べた平均化を用いて設定し(ステップS409)、ステップS404のインパルス応答推定処理に戻る。
ステップS410では、適応を停止せず通常の第1のビームフォーマ41の処理を行い、得られたフィルタ係数から第1の実施形態に述べた方法により雑音源の方向を推定する(ステップS411)。
次に、推定した雑音源の方向が目的音源の方向の近傍(θ1±Φ)にあるか否かを判断し(ステップS412)、近傍にある場合はそのままステップS404のインパルス応答処理に戻り、近傍でない場合は推定した雑音源の方向から第3の実施形態で述べた平均化を用いて第2のビームフォーマ42の入力方向を設定し(ステップS413)、その後ステップS404のインパルス応答推定処理に戻る。
以降、以上の処理を繰り返す。なお、処理の単位は効率化のため例えば256点を1ブロックとしたブロック処理で行ってもよい。この場合、第1および第2のビームフォーマ41,42の処理は1ブロック分のデータを続けて処理した後のフィルタ係数を次のステップの方向推定処理の入力とするようにする。
このように本実施形態では、チャネルch1,ch2の信号間のインパルス応答の成分値に基づいて二つのビームフォーマ41,42の適応処理の制御を行うようにしたことにより、各ビームフォーマ41,42の入力方向から信号が到来した場合の信号キャンセルによる劣化とフィルタの劣化を防ぐことができ、目的音源方向へのビームフォーマ41,42の追随と、これによる目的信号の抽出を高精度に行うことができる。
なお、以上の実施形態ではマイクロホンアレイ処理装置について説明したが、本発明はマイクロホンアレイ以外の素子、例えば複数個のアンテナ素子を配列したアンテナアレイから信号を扱う信号処理装置にも適用でき、要するに複数チャネルの信号を入力してフィルタ演算処理を施すことにより雑音(不要信号)を抑圧する信号処理装置であれば基本的に本発明を適用することができる。
本発明の第1の実施形態に係る信号処理装置の構成を示すブロック図 図1における適応ビームフォーマの構成を示すブロック図 図1におけるインパルス応答推定部の構成を示すブロック図 二つのマイクロホンの配置と目的音源の方向の関係を示す図 二つのマイクロホンの配置と目的音源の方向および目的音源の許容到来角度範囲の関係を示す図 二つのマイクロホンからの信号間の時間遅れについて説明するための図 同実施形態における一連の処理の流れを示すフローチャート 本発明の第2の実施形態を説明するための2チャネルのJim-Griffith型GSCにおけるフィルタの目的音源方向および雑音源方向の周波数特性を示す図 図8の周波数特性に対応するマイクロホンの配置と目的音源よび雑音源の方向の関係を示す図 同実施形態における二つのマイクロホンの指向性および配置の種々の例を示す図 一方のチャネルの入力側に遅延器を挿入したビームフォーマの構成を示すブロック図 本発明の第3の実施形態に係る信号処理装置の構成を示すブロック図 同実施形態における雑音源および目的音源の方向の推定処理の手順を示すフローチャート 同実施形態における全体的な処理の流れを示すフローチャート 本発明の第4の実施形態に係る信号処理装置の構成を示すブロック図 同実施形態における処理の流れを示すフローチャート
符号の説明
10−1〜10−n…入力端子
11…適応ビームフォーマ
12…インパルス応答推定部
13…制御部
14…遅延器
15…ビームフォーマ本体
21…減算器
22…加算器
23…遅延器
24…適応フィルタ
25…減算器
31…遅延器
32…適応フィルタ
33…減算器
41…第1のビームフォーマ
42…第2のビームフォーマ
43…雑音源方向推定部
44…第1の制御部
45…目的音源方向推定部
46…第2の制御部
47…インパルス応答推定部

Claims (3)

  1. 複数チャネルの信号に対して雑音を抑圧し、設定された入力方向より入力される目的音源からの信号を出力するためのフィルタ演算処理を施す第1の適応ビームフォーマと、
    前記複数チャネルの信号に対して前記目的音源からの信号を抑圧し、設定された入力方向より入力される雑音源からの信号を出力するためのフィルタ演算処理を施す第2の適応ビームフォーマと、
    前記複数チャネルの信号の伝播位相遅れを表す方向ベクトルと前記第1の適応ビームフォーマにより生成されるフィルタ係数の各周波数成分との内積の絶対値又は内積の絶対値の2乗を周波数について加算して得られる方向毎の感度が最小となる方向を雑音源の方向と推定する雑音源方向推定手段と、
    前記方向ベクトルと前記第2の適応ビームフォーマにより生成されるフィルタ係数の各周波数成分との内積の絶対値又は内積の絶対値の2乗を周波数について加算して得られる方向毎の感度が最小となる方向を前記目的音源の方向と推定する目的音源方向推定手段と、
    前記雑音源方向推定手段により推定された前記雑音源の方向を前記第2の適応ビームフォーマの入力方向として設定する第1の制御手段と、
    前記目的音源方向推定手段により推定された前記目的音源の方向を前記第1の適応ビームフォーマの入力方向として設定する第2の制御手段とを具備することを特徴とする信号処理装置。
  2. 複数チャネルの信号に対して雑音を抑圧し、設定された入力方向より入力される目的音源からの信号を出力するためのフィルタ演算処理を施す第1の適応ビームフォーマと、
    前記複数チャネルの信号に対して前記目的音源からの信号を抑圧し、設定された入力方向より入力される雑音源からの信号を出力するためのフィルタ演算処理を施す第2の適応ビームフォーマと、
    前記複数チャネルの信号の伝播位相遅れを表す方向ベクトルと前記第1の適応ビームフォーマにより生成されるフィルタ係数の各周波数成分との内積の絶対値又は内積の絶対値の2乗を周波数について加算して得られる方向毎の感度が最小となる方向を雑音源の方向と推定する雑音源方向推定手段と、
    前記雑音源方向推定手段により推定された前記雑音源の方向を前記第2の適応ビームフォーマの入力方向として設定する制御手段とを具備することを特徴とする信号処理装置。
  3. 複数チャネルの信号に対して雑音を抑圧し、設定された入力方向より入力される目的音源からの信号を出力するためのフィルタ演算処理を施す第1の適応ビームフォーマと、
    前記複数チャネルの信号に対して前記目的音源からの信号を抑圧し、設定された入力方向より入力される雑音源からの信号を出力するためのフィルタ演算処理を施す第2の適応ビームフォーマと、
    前記複数チャネルの信号の伝播位相遅れを表す方向ベクトルと前記第2の適応ビームフォーマにより生成されるフィルタ係数の各周波数成分との内積の絶対値又は内積の絶対値の2乗を周波数について加算して得られる方向毎の感度が最小となる方向を前記目的音源の方向と推定する目的音源方向推定手段と、
    前記目的音源方向推定手段により推定された前記目的音源の方向を前記第1の適応ビームフォーマの入力方向として設定する制御手段とを具備することを特徴とする信号処理装置。
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