JP4256108B2 - 超音波モータの製造方法、超音波モータの接触部の製造方法及び超音波モータの突起の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、超音波モータにおけるステータとロータとの接触部分の素材と形状に関する。
【0002】
【従来の技術】
超音波モータは圧電素子等の電気機械変換素子によって励振される弾性体(ステータ)に圧接された移動体(ロータ)がステータの振動によって回転力(移動力)を受ける構造となっている。小型のものでもまた低速時においても高いトルクが得られることから、この超音波モータは携帯用の小型機器には広く採用され組み込まれているところである。図8に示したものはその1形式である進行波方式のリング型超音波モータで、(A)はその断面図であり(B)は弾性体のみを斜視図で示したものである。この形式の超音波モータは、ステータ1として圧電素子2と金属等の弾性体3を貼合わせて構成し、該ステータ1にばねなどの手段により加圧接触してロータ5を設置する構造となっている。圧電素子2には2組の駆動電極が形成され、それぞれ所定の位相差を持った交流電圧を印加すると、弾性体3にたわみ振動の進行波が励振され、弾性体3の表面の点は楕円軌跡を描いて運動する。ロータ5は進行波の波頭でのみ弾性体3と接触し、楕円軌跡により摩擦駆動されて進行波の進行方向と逆の方向に移動するという動作原理に基く。そして、リング型超音波モータにおけるステータ1は底面に圧電素子2を接着したリング状金属弾性体3で構成され、図8(B)に示されたように上部に多数の突起4を備えている。この多数に分割された突起は、圧電素子2の僅かな歪みでロータを摩擦駆動する接触点すなわち、突起の先端部の振幅を大きくする変位拡大機構となっている。この変位拡大効果は、モータのエネルギ効率を上げるために重要な役割を果たしている。なお、図8(A)において、10は支持板、8は中心軸をそして9は加圧機構を示している。
【0003】
この超音波モータはステータとロータとが圧接された状態の下での摩擦駆動によりステータがロータに駆動力を付与するものであるから、両者の接触部の材料として何を採用するかは重要な問題となる。すなわち、伝達効率や耐久性の観点からその摩擦係数、耐磨耗性、化学安定性といったことが素材としての重要な適性要件となり、通常は弾性体3には金属材料が用いられ、該弾性体の突起4と接触するロータ部分には摩擦材として樹脂からなる摺動板7が用いられる。その摺動板7は図8(A)に示されるように移動体6のステータ側の突起と接触する部分に取りつけられ、一体となってロータ5を構成している。ところが、このステータとロータの接触部分での摩擦駆動により磨耗粉が生じ、この磨耗粉が接触部に付着したり軸受部に侵入してモータ駆動に影響を及ぼすという問題が起こっている。これは主に金属製の弾性体の突起4により樹脂製の摺動板7が削られ、その微粉末が散るという現象に起因している。その上に、この現象は磨耗粉が引き起こす上記の問題の他ロータ5の偏磨耗という問題も生じモータ駆動の不安定要因となる。これは360°以上のフル回転動作を行なうモータでは磨耗が全角度的に均一化されてさほどの問題とならないが、360°以下所定角度内に駆動範囲を持つモータには大きな不具合となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
摩擦材として耐摩耗性を向上させるため、ガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維等の繊維素材を充填材として樹脂に含有させることが、特開平7−177770号公報や特開平8−23687号公報に示されている。ところで、前述したように従来は突起を含め弾性体を金属材とし、ロータ側の摺動部に樹脂材を使用するのが一般的であった。しかし、摺動部の偏摩耗という問題がありそれならばロータ側を金属材としようという発想が生まれた。それは多数ある突起部は均一条件で摺動部と接するため、摩耗しても多数ある突起部の摩耗は均一となり偏摩耗という現象は起こらないと考えたためである。そこで、耐摩耗性を向上させようとガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維等の繊維素材を充填材として樹脂に含有させた樹脂で実施したところ、たしかに偏摩耗という問題はなくなったのであるが、今度は相手側金属を摩耗させてしまうという新たな問題を生じた。その原因を究明したところモールド製造品である突起の先端表面に繊維材の端部が露出し、それが相手接触部材をヤスリの作用をして擦るためであることを突き止めた。すなわち、摺動面に対して交差する方向に存在する繊維材が元凶であり、この方向で樹脂内に混在されている繊維は摩擦材の耐摩耗性の向上にもあまり寄与してないのである。
【0005】
本発明の課題は、超音波モータの弾性体と移動体の接触部用に耐摩耗性に優れ、接触する相手部材の面を摩耗することのない素材を提供すること、また、偏摩耗を生じさせない接触部構造を提供すること、更には、そのような物性を実現させるためフィラー材であるカーボン、ガラス、金属、セラミクス等の繊維の方向を接触面に対して平行方向に向くように樹脂を成形する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の超音波モータは、移動体と移動体の接触部の内少なくとも一方の部材をカーボン、ガラス、金属、セラミクス等の繊維がフィラー材として含有された樹脂とし、その繊維の方向が接触面においては移動体の摺動面内方向に向いたものを採用することにより、耐摩耗性に優れ、接触する相手部材の面を摩耗することのない素材を提供する。
また、超音波モータのステータ側接触部における偏摩耗を解消する本発明の方法は、移動体との接触部近傍をカーボン、ガラス、金属、セラミクス等の繊維をフィラー材として含有した樹脂で形成した後、多数の突起形状を分割加工するようにし、ロータ側接触部における偏摩耗を解消する本発明の方法は、弾性体の突起部と接触する摺動部をカーボン、ガラス、金属、セラミクス等の繊維をフィラー材として含有した樹脂で形成すると共に、繊維方向が摺動面と交差する端縁部近傍を切り落とすようにした。
繊維の方向が接触面において移動体の摺動方向に向いたものとする本発明の加工方法は、カーボン、ガラス、金属、セラミクス等の繊維をフィラー材として含有する樹脂材料を射出成形によって形成した部材の繊維方向が摺動面と交差している端縁部近傍を面取りしたり、繊維方向が摺動面と平行になっている型の面部近傍を使用するようにしたり、樹脂材料を摺動面となる面に平行な方向から型に射出することにより、繊維方向が摺動面に揃うようにするものである。あるいは押し出し成形によって成形した部材を矩形形状に形状加工して繊維方向が摺動面に平行になるようにするものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明は、前述したように滑り摩擦係数が大きく耐摩耗性に優れた素材としてカーボン、ガラス、金属、セラミクス等の繊維をフィラー材として含有した樹脂を採用することとし、偏摩擦を起こさないようにステータ側の突起部の材料として用いることを試みた所、モールド製品である該突起部が相手素材を傷つけるという現象に遭遇した。そして、その原因は接触面に露出する繊維材の端部がヤスリの働きをして摺動体を擦ることにあることを付きとめた。その際の突起部分の樹脂の態様は図1に示したように先端の摺動面の周縁部近傍では繊維が立っており、中央部分では繊維材が面に平行に寝た状態で混在固化していた。この突起部は図中下方にある注入ゲートから型に流し込まれた射出成形によって作られたものである。このことから、フィラー材として混入されている繊維材は型の周縁部分では押し込まれた方向に向き、型の壁部分では壁の面に平行方向に向いて固化されるとの知見を得た。そこで、本発明では弾性体と移動体の接触部の摺動面では繊維材が面に対し平行方向に向いた状態となっている樹脂を使用することとし、上記の知見に基いて、基本的に▲1▼繊維が面に対して交差方向となっている周縁部分を切り落すか、▲2▼接触面では繊維材の方向が摺動方向に向くように樹脂の成形に工夫を加えるという方策を採用して摺動面では繊維材が面に対し平行方向に向いた状態となるようにした。
【0008】
▲1▼の繊維が面に対して交差方向となっている周縁部分を切り落す手法は図2(A)に示したように突起部の周縁部分を面取りして繊維材の方向が摺動面内方向に向いている中央部分のみを使うというものである。また、図2(B)に示したように周縁部を面状に削り落してしまう周面削りによって、繊維材の方向が摺動面内方向に向いている中央部分のみを使うというものである。
また、▲2▼の接触面では繊維材の方向が摺動面内方向に向くように樹脂成形する方法としては、図3(A)に示したように押出し成形によって薄板を成形し、これを型抜きするなり切り出すなりして弾性体又は移動体の接触部としてモータに取り付ける方法がある。押出し成形による薄板成形は細長い口部から樹脂が押し出されるため、フィラー材である繊維は押出し方向に向けられ、板の表裏面と交差方向に向けられることはない。図3(B)に示したものは薄い環状部材を射出成形によって形成し、ロータの摺動部として使用したり環状突起先端部に使用するものである。環状の型に流し込まれる樹脂は外周面に設けられた小口径の射出ゲートを通ることにより、繊維の向きは流れ方向に向けられると共に型内に入ってからは接近した表裏面に挟まれ繊維が面と交差方向に向けられることはないものである。また、図3(C)に示したものは円筒状部材を射出成形によって形成し、環状突起部材に使用するものである。環状の型に流し込まれる樹脂は接触部となる端部の外周面に設けられた小口径の射出ゲートを通ることにより、流れ方向に向けられると共に端面に沿って型内に入るため、端面近傍では繊維がこの面と交差方向に向けられることはない。なお、この成形方法による部材は端面から離れた円筒部分で繊維の向きが摺動面と交差する方向になることもあるが、それがモータ駆動に関して影響することはない。
【0009】
《実施例1》
本発明をステータ側の突起部に適用した実施例を図4を参照しながら説明する。図4(A)に示したものは超音波モータの突起4となる円筒部材を図3(C)に示した手法によって射出成形し、これを金属からなる弾性体3の環状溝部31に嵌合させ接着等により一体化してステータとするものである。この円筒部材を軸方向に切り込みをいれて最適分割数のくし歯状に加工する。円筒部材の素材として、フィラー材にはカーボン、ガラス、金属、セラミクス等の繊維を、樹脂にはポリイミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイド、PEEK等の耐熱性を有する樹脂が適している。くし歯状になった突起4の先端部は、図3(C)に示した手法によって射出成形された円筒部材の端面部であるから、フィラー材として混入されている繊維の方向がロータの摺動方向の面内方向に揃っており、摩耗に強く相手部材であるロータを傷めることもない。
図4(B)に示した実施例は超音波モータの突起先端部41となる薄い環状部材を図3(B)に示した手法によって射出成形し、これを金属からなる弾性体3の円筒状部に接着等により一体化してステータとするものである。この接合された円筒部材を軸方向から切り込み最適分割数のくし歯状に加工する。環状部材の素材としては先の円筒部材のものと同様でよい。くし歯状になった突起4の先端部は、図3(B)に示した手法によって射出成形された薄い環状部材の面部であるから、フィラー材として混入されている繊維の方向がロータの摺動方向の面内方向に揃っており、摩耗に強く相手部材であるロータを傷めることもない。また、この環状部材は図3(A)に示した手法により薄板を形成し、その薄板を型抜きや切削加工によって環状に形成する方法でもよい。
図4(C)に示した実施例は弾性体3と突起4とを一体構造とするステータを図3(C)に示した手法によって射出成形したものである。このステータの円筒部を軸方向に切り込みをいれて最適分割数のくし歯状に加工する。ステータの素材としては先の円筒部材のものと同様でよい。くし歯状になった突起4の先端部は、図3(C)に示した手法によって射出成形された円筒部材の端面部であるから、フィラー材として混入されている繊維の方向がロータの摺動方向の面内方向に揃っており、摩耗に強く相手部材であるロータを傷めることもない。また、樹脂を例えば弾性体3の下面から流し込む場合には、図3(C)の手法を用いなくても、各突起を一度に成形した場合に比べて繊維が摺動面に交差する部分は極めて少ないので、成形の方法は図3(C)に限らずとも良い。
【0010】
《実施例2》
本発明をロータ側の摺動部に適用した実施例を図5を参照しながら説明する。図5(A)に示したものは射出成形によって環状体を形成し、摺動面となる端面の外周縁部と内周縁部を面取りをしたもので、これはフィラー材の繊維の方向が摺動面に交差方向にある周縁部近傍を削り落として使用する図2の(A)の手法によるものである。環状部材の素材として、フィラー材にはカーボン、ガラス、金属、セラミクス等の繊維を用い、樹脂にはポリイミド、液晶ポリマー、ポリフェニレンサルファイド、PEEK等の耐熱性を有する樹脂が適している。
図5(B)に示したものは細長いゲートから押出し成形によって形成した薄板を型抜き又は切削加工によって環状部材としたものをロータの摺動部に適用した実施例である。これは図3(A)に示した手法によるものでフィラー材の繊維の方向が表裏面に平行した方向に揃えられているのでこの面を摺動面として用いれば繊維端部がステータ側の突起先端部を傷めることがない。素材は上記の例と同様のものでよい。
図5(C)に示したものは環状部材の型の外周面に設けたゲートから射出成形によって形成する図3(B)の手法によるものである。この様に形成された摺動板であるのでフィラー材の繊維の方向は表裏面に平行した方向に揃えられているのでこの面を摺動面として用いれば繊維端部がステータ側の突起先端部を傷めることがない。素材は上記の例と同様のものでよい。なお、この形成方法においてゲートの取り付け方向は外周面に直交する方向に設けるよりも環状部材の接線方向に設ける方が繊維方向を揃える点で有利であるが、基本的に繊維方向は型と接する面に沿うため、この面をラッピング等で薄く切除して使用することも可能である。
【0011】
ここに示した本発明をロータ側の摺動部に適用した実施例では、図6に示したように弾性体の突起4の幅よりもこのロータの摺動板7の幅を狭く構成することが好ましい。この接触部分を円内に拡大表示したがここに示したように金属材である突起4と樹脂材である摺動板が摩擦駆動される中で、樹脂製の摺動板は徐々に摩耗させられる。その際突起4の幅l1より摺動板7の幅l2が狭い関係にあることにより、その摩耗は摺動板7の幅全体に均一的になされ、摩耗により溝が形成されるようなことがない。したがって、超音波モータとして安定した駆動を保つことができる。
【0012】
《実施例3》
本発明をリニアタイプの超音波モータのステータ側の突起部に適用した実施例を図7を参照しながら説明する。図7(A)に示したタイプAのものはブロック状の弾性体3の長手方向端面部に四角柱状の突起4が取り付けられたもので、突起先端部の楕円運動により接触している移動体6を一方向に駆動させる超音波モータである。この突起部4は図2(A)に示した面取りの手法もしくは図2(B)に示した周面削り方式によって形成する。射出成形した型の面中心部分に接し繊維の方向が面に平行となっている部分を残して使用するものである。
図7(B)に示したタイプBものはブロック状の弾性体3の長手方向を移動体6が移動する方向に向けの長手方向に所定間隔をおいて平行に設置された四角柱状の突起4が取り付けられたもので、突起先端部の楕円運動により接触している移動子5を一方向に駆動させる超音波モータである。この突起部4は▲1▼図3(A)の手法によって形成した薄板部材を押出し方向に直交する方向で切り出すか、▲2▼矩形の開口ゲートから押出し成形された四角柱状の樹脂材をブロック状の弾性体3の幅寸法に切断して使用する。▲1▼のものも▲2▼のものも押出し成形によりフィラー材の繊維は押出し方向に揃えられているので、四角柱状の面部の繊維は摺動面に平行となっている。ただし、▲1▼の手法によるものは繊維の方向は摺動方向に向いているのに対し、▲2▼の手法によるものは繊維の方向と直交する方向に向いているため、耐磨耗性の点で▲1▼のものの方が優れている。
図7(C)に示したタイプCは薄板の弾性体3の長手方向を移動体6が移動する方向に向けの一方の面の長手方向に所定間隔をおいて平行に設置された四角柱状の突起4が取り付けられたもので、突起先端部の楕円運動により接触している移動子5を一方向に駆動させる超音波モータである。この突起部4は先の例と同様で、▲1▼図3(A)の手法によって形成した薄板部材を押出し方向に直交する方向で切り出すか、▲2▼矩形の開口ゲートから押出し成形された四角柱状の樹脂材をブロック状の弾性体3の幅寸法に切断して使用する。押出し成形によりフィラー材の繊維は押出し方向に揃えられているので、四角柱状の面部の繊維は摺動面に平行となっている。
しかしながら基本的には繊維が摺動面内方向にあれば良く、先に示した回転型モータの例をそのまま適用することも可能である。また、当然のことながら、移動体6が樹脂で形成される場合も同様である。
【0013】
《実施例4》
図9に、本発明に係わる電気−機械変換素子を利用した超音波モータを電子機器に適用した実施の形態4のブロック図を示す。
【0014】
本電子機器は、前述の圧電素子2からなる弾性体3と、この弾性体3により駆動される移動体6と、移動体6と弾性体に接触圧を与える加圧機構9と、移動体6と連動して可動する伝達機構11と、伝達機構11の動作に基づいて運動する出力機構12を備えることを特徴とする。
【0015】
ここで、伝達機構11には、例えば、歯車、摩擦車等の伝達車を用い、これを直接移動体6に形成する。伝達機構11を省略し、直接出力機構12を設けても構わない。出力機構12には、例えば、指示装置や電子時計においては、指針あるいは指針駆動機構やカレンダ等の表示板、あるいは表示板駆動機構を、コピー機やプリンタにおいてはレーザーの方向を変えるミラーを、カメラやビデオカメラにおいてはシャッタ駆動機構、絞り駆動機構、レンズ駆動機構、フィルム巻き上げ機構等を、レーザーや光を利用した計測器や製造装置、センサーにおいては光の遮断・透過や特定波長の光のみを透過するスリット板やフィルターを、音響機器のボリュウム等には抵抗値や容量値を可変する接点機構やギャップ板を、ハードディスクや光ディスクにおいてはピックアップ駆動機構を用いる。
【0016】
また、移動体6に出力軸を取り付け、出力軸からトルクを伝達する動力伝達機構を有する構成とすれば、超音波モータ自身で駆動機構が実現できる。
【0017】
本発明の超音波モータを電子機器に適用することにより、電子機器の低電圧化、低消費電力化、小型化、低コスト化が実現できる。超音波モータを利用することから当然、磁気の影響を受けずまた、有害な磁気ノイズも発生しない特徴を有する。
【0018】
【発明の効果】
本発明の超音波モータは、弾性体と移動体の接触部の内少なくとも一方の部材が摺動方向に向いたカーボン、ガラス、金属、セラミクス等の繊維をフィラー材として含有した樹脂で形成されたものであるから、弾性体と移動体の接触部として耐摩耗性に優れ、接触する相手部材の面を摩耗することのないものが実現できた。
本発明の超音波モータのステータ形成方法は、移動体との接触部近傍をカーボン、ガラス、金属、セラミクス等の繊維をフィラー材として含有した樹脂で形成した後、多数の突起形状を分割加工するようにしたことにより、偏摩耗を生じさせない接触部構造を実現することができた。
また、本発明の超音波モータの移動体は、弾性体の突起部と接触する移動体の摺動部をカーボン、ガラス、金属、セラミクス等の繊維をフィラー材として含有した樹脂で形成すると共に、該接触部を前記弾性体の突起部の幅より狭く形成したことにより、この接触部の摩耗を均一化させることが出来、超音波モータとして安定した駆動を保つことができる。
また本発明は、突起の数が少なく移動体に偏摩耗を生じ易い、円板や円環形状の振動体を用いた定在波型超音波モータへの適用ももちろん可能であり、その効果も上記と同様に極めて大きいものである。
【0019】
本発明の超音波モータの弾性体と移動体の接触部の加工方法は、カーボン、ガラス、金属、セラミクス等の繊維をフィラー材として含有する樹脂材料を射出成形によって形成した部材の繊維方向が摺動面と交差している端縁部近傍を切落して、繊維方向が摺動面と平行になっている型の面部近傍を使用するものであるから、繊維材の端部が摺動面に露出するようなことがなく、相手部材を傷つけるようなことがないものである。
また、本発明の超音波モータの弾性体と移動体の接触部の樹脂形成方法は、カーボン、ガラス、金属、セラミクス等の繊維をフィラー材として含有する樹脂材料を摺動面となる面に平行な方向から型に射出することにより、繊維方向が摺動面に揃うようにしたものであるから、接触部の摺動面における繊維は面に平行する方向に揃えられており、本発明が課題とする弾性体と移動体の接触部として耐摩耗性に優れ、接触する相手部材の面を摩耗することのない素材が実現できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】モールド部材における繊維フィラーの態様を示す図である。
【図2】面に交差する方向の繊維が存在する部分を取り除く本発明の方法を説明する図である。
【図3】繊維の向きが摺動面に平行するように揃える本発明の方法を説明する図である。
【図4】本発明をステータ側の突起部に適用した実施例を説明する図である。
【図5】本発明をロータ側のロータ摺動部に適用した実施例を説明する図である。
【図6】本発明をロータ側のロータ摺動部に適用した実施例における突起との幅寸法の関係を説明する図である。
【図7】本発明をリニヤ型超音波モータに適用した実施例を説明する図である。
【図8】進行波方式のリング型超音波モータの基本構成を示す図である。
【図9】本発明に係わる超音波モータを電子機器に適用した実施例を説明するブロック図である。
【符号の説明】
1 ステータ
2 圧電素子
3 弾性体
4 突起
5 ロータ
6 移動体
7 摺動板
8 中心軸
9 加圧機構
10 支持板
11 伝達機構
12 出力機構
31 環状溝部
41 突起先端部
Claims (4)
- 弾性体と、前記弾性体に加圧接触された移動体からなる超音波モータにおける前記弾性体及び前記移動体の一方の接触部の製造方法であって、
繊維状のフィラー材を含有する樹脂を型を用いて所定の形状に成形し、且つ前記フィラー材の繊維方向が前記接触部の摺動面と交差する端縁部を切り落として形状加工する工程を有することを特徴とする超音波モータの接触部の製造方法。 - 弾性体と、前記弾性体に加圧接触された移動体からなる超音波モータの製造方法であって、
前記弾性体及び前記移動体の一方の接触部を繊維状のフィラー材を含有する樹脂を押し出し成形によって矩形形状に形状加工し、
且つ前記フィラー材の方向が前記接触部の摺動面に平行になる様に前記接触部を前記弾性体又は前記移動体に取り付ける工程を有することを特徴とする超音波モータの製造方法。 - 前記フィラー材は、カーボン、ガラス、金属、又はセラミクスのうち、いずれかの繊維を用いることを特徴とする請求項1に記載の超音波モータの接触部の製造方法。
- 前記樹脂は、耐熱性を有する熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1又は3に記載の超音波モータの接触部の製造方法。
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