JP4255866B2 - 炭化珪素膜及びその製造方法 - Google Patents
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なお、本発明でいう起伏は、数学的に厳密な意味での平行性や鏡面対称関係を要求されるわけではなく、反位相領域境界面を効果的に低減又は解消しうるのに十分な程度の形態を有していればよい。
光リソグラフィ技術を用いれば、基板に転写するマスクパターンを任意に形成することで、任意の起伏形状を被成長基板に転写することが可能である。パターンの、例えば線幅を変えることで起伏形状の幅を制御することが可能であり、また、レジストと基板のエッチング選択比を制御することで起伏形状の深さや斜面の角度を制御することが可能である。矩形のパターン形状を嫌う場合でも、レジストにパターン転写した後、熱処理によりレジストを軟化させて波状形状の起伏パターンを形成することが可能である。
プレス加工技術を用いれば、プレス用の型を任意に形成することで、被成長基板上に任意の起伏形状を形成することが可能である。様々な形状の型を形成することで、様々な形状の起伏形状を被成長基板上に形成できる。
レーザー加工や超音波加工技術を用いれば、基板に直接起伏形状を加工形成するのでより微細な加工が可能である。
研磨加工を用いれば、研磨の砥粒径の大きさや加工圧力を変化することで、起伏形状の幅や深さを制御することが可能である。一方向起伏形状を設けた基板を作製しようとした場合には、研磨は一方向のみに行われる。
なお、少ない膜厚で本発明の効果を得るには、起伏頂部の間隔がより狭いことが望ましい。
起伏頂部の間隔は、被成長基板への起伏作製における微細加工技術の限度の観点からは0.01μm以上が好ましい。また、起伏頂部の間隔が10μmを超えると反位相領域境界面どうしの会合の頻度が極端に低下するため、起伏頂部の間隔は10μm以下であることが望ましい。さらに望ましくは、0.1μm以上3μm以下の起伏頂部の間隔により、本発明の効果が十分に発揮される。
起伏の高低差及び間隔は起伏の傾斜度、つまりステップ密度を左右する。好ましいステップ密度は結晶成長条件によって変化するため一概には言えないが、通常必要な起伏高低差は起伏頂部間隔と同程度、つまり0.01μm以上20μm以下である。
本発明では、被成長基板表面における原子レベルのステップ近傍での炭化珪素の成長を促進することにより、その効果が発揮されることから、起伏の斜度は、斜面全面が単一ステップに覆われる(111)面の斜度54.7°以下の傾斜において本発明が実現される。また、1°未満の斜度においては起伏斜面のステップ密度が著しく減少するため、起伏の斜面の傾斜は1°以上であることが望ましい。さらに望ましくは、起伏の斜面の傾斜角が2°以上10°以下であると、本発明の効果が十分に発揮される。
なお、本発明でいう「起伏の斜面」は、平面、曲面などのあらゆる形態を含む。また、本発明でいう「起伏における斜面の斜度」は、本発明の効果に寄与する実質的な斜面の斜度を意味し、斜面の形態に応じ、最大斜度、平均斜度などを「起伏の斜度」として採用できる。
立方晶又は六方晶の炭化珪素を成長させる被成長基板表面の面方位として、単結晶Si(001)面又は単結晶の立方晶炭化珪素(001)面を用いる場合、反位相領域の拡大方向は[110]であることから、図2に示すごとく、表面の起伏はこの内のどれかの方向(図2の場合[1,−1,0]方向)に平行とすることで、図3に示したように起伏と直交する軸上で反位相領域境界面の効果的な解消が実現された炭化珪素膜が得られる(構成5、6)。なお、図3において、Wは起伏頂部の間隔を示す。
立方晶又は六方晶の炭化珪素を成長させる被成長基板表面の面方位として、単結晶の六方晶SiC(1,1,−2,0)面を用いる場合、反位相領域の拡大方向は[1,−1,0,0]、[−1,1,0,0]、[0,0,0,1][0,0,0,−1]であることから、表面の起伏はこの内のどれかの方向に平行とすることで、上記と同様に反位相領域境界面の効果的な解消が実現された炭化珪素膜が得られる(構成7)。
本発明の炭化珪素膜は、結晶境界密度が小さいため非常に優れた電気的特性を有し、半導体基板や結晶成長用基板(種結晶を含む)、その他の電子素子として好適に使用できる。
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明する。
まず、オフ角導入による効果を確認するため、オフ角のないSi(001)面、及びオフ角がそれぞれ4°、10°付いたSi(001)面を被成長基板として、SiC(3C−SiC)の成長を行った。SiCの成長は、基板表面の炭化工程と、原料ガスの交互供給によるSiC成長工程に分けられる。炭化工程では、アセチレン雰囲気中で上記加工済みの基板を室温から1050℃まで120分間かけて加熱した。炭化工程の後に、1050℃にてジクロルシランとアセチレンとを交互に基板表面に暴露して、SiCの成長を実施した。炭化工程の詳細条件を表1に、SiC成長工程の詳細条件を表2にそれぞれ示す。
なお、反位相領域境界面の密度は、炭化珪素表面をAFM観察して求めた。この際、炭化珪素の表面を熱酸化処理しさらに熱酸化膜を除去することにより反位相境界を顕在化させたあとに観察を行った。
ことがわかる。
図4及び図5から、オフ角導入によりテラス面積の拡大が確認されてステップフローモードでのSiC成長が支配的となっており、面欠陥の伝搬方位が特定の結晶面内に限定されていることがわかる。
Si(001)面を被成長基板とし、基板表面を熱酸化後、フォトリソグラフィー技術を用いて基板表面上に1.5μm幅、長さ60mm、厚さ1μmのライン&スペースパターンをレジストにて形成した。ただし、ライン&スペースパターンの方向は[110]方位に平行にした。この基板を表4に示す条件でホットプレートを用いて加熱することにより、ライン&スペースレジストパターンがラインと直交する方向に広がって変形し、起伏の頂点と底が滑らかな曲線で繋がった波面状の断面のレジストパターン形状を得た。このレジストパターンの断面形状(起伏)及び平面形状(ライン&スペース)をドライエッチングにてSi基板に転写した。
レジストを過酸化水素と硫酸の混合液中で除去した後(図6)、3C−SiCの成長を実施した。SiCの成長は、基板表面の炭化工程と、原料ガスの交互供給によるSiC成長工程に分けられる。SiC成長工程の詳細条件を表5に示す。なお、炭化工程の詳細条件は表1と同様とした。
Si(001)面を被成長基板とし、フォトリソグラフィー技術を用いて基板表面上に1.5μm幅、長さ60mm、厚さ1μmのライン&スペースパターンをレジストにて形成した。ただし、ライン&スペースパターンの方向は[110]方位に平行にした。この基板を表7に示す条件でホットプレートを用いて加熱しレジストを軟化させてレジストパターンの断面形状を変化させた。このレジストパターンの断面形状(起伏)及び平面形状(ライン&スペース)をドライエッチングにてSi基板に転写した。
レジストを過酸化水素と硫酸の混合液中で除去した後、3C−SiCの成長を実施した。SiCの成長は、基板表面の炭化工程と、原料ガスの交互供給によるSiC成長工程に分けられる。なお、炭化工程の詳細条件は表1と同様とし、SiC成長工程の詳細条件は表5と同様とした。
Si(001)面を被成長基板とし、フォトリソグラフィー技術を用いて基板表面上に1.5μm幅、長さ60mm、厚さ1μmのライン&スペースパターンをレジストにて形成した。ただし、ライン&スペースパターンの方向に関して、[110]方位とライン&スペースパターンの方向との交差角度ω(図7参照)を表9に示すように変化させた。その後、表4に示す加熱条件でホットプレートを用いて基板を加熱しレジストを軟化させてレジストパターンの断面形状を変形させた。このレジストパターン形状をドライエッチングにてSi基板に転写した
。
レジストを過酸化水素と硫酸の混合液中で除去した後、3C−SiCの成長を実施した。SiCの成長は、基板表面の炭化工程と、原料ガスの交互供給によるSiC成長工程に分けられる。なお、炭化工程の詳細条件は表1と同様とし、SiC成長工程の詳細条件は表2と同様とした。
実施例1〜3ではライン幅とスペース幅の等しいライン&スペースパターンを有するマスクを使用して、凹部、凸部の割合が等しい起伏断面パターン持つ基板を作製し、その上に3C−SiCの成長を行った。そこで実施例4では、凸部の密度を減少させたパターンとして、ライン幅1.5μm、スペース幅がライン幅のそれぞれ2倍、4倍、8倍、16倍であるライン&スペースパターンをそれぞれ用いて基板加工を行い、その上に3C−SiCの成長を行った。基板加工条件、SiC成長条件は、ともに実施例3と同一である。ただし、起伏の傾斜角は4°とした。
起伏凹部の密度を変化させたそれぞれのパターンに対する反位相領域境界面の密度を上記と同様にして測定したところ、表10に示す結果を得た。なお、比較として、ライン幅、スペース幅がともに1.5μmのパターンを用いた場合の反位相領域境界面密度、及びライン幅が無限大(∞)に広がった極限とみなせる起伏無しのSi(001)基板(オフ角度0°)を用いた場合の反位相領域境界面密度についても同様にして測定し表10に示した。
実施例1〜4では基板断面が波状の構造に関してのみ説明を行ってきた。本発明の有効性が波状型以外の構造に関しても保持されることは図3の説明からも明らかである。実際に以下の方法により、断面が鋸歯状の起伏加工をSi(001)面上に施し、その基板上への3C−SiCの成長を行った。
詳しくは、Si(001)面を被成長基板とし、フォトリソグラフィー技術を用いて基板表面上に1.5μm幅、長さ60mm、厚さ1μmのライン&スペースパターンをレジストにて形成した。ただし、ライン&スペースパターンの方向は[110]方位と平行とした。このレジストパターン形状をドライエッチングにてSi基板に転写した。レジストを過酸化水素と硫酸の混合液中で除去した後、基板をKOH水溶液に浸漬してウエットエッチングを行った。ウエットエッチングの条件を表11に示す。ウエットエッチングの結果、傾斜角1°、10°、55°の鋸歯状の起伏を有する単結晶Si(001)面が得られた(図8参照)。なお、図8において、4はウエットエッチング前の基板断面構造を示し、5はウエットエッチング後の鋸歯状の基板断面構造を示す。
各基板上にそれぞれ成長させたSiCについて、最表面に現れる反位相領域境界面の密度を上記と同様にして測定したところ、表12に示す結果を得た。
実施例1〜5はいずれもSi(001)面基板上に立方晶炭化珪素膜を成長させたものである。実施例6では被成長基板として、単結晶の立方晶炭化珪素(単結晶3C−SiC)の(001)面上に[110]方位に平行に伸びる起伏を具備した基板、及び、単結晶の六方晶炭化珪素の(1,1,−2,0)面上に[0,0,0,1]方位に平行に伸びる起伏を具備した基板、をそれぞれ用いて、それぞれの基板表面上に立方晶炭化珪素膜もしくは六方晶炭化珪素膜の成長を行った。
その結果、実施例1〜5と同様に本発明の有効性が確認された。
実施例1〜6はいずれも起伏の作製方法としてSi基板(001)表面をリソグラフィー技術を用いてエッチングする方法を採用しているが、本発明の有効性をもたらす被成長基板表面の起伏作製方法はエッチング以外の他の手法にて行うことができる。実施例7ではその一例を挙げる。
Si(001)面を基板とし、この表面を熱酸化して3000オンク゛ストロームのSi酸化膜(SiO2膜)を形成した。そしてこの熱酸化膜上にフォトリソグラフィー技術を用いて1.5μm幅、長さ60mm、厚さ1μmのライン&スペースパターンをレジストにて形成した。ただし、ライン&スペースパターンの方向は[110]方位と平行とした。このレジストパターン形状をドライエッチングにて熱酸化膜に転写し、ストライプ状のSiO2パターン及びSi露出部を設けた。レジストを過酸化水素と硫酸の混合液中で除去した後、この基板上に図9に示すようにSiの選択的ホモエピタキシャル成長を実施した。SiC成長工程の詳細条件を表13に示す。なお、図9において、6はストライプ状のSiO2パターン、7は選択的ホモエピタキシャル成長したSi層を示す。
実施例8では、Si(100)基板表面に、[110]方向に平行に研磨処理を施す方法で、[110]方向に平行な起伏形成基板を作製することを試みた。研磨には、市販されている約15mmφ径のダイヤモンドスラリー(エンギス社製:ハイプレス)と市販の研磨パッド(エンギス社製:M414)を用いた。
パッド上にダイヤモンドスラリーを一様に浸透させ、パッド上にSi(100)基板を置き、0.1〜0.2kg/cm2の圧力をSi(100)基板全体に加えながら、[110]方向に平行にパッド上約20cmの距離を300回往復させて一方向研磨処理を施した。Si(100)基板表面には[110]方向に平行な研磨傷(スクラッチ)が無数に形成された。
一方向研磨処理を施したSi(100)基板表面に研磨砥粒などが付着しているので、NH4OH+H2O2+H2O混合溶液(NH4OH:H2O2:H2O=4:4:1の割合で液温60℃)にて洗浄し、H2SO4+H2O2溶液(H2SO4:H2O2=1:1の割合で液温80℃)とHF(10%)溶液に交互に3回ずつ浸して洗浄し、最後に純水でリンスした。
洗浄した後、一方向研磨処理基板上に熱酸化膜を約5000オンク゛ストローム厚形成した。熱酸化膜をHF10%溶液により除去した。研磨を施しただけであると、基板表面はスクラッチ以外にも細かい凹凸や欠陥が多く被成長基板としては用い難い。しかし、熱酸化膜を一度形成して、改めて酸化膜を除去することで、基板表面の細かい凹凸が除去されて非常にスムーズなアンジュレーション(起伏)面を得ることができた。波状断面を見ると波状凹凸の大きさは不安定で不規則であるが、密度は高い。少なくとも水平な面はない。常に起伏の状態にある。平均すると、溝の深さは30〜50nm、幅は0.5〜1.5μm程度であった。斜度は3〜5度であった。
この基板を用いてSiC膜を基板上に作製した。結果は、[110]に平行な起伏形成基板の効果が得らた。すなわち、反位相境界面の欠陥は大幅に減少する。
例えば、未研磨のSi基板上に成長したSiC膜の反位相境界面密度は8×109個/cm2であるのに対し、今回の一方向研磨を施したSi基板上に成長したSiC膜の反位相境界面欠陥密度は0〜1個/cm2となる.砥粒サイズに対しての起伏形状と反位相境界面欠陥密度は表14に示す通りになる。また、研磨回数に対しての起伏の密度と反位相境界面欠陥密度は表15に示す通りになる。
、荷重及び熱を加えて界面における結合を強化する方法である。
また、本発明の炭化珪素膜は、結晶境界密度が小さいため非常に優れた電気的特性を有し、各種電子素子などとして広く有用である。
2 反位相領域境界面会合点
3 Si基板表面テラスにて発生した反位相領域境界面
θ オフ角度
φ Si(001)面と反位相領域境界面のなす角(55°)
W 起伏頂部の間隔
ω 交差角度
4 ウエットエッチング前の基板断面構造
5 ウエットエッチング後の鋸歯状の基板断面構造
6 ストライプ状のSiO2パターン
7 選択的ホモエピタキシャル成長したSi層
Claims (5)
- 表面の全部又は一部に1方向に平行に伸びる複数の起伏を具備した被成長基板上に成長させることによって製造された炭化珪素膜であって、
前記起伏の斜面には、鏡面対称な方位に配向したステップが統計的に釣り合った密度で導入されており、
前記炭化珪素膜は、
{1 1 1}面に面欠陥を有する立方晶炭化珪素膜であって、
前記面欠陥密度が最も大きな結晶面を(1 1 1)面とした場合に、
(−1−1 1)面の面欠陥密度と前記(1 1 1)面の面欠陥密度とが同等であり、
かつ、他の{1 1 1}面の面欠陥密度が、前記(1 1 1)面及び前記(−1−1 1)面の面欠陥密度より小さいことを特徴とする炭化珪素膜。 - 気相化学堆積(CVD)法にて形成されたことを特徴とする請求項1に記載の炭化珪素膜。
- 前記面欠陥が、反位相領域境界面であることを特徴とする請求項1又は2に記載の炭化珪素膜。
- 前記炭化珪素膜の最表面の結晶面が(0 0 1)面であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の炭化珪素膜。
- 前記炭化珪素膜が、前記被成長基板上にエピタキシャル成長させることにより得られたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の炭化珪素膜。
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